(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133795
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】集風装置及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 3/04 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043760
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】522487929
【氏名又は名称】ふくろうシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100224487
【弁理士】
【氏名又は名称】元吉 剛一
(72)【発明者】
【氏名】浜名 恵吾
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA12
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB46
3H178BB90
3H178CC01
3H178DD12Z
3H178DD26X
(57)【要約】
【課題】猛烈な風のエネルギーの電気エネルギーへの変換を可能にする。
【解決手段】集風装置は、放射状に分割、又は纏められた吸気口を持つ導風管と、前記導風管を中心に空間が形成されるように、前記吸気口の上部に配置される上部材と、前記上部材に対して離間して配置される下部材と、前記上部材と前記下部材の間に前記導風管から放射状に延在するように配置された仕切り板と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状に分割、又は纏められた吸気口を持つ導風管と、
前記導風管を中心に空間が形成されるように、前記吸気口の上部に配置される上部材と、
前記上部材に対して離間して配置される下部材と、
前記上部材と前記下部材の間に前記導風管から放射状に延在するように配置された仕切り板と、
を備える集風装置。
【請求項2】
前記仕切り板で区切られた空間の外周面に配置された格子をさらに備える請求項1に記載の集風装置。
【請求項3】
前記仕切り板で区切られた空間の外周面から前記導風管の前記吸気口へかけて傾斜する傾斜板をさらに備え、
前記導風管の前記吸気口の開口面積は、前記仕切り板で区切られた空間の外周面の開口面積よりも小さい
請求項1に記載の集風装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の集風装置と、
前記集風装置で集風された風が渦を形成し、遠心力により異物を除去する分離装置と、
前記分離装置により異物が除去された風を受けて回転するタービンと、
前記タービンの回転力により発電する発電モータ又は発電機と、
を備える風力発電装置。
【請求項5】
一方の端が放射状に分割又は纏められた前記導風管に接続され、他方の端が前記分離装置に接続され、前記導風管よりも小さい口径を持つ導風管をさらに備える請求項4に記載の風力発電装置。
【請求項6】
風速に応じて前記タービンで発生した回転数を増減させる減速機又は変速機をさらに備える請求項4に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集風装置及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力を利用した発電装置の風車の形状として、水平軸型ではプロペラ式、セイルウィング式、オランダ式、多翼式、垂直軸型の揚力形ではダリウス式、直線翼式、垂直軸型の効力形では、サポニウス式、パドル式、クロスフロー式、S型ローター式、さらには台風に強いマグナス式などが広く知られているが、これらは何れも、回転羽根(ブレード)または回転羽根(ブレード)に類する構造を持ち、風を直接受けて回転する仕組みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013-517422号公報
【特許文献2】特開2009-121451号公報
【特許文献3】特開2005-098256号公報
【特許文献4】特開2019-138295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係る風を直接受けて回転する仕組みの風力発電装置が持つ最大の課題は、発電を開始する風速と、発電を停止する風速とが、トレードオフの関係にあることである。すなわち、発電を開始する風速を下げるために軽量の素材を使用すると十分な強度を確保することが困難となり、強風時に発電を停止する風速を下げる必要が生じる。一方、強風でも耐えられる強度の素材を使用した場合、発電を停止する風速を上げることは可能となるが、素材の重量から発電を開始する風速が上がるという課題が生じる。このように、従来技術に係る風を受けて回転する仕組みの風力発電装置は、弱風時や強風時に安定して電力を供給することが困難であるという問題が存在する。
【0005】
そこで、本開示は、風力発電の開始風速の低減と、停止風速(カットアウト風速)の増高を可能にし、猛烈な風のエネルギーの電気エネルギーへの変換を可能にする集風装置及び風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る集風装置は、放射状に分割、又は纏められた吸気口を持つ導風管と、前記導風管を中心に空間が形成されるように、前記吸気口の上部に配置される上部材と、前記上部材に対して離間して配置される下部材と、前記上部材と前記下部材の間に前記導風管から放射状に延在するように配置された仕切り板と、を備える。
【0007】
本開示の一実施形態に係る風力発電装置は、上記の集風装置と、前記集風装置で集風された風が渦を形成し、遠心力により異物を除去する分離装置と、前記分離装置により異物が除去された風を受けて回転するタービンと、前記タービンの回転力により発電する発電モータ又は発電機と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る風力発電装置の概略構成例を示す側視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る風力発電装置の概略構成例を示す上視図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る風力発電装置に流れ込んだ風の流れを説明するための図である(その1)。
【
図6】本開示の一実施形態に係る風力発電装置に流れ込んだ風の流れを説明するための図である(その2)。
【
図7】本開示の一実施形態に係る風力発電装置に流れ込んだ風の流れを説明するための図である(その3)。
【
図8】本開示の一実施形態に係る風力発電装置に流れ込んだ風の流れを説明するための図である(その4)。
【
図9】本開示の一実施形態に係る導風管をその延在方向に沿って切断した際の断面図である。
【
図12】本開示の一実施形態に係る分離装置の概略構成例を示す側視図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係る分離装置の上視図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係る分離装置の多段構成例を示す模式図である。
【
図15】本開示の一実施形態に係る分離装置の他の多段構成例を示す模式図である。
【
図16】本開示の一実施形態に係る分離装置及び発電装置の変形例を示す模式図である。
【
図17】本開示の一実施形態に係る分離装置及び発電装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図18】本開示の一実施形態に係る発電装置の具体例を示す模式図である。
【
図19】本開示の一実施形態において稼働中の風力発電装置で集められた余剰風力を停止中の風力発電装置の発電装置へ供給する場合を説明するための図である。
【
図20】本開示の一実施形態に係る風力発電装置を利用した発電システムの概略例を示す図である。
【
図21】本開示の一実施形態に係る風力発電装置を利用した他の発電システムの概略例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述のように、回転羽根(ブレード)又は回転羽根(ブレード)に類する構造で受けた風エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電装置では、発電を開始する風速(以下、発電開始風速ともいう)と発電を停止する風速(以下、発電停止風速ともいう)とがトレードオフの関係にあるという課題がある。
【0010】
このような課題を解決するための手法としては、軽量で強度のある素材の使用や、風車の形状を組み合わせた方式などを採用することが考えられる。しかしながら、これらの手法は何れも、回転羽根(ブレード)又は回転羽根(ブレード)に類する構造を持つため、2m/s(メートル/秒)未満の風速では発電することが困難で、凡そ25m/sの風速で発電を停止し、強風に強いマグナス式でも凡そ40m/sの風速で発電を停止する必要があり、それ以上の風速で発電を続けると、装置自体が破損する恐れを生じるという課題がある。
【0011】
また、より強固で強風に耐えられる素材を採用したとしても、強風により巻き上げられた物体の衝突などを考慮すると、強風下で回転羽根(ブレード)の回転を許可することは危険を伴うと考えられるため、台風やハリケーンなどの強大なエネルギーを電力に変換できないという課題も存在する。
【0012】
さらに、風力発電では風力タービンが発生する音が環境に悪影響を与え得るという課題も存在するため、設置場所が限定され一般家庭に設置するには周囲の環境を考慮する必要がある。実際に回転羽根(ブレード)型の風力発電装置では、倒壊や回転羽根(ブレード)の破損などの事故も発生している。
【0013】
そこで以下の実施形態では、風力発電における発電開始風速の低減及び発電停止風速の増高のうちの少なくとも一方を達成することを可能にする集風装置及び風力発電装置について例を挙げて説明する。
【0014】
また、以下の実施形態では、発電時の騒音を抑制可能にすることで、風力発電所はもとより、一般家庭にも設定できる程度に周囲の環境に与える影響が低減された集風装置及び風力発電装置についても説明する。
【0015】
次に、本開示の一実施形態に係る集風装置及び風力発電装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1~
図4は、本開示の一実施形態に係る風力発電装置の概略構成例を示す図である。具体的には、
図1は、風力発電装置1の側視図であり、
図2は、風力発電装置1の上視図であり、
図3は、
図1及び
図2におけるA-A断面図であり、
図4は、
図1及び
図2におけるB-B断面図である。なお、
図1~
図4及び以降の図面における各部のサイズの比率は、図示されている比率に限定されず、種々変形されてよい。また、
図5~
図8は、集風装置10に流れ込んだ風の流れを説明するための図である。
【0017】
図1~
図4に示すように、風力発電装置1は、集風装置10と、支柱20と、発電ユニット30とを備える。支柱20の内部には、集風装置10で集められた風を発電ユニット30まで導くための導風管(第1の導風管ともいう)21が配管される。
【0018】
発電ユニット30は、例えば、分離装置40及び発電装置60を含み、導風管21を介して供給された風を利用して発電し、発生した電力を外部(例えば、蓄電池や家庭又は施設の配電設備など)へ供給する。発電ユニット30は、雨風などによる故障や風化を抑制するために、建屋34などに収納されてよい。ただし、発電ユニット30が小型である場合、建屋34に代えて、小型の収納ボックスなどに収納されてもよい。
【0019】
集風装置10は、ドーム状(半球状ともいう)の上部材11と、円形の下部材15とを備える。
図2に示すように、上部材11の内部は空洞であり、その頂点には排気穴12が開口されている。
【0020】
下部材15の下面は、支柱20により支持される。この下部材15は、ドーナツ状であってもよいし、円盤状であってもよいし、受け皿やシャーレなどのように歪曲又は縁が反り立った形状であってもよい。また、
図3に示すように、下部材15の中央には、後述する導風管21を貫挿するための貫通穴が設けられており、支柱20内に配管された導風管21が貫通穴を介して集風装置10内にまで延在してよい。
【0021】
上部材11と下部材15とは上下方向に離間して配置される。上部材11と下部材15との間の隙間(内部空間ともいう)の外周面は、風を取り込むための開口部(風取込口ともいう)13として機能する。例えば、上部材11と下部材15との対向する面それぞれが円形である場合、内部空間の外周面(すなわち、風取込口13)の形状はリング状となる。
【0022】
風取込口13には、落ち葉やビニール袋などの比較的大きな異物などが集風装置10内に侵入することを防止するための格子14が設けられてもよい。風取込口13を格子14で囲うことで、導風管21の上端に設けられた吸気口22に異物等が直接吸い込まれることを防止できる。それにより、飛翔物がその勢いを維持したまま集風装置10の内部構造に衝突して内部構造が破壊されることを防止できるとともに、衝突により破損した物体及びその破片が吸気口22から吸い込まれることを防止することも可能となる。
【0023】
格子14の升目のサイズは、集風装置10内に侵入し得る異物のサイズ、集風装置10内に吹き込む風の速度や量に与える影響などを考慮して、最適な値に設定されてよい。例えば、格子14の升目のサイズを1cm(センチメートル)程度にすることで、それより大きい異物の混入を防ぐとともに、雨や台風等の際に水滴が吸気口22内に侵入することを低減することができる。なお、格子14には、金網などの金属製のものに限定されず、防御ネットなど、種々のものが用いられてもよい。また、格子14は複数設置されても良いし、升目のサイズを吸気口22に近づくに連れて小さくしてもよい。それにより、格子14を通過して直接吸気口22に吸い込まれる異物等のサイズをより制限することが可能となる。
【0024】
図3に示すように、支柱20内から集風装置10内に延在する導風管21は、上部材11と下部材15との間の内部空間の中央に配管される。導風管21は、吸気口22が設けられた上端が上部材11の下面(内部空間の天井に相当)と当接又は近接するように、下部材15の上面(以下、床ともいう)から上部材11の下面(天井)に向けて突出してよい。
【0025】
図3及び
図4に示すように、上部材11及び下部材15が形成する内部空間には、上部材11及び下部材15それぞれの対向面における中心点を通る直線(以下、中心軸ともいう)を含む平面上に、中心線から外周面(風取込口13)へ向けて延在するように複数の仕切り板17が配置される。内部空間が円柱形である場合、中心軸は円柱形状の基準軸に相当してよい。内部空間を円柱形とすることで、各方位からの風に対する集風能力が均等となるように設計することが可能となる。なお、内部空間の形状は、円柱形に限定されず、例えば、三角柱や六角柱やその他の多角柱など、種々変形されてもよい。
【0026】
複数の仕切り板17は、下部材15に対して上部材11を支持する支持部材としても機能してよい。また、複数の仕切り板17は、円筒状の内部空間を複数の空間(以下、分割空間ともいう)を放射状に仕切ってもよい。
図1~
図4に示す例では、内部空間の中央から外側へ向けて延在する3枚の仕切り板17a~17cを互いに120度の角度で放射状に配置することで、内部空間が3つの分割空間に等分されている。
【0027】
このように、集風装置10を円柱形状とし、内部空間を水平360度方向において複数の分割空間に区画することで、集風装置10を水平方向に回転させることなく、全方位からの風を効率的に集風装置10内に取り込むことが可能となる。すなわち、従来の回転羽根型の風力発電機では、センサ等で風向きを検知して動力で風上の方向に向きを変えたり、垂直尾翼を利用して風に対して回転羽根を正対させたりする必要があったが、本実施形態に係る集風装置10では風向きに応じて集風装置10を回転させる必要がなくなる。それにより、集風装置10及びそれを支持する支柱20の構造を簡略化することが可能になるとともに、構造体としての風力発電装置1をより頑丈に設計・構築することも可能となる。加えて、集風装置10の向きを制御する必要がなくなるため、乱気流など風向が安定しない時の過度の方向転換による機器の損耗を防ぐとともに、稼働時の電力消費をなくすことも可能となる。
【0028】
仕切り板17で区画された各分割空間は、水平断面が扇状の扇柱形状を有する。各分割空間に対する吸気口22(本例では、吸気口22a~22cそれぞれ)は、扇柱形状における要部分(2枚の仕切り板17が交わる部分)の上側隅(上部材11側)に位置される。このように、導風管21内への風の吸気口22を各分割空間の上側奥(例えば、天井の中央付近)に配置することで、格子14を通過して内部空間内に侵入した異物が導風管21内に侵入する可能性を低減することが可能となる。
【0029】
また、各分割空間を扇柱形状とすることで、各分割空間に割り当てられた風取込口13の口径(開口部の面積)よりも各分割空間の吸気口22の口径(開口部の面積)を小さくすることが可能となる。それにより、導風管21内を流れる風の速度を風取込口13に吹き込んだ際に風の速度よりも速めることができるため、風速が比較的遅い場合でも発電装置60による発電を開始することが可能となる。すなわち、発電装置60での発電開始風速を低減することが可能となる。なお、広い口径に吹き込んだ風が狭い口径から吹き出す場合に吹き込んだ際の風速よりも吹き出す際の風速の方が早くなる事象は、ベルヌーイの定理として一般的に知られている。
【0030】
各分割空間には、風取込口13の下側から吸気口22に向けて迫り上がるように傾斜する傾斜板18(本例では、傾斜板18a~18c)が設けられる。したがって、
図5及び
図6に示すように、風取込口13から各分割空間内に吹き込んだ風は、仕切り板17と傾斜板18とによって吸気口22に向けて集められ、
図7に示すように、導風管21内に流れ込む。このように、吸気口22に近づくにつれて分割空間の断面積を徐々に狭くすることで、分割空間内における風の対流を抑制することができるため、風取込口13に吹き込んだ風をスムーズに吸気口22に導くことが可能となる。
【0031】
また、風取込口13から迫り上がる傾斜板18を配置することで、格子14を通過して風取込口13から侵入した異物等を傾斜板18に衝突させてその運動エネルギーを低減させることができる。それにより、風取込口13から侵入した異物等が導風管21内に侵入する可能性をより低減することが可能となる。
【0032】
集風装置10の外側部分には、ポリカーボネートなど軽量で且つ強度と粘度の高い素材が使用されるとよい。例えば、上部材11及び下部材15の全体若しくは少なくとも外表部分に軽量で且つ強度と粘度の高い素材を使用することで、集風装置10の安定した支持と、飛翔物の衝突に対する耐性とを高めることが可能となる。
【0033】
一方、集風装置10の内部構造には、ステンレス板など強度が高く且つ耐食性の高い素材が使用されるとよい。例えば、仕切り板17及び傾斜板18に強度が高く且つ耐食性の高い素材を使用することで、集風装置10の構造的な強度を効果的に高めることができるとともに、腐食に対する耐性も効果的に高めることが可能となる。
【0034】
このように、集風装置10の外側部分に軽量で強度と粘度のある素材を使用し、内部構造に強度が高く且つ耐食性の高い素材を使用することで、集風装置10自体を衝撃に強く、破損しても破片が飛散し難い構造とすることができる。それにより、従来の回転羽根型の風力発電機では、強風による運用停止風速の問題や、飛翔物の衝突により破損した破片が飛散する問題などが存在したが、本実施形態によれば、運用停止風速を増高できるほか、集風装置10の破損などの問題を低減することが可能となる。
【0035】
以上のような構成を備える集風装置10は、地面や屋根や床などの設置面(基礎ともいう)に固定された支柱20によって支持される。その際、発電ユニット30を収納する建屋34にも支柱20を固定することで、支柱20をより強固に支持することが可能となる。すなわち、建屋34は、支柱20を支える支柱台としての機能も備えてよい。
【0036】
支柱20は、例えば、内部が空洞な円筒形状を有する。上端が集風装置10の内部空間に配置された導風管21は、下部材15の中央の貫通穴を介して支柱20内に延在し、発電ユニット30まで配管される。なお、支柱20は、従来の回転羽根型の風力発電機と同様に、風を十分に受けることができる程度の高さに集風装置10を支持するように構成されてよい。
【0037】
内部に導風管21が配管される支柱20には、集風装置10を支持できる程度の強度が高く且つ耐食性の高い素材が使用されるとよい。その際、導風管21を金属(合金等も含む)や合成樹脂などの強度の高い素材で構成し、この導風管21でも集風装置10を基礎若しくは建屋34等に対して支持するように構成されてもよい。このように、支柱20だけでなく導風管21でも集風装置10を支持する構成とすることで、例えば、従来の回転羽根型の風力発電機と比べて、集風装置10をより強固に支持することが可能となるため、強風時などでの破損の可能性をより低減することが可能となる。
【0038】
ここで、導風管21のより詳細な構成について、
図3、
図4及び
図9~
図11を用いて説明する。
図9は、本実施形態に係る導風管をその延在方向に沿って切断した際の断面図であり、
図10は、
図9におけるC-C断面図であり、
図11は、
図9におけるD-D断面図である。
【0039】
図3、
図4及び
図9~
図11に示すように、導風管21は、導風管21の長手方向に沿って延在する管内仕切り板23を備えてもよい。管内仕切り板23は、導風管21内を複数の導風路25(
図9~
図11に示す例では、3本の導風路25a~25c)に分割する。分割された導風路25の個数は、分割空間の個数と同数であってよい。そして、分割空間と導風路25とは、一対一に連続していてよい。すなわち、導風管21は、分割空間それぞれと一対一に繋がる放射状に分割された導風路25を備え、支柱20内から下部材15の中心に設けられた貫通穴を通って内部空間にまで延在し、内部空間内では、導風路25それぞれの吸気口22が内部空間内の中央上部に位置するように、内部空間の基準軸に沿って下部材15に当接又は近接するまで延在していてよい。
【0040】
このように、分割空間ごとに導風路25を設けることで、ある分割空間に吹き込んだ風が他の分割空間へ漏れ出して風エネルギーがロスすることを抑制できるため、流入した風の利用効率を高めることが可能となる。なお、複数の導風路25を備える導風管21は、例えば、放射状に形成されていれば、それぞれが互いに異なる分割空間に連結された複数の導風管が束ねられた管束など、種々変形されてもよい。
【0041】
導風管21の下端(発電ユニット30側)は、発電ユニット30の導風管(第2の導風管ともいう)31に連結される。導風管31に連結される導風管21の下端開口部(以下、吹出口ともいう)には、導風路25ごとの逆止弁24(
図9~
図11に示す例では、3つの逆止弁24a~24c)が設けられてもよい。逆止弁24を設けることで、ある導風路25から導風管31内に流れ込んだ風が別の導風路25から漏れ出ることを防止できるため、流入した風の利用効率をより高めることが可能となる。なお、導風路25ごとの逆止弁24は、導風管21の吹出口に限定されず、導風管21内の途中や吸気口22側に設けられてもよい。
【0042】
図3に示すように、導風管21の上端に設けられた吸気口22は、分割空間と一対一に対応するように、導風管21内から突出した管内仕切り板23によって分割されてよい。その際、管内仕切り板23の上端を上部材11の下面に当接し、且つ、仕切り板17から管内仕切り板23にかけて連続した仕切りが形成されるようにすることで、分割空間の間で風が漏れ出ることを抑制できるため、流入した風の利用効率をより高めることが可能となる。
【0043】
また、
図3に示すように、上部材11における管内仕切り板23が当接する部分には、開放弁16が設けられてもよい。
図8に示すように、開放弁16は、風力発電装置1の安全な運転を確保できる風量(以下、安全風量ともいう)以上の風が風取込口13に吹き込んだ際に開放されてもよい。それにより、内部空間から排気穴12までがつながり、風取込口13から吹き込んだ風の一部を排気穴12から逃がすことが可能となるため、吸気口22から導風管21内に流れ込む風の量を調節することが可能となる。
【0044】
例えば、開放弁16は、通常状態では閉鎖状態を維持し、風取込口13に吹き込んだ風により開放方向への力(浮力であってもよい)が与えられて開放されてもよい。そして、開放弁16は、安全風量以上の風が風取込口13に吹き込んだ際に開放されて風を逃がすように、その重さ又はバネ等による閉鎖方向への力(重力や付勢力など)が調節されていてもよい。若しくは、開放弁16は、センサなどで計測された風速が予め定めておいた風速以上となった場合に開放されるように電子制御されてもよい。なお、開放弁16は、上部材11における管内仕切り板23が当接する部分に限定されず、上部材11における下部材15と対向する面のいずれに設けられてもよい。その場合、開放弁16は、分割空間ごとに設けされてもよい。
【0045】
このように、吸気口22付近に開放弁16を設けることで、安全な運転を確保できる風量以上の風が風取込口13に吹き込んだ際に過剰な風を逃がすことが可能となる。それにより、安全確保のために運転を停止する際の発電停止風速を高めることが可能となる。すなわち、従来の回転羽根型の風力発電機では強風の場合に運転を停止しなければならないという問題があったが、本実施形態によれば、物理的な損傷が発生して稼働が困難にならない限り風力発電装置1を稼働して発電することができるため、強風時にも安定した電力供給が可能となる。
【0046】
ただし、後述において
図19を用いて説明するように、例えば発電所などに建設される中規模又は大規模な風力発電システムのような、複数基の風力発電装置1が連携可能に建設される場合では、稼働中の風力発電装置1で集められた風量のうちの余剰な風量が停止中(スタンバイ中ともいう)の風力発電装置1の分離装置40及び発電装置60へ供給されるように構成することも可能である。そのような場合、集風装置10で集められた風を逃がす必要がなくなるため、開放弁16を省略することができる。
【0047】
なお、分離装置40と発電装置60との対応関係は、一対一に限定されず、M(Mは1以上の整数)対N(Nは1以上の整数)とすることが可能である。例えば、後述において
図14又は
図15を用いて説明するように、1台の分離装置40に対して2台以上の発電装置60を並列に接続したり、1台の発電装置60に対して2台以上の分離装置40を接続したりすることが可能である。また、後述において
図16を用いて説明するように、M台(Mは1以上の整数)の発電装置60に対してN台(Nは1以上の整数)の分離装置40を適宜接続可能とするなど、種々変形することも可能である。
【0048】
支柱20内に配管された導風管21は、発電ユニット30を収納する建屋34内で支柱20内から支柱20外に引き出され、発電ユニット30の導風管31に連結される。例えば、支柱20内で垂直方向に延在する導風管21は、支柱20における建屋34に収納された部分若しくは建屋34に隣接する部分で特定の方向(例えば、水平方向)に歪曲されて支柱20内から引き出され、建屋34内の導風管31に連結されてもよい。若しくは、導風管31が支柱20内まで延在し、支柱20において垂直方向に歪曲して導風管21に連結されてもよい。
【0049】
発電ユニット30の導風管31に供給された風は、まず、分離装置40に導かれる。ここで、分離装置40の構造について、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、本実施形態に係る分離装置の概略構成例を示す側視図であり、
図13は、本実施形態に係る分離装置の上視図である。なお、
図12及び
図13では、明確化のため、内部での風の流れが破線で示されている。
【0050】
本実施形態で想定するタービンは、いわゆる風力タービンと呼ばれる、回転羽根(ブレード)または回転羽根(ブレード)に類するもので動力を得るものではなく、流体により動力を得る、衝動タービン又は反動タービンと言われるものであり、高速の流体に異物が混入すると、タービン内のブレードやディスクが破損する可能性が高まるため、分離装置40による異物の除去が必要になる。これにより、硬物の衝突による損耗以外にも、糸屑など軽量でもタービンの回転を阻害する要因を取り除くことが可能になる。
【0051】
分離装置40は、例えば、複数及び多階層のサイクロン構造を持ち、風が渦を巻くように流れる際の遠心力を利用して風から異物等を分離する。
図12及び
図13に示すように、分離装置40は、例えば、吹込口41と、分離部42と、吹出口46とを備えてもよい。また、分離装置40の下部開口には、収集装置50が設けられてもよい。
【0052】
吹込口41は、導風管31と連結され、導風管31から流れ込んだ風を分離部42内に供給する。吹込口41の分離部42側の開口形状は、例えば、分離部42の側内壁に沿った辺が長い縦長の長方形や、長軸が分離部42の側内壁と平行な楕円形などであってよい。ただし、これに限定されず、円形や正方形横長の長方形など、種々変形されてもよい。
【0053】
また、吹込口41の開口面積は、例えば、導風管21における各導風路25の開口面積と同等であってよい。ただし、導風路25の開口面積と吹込口41の開口面積との比は、分離部42内に吹き込む風の速度を調整することを目的として調整されてもよい。
【0054】
分離部42は、例えば、円筒部44と、上蓋部43と、ガイド部45とを備える。円筒部44の内部空洞は円柱形をしており、円柱形の基準軸(円筒軸ともいう)が重力方向に対して平行又は略平行となるように設置されてもよい。吹込口41は、円筒部44の内部空洞と繋がっており、円筒部44の内側壁に沿って水平方向に風が吹き込むように、円筒部44に取り付けられてもよい。その際、吹込口41を円筒部44の上部に配置することで、分離部42の内部空洞で風が渦を巻くように流れるため、多階層の渦状の気流を分離部42内に形成することが可能となる。
【0055】
円筒部44の下部開口には、内側壁がすり鉢状であって底部が開口されているガイド部45が設けられてもよい。底部の開口には、風から分離された異物等を回収する収集装置50が設けられてもよい。その場合、風から分離された異物等は、直接又はガイド部45によって導かれることで収集装置50内に侵入し、収集装置50内に蓄積されてよい。なお、ガイド部45の内壁形状はすり鉢状に限定されず、収集装置50の開口形状や開口サイズ等に応じて種々変形されてよい。例えば、収集装置50の開口が円筒部44の下部開口よりも大きい場合には、ガイド部45の内壁形状をテーパ状に拡径する形状としてもよい。
【0056】
円筒部44の下部をガイド部45及び収集装置50で塞ぐことで、重力の影響が無視できる程度に小さい空気(すなわち、風)は、風速が比較的低い円筒部44の基準軸付近で上昇気流を形成する。
【0057】
円筒部44の上部開口は、内壁面が半球状又はドーム状の上蓋部43で覆われている。上蓋部43の頂点には、分離部42の内部空洞に連続する吹出口46が設けられる。このような構成では、吹出口46が円筒部44の内部空洞の基準軸の延長線上に位置することとなる。それにより、基準軸付近に上昇気流を形成した風を吹出口46から噴出させることが可能となる。
【0058】
なお、吹出口46の口径は、吹込口41の口径よりも大きくてもよい。それにより、吹出口46付近での風の速度を遅くすることが可能となるため、吹出口46から異物等が風に乗って吐き出されることを低減することが可能となる。
【0059】
以上のような構成において、吹込口41から流れ込んだ風は、内部空洞の側内壁に沿って流れることで多階層の渦状の気流を発生させる。各層において風が渦を巻く用に流れることで、風に乗って浮遊する異物等が遠心力により外側へ飛ばされて、風から分離される。このような、風が渦を巻く際の遠心力を利用して風から異物等を分離する仕組みは、サイクロン掃除機や粉塵分離機などで知られている仕組みと同様であってもよい。遠心力で分離された異物等は、重力によって下方向へ落下し、下方に位置する収集装置50に回収される。
【0060】
このように、分離装置40内に形成されるサイクロン構造を複数且つ多階層にすること、及び、分離装置40の上部に配置された吹出口46の口径を吹込口41の口径よりも大きくすることで、埃や水滴などの微細な異物等までも取り除くことが可能となる。それにより、導風管32内やタービン61等に異物等が付着して発電効率が下がることや、付着した異物等により導風管32やタービン61等が腐食されて故障することや、タービン61自体の破損を抑制することが可能となる。さらに、発電ユニット30から排気される風をクリーンに保つことが可能となるため、環境に与える埃や臭いなどの影響も抑制することも可能となる。
【0061】
分離装置40における少なくとも吹込口41、分離部42及び吹出口46は、強度が高く且つ耐食性のある素材で構成されるとよい。また、円筒部44の内部空洞は円柱形状に限定されず、例えば、吹込口41が取り付けられた箇所から吹出口46に向かうに連れてテーパ状に広がる形状など、風から異物等を分離可能な形状であれば、種々変形されてよい。さらに、吹出口46の配置は、上蓋部43の頂点に限定されず、風から分離された異物等の吐き出しを低減しつつ異物等が取り除かれた風を効率的に吹き出すことが可能な位置であれば、種々変形することが可能である。
【0062】
なお、分離装置40における風から異物等を取り除く仕組みは、上述において例示したサイクロン構造の仕組みに限定されず、例えば、フィルタを用いて風と異物等とを分離するフィルタ構造など、風エネルギーの損失を抑えつつ風から異物等を取り除くことが可能な仕組みであれば、種々変形されてよい。
【0063】
収集装置50は、強度が高く且つ耐食性の高い素材が使用された円筒形状の容器であってもよい。例えば、収集装置50は、ガイド部45の下部開口に取り付けられる上部が開口された円筒状の容器51と、閉鎖時には容器51の底板として機能する開閉可能な排出弁52と、排出弁52の開放を許可/禁止するストッパ53とから構成されてもよい。
【0064】
ストッパ53は、容器51内に溜まったゴミや水などの異物等の体積及び/又は重量に応じて排出弁52の開放を許可/禁止する。例えば、ストッパ53は、容器51内に溜まったゴミや水などの異物等が一定量を超えると、その異物等により押し上げられて排出弁52の係止を解除することで、排出弁52の開放を許可してもよい。
【0065】
なお、ストッパ53は、電子制御の下で排出弁52の開閉を許可/禁止してもよい。その場合、容器51内に収集された異物等の量(重量、体積等。以下、収集量ともいう)を検出するセンサが設けられ、このセンサで検出された収集量がある一定値を超えた場合には、ストッパ53が排出弁52の開放を許可するように制御されてもよい。
【0066】
係止が解除された排出弁52は、重力及び分離部42内の気流によるダウンフォースを受けて開放される。その結果、容器51内に溜まった異物等は、重力及び気流によるダウンフォースにより下方へ落下する。その際、収集装置50の下方に回収容器54を設置しておくことで、収集装置50から吐き出された異物等を自動的に回収することが可能である。
【0067】
排出弁52は、例えば、バネやゴムなどを用いることで、ストッパ53による係止が解除されている状態でも自重によって開放しない程度の力で閉じるように付勢されてもよい。その場合、異物等の重さや自重やダウンフォースによって開放された排出弁52は、異物等が排出弁52上から排出されると、バネ等の付勢力によって自動的に閉じ、ストッパ53により係止される。
【0068】
なお、排出弁52の閉じる力には、バネ等の付勢力に限定されず、例えばモータなどによる駆動力が用いられてもよい。その場合、排出弁52が開放状態にあることを検出するセンサが設けられ、このセンサによる検出結果に基づいて、排出弁52の閉じる力が発生されてもよい。
【0069】
このように、一定量以上の異物等が蓄えられた際に自動的に異物等を排出する構成とすることで、収集装置50から異物等が溢れて分離装置40の使用ができなくなることを防ぐことが可能となる。
【0070】
分離装置40の吹出口46から吹き出した風は、吹出口46よりも口径の細い導風管(第3の導風管ともいう)32を通ることで風速が加速されて、後述する発電装置60に送られる。
【0071】
なお、
図14に例示するように、分離装置40は、1基の風力発電装置1につき1台に限定されず、複数台設けられてもよい。例えば、発電所などに建設される中規模又は大規模な風力発電装置1では、各集風装置10で集められる風の量が膨大な量となる。そのような場合には、
図14に示すように、導風管31を複数(本例では3つ)の分岐路31A~31Cに分岐し、それぞれに分離装置40A~40C及び収集装置50A~50Cを設けることで、集められた風を複数の分離装置40A~40Cに分散することが可能となるため、発電停止速度を増高することが可能となる。
【0072】
なお、各分離装置40A~40Cは、それぞれに接続された導風管32A~32Cを介することで発電装置60A~60Cと一対一に接続されてもよいし、
図15に示すように、導風管32A~32Cが1本の導風管32にまとめられることで1つの発電装置60に接続されてもよい。
【0073】
また、これらのような構成に限定されず、例えば、
図16に示すように、発電ユニット30が複数の分離装置40A~40C及び複数の発電装置60A~60Cを備え、各分離装置40A~40Cと各発電装置60A~60Cとを一対一に接続する導風管32A~32Cの間が連結管137により接続された構成とすることも可能である。この場合、連結管137上に制御弁138A及び138Bを設けるとともに、各分離装置40A~40Cから連結管137までの導風管32A~32C上に制御弁136A~136Cを設けることで、M台(Mは1以上の整数)の分離装置40に対してN台(Nは1以上の整数)の発電装置60を必要に応じて接続可能に構成することもできる。ここで、MとNは同じ数であってもよいし、異なる数であってもよい。なお、
図16では、各分離装置40に取り付けられる収集装置50の図示が省略されている。
【0074】
また、各分岐路31A~31C上に制御弁35A~35Cを設け、それぞれで開閉可能とすることで、風量に応じて使用する分離装置40の台数を制御したり、メンテナンスを行う分離装置40への送風を停止したりすることも可能となる。
【0075】
つづいて、本実施形態に係る発電装置60について、図面を用いて説明する。
図17は、本実施形態に係る分離装置及び発電装置の概略構成例を示す模式図である。
図18は、本実施形態に係る発電装置の具体例を示す模式図である。
【0076】
図17に示すように、分離装置40の吹出口46には、導風管32が接続される。導風管32は、吹出口46の口径からそれよりも狭い口径へと変化するテーパ状の縮径部33を備える。吹出口46から吹き出した風は、口径の広い吹出口46から縮径部33を通って口径の狭い導風管32内へ流れることで、ベルヌーイの定理に従って加速され、発電装置60へ供給される。
【0077】
図18に示すように、発電装置60は、例えば、タービン61と、回転軸62及び64と、減速機又は変速機(本説明では明確化のため減速機63とする)と、発電モータ65とを備える。少なくともタービン61並びに回転軸62及び64には、強度が高く且つ耐食性の高い素材が使用されているとよい。また、発電装置60は、その他の構成として、タービン61を通過した風の圧力(風圧)をモニタする圧力トランスミッタ66と、タービン61へ風を送る導風管32上に設けられてタービン61へ供給される風の量を調節する制御弁67とをさらに備えてもよい。
【0078】
タービン61は、衝動タービン、反動タービン、衝動反動タービンなどの種々のタービンであってよい。例えば、衝動タービンとして一般に知られているものは、水力発電で使用されるタービンであるが、一般家庭用の風力発電装置としては、これを小型化したものであっても充分な回転力を得ることができる。また、反動タービンとして一般に知られているものは、火力発電で使用されるタービンであるが、一般家庭用の風力発電装置としては、これを小型化したものであっても充分な回転力を得ることができる。さらに、本実施形態では風力を利用するものであることから、テスラタービンなども利用することができる。
【0079】
例えば、風力発電装置1が一般家庭用に小型に設計された場合、タービン61で発生した回転エネルギーは、回転軸62及び64を介して発電モータ65に伝達され、発電モータ65において電気エネルギーに変換される。一般家庭用の発電モータ65には、一般的に知られている発電モータを用いることが可能である。発電モータ65によって発電された電気は、例えば、パワーコンバータを通して家庭用蓄電池又はポータブル蓄電池に充電されてもよい。
【0080】
ただし、タービン61の回転数が高くなりすぎると、この回転数をそのまま発電モータ65に伝達した場合、発電モータ65が破損する怖れが生じる。そこで、回転軸62と回転軸64との間に減速機63を設けることで、過剰な回転数がそのまま発電モータ65に伝達されることを防止してもよい。
【0081】
この減速機は、前述の変速機でも良く、タービン61の回転数が低い場合は、回転数を増幅させ発電モータに伝えることも可能となり、比較的安定した回転数の伝達が可能となる。
【0082】
なお、減速機63は、一般的に知られているもので十分に対応が可能であるが、風速によって自動減速できるものが望ましい。風速が一定速度を超えたときに自動的に回転速度を減速することによって、通常時には高い発電効率を維持し、強風時には発電モータ65の破損を抑制しつつ発電を継続することが可能となる。この、回転数を調整する仕組みは、回転数センサなどを備え、電子制御されてもよい。
【0083】
また、
図18に示すように、例えばタービン61に対して風の出口に設けられた圧力トランスミッタ66で検出された風圧に基づいて制御弁67を調節することで、導風管32を介してタービン61へ供給される風量(結果として、タービン61の回転数)が調節されてもよい。その場合、制御弁67は、圧力トランスミッタ66で検出された風圧を目視により確認した操作者により手動で調節されてもよいし、圧力トランスミッタ66で検出された風圧に基づいて自動的に調節されてもよい。
【0084】
一方、風力発電装置1が一般家庭よりも大規模な発電所や工場などに向けて中型又は大型に設計される場合、発電モータ65に代えて、発電モータ65よりも高い発電能力を備える発電機が用いられてもよい。このような発電機が用いられる場合、減速機63(又は変速機)を省略することも可能である。
【0085】
また、風力発電装置1が中型又は大型に設計される場合、ある稼働中の風力発電装置1で集められた風量のうち発電装置60の発電能力を超えた分の風量が、集風を停止している他の風力発電装置1の発電装置60へ供給されてもよい。例えば、
図19に示すように、複数(本例では3基)の風力発電装置1A~1Cが設けられた場合、各風力発電装置1A~1Cにおける導風管31を連結管37で連結し、連結前の各導風管31上に制御弁36を設けるとともに、各導風管31間を結ぶ連結管37上に制御弁38を設けることで、稼働中の風力発電装置1(本例では風力発電装置1A)で発生した余剰風量を、停止中の風力発電装置1(本例では風力発電装置1B及び1C)へ分配することが可能となる。なお、
図19では、各分離装置40に取り付けられる収集装置50の図示が省略されている。
【0086】
それにより、風速が各風力発電装置1の能力以上となった場合でも、稼働中の風力発電装置1(例えば、風力発電装置1A)で集められた風を、例えば集風装置10のメンテナンス等で停止している(すなわち、発電装置60は稼働可能な状態で停止している)風力発電装置1(例えば、風力発電装置1B及び/又は1C)の分離装置40及び発電装置60に分散することが可能となるため、発電停止風速をより増高することが可能となる。なお、分離装置40と発電装置60との接続関係は、上述において
図14~
図16を用いて説明したように、種々変形されてよい。
【0087】
以上のように、発電モータ65へ伝達される回転数を制御する減速機63と、安全風量以上の風が集風装置10に吹き込んだ際に開放される開放弁16とを設けることで、安全運転が可能な風速域の上限を高くすることが可能となる。それにより、従来の回転羽根型の発電機と比較して発電停止風速を増高することができるため、安定した電力供給が可能となる。
【0088】
なお、上述したように、発電ユニット30は、建屋34に収納されてもよい。この建屋34には、強度が高く且つ耐食性の高い素材が使用されるとよい。少なくとも発電装置60におけるタービン61を建屋34内に収納することで、風に飛ばされた物体がタービン61に直接衝突してタービン61が破損することを防止することが可能となる。加えて、風をタービン61へ供給するまでの間に風速や風量などを調整することが可能となるため、発電開始風速の低減や発電停止風速の増高が可能となる。
【0089】
また、建屋34は、防音機能を備えているとよい。タービン61や減速機63や発電モータ65を備える発電装置60を防音性の高い建屋34に収納することで、稼働時に発生する音が環境に与える影響を低減することが可能となる。それにより、本実施形態に係る集風装置10及び風力発電装置1を一般家庭に設置した場合や、本実施形態に係る集風装置10及び風力発電装置1が導入された発電施設が住宅街などに建設された場合でも、周辺環境に与える影響を低減することが可能となる。また、発電装置60だけでなく分離装置40や収集装置50も建屋34に収納することで、稼働時に発生する音が環境に与える影響をさらに低減することが可能である。
【0090】
つづいて、本実施形態に係る集風装置10及び風力発電装置1の発電能力について説明する。まず初めに、風量と風速の関係を説明する。風量は面積と風速とを乗算(風量=面積×風速)することで求められる。したがって、例えば、一般家庭用の小型の風力発電装置1用に設計された集風装置10の風取込口13のサイズが横100cm(センチメートル)且つ高さ50cmであるとすると、風速が100cm/s(センチメートル/秒)の場合、集風装置10で集風される風量は、500000立方cm/sとなる。
【0091】
また、タービン61に風を供給する導風管32の吹出口の口径が半径2cmであるとすると、その開口面積は約12.56平方cmとなる。ここで、風速は風量を面積で除算(風速=風量/面積)することで求められることから、風量500000立方cm/sである場合にタービン61に供給される風の風速は約39.7m/sとなる。これは、タービン61を動かすのに十分な運動エネルギーを獲得できていることを示している。
【0092】
実際には、風が分離装置40や導風管21、31及び32等を通過する際に圧力損失が発生するが、仮に35%の圧力損失が発生したとしても、タービン61に供給される風の風速として約25.8m/sの風速を確保することが可能である。これは、僅か風速100cm/sであっても十分に発電が可能であることを示しており、従来の回転羽根型の風力発電装置では発電を開始できない風速であっても本実施形態に係る風力発電装置1では発電が可能であることを示している。すなわち、本実施形態に係る風力発電装置1によれば、従来の回転羽根型の風力発電装置よりも発電開始風速を低減することが可能である。
【0093】
一方で、例えば、発電所や工場向けて設計された中型又は大型の風力発電装置1の集風装置10の風取込口13のサイズが横30m(メートル)且つ高さ10mであるとすると、風速が1m/sの場合、集風装置10で集風される風量は、300立方m/sとなる。その場合、導風管32の吹出口の口径の半径を約70cmとすると、風速は約195m/sとなる。これは、発電所等に導入される大型のタービン61を動かすのに十分な運動エネルギーを獲得できていることを示している。
【0094】
なお、例えば風速が20m/sの場合では、吹出口から吹き出す風の風速は計算上では音速を超えるが、そのような風速は物理的に不可能であると考えられるので、上述において
図14及び
図19を用いて説明したように、集められた風を停止中の分離装置40及び発電装置60へ分散することが必要となる。それにより、稼働中の風力発電装置1における集風装置10で集められた風エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することが可能となる。
【0095】
さらに、風速が60m/sを超える場合などを想定し、複数の分離装置及び発電装置、さらには蓄電池を設置しておくことで、猛烈な風の時などでも風エネルギーを全て利用することが可能となり、蓄電した電気は電力需要が高い時間帯等に利用することで、発電所の安定稼働にも貢献が可能となる。
【0096】
(風力発電装置1の活用例)
上述のように、本実施形態に係る集風装置10及び風力発電装置1は、一般家庭用としても大規模発電施設用としても利用することが可能である。すなわち、本実施形態に係る集風装置10及び風力発電装置1は、規模を問わず実施することが可能である。
【0097】
また、本実施形態に係る風力発電装置1を複数設置することで、より高い電力を安定して得ることが可能となる。その際、例えば、
図20に例示するように、隣り合う風力発電装置1A及び1Bにおける集風装置10の高さを段違いとなるように変化させることで、大気中の風を多層に分けて集風することが可能となるため、狭い敷地でも高出力の発電システムを構築することが可能となる。
【0098】
さらに、例えば、
図21に例示するように、集風装置10の高さが互いに異なる複数の風力発電装置1A~1Dを六方細密配置となるように配置することで、各層における集風装置10の密集度増高を抑制しつつ風力発電装置1A~1Dの密集度をより高めることが可能となる。それにより、より狭い敷地でも高出力の発電システムを構築することが可能となる。なお、風力発電装置1A~1Dは、集風装置10の高さ位置が互いに段違いとなるように異なっていてよい。
【0099】
以上、本開示の実施形態及びその変形例について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の実施形態又はその変形例そのままに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0100】
また、本明細書に記載された実施形態及びその変形例における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1、1A~1D 風力発電装置
10 集風装置
11 上部材
12 排気穴
13 風取込口
14 格子
15 下部材
16 開放弁
17、17a~17c 仕切り板
18、18a~18c 傾斜板
20 支柱
21、31、31A~31C、32、32A~32C 導風管
22、22a~22c 吸気口
23 管内仕切り板
24、24a~24c 逆止弁
25、25a~25c 導風路
30 発電ユニット
31A~31C 分岐路
33 縮径部
34 建屋
35A~35C、36、38、67、136A~136C、138A~138B 制御弁
37、137 連結管
40、40A~40C 分離装置
41 吹込口
42 分離部
43 上蓋部
44 円筒部
45 ガイド部
46 吹出口
50、50A~50C 収集装置
51 容器
52 排出弁
53 ストッパ
54 回収容器
60 発電装置
61 タービン
62、64 回転軸
63 減速機
65 発電モータ
66 圧電トランスミッタ