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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133800
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】プログラムおよび音響装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 13/54 20140101AFI20240926BHJP
   H04S 7/00 20060101ALI20240926BHJP
   A63F 13/215 20140101ALI20240926BHJP
【FI】
A63F13/54
H04S7/00 300
A63F13/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043767
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 宏史
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA05
5D162DA21
5D162EG02
(57)【要約】
【課題】キャラクタの音声またはユーザの音声である主音声が音声伝達手段を通じて伝達されるシーンのリアリティを向上させる。
【解決手段】仮想空間制御部は、キャラクタが配置された仮想空間を制御する。音響処理部は、仮想空間における音を再生するための音響処理を行う。音響処理部は、仮想空間内においてキャラクタC1の音声またはキャラクタC1を操作するユーザの音声である主音声が音声伝達手段(無線機TR0および無線機TR1)を通じて伝達されるシーンにおいて、主音声とキャラクタC1の周囲の環境音とを含む第1音声を再生するための第1音響処理を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
キャラクタが配置された仮想空間を制御する仮想空間制御部と、
前記仮想空間における音を再生するための音響処理を行う音響処理部として機能させ、
前記音響処理部は、前記仮想空間内において前記キャラクタの音声または前記キャラクタを操作するユーザの音声である主音声が音声伝達手段を通じて伝達されるシーンにおいて、前記主音声と前記キャラクタの周囲の環境音とを含む第1音声を再生するための第1音響処理を行う
プログラム。
【請求項2】
請求項1のプログラムにおいて、
前記音響処理部は、前記仮想空間内において前記キャラクタに対して配置された仮想マイクにより得られる前記キャラクタの周囲の環境音を取得し、その環境音と前記主音声とを含む音声が前記第1音声として再生されるように、前記第1音響処理を行う
プログラム。
【請求項3】
請求項1のプログラムにおいて、
前記音響処理部は、それぞれが前記環境音の素となる複数の素材音を合成することで、前記キャラクタの周囲の環境に応じた環境音を生成し、その環境音と前記主音声とを含む音声が前記第1音声として再生されるように、前記第1音響処理を行う
プログラム。
【請求項4】
請求項1のプログラムにおいて、
前記音響処理部は、前記シーンにおいて、前記第1音響処理と、前記主音声を含むが前記環境音を含まない第2音声を再生するための第2音響処理とを選択的に行う
プログラム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つのプログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムを実行する制御部とを備える
音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラムおよび音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の音源オブジェクトが配置された仮想3次元空間を表現するゲームシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-094160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような仮想空間において、キャラクタの音声またはユーザの音声である主音声が仮想空間内の音声伝達手段(例えばトランシーバや電話など)を通じて伝達されるシーンを設けることが考えられる。しかしながら、特許文献1には、上記のようなシーンについて開示がなく、どのようにして上記のようなシーンのリアリティを向上させるのかについて、開示も示唆もない。
【0005】
本開示の目的は、キャラクタの音声またはユーザの音声である主音声が音声伝達手段を通じて伝達されるシーンのリアリティを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、コンピュータを、
キャラクタが配置された仮想空間を制御する仮想空間制御部と、
前記仮想空間における音を再生するための音響処理を行う音響処理部として機能させ、
前記音響処理部は、前記仮想空間内において前記キャラクタの音声または前記キャラクタを操作するユーザの音声である主音声が音声伝達手段を通じて伝達されるシーンにおいて、前記主音声と前記キャラクタの周囲の環境音とを含む第1音声を再生するための第1音響処理を行う
プログラムである。
【0007】
第1の態様において、
前記音響処理部は、前記仮想空間内において前記キャラクタに対して配置された仮想マイクにより得られる前記キャラクタの周囲の環境音を取得し、その環境音と前記主音声とを含む音声が前記第1音声として再生されるように、前記第1音響処理を行ってもよい。
【0008】
第1の態様において、
前記音響処理部は、それぞれが前記環境音の素となる複数の素材音を合成することで、前記キャラクタの周囲の環境に応じた環境音を生成し、その環境音と前記主音声とを含む音声が前記第1音声として再生されるように、前記第1音響処理を行ってもよい。
【0009】
第1の態様において、
前記音響処理部は、前記第1音響処理と、前記シーンにおいて前記主音声を含むが前記環境音を含まない第2音声を再生するための第2音響処理とを選択的に行ってもよい。
【0010】
第2の態様は、
第1の態様のプログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムを実行する制御部とを備える
音響装置である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、キャラクタの音声またはユーザの音声である主音声が音声伝達手段を通じて伝達されるシーンのリアリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態のゲーム装置の構成を例示するブロック図である。
図2】キャラクタの音声である主音声が音声伝達手段を通じて伝達されるシーンを例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態を詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。また、以下では、プログラムをゲームプログラムとして実装し、音響装置をゲーム装置として実現した例を説明する。
【0014】
(ゲームの説明)
以下の説明におけるゲームは、仮想空間内において行われるゲーム(ビデオゲーム)のことである。仮想空間は、三次元のゲーム空間であり、画像としてディスプレイに表示される。仮想空間内には、オブジェクトが配置される。オブジェクトの例としては、プレイヤ(ユーザ)により操作されるプレイヤキャラクタ、コンピュータにより操作されるノンプレイヤキャラクタなどが挙げられる。
【0015】
また、オブジェクトには、仮想空間内において仮想の音源となる音源オブジェクトが含まれる。音源オブジェクトの例としては、仮想空間内において動作するオブジェクト、仮想空間内において音の出力のみを行うオブジェクトなどが挙げられる。
【0016】
そして、以下の説明におけるゲームでは、音が再生される。ゲームにおいて再生される音には、音源オブジェクトから出力される音、BGM(Background Music)、効果音などが含まれる。音源オブジェクトから出力される音の例としては、足音や風切り音などのオブジェクトの動作に伴う音、鳴き声や台詞などのオブジェクトが発する音などが挙げられる。
【0017】
以下では、説明の便宜上、ゲームの例として「プレイヤキャラクタが敵キャラクタを攻撃して倒していく対戦型のアクションゲーム」を挙げている。敵キャラクタは、ノンプレイヤキャラクタの一例である。プレイヤキャラクタおよび敵キャラクタは、音源オブジェクトの一例である。なお、ゲームの種別などには限定はない。
【0018】
(ゲーム装置)
図1は、実施形態のゲーム装置10の構成を例示する。ゲーム装置10は、ユーザによる操作に応じてゲームを実行する。ゲーム装置10には、ディスプレイ21と、スピーカ22と、コントローラ23とが外部接続または内蔵される。ゲーム装置10は、音響装置の一例である。
【0019】
ゲーム装置10には、例えば、パーソナルコンピュータ、プレイステーション(登録商標)、XBox(登録商標)、PlayStation Vita(登録商標)、Nintendo Switch(登録商標)などの、市販の装置を利用できる。
【0020】
ゲーム装置10では、インストールされたゲームプログラムおよびゲームデータに基づいてゲームが進行する。ゲーム装置10同士は、通信ネットワーク(図示を省略)または近距離無線通信装置(図示を省略)を用いて、互いにデータ通信を行うことができる。
【0021】
〔ゲーム装置のハードウェア構成〕
ゲーム装置10は、ネットワークインターフェース11、グラフィック処理部12、オーディオ処理部13、操作部14、記憶部15、制御部16を備える。ネットワークインターフェース11、グラフィック処理部12、オーディオ処理部13、操作部14、記憶部15は、バス17を介して制御部16と電気的に接続される。
【0022】
ネットワークインターフェース11は、例えば、他のゲーム装置10や外部のサーバ装置(図示を省略)との間で各種データを送受信するために、通信ネットワーク(図示を省略)に通信可能に接続される。
【0023】
グラフィック処理部12は、ディスプレイ21(例えば液晶ディスプレイ)と接続される。グラフィック処理部12は、制御部16から出力されるゲーム画像情報に従って、仮想空間における各種のオブジェクトを含むゲーム画像を、動画形式で描画する。動画形式に描画されたゲーム画像は、ゲーム画面としてディスプレイ21上に表示される。
【0024】
オーディオ処理部13は、スピーカ22と接続される。オーディオ処理部13は、制御部16の指示に従って、デジタルのゲーム音を再生する。具体的には、オーディオ処理部13は、制御部16が出力した音声データをアナログ信号に変換し、スピーカ22に出力する。
【0025】
オーディオ処理部13は、三次元的な音の再生を行うために、多チャンネルの音声出力をできるように構成される。それに合わせて、ゲーム装置10には、複数のスピーカ22が接続される。これらのスピーカ22は、三次元的な音の再生ができるように、聴取者(例えばゲームのプレイヤ)の左右、前後、上方などに配置される場合がある。
【0026】
操作部14は、コントローラ23と接続される。操作部14は、信号をコントローラ23との間で送受信する。ゲームのプレイヤは、コントローラ23のボタンなどの各種操作子を操作することで、ゲーム装置10に信号(命令やデータなど)を入力する。
【0027】
記憶部15は、各種の情報およびデータを記憶する。記憶部15は、HDD、SSD、RAM、ROMなどで構成される。例えば、記憶部15は、ゲームデータ、ゲームプログラムを含む各種のプログラムなどを記憶する。ゲームデータの例としては、ゲーム媒体、ユーザのアカウント情報などが挙げられる。
【0028】
また、記憶部15は、予め準備された各種の音声データを記憶する。各種の音声データには、プレイヤキャラクタや敵キャラクタなどの音源オブジェクトから出力される音を示す音声データ、ゲームにおいて再生される楽曲(BGM)を示す音声データ、効果音を示す音声データなどが含まれる。
【0029】
制御部16は、ゲーム装置10の動作を制御する。制御部16は、各種の情報およびデータを送受信し、各種の情報およびデータを処理する。制御部16は、CPU(マイクロコンピュータ)と半導体メモリと有する。半導体メモリには、CPUを動作させるためのプログラムやデータなどが格納される。
【0030】
〔制御部の機能的構成〕
ゲーム装置10の制御部16は、ゲーム進行部100と音響処理部101とを有する。具体的には、制御部16は、ゲームプログラムを実行することで、ゲーム進行部100、音響処理部101として機能する。
【0031】
〈ゲーム進行部(仮想空間制御部)〉
ゲーム進行部100は、仮想空間内において行われるゲームを進行する。ゲーム進行部100は、キャラクタが配置された仮想空間を制御する仮想空間制御部の一例である。
【0032】
この例では、ゲーム進行部100は、ゲーム装置10を使用するユーザ(すなわちゲームのプレイヤ)の操作に応じて、仮想空間内においてプレイヤキャラクタを動作させることで、ゲームを進行する。また、ゲーム進行部100は、ノンプレイヤキャラクタや所定のオブジェクト(例えば乗り物など)も仮想空間内において動作させる。例えば、ゲーム進行部100は、AI(artificial intelligence)によってノンプレイヤキャラクタや所定のオブジェクトの動作を制御する。そして、ゲーム進行部100は、プレイヤキャラクタやノンプレイヤキャラクタの動作に応じて、ゲームを進行させる。
【0033】
〈音響処理部〉
音響処理部101は、仮想空間における音を再生するための音響処理を行う。この例では、音響処理部101は、音響処理において、ゲームの進行に応じた音声データを生成する。
【0034】
具体的には、音響処理部101は、ゲームの進行に応じて、記憶部15に記憶された音声データ(予め用意された各種の音声データ)の中から再生すべき音声データを選択し、その選択された音声データ(または選択された複数の音声データを合成して得られる新たな音声データ)をオーディオ処理部13に出力する。
【0035】
音響処理部101は、音声データを出力する際に、オーディオ処理部13に、その音量を指示する。オーディオ処理部13は、音響処理部101から出力された音声データを、指示された音量のアナログ信号に変換し、スピーカ22に出力する。これにより、音響処理部101により生成された音声データに応じた音がスピーカ22から再生される。
【0036】
なお、音響処理部101は、音声の再生のために音像定位を行う。音像定位は、人間(ユーザ)が感じる音源の位置を、仮想空間内の所定の仮想位置(例えば音源オブジェクトの位置)に定位させる処理のことである。
【0037】
音像定位を行うために、音響処理部101は、仮想空間内に仮想マイクを設定し、仮想空間内に配置された仮想マイクにより得られた音を含む音声データを生成する。なお、仮想マイクは、仮想の聴取者(集音点)であり、音響処理部101による音像定位の基準点である。仮想マイクは、指向性を有してもよい。この例では、図2に示すように、仮想マイクM0は、プレイヤキャラクタC0の近傍に配置され、プレイヤキャラクタC0の移動に追従して移動する。
【0038】
具体的には、音響処理部101は、音像定位処理(音像定位のための処理)において、スピーカ22から出力される音が仮想マイクにより得られた音を含む音となるように、仮想マイクの集音状況(例えば、仮想空間内における音源オブジェクトに対する仮想マイクの位置および方向、音源オブジェクトから出力される音の音量および方向など)に応じて音声データを生成する。
【0039】
音像定位処理により生成された音声データがオーディオ処理部13において処理されることで、仮想空間内において仮想の音源(音源オブジェクト)から出力された音を、あたかも仮想マイクで集音したかのような音響表現で、スピーカ22から出力することが可能となる。
【0040】
〔音声伝達シーン〕
この実施形態では、仮想空間内におけるシーンの1つとして、キャラクタの音声またはユーザ(キャラクタを操作するユーザ)の音声である主音声が音声伝達手段を通じて伝達されるシーン(以下では「音声伝達シーン」と記載)が設けられる。
【0041】
具体的には、図2に示すように、仮想空間内において進行するゲームのシーンの1つとして、プレイヤキャラクタC0とキャラクタC1とが無線機TR0および無線機TR1を通じて無線通信を行うシーン(以下では「無線通信シーン」と記載)が設けられる。無線通信シーンでは、キャラクタC1の音声が無線機TR0および無線機TR1を通じてプレイヤキャラクタC0に伝達される。このキャラクタC1の音声は、プレイヤキャラクタC0を操作するプレイヤへ向けて音声を出力するスピーカ22を通じて、そのプレイヤに提供される。無線通信シーンは、音声伝達シーンの一例である。
【0042】
図2の例では、キャラクタC1は、プレイヤキャラクタC0ではない他キャラクタであり、例えば、プレイヤキャラクタC0から見えない場所にいる他キャラクタ(プレイヤキャラクタC0を操作するプレイヤへ向けて画像を表示するディスプレイ21に表示されない他キャラクタ)である。他キャラクタは、プレイヤキャラクタC0を操作するプレイヤではない他プレイヤにより操作される他プレイヤキャラクタであってもよいし、ノンプレイヤキャラクタであってもよい。無線機TR0は、プレイヤキャラクタC0により所持(利用)され、無線機TR1は、キャラクタC1により所持(利用)される。
【0043】
また、図2の例では、キャラクタC1の周囲に、複数の敵キャラクタC2が存在する。敵キャラクタC2から発せられる音(例えば足音や台詞など)は、キャラクタC1の周囲の環境音の一例である。キャラクタC1の周囲の環境音の他の例としては、洞窟内の水たまりに天井から落ちてくる水滴の音、洞窟において入口から出口に向かう風の音、通行人の声や付近を通過する自動車の音などの町の雑踏の音、森や草原に吹く風の音、鳥や虫など小動物の鳴き声などが挙げられる。なお、キャラクタC1の周囲の環境音は、キャラクタC1の周囲(具体的にはキャラクタC1の位置を基準とする所定範囲内)に存在する音源オブジェクトから発せられる音の集合である。
【0044】
なお、音声伝達シーンにおいて主音声となる「ユーザの音声」の例としては、ボイスチャットなどの音声入力手段により得られた他ユーザ(他プレイヤキャラクタを操作する他プレイヤ)の音声が挙げられる。
【0045】
〔音声伝達シーンに関する音響処理部の動作〕
次に、音響処理部101の動作(音声伝達シーンに関する動作)について説明する。
【0046】
まず、音響処理部101は、仮想空間内におけるシーンが「音声伝達シーン」であるか否かを判定する。例えば、音響処理部101は、ゲーム進行部100により進行されるゲームの進行状況(仮想空間内の状況の一例)に基づいて、仮想空間内におけるシーンがどのようなシーンであるのかを検出する。
【0047】
仮想空間内におけるシーンが「音声伝達シーン」である場合、音響処理部101は、第1音響処理を行う、第1音響処理は、キャラクタの音声またはユーザ(キャラクタを操作するユーザ)の音声である主音声とキャラクタの周囲の環境音とを含む第1音声を再生するための音響処理である。
【0048】
この例では、音響処理部101は、仮想空間内においてキャラクタに対して配置された仮想マイクにより得られるキャラクタの周囲の環境音を取得し、その環境音と主音声とを含む音声が第1音声として再生されるように、第1音響処理を行う。
【0049】
具体的には、音響処理部101は、主音声を示す主音声データを生成する。例えば、音響処理部101は、ゲームの進行状況に応じたキャラクタC1の音声を示す音声データを記憶部15の中から検出し、その検出された音声データを主音声データとする。または、音響処理部101は、ボイスチャットなどの音声入力手段により得られた「キャラクタC1を操作するユーザの音声を示す音声データ」を取得し、その取得された音声データを主音声データとする。
【0050】
また、音響処理部101は、仮想空間内においてキャラクタC1の近傍に仮想マイクM1(図2参照)を配置し、その仮想マイクM1により得られた「キャラクタC1の周囲の環境音」を示す環境音データを生成する。
【0051】
そして、音響処理部101は、主音声データと環境音データとを合成することで、第1音声を示す第1音声データを生成し、その第1音声データをオーディオ処理部13に出力する。これにより、第1音声がスピーカ22から再生される。
【0052】
〔実施形態の総括〕
以上を纏めると、実施形態のゲームプログラムは、コンピュータ(制御部16)を、キャラクタが配置された仮想空間を制御する仮想空間制御部(ゲーム進行部100)と、仮想空間における音を再生するための音響処理を行う音響処理部101として機能させる。音響処理部101は、仮想空間内においてキャラクタの音声またはキャラクタを操作するユーザの音声である主音声が音声伝達手段を通じて伝達されるシーンにおいて、主音声とキャラクタの周囲の環境音とを含む第1音声を再生するための第1音響処理を行う。
【0053】
実施形態の音響装置(ゲーム装置10)は、上記プログラムを記憶する記憶部15と、上記プログラムを実行する制御部16とを備える。
【0054】
〔実施形態の効果〕
以上のように、実施形態では、音響処理部101は、音声伝達シーンにおいて、キャラクタの音声またはキャラクタを操作するユーザの音声である主音声とキャラクタの周囲の環境音とを含む第1音声を再生するための第1音響処理を行う。このような構成により、「音声伝達手段を通じて主音声(キャラクタの音声またはユーザの音声)だけ聞こえる」という不自然さを低減することができる。これにより、音声伝達シーンのリアリティを向上させることができる。
【0055】
また、音声伝達手段を通じて伝達される主音声が「ボイスチャットなどにより得られたユーザの音声」である場合、主音声に「ユーザの音声」だけでなく「キャラクタの周囲の環境音」も含まれることで、そのユーザにより操作されるキャラクタの置かれている状況(例えば敵キャラクタに囲まれている状況など)を他のユーザ(例えばプレイヤキャラクタC0を操作するプレイヤ)に把握させやすくすることができる。
【0056】
また、実施形態では、音響処理部101は、仮想空間内においてキャラクタに対して配置された仮想マイクにより得られるキャラクタの周囲の環境音を取得し、その環境音と主音声とを含む音声が第1音声として再生されるように、第1音響処理を行う。このような構成により、第1音声に含まれる環境音を「音像定位が行われた環境音」にすることができる。これにより、音声伝達シーンのリアリティをさらに向上させることができる。
【0057】
なお、第1音響処理において、プレイヤキャラクタC0の近傍に配置された仮想マイクM0に基づく音像定位が行われてもよいし、そのような音像定位が行われなくてもよい。例えば、第1音声とともに、プレイヤキャラクタC0の周囲の環境音が再生されてもよいし、そのような環境音が再生されなくてもよい。
【0058】
(実施形態の変形例1)
音響処理部101は、それぞれが環境音の素となる複数の素材音を合成することで、キャラクタの周囲の環境に応じた環境音を生成し、その環境音と主音声とを含む音声が第1音声として再生されるように、第1音響処理を行うものであってもよい。
【0059】
具体的には、実施形態の変形例1の第1音響処理において、音響処理部101は、主音声を示す主音声データを生成する。また、音響処理部101は、それぞれが素材音を示す複数の素材音データの中から「キャラクタC1の周囲の環境状況に応じた素材音データ(1つまたは2つ以上の素材音データ)」を選択し、その選択された素材音データ(またはその選択された2つ以上の素材音データを合成して得られる合成音データ)を、キャラクタC1の周囲の環境音を示す環境音データとする。そして、音響処理部101は、主音声データと環境音データとを合成することで、第1音声を示す第1音声データを生成し、その第1音声データをオーディオ処理部13に出力する。これにより、第1音声がスピーカ22から再生される。
【0060】
なお、「複数の素材音データ」および「キャラクタC1の周囲の環境状況と素材音データとの関係(どの環境状況にどの素材音データが対応しているのか)を示す情報」は、記憶部15に記憶されてもよい。音響処理部101は、記憶部15に記憶された「複数の素材音データ」および「キャラクタC1の周囲の環境状況と素材音データとの関係を示す情報」に基づいて、上記の第1音響処理を行うものであってもよい。
【0061】
以上のように、実施形態の変形例1では、それぞれが環境音の素となる複数の素材音(具体的には複数の素材音データ)を準備しておくことで、キャラクタの周囲の環境に応じた環境音を適切に生成することができる。これにより、第1音声を適切に生成することができる。
【0062】
(実施形態の変形例2)
音響処理部101は、音声伝達シーンにおいて、第1音響処理と、主音声を含むが環境音(キャラクタの周囲の環境音)を含まない第2音声を再生するための第2音響処理とを選択的に行うものであってもよい。
【0063】
具体的には、第2音響処理において、音響処理部101は、主音声(例えばキャラクタC1の音声)を示す主音声データを用いて、主音声を含むがキャラクタC1の周囲の環境音を含まない第2音声を示す第2音声データを生成する。そして、音響処理部101は、その第2音声データをオーディオ処理部13に出力する。これにより、第2音声がスピーカ22から再生される。
【0064】
実施形態の変形例2では、第1音響処理および第2音響処理のいずれか一方が「音声伝達シーンにおいて行われる音響処理」として選択(設定)される。音響処理部101は、音声伝達シーンにおいて、第1音響処理および第2音響処理のうち「音声伝達シーンにおいて行われる音響処理」として選択(設定)された音響処理を行う。例えば、このような選択(設定)は、ユーザにより行われてもよい。
【0065】
以上のように、実施形態の変形例2では、第1音響処理および第2音響処理のいずれか一方が「音声伝達シーンにおいて行われる音響処理」として任意に選択(設定)することができる。例えば、ユーザの嗜好などに応じて上記の選択(設定)を行うことができる。
【0066】
(その他の実施形態)
以上の説明では、音声伝達手段の例として、無線通信を行う無線機(無線機TR0および無線機TR1)を挙げたが、これに限定されない。例えば、音声伝達手段は、仮想空間内に設置された固定電話などの有線通信を行う機器であってもよいし、仮想空間内に設けられた特別な手段(現実世界には存在しない架空の手段)であってもよい。
【0067】
また、以上の説明では、仮想マイクM0がプレイヤキャラクタC0の近傍に配置される場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、仮想マイクM0は、仮想空間内に設けられた仮想カメラ(図示省略)の近傍に配置されてもよい。仮想カメラは、仮想の閲覧者(視点)であり、プレイヤキャラクタC0に追従してプレイヤキャラクタC0を撮影するものであってもよいし、プレイヤキャラクタC0の視点を再現するための基準点であってもよい。仮想マイクM1についても同様である。
【0068】
また、以上の説明において、音声データは、必ずしも予め用意しておく必要はない。何らかのデータないしは情報を基に、その都度、音声データを合成したり生成したりしてもよい。
【0069】
また、以上の説明において、ゲームプログラムは、いわゆるオンラインゲーム用のゲームプログラムとして実装されてもよい。この場合、ゲーム装置10の制御部16において行われる処理は、サーバ装置の制御部(図示省略)において行われてもよいし、ゲーム装置10とサーバ装置の制御部とで分担されてもよい。ゲーム装置10は、スマートフォンやタブレットなどの携帯情報端末であってもよい。
【0070】
また、以上の説明において、ボイスチャットなどの音声入力手段(ユーザの音声を入力する手段)は、ゲームプログラムとは異なる別のプログラムの実行により実現されてもよい。
【0071】
また、以上の説明では、仮想空間の例として、ゲームが進行する仮想空間(ゲーム空間)を挙げたが、これに限定されない。例えば、仮想空間は、アバター同士がコミュニケーションをとる仮想空間(メタバース空間)であってもよい。
【0072】
これらの他の実施形態を採用した場合においても、本発明の作用効果は発揮される。また、本実施形態と他の実施形態、および他の実施形態同士を適宜組み合わせることも可能である。以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0073】
10 ゲーム装置(音響装置)
11 ネットワークインターフェース
12 グラフィック処理部
13 オーディオ処理部
14 操作部
15 記憶部
16 制御部
17 バス
21 ディスプレイ
22 スピーカ
23 コントローラ
100 ゲーム進行部(仮想空間制御部)
101 音響処理部
図1
図2