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  • 特開-熱交換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133802
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
   F24V 30/00 20180101AFI20240926BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240926BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20240926BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20240926BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20240926BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20240926BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20240926BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20240926BHJP
   B01D 71/82 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F24V30/00
B01D53/22
B01D71/38
B01D71/40
B01D71/48
B01D71/52
B01D71/68
B01D71/70 500
B01D71/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043770
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】522411717
【氏名又は名称】株式会社双日イノベーション・テクノロジー研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100158850
【弁理士】
【氏名又は名称】明坂 正博
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慶
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006HA41
4D006JA53Z
4D006JA66Z
4D006KE06P
4D006KE06Q
4D006KE06R
4D006KE12P
4D006KE16P
4D006KE30P
4D006MA01
4D006MA03
4D006MA06
4D006MC22
4D006MC24
4D006MC33
4D006MC37
4D006MC45
4D006MC48
4D006MC50
4D006MC57
4D006MC63
4D006MC65
4D006MC71
4D006MC81
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB64
4D006PB65
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の回収が可能な熱交換装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る熱交換装置は、気体に含まれる二酸化炭素を選択的に透過させる分離膜と、前記分離膜を介して第1空間の気体を第2空間へ排出するポンプと、を備え、前記ポンプは、前記気体を前記第1空間から吸引し、吸引した前記気体を加圧して前記第2空間へ排出することにより前記第1空間の熱エネルギーを前記第2空間へ移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれる二酸化炭素を選択的に透過させる分離膜と、
前記分離膜を介して第1空間の気体を第2空間へ排出するポンプと、を備え、
前記ポンプは、
前記気体を前記第1空間から吸引し、吸引した前記気体を加圧して前記第2空間へ排出することにより前記第1空間の熱エネルギーを前記第2空間へ移動させる、
ことを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
前記気体には水蒸気が含まれ、
前記分離膜は、
前記気体に含まれる前記水蒸気を選択的に透過させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記分離膜と前記ポンプとを連通する導管を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記導管内の圧力が飽和蒸気圧未満となるように前記ポンプの排出能力を制御する制御部を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記分離膜は、
ポリジメチルシロキサン、
ポリエーテルスルフォン、
ポリエチレンオキサイド、
ポリブチレンテレフタラート、
ポリメタクリル酸メチル、
ポリビニルアルコール、又は、
主鎖にエーテル基を有する繰り返し単位、主鎖にアミド基を有する繰り返し単位、主鎖にイミド基を有する繰り返し単位、及び、主鎖にスルホニル基を有する繰り返し単位、からなる群から選択される特定繰り返し単位の1種以上を有する特定高分子、
を含む高分子膜である、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記ポンプと前記第2空間との間で熱エネルギーを交換するための熱交換器を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりからヒートポンプに注目が集まっている(例えば、特許文献1参照)。ヒートポンプは、大気など周囲の熱を取り込んで別の場所へ移動させて放出することができるため、省エネや二酸化炭素(以下、CO2とも記載する)の削減効果が期待される。つまり、ヒートポンプは、投入するエネルギー以上の熱エネルギーを得ることが可能であるため、石油やガスなどを燃焼させる場合と比較して省エネ及び省CO2となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-119728
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環境問題への対応から二酸化炭素ガスなどの温室効果ガスへの配慮が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素の回収が可能な熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る熱交換装置は、気体に含まれる二酸化炭素を選択的に透過させる分離膜と、前記分離膜を介して第1空間の気体を第2空間へ排出するポンプと、を備え、前記ポンプは、前記気体を前記第1空間から吸引し、吸引した前記気体を加圧して前記第2空間へ排出することにより前記第1空間の熱エネルギーを前記第2空間へ移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二酸化炭素の回収が可能な熱交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る熱交換装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】実施形態の変形例に係る熱交換装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
[実施形態]
図1に示すように、実施形態に係る熱交換装置は、分離膜モジュール1と、分離膜モジュール1を介して第1空間S1の気体を第2空間S2へ排出する真空ポンプ3aと、分離膜モジュール1と真空ポンプ3aとを連通する導管4と、導管4内の温度[K]を計測する温度計2aと、導管4内の水蒸気の圧力(分圧)[Pa]を計測する圧力計2bと、導管4内の圧力が飽和蒸気圧未満となるように真空ポンプ3aの排出能力を制御する制御装置5(制御部)と、真空ポンプ3aと第2空間S2との間で熱エネルギーを交換(熱交換)するための熱交換器3bを備える。
【0011】
上記分離膜モジュール1は、少なくとも分離膜を備える部品(モジュール)である。分離膜モジュール1がユニット化されていて、実施形態に係る熱交換装置から、分離膜モジュール1(ユニット)を容易に着脱又は交換できるように構成されていてもよい。このようにして熱交換装置における分離膜を必要に応じて容易に着脱又は交換できるような構成をとることも好ましい。
分離膜モジュール1は、第1空間S1内に配置され、分離膜を備え、第1空間S1の気体に含まれる二酸化炭素(以下、CO2ともいう)を選択的に透過させる。ここで「選択的」とは、CO2「のみ」だけでなくCO2を少しでも多く含むように透過させることである。つまり分離膜を透過した後の第2空間S2中の気体に含まれるCO2の濃度が、分離膜を透過する前の第1空間S1中の気体に含まれるCO2の濃度よりも高ければよい。 例えば、分離膜は、常温(例えば25℃)で分離膜両面における圧力差を0.1~1気圧とした場合において、二酸化炭素の気体透過率(体積基準)が、少なくとも窒素よりも高くなることが好ましい。なお、分離膜モジュール1を介して第1空間S1内の気体を第2空間S2へ排出することができれば、分離膜モジュール1は、必ずしも第1空間S1内に配置する必要はない。
【0012】
また、第1空間S1内の気体には水蒸気が含まれており、分離膜モジュール1は、第1空間S1の気体に含まれる水蒸気を選択的に透過させる。ここで「選択的」とは、水蒸気「のみ」だけでなく水蒸気を少しでも多く含むように透過させることである。つまり分離膜を透過した後の第2空間S2中の気体に含まれる水蒸気の濃度が、分離膜を透過する前の第1空間S1中の気体に含まれる水蒸気の濃度よりも高ければよい。
例えば、分離膜は、常温(例えば25℃)で分離膜両面における圧力差を0.1~1気圧とした場合において、水蒸気の気体透過率(体積基準)が、少なくとも窒素よりも高くなることが好ましい。
【0013】
分離膜は高分子膜が好ましい。
高分子膜に含まれるポリマーとしては、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、若しくはポリジフェニルシロキサンのようなポリオルガノシロキサン等)、ポリエーテルスルフォン、ポリアルキレングリコール(ポリエチレンオキサイド若しくはポリプロピレンオキサイド等)、ポリアルキレンテレフタレート(ポリブチレンテレフタラート若しくはポリエチレンテレフタレート等)、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル若しくはポリアクリル酸メチル等)、ポリビニルアルコール、ポリベンゾオキサゾール、エポキシ樹脂、スチレン系重合体(構成単位にスチレンを含む単独又は共重合体。水素添加されていてもよい。)、環状オレフィン系共重合体、又は後述する特定高分子が好ましく、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルフォン、ポリエチレンオキサイド、ポリブチレンテレフタラート、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、又は、後述する特定高分子がより好ましい。
これらのポリマーを含む高分子膜を使用することで、気体の透過速度、選択透過性、及び耐久性がバランスの良く優れる分離膜を得られる。
特定高分子とは、主鎖にエーテル基を有する繰り返し単位、主鎖にアミド基を有する繰り返し単位、主鎖にイミド基(好ましくは環状イミド基)を有する繰り返し単位、及び、主鎖にスルホニル基を有する繰り返し単位、からなる群から選択される特定繰り返し単位の1種以上を有するポリマーである。
特定高分子は、上述のポリマーのうちの特定高分子以外のポリマーとは異なるポリマーであることが好ましい。例えば、特定高分子は、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンオキサイド若しくはポリプロピレンオキサイド等)とは異なるポリマーであることが好ましい。
特定高分子中の特定繰り返し単位の含有量は、特定高分子の全質量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、98~100質量%がさらに好ましい。
特定高分子が、特定繰り返し単位を2種以上有する共重合体(特定繰り返し単位を2種以上有する共重合体等)である場合、交互共重合体でも、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でもよい。例えば、共重合体である特定子分子としては、ポリエーテルブロックアミド共重合体が挙げられる。
高分子膜に含まれるポリマー(好ましくは上述のポリマー)は、一種単独(95質量%以上が一種のポリマーであるなど実質的に一種単独である場合でもよい。)であってもよく、二種以上であってもよい。
高分子膜である分離膜は、ポリマー単独(例えば95質量%以上がポリマーであるなど実質的にポリマー単独である場合でもよい。)であってもよく、その他の成分を含んでいてもよい。
分離膜は、分離膜単独で存在していてもよいし、他の膜とともに積層体を形成していてもよい。例えば分離膜は、支持膜上に備えられていてもよい。すなわち、分離膜は、分離膜と支持膜とを備える積層体に含まれていてもよく、分離膜モジュール1は上記積層体を備える部品であってもよい。
支持膜としては、例えば、メッシュ、不織布、多孔質膜(スポンジ状の空孔を内包する膜)、及び面内に多数の貫通孔等が存在する多孔質膜が挙げられる。
分離膜と支持膜とを有する積層体とすることで、分離膜を単独で取り扱うよりも、加工性やハンドリング性を改善し得る。
分離膜モジュール1における分離膜又は上記積層体の形状としては、例えば、シート状及び中空糸状が挙げられる。
【0014】
真空ポンプ3aは、第2空間S2内に配置される。真空ポンプ3aは、第1空間S1から気体を吸引して第2空間S2へ排出するだけでなく、第1空間S1から吸引した気体を加圧して第2空間S2へ排出することにより第1空間S1の熱エネルギーを第2空間S2へ移動させるヒートポンプの機能を有する。なお、分離膜モジュール1と同様、第1空間S1内の気体を第2空間S2へ排出することができれば、真空ポンプ3aは、必ずしも第2空間S2内に配置する必要はない。
【0015】
制御装置5は、温度計2a及び圧力計2bから出力される計測値に基づいて、導管4内の圧力が飽和蒸気圧未満となるように真空ポンプ3aの排出能力を制御する。
導管4内の圧力が飽和蒸気圧以上になると水蒸気が水となるため水蒸気の潜熱を利用することができなくなる。このため、導管4内の気体はできるだけ水蒸気が凝縮しない状態で第2空間S2に排出されるのが好ましく、上記のように導管4内の圧力が飽和蒸気圧未満となるように真空ポンプ3aの排気能力を制御することが好ましい。
【0016】
なお、制御装置5は、圧力計2bから出力される計測値[Pa](導管4内の圧力)が、温度計2aから出力される計測値[K]もとに、蒸気圧曲線を参照して求められる飽和蒸気圧の値未満となるように真空ポンプ3aの排出能力を制御する。
【0017】
なお、真空ポンプ3aに吸気された気体は分離膜モジュール1の透過前後で圧力が急激に変化する(圧力が急激に下がる)ため導管4の気体は膨張冷却され低温になる。このため、第2空間S2へ流入する前に導管4内の気体をできる限り第1空間S1内の気体と熱交換を行うことで第1空間S1の温度に近づけることが好ましい。
一方、あえて導管4を冷やすことで、その分水蒸気を排気せずドレインとして排出できるので、必要な圧縮仕事は減り、分離膜によるCO2分離の効率は向上することが期待できる。ただし水蒸気の潜熱は失うため、温度を上げてから熱交換して高温を回収し、水として回収してもよい。
なお、ユーザーが希望する熱の取り出し方(真空ポンプ3aより排出される混合ガスより直接温度と湿度を得るのか、または熱交換器3bを通じて第2空間S2の気体や温水に伝達させるのか)に応じて、熱交換器3bや真空ポンプ3aの排気能力などを制御することが好ましい。
【0018】
[作用・効果]
上記実施形態に係る熱交換装置の作用・効果ついてより詳しく説明する。
真空ポンプ3aを作動させると、分離膜モジュール1と真空ポンプ3aで仕切られた導管4内の気体は第2空間S2へ排出されて導管4内は第1空間S1内の圧力(圧力P1ともいう)よりも低い圧力に減圧される(減圧後の導管内の圧力をP2ともいう)。
すると、P1>P2であるため第1空間S1の空気が分離膜モジュール1から吸気され、分離膜モジュール1により水蒸気とCO2が選択的に透過された気体G1が圧力P2の状態で導管4内を通り、真空ポンプ3aによって加圧されて大気圧の状態で第2空間S2へ排出される。
気体G1は第1空間S1内の空気よりも多くの水蒸気とCO2を含み、更に真空ポンプ3aによって加圧される際に加熱がされる。従って、気体G1の持つ熱エネルギーは、回収した水蒸気が持つ潜熱(水に戻した場合)と、加圧圧縮で得た熱と、導管4を通る際に(第1空間S1の)外気より熱交換で得た若干の熱を含む。結果、第2空間S2は、第1空間S1から熱と湿気とCO2を同時に得ることができる。特に、水の潜熱は非常に大きいため、気体G1内の水蒸気によって得る熱エネルギーの量は大きく、水蒸気は実質的にヒートポンプの熱媒体に相当する効果を発揮する。
【0019】
また、真空ポンプ3aを作動するために用いた全ての電力エネルギーは、第1空間S1の外気から熱エネルギー、水分およびCO2を回収するために必要とした仕事と、電力(そのもの)によって発生する熱エネルギー(この際、真空ポンプ3aの摩擦熱や圧縮仕事による発熱の一部は熱交換器3bを通して第2空間S2の空気に伝達される)と、音波に変換される。従って、廃棄されるエネルギー(利用されず無駄となるエネルギー)が少ないという効果がある。
【0020】
このように本実施形態に係る熱交換装置は、大気中の空気から熱を回収して供給することができるので屋内の加温や給湯用途として利用することができる。また、本実施形態に係る熱交換装置は、熱に加えて二酸化炭素濃度の高いガスを供給するため二酸化炭素富化と加温機能によって植物の成長を促進させることができる。このため、農業、特にビニルハウスにおける植物の育成に好適である。
【0021】
[実施形態の変形例]
図2は、実施形態の変形例に係る熱交換装置である。以下、図2を参照して実施形態の変形例に係る熱交換装置について説明するが、図1を参照して説明した構成と同じ構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
実施形態に係る熱交換装置は、導管4内の温度[K]と導管4内の水蒸気の圧力(分圧)[Pa]を計測し、導管4内の圧力が飽和蒸気圧未満となるように真空ポンプ3aの排出能力を制御していたが、図2に示すように、第1空間S1内に、第1空間S1内のCO2濃度[体積ppm]を計測するCO2濃度計6a、第1空間S1内の温度[K]を計測する温度計6b、第1空間S1内の相対湿度[%]を計測する湿度計6cを備え、制御装置5は、CO2濃度計6a、温度計6b及び湿度計6cから出力される計測値に基づいて、導管4内の圧力が飽和蒸気圧未満となるように真空ポンプ3aの排出能力を制御する構成としてもよい。
【0023】
この場合、制御装置5は、第1空間S1に含まれる水蒸気、CO2、その他の成分のそれぞれの分離膜モジュール1が備える高分子膜の透過率の値(予め設定しておく)と、CO2濃度計6aから出力されるCO2濃度(外気の場合は通常は400体積ppm)と、湿度計6cから出力される湿度とに基づいて、任意の圧力Pにおける水蒸気、CO2、その他の各成分のフラックス(流速)を算出する。
次いで、制御装置5は、水蒸気の分圧が飽和水蒸気圧(温度計6bと飽和水蒸気圧曲線データ(予め設定しておく)を参照して算出する)未満となるように真空ポンプ3aの排出能力を制御する。このように構成しても、水蒸気が凝縮しない状態で第2空間S2に排出させることができる。
【0024】
[その他の変形例]
なお、上記実施形態及び変形例に示す熱交換装置は、第2空間S2の目標湿度に応じて、真空ポンプ3aが行う圧縮過程における断熱度(真空ポンプ3aのタイプ(排気能力)を変更したり、複数の真空ポンプ3aを(直列に接続して)多段にするか、熱交換の制御等)を、目標とする圧力―温度曲線に合わせて設計・制御するのが好ましい。
例えば、完全な断熱圧縮過程にすれば、真空ポンプ3aの気体G1は加圧によって急激に温度上昇し、常に飽和水蒸気圧を下回る圧力が維持されたまま水蒸気のまま全ての熱を取り出すことが可能となる。
一方、気体G1の温度が数百度と非常に高温になるため扱いづらく、圧縮仕事自体に必要な電力も増大する。逆に、例えば水封式ポンプを用いてなるべく等温過程すると電力は抑えられるが、第2空間S2の温度における飽和水蒸気量を超えた水蒸気は圧縮過程で全て水として凝縮されるため潜熱は第2空間S2の室温(温度RT(room temperature))の大量の水として失われる。
【0025】
従って、等温と圧縮仕事の間の各用途に好適な圧力―温度曲線に合わせて圧縮仕事を制御するのが好ましく、その場合、温度RTより高い温度のお湯と、温度RTより高い温度の水蒸気を含んだ気体G1を得る。得たお湯は、例えば、床暖房等に利用してもよいし、更に熱交換して使っても良い。
【0026】
また、よりドライで温かい空気のみを得たければ、気体G1を水蒸気吸着材に通しても良い。またCO2を混合気体として利用するのでなく、純度をより高めた状態で別途使いたければ、気体G1を再びCO2分離膜に通すか吸着剤を用いて回収して取り除いても良い。また、気体G1は暖房としてではなく、蓄熱としてさらに熱回収して貯めて置き、例えば夜間の暖房に使う等しても良いし、回収したCO2の熱化学変換に必要な反応熱に再利用してもよい。
【0027】
また、上記熱交換装置では、真空ポンプ3aを備えているが、真空ポンプ3aに替えて圧縮ポンプを利用してもよい。また、分離膜モジュール1及び真空ポンプ3aの位置は、図1に示す位置に限られない。この場合、第1空間S1と分離膜モジュール1とが導管等により接続されていればよく、また、真空ポンプ3aの排出口と第2空間S2とが導管等により接続されていればよい。また、第1空間S1又は第2空間S2は必ずしも閉じた閉鎖空間(閉鎖空間は、密閉されている必要はない)である必要はなく、閉じた空間でない開放空間であってもよい。
【0028】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、実施形態の各構成を各々組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 :分離膜モジュール
2a :温度計
2b :圧力計
3a :真空ポンプ
3b :熱交換器
4 :導管
5 :制御装置
6a :CO2濃度計
6b :温度計
6c :湿度計
S1 :第1空間
S2 :第2空間
図1
図2