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特開2024-133808フィルム、偏光シート、および、熱曲げ成形体
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  • 特開-フィルム、偏光シート、および、熱曲げ成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133808
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】フィルム、偏光シート、および、熱曲げ成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240926BHJP
   B29C 53/04 20060101ALI20240926BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240926BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20240926BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C53/04
C08L69/00
C08K5/3492
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043777
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小坂 恵夢
【テーマコード(参考)】
2H149
4F071
4F209
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA23
2H149AB01
2H149AB23
2H149AB24
2H149AB26
2H149BA02
2H149FA13Z
2H149FA54Z
2H149FD09
2H149FD47
4F071AA50
4F071AC12
4F071AC19
4F071AE05
4F071AF30Y
4F071BA09
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F209AA28A
4F209AB06A
4F209AG01
4F209AH73
4F209NA01
4F209NB01
4F209NG02
4F209NG05
4F209NH06
4F209NK07
4J002CG011
4J002EJ066
4J002EU186
4J002FD056
4J002GP00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】 薄いフィルムであって、波長400nm以下の光線透過率が低く、波長420nm以上の光線透過率が高く、かつ、製造時にロール汚れが発生しにくいフィルム、ならびに、偏光シート、および、熱曲げ成形体の提供。
【解決手段】 ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、トリアジン構造を有する紫外線吸収剤を0.3~2.9質量部含むフィルムであって、フィルムの厚みが200~600μmであり、フィルムの波長250~400nmにおける平均光線透過率が3%以下であり、フィルムの波長420nmにおける光線透過率が30%以上である、フィルム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、
トリアジン構造を有する紫外線吸収剤を0.3~2.9質量部含むフィルムであって、
前記フィルムの厚みが200~600μmであり、
前記フィルムの波長250~400nmにおける平均光線透過率が3%以下であり、
前記フィルムの波長420nmにおける光線透過率が30%以上である、
フィルム。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤が、式(UV-1)で表される化合物を含む、請求項1に記載のフィルム。
【化1】
(式(UV-1)中、
は、炭素数1~10の炭化水素基、または、
炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、
~Rは、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10の炭化水素基、または、
炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、
n2は、0~3の整数であり、
n3、および、n4は、それぞれ独立に、0~4の整数である。)
【請求項3】
前記n3およびn4が、それぞれ独立に1~4の整数である、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤が、式(UV-2)で表される化合物を含む、請求項1に記載のフィルム。
【化2】
(式(UV-2)中、
11およびR31、R41は、それぞれ独立に、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基であり、
、R32、および、R42は、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10の炭化水素基、または、
炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、
n2、n3-1、および、n4-1は、それぞれ独立に、0~3の整数である。)
【請求項5】
前記紫外線吸収剤が、式(UV-3)で表される化合物を含む、請求項1に記載のフィルム。
【化3】
(式(UV-3)中、R11およびR31、R41は、それぞれ独立に、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基である。)
【請求項6】
前記フィルムの波長400nmにおける光線透過率が3%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルムの波長420nmにおける光線透過率とフィルムの波長400nmにおける光線透過率の差が35%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルムと偏光膜を有する偏光シート。
【請求項9】
請求項8に記載の偏光シートの熱曲げ成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、偏光シート、および、熱曲げ成形体に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主要成分とするフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAのような芳香族ジオールとホスゲンのようなカーボネート前駆体が縮重合して製造され、優れた衝撃強度、数値安定性、耐熱性および透明度などを有し、電機電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品など広範囲な分野に適用される。
【0003】
一方、サングラスなどに用いられる光学用レンズの場合、視野に影響を与えないながらも外部光源に対する眩しさが発生しないほどの透過率が求められる。また、紫外線のような特定波長の有害な光線から目を保護する必要がある。そこで、機械的物性の他にも光学的特性に優れたポリカーボネート樹脂を用いてサングラスなどの野外活動用の光学用レンズに用いる技術が多様に開発されている(特許文献1、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-202542号公報
【特許文献2】国際公開第2019/066493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、サングラス用のレンズに用いられるポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤を配合することは検討されてきた。
しかしながら、サングラスに視力矯正機能を持たせようとすると、レンズの厚みが眼鏡の度数に応じて異なる。そのため、紫外線吸収剤をレンズ以外の層に配合することが求められる。ここで、サングラスや眼鏡は、例えば、図1に示すような層構成をしており、具体的には、レンズ1と偏光膜2を有し、通常は、偏光膜2の両面に偏光膜基材3・4が設けられている。ここで、レンズ1に紫外線吸収剤を配合しない場合、偏光膜基材3または偏光膜基材4に紫外線吸収剤を配合することが考えられる。
しかしながら、偏光膜基材は、厚みが200~600μm程度と薄い必要があり、さらに、波長400nm以下の光を遮蔽し、波長420nm以上の光を透過させる必要がある。また、本発明者が検討を行ったところ、厚みが200~600μm程度と薄いフィルムに紫外線吸収剤を配合すると、紫外線吸収剤が揮発して、フィルムを成形する際のロールに汚れが発生してしまう場合があることが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、薄いフィルムであって、波長400nm以下の光線透過率が低く、波長420nm以上の光線透過率が高く、かつ、製造時にロール汚れが発生しにくいフィルム、ならびに、偏光シート、および、熱曲げ成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、所定の紫外線吸収剤を所定の割合で用いて、光線透過率を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、
トリアジン構造を有する紫外線吸収剤を0.3~2.9質量部含むフィルムであって、
前記フィルムの厚みが200~600μmであり、
前記フィルムの波長250~400nmにおける平均光線透過率が3%以下であり、
前記フィルムの波長420nmにおける光線透過率が30%以上である、
フィルム。
<2>前記紫外線吸収剤が、式(UV-1)で表される化合物を含む、<1>に記載のフィルム。
【化1】
(式(UV-1)中、
は、炭素数1~10の炭化水素基、または、
炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、
~Rは、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10の炭化水素基、または、
炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、
n2は、0~3の整数であり、
n3、および、n4は、それぞれ独立に、0~4の整数である。)
<3>前記n3およびn4が、それぞれ独立に1~4の整数である、<2>に記載のフィルム。
<4>前記紫外線吸収剤が、式(UV-2)で表される化合物を含む、<1>に記載のフィルム。
【化2】
(式(UV-2)中、
11およびR31、R41は、それぞれ独立に、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基であり、
、R32、および、R42は、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10の炭化水素基、または、
炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、
n2、n3-1、および、n4-1は、それぞれ独立に、0~3の整数である。)
<5>前記紫外線吸収剤が、式(UV-3)で表される化合物を含む、<1>に記載のフィルム。
【化3】
(式(UV-3)中、R11およびR31、R41は、それぞれ独立に、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基である。)
<6>前記フィルムの波長400nmにおける光線透過率が3%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のフィルム。
<7>前記フィルムの波長420nmにおける光線透過率とフィルムの波長400nmにおける光線透過率の差が35%以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のフィルム。
<8><1>~<7>のいずれか1つに記載のフィルムと偏光膜を有する偏光シート。
<9><8>に記載の偏光シートの熱曲げ成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、薄いフィルムであって、波長400nm以下の光線透過率が低く、波長420nm以上の光線透過率が高く、かつ、製造時にロール汚れが発生しにくいフィルム、ならびに、偏光シート、および、熱曲げ成形体を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の熱曲げ成形体の層構成の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
【0010】
本明細書において、重量平均分子量は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定する。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフィー装置には、LC-20AD system(島津製作所社製)を用い、カラムとして、LF-804(Shodex社製)を接続して用いた。カラム温度は40℃とする。検出器はRID-10A(島津製作所社製)のRI検出器を用いる。溶離液として、クロロホルムを用い、検量線は、東ソー社製の標準ポリスチレンを使用して作成する。
【0011】
本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、特に述べない限り、示差走査熱量測定(DSC)に従い、ISO11357に準拠して、測定した値とする。示差走査熱量測定(DSC測定)条件のとおりに、昇温、降温を2サイクル行い、2サイクル目の昇温時のガラス転移温度を測定する。
低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点をガラス転移温度とTgとする。測定開始温度:30℃、昇温速度:10℃/分、到達温度:250℃、降温速度:20℃/分とする。単位は、℃とする。
測定装置は、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、「DSC7020」)を使用することができる。
【0012】
本明細書における「フィルム」および「シート」とは、それぞれ、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形体をいう。また、本明細書における「フィルム」および「シート」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2023年1月1日時点における規格に基づくものとする。
図1は、縮尺度などは実際と整合していないこともある。
【0013】
本実施形態のフィルムは、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、トリアジン構造を有する紫外線吸収剤を0.3~2.9質量部含むフィルムであって、前記フィルムの厚みが200~600μmであり、前記フィルムの波長250~400nmにおける平均光線透過率が3%以下であり、前記フィルムの波長420nmにおける光線透過率が30%以上であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、薄いフィルムであって、波長400nm以下の光線透過率が低く、波長420nm以上の光線透過率が高く、かつ、製造時にロール汚れが発生しにくいフィルムを提供可能になる。さらに、波長400nmの光線透過率を効果的に低くし、かつ、波長420nmの光線透過率を効果的に高くできる。すなわち、波長400~420nmの間での光線透過率の変化を大きくできる。
本実施形態においては、紫外線吸収剤としてトリアジン構造を有する紫外線吸収剤(以下、「トリアジン系紫外線吸収剤」ということがある)を用いることにより、フィルムの厚みを薄くしても、波長250~400nmにおける平均光線透過率が3%以下であり、かつ、フィルムの波長420nmにおける光線透過率が30%以上とすることができる。さらには、波長400~420nmの間での光線透過率の変化を大きくできる。
また、トリアジン系紫外線吸収剤を用いることにより、紫外線吸収剤が揮発しにくくなり、フィルム製造時のロール汚れを効果的に抑制できる。この理由は、トリアジン系紫外線吸収剤がポリカーボネート樹脂との相溶性が高いことが理由であると推測される。
以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0014】
<ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を含む。本実施形態におけるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂とは、ポリカーボネート樹脂を構成する構成単位の80質量%以上が式(A)で表される構成単位である樹脂である。本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂における式(A)で表される構成単位の割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが一層好ましい。本実施形態で用いるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂における式(A)で表される構成単位の割合は末端基を除く100質量%であってもよい。
式(A)
【化4】
上記式(A)において、nは任意の数である。
【0015】
本実施形態におけるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を構成するビスフェノールA以外のジオール成分としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、およびa,ω-ビス[3-(ο-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが例示される。
【0016】
本実施形態におけるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の分子量は、特に定めるものではないが、重量平均分子量で、20,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましい。また、前記重量平均分子量は、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下である。前記重量平均分子量を下限値以上とすることにより、得られる熱曲げ加工用多層体の強度を高くすることができる。また、前記重量平均分子量を上記上限値以下とすることにより、成形加工性が向上する傾向にある。
なお、本実施形態においては、重量平均分子量の異なる2種以上の本実施形態におけるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、混合物の重量平均分子量とする。
【0017】
本実施形態で用いる本実施形態におけるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、160℃以下であることが好ましく、155℃以下であることがより好ましく、154℃以下であることがさらに好ましく、153℃以下であることが一層好ましく、152℃以下であることがより一層好ましく、151℃以下であることがさらに一層好ましい。また、本実施形態で用いる本実施形態におけるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、140℃以上であり、さらには、143℃以上、145℃以上、147℃以上、148℃以上であってもよい。
本実施形態における樹脂組成物が、2種以上のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を含む場合、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、各ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度に質量分率をかけた値の和とする。
【0018】
その他、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の詳細は、本実施形態の趣旨を逸脱しない限り、特開2012-144604号公報の段落0011~0020の記載、特開2019-002023号公報の段落0014~0035の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0019】
本実施形態のフィルムにおけるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の含有量は、フィルム100質量%中、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、97質量%以上であることが一層好ましく、98質量%以上であることがさらに一層好ましい。また、本実施形態のフィルムにおけるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の含有量は、フィルム100質量%中、トリアジン系紫外線吸収剤以外の成分がすべてビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂となる量であることが好ましい。
本実施形態のフィルムがビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0020】
<トリアジン系紫外線吸収剤>
本実施形態のフィルムは、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、トリアジン構造を有する紫外線吸収剤(トリアジン系紫外線吸収剤)を0.3~2.9質量部含む。このような構成とすることにより、フィルムの厚みを薄くしても、波長250~400nmにおける平均光線透過率を低く、フィルムの波長420nmにおける光線透過率を高くすることができる。さらには、波長400~420nmの間での光線透過率の変化を大きくできる。また、フィルムを製造する際のロール汚れも効果的に抑制できる。
【0021】
本実施形態で用いるトリアジン系紫外線吸収剤は、トリアジン構造を含む紫外線吸収剤である限り、その種類等特に定めるものではないが、式(UV-1)で表される化合物を含むことが好ましく、式(UV-2)で表される化合物を含むことがより好ましく、式(UV-3)で表される化合物を含むことが一層好ましい。
【化5】
(式(UV-1)中、Rは、炭素数1~10の炭化水素基、または、炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、R~Rは、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10の炭化水素基、または、炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、n2は、0~3の整数であり、n3、および、n4は、それぞれ独立に、0~4の整数である。)
【0022】
は、炭素数1~10の炭化水素基、または、炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、または、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であることがより好ましく、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましく、炭素数3~10の直鎖脂肪族炭化水素基であることが一層好ましく、炭素数3~10の直鎖アルキル基であることがより一層好ましい。
としての炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくはアルキル基)の炭素数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、5以上であることが一層好ましく、また、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。
【0023】
~Rは、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10の炭化水素基、または、炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、R~Rの少なくとも1つは水酸基であり、R~Rの他の少なくとも1つは、炭素数1~10の炭化水素基、または、炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であることが好ましい。
~Rとしての炭素数1~10の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、直鎖脂肪族炭化水素基(好ましくは直鎖アルキル基)またはフェニル基であることが好ましい。
~Rとしての炭素数1~10の炭化水素基の炭素数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、5以上であることが一層好ましく、また、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。
【0024】
n2は、0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
n3、および、n4は、それぞれ独立に、0~4の整数であり、1以上の整数であることが好ましく、2以上の整数であることがより好ましく、3以上の整数であることがさらに好ましく、また、4以下の整数であることが好ましい。
【0025】
【化6】
(式(UV-2)中、R11およびR31、R41は、それぞれ独立に、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基であり、R、R32、および、R42は、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10の炭化水素基、または、炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基であり、n2、n3-1、および、n4-1は、それぞれ独立に、0~3の整数である。)
【0026】
11、R31およびR41は、それぞれ独立に、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基であり、前記脂肪族炭化水素基の炭素数は、4以上であることがさらに好ましく、5以上であることが一層好ましく、また、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
脂肪族炭化水素基は、直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましく、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好ましく、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がより好ましい。
【0027】
、R32、および、R42は、それぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10の炭化水素基、または、炭素数1~10の炭化水素基と、-O-および/もしくは-C(=O)-との組み合わせからなる基である。
の好ましい範囲は、式(UV-1)におけるRと同様である。
32、および、R42の好ましい範囲は、それぞれ独立に、水酸基および炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、水酸基およびメチル基であることがさらに好ましい。
n2は、0~3の整数であり、1または2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
n3-1、および、n4-1は、それぞれ独立に、0~3の整数であり、1または2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0028】
【化7】
(式(UV-3)中、R11およびR31、R41は、それぞれ独立に、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基である。)
【0029】
11およびR31、R41は、それぞれ独立に、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基であり、前記脂肪族炭化水素基の炭素数は、4以上であることがさらに好ましく、5以上であることが一層好ましく、また、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
脂肪族炭化水素基は、直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましく、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好ましく、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がより好ましい。
【0030】
以下に、本実施形態で用いられるトリアジン系紫外線吸収剤を例示する。本実施形態で用いられる紫外線吸収剤がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【化8】
【0031】
本実施形態で用いるトリアジン系紫外線吸収剤の分子量は、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、550以上であることがさらに好ましく、610以上であることが一層好ましく、650以上であることがより一層好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の分子量を前記下限値以上とすることにより、トリアジン系紫外線吸収剤がより揮発しにくくなり、ロール汚れをより効果的に抑制できる。また、本実施形態で用いるトリアジン系紫外線吸収剤の分子量は、1000以下であることが好ましく、900以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の分子量を前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂との相溶性がより向上する傾向にある。
【0032】
本実施形態のフィルムにおけるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上であり、0.5質量部以上であることが好ましく、0.6質量部以上であることがより好ましく、0.8質量部以上であることがさらに好ましく、1.0質量部以上であることが一層好ましく、1.2質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、フィルムの波長400nmの光線透過率をより小さくできる傾向にある。また、前記トリアジン系紫外線吸収剤の含有量の上限値は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、2.9質量部以下であり、2.7質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.4質量部以下であることがさらに好ましく、2.3質量部以下であることが一層好ましく、2.2質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、フィルムの黄色味をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0033】
本実施形態のフィルムにおけるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、フィルム100質量%に対し、0.3質量%以上であり、0.5質量%以上であることが好ましく、0.6質量%以上であることがより好ましく、0.8質量%以上であることがさらに好ましく、1.0質量%以上であることが一層好ましく、1.2質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、フィルムの波長400nmの光線透過率をより小さくできる傾向にある。また、前記トリアジン系紫外線吸収剤の含有量の上限値は、フィルム100質量%に対し、2.9質量%以下であり、2.7質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、2.4質量%以下であることがさらに好ましく、2.3質量%以下であることが一層好ましく、2.2質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、フィルムの黄色味をより効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態のフィルムは、トリアジン系紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
<他の成分>
本実施形態のフィルムは、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤以外の他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
他の成分としては、酸化防止剤、離型剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等が例示される。
また、本実施形態のフィルムには、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、国際公開第2021/241471号の段落0047~0103に記載の添加剤を配合でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
他の成分を含有する場合、その含有量は、合計でフィルムの0.001~3質量%であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが一層好ましく、0.1質量%以下であることがより一層好ましく、0.01質量%未満であってもよい。
他の成分は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。他の成分を2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0035】
本実施形態のフィルムは、式(UV-3)で表される化合物以外のトリアジン系紫外線吸収剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、フィルムに含まれる式(UV-3)で表される化合物以外のトリアジン系紫外線吸収剤の含有量が、フィルムに含まれる式(UV-3)で表される化合物の含有量の1質量%未満であることをいい、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0036】
本実施形態のフィルムは、トリアジン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
本実施形態の第一の形態は、フィルムがトリアジン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を実質的に含まないことである。実質的に含まないとは、トリアジン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤の含有量が、フィルムに含まれるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量の1質量%未満であることをいい、0.1質量%未満であることが好ましい。
本実施形態の第二の形態は、フィルムが、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を実質的に含まない構成とすることである。実質的に含まないとは、フィルムに含まれるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が、フィルムに含まれるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量の1質量%未満であることをいい、0.1質量%未満であることが好ましい。
本実施形態の第三の形態は、フィルムがトリアジン系紫外線吸収剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の両方を含むことである。第三の形態においては、トリアジン系紫外線吸収剤1質量部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を1質量部以上含むことが好ましく、3質量部以上含むことがより好ましく、5質量部以上含むことがさらに好ましく、また、6.5質量部以下含むことが好ましく、7質量部以下含むことがより好ましく、8質量部以下含むことがさらに好ましい。第三の形態においては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は合計量が上記範囲となることが好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特開2023-025384号公報の段落0023~0025の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0037】
本実施形態のフィルムは、可視光吸収剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
可視光吸収剤は、通常、顔料や染料等の着色剤である。
本実施形態のフィルムは、また、可視光吸収剤を実質的に含まない構成とすることもできる。具体的には、可視光吸収剤の含有量は、本実施形態に含まれるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量の0.01質量%未満であることが好ましく、0.001質量%未満であることがより好ましい。
本実施形態のフィルムは、また、黒色顔料(さらには、黒色着色剤)を実質的に含まない構成とすることもできる。具体的には、黒色顔料の含有量は、本実施形態に含まれるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量の0.01質量%未満であることが好ましく、0.001質量%未満であることがより好ましい。
本実施形態のフィルムは、また、黄色染料(さらには、黄色着色剤)を実質的に含まない構成とすることもできる。具体的には、黄色染料の含有量は、本実施形態に含まれるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量の0.01質量%未満であることが好ましく、0.001質量%未満であることがより好ましい。
【0038】
<フィルムの厚み>
本実施形態のフィルムは、その厚みが200~600μmである。前記フィルムの厚さを、下限値以上とすることにより、フィルムの波長400nmの光線透過率をより小さくできる傾向にある。前記フィルムの厚さを上限値以下とすることにより、熱曲げ加工性がより向上する傾向にある。
前記フィルムの厚さは、250μm以上であることが好ましく、280μm以上であることがより好ましく、また、550μm以下であることが好ましく、510μm以下であることがより好ましく、500μm未満であることがさらに好ましく、450μm以下であることが一層好ましく、400μm以下であることがより一層好ましく、350μm以下であることがさらに一層好ましい。
【0039】
<フィルムの光線透過率>
本実施形態のフィルムは、波長250~400nmにおける平均光線透過率が3%以下であり、波長420nmにおける光線透過率が30%以上である。
本実施形態のフィルムの波長420nmにおける光線透過率は、35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、43%以上であることがさらに好ましく、45%以上であることが一層好ましく、47%以上であることがより一層好ましい。本実施形態のフィルムの波長420nmにおける光線透過率の上限は特に定めるものではないが、70%以下が実際的である。
本実施形態のフィルムの波長400nmにおける光線透過率は、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.6%以下であることが一層好ましく、0.1%以下であることがより一層好ましく、0.05%以下であることがさらに一層好ましい。本実施形態のフィルムの波長400nmにおける光線透過率の下限は特に定めるものではないが、0%超が実際的である。
上記のような光線透過率を満たすフィルムは、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂に所定の構造のトリアジン系紫外線吸収剤を所定量配合することによって達成される。
本実施形態では、特に、フィルムの波長420nmにおける光線透過率とフィルムの波長400nmにおける光線透過率の差が35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましく、47%以上であることが一層好ましい。また、フィルムの波長420nmにおける光線透過率とフィルムの波長400nmにおける光線透過率の差の上限は特に定めるものではないが、80%以下が実際的である。このような光線透過率の差は、主に、トリアジン系紫外線吸収剤(好ましくは式(UV-1)で表される化合物、より好ましくは式(UV-2)で表される化合物、さらに好ましくは式(UV-3)で表される化合物を所定量用いることによって達成される。
【0040】
本実施形態のフィルムは、YI値(Yellow Index)が低いことが好ましい。具体的には、YI値が20以下であることが好ましく、15以下であることが好ましい。本実施形態のフィルムのYI値の下限値は、0であってもよいが、0.01以上が実際的であり、3以上であっても十分に要求性能を満たす。
特に、フィルムの波長420nmにおける光線透過率とフィルムの波長400nmにおける光線透過率の差が大きく、かつ、低いYI値を満たすことにより、より有益なフィルムとなる。
【0041】
<巻取体>
本実施形態のフィルムは、芯材に巻き取った巻取体とすることができる。
【0042】
<偏光シート>
本実施形態のフィルムは、好ましくは偏光シートに好ましく用いられる。
本実施形態において、偏光シートは、本実施形態のフィルム、偏光膜、偏光膜基材の順に積層されたシートである。すなわち、本実施形態のフィルムは、偏光シートの偏光膜基材の少なくとも一方として好ましく用いられる。偏光膜基材は、通常は、接着剤を介して偏光膜に貼り合わされている。本実施形態においては、偏光シートの一方の偏光膜基材は、本実施形態のフィルムであってもよいし、他の偏光膜基材であってもよい。偏光シートの他方の偏光膜基材は、公知の偏光シートの偏光膜基材を用いることができ、本実施形態のフィルムと同じものであってもよい。偏光膜は、公知のものを採用でき、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素または二色性有機染料を吸着もしくは含浸させたものが例示される。
本実施形態のフィルム・偏光膜基材と偏光膜を貼り合わせる接着剤は、公知の接着剤を用いることができ、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤等が挙げられる。中でも、ウレタン系接着剤が好ましい。
接着剤の厚みは、通常1μm以上であり、また、通常30μm以下である。
また、本実施形態の偏光シートは、偏光膜基材の外側に、さらに、マスキングフィルム等が設けられていてもよい。
【0043】
また、本実施形態において、本実施形態の偏光シートは、熱曲げ加工した熱曲げ成形体に好ましく用いられる。特に、偏光シートの偏光膜基材として好ましく用いられる。
本実施形態のフィルムが偏光シートに用いられる場合、偏光膜のいずれの側に設けられていてもよいし、両側に設けられていてもよい。
第一の形態は、本実施形態のフィルムが熱曲げ加工後に、偏光膜の凹面側に位置するように、例えば、図1の偏光膜基材4の側に位置するように配置されることである。
第二の形態は、本実施形態のフィルムが熱曲げ加工後に、偏光膜の凸面側に位置するように、例えば、図1の偏光膜基材3の側に位置するように配置されることである。
第三の形態は、本実施形態のフィルムが偏光膜の両面に位置するように、例えば、図1の偏光膜基材3・4の両方が本実施形態のフィルムであることである。
なお、図1において、偏光シートはレンズ1、偏光膜2、偏光膜基材3・4は曲げ加工がなされているが、曲げ加工がなされていない場合も本実施形態に含まれることは言うまでもない。
【0044】
本実施形態において、偏光シートは、液晶表示装置に使用される偏光シート、偏光レンズ(サングラスレンズ、スキーゴーグル、度付き眼鏡レンズ、カメラ用ファインダーレンズ)、様々な計器のカバー、自動車のガラス、電車のガラス、車載用表示パネルや電子機器筐体等の偏光シート、車載用インナーミラー、ヘルメットなどのシルバーミラーとして好ましく用いられる。
【実施例0045】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0046】
1.原料
ビスフェノールA型ポリカーボネートシート樹脂:三菱ガス化学株式会社製、S-3000
紫外線吸収剤
B1:LA-F70、ADEKA社製
【化9】
B2:LA-31、ADEKA社製
【化10】
【0047】
実施例1~2、比較例1~6
<フィルムの製造>
以下の方法でポリカーボネート樹脂フィルムを製造した。
表1に記載した各成分を、表1に記載の添加量(表1は質量部で示している)となるように計量した。その後、タンブラーにて15分間混合した後、バレル直径25mm、スクリューのL/D=30のベント付き二軸セグメント押出機(東洋精機社製、「2D30W2」)からなるTダイ溶融押出機を用いて、吐出量8Kg/h、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融状に押し出し、フィルム・シート引き取り装置(東洋精機社製、「FT3W20」)の第一ロールのみで冷却固化し、ポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。シリンダー・ダイヘッド温度は280℃、ロール温度は130℃で行った。
最終的に得られるフィルム厚みの調整は、表1に記載の厚みとなるように、第一ロールのロール速度を変更して行った。
【0048】
<波長250~400nmの平均光線透過率>
得られたフィルムについて、波長250~400nmの平均光線透過率を測定した。
具体的には、分光光度計を用い、スキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔1nmの条件で、フィルムの波長250~400nmにおける光線透過率(単位:%)を測定した。波長1nmごとの光線透過率の値から、平均値を算出した。
測定に際し、分光光度計U-4100(日立ハイテク社製)を用いた。
以下の通り区分けして評価した。
A:3%以下
B:3%超10%以下
C:10%超
【0049】
<波長420nmの光線透過率>
得られたフィルムについて、波長420nmの光線透過率を測定した。光線透過率の測定は上記波長250~400nmの平均光線透過率と同様に行った。
【0050】
<波長400nmの光線透過率>
得られたフィルムについて、波長400nmの光線透過率を測定した。光線透過率の測定は上記波長250~400nmの平均光線透過率と同様に行った。
【0051】
<ロール汚れ>
フィルムの製造の際に用いたロールについて、汚れの有無を目視で確認した。汚れの有無の確認は、5人の専門家が行い、以下の基準に伴い、多数決で判断した。
A:ロール汚れが確認されない
B:ロール汚れが確認された
【0052】
<YI値>
得られたフィルムについて、YI値をJIS Z 8722に準拠し、di:0°後分光方式の照明受光条件にて、分光色彩計を用いて測定した。
分光色彩計は、日本電色工業社製「SD-7000」を用いた。
【0053】
【表1】
【符号の説明】
【0054】
1 レンズ
2 偏光膜
3 偏光膜基材
4 偏光膜基材
図1