(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133814
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】X線検査装置及びX線検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20240926BHJP
G01N 23/087 20180101ALI20240926BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20240926BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/087
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043788
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001DA08
2G001EA06
2G001HA07
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA05
2G001LA01
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】異物検査精度を高めることが可能なX線検査装置及びX線検査方法を提供する。
【解決手段】X線検査装置1は、X線照射部200と、X線検出部300と、X線検出部300で検出された軟X線に基づいて低エネルギー画像P100を生成すると共に、X線検出部300で検出された硬X線に基づいて高エネルギー画像P200を生成する画像生成部401と、低エネルギー画像P100の輝度を異ならせた修正低エネルギー画像を生成すると共に、高エネルギー画像P200の輝度を異ならせた修正高エネルギーを生成する修正画像生成部と、各画像に基づいて第1透過画像の輝度を第2透過画像の輝度に一致又は近似させる輝度変換関数を生成する輝度変換関数生成部406と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に少なくとも第1エネルギー帯及び第2エネルギー帯を含むX線を照射するX線照射部と、
前記物品を透過した前記第1エネルギー帯のX線及び前記第2エネルギー帯のX線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部で検出された前記第1エネルギー帯のX線に基づいて第1透過画像を生成すると共に、前記X線検出部で検出された前記第2エネルギー帯のX線に基づいて第2透過画像を生成する画像生成部と、
前記第1透過画像の輝度を異ならせた修正第1透過画像を生成すると共に、前記第2透過画像の輝度を異ならせた修正第2透過画像を生成する修正画像生成部と、
前記第1透過画像、前記修正第1透過画像、前記第2透過画像及び前記修正第2透過画像に基づいて、前記第1透過画像の輝度を前記第2透過画像の輝度に一致又は近似させる輝度変換関数を生成する輝度変換関数生成部と、を備える、X線検査装置。
【請求項2】
前記修正画像生成部は、前記物品の厚さに関するX線吸収特性を用いて、前記物品とは厚さが異なる仮想物品の前記修正第1透過画像を前記第1透過画像から生成すると共に、前記仮想物品の前記修正第2透過画像を前記第2透過画像から生成する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記修正画像生成部は、
前記物品とは厚さが異なる他の物品を透過し前記X線検出部で検出された前記第1エネルギー帯のX線に基づいて前記修正第1透過画像を生成すると共に、前記他の物品を透過し前記X線検出部で検出された前記第2エネルギー帯のX線に基づいて前記修正第2透過画像を生成する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記X線照射部のX線管電流又はX線管電圧を第1値としてX線を前記X線照射部から照射した場合において、前記第1透過画像及び前記第2透過画像を生成し、
前記修正画像生成部は、前記X線照射部のX線管電流又はX線管電圧を前記第1値とは異なる第2値としてX線を前記X線照射部から照射した場合において、前記物品を透過し前記X線検出部で検出された前記第1エネルギー帯のX線に基づいて前記修正第1透過画像を生成すると共に、前記物品を透過し前記X線検出部で検出された前記第2エネルギー帯のX線に基づいて前記修正第2透過画像を生成する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記輝度変換関数生成部は、
前記第1透過画像と前記修正第1透過画像とに基づき第1ヒストグラムを生成し、
前記第2透過画像と前記修正第2透過画像とに基づき第2ヒストグラムを生成し、
前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとに基づき前記輝度変換関数を生成する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記輝度変換関数生成部は、
前記第1透過画像に基づき第1ヒストグラムを生成し、
前記第2透過画像に基づき第2ヒストグラムを生成し、
前記修正第1透過画像に基づき第3ヒストグラムを生成し、
前記修正第2透過画像に基づき第4ヒストグラムを生成し、
前記第1及び第2ヒストグラムに基づき第1輝度変換関数を生成し、
前記第3及び第4ヒストグラムに基づき第2輝度変換関数を生成し、
前記第1及び第2輝度変換関数に基づき前記輝度変換関数を生成する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記輝度変換関数生成部は、
前記第1及び第2透過画像に基づき第1輝度変換関数を生成し、
前記修正第1透過画像及び前記修正第2透過画像に基づき第2輝度変換関数を生成し、
前記第1及び第2輝度変換関数に基づき前記輝度変換関数を生成する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記X線検出部は、前記X線をフォトンカウンティング方式で検出可能である、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記X線検出部は、前記第1エネルギー帯のX線を検出する第1検出部と、前記第2エネルギー帯のX線を検出する第2検出部と、を含む、デュアルエナジーセンサである、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記輝度変換関数生成部は、前記第1透過画像に基づき第1ヒストグラムを生成し、前記第2透過画像に基づき第2ヒストグラムを生成し、
前記修正画像生成部は、前記第1及び第2ヒストグラムの少なくとも何れかに基づいて、前記物品の厚さに対する前記仮想物品の厚さの倍率を求める、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項11】
物品に少なくとも第1エネルギー帯及び第2エネルギー帯を含むX線を照射するX線照射ステップと、
前記物品を透過した前記第1エネルギー帯のX線及び前記第2エネルギー帯のX線を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された前記第1エネルギー帯のX線に基づいて第1透過画像を生成すると共に、前記検出ステップで検出された前記第2エネルギー帯のX線に基づいて第2透過画像を生成する画像生成ステップと、
前記第1透過画像の輝度を異ならせた修正第1透過画像を生成すると共に、前記第2透過画像の輝度を異ならせた修正第2透過画像を生成する修正画像生成ステップと、
前記第1透過画像、前記修正第1透過画像、前記第2透過画像及び前記修正第2透過画像に基づいて、前記第1透過画像の輝度を前記第2透過画像の輝度に一致又は近似させる輝度変換関数を生成する輝度変換関数生成ステップと、を備える、X線検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線検査装置及びX線検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のエネルギー帯を含むX線を物品に照射し、物品を透過した当該X線の検出結果から複数のエネルギー帯毎に透過画像を生成し、生成した複数の透過画像に基づいて物品に含まれる異物を検出するX線検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなX線検査装置では、複数の透過画像それぞれの輝度を略一致するように変換させるための輝度変換関数を生成する。輝度変換関数を用いた輝度変換後の複数の透過画像を比較することで物品の消し込みを行い、異物の領域のみを抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなX線検査装置では、輝度変換関数を生成する際、透過画像から得られない輝度の範囲については、例えばベジェ曲線等を用いて仮想的に補完する場合ある。しかしこの場合、補完した当該範囲において異物検査精度が低下してしまう可能正がある。
【0005】
そこで、本開示は、異物検査精度を高めることが可能なX線検査装置及びX線検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一側面に係るX線検査装置は、物品に少なくとも第1エネルギー帯及び第2エネルギー帯を含むX線を照射するX線照射部と、物品を透過した第1エネルギー帯のX線及び第2エネルギー帯のX線を検出するX線検出部と、X線検出部で検出された第1エネルギー帯のX線に基づいて第1透過画像を生成すると共に、X線検出部で検出された第2エネルギー帯のX線に基づいて第2透過画像を生成する画像生成部と、第1透過画像の輝度を異ならせた修正第1透過画像を生成すると共に、第2透過画像の輝度を異ならせた修正第2透過画像を生成する修正画像生成部と、第1透過画像、修正第1透過画像、第2透過画像及び修正第2透過画像に基づいて、第1透過画像の輝度を第2透過画像の輝度に一致又は近似させる輝度変換関数を生成する輝度変換関数生成部と、を備える。
【0007】
このX線検査装置では、輝度変換関数を生成する際、第1及び第2透過画像からだけでは得られない範囲の輝度を、修正第1透過画像及び修正第2透過画像を用いることで得ることが可能となる。よって、輝度変換関数を生成する際にベジェ曲線等を用いて仮想的に補完する必要性を低減し、輝度変換関数を精度よく生成することができる。したがって、異物検査精度を高めることが可能となる。
【0008】
(2)上記(1)に記載されたX線検査装置では、修正画像生成部は、物品の厚さに関するX線吸収特性を用いて、物品とは厚さが異なる仮想物品の修正第1透過画像を第1透過画像から生成すると共に、仮想物品の修正第2透過画像を第2透過画像から生成してもよい。これにより、修正第1透過画像及び修正第2透過画像をシミュレーションによって得ることができる。
【0009】
(3)上記(1)に記載されたX線検査装置では、修正画像生成部は、物品とは厚さが異なる他の物品を透過しX線検出部で検出された第1エネルギー帯のX線に基づいて修正第1透過画像を生成すると共に、他の物品を透過しX線検出部で検出された第2エネルギー帯のX線に基づいて修正第2透過画像を生成してもよい。これにより、修正第1透過画像及び修正第2透過画像を、他の物品へのX線の照射によって得ることができる。
【0010】
(4)上記(1)に記載されたX線検査装置では、画像生成部は、X線照射部のX線管電流又はX線管電圧を第1値としてX線をX線照射部から照射した場合において、第1透過画像及び第2透過画像を生成し、修正画像生成部は、X線照射部のX線管電流又はX線管電圧を第1値とは異なる第2値としてX線をX線照射部から照射した場合において、物品を透過しX線検出部で検出された第1エネルギー帯のX線に基づいて修正第1透過画像を生成すると共に、物品を透過しX線検出部で検出された第2エネルギー帯のX線に基づいて修正第2透過画像を生成してもよい。これにより、修正第1透過画像及び修正第2透過画像を、物品へのX線の照射条件を変えることによって得ることができる。
【0011】
(5)上記(1)~(4)の何れか一項に記載されたX線検査装置では、輝度変換関数生成部は、第1透過画像と修正第1透過画像とに基づき第1ヒストグラムを生成し、第2透過画像と修正第2透過画像とに基づき第2ヒストグラムを生成し、第1ヒストグラムと第2ヒストグラムとに基づき輝度変換関数を生成してもよい。この場合、輝度変換関数を具体的に生成することができる。
【0012】
(6)上記(1)~(4)の何れか一項に記載されたX線検査装置では、輝度変換関数生成部は、第1透過画像に基づき第1ヒストグラムを生成し、第2透過画像に基づき第2ヒストグラムを生成し、修正第1透過画像に基づき第3ヒストグラムを生成し、修正第2透過画像に基づき第4ヒストグラムを生成し、第1及び第2ヒストグラムに基づき第1輝度変換関数を生成し、第3及び第4ヒストグラムに基づき第2輝度変換関数を生成し、第1及び第2輝度変換関数に基づき輝度変換関数を生成してもよい。この場合、輝度変換関数を具体的に生成することができる。
【0013】
(7)上記(1)~(4)の何れか一項に記載されたX線検査装置では、輝度変換関数生成部は、第1及び第2透過画像に基づき第1輝度変換関数を生成し、修正第1透過画像及び修正第2透過画像に基づき第2輝度変換関数を生成し、第1及び第2輝度変換関数に基づき輝度変換関数を生成してもよい。この場合、輝度変換関数を具体的に生成することができる。
【0014】
(8)上記(1)~(7)の何れか一項に記載されたX線検査装置では、X線検出部は、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能であってもよい。この場合、フォトンカウンティング方式を利用してX線を検出することができる。
【0015】
(9)上記(1)~(7)の何れか一項に記載されたX線検査装置では、X線検出部は、第1エネルギー帯のX線を検出する第1検出部と、第2エネルギー帯のX線を検出する第2検出部と、を含む、デュアルエナジーセンサであってもよい。この場合、デュアルエナジーセンサをX線検出部に利用することができる。
【0016】
(10)上記(1)~(7)の何れか一項に記載されたX線検査装置では、輝度変換関数生成部は、第1透過画像に基づき第1ヒストグラムを生成し、第2透過画像に基づき第2ヒストグラムを生成し、修正画像生成部は、第1及び第2ヒストグラムの少なくとも何れかに基づいて、物品の厚さに対する仮想物品の厚さの倍率を求めてもよい。この場合、仮想物品の厚さの倍率を、第1及び第2ヒストグラムの少なくとも何れかに基づき具体的に求めることが可能となる。
【0017】
(11)本開示の一側面に係るX線検査方法は、物品に少なくとも第1エネルギー帯及び第2エネルギー帯を含むX線を照射するX線照射ステップと、物品を透過した第1エネルギー帯のX線及び第2エネルギー帯のX線を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された第1エネルギー帯のX線に基づいて第1透過画像を生成すると共に、検出ステップで検出された第2エネルギー帯のX線に基づいて第2透過画像を生成する画像生成ステップと、第1透過画像の輝度を異ならせた修正第1透過画像を生成すると共に、第2透過画像の輝度を異ならせた修正第2透過画像を生成する修正画像生成ステップと、第1透過画像、修正第1透過画像、第2透過画像及び修正第2透過画像に基づいて、第1透過画像の輝度を第2透過画像の輝度に一致又は近似させる輝度変換関数を生成する輝度変換関数生成ステップと、を備える。
【0018】
このX線検査方法においても、輝度変換関数を生成する際、第1及び第2透過画像からだけでは得られない範囲の輝度を、修正第1透過画像及び修正第2透過画像を用いることで得られることが可能となる。よって、輝度変換関数を生成する際にベジェ曲線等を用いて仮想的に補完する必要性を低減し、輝度変換関数を精度よく生成することができる。したがって、異物検査精度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、異物検査精度を高めることが可能なX線検査装置及びX線検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るX線検査装置の構成図である。
【
図2】
図2は、
図1のX線検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3(a)は、低エネルギー画像を示す図である。
図3(b)は、高エネルギー画像を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、第1及び第2ヒストグラムの一例を示すグラフである。
図4(b)は、第1輝度変換関数の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5(a)は、第3及び第4ヒストグラムの一例を示すグラフである。
図5(b)は、第2輝度変換関数の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、合成後の輝度変換関数の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、
図1のX線検査装置によるX線検査方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、低エネルギー画像の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、修正低エネルギー画像の一例を示す図である。
【
図10】
図10(a)は、異物感度評価結果を示すグラフである。
図10(b)は、異物感度評価結果を示す他のグラフである。
図10(c)は、異物感度の評価結果を示す更に他のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。各図において同一又は相当の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1に示されるように、X線検査装置1は、X線照射部200と、X線検出部300と、画像処理部400と、搬送部500と、を備えている。X線検査装置1は、X線の透過性を利用して被検査物(物品)Aに含まれる異物を検出する。被検査物Aとして、袋入りの複数のソーセージ等を例示する。被検査物Aは、例えば鶏の胸肉であってもよい。
【0023】
搬送部500は、被検査物Aを搬送する。搬送部500には、ベルトコンベア、トップチェーンコンベア、回転テーブル等、様々な搬送機構を適用することが可能である。X線照射部200は、搬送部500によって搬送される被検査物AにX線を照射する。X線照射部200から照射されるX線には、低エネルギー帯(長波長)から高エネルギー(短波長)までの様々なエネルギー帯のX線が含まれている。
【0024】
X線検出部300は、搬送部500によって搬送される被検査物Aに照射されたX線を検出する。X線検出部300は、デュアルエナジーセンサである。X線検出部300は、低エネルギー用センサ(第1検出部)310と、高エネルギー用センサ(第2検出部)320と、フィルタ350と、を備えている。低エネルギー用センサ310、フィルタ350、及び高エネルギー用センサ320は、X線照射部200に近い方からこの順に配置されている。低エネルギー用センサ310は、被検査物Aを透過した低エネルギー帯(第1エネルギー帯)のX線(軟X線)を検出する。高エネルギー用センサ320は、被検査物Aを透過した高エネルギー帯(第2エネルギー帯)のX線(硬X線)を検出する。フィルタ350は、軟X線と硬X線との間のエネルギー帯のX線を吸収する。
【0025】
低エネルギー用センサ310及び高エネルギー用センサ320は、例えば、1次元に配列された複数のX線検出素子を含むラインセンサである。複数のX線検出素子は、搬送部500による被検査物Aの搬送方向D1及びX線照射部200によるX線の照射方向D2の両方向に交差する方向に沿って配列されている。
【0026】
図2に示されるように、画像処理部400には、低エネルギー用センサ310から出力された検出信号が入力されると共に、高エネルギー用センサ320から出力された検出信号が入力される。画像処理部400は、これらの検出信号に基づいてX線透過画像を生成し、当該X線透過画像に対して各種の画像処理を実行する。画像処理部400は、例えば、プロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)等)及びメモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory))等によって構成されている。
【0027】
画像処理部400は、画像生成部401、修正画像生成部402、輝度変換関数生成部406及び検査部411を有している。画像生成部401は、低エネルギー用センサ310で検出された軟X線に基づいて、被検査物Aの軟X線透過画像である低エネルギー画像P100(第1透過画像)を生成する。画像生成部401は、高エネルギー用センサ320で検出された硬X線に基づいて、被検査物Aの硬X線透過画像である高エネルギー画像P200(第2透過画像)を生成する。
【0028】
図3(a)に示されるように、低エネルギー画像P100は、相対的にコントラストが高く、全体的に暗くなっている。また、
図3(b)に示されるように、高エネルギー画像P200は、相対的にコントラストが低く、全体的に明るくなっている。更に、
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、低エネルギー画像P100における異物Sと被検査物Aとのコントラストに比べて、高エネルギー画像P200における異物Sと被検査物Aとのコントラストが、小さくなっている。これは、異物Sと被検査物Aとの間に、X線吸収率の違いがあることに起因する。
【0029】
図2に戻り、修正画像生成部402は、低エネルギー画像P100の輝度を異ならせた修正低エネルギー画像(修正第1透過画像)を生成すると共に、高エネルギー画像P200の輝度を異ならせた修正高エネルギー画像(修正第2透過画像)を生成する。修正画像生成部402は、被検査物Aの厚さに関するX線吸収特性を用いて、被検査物Aとは厚さが異なる仮想物品の修正低エネルギー画像を低エネルギー画像P100から生成する。修正画像生成部402は、被検査物Aの厚さに関するX線吸収特性を用いて、仮想物品の修正高エネルギーを高エネルギー画像P200から生成する。仮想物品は、仮想的な(シミュレーション上の)被検査物Aである。
【0030】
具体的には、修正画像生成部402は、修正低エネルギー画像を生成する場合、まず、事前に背景情報を取得する。修正画像生成部402は、二値化しきい値に背景情報を使用して、低エネルギー画像P100からマスクを生成する。修正画像生成部402は、以下のシミュレーション原理に基づいて、低エネルギー画像P100におけるマスク領域に対して、n倍厚の仮想物品のシミュレーション画像を生成する。
【0031】
入射強度I0の単色X線が、厚さdの物体を通過後に強度I1となった場合、強度I1は次式(1)で表される。
I1=I0exp(-μd) ・・・(1) μ:線吸収係数
厚さがn倍の物体を通過後に強度I2となった場合、強度I2は次式(2)で表される。
I2=I0exp(-μd×n) ・・・(2)
上記式(1)及び上記式(2)により、入射強度I0、低エネルギー画像の強度I1、修正低エネルギー画像の強度I2、及び、被検査物Aの厚さの倍率nとした場合、関係式は次式(3),(4)となる。
(I1/I0)n=I2/I0 ・・・(3)
I2=I1
n/I0
n-1 ・・・(4)
【0032】
したがって、低エネルギー画像P100における強度I1と入射強度I0とから、修正低エネルギー画像の強度I2へ変換することができる。すなわち、修正画像生成部402によれば、低エネルギー画像P100から、厚さに関するX線吸収特性を利用して修正低エネルギー画像が生成される。同様に、修正画像生成部402によれば、高エネルギー画像P200から、厚さに関するX線吸収特性を利用して修正高エネルギー画像が生成される。なお、仮想物品の被検査物Aに対する厚さの倍率nは、特に限定されないが、例えば1.25、1.50、1.75及び2.00等の少なくとも何れかであってもよい。
【0033】
輝度変換関数生成部406は、低エネルギー画像P100、修正低エネルギー画像、高エネルギー画像P200及び修正高エネルギー画像に基づいて、低エネルギー画像P100の輝度を高エネルギー画像P200の輝度に一致又は近似させるルックアップテーブルである輝度変換関数T150(
図6参照)を生成する。輝度変換関数生成部406は、以下に詳説するように、低エネルギー画像P100及び高エネルギー画像P200に基づき第1輝度変換関数T100を生成し、修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像に基づき第2輝度変換関数T200を生成し、第1及び第2輝度変換関数T100,T200に基づき輝度変換関数T150を生成する。
【0034】
輝度変換関数生成部406は、低エネルギー画像P100の輝度分布を示す第1ヒストグラムH100を生成すると共に、高エネルギー画像P200の輝度分布を示す第2ヒストグラムH200を生成する(
図4(a)参照)。輝度変換関数生成部406は、第1ヒストグラムH100を積分することにより低エネルギーヒストグラム積算曲線を算出すると共に、第2ヒストグラムH200を積分することにより高エネルギーヒストグラム積算曲線を算出する。
【0035】
輝度変換関数生成部406は、低エネルギーヒストグラム積算曲線と高エネルギーヒストグラム積算曲線とを比較することにより、低エネルギー画像P100の輝度を高エネルギー画像P200の輝度に一致又は近似させる第1輝度変換関数T100を生成する。具体的には、輝度変換関数生成部406は、低エネルギーヒストグラム積算曲線の積算値と、高エネルギーヒストグラム積算曲線の積算値とが一致する輝度の変換比を各輝度で求める。これにより、輝度変換関数生成部406は、低エネルギー画像P100及び高エネルギー画像P200に関して、輝度と変換比とが関連付けられた第1輝度変換関数T100を得る(
図4(b)参照)。
【0036】
輝度変換関数生成部406は、修正低エネルギー画像の輝度分布を示す第3ヒストグラムH110を生成すると共に、修正高エネルギー画像の輝度分布を示す第4ヒストグラムH210を生成する(
図5(a)参照)。輝度変換関数生成部406は、第3ヒストグラムH110を積分することにより修正低エネルギーヒストグラム積算曲線を算出すると共に、第4ヒストグラムH210を積分することにより修正高エネルギーヒストグラム積算曲線を算出する。
【0037】
輝度変換関数生成部406は、修正低エネルギーヒストグラム積算曲線と修正高エネルギーヒストグラム積算曲線とを比較することにより、修正低エネルギー画像の輝度を修正高エネルギー画像の輝度に一致又は近似させる第2輝度変換関数T110を生成する。具体的には、輝度変換関数生成部406は、修正低エネルギーヒストグラム積算曲線の積算値と、修正高エネルギーヒストグラム積算曲線の積算値とが一致する輝度の変換比を各輝度で求める。これにより、輝度変換関数生成部406は、修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像に関して、輝度と変換比とが関連付けられた第2輝度変換関数T110を得る(
図5(b)参照)。
【0038】
低エネルギー画像P100及び高エネルギー画像P200の画素が無い輝度値については、当該輝度値の変換比を求めることができない。そのため、
図4(b)に示されるように、輝度変換関数生成部406により生成された第1輝度変換関数T100の輝度値の低い範囲Lには、変換データが存在しない。そこで、
図4(b)、
図5(b)及び
図6に示されるように、輝度変換関数生成部406は、第1輝度変換関数T100に第2輝度変換関数T110を合成する。
【0039】
具体的には、輝度変換関数生成部406は、第1輝度変換関数T100において輝度値の低い範囲Lについて、第2輝度変換関数T110の範囲Lの輝度値を組み合わせる。換言すると、輝度変換関数生成部406は、第1輝度変換関数T100の輝度値の低い側の終端に対して、第2輝度変換関数T110の範囲Lの輝度値を、所定係数を掛けて繋ぐように補正する。これにより、輝度変換関数生成部406は、変換データが存在しない範囲(領域)を有さない輝度変換関数T150を得る。なお、輝度変換関数生成部406による第1輝度変換関数T100と第2輝度変換関数T110との合成手法は、特に限定されず、平均化するように両者を合成してもよいし、公知手法により両者を適宜に組み合わせてもよい。
【0040】
検査部411は、輝度変換関数生成部406により生成した輝度変換関数T150に基づいて、低エネルギー画像P100の各画素の輝度を変換し、輝度変換後低エネルギー画像を取得する。検査部411は、輝度が変換された後の低エネルギー画像(すなわち、輝度変換後低エネルギー画像)と高エネルギー画像P200とに基づいて、被検査物Aに含まれている異物Sを検出する。ここでの検出手法としては、公知の種々の手法を用いることができる。
【0041】
次に、
図7のフローチャートを参照して、X線検査装置1によるX線検査方法について説明する。
【0042】
まず、搬送部500により検査位置に被検査物Aを搬送し、X線照射部200により被検査物AにX線を照射する(ステップS1:X線照射ステップ)。低エネルギー用センサ310により被検査物Aを透過した低エネルギー帯のX線を検出し、高エネルギー用センサ320により被検査物Aを透過した高エネルギー帯のX線を検出する(ステップS2:検出ステップ)。
【0043】
続いて、画像生成部401により、検出した低エネルギー帯のX線に基づいて被検査物Aの低エネルギー画像P100を生成すると共に、検出した高エネルギー帯のX線に基づいて被検査物Aの高エネルギー画像P200を生成する(ステップS3:画像生成ステップ)。修正画像生成部402により、低エネルギー画像P100の輝度を異ならせた修正低エネルギー画像を生成すると共に、高エネルギー画像P200の輝度を異ならせた修正高エネルギー画像を生成する(ステップS4:修正画像生成ステップ)。輝度変換関数生成部406により、低エネルギー画像P100、修正低エネルギー画像、高エネルギー画像P200及び高エネルギー画像に基づいて、輝度変換関数T150を生成する(ステップS5:輝度変換関数生成ステップ)。
【0044】
続いて、検査部411により、輝度変換関数T150に基づいて、低エネルギー画像P100の輝度変換を行い、輝度変換後低エネルギー画像を取得する。検査部411により、輝度変換後低エネルギー画像及び高エネルギー画像P200に基づいて、被検査物Aに含まれている異物Sを検出する(ステップS6)。
【0045】
図8は、低エネルギー画像P100の一例を示す図である。
図9は、修正低エネルギー画像P101の一例を示す図である。
図8及び
図9に示されるように、本実施形態では、修正画像生成部402により、厚さに関するX線吸収特性を利用してシミュレートすることで、低エネルギー画像P100における強度I
1と入射強度I
0とから修正低エネルギー画像の強度I
2へ変換することができ、低エネルギー画像P100から修正低エネルギー画像P101を生成することができる。
【0046】
以上、X線検査装置1及びX線検査方法では、輝度変換関数T150を生成する際、低エネルギー画像P100及び高エネルギー画像P200からだけでは得られない範囲Lの輝度を、修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像を用いることで得られることが可能となる。よって、輝度変換関数T150を生成する際にベジェ曲線等を用いて仮想的に補完する必要性を低減し、輝度変換関数T150を精度よく生成することができる。したがって、異物検査精度を高めることが可能となる。
【0047】
X線検査装置1及びX線検査方法では、修正画像生成部402は、被検査物Aの厚さに関するX線吸収特性を用いて、被検査物Aとは厚さが異なる仮想物品の修正低エネルギー画像を低エネルギー画像P100から生成すると共に、仮想物品の修正高エネルギー画像を高エネルギー画像P200から生成する。これにより、修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像をシミュレーションによって得ることができる。
【0048】
X線検査装置1及びX線検査方法では、輝度変換関数生成部406は、第1透過画像に基づき第1ヒストグラムH100を生成し、第2透過画像に基づき第2ヒストグラムH200を生成し、修正第1透過画像に基づき第3ヒストグラムH110を生成し、修正第2透過画像に基づき第4ヒストグラムH210を生成し、第1及び第2ヒストグラムH100,H200に基づき第1輝度変換関数T100を生成し、第3及び第4ヒストグラムH110,H210に基づき第2輝度変換関数T200を生成し、第1及び第2輝度変換関数T100,200に基づき輝度変換関数T150を生成する。この場合、輝度変換関数T150を具体的に生成することができる。
【0049】
X線検査装置1及びX線検査方法では、輝度変換関数生成部406は、低エネルギー画像P100及び高エネルギー画像P200から第1輝度変換関数T100を生成し、修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像に基づき第2輝度変換関数T200を生成し、第1及び第2輝度変換関数T100,T200に基づき輝度変換関数T150を生成する。この場合、輝度変換関数T150を具体的に生成することができる。
【0050】
X線検査装置1及びX線検査方法では、X線検出部300は、デュアルエナジーセンサである。デュアルエナジーセンサをX線検出部300に利用することができる。X線検査装置1及びX線検査方法では、輝度変換関数T150を生成する場合、ベジェ曲線等を用いた補完等のために多数のX線透過画像を用意する必要がなく、その手間を省くことができる。
【0051】
ここで、X線検査装置1に係る実施例と、第1輝度変換関数T100を輝度変換関数とした(第2輝度変換関数T200による合成を行わない)X線検査装置に係る比較例と、を用いて、異物感度を評価した。比較例では、輝度変換関数における変換データが存在しない範囲に、ベジェ曲線等を用いた補完を施している。その評価結果を
図10(a)、
図10(b)及び
図10(c)に示す。
【0052】
図10(a)は、異物が石英ガラスの場合の異物感度評価結果を示すグラフである。
図10(b)は、異物が0.5mm厚のアルミニウムの場合の異物感度評価結果を示すグラフである。
図10(c)は、異物が0.3mm厚のアルミニウムの場合の異物感度の評価結果を示すグラフである。図中において、縦軸は、異物検査10回中に異物が検出された頻度であり、横軸は異物の長さである。
図10(a)、
図10(b)及び
図10(c)に示されるように、実施例では、比較例では検出困難な異物も確実に検出できることがわかる。実施例では、様々なサイズ及び材質の異物についても確実に検出できることがわかる。異物検出のための感度レベルの閾値について、実施例では比較例よりも小さく(例えば1/2以下)することができる。
【0053】
なお、本実施形態において、入射強度I0は、背景情報のヒストグラムにおける幅w及び高さhを考慮した値であってもよく、例えば幅w及び高さhの関数であってもよい。修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像は、部分的に倍率nが異なるように生成された画像であってもよい。
【0054】
また、修正画像生成部402により生成した修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像の第3及び第4ヒストグラムH110,H210について、実際に厚さをn倍にした被検査物Aの低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像のヒストグラム(以下、「実ヒストグラム」ともいう)と比較評価した。比較評価では、被検査物Aとして、例えばアクリル板及び食品を包装する袋帯等を用いた。その結果、第3及び第4ヒストグラムH110,H210と実ヒストグラムとが精度よく一致することを確認することができた。
【0055】
[変形例]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に限定されない。
【0056】
上記実施形態では、修正画像生成部402は、X線吸収特性を用いたシミュレートにより修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像を生成したが、これに限定されない。本開示の一態様に係る修正画像生成部は、物品とは厚さが異なる実物である他の物品を透過しX線検出部で検出された第1エネルギー帯のX線に基づいて修正第1透過画像を生成すると共に、他の物品を透過しX線検出部で検出された第2エネルギー帯のX線に基づいて修正第2透過画像を生成してもよい。この場合、修正第1透過画像及び修正第2透過画像を、他の物品へのX線の照射によって得ることができる。
【0057】
上記実施形態では、修正画像生成部402は、X線吸収特性を用いたシミュレートにより修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像を生成したが、これに限定されない。本開示の一態様に係る修正画像生成部は、X線照射部の照射時間、X線管電流又はX線管電圧を第1値としてX線照射部からX線を照射した場合において、第1透過画像及び第2透過画像を生成してもよい。修正画像生成部は、X線照射部の照射時間、X線管電流又はX線管電圧を第1値とは異なる第2値としてX線照射部からX線を照射した場合において、物品を透過しX線検出部で検出された第1エネルギー帯のX線に基づいて修正第1透過画像を生成すると共に、物品を透過しX線検出部で検出された第2エネルギー帯のX線に基づいて修正第2透過画像を生成してもよい。これにより、修正第1透過画像及び修正第2透過画像を、物品へのX線の照射条件を変えることによって得ることができる。また、X線の照射条件を異ならせず、又はそれらを異ならせることに加え、X線検出部300の露光時間又はゲインを異ならせて修正第1透過画像及び修正第2透過画像を得ても同様の効果を得ることができる。
【0058】
上記実施形態では、輝度変換関数生成部406は、低エネルギー画像P100と修正低エネルギー画像とに基づき低エネルギーヒストグラムを生成し、高エネルギー画像P200と修正高エネルギー画像とに基づき高エネルギーヒストグラムを生成し、これらに基づき輝度変換関数T150を生成してもよい。この場合、輝度変換関数T150を具体的に生成することができる。
【0059】
上記実施形態では、X線検出部300は、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能であってもよい。この場合、フォトンカウンティング方式を利用してX線を検出することができる。上記実施形態では、輝度変換関数生成部406は、生成した輝度変換関数T150に対して、ベジェ曲線等による補完を行ってもよい。
【0060】
上記実施形態では、修正画像生成部402は、第1及び第2ヒストグラムH100,H200の少なくとも何れかに基づいて、仮想物品の厚さの倍率nを求めてもよい。例えば、修正画像生成部402は、「第1及び第2ヒストグラムH100,H200の少なくとも何れかのピーク値」と「仮想物品の厚さの倍率n(例えば1.5~5.0(0.5単位)の8つ」との関係を示すデータテーブルを有していてもよい。修正画像生成部402は、当該データテーブルを用いて、第1及び第2ヒストグラムH100,H200の少なくとも何れかから、仮想物品の厚さの倍率nを自動選択してもよい。
【0061】
これにより、仮想物品の厚さの望ましい倍率nを、第1及び第2ヒストグラムH100,H200の少なくとも何れかから具体的に求めることが可能となる。これは、次の理由による。すなわち、第1及び第2輝度変換関数T100,T200を合成する上で、第2輝度変換関数T200における画素が無い輝度値の範囲について、狭いほど望ましく、存在したとしても、当該範囲の輝度値が小さい方が望ましい。この点、第1及び第2ヒストグラムH100,H200の少なくとも何れかを指標にすることで、上記式(4)の関係に基づくことで、望ましい倍率nないしその目処を予想できるためである。
【0062】
上記実施形態では、画像生成部401及び修正画像生成部402の少なくとも何れかの処理を、X線検出部300の複数のX線検出素子が並ぶ方向において分けて実施してもよい。例えば、搬送方向と直交する水平方向に沿って並ぶ複数のX線検出素子毎に、画像生成部401及び修正画像生成部402により各画像とを生成してもよい。この場合、搬送方向D1と直交する水平方向に沿って並ぶ複数のX線検出素子毎に、X線の被検査物Aの進入角度を考慮して、画像生成部401及び修正画像生成部402により生成する各画像に補正を施してもよい。この場合、シミュレートにより修正低エネルギー画像及び修正高エネルギー画像を生成する場合にそのシミュレート精度を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1…X線検査装置、200…X線照射部、300…X線検出部、310…低エネルギー用センサ(第1検出部)、320…高エネルギー用センサ(第2検出部)、401…画像生成部、402…修正画像生成部、406…輝度変換関数生成部、411…検査部、A…被検査物(物品)、H100…第1ヒストグラム、H110…第3ヒストグラム、H200…第2ヒストグラム、H210…第4ヒストグラム、P100…低エネルギー画像(第1透過画像)、P200…高エネルギー画像(第2透過画像)、T100…第1輝度変換関数、T200…第2輝度変換関数、T150…輝度変換関数。