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  • 特開-濾過装置及び採取方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133818
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】濾過装置及び採取方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20240926BHJP
   B01D 35/02 20060101ALI20240926BHJP
   G01N 1/14 20060101ALI20240926BHJP
   F04B 53/16 20060101ALI20240926BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20240926BHJP
   C02F 1/00 20230101ALN20240926BHJP
【FI】
G01N1/04 H
B01D35/02 B
G01N1/14 F
F04B53/16 A
G01N1/10 B
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043793
(22)【出願日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進費「深海生物相の画像解析によるモニタリング法及びサンプリング法の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】523099404
【氏名又は名称】増田 殊大
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】藤原 義弘
(72)【発明者】
【氏名】土田 真二
(72)【発明者】
【氏名】河戸 勝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尊雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 殊大
【テーマコード(参考)】
2G052
3H071
4D116
【Fターム(参考)】
2G052AA06
2G052AB20
2G052AC05
2G052AD09
2G052BA22
2G052CA02
2G052CA12
2G052EA04
2G052HA15
2G052HC38
3H071AA01
3H071BB01
3H071CC33
3H071DD83
3H071EE07
4D116AA30
4D116BB01
4D116BC27
4D116KK04
4D116QB43
4D116QC02A
4D116QC06
4D116QC22A
4D116UU11
4D116VV07
4D116VV10
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】 高圧の液体中で用いることができ、かつサイズを小さくすることができる濾過装置を提供する。
【解決手段】 濾過装置1は、液体中で当該液体を吸い込んで吐出するポンプ10と、ポンプ10によって吐出された液体を濾過する濾材20と、ポンプ10を収容すると共に均圧構造となっているポンプユニット30とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中で当該液体を吸い込んで吐出するポンプと、
前記ポンプによって吐出された液体を濾過する濾材と、
前記ポンプを収容すると共に均圧構造となっているポンプユニットと、
を備える濾過装置。
【請求項2】
前記ポンプは、ピストンポンプである請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記ポンプユニットは、前記ポンプを収容する筐体を有しており、当該筐体内に樹脂が充填されていることで均圧構造となっている請求項1又は2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記樹脂は、絶縁樹脂である請求項3に記載の濾過装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の濾過装置のポンプユニットを、環境DNAが存在する環境における液体の中に配置して、当該濾過装置によって当該液体を濾過して当該環境DNAを採取する採取方法。
【請求項6】
前記環境DNAが存在する環境における液体の中は、海中である請求項5に記載の採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置及び当該濾過装置を用いた採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水を濾過する濾過装置が知られている。例えば、特許文献1には、船舶に設けられる濾過装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-207795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
海水の濾過によって、海中に存在する環境DNA(デオキシリボ核酸)を採取することが考えられる。環境の負荷及び汚染(コンタミネーション)の低減の観点から、海水の濾過は、海中で行われることが望ましい。深海において海水を濾過するためには、濾過装置を深海に配置する必要がある。そのため、特許文献1に示される船舶に設けられる濾過装置を用いることができない。
【0005】
深海において濾過装置を動作させるため、濾過装置の主要部分を耐圧構造にすることが考えられる。しかしながら、主要部分を耐圧構造とすることで、サイズが大きくなり、非常に重くなる。例えば、40kg以上の重さとなってしまう。また、主要部分が耐圧構造であるため、大深度化できない。例えば、最大使用深度は7000mまでとなる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高圧の液体中で用いることができ、かつサイズを小さくすることができる濾過装置及び当該濾過装置を用いた採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る濾過装置は、液体中で当該液体を吸い込んで吐出するポンプと、ポンプによって吐出された液体を濾過する濾材と、ポンプを収容すると共に均圧構造となっているポンプユニットと、を備える。
【0008】
本発明に係る濾過装置は、ポンプユニットが均圧構造となっていることで、高圧の液体中で用いることができ、かつサイズを小さくすることができる。
【0009】
ポンプは、ピストンポンプであることとしてもよい。この構成によれば、適切かつ確実に、濾過装置を高圧の液体中で用いることができ、かつサイズを小さいものにすることができる。
【0010】
ポンプユニットは、ポンプを収容する筐体を有しており、当該筐体内に樹脂が充填されていることで均圧構造となっていることとしてもよい。この構成によれば、適切かつ確実にポンプユニットの均圧構造を実現することができる。その結果、適切かつ確実に本発明を実施することができる。
【0011】
樹脂は、絶縁樹脂であることとしてもよい。この構成によれば、例えば、電気で動作するポンプを用いる場合に、適切かつ確実に濾過装置を動作させることができる。
【0012】
本発明に係る採取方法は、上記の濾過装置のポンプユニットを、環境DNAが存在する環境における液体の中に配置して、当該濾過装置によって当該液体を濾過して当該環境DNAを採取する方法である。環境DNAが存在する環境における液体の中は、海中であることとしてもよい。この構成によれば、例えば、環境の負荷及び汚染の低減の観点から、深海の環境DNAを適切に採取することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高圧の液体中で用いることができ、かつサイズを小さくすることができる濾過装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る濾過装置を模式的に示す図である。
図2】濾過装置に含まれるポンプユニットの内部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面と共に本発明に係る濾過装置及び採取方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0016】
図1に本実施形態に係る濾過装置1を模式的に示す。濾過装置1は、液体中で用いられ、当該液体を濾過する装置(システム)である。濾過装置1による濾過対象の液体は、例えば、水、更に具体的には、海、河川、湖等の水(環境水)である。本実施形態では、濾過装置1は、海水を濾過するものとして説明する。但し、濾過装置1による濾過対象の液体は、水以外の任意の液体でよい。濾過装置1は、濾過対象の液体がある環境、例えば、海中で当該液体を直接濾過する。即ち、濾過装置1は、濾過対象の液体がある環境から液体をくみ上げることなく、例えば、海から海水をくみ上げることなく、液体を濾過する。
【0017】
濾過装置1は、例えば、海中で用いられ、海水を濾過して、海中に存在する環境DNAの採取に用いられる。海水の濾過によって、濾過装置1に含まれる濾材に、濾物として環境DNAが残ることで、環境DNAを採取することができる。濾過装置1は、環境DNA以外の採取に用いられてもよい。濾過装置1は、採取以外の目的で用いられてもよい。
【0018】
本実施形態に係る濾過装置1は、深海での利用も想定されるものである。即ち、濾過装置1は、深海での環境DNAの採取を行い得るものである。後述するように濾過装置1は、深海等の高圧の環境下でも利用可能な構成を有する。例えば、濾過装置1は、水深約11000mでのフルデプスでの大量濾過を可能な構成を有する。
【0019】
引き続いて、本実施形態に係る濾過装置1の構成を説明する。濾過装置1は、ポンプ10と、濾材20と、ポンプユニット30とを備える。ポンプ10は、液体中で当該液体を吸い込んで吐出する装置である。ポンプ10は、ピストンポンプであってもよい。濾材20は、ポンプによって吐出された液体を濾過する部材である。ポンプユニット30は、ポンプ10を収容すると共に均圧構造となっているユニットである。ポンプユニット30は、ポンプ10を収容する筐体を有しており、当該筐体内に樹脂が充填されていることで均圧構造となっていてもよい。樹脂は、絶縁樹脂であってもよい。
【0020】
具体的には、濾過装置1は、図1に示す構成を取る。濾過装置1は、濾過対象の海水を吸い込んで吐出し、吐出した海水を濾過する。濾過装置1は、濾過対象の海水を吸い込んで吐出するための構成としてポンプ10を備える。濾過装置1は、ポンプ10を収容するポンプユニット30を備える。図2に、ポンプユニット30の内部を模式的に示す。
【0021】
ポンプ10は、例えば、電力によって動作するピストンポンプ(ソレノイドポンプ、パルスポンプ)である。ポンプ10としては、環境DNAの採取の行いやすさから、低流量かつ吐出圧力の高いものを用いてもよい。ポンプ10として用いられるピストンポンプは、従来のものを用いることができる。図2に示すように、ポンプ10は、シリンダー11と、ピストン12と、ばね13と、電磁石14とを備える。シリンダー11には、液体Lの流路が設けられている。液体Lの流路に繋がっているシリンダー11の内部には、ピストン12及びばね13が設けられる。シリンダー11の外部に設けられた電磁石14によってばね13が動作し、これによってばね13に接続されたピストン12が往復運動する。ピストン12の往復運動によって、濾過対象の液体Lが吸い込まれ、吸い込まれた液体Lが押し出されて吐出される。ポンプ10には、電力を供給するためのケーブルが接続されている。例えば、ポンプ10に供給される電力は、AC(交流)100Vの電圧による電力である。
【0022】
ポンプユニット30は、ポンプ10を収容する筐体31を有している。図1及び図2に示すように、ポンプユニット30の筐体31内には、流量計41が設けられていてもよい。筐体31は、例えば、ポンプ10及び流量計41を収容できる容積を有する樹脂製の箱型のものであってもよい。筐体31には、ポンプ10が吸い込む海水が流入する開口と、ポンプ10が吐出する海水が流出する開口とが設けられる。
【0023】
ポンプユニット30の内部において、流量計41は、ポンプユニット30の海水が流入する開口とポンプ10との間に設けられる。流量計41は、ポンプ10が、吸い込んで吐出する海水の流量を測定する。流量計41には、測定した流量を示す流量信号Fを出力するためのケーブルが接続されている。流量計41は、従来のものを用いることができる。なお、濾過装置1は、流量計41を備えていなくてもよい。
【0024】
ポンプユニット30は、深海等の高圧の液体中でもポンプ10が動作するように均圧構造とされる。例えば、ポンプユニット30の筐体31内に液状の硬化性樹脂を流し込んで筐体内で硬化させ、筐体31内に樹脂32が充填されていることで均圧構造としてもよい。即ち、樹脂包埋によってポンプユニット30を均圧化する。ポンプユニット30の均圧化に用いられる樹脂は、例えば、絶縁性のエポキシ樹脂である。絶縁性の樹脂を用いることで、当該樹脂を均圧化のためだけではなく、モールディングのために用いることができる。これによって、電力で動作するポンプ10及び流量計41を適切に動作させることができる。
【0025】
なお、ポンプユニット30の均圧化に用いられる樹脂は、エポキシ樹脂以外のものであってもよい。また、用いるポンプ10及び流量計41によっては、絶縁樹脂以外の樹脂が用いられてもよい。また、ポンプユニット30の均圧化は、上記以外の構成によって行われてもよい。均圧構造とすることで耐圧構造とする場合と比べて、ポンプユニット30の軽量化及び大深度化を図ることができる。
【0026】
ポンプユニット30のポンプ10が吐出する海水が流出する開口には、濾材20が接続される。例えば、図1に示すように、当該開口には、ポンプ10から吐出された海水を濾材20に送るための継手42が接続される。継手42には、濾材20が接続されている。濾材20としては、深海等の高圧化で利用可能な従来の濾過用のカードリッジ(カードリッジフィルター)を用いることができる。濾過用のカードリッジとしては、環境DNAの採取の行いやすさから、メッシュサイズが小さいものを用いてもよい。但し、濾材20は、それ以外の任意の濾材が用いられてもよい。また、継手42としては、深海等の高圧化で利用可能な従来の継手を用いることができる。但し、濾過装置1には、継手42が設けれている必要はなく、ポンプユニット30の開口に濾材20が直接接続されていてもよい。
【0027】
図1に示すように、濾過装置1は、ポンプユニット30に接続されるコントロールユニット50を備える。コントロールユニット50は、コントローラー51と、バッテリー52とを含む。コントロールユニット50は、筐体を有している。当該筐体内に、コントローラー51と、バッテリー52とが配置される。
【0028】
コントローラー51は、ポンプ10に接続されており、ポンプ10を制御する。例えば、コントローラー51は、タイマーによって、ポンプ10の動作時間を制御し、濾過の開始時間及び終了時間(即ち、濾過時間及び濾過間隔)を制御する。ポンプ10の動作時間、即ち、濾過の開始時間及び終了時間は、予め設定されてコントローラー51に記憶されていてもよい。また、繰り返し濾過が行われるようにされてもよい。また、コントローラー51は、流量計41に接続されており、流量計41から、測定された流量を示す流量信号を受信し、濾過量を濾過時間と共に記録してもよい。コントローラー51としては、機器の制御に用いられる従来のコンピュータを用いることができる。
【0029】
バッテリー52は、ポンプ10、流量計41及びコントローラー51に接続されており、これらに動作するための電力を供給する装置である。バッテリー52としては、従来のバッテリーを用いることができる。
【0030】
通常、コントロールユニット50は、ポンプユニット30と同様に深海等の高圧の液体中に配置される。そのため、コントロールユニット50も、高圧の液体中でも耐え得る構成とされる。例えば、コントロールユニット50は、従来の耐圧構造とされる。なお、コントロールユニット50は、濾過装置1の主要部分ではないため、コントロールユニット50を耐圧構造にしたとしても、濾過装置1全体としては、深海等で利用に支障がでるほどに大型化することはない。また、コントロールユニット50を、ポンプユニット30と同様に均圧構造としてもよい。但し、コントロールユニット50の均圧構造は、ポンプユニット30の均圧構造と別の均圧構造であってもよい。
【0031】
ポンプ10等を動作させる又は制御する構成としては、必ずしも上記のコントロールユニット50の構成を取る必要はなく、ポンプ10等を動作させることができれば、任意の構成を取ってもよい。以上が、本実施形態に係る濾過装置1の構成である。
【0032】
引き続いて、本実施形態に係る濾過装置1の利用方法を説明する。ここでは、海中に存在する環境DNAの採取に利用する場合の例を説明する。即ち、本実施形態に係る環境DNAの採取方法を例として、濾過装置1の利用方法を説明する。
【0033】
濾過装置1は、濾過を行う場所、例えば、海底等の海中に設置される。濾過を行う場所である海中は、環境DNAが存在する環境における液体が存在する場所である。例えば、濾過装置1は、フリーフォール型の海中設置機器(例えば、ランダー又はベイトカメラ)に搭載されて、海底に設置される。あるいは、濾過装置1は、有人潜水調査船又は無人探査機等に搭載されて、海中に設置される。通常、濾過装置1の構成であるポンプ10を含むポンプユニット30、濾材20及びコントロールユニット50の全てが海底等の海中に設置される。但し、海中で濾過をする上では、濾過装置1の構成のうち少なくともポンプユニット30が海中に設置されればよい。
【0034】
海中に設置された濾過装置1では、ポンプユニット30のポンプ10が海水を吸い込んで吐出し、吐出された海水が濾材20を経由して排出される。その際、海水が濾材20によって濾過される。海水の濾過によって、濾材20に海水に含まれていた環境DNAが濾物として残る。濾過後、濾過装置1は海中から回収される。濾過装置1の回収後、濾材20に付着した環境DNAは、環境DNA固定試薬等で固定されてもよい。固定により、環境DNAを長期間、安定して保管することができる。これによって環境DNAの採取が外洋域で行われる場合等、陸上の実験室に持ち帰るまでの時間が長期に及ぶ場合でも、問題なく環境DNA解析を行うことができる。このように得られた環境DNAは、魚類を含む深海生物の多様性解析等に利用可能である。
【0035】
上記の例は、環境DNAの採取を目的として濾過装置1を利用する例であったが、それ以外の目的で濾過装置1を利用してもよい。その場合も、濾過装置1による濾過は、上記と同様に行われればよい。また、上記以外の方法で濾過装置1が利用されてもよい。以上が、本実施形態に係る濾過装置1の利用方法である。
【0036】
上述したように本実施形態に係る濾過装置1は、ポンプユニット30が均圧構造となっていることで、高圧の液体中で用いることができ、かつサイズを小さくすることができる。例えば、上述したように濾過装置1は、水深約11000mでのフルデプス、即ち、世界最深部でも用いることができる。また、このように濾過装置1のサイズを小さくして軽量化が可能になったことにより、様々な調査機器に搭載することができる。
【0037】
また、本実施形態のようにポンプ10は、ピストンポンプであってもよい。この構成によれば、適切かつ確実に濾過装置1を、高圧の液体中で用いることができ、かつサイズを小さいものにすることができる。但し、ポンプ10としては、ピストンポンプ以外が用いられてもよい。
【0038】
また、本実施形態のように、ポンプユニット30は、筐体31内に樹脂32が充填されていることで均圧構造となっていてもよい。この構成によれば、適切かつ確実にポンプユニット30の均圧構造を実現することができる。その結果、適切かつ確実に本実施形態に係る濾過装置1を実施することができる。
【0039】
また、ポンプユニット30を均圧構造とするための樹脂は、絶縁樹脂であってもよい。この構成によれば、例えば、電気で動作するポンプ10を用いる場合に、適切かつ確実に濾過装置1を動作させることができる。但し、当該樹脂は、絶縁樹脂以外のものであってもよい。また、ポンプユニット30の均圧構造は、樹脂以外で実現されてもよい。
【0040】
また、本実施形態に係る環境DNAの採取方法によれば、例えば、環境の負荷及び汚染(コンタミネーション)の低減の観点から、深海の環境DNAを適切に採取することができる。例えば、上述したように低流量かつ吐出圧力の高いポンプを用いることにより、メッシュサイズが小さい濾過用のカードリッジを用いた、クリーンな環境DNA採取が可能となる。上述したようにコントローラー51に濾過の開始時間及び終了時間を設定しておく等によって、濾過装置1の自律的な大量濾過も可能である。即ち、本実施形態に係る濾過装置1を用いることで、自律型大量濾過システムを構成することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る環境DNAの採取方法を用いることで、これまで研究が困難であった超深海域及び沖合深海域での生態系調査を簡便かつ効率的に行うことができる。また、沖合海洋保護区等の長期モニタリングにも有用である。
【0042】
但し、環境DNAの採取は、海中以外の環境DNAが存在する環境における液体の中で行われてもよい。また、本実施形態に係る濾過装置1は、環境DNAの採取以外の目的で利用されてもよい。
【0043】
本開示の濾過装置及び採取方法は、以下の構成を有する。
[1] 液体中で当該液体を吸い込んで吐出するポンプと、
前記ポンプによって吐出された液体を濾過する濾材と、
前記ポンプを収容すると共に均圧構造となっているポンプユニットと、
を備える濾過装置。
[2] 前記ポンプは、ピストンポンプである[1]に記載の濾過装置。
[3] 前記ポンプユニットは、前記ポンプを収容する筐体を有しており、当該筐体内に樹脂が充填されていることで均圧構造となっている[1]又は[2]に記載の濾過装置。
[4] 前記樹脂は、絶縁樹脂である[3]に記載の濾過装置。
[5] [1]~[4]の何れかに記載の濾過装置のポンプユニットを、環境DNAが存在する環境における液体の中に配置して、当該濾過装置によって当該液体を濾過して当該環境DNAを採取する採取方法。
[6] 前記環境DNAが存在する環境における液体の中は、海中である[5]に記載の採取方法。
【符号の説明】
【0044】
1…濾過装置、10…ポンプ、11…シリンダー、12…ピストン、13…ばね、14…電磁石、20…濾材、30…ポンプユニット、31…筐体、32…樹脂、41…流量計、42…継手、50…コントロールユニット、51…コントローラー、52…バッテリー。
図1
図2