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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133819
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】作業支援システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240926BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20240926BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20240926BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240926BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E02F9/24 H
G08B21/00 U
G08B21/24
E02F9/26 Z
E02F9/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043794
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】増田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 千晶
(72)【発明者】
【氏名】池上 誠
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
5C086
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA06
2D003BA07
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D015GA03
2D015GB01
2D015GB07
2D015HA03
2D015HB05
5C086AA22
5C086AA46
5C086AA53
5C086BA19
5C086BA22
5C086CA06
5C086CA22
5C086CB27
5C086DA08
5C086FA01
5C086FA11
(57)【要約】
【課題】可動部が接近対象物に接近したことを、より確実に報知することができる作業支援システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】作業支援システム10は、車両50が有する高さ方向に移動可能である可動部51が架線61へ接近したことを報知する。作業支援システム10は、架線61に対応する位置に設けられ、情報信号Saを送信する第1子機30と、可動部51の最大高さHmを検出し、検出した可動部51の最大高さHmを情報として含む情報信号Sbを送信する第2子機40と、情報信号Sa,Sbを受信し、受信した情報信号Saのシグナル強度が予め設定されるシグナル強度閾値以上であり、かつ、受信した情報信号Sbに含まれる情報である可動部51の最大高さHmが予め設定される高さ閾値H1以上であるときに可動部51が架線61へ接近したことを報知する親機20と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両又は荷役運搬機械が有する高さ方向に移動可能である可動部が接近対象物へ接近したことを報知する作業支援システムであって、
前記接近対象物に対応する位置に設けられ、無線信号を送信する第1子機と、
前記可動部の高さを検出し、検出した前記可動部の高さを情報として含む情報信号を送信する第2子機と、
前記無線信号及び前記情報信号を受信し、受信した前記無線信号のシグナル強度が予め設定されるシグナル強度閾値以上であり、かつ、受信した前記情報信号に含まれる情報である前記可動部の高さが予め設定される高さ閾値以上であるときに前記可動部が前記接近対象物へ接近したことを報知する親機と、を備える、
作業支援システム。
【請求項2】
前記親機は、作業者の前記車両又は前記荷役運搬機械への操作により前記可動部が高さ方向に移動可能な状態で、受信した前記情報信号に含まれる情報である前記可動部の高さを前記高さ閾値として設定する際に操作される高さ閾値設定部を備える、
請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記シグナル強度閾値は、複数の前記第1子機毎に設定されており、
複数の前記第1子機は、それぞれ異なる識別コードを含む前記無線信号を送信し、
前記親機は、複数の前記第1子機それぞれからの前記無線信号を受信して、受信した前記無線信号に含まれる前記識別コードに応じて前記無線信号の送信元となる前記第1子機を識別し、識別した前記第1子機毎に、受信した前記無線信号のシグナル強度が前記シグナル強度閾値以上であるか否かを判別する、
請求項1又は2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記高さ閾値は、複数の前記第1子機毎に設定されており、
前記親機は、識別した前記第1子機毎に、受信した前記情報信号に含まれる情報である前記可動部の高さが前記高さ閾値以上であるか否かを判別する、
請求項3に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記親機は、
前記可動部が前記接近対象物へ接近したことを報知する報知部と、
受信した前記無線信号のシグナル強度が前記シグナル強度閾値以上であり、かつ、受信した前記情報信号に含まれる情報である前記可動部の高さが前記高さ閾値以上である状態で、前記無線信号のシグナル強度が高くなるにつれて、又は前記可動部の高さが高くなるにつれて、強い注意喚起を促すように報知態様を変化させて前記報知部を介して報知する制御部と、を備える、
請求項1又は2に記載の作業支援システム。
【請求項6】
前記無線信号と前記情報信号は、それぞれ、無線通信規格において複数の通信機器間で通信が確立する前に不特定多数の相手にデータを送信するブロードキャスト通信として前記第1子機と前記第2子機から前記親機に送信される信号である、
請求項1又は2に記載の作業支援システム。
【請求項7】
前記第1子機は、前記第1子機のバッテリ残量に係る情報を含ませた前記無線信号を送信し、
前記親機は、受信した前記無線信号に含まれる前記第1子機のバッテリ残量に係る情報に基づいて前記第1子機のバッテリ残量を報知する、
請求項1又は2に記載の作業支援システム。
【請求項8】
コンピュータに、
接近対象物に対応する位置に設けられる第1子機からの無線信号を通信部にて受信する機能、
車両又は荷役運搬機械が有する高さ方向に移動可能である可動部の高さを情報として含む第2子機からの情報信号を前記通信部にて受信する機能、
受信した前記無線信号のシグナル強度が予め設定されるシグナル強度閾値以上であり、かつ、受信した前記情報信号に含まれる情報である前記可動部の高さが予め設定される高さ閾値以上であるときに前記可動部が前記接近対象物へ接近したことを報知部にて報知する機能を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業支援システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の建設機械は、架線切断事故を抑制するため、ブームに傾斜センサを設け、ブームの傾斜角が設定値に至った場合に報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-154120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、建設機械のブーム(可動部)が架線(接近対象物)に接近したことを正確に検出できず、報知の精度に改善の余地があった。
【0005】
本開示は、上記実状を鑑みてなされたものであり、可動部が接近対象物に接近したことを、より確実に報知することができる作業支援システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係る作業支援システムは、車両又は荷役運搬機械が有する高さ方向に移動可能である可動部が接近対象物へ接近したことを報知する作業支援システムであって、前記接近対象物に対応する位置に設けられ、無線信号を送信する第1子機と、前記可動部の高さを検出し、検出した前記可動部の高さを情報として含む情報信号を送信する第2子機と、前記無線信号及び前記情報信号を受信し、受信した前記無線信号のシグナル強度が予め設定されるシグナル強度閾値以上であり、かつ、受信した前記情報信号に含まれる情報である前記可動部の高さが予め設定される高さ閾値以上であるときに前記可動部が前記接近対象物へ接近したことを報知する親機と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の第2の観点に係るプログラムは、コンピュータに、接近対象物に対応する位置に設けられる第1子機からの無線信号を通信部にて受信する機能、車両又は荷役運搬機械が有する高さ方向に移動可能である可動部の高さを情報として含む第2子機からの情報信号を前記通信部にて受信する機能、受信した前記無線信号のシグナル強度が予め設定されるシグナル強度閾値以上であり、かつ、受信した前記情報信号に含まれる情報である前記可動部の高さが予め設定される高さ閾値以上であるときに前記可動部が前記接近対象物へ接近したことを報知部にて報知する機能を実現させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、可動部が接近対象物に接近したことを、より確実に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る作業支援システムの模式図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る作業支援システムのブロック図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る作業支援システムの通信態様を示すシーケンス図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る報知判定処理のフローチャートである。
図5】比較例に係る親機と子機の通信態様を示すシーケンス図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る親機のディスプレイに表示される画像図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る作業支援システムの模式図である。
図8】本開示の第2実施形態に係る作業支援システムの模式図である。
図9】本開示の第2実施形態に係る親機のディスプレイに表示される画像図である。
図10】本開示の第3実施形態に係る作業支援システムの模式図である。
図11】本開示の変形例に係る作業支援システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に係る作業支援システム及びプログラムについて、図面を参照して説明する。
図1に示すように、作業支援システム10は、親機20と、第1子機30と、第2子機40と、を備える。
作業支援システム10は、車両50が有する高さ方向に移動可能である可動部51が接近対象物である架線61に接近したことを親機20にて報知するシステムである。本実施形態では、車両50は、建設機械の一種であるショベルカーであり、可動部51は、ショベルカーのブームである。架線61は、2つの電柱60の間に掛け渡されている。
【0011】
(第1子機30)
第1子機30は、架線61の周辺に設置され、支持部材65により地面から離れた位置に支持されている。第1子機30は、自身の位置を親機20に知らせるために定期的(例えば、1秒毎)に無線信号(情報信号Sa)を発するビーコンである。なお、第1子機30は、架線61の周辺の地面に設置されてもよい。
【0012】
図2に示すように、第1子機30は、制御部31と、無線通信部33と、バッテリ34と、を備える。
バッテリ34は、第1子機30の各部に電源を供給する。
無線通信部33は、アンテナ及び送信回路を有し、制御部31による制御のもと、情報信号Saを送信可能に構成されている。
制御部31は、第1子機30全体を制御する。制御部31は、バッテリ34のバッテリ残量を検出する機能と、各コードA1,A2,A3を含む情報信号Saを生成し、生成した情報信号Saを無線通信部33を介して定期的に送信する機能と、を有する。
【0013】
情報信号Saは、第1子機30の固有のID(Identification)である個体識別コードA1と、予め設定されるシグナル強度閾値Thに係る情報を含むシグナル強度閾値コードA2と、第1子機30のバッテリ34の残量に係る情報を含むバッテリ残量コードA3と、を含む。
シグナル強度閾値Thは、親機20の判断処理で利用される値であり、作業者により設定可能である。シグナル強度閾値Thは、例えば、第1子機30が発する信号強度を100として所定距離離間した位置で受信される信号強度である。例えば、作業者は、親機20への操作により親機20に所望の離間距離(例えば、1~10mの任意の距離)に対応するシグナル強度閾値Thを入力し、その後、親機20と第1子機30の間での近距離無線通信(NFC: Near Field Communication)により第1子機30にシグナル強度閾値Thが設定される。
これに限らず、シグナル強度閾値Thは、第1子機30に設けられる操作部(図示略)により設定されてもよい。
バッテリ残量コードA3は、バッテリ34の残量を示すコードである。
【0014】
情報信号Saは、既存の無線通信規格(通信プロトコル)にて、複数の通信機器間で通信が確立する、すなわち、ペアリングされる前に送信されるアドバタイズパケットとして親機20に送信される信号である。このアドバタイズパケットは、第1子機30が不特定多数の相手にデータを送信する一方通行のブロードキャスト通信である。この既存の無線通信規格とは、例えば、Bluetooth(登録商標)であり、特に、消費電力を低減可能なBluetooth Low Energy(登録商標)であることが好ましい。
なお、既存の無線通信規格としては、Bluetooth(登録商標)に限らず、Wi-Fi(登録商標)が採用されてもよい。
【0015】
(第2子機40)
図1に示すように、第2子機40は、可動部51に設けられ、可動部51の最大高さHmを示す情報として可動部51の傾斜角度αに係る情報を含む情報信号Sbを親機20に無線送信する。
図2に示すように、第2子機40は、制御部41と、無線通信部43と、バッテリ44と、センサ45と、を備える。
第2子機40の無線通信部43及びバッテリ44は、第1子機30の無線通信部33及びバッテリ34と同様に構成されている。
【0016】
センサ45は、傾斜センサであり、可動部51の傾斜角度αを検出し、検出結果を制御部41に出力する。傾斜角度αは大きくなるほど、可動部51の最大高さHmが高くなる。傾斜角度αの0(ゼロ)°は、任意に設定可能であるが、本例では、図1に示すように、アーム52とブーム(可動部51)のなす角度が略直角となり、かつ、アーム52が水平面Hpに対して略直角となった状態におけるブーム(可動部51)の運転席キャビン53側の部位51bが延びる角度に設定されている。また、傾斜角度αの正方向は、ブーム(可動部51)が運転席キャビン53に近づく方向(図1の時計回り方向)に設定されている。
【0017】
制御部41は、センサ45により検出された傾斜角度αを取得する機能と、バッテリ44のバッテリ残量を検出する機能と、各コードB1,B2,B3を含む情報信号Sbを生成し、生成した情報信号Sbを無線通信部43を介して定期的に送信する機能と、を備える。
【0018】
情報信号Sbは、第2子機40の固有のIDである個体識別コードB1と、センサ45の検出結果(傾斜角度αに係る情報)を含む検出コードB2と、第2子機40のバッテリ44の残量に係る情報を含むバッテリ残量コードB3と、を含む。
情報信号Sbは、情報信号Saと同様に、既存の無線通信規格のアドバタイズパケットとして親機20に送信される信号である。
【0019】
(親機20)
親機20は、例えば、スマートフォン等の携帯通信端末であり、車両50の車室内に設置されているか、車両50の作業者により携帯されている。
なお、親機20は、車載装置として車両50に予め搭載されていてもよい。
【0020】
親機20は、制御部21と、操作入力部22と、無線通信部23と、バッテリ24と、スピーカ25と、ディスプレイ26と、を備える。親機20は、上述した既存の無線通信規格にて他の通信機器とペアリングされて通信接続可能に構成されているが、第1子機30及び第2子機40との間ではペアリングされずに第1子機30及び第2子機40から一方的に情報信号Sa,Sbを受信する。
【0021】
バッテリ24は、親機20の各部に電源を供給する。
操作入力部22は、ディスプレイ26に形成されるタッチセンサからなり、作業者により操作されると操作信号を制御部21に出力する。なお、操作入力部22は、タッチセンサに限らず、プッシュスイッチ又はダイヤルスイッチ等の物理的なスイッチであってもよい。
無線通信部23は、アンテナ及び送受信回路を有し、情報信号Sa,Sbを含む各種無線信号を受信可能に構成されている。
【0022】
スピーカ25は、制御部21による制御のもと、車両50の可動部51が第1子機30(架線61)に接近したことを音により報知する。
ディスプレイ26は、制御部21による制御のもと画像を表示する。
【0023】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)からなる処理部と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる記憶部と、を有する。この記憶部には、制御部21の機能を実現させるプログラムPGが格納されている。
【0024】
次に、図3を参照しつつ、親機20(制御部21)と第1子機30(制御部31)及び第2子機40(制御部41)との間での通信態様について説明する。
第1子機30は定期的に情報信号Saを送信し、第2子機40は定期的に情報信号Sbを送信する。
親機20は、第1子機30及び第2子機40からアドバタイズパケットとして情報信号Sa,Sbを受信する。親機20は、情報信号Sa,Sbを受信すると、可動部51の架線61への接近を報知するための報知判定処理S1を実行する。
【0025】
図4のフローチャートを参照しつつ報知判定処理S1について説明する。
親機20は、受信した情報信号Saのシグナル強度を計測するとともに、個体識別コードA1に基づき情報信号Saの送信元となる第1子機30を識別する(ステップS101)。そして、親機20は、情報信号Saのシグナル強度閾値コードA2に含まれるシグナル強度閾値Thを取得し、受信した情報信号Saのシグナル強度がシグナル強度閾値Th以上であるか否かを判別する(ステップS102)。
【0026】
親機20は、情報信号Saのシグナル強度がシグナル強度閾値Th未満であると判別すると(ステップS102;NO)、親機20が第1子機30を中心とした報知許可エリアAr(図7参照)外に位置しているとして報知せずに当該報知判定処理S1を終了する。
【0027】
親機20は、情報信号Saのシグナル強度がシグナル強度閾値Th以上であると判別すると(ステップS102;YES)、受信した情報信号Sbに含まれる検出コードB2から可動部51の傾斜角度αを取得し、取得した傾斜角度αが予め設定される角度閾値Ta以上であるか否かを判別する(ステップS103)。
親機20は、取得した傾斜角度αが角度閾値Ta未満であると判別すると(ステップS103;NO)、可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1(図1参照)未満であるとして、スピーカ25及びディスプレイ26により報知せずに当該報知判定処理S1を終了する。
【0028】
一方、親機20は、取得した傾斜角度αが角度閾値Ta以上であると判別すると(ステップS103;YES)、可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1(図1参照)以上であるとして、可動部51が架線61へ接近したことをスピーカ25及びディスプレイ26により報知して(ステップS104)、当該報知判定処理S1を終了する。角度閾値Taは、高さ閾値H1に対応する傾斜角度αである。角度閾値Taの設定方法については後述する。
報知判定処理S1は定期的に繰り返し実行される。なお、上記ステップS102とS103の順序は逆であってもよく、また、同時であってもよい。
【0029】
親機20は、報知判定処理S1を実行するとともに、バッテリ残量コードB3に含まれる第2子機40のバッテリ残量に係る情報を取得し、バッテリ残量が予め設定される残量閾値以下であるときには、バッテリ残量が低下していることをスピーカ25とディスプレイ26の少なくとも何れか一方により作業者に報知する。バッテリ残量が残量閾値を超えているときには報知しない。
なお、親機20は、バッテリ残量に関わらず、ディスプレイ26にバッテリ残量を表示してもよい。
【0030】
本実施形態では、作業支援システム10での通信は、既存の無線通信規格のうちアドバタイズパケットのみが利用されている。
比較例として図5に示すように、既存の無線通信規格では、子機130(ペリフェラル)は、アドバタイズパケットSpを定期的に無線送信する。親機120は、アドバタイズパケットSpを受信できるか否かをスキャンする(ステップS121)。
親機120は、アドバタイズパケットSpを受信すると、接続要求信号Srを子機130に無線送信する。子機130が接続要求信号Srを受信すると、親機120と子機130の間で通信が確立してペアリングされた状態となり、親機120と子機130の間で双方向での情報の送受信が可能となる(ステップS122,S123)。
【0031】
なお、親機120は、アドバタイズパケットSpのみでは情報が不足する場合には、追加情報を子機130に求める。すなわち、親機120は、アドバタイズパケットSpの受信後、スキャン要求信号を子機130に無線送信し、子機130は、スキャン要求信号を受信後、スキャン応答信号を親機120に無線送信してもよい。親機120は、スキャン応答信号を受信することにより追加情報を得られる。
本実施形態では、既存の無線通信規格のうちアドバタイズパケットSp以降の処理が不要となる。よって、各子機30,40と親機20の間の通信を簡易化し、この通信に係る消費電力を低減することができる。
【0032】
次に、親機20における角度閾値Taの設定方法について説明する。
制御部21は、ディスプレイ26に図6に示す画像G1を表示しつつ角度閾値設定機能を実行する。角度閾値設定機能での画像G1は、角度閾値表示部26aと、角度閾値決定部26bと、状況表示部26cと、高さ表示部26dと、バッテリ残量表示部26fと、報知音オンオフ切り替え部26hと、現在角度表示部26iと、を含む。
【0033】
現在角度表示部26iは、センサ45により検出された可動部51の傾斜角度αを表示する表示領域である。
角度閾値決定部26bは、角度閾値表示部26aに表示された角度閾値に決定する際にタッチ操作される仮想ボタン領域である。
角度閾値表示部26aは、角度閾値の決定前には現在角度表示部26iと同じ角度が表示され、角度閾値の決定後には決定された角度閾値が表示される。また、角度閾値表示部26aには直接に数値を入力可能である。
【0034】
状況表示部26cは、領域内の色が変化することにより、可動部51が架線61に接近している度合いを表示する。状況表示部26cは、傾斜角度αが角度閾値Ta未満(すなわち、可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1未満)であるときには緑色又は青色で表示され、傾斜角度αが角度閾値Ta以上(すなわち、可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1以上)であるときには赤色又は黄色で表示される。
【0035】
高さ表示部26dは、可動部51の最大高さHmをバーグラフとして表示する。高さ表示部26dは、上下方向に複数の点灯セグメントSgが並んでおり、傾斜角度αが大きくなるにつれて、すなわち、可動部51の最大高さHmが高くなるにつれて、点灯する点灯セグメントSgの数が下側から増えていく。
バッテリ残量表示部26fは、第1子機30のバッテリ残量を表示する領域である。
報知音オンオフ切り替え部26hは、報知音のオンオフを切り替える際に操作される操作部である。
【0036】
ここで、作業者が角度閾値Taを設定する手順について説明する。
作業者は、親機20のディスプレイ26に画像G1を表示させつつ、運転席キャビン53内で可動部51の傾斜角度αを変化させるように車両50への操作を行う。このとき、作業者は、架線61に対する可動部51の高さを視認しつつ可動部51の最大高さHmを架線61に接近させた状態とし、この状態で画像G1の角度閾値決定部26bを操作する。これにより、角度閾値決定部26bへの操作により、現在角度表示部26iに表示される現在の可動部51の傾斜角度αが角度閾値Taに、言い換えると、現状の可動部51の可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1に設定される。このとき、制御部21は、現在の可動部51の傾斜角度αを、自身の記憶部に角度閾値Taとして上書きすることにより角度閾値Taを設定する。この設定後は、設定された角度閾値Taが利用されて上述した報知判定処理S1が実行される。
以上で、角度閾値Taの設定が完了する。
この設定方法の他、角度閾値表示部26aに直接に数値を入力した後、角度閾値決定部26bへの操作により、角度閾値Taが入力した数値に設定される。
【0037】
角度閾値Taの設定の完了後、作業者は、図7の矢印A1で示すように、車両50が第1子機30を中心とした報知許可エリアAr内となると、情報信号Saのシグナル強度がシグナル強度閾値Th以上となる。報知許可エリアAr内で、作業者の車両50への操作により可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1以上となると、親機20のスピーカ25から報知音、例えば、ビープ音が発される。よって、作業者は、可動部51が架線61に接近していることを確実に認識することができ、可動部51が架線61に接触することを避けることができる。
【0038】
(効果)
以上、説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)作業支援システム10は、車両50が有する高さ方向に移動可能である可動部51が接近対象物の一例である架線61へ接近したことを報知する。作業支援システム10は、架線61に対応する位置に設けられ、無線信号の一例である情報信号Saを送信する第1子機30と、可動部51の最大高さHmを可動部51の傾斜角度αとして間接的に検出し、検出した可動部51の最大高さHmを情報として含む情報信号Sbを送信する第2子機40と、情報信号Sa,Sbを受信し、受信した情報信号Saのシグナル強度が予め設定されるシグナル強度閾値Th以上であり、かつ、受信した情報信号Sbに含まれる情報である可動部51の最大高さHmが予め設定される高さ閾値H1以上であるときに可動部51が架線61へ接近したことを報知する親機20と、を備える。
この構成によれば、車両50の可動部51が架線61に接近したことを、より確実に報知することができる。
【0039】
(2)親機20は、作業者の車両50への操作により可動部51が高さ方向に移動可能な状態で、受信した情報信号Sbに含まれる情報である可動部51の最大高さHmを高さ閾値H1として設定する際に操作される高さ閾値設定部の一例である角度閾値決定部26bを備える。
この構成によれば、作業者は、可動部51を高さ方向に移動させつつ角度閾値決定部26bを操作するだけで、簡単に所望の高さ閾値H1に対応する角度閾値Taを設定することができる。
【0040】
(3)情報信号SaとSbは、それぞれ、無線通信規格において複数の通信機器間で通信が確立する前に不特定多数の相手にデータを送信するブロードキャスト通信として第1子機30と第2子機40から親機20に送信される信号である。
この構成によれば、第1子機30及び第2子機40と親機20の間で通信を確立(ペアリング)させる必要がないため、作業支援システム10は、車両50が架線61に接近したことを、簡易な手法で、より確実に報知することができる。また、作業支援システム10のシステム導入及び運用も簡便となる。さらに、第1子機30及び第2子機40と親機20との通信に係る消費電力を低減することができる。
また、従来、架線の周辺に、目印として、のぼり旗を立てていたが、作業者が、のぼり旗を見落とすことにより架線を断線させてしまうおそれがあったが、作業支援システム10では、作業者の近くにある親機20にて報知が行われるため、このような見落としによる架線の断線を抑制することができる。
【0041】
(4)第1子機30は、第1子機30のバッテリ残量に係る情報を含ませた情報信号Saを送信する。親機20は、受信した情報信号Saに含まれる第1子機30のバッテリ残量に係る情報に基づいて第1子機30のバッテリ残量を報知する。
この構成によれば、作業者は、第1子機30のバッテリ残量を知ることができ、第1子機30のバッテリ34の交換又は充電を適切なタイミングで行うことができる。
【0042】
(5)プログラムPGは、コンピュータの一例である親機20の制御部21に、架線61に対応する位置に設けられる第1子機30からの情報信号Saを通信部の一例である無線通信部23にて受信する機能、車両50が有する高さ方向に移動可能である可動部51の最大高さHmを情報として含む第2子機40からの情報信号Sbを無線通信部23にて受信する機能、受信した情報信号Saのシグナル強度が予め設定されるシグナル強度閾値Th以上であり、かつ、受信した情報信号Sbに含まれる情報である可動部51の最大高さHmが予め設定される高さ閾値H1以上であるときに可動部51が架線61へ接近したことをスピーカ25にて報知する機能を実現させる。
この構成によれば、車両50の可動部51が架線61に接近したことを、より確実に報知することができる。
【0043】
(第2実施形態)
本開示に係る作業支援システム及びプログラムの第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第1子機毎に報知許可エリアのサイズと高さ閾値を異ならせることが可能となる点が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0044】
図8に示すように、作業支援システム10Aは、上記第1実施形態の親機20及び第2子機40に加えて、複数の第1子機30a~30dを備える。複数の第1子機30a~30dは、2つの電柱60の間に並べられている。
第1子機30a~30dの設置位置に応じて、第1子機30a~30d毎にシグナル強度閾値Thと角度閾値Taが設定可能である。シグナル強度閾値Thが小さくなるほど、第1子機30a~30dを中心とした報知許可エリアAr1~Ar4のサイズが大きく設定される。角度閾値Taが小さくなるほど、高さ閾値Ha~Hdが小さく設定される。第1子機30a~30dとそれら直上に位置する架線61の部位との距離が小さくなるほど、シグナル強度閾値Thが大きく、すなわち、報知許可エリアAr1~Ar4が小さく、かつ、角度閾値Taが小さく、すなわち、高さ閾値Ha~Hdが小さく設定されることが好ましい。よって、各電柱60に近い第1子機30a,30dの報知許可エリアAr1,Ar4は、各電柱60から遠い第1子機30b,30cの報知許可エリアAr2,Ar3よりも大きく設定される。また、各電柱60に近い第1子機30a,30dの高さ閾値Ha,Hdは、各電柱60から遠い第1子機30b,30cの高さ閾値Hb,Hcよりも大きく設定される。シグナル強度閾値Thと角度閾値Taは、上記第1実施形態で説明した方法により設定される。
【0045】
親機20は、受信した情報信号Saの個体識別コードA1に基づき情報信号Saの送信元となる第1子機30a~30dを識別し、識別した第1子機30a~30d毎に上述した報知判定処理S1を実行する。
親機20は、第1子機30a~30d毎に、シグナル強度閾値コードA2に含まれるシグナル強度閾値Thを取得し、受信した情報信号Saのシグナル強度が報知許可エリアAr1~Ar4に対応するシグナル強度閾値Th以上であるか否かを判別する(ステップS102)。また、親機20は、第1子機30a~30d毎に、傾斜角度αが高さ閾値Ha~Hdに対応する角度閾値Ta以上であるか否かの判別を行う(ステップS103)。
これにより、下記の第1~第4の報知条件の何れか一つが満たされたときに報知が行われる。
第1の報知条件:親機20が報知許可エリアAr1内で可動部51の最大高さHmが高さ閾値Ha以上となる
第2の報知条件:親機20が報知許可エリアAr2内で可動部51の最大高さHmが高さ閾値Hb以上となる
第3の報知条件:親機20が報知許可エリアAr3内で可動部51の最大高さHmが高さ閾値Hc以上となる
第4の報知条件:親機20が報知許可エリアAr4内で可動部51の最大高さHmが高さ閾値Hd以上となる
【0046】
また、親機20は、各第1子機30a~30dとの通信を許可するにあたって、ディスプレイ26に、第1子機30a~30dそれぞれの個体名N1~N4を並べた画像G2(図9参照)を表示する。親機20は、個体名N1~N4について情報信号Saのシグナル強度が強い方を上側となるように個体名N1~N4を縦方向に並べて表示する。図9の例では、シグナル強度の大小関係は、個体名N1からのシグナル強度>個体名N2からのシグナル強度>個体名N3からのシグナル強度>個体名N4からのシグナル強度となる。シグナル強度が大きいほど、車両50(親機20)からの距離が近い第1子機30a~30dとなる。また、画像G2は、第1子機30a~30dとの通信を開始する際に操作される通信開始決定部27を含む。親機20は、通信開始決定部27が操作されると、画像G2に表示していた個体名N1~N4の第1子機30a~30dと通信を開始し、第1子機30a~30d毎に報知判定処理S1を実行する。
【0047】
(効果)
以上、説明した第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)シグナル強度閾値Thは、複数の第1子機30a~30d毎に設定されており、複数の第1子機30a~30dは、それぞれ異なる個体識別コードA1を含む情報信号Saを送信する。親機20は、複数の第1子機30a~30dそれぞれからの情報信号Saを受信して、受信した情報信号Saに含まれる個体識別コードA1に応じて情報信号Saの送信元となる第1子機30a~30dを識別し、識別した第1子機30a~30d毎に、受信した情報信号Saのシグナル強度がシグナル強度閾値Th以上であるか否かを判別する。
この構成によれば、第1子機30a~30dの設置位置に適したシグナル強度閾値Thを設定することにより、第1子機30a~30dの設置位置に適した報知許可エリアAr1~Ar4のサイズを設定することができる。
【0048】
(2)高さ閾値Ha~Hdは、複数の第1子機30毎に設定されている。親機20は、識別した第1子機30毎に、受信した情報信号Sbに含まれる情報である可動部51の最大高さHmが高さ閾値Ha~Hd以上であるか否かを判別する。
この構成によれば、第1子機30a~30dの設置位置に適した高さ閾値Ha~Hdを設定することができる。
【0049】
(第3実施形態)
本開示に係る作業支援システム及びプログラムの第3実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る作業支援システムは、複数の親機それぞれが各第1子機からの無線信号を受信可能に構成される点が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0050】
図10に示すように、作業支援システム10Bは、上記第1実施形態の第2子機40に加えて、第1子機30a~30dと、複数の親機20a~20cと、を備える。複数の親機20a~20cは、それぞれ、第1子機30a~30d及び第2子機40との通信を通じて、車両50の可動部51が架線61に接近したことを報知する。
なお、本実施形態では、複数の親機20a~20cは、1台の車両50の可動部51が架線61に接近したことを報知していたが、複数の親機20a~20cそれぞれに対応する複数台の車両の可動部51が架線61に接近したことを報知してもよい。これにより、複数台の車両の間で第1子機30a~30dを共用することができる。
【0051】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0052】
(変形例)
上記各実施形態においては、車両50はショベルカーであったが、ショベルカー以外のダンプカー、クレーン車、高所作業車等の車両又は荷役運搬機械であってもよい。また、図11に示すように、車両50Aがダンプカーである場合には、車両50Aの可動部51Aは荷台であり、可動部51A(荷台)の傾斜角度αを大きくすることにより、可動部51Aの最大高さHmが高くなり、可動部51A(荷台)の傾斜により積荷を降ろすことができる。この構成でも、上記各実施形態と同様に、作業支援システム10Cは、車両50Aの可動部51が第1子機30(架線61)に接近したことを報知することができる。
【0053】
上記各実施形態においては、NFC等を通じて、第1子機30にシグナル強度閾値Thを書き込むことで設定されていたが、親機20において、シグナル強度閾値Thを設定することにより、報知許可エリアArの大きさが設定可能であってもよい。この場合、親機20の制御部21は、報知許可エリアArの大きさを選択するための画像をディスプレイ26に表示し、選択結果に応じたシグナル強度閾値Thを設定する。例えば、制御部21は、サイズの大きい報知許可エリアArが選択された場合には、シグナル強度閾値Thとして第1シグナル強度閾値を設定し、サイズの小さい報知許可エリアArが選択された場合には、シグナル強度閾値Thとして第1シグナル強度閾値よりも大きい値である第2シグナル強度閾値を設定する。なお、報知許可エリアArのサイズは、2つに限らず、3つ以上であってもよい。上記第2実施形態では、親機20において、第1子機30a~30d毎に報知許可エリアAr1~Ar4のサイズを設定可能である。また、報知許可エリアArのサイズの設定は、第1子機を中心としたメートル単位で設定入力可能であってもよい。これら変形例においては、親機20でシグナル強度閾値Thが設定されるため、情報信号Saからシグナル強度閾値コードA2が省略されてもよい。
【0054】
上記各実施形態において、情報信号Sa,Sbに含まれるバッテリ残量コードA3,B3は省略されてもよい。この場合、親機20は、バッテリ残量に関する報知を行わない。
上記各実施形態においては、接近対象物は、架線61であったが、架線61以外のもの、例えば、建造物であってもよい。
【0055】
上記各実施形態において、制御部21又は制御部41は、センサ45により検出された傾斜角度αから三角関数を用いて可動部51Aの最大高さHmを算出し、算出した最大高さHmが高さ閾値以上となるか否かを判別してもよい。
【0056】
上記各実施形態において、親機20は、第1子機30及び第2子機40との間ではペアリングされずに第1子機30及び第2子機40から一方的に情報信号Sa,Sbを受信していたが、第1子機30及び第2子機40との間でペアリングされて情報信号Sa,Sbを受信してもよい。
【0057】
上記各実施形態においては、センサ45は、可動部51Aの最大高さHmを、可動部51の傾斜角度αとして間接的に検出する傾斜角度センサであったが、これに限らず、可動部51Aの最大高さHmを直接検出する高さ検出手段であってもよい。この高さ検出手段は、例えば、可動部51Aの最大高さHmから地面までの距離を測定するレーザー式、電磁波式等の距離計測センサであってもよいし、カメラで撮影された画像から可動部51Aの最大高さHmを解析する画像解析手段であってもよい。
【0058】
上記各実施形態においては、作業支援システム10,10A,10Bにおいては、報知のための閾値として1つの角度閾値Taが設定されていたが、これに限らず、複数の角度閾値が設定されることにより、複数の高さ閾値が設定されてもよい。例えば、図1に示すように、2つの高さ閾値H1,H2が設定されてもよい。高さ閾値H2は、高さ閾値H1よりも小さい値に設定され、高さ閾値H1に対応する角度閾値Taよりも小さい角度閾値に対応している。
親機20は、報知許可エリアAr内で可動部51の最大高さHmが高さ閾値H2以上となるとスピーカ25から第1の報知音を発し、報知許可エリアAr内で可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1以上となるとスピーカ25から第2の報知音を発する。この第2の報知音は、この第1の報知音よりも強い注意喚起を促す報知音である。この強い注意喚起は、音量、アラーム音の周期、又は音の種類を変化させることで実現される。例えば、この第1の報知音は一定周期毎に鳴るビープ音であり、この第2の報知音は連続的に鳴るビープ音であってもよい。なお、3つ以上の高さ閾値が設定されてもよい。また、可動部51の最大高さHmが高さ閾値H2以上となる範囲では最大高さHmが高くなるにつれて音量を大きくしたり、音の周期を短くしたりしてもよい。
この変形例によれば、以下の効果を奏する。
親機20は、可動部51が架線61へ接近したことを報知する報知部の一例であるスピーカ25と、受信した情報信号Saのシグナル強度がシグナル強度閾値Th以上であり、かつ、受信した情報信号Sbに含まれる情報である可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1以上である状態で、情報信号Saのシグナル強度が高くなるにつれて、又は可動部51の最大高さHmが高くなるにつれて、強い注意喚起を促すように報知態様を変化させてスピーカ25を介して報知する制御部21と、を備える。
この構成によれば、作業者は、報知態様により、緊急度合いを認識しやすい。
【0059】
上記各実施形態においては、親機20は、音により報知を行っていたが、音に代えて、又は音とともに、光又は振動等の他の報知手段により報知を行ってもよい。
【0060】
さらに、親機20が表示する画像G1の状況表示部26cの変化態様は適宜変更可能である。親機20は、可動部51の最大高さHmが高さ閾値H2未満であるときには状況表示部26cを緑色で表示し、可動部51の最大高さHmが高さ閾値H2以上で、かつ高さ閾値H1未満であるときには状況表示部26cを黄色で表示し、可動部51の最大高さHmが高さ閾値H1以上であるときには状況表示部26cを赤色で表示してもよい。また、可動部51の最大高さHmが高くなるにつれて点滅周期が短くなるように、状況表示部26cを点滅させてもよい。さらに、状況表示部26cの領域内を複数色のグラデーションで表示してもよい。この場合、例えば、緑色と赤色の2色のグラデーションで表示し、警告度合いが高まるほど、すなわち、可動部51が架線61へ近づくほど、赤色の領域を増やし、緑色の領域を減らしてもよい。さらに、状況表示部26cに、「○」、「△」、「×」等の図形を表示してもよい。この場合、「○」を緑色で表示し、「△」を黄色で表示し、「×」を赤色で表示してもよい。
【0061】
上記各実施形態において、親機20が車載装置として車両50に予め搭載されている場合、親機20と第2子機40は有線で接続されていてもよい。
【0062】
上記第2実施形態においては、第1子機30毎に、シグナル強度閾値Th(報知許可エリアAr1~Ar4)と角度閾値Ta(高さ閾値Ha~Hd)の両方が変更可能に構成されていたが、何れか一方の閾値が変更可能で、何れか他方の閾値が変更不能であってもよい。
【0063】
また、本発明の対象は親機20の機能を実現するためのプログラムPGであってもよい。この場合、当該プログラムPGは、ネットワークを介してコンピュータである制御部21にダウンロードされてもよいし、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、HDD(Hard Disk Drive)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10,10A,10B,10C 作業支援システム
20,120,20a~20c 親機
21,31,41 制御部
22 操作入力部
23,33,43 無線通信部
24,34,44 バッテリ
25 スピーカ
26 ディスプレイ
26a 角度閾値表示部
26b 角度閾値決定部
26c 状況表示部
26d 表示部
26f バッテリ残量表示部
26h 報知音オンオフ切り替え部
26i 角度表示部
27 通信開始決定部
30,30a~30d 第1子機
40 第2子機
45 センサ
50,50A 車両
51,51A 可動部
52 アーム
53 運転席キャビン
60 電柱
61 架線
65 支持部材
130 子機
α 傾斜角度
A1,B1 個体識別コード
A2 シグナル強度閾値コード
A3,B3 バッテリ残量コード
B2 検出コード
G1,G2 画像
H1,H2,Ha~Hd 高さ閾値
N1~N4 個体名
S1 報知判定処理
PG プログラム
Ar,Ar1~Ar4 報知許可エリア
Sa,Sb 情報信号
Ta 角度閾値
Hp 水平面
Sg 点灯セグメント
Th シグナル強度閾値
Sp アドバタイズパケット
Sr 接続要求信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11