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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013383
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240125BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20240125BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F28F9/22
F28D1/053 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115436
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西前 浩直
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065DA13
3L103AA01
3L103AA35
3L103BB42
3L103CC17
3L103CC22
3L103DD08
3L103DD32
3L103DD42
(57)【要約】
【課題】より簡単な構造変更で熱交換器のコア部における温度分布の不均一を解消し、蒸発器や凝縮器などとして用いられる熱交換器の性能向上を図る。
【解決手段】熱交換器は、複数のチューブと、チューブの一端側に接続される第1ヘッダタンクと、チューブの他端側に接続される第2ヘッダタンクを備え、複数のチューブによって熱交換コア部を形成する熱交換器であって、熱交換コア部は、第1ヘッダタンク及び第2ヘッダタンク内の区分けによって、第1ヘッダタンクから第2ヘッダタンクに熱媒体を流す第1チューブ群と第2ヘッダタンクから第1ヘッダタンクに熱媒体を流す第2チューブ群とが複数設けられており、第2ヘッダタンクには、一つの第1チューブ群と一つの第2チューブ群を連通させる区分け領域の中に、第1チューブ群の一部を別の第2チューブ群の一部に連通させるバイパス区分け領域が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチューブと、前記チューブの一端側に接続される第1ヘッダタンクと、前記チューブの他端側に接続される第2ヘッダタンクを備え、前記複数のチューブによって熱交換コア部を形成する熱交換器であって、
前記熱交換コア部は、前記第1ヘッダタンク及び前記第2ヘッダタンク内の区分けによって、前記第1ヘッダタンクから前記第2ヘッダタンクに熱媒体を流す第1チューブ群と前記第2ヘッダタンクから前記第1ヘッダタンクに熱媒体を流す第2チューブ群とが複数設けられており、
前記第2ヘッダタンクには、一つの前記第1チューブ群と一つの前記第2チューブ群を連通させる区分け領域の中に、前記第1チューブ群の一部を別の前記第2チューブ群の一部に連通させるバイパス区分け領域が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換コア部は、
一つの前記第1チューブ群によって第1パスを形成し、
前記第1パスに連通する一つの前記第2チューブ群によって第2パスを形成し、
前記第2パスに連通する別の前記第1チューブ群によって第3パスを形成し、
前記第3パスに連通する別の前記第2チューブ群によって第4パスを形成しており、
前記バイパス区分け領域は、
前記第3パスと前記第4パスの間に設けられる更に別の第2チューブ群に、前記第1パスにおける前記第1チューブ群の一部を連通させることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1パスと前記4パス、前記第2パスと前記3パスは、それぞれ前記熱交換コア部を通過する熱交換対象流体の流れに沿って配置されることを特徴とする請求項2記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、複数のチューブを並列配備して、チューブの両端部にヘッダタンクを接続し、ヘッダタンクを介して複数のチューブ内を流れる熱媒体(冷媒を含む)と複数のチューブ間を流れる流体(例えば、空気)との間で熱交換を行うものであり、一対のヘッダタンクの間で複数のチューブが並列配置された領域が熱交換器のコア部になっている。なお、ここでは、状態が変化する冷媒や状態が変化しない流体(水など)を総称して熱媒体という。
【0003】
このような熱交換器は、コア部における熱交換効率を高めるために、一方のヘッダタンクから他方のヘッダタンクへ向けた熱媒体の流れを1つのパスとして、ヘッダタンク内を区分けすると共にコア部内のチューブをパス毎に群分けすることで、コア部内で複数パスを構成している。複数パスでは、第1パスが一方のヘッダタンク(第1ヘッダタンク)から他方のヘッダタンク(第2ヘッダタンク)に向けた流れであれば、その次の第2パスは第2ヘッダタンクから第1ヘッダタンクに向けた逆向きの流れになり、偶数パスを設定することで、一方側のヘッダタンクに熱媒体の流入口と流出口を集中配置することができる(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-147992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、偶数パスの熱交換器で蒸発器(エバポレーター (evaporator))を構成する場合に、コア部内の下流側のパスにおいて、チューブ群を流れる冷媒の流量にばらつきが生じる現象が確認されている。これによると、コア部内の中央付近において温度帯の高い部分(温度分布が不均一な部分)が生じることになり、この現象が蒸発器における空気の冷却性能を向上させる上での妨げになっている。この現象に対しては、各種の対処が検討されているが、より簡単な構造変更で蒸発器の冷却性能(吸熱性能)を向上させることが求められている。
【0006】
また、前述の説明では、蒸発器を例にして説明したが、凝縮器(コンデンサー(condenser))においても同様の現象でコア部の温度分布が不均一になることが確認されている。これに対しても、より簡単な構造変更で凝縮器の加熱性能(放熱性能)を向上させることが求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであり、より簡単な構造変更で熱交換器のコア部における温度分布の不均一を解消し、蒸発器や凝縮器などとして用いられる熱交換器の性能向上を図ることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明による熱交換器は、以下の構成を具備するものである。
複数のチューブと、前記チューブの一端側に接続される第1ヘッダタンクと、前記チューブの他端側に接続される第2ヘッダタンクを備え、前記複数のチューブによって熱交換コア部を形成する熱交換器であって、前記熱交換コア部は、前記第1ヘッダタンク及び前記第2ヘッダタンク内の区分けによって、前記第1ヘッダタンクから前記第2ヘッダタンクに熱媒体を流す第1チューブ群と前記第2ヘッダタンクから前記第1ヘッダタンクに熱媒体を流す第2チューブ群とが複数設けられており、前記第2ヘッダタンクには、一つの前記第1チューブ群と一つの前記第2チューブ群を連通させる区分け領域の中に、前記第1チューブ群の一部を別の前記第2チューブ群の一部に連通させるバイパス区分け領域が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明によると、簡単な構造変更で熱交換器のコア部における温度分布の不均一を解消し、蒸発器や凝縮器などとして用いられる熱交換器の性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る熱交換器の説明図。
図2】熱交換コア部における熱媒体の流れを示した説明図((A)が左側面図、(B)が右側面図)。
図3】本発明の実施形態に係る熱交換器の構成例を示した説明図((A)側面図、(B)が正面図)。
図4】本発明の実施形態に係る熱交換器の構成例を示した説明図((A)が平面図、(B)が底面図)。
図5】第2ヘッダタンクの内部構造の一例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1において、熱交換器1は、第1ヘッダタンク11と第2ヘッダタンク12の間に熱交換コア部10が形成されている。熱交換コア部10は、図示省略した複数のチューブによって構成されており、第1ヘッダタンク11又は第2ヘッダタンク12を介してチューブを流れる熱媒体(冷媒を含む)と図示矢印Aに沿って熱交換コア部10を通過する流体(例えば、空気)との間で熱交換が行われる。
【0013】
第1ヘッダタンク11と第2ヘッダタンク12には、熱交換コア部10のパス割を行うために、複数の区分け領域が形成されている。図示の例では、第1ヘッダタンク11は、熱媒体の流入口E1が設けられる第1の区分け領域11Aと、熱媒体の流出口E2が設けられる第2の区分け領域11Bと、区分け領域11A,11Bに対して独立して区分けされる区分け領域11Cが設けられている。
【0014】
これに対して、第2ヘッダタンク12は、第1の区分け領域12Aと第2の区分け領域12Bに区分けされていると共に、第1の区分け領域12Aと第2の区分け領域12Bの中に、バイパス区分け領域12Cが設けられている。ここで、バイパス区分け領域12Cは、第1の区分け領域12Aと第2の区分け領域12Bとは独立した区分け領域になっていて、第1の区分け領域12Aや第2の区分け領域12Bに流入した熱媒体がバイパス区分け領域12Cに流入することは無い。
【0015】
熱交換コア部10は、第1ヘッダタンク11から第2ヘッダタンク12に向けて熱媒体を流す第1チューブ群T1と第2ヘッダタンク12から第1ヘッダタンク11に向けて熱媒体を流す第2チューブ群T2があり、この第1チューブ群T1と第2チューブ群T2がそれぞれ複数設けられている。図示の例では、一方側の第1ヘッダタンク11に熱媒体の流入口E1と流出口E2が集中配備されているので、第1チューブ群T1と第2チューブ群T2はセットで設けられており、これによって熱交換コア部10は、偶数個にパス割されている。
【0016】
図2によって、より具体的に熱交換コア部10における熱媒体の流れを説明する。図示の矢印が熱媒体の流れ方向を示している。
【0017】
熱交換コア部10は、先ず、第1ヘッダタンク11の区分け領域11Aから第2ヘッダタンク12の区分け領域12Aに向けて熱媒体を流すように、一つの第1チューブ群T1によって第1パスP1が形成されている。また、第2ヘッダタンク12の区分け領域12Aから第1ヘッダタンク11の区分け領域11Cに向けて熱媒体を流すように、一つの第2チューブ群T2によって第2パスP2が形成されている。すなわち、第2パスP2は、第1パスP1に区分け領域12Aを介して連通する一つの第2チューブ群T2によって形成されている。
【0018】
また、熱交換コア部10は、第1ヘッダタンク11の区分け領域11Cから第2ヘッダタンク12の区分け領域12Bに向けて熱媒体を流すように、一つの第1チューブ群T1によって第3パスP3が形成されている。すなわち、第3パスP3は、第2パスP2に区分け領域11Cを介して連通する一つの第1チューブ群T1によって形成されている。
【0019】
更に、熱交換コア部10は、第2ヘッダタンク12の区分け領域12Bから第1ヘッダタンク11の区分け領域11Bに向けて熱媒体を流すように、一つの第2チューブ群T2によって第4パスP4が形成されている。すなわち、第4パスP4は、第3パスP3に区分け領域12Bを介して連通する一つの第2チューブ群T2によって形成されている。
【0020】
これに対して、第2ヘッダタンク12に設けられるバイパス区分け領域12Cは、第1チューブ群T1の一部を別の第2チューブ群T2の一部に連通させるものである。具体的には、前述した第3パスP3と第4パスP4の間に設けられる別の第2チューブ群T2Sに、前述した第1パスP1における第1チューブ群T1の一部を連通させている。すなわち、第1ヘッダタンク11の区分け領域11Aから第2ヘッダタンク12に向けて流れる熱媒体の一部が、第3パスP3と第4パスP4の間に設けられる第2チューブ群T2Sにバイパス区分け領域12Cを介して流入することになる。そして、第2チューブ群T2Sを流れる熱媒体は、第1ヘッダタンク11の区分け領域11Bにて第4パスP4を流れる熱媒体と合流して流出口E2に至る。
【0021】
また、熱交換コア部10においては、第1パスP1と第4パスP4が熱交換コア部10を通過する熱交換対象流体の流れに沿って配置され、第2パスP2と第3パスP3が熱交換コア部10を通過する熱交換対象流体の流れに沿って配置されている。
【0022】
このような熱交換器1によると、熱交換コア部10を流れる熱媒体は、流入口E1から、第1パスP1、第2パスP2、第3パスP3、第4パスP4を順次経由して、流出口E2に至る流れに加えて、第1パスP1の一部がバイパス区分け領域12Cを介して第3パスP3と第4パスP4の間に設けられる第2チューブ群T2Sに流れる。
【0023】
これによると、第3パスP3と第4パスP4を隣接させた場合に温度分布の不均一が生じる箇所が、第2チューブ群T2Sに替わることになり、そこに実質的に第2パスが設けられることになるので、それにより熱交換コア部10内の温度不均一が解消されることになる。
【0024】
図3図5は、本発明の実施形態に係る熱交換器1の構成例を示している。図示の熱交換器1は、一例として蒸発器として用いることができ、その場合は、チューブ100を流れる冷媒(熱媒体)によって、熱交換コア部10を図示Y方向に向けて通過する空気を冷却する。
【0025】
第1ヘッダタンク11には、流入口E1に流入ダクト2が接続され、流出口E2に流出ダクト3が接続されている。第1ヘッダタンク11と第2ヘッダタンク12は、図示X方向に延在しており、この延在方向に沿って複数のチューブ100が並列配置され、各チューブ100の一端が第1ヘッダタンク11に接続され、他端が第2ヘッダタンク12に接続されている。
【0026】
単体のチューブ100は、図示Z方向に沿って延在しており、図示Y方向に沿って偏平な管状部材であり、熱交換コア部10においては、図示Y向(空気の通過方向)に沿って2列並べられている。
【0027】
第1ヘッダタンク11は、内部に区分け壁111,112を設けることで、前述した区分け領域11A,11B,11Cが形成されており、第2ヘッダタンク12は、内部に区分け壁121,122と底壁123を設けることで、前述した区分け領域12A,12Bとバイパス区分け領域12Cを形成している。
【0028】
この際、バイパス区分け領域12Cは、図5に示すように、第2ヘッダタンク12内で、区分け領域12A,12B間の区分け壁121の一部に凹み121Aを設け、その凹み121Aに対して区分け壁121と交差する方向に区分け壁122を設け、更に凹み121Aの下辺に沿って底壁123を設けている。これにより、バイパス区分け領域12Cにおける底壁123の下側は、それぞれ区分け領域12A,12Bになっている。
【0029】
このような熱交換器1によると、蒸発器として用いるに際して、熱交換コア部10内の温度不均一を解消することができ、空気の冷却性能を向上させることができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:熱交換器,2:流入ダクト,3:流出ダクト,
10:熱交換コア部,
11:第1ヘッダタンク,12:第2ヘッダタンク,
11A,11B,11C,12A,12B:区分け領域,
12C:バイパス区分け領域,
T1:第1チューブ群,T2:第2チューブ群,
P1:第1パス,P2:第2パス,P3:第3パス,P4:第4パス,
E1:流入口,E2:流出口,
100:チューブ,111,112,121,122:区分け壁,
123:底壁
図1
図2
図3
図4
図5