(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133833
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20240926BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043815
(22)【出願日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、環境省、革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業(高効率・長寿命深紫外LEDの技術開発と細菌・ウイルス不活化および脱炭素効果の実証)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
(72)【発明者】
【氏名】上條 隆明
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK14
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH19
4C180LL04
(57)【要約】
【課題】光源を効率的に冷却することができる殺菌装置を提供する。
【解決手段】殺菌装置は、紫外線を放射する紫外線LEDを備えた光源と、流体を流入させる流入口と、前記流体を排出させる流出口と、流体を滞留させ、流体に光源からの紫外線を放射する空間である殺菌空間と、光源を冷却する空間である冷却空間と、筐体内を殺菌空間と冷却空間とに仕切る仕切り部と、を有し、殺菌空間と冷却空間とが、流体の流通が可能となるように接続されている筐体と、殺菌空間から前記流体を排出させる、または殺菌空間に前記流体を流入させるファンと、光源に接続され、冷却空間に位置するヒートシンクとを有し、光源は、紫外線の放射側は殺菌空間に位置し、紫外線の放射側とは反対側は冷却空間に位置し、紫外線の放射側とは反対側においてヒートシンクと接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を放射する紫外線LEDを備えた光源と、
流体を流入させる流入口と、前記流体を排出させる流出口と、前記流体を滞留させ、前記流体に前記光源からの紫外線を放射する空間である殺菌空間と、前記光源を冷却する空間である冷却空間と、筐体内を前記殺菌空間と前記冷却空間とに仕切る仕切り部と、を有し、前記殺菌空間と前記冷却空間とが、前記流体の流通が可能となるように接続されている筐体と、
前記殺菌空間から前記流体を排出させる、または前記殺菌空間に前記流体を流入させるファンと、
前記光源に接続され、前記冷却空間に位置するヒートシンクと、
を有し、
前記光源は、紫外線の放射側は前記殺菌空間に位置し、紫外線の放射側とは反対側は前記冷却空間に位置し、紫外線の放射側とは反対側において前記ヒートシンクと接続されている、殺菌装置。
【請求項2】
前記仕切り部は、径方向内側と径方向外側とを仕切る筒状に形成され、径方向内側に前記殺菌空間を形成し、径方向外側に前記冷却空間を形成し、
前記光源は、前記仕切り部の内周面に配置され、
前記ヒートシンクは、前記仕切り部の外周面に配置される、請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記殺菌空間は、前記流体が前記仕切り部の軸方向一方の側から流入するように構成され、流入した前記流体が前記仕切り部の軸方向他方の側から流出するように構成され、
前記ファンは、前記殺菌空間における前記流体の流出側に配置される、請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記筐体は、さらに、
前記仕切り部における軸方向一方の側に設けられ、前記殺菌空間と前記冷却空間とを連通すると共に、前記仕切り部の中心軸に向かって渦巻くように前記流体を導くサーキュレーターリブを有する、請求項2または請求項3に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記流入口および前記流出口は、前記冷却空間および前記殺菌空間に対して、前記仕切り部の軸方向における同一側に設けられる、請求項2または請求項3に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記流入口に流れ込む前記流体の流入方向は、前記仕切り部の径方向であり、
前記流出口から排出される前記流体の排出方向は、前記仕切り部の軸方向である、請求項5に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記ヒートシンクは、前記仕切り部の周方向に断続的に複数配置され、
前記筐体は、前記ヒートシンクそれぞれに対応する位置に、前記冷却空間に前記流体を流入させるための複数の開口を有する、請求項2または請求項3に記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記光源の配向角は30度以下であり、前記殺菌空間の内面に紫外線の反射材が配置されていない、請求項2または請求項3に記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波長200~280nmの深紫外線の照射によって細菌、ウイルス等を効率的に殺菌できることが知られており、発光波長が深紫外である紫外線LEDを用いて空気を殺菌する殺菌装置が知られている(たとえば特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、天井に取り付けられる筐体と、筐体内に配置されるファンと、紫外線LEDを用いた光源と、を有し、筐体にはファンの動作時に天井面に沿って空気を吸い込む吸込口と吸込口から吸い込まれた空気を鉛直下方に吹き出す吹出口とを有し、吸い込まれた空気に紫外線を照射することで殺菌する装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、筒状の筐体の内側側面に周方向に沿って紫外線LEDを用いた光源を複数個配置し、筐体内に軸方向に空気を流し、筐体の中心部に向かって紫外線を照射することで空気を殺菌する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-51137号公報
【特許文献2】国際公開第2022/224375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の空気を殺菌する殺菌装置は、天井や壁付近に配置されることから、放熱が不十分となりやすい環境である。そのため紫外線LEDを用いた光源からの熱がこもり、発光強度の低下など、光源の劣化、短寿命化や性能低下の懸念があった。その結果、殺菌・除菌の効率が低下してしまう可能性があった。
【0007】
また、特許文献1の構造では、光源が吸入口付近に配置されるため、光源からの紫外線が外部に漏れ、周辺部材を劣化させてしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、光源を効率的に冷却することができる殺菌装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
紫外線を放射する紫外線LEDを備えた光源と、
流体を流入させる流入口と、前記流体を排出させる流出口と、前記流体を滞留させ、前記流体に前記光源からの紫外線を放射する空間である殺菌空間と、前記光源を冷却する空間である冷却空間と、筐体内を前記殺菌空間と前記冷却空間とに仕切る仕切り部と、を有し、前記殺菌空間と前記冷却空間とが、前記流体の流入が可能となるように接続されている筐体と、
前記殺菌空間から前記流体を排出させる、または前記殺菌空間に前記流体を流入させるファンと、
前記光源に接続され、前記冷却空間に位置するヒートシンクと、
を有し、
前記光源は、紫外線の放射側は前記殺菌空間に位置し、紫外線の放射側とは反対側は前記冷却空間に位置し、紫外線の放射側とは反対側において前記ヒートシンクと接続されている、殺菌装置にある。
【発明の効果】
【0010】
上記一態様では、流体がヒートシンクを通過するため、効率的に光源を冷却することができる殺菌装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1における殺菌装置の構成を示した分解斜視図。
【
図2】実施形態1における殺菌装置の構成を示した断面図。
【
図5】配向角と積算紫外線量の関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
殺菌装置は、紫外線を放射する紫外線LEDを備えた光源と、流体を流入させる流入口と、前記流体を排出させる流出口と、前記流体を滞留させ、前記流体に前記光源からの紫外線を放射する空間である殺菌空間と、前記光源を冷却する空間である冷却空間と、筐体内を前記殺菌空間と前記冷却空間とに仕切る仕切り部と、を有し、前記殺菌空間と前記冷却空間とが、前記流体の流入が可能となるように接続されている筐体と、前記殺菌空間から前記流体を排出させる、または前記殺菌空間に前記流体を流入させるファンと、前記光源に接続され、前記冷却空間に位置するヒートシンクと、を有し、前記光源は、紫外線の放射側は前記殺菌空間に位置し、紫外線の放射側とは反対側は前記冷却空間に位置し、紫外線の放射側とは反対側において前記ヒートシンクと接続されている。
【0013】
前記仕切り部は、径方向内側と径方向外側とを仕切る筒状に形成され、径方向内側に前記殺菌空間を形成し、径方向外側に前記冷却空間を形成し、前記光源は、前記仕切り部の内周面に配置され、前記ヒートシンクは、前記仕切り部の外周面に配置されていてもよい。
【0014】
前記殺菌空間は、前記流体が前記仕切り部の軸方向一方の側から流入するように構成され、流入した前記流体が前記仕切り部の軸方向他方の側から流出するように構成され、前記ファンは、前記殺菌空間における前記流体の流出側に配置されていてもよい。
【0015】
前記筐体は、さらに、前記仕切り部における軸方向一方の側に設けられ、前記殺菌空間と前記冷却空間とを連通すると共に、前記仕切り部の中心軸に向かって渦巻くように前記流体を導くサーキュレーターリブを有していてもよい。
【0016】
前記流入口および前記流出口は、前記冷却空間および前記殺菌空間に対して、前記仕切り部の軸方向における同一側に設けられていてもよい。
【0017】
前記流入口に流れ込む前記流体の流入方向は、前記仕切り部の径方向であり、前記流出口から排出される前記流体の排出方向は、前記仕切り部の軸方向であってもよい。
【0018】
前記ヒートシンクは、前記仕切り部の周方向に断続的に複数配置され、前記筐体は、前記ヒートシンクそれぞれに対応する位置に、前記冷却空間に前記流体を流入させるための複数の開口を有していてもよい。
【0019】
前記光源の配向角は30度以下であり、前記殺菌空間の内面に紫外線の反射材が配置されていなくてもよい。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1における殺菌装置の構成を示した分解斜視図である。また、
図2は、実施形態1における殺菌装置の構成を示した断面図であり、殺菌装置の中心軸を通る断面である。
図1、2のように、実施形態1における殺菌装置は、カバー1と、サーキュレーターリブ2と、サーキュレーターベース3と、リアクタ4と、中心支持体5と、底板6と、ファン7と、底板カバー8と、光源10と、ヒートシンク11と、を有している。実施形態1における殺菌装置は、天井や壁面などに取り付けられ、空気を紫外線によって殺菌する装置である。以下、各構成について説明する。
【0021】
1.殺菌装置の各構成の説明
リアクタ4は、上面と下面が解放された円筒状の筐体である。その内部は、空気を滞留させ、光源10からの紫外線を照射して殺菌する円柱状の殺菌空間30である。リアクタ4の円筒側面には周方向に沿って等間隔に6個の開口が設けられ、各開口に光源10が隙間なくはめ込まれている。光源10は、その光放射方向がリアクタ4の円筒中心軸方向となるように取り付けられている。また、これら光源10は直列に接続されている。光源10の詳細な構成は後述する。リアクタ4の上面から殺菌空間30内へと空気が流入し、リアクタ4の下面から殺菌空間外へと空気が排出される。リアクタ4の材料は、たとえばSUS、Alなどである。
【0022】
光源10は、波長200~280nmの紫外線を放射する装置である。光源10の紫外線放射側は殺菌空間に位置し、光源10の紫外線放射側とは反対側は後述の冷却空間31に位置している。
図3は、光源10の構成を示した平面図である。
図3のように、光源10は、サブマウント12と、LEDパッケージ13と、サーミスタ14と、コネクタ15とを有している。
【0023】
サブマウント12は、その表面に2つのLEDパッケージ13と1つのサーミスタ14およびコネクタ15が実装された基板である。サブマウント12の材料は、Alである。他にもCuなどの放熱性の高い金属や、AlNなどの放熱性の高いセラミックを用いてもよい。サブマウント12の裏面(LEDパッケージ13、サーミスタ14が実装されている側とは反対側の面)には、ヒートシンク11が接合されている。
【0024】
LEDパッケージ13は、発光波長が200~280nmの範囲である紫外線LEDを実装基板に実装し、レンズによって封止した装置である。紫外線LEDは、たとえばIII族窒化物半導体からなる発光素子を用いることができる。LEDパッケージ13は、サブマウント12上に実装されている。LEDパッケージ13から放射される紫外線の配向角は、レンズの形状などによって制御することができる。
【0025】
LEDパッケージ13から放射される紫外線の配向角は、30°以下であることが好ましい。ここで配向角は、光強度が1/2となるときの角度(光軸に対する角度)をθとして2θで表される。配向角がこの範囲であれば、殺菌空間30の内壁(リアクタ4の円筒の内側側面や内側底面、カバー1の内側上面)の反射材の有無で殺菌効率に大きな違いはない。そのため、反射材を設けずに殺菌装置の低コスト化を図ることができる。配向角の下限は特に規定しないが、配向角が狭すぎると、紫外線の照射範囲が狭くなり殺菌効率が低下するため、15°以上が好ましい。
【0026】
サーミスタ14は、光源10の温度を測定する素子である。光源10の温度に応じてLEDパッケージ13の駆動が制御される。たとえば、光源10の温度が所定値を超えたら光源10の駆動を停止するよう制御される。
【0027】
コネクタ15は、LEDパッケージ13やサーミスタ14を駆動するための電源配線(図示しない)が接続される部品である。
【0028】
ヒートシンク11は、光源10の熱を空気に伝導させ、光源10を冷却する部材である。ヒートシンク11は、平板の一方の面にピンやフィンが周期配列された形状であり、ピンやフィンが設けられていない側の面がサブマウント12の裏面に接続されている。また、ヒートシンクは冷却空間31に位置している。ヒートシンク11の材料はCu、Al、それらを主とする合金など、熱伝導性の高い金属である。
【0029】
サーキュレーターベース3は、リアクタ4の上面端部に設けられている。サーキュレーターベース3は円環状である。そして、サーキュレーターベース3上には3枚のサーキュレーターリブ2が設けられている。サーキュレーターリブ2は、空気を所定の流路に導くための壁状の部材であり、空気がリアクタ4の中心軸に向かってらせん状に渦巻くように流路を導くものである。サーキュレーターリブ2、サーキュレーターベース3の材料は、たとえばAS、ABS、PC、PP、PMMA、PTFEなどの樹脂であり、使用条件によってこれらの材料から適宜選択する。サーキュレーターリブ2とサーキュレーターベース3は一体に成形されている。
【0030】
図4は、
図2におけるA-Aでの断面図である。
図4のように、3枚のサーキュレーターリブ2が周方向に等間隔に設けられており、リアクタ4の中心軸方向から見てサーキュレーターリブ2はリアクタ4の中心軸に向かって渦巻くらせん形状となっている。このサーキュレーターリブ2によって空気が導かれてリアクタ4の上面端部から空気がリアクタ4内(殺菌空間30内)へと流入する。
【0031】
なお、実施形態1ではサーキュレーターリブ2を3枚設けているが、殺菌装置の大きさなどに応じて適宜の枚数に設定することができる。また、サーキュレーターリブ2のらせん形状も適宜設定してよい。
【0032】
カバー1は、リアクタ4の側面と上面を覆う円筒状の筐体である。カバー1の材料は、たとえばアクリル樹脂である。カバー1の上面はサーキュレーターリブ2と接している。また、カバー1の側面とリアクタ4の側面は接しておらず、ヒートシンク11の厚さよりも若干広い隙間がある。この隙間が光源10を冷却するための冷却空間31である。冷却空間31は、殺菌空間30の外側側面に位置した円筒状の空間である。また、カバー1とサーキュレーターベース3との間にも隙間がある。この隙間を介して、冷却空間31からサーキュレーターリブ2の間に空気が流入する。
【0033】
実施形態1における殺菌装置は、カバー1の上面が天井や壁面に接するようにして取り付けられる。あるいは、カバー1の上面側の一部が天井や壁面に埋め込まれるようにして取り付けられる。
【0034】
なお、実施形態1ではリアクタ4やカバー1を円筒状としているが、正方形、正六角形、正八角形などの角筒状としてもよい。また、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状の筒でもよい。
【0035】
底板6は、リアクタ4の底面を覆う円盤状の部材である。底板6の材料はたとえばSUS、Alなどである。底板6の中央には開口22が設けられ、リアクタ4内の空気はこの開口22から排出される。また、底板6の外周近傍には周方向に等間隔に6個の開口19が設けられている。この開口19から冷却空間31に空気が流入する。また、この開口19の位置は、光源10の位置に対応している。
【0036】
中心支持体5は、カバー1と底板6とを中心において支えるとともに、光源10およびファン7と接続される電源配線を通す部品である。中心支持体5は、円筒状の中心軸と中心軸の両端に接続された円環の板とを有し、一方の円環の板はカバー1に接合し、他方の円環の板は底板6に接合している。これによりカバー1と底板6を中心で支えている。中心支持体5の材料はたとえばSUS、Alなどである。
【0037】
ファン7は、底板6の外側の面の中心に配置されている。ファン7は、羽根の回転によって一方の側から空気を吸い込み、その反対側から空気を吐き出す装置であり、リアクタ4の内側(殺菌空間30側)が空気の吸い込み側となるように配置されている。ファン7の電源配線は、カバー1に開けられた孔23から中心支持体5の中心軸の内部を通ってファン7に接続されている。
【0038】
底板カバー8は、空気の流入口20と流出口21を形成するための部材である。底板カバー8の材料は、たとえばPE、PP、PC、ABS、PMMAなどの樹脂であり、使用条件に応じてこれらの材料から適宜選択する。また、底板カバー8には紫外線が当たらないため、紫外線による劣化などを考慮せずに材料選択してもよい。底板カバー8は、円盤状であり、中央にファンを配置する開口24を有する。
【0039】
その開口24の周囲には、隔壁26が設けられている。隔壁26は、
図1、2に示すように、リアクタ4側に凸な球面状である。ファン7から排出される空気は、隔壁によって反射され、中心軸に平行な方向に流路が形成され、流出口21から空気が排出される。
【0040】
底板カバー8の外周は底板6と平行な平板であり、底板6との間に隙間が設けられている。この隙間が空気の流入口20となっている。空気の流入方向は径方向となり、空気流出方向と直交している。そのため、効率的に空気を巡回させることができる。
【0041】
さらに、隔壁26と外周の平板との間に、リング状の凸部27が設けられている。この凸部27は底板6に接している。凸部27によって空気の流入側と流出側を分離し、流入する空気が流出口21側へと流れないようにし、効率的に空気が巡回するようにしている。
【0042】
実施形態1における殺菌装置では、流入口20と流出口21の双方がリアクタ4の下面側に設けられている。これは、実施形態1における殺菌装置の上面側が天井や壁面へ取り付けられるためである。
【0043】
また、底板カバー8には、径方向に中央の開口から凸部まで延びる溝18が設けられている。この溝18は、後述の電源配線を通すためのものである。
【0044】
次に、光源10およびファン7と接続される電源配線の経路について説明する。
【0045】
コネクタ15と接続される電源配線は、カバー1の上部側から孔23を介して中心支持体5の中心軸内に通され、中心軸の一端から取り出される。そして、底板6に設けられた孔16、底面カバーの溝18、底板6の孔17を通って光源10のコネクタ15に接続される。
【0046】
ファン7と接続される電源配線は、カバー1の上部側から孔(図示しない)を介して中心支持体5の中心軸内に通され、中心軸の一端から取り出され、ファン7と接続される。
【0047】
2.殺菌装置の動作
次に、実施形態1における殺菌装置の動作について説明する。
【0048】
実施形態1における殺菌装置では、ファン7が動作すると、流入口20から殺菌空間30内に空気が流れ込み、流出口21から空気が排出される。そして殺菌空間30において空気に光源10からの紫外線が照射され、空気が殺菌される。以下、その動作をより詳しく説明する。
【0049】
流入口20から流れ込む空気は、底板6の開口19から冷却空間31に流入する。冷却空間31はカバー1の側面とリアクタ4の側面との隙間の領域である。ここで、開口19は各ヒートシンク11の位置に対応して設けられているため、開口19から流入した空気がヒートシンク11に直接的に当たる。そのため、ヒートシンク11の熱を空気に効率的に伝導させることができ、ヒートシンク11に接続する光源10を効率的に冷却することができる。光源10は紫外線LEDを用いているため、発熱が大きいが、実施形態1によれば光源10の熱をヒートシンク11を介して十分に放熱することができ、発光効率の低下を抑制することができる。その結果、殺菌効率の低下を抑制することができる。
【0050】
なお、実施形態1における殺菌装置では、冷却空間31における空気の流路が中心軸と平行な方向であるが、周方向に回転するような流路としてもよい。たとえば、底板6の開口19の形状やリブの設置などによってそのような流路を形成することができる。
【0051】
その後、空気はサーキュレーターベース3とカバー1の側面との隙間からサーキュレーターベース3上部に到達する。そして、空気はサーキュレーターリブ2によって導かれてリアクタ4の内部である殺菌空間30に流入する。サーキュレーターリブ2の形状がらせん状であるため、空気はリアクタ4の中心軸に向かってらせん状に渦巻くように導かれる。
【0052】
リアクタ4に流れ込んだ空気は、殺菌空間30内をらせん状に回転しながら中心軸に向かう。リアクタ4内の空気には光源10から波長が深紫外の紫外線が照射される。紫外線の照射方向は径方向である。紫外線の照射によって、空気中の細菌、ウイルスは不活化する。ここで、空気は殺菌空間30内を渦巻くように流れているため、空気の流路が長くなっている。そのため、空気が紫外線に照射される時間も長くなり、その結果殺菌効率が高くなっている。
【0053】
リアクタ4内で殺菌された空気は、底板6の開口22を介してファン7に吸い込まれ、ファン7から排出された空気は底板カバー8の隔壁によって反射されて流出口21から排出される。
【0054】
以上のように、実施形態1における殺菌装置では、光源10の裏面に空気が流れる冷却空間31を設けており、空気によって光源10を効率的に冷却することができる。そのため、光源10の発光強度の低下、短寿命化などを抑制することができ、殺菌効率の低下を抑制することができる。
【0055】
3.実験例
実施形態1に係る殺菌装置について、殺菌空間の上下の面に反射材を設けた場合と設けない場合とで、シミュレーションによって積算紫外線量を求め比較した。反射材は反射率92%とし、反射材なしの場合は反射率0%とした。
【0056】
図5は、積算紫外線量と光源10の配向角の関係を示したグラフである。また、
図5中、Aは反射材を設けない場合、Bは設けた場合である。積算紫外線量は、Bの場合であって配向角を30度としたときを1とした相対比較値である。
図5のように、反射材の有無による積算紫外線量の差は、配向角が小さくなるにつれて小さくなり、配向角が30°では差が非常に小さくなった。このことから、光源10の配向角を30°以下とすることで、反射材なしでも十分に高い積算紫外線量とすることができ、殺菌装置の低コスト化を図ることができることが分かった。
【0057】
4.実施形態1の変形形態
実施形態1では、カバー1、リアクタ4、サーキュレーターベース3、底板6、底板カバー8によって殺菌空間30と冷却空間31を有する筐体を構成し、円筒状のリアクタ4によって殺菌空間30と冷却空間31とを区画しているが、これに限定するものではない。要するに、空気に光源10からの紫外線を照射する殺菌空間と、光源10の紫外線照射側とは反対側の面を空気の流路に置く冷却空間と、殺菌空間30と冷却空間31とを区画する仕切り部とを有し、殺菌空間30と冷却空間31との間で空気の流通が可能に接続するように筐体が構成されていればよい。
【0058】
実施形態1における殺菌装置では、冷却空間31から殺菌空間30へと空気の流路が形成されるようにし、殺菌前の空気によって光源10が冷却されるようにしている。しかし、逆に殺菌空間30から冷却空間31へと空気の流路が形成されるようにしてもよく、殺菌された空気によって光源10が冷却されるようにしてもよい。
【0059】
実施形態1では、サーキュレーターベース3とサーキュレーターリブ2を設けることによって殺菌空間30内で空気が渦巻くようにしているが、以下のようにしてもよい。リアクタ4の中央上下に空気を導通させ、これにより殺菌空間30内の中心軸付近を他の領域よりも低圧とする。このような気圧分布とすることで、殺菌空間30内の空気は中心軸側に渦を巻いて引き込まれる。
【0060】
実施形態1では、殺菌装置を空気の殺菌に用いているが、任意の流体の殺菌に用いることができる。たとえば、空気以外の気体について殺菌することができる。また、液体も殺菌することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:カバー
2:サーキュレーターリブ
3:サーキュレーターベース
4:リアクタ
5:中心支持体
6:底板
7:ファン
8:底板カバー
10:光源
11:ヒートシンク
12:サブマウント
13:LEDパッケージ
14:サーミスタ