特開 2024-133837 リサイクルシステム、及びリサイクル方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024133837

(43)【公開日】2024-10-03

(54)【発明の名称】リサイクルシステム、及びリサイクル方法

(51)【国際特許分類】

   B09B 3/80 20220101AFI20240926BHJP

   F23J 1/00 20060101ALI20240926BHJP

   F23C 10/00 20060101ALI20240926BHJP

【ＦＩ】

B09B3/80

F23J1/00 A ZAB

F23J1/00 Z

F23C10/00

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023043820

(22)【出願日】2023-03-20

(71)【出願人】

【識別番号】000004123

【氏名又は名称】ＪＦＥエンジニアリング株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002147

【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】多田 光宏

(72)【発明者】

【氏名】中山 剛

【テーマコード（参考）】

3K064

3K161

4D004

【Ｆターム（参考）】

3K064AB03

3K064AC06

3K064AF02

3K064BB07

3K161AA03

3K161AA40

3K161BA06

3K161CA01

3K161DA52

3K161EA41

3K161HB03

3K161LA02

3K161LA12

3K161LA20

3K161LA33

3K161LA40

3K161LA49

4D004AA36

4D004AA50

4D004BA05

4D004CA13

4D004CA34

4D004CC01

4D004CC12

(57)【要約】

【課題】バイオマス燃料に含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属を利用可能にすること。
【解決手段】炉内で流動媒体により流動層を形成し、アルカリ金属及び／又はアルカリ土類金属を含む燃料を前記流動層で燃焼する燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を処理するリサイクルシステムであって、前記燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を酸性溶液で酸処理する酸処理装置と、前記流動媒体及び灰を酸処理した酸性溶液と、前記酸性溶液で酸処理された流動媒体及び灰とを分離する第１分離装置と、前記第１分離装置で分離された酸性溶液を炭酸化して炭酸塩を生成する炭酸化装置と、前記炭酸化装置で炭酸化された酸性溶液から前記炭酸塩を分離する第２分離装置と、を備える。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

炉内で流動媒体により流動層を形成し、アルカリ金属及び／又はアルカリ土類金属を含む燃料を前記流動層で燃焼する燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を処理するリサイクルシステムであって、
前記燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を酸性溶液で酸処理する酸処理装置と、
前記流動媒体及び灰を酸処理した酸性溶液と、前記酸性溶液で酸処理された流動媒体及び灰とを分離する第１分離装置と、
前記第１分離装置で分離された酸性溶液を炭酸化して炭酸塩を生成する炭酸化装置と、
前記炭酸化装置で炭酸化された酸性溶液から前記炭酸塩を分離する第２分離装置と、
を備えるリサイクルシステム。

【請求項2】

炉内で流動媒体により流動層を形成し、アルカリ金属及び／又はアルカリ土類金属を含む燃料を前記流動層で燃焼する燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を処理するリサイクル方法であって、
前記燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を酸性溶液で酸処理し、
前記流動媒体及び灰を酸処理した酸性溶液と、前記酸性溶液で酸処理された流動媒体及び灰とを分離し、
分離された酸性溶液を炭酸化して炭酸塩を生成し、
炭酸化された酸性溶液から前記炭酸塩を分離する
リサイクル方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、リサイクルシステム、及びリサイクル方法に関する。

【背景技術】

【0002】

バイオマスを燃料として発電を行なう方法として流動層炉を用いた方法がある。流動層炉は、吹き上がる流動化空気によって高温の流動媒体を流動させた流動層を形成し、炉内に供給された燃料を流動層の中で燃焼するものである。燃料となるバイオマスとしては、例えば、パーム椰子空果房（ＥＦＢ：Ｅｍｐｔｙ Ｆｒｕｉｔ Ｂｕｎｃｈ）のように植物由来で安価なバイオマスが注目されているが、パーム椰子空果房を流動層炉で燃焼させて発電を行なう際には、以下のような問題が生じる。

【0003】

パーム椰子空果房には、アルカリ金属であるカリウムが多く含まれている。流動層炉の流動媒体としては珪砂が用いられるが、流動層炉内でパーム椰子空果房から放出されたガス状のカリウムと珪砂粒子の酸化ケイ素が反応し、珪砂粒子の表面にＳｉＯ_２－Ｋ_２Ｏ化合物が生成される。このＳｉＯ_２－Ｋ_２Ｏ化合物の溶融温度は、流動層炉内の温度より低いため、溶融して珪砂粒子の表面に粘着層が形成される。この粘着層が形成されると、数粒の珪砂粒子同士が融着し、珪砂の凝集と塊化（アグロメレーション）が生じると珪砂が流動しなくなり、流動層炉の正常な運転が妨げられることとなる。

【0004】

付着物によって肥大化した流動媒体を処理する発明としては、例えば特許文献１に開示された装置がある。特許文献１に開示された装置は、流動層炉から抜き出された流動媒体を乾式冷却装置で冷却した後、流動媒体に付着した粘着物を回転ロータの回転によって強制的に剥離させる。粘着物が剥離された流動媒体は、回収されて流動層炉へ戻される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開平８－２７８０１８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

特許文献１に開示された装置では、流動媒体から剥離された粘着物は、集塵機で回収されている。回収された粘着物は、例えば産業廃棄物として埋め立て処分がされており、粘着物に含まれていたアルカリ金属やアルカリ土類金属は有効な利用がされていなかった。

【0007】

本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、バイオマス燃料に含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属を利用可能にすることを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明の一側面に係るリサイクルシステムは、炉内で流動媒体により流動層を形成し、アルカリ金属及び／又はアルカリ土類金属を含む燃料を前記流動層で燃焼する燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を処理するリサイクルシステムであって、前記燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を酸性溶液で酸処理する酸処理装置と、前記流動媒体及び灰を酸処理した酸性溶液と、前記酸性溶液で酸処理された流動媒体及び灰とを分離する第１分離装置と、前記第１分離装置で分離された酸性溶液を炭酸化して炭酸塩を生成する炭酸化装置と、前記炭酸化装置で炭酸化された酸性溶液から前記炭酸塩を分離する第２分離装置と、を備える。

【0009】

本発明の一側面に係るリサイクル方法は、炉内で流動媒体により流動層を形成し、アルカリ金属及び／又はアルカリ土類金属を含む燃料を前記流動層で燃焼する燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を処理するリサイクル方法であって、前記燃焼炉から排出された流動媒体及び灰を酸性溶液で酸処理し、前記流動媒体及び灰を酸処理した酸性溶液と、前記酸性溶液で酸処理された流動媒体及び灰とを分離し、分離された酸性溶液を炭酸化して炭酸塩を生成し、炭酸化された酸性溶液から前記炭酸塩を分離する。

【発明の効果】

【0010】

本発明によれば、バイオマス燃料に含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属を利用可能にすることができる、という効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】図１は、実施形態に係る燃焼システムの構成を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。

【0013】

［実施形態］
図１は、本発明の実施形態に係る燃焼システム１０００の構成を示す図である。燃焼炉１は、循環流動層式（ＣＦＢ：Circulating Fluidized Bed）の炉である。燃焼炉１は、内部で流動媒体８１を流動させて流動層を形成し、燃焼炉１内へ供給される燃料７３を流動層中で燃焼させる炉である。燃焼炉１は、主に炉本体としての燃焼室１０と、流動媒体８１の一部を捕集して燃焼室１０へ戻す外部循環系統２０とで構成されている。

【0014】

燃焼室１０は、送風機９１から供給される一次空気を上方へ向けて吹き込むための分散板１１を下部に備えている。また、燃焼室１０の下部の側壁には、分散板１１の上方で流動媒体８１を燃焼室１０内に供給する流動媒体供給口１２と、燃料貯留槽６１から送られてくる燃料７３を燃焼室１０内に供給するための燃料供給口１３と、送風機９２から供給される二次空気を燃焼室１０内に吹き込むための二次空気吹き込み口１４とが下方から順番に設けられている。また、燃焼室１０の底部には、燃焼室１０内部の流動媒体８１と燃料７３の灰とを排出する炉底灰排出部１５が設けられている。

【0015】

第１貯留槽６２は、第１燃料７１を貯留する。第１燃料７１は、単位量あたりのアルカリ金属成分の含有量が多い燃料であり、例えばパーム椰子空果房である。第１燃料７１は、燃料貯留槽６１へ供給される。第２貯留槽６３は、第２燃料７２を貯留する。第２燃料７２は、第１燃料７１と比較して単位量あたりのアルカリ金属成分の含有量が少ない燃料であり、例えば木質チップである。第２燃料７２は、燃料貯留槽６１へ供給される。第１燃料７１は、アルカリ金属に加え、アルカリ土類金属も含むものであってもよい。また、第２燃料７２は、アルカリ金属に加え、アルカリ土類金属も含むものであってもよい。燃料貯留槽６１は、燃焼炉１内で燃焼させる燃料７３を貯留する。燃料貯留槽６１は、第１燃料７１と第２燃料７２を混合した燃料７３を生成する。燃料７３は、燃料貯留槽６１から燃料供給口１３へ送られる。

【0016】

外部循環系統２０は、ダクト３０で燃焼室１０の上部と接続されている。外部循環系統２０は、燃焼室１０から排ガスとともに送られた流動媒体８１を捕集するサイクロン２１と、サイクロン２１で捕集された流動媒体８１を燃焼室１０の下部に戻すための戻し管２２と、燃焼室１０からのガスがサイクロン２１内を上昇するのを防止するループシール２３とを有している。

【0017】

燃焼炉１の近傍には、流動媒体貯留槽８２が設けられている。流動媒体貯留槽８２は、流動媒体８１の貯留と燃焼室１０内への流動媒体８１の供給を行なう。流動媒体貯留槽８２に貯留されている流動媒体８１は、流動媒体供給口１２へ送られ、流動媒体供給口１２から燃焼室１０内へ供給される。本実施形態の流動媒体８１は、例えば珪砂である。燃焼室１０内へ供給された流動媒体８１は、その一部が炉底灰排出部１５から排出される。このため、廃棄された分を補うために新たな流動媒体８１が流動媒体貯留槽８２に補充され、廃棄された分が流動媒体貯留槽８２から燃焼室１０内へ供給される。

【0018】

また、燃焼炉１の近傍には、炉底灰排出部１５から排出された流動媒体８１の再生と、炉底灰排出部１５から排出された灰及び流動媒体８１に付着していたアルカリ金属成分の処理を行なうためのリサイクルライン４０が設けられている。リサイクルライン４０は、本発明に係るリサイクルシステムの一例である。リサイクルライン４０は、流動媒体８１を再生する再生ライン４０Ａと、灰及びアルカリ金属成分を処理する処理ライン４０Ｂを含む。再生ライン４０Ａは、炉底灰排出部１５から順に篩装置４１、研磨装置４２、選別装置４３が配設されている。また、処理ライン４０Ｂには、篩装置４１から順に破砕装置４４、酸処理装置４５、第１分離装置４６、乾燥装置４７、炭酸化装置４８、及び第２分離装置４９が配設されている。

【0019】

篩装置４１は、炉底灰排出部１５から排出された流動媒体８１及び灰を受け、所定粒径以下の流動媒体８１と、アグロメレーションによって所定粒径より大径となった流動媒体８１の塊と、燃料７３の燃焼後に生じた灰を分離する。篩装置４１は、分離された所定粒径以下の流動媒体８１を研磨装置４２へ送り、分離された流動媒体８１の塊と灰を破砕装置４４へ送る。

【0020】

研磨装置４２は、篩装置４１から供給された流動媒体８１としての珪砂を研磨し、流動媒体８１に付着しているアルカリ金属成分を除去する。研磨装置４２で用いられる研磨方式に限定はなく、例えば、自生破砕方式、せん断摩砕方式、ブラスト方式等が適用可能である。研磨装置４２でアルカリ金属成分が除去された珪砂と、珪砂から除去されたアルカリ金属成分は、選別装置４３へ送られる。

【0021】

選別装置４３は、研磨装置４２から送られたアルカリ金属成分、及び珪砂との混合物から珪砂を選別する。選別装置４３で用いられる選別方式に限定はなく、例えば、風力選別方式、比重選別方式等が適用可能である。選別装置４３で選別された珪砂は、流動媒体貯留槽８２へ送られて流動媒体８１として再利用される。

【0022】

破砕装置４４は、篩装置４１から送られた流動媒体８１の塊を破砕し、凝集した流動媒体８１をほぐす。また、破砕装置４４は、篩装置４１から送られた灰を破砕する。破砕装置４４でほぐされた流動媒体８１と灰は、酸処理装置４５へ送られる。

【0023】

酸処理装置４５は、酸性溶液として塩酸、又は硫酸を収容する容器と、容器内の酸性溶液を撹拌する撹拌翼を有している。破砕装置４４から酸処理装置４５へ送られた流動媒体８１と灰は、容器内の酸性溶液中に投入され、撹拌されて酸処理される。この酸処理により、流動媒体８１に付着していたカリウム成分や灰中のカルシウム成分が溶出する。酸処理に用いた酸性溶液と、酸処理された流動媒体８１及び灰は、第１分離装置４６へ送られる。

【0024】

第１分離装置４６は、酸処理装置４５から送られた酸性溶液と酸処理された流動媒体８１及び灰とを分離する。第１分離装置４６においては、酸性溶液と流動媒体８１及び灰との分離は、沈降分離、遠心分離、湿式篩などのいずれかの方法で行われる。第１分離装置４６で分離された流動媒体８１と灰は乾燥装置４７へ送られ、分離された酸性溶液は炭酸化装置４８へ送られる。

【0025】

乾燥装置４７は、第１分離装置４６から送られた流動媒体８１と灰を乾燥させる。乾燥装置４７において乾燥された流動媒体８１は、流動媒体貯留槽８２へ送られて再利用される。

【0026】

炭酸化装置４８は、第１分離装置４６から送られた酸性溶液を炭酸化する装置である。炭酸化装置４８は、第１分離装置４６から送られた溶液に二酸化炭素を接触させて炭酸塩を生成する。炭酸化装置４８において酸性溶液の炭酸化に用いられる二酸化炭素は、燃焼室１０内での燃料７３の燃焼により生じた排ガスであってもよい。酸性溶液と二酸化炭素が接触することにより、例えば酸性溶液中のカリウムイオンと炭酸イオンが反応して炭酸カリウムが生成される。また、酸性溶液と二酸化炭素が接触することにより、例えば酸性溶液中のカルシウムイオンと炭酸イオンが反応して炭酸カルシウムが生成される。炭酸化処理された酸性溶液は、第２分離装置４９へ送られる。

【0027】

第２分離装置４９は炭酸化装置４８から送られた酸性溶液と、炭酸化装置４８で生成された炭酸塩とを分離する。酸性溶液と、炭酸塩との分離は、沈降分離、又は遠心分離などで行われる。第２分離装置４９で分離された酸性溶液は、例えば廃液処理の設備へ送られて処理される。また、第２分離装置４９で分離された炭酸塩は、乾燥されて原料や副原料として利用される。

【0028】

次に燃焼システム１０００の動作について説明する。送風機９１から送られる一次空気を分散板１１から燃焼室１０内に吹き込み、送風機９２から送られる二次空気を二次空気吹き込み口１４から燃焼室１０内に吹き込むことにより、流動媒体８１を流動化させた流動層が燃焼室１０内に形成される。

【0029】

また、燃焼室１０内には、燃料７３が燃料供給口１３から供給される。燃料供給口１３から供給される燃料７３においては、運用コストの観点から第１燃料７１の割合が大きい方が好ましい。燃焼室１０内に供給された燃料７３は、流動層で燃焼する。

【0030】

具体的には、流動媒体８１は、分散板１１から吹き込まれる一次空気により流動状態となり、燃焼室１０内の下部で流動媒体８１が濃厚な濃厚層を形成する。この濃厚層では、高い熱容量および撹拌効果により燃料７３の乾燥及び揮発分の放出が促進される。また、燃焼室１０内の上部には、一次空気及び二次空気の吹き込みにより流動媒体８１が吹き上げられて流動媒体８１が希薄な希薄層が形成される。この希薄層では、流動媒体８１が保有する熱容量および撹拌効果により燃料７３の燃焼が行われる。つまり、燃焼炉１は、燃焼室１０内に濃厚層と希薄層とから成る流動層を形成することで、未燃焼の炭素分であるチャーの発生を防止し、効率的にパーム椰子空果房である燃料７３を燃焼させる。なお、燃焼室１０内の燃焼領域は８５０～９００℃程度に維持される。

【0031】

燃焼室１０内での燃料７３の燃焼により生じた排ガスは、ダクト３０を経て外部循環系統２０のサイクロン２１に供給される。また、流動媒体８１も、その一部が燃焼室１０から排ガスとともにサイクロン２１へ送られる。サイクロン２１では、流動媒体８１や比較的粒径の大きな灰などが回収され、ループシール２３及び戻し管２２を通して燃焼室１０の下部へ戻される。また、排ガスや比較的粒径の小さい灰などは外部循環系統２０の頂部から排出されて、図示省略した過熱器を介して排ガス処理設備に送られ、過熱器で蒸気を過熱し、排ガス処理設備で除塵後に図示省略した煙突から外部へと放出される。

【0032】

本実施形態では、燃焼室１０内で燃焼した燃料７３に含まれる第１燃料７１（パーム椰子空果房）は、アルカリ金属成分であるガス状のカリウム分を放出する。このガス状のカリウム分と流動媒体８１を形成する珪砂粒子の酸化ケイ素が反応すると、珪砂粒子の表面にＳｉＯ_２－Ｋ_２Ｏ化合物が生成される。このＳｉＯ_２－Ｋ_２Ｏ化合物は、溶融して珪砂粒子の表面に粘着層を形成する。この粘着層により数粒の珪砂粒子同士が融着し、珪砂の凝集と塊化（アグロメレーション）が生じる。

【0033】

アグロメレーションによって所定粒径より大径となった流動媒体８１は、燃焼室１０の底部に落下する。融着して落下した流動媒体８１は、更に融着して塊となる。この塊を含む流動媒体８１と燃料７３の燃焼後に残る灰は、単位時間あたりに所定量が炉底灰排出部１５から排出されて篩装置４１へ送られる。

【0034】

流動媒体８１が送られた篩装置４１は、分離した所定の粒径以下の流動媒体８１を研磨装置４２へ送る。また、篩装置４１は、分離した灰と所定粒径を超える流動媒体８１の塊とを破砕装置４４へ送る。研磨装置４２では、流動媒体８１が研磨され、流動媒体８１の表面に粘着層として付着していたアルカリ金属成分やアルカリ土類金属が珪砂の表面から除去される。流動媒体８１から除去されたアルカリ金属成分やアルカリ土類金属と、アルカリ金属成分やアルカリ土類金属が除去された珪砂は、選別装置４３へ送られる。

【0035】

選別装置４３では、流動媒体８１を構成していた珪砂が選別されるとともに、アルカリ金属成分やアルカリ土類金属が分離される。この選別された珪砂は、流動媒体８１として流動媒体貯留槽８２に補充される。なお、分離されたアルカリ金属やアルカリ土類金属の成分は、酸処理装置４５へ送られて酸処理されてもよい。

【0036】

破砕装置４４は、篩装置４１から送られた流動媒体８１の塊を破砕して流動媒体８１の結びつきをほぐし、粘着層が形成された流動媒体８１の径を均一化する。また、破砕装置４４は、篩装置４１から送られた灰を破砕する。破砕装置４４でほぐされた流動媒体８１と灰は、酸処理装置４５へ送られる。酸処理装置４５は、篩装置４１から送られた流動媒体８１と灰を酸処理する。この酸処理により、流動媒体８１に付着していたカリウム成分や灰中のカルシウム成分が酸処理の酸性溶液中に溶出する。酸処理装置４５で酸処理された流動媒体及び灰と、酸処理に用いた酸性溶液は第１分離装置４６へ送られる。

【0037】

第１分離装置４６は、酸処理装置４５から送られた酸性溶液と、酸処理された流動媒体８１及び灰とを分離する。第１分離装置４６で分離された流動媒体８１と灰は、乾燥装置４７へ送られ、分離された酸性溶液は炭酸化装置４８へ送られる。乾燥装置４７は、第１分離装置４６から送られた流動媒体８１と灰を乾燥させる。乾燥装置４７において乾燥された流動媒体８１は、流動媒体貯留槽８２へ送られて再利用される。

【0038】

炭酸化装置４８は、第１分離装置４６から送られた酸性溶液に二酸化炭素を接触させて炭酸塩を生成する。酸性溶液と二酸化炭素が接触することにより、例えば溶液中のカリウムイオンと炭酸イオンが反応して炭酸カリウムが生成される。また、酸性溶液と二酸化炭素が接触することにより、例えば溶液中のカルシウムイオンと炭酸イオンが反応して炭酸カルシウムが生成される。炭酸化処理された酸性溶液は、第２分離装置４９へ送られる。

【0039】

第２分離装置４９は炭酸化装置４８から送られた酸性溶液と、炭酸化装置４８で生成された炭酸塩とを分離する。第２分離装置４９で分離された酸性溶液は、例えば廃液処理の設備へ送られて処理される。また、第２分離装置４９で分離された炭酸塩は、乾燥されて原料や副原料として利用される。

【0040】

以上説明したように本実施形態によれば、バイオマス燃料に含まれていたアルカリ金属やアルカリ土類金属を回収することができるため、回収したアルカリ金属やアルカリ土類金属を原料や副原料として利用することができる。

【0041】

［変形例］
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。

【0042】

上述した実施形態においては、燃焼炉１は、循環流動層式の炉であるが、バブリング流動層式（ＢＦＢ：Bubbling Fluidized Bed）の炉であってもよい。

【0043】

本発明においては、新たな流動媒体８１の燃焼室１０内への供給によって燃焼室１０内の温度が下がるのを抑えるため、流動媒体８１の供給量に応じて燃料７３の燃焼室１０内への供給量を増やすようにしてもよい。この場合、アグロメレーションが発生するのを抑えるため、第２燃料７２の割合を増やすようにしてもよい。また、流動媒体８１の供給量の増加により燃焼室１０内の温度が下がるのを抑えるため、補助燃料として灯油又は重油を供給してもよい。

【0044】

本発明においては、燃料７３にアブラヤシの実の種の殻（ＰＫＳ：Palm Kernel Shell）を含めるようにしてもよい。

【0045】

本発明においては、燃焼室１０内の温度を測定し、炉底灰排出部１５から排出する流動媒体８１の量と、流動媒体貯留槽８２から燃焼室１０へ供給する流動媒体８１の量を測定した温度に応じて制御してもよい。

【符号の説明】

【0046】

１ 燃焼炉
１０ 燃焼室
１１ 分散板
１２ 流動媒体供給口
１３ 燃料供給口
１４ 二次空気吹き込み口
２０ 外部循環系統
４０ リサイクルライン
４０Ａ 再生ライン
４０Ｂ 処理ライン
４１ 篩装置
４２ 研磨装置
４３ 選別装置
４４ 破砕装置
４５ 酸処理装置
４６ 第１分離装置
４７ 乾燥装置
４８ 炭酸化装置
４９ 第２分離装置
８１ 流動媒体
８２ 流動媒体貯留槽
１０００ 燃焼システム

【図1】