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  • 特開-アームレスト装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133840
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】アームレスト装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20240926BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043824
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】吉高 滋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔太
(72)【発明者】
【氏名】久保田 礼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC03
(57)【要約】
【課題】自動運転時における快適性を向上するとともに手動運転に復帰する際に運転操作を妨げないアームレスト装置を提供する。
【解決手段】乗員が着座するシートの側部に設けられ乗員の前腕部を支持するアームレスト10を有するアームレスト装置1を、第1の端部21がアームレストの前後方向中間部に連結され第2の端部22が第1の端部より下方で基部に連結された第1リンク20と、第1の端部31がアームレストの後部に連結され第2の端部32が第1の端部よりも前方側で基部に連結された第2リンク30とを備え、アームレストは、通常状態と、通常状態に対して前端部が上昇する方向に回動した後傾状態との間で推移する構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートの側部に設けられ前記乗員の前腕部を支持するアームレストを有するアームレスト装置であって、
第1の端部が前記アームレストの前後方向中間部に連結され第2の端部が前記第1の端部より下方で基部に連結された第1リンクと、
第1の端部が前記アームレストの後部に連結され第2の端部が前記第1の端部よりも前方側で前記基部に連結された第2リンクと
を備え、
前記アームレストは、通常状態と、前記通常状態に対して前端部が上昇する方向に回動した後傾状態との間で推移すること
を特徴とするアームレスト装置。
【請求項2】
前記アームレストが前記通常状態から前記後傾状態へ推移する際に、前記第2のリンクは、前記アームレストの後部に負荷される下向き荷重に応じて、前記第1の端部が前記第2の端部に対して下降する方向に回動すること
を特徴とする請求項1に記載のアームレスト装置。
【請求項3】
前記アームレストが前記通常状態から前記後傾状態へ推移する際に、前記第1のリンクは、前記第1の端部が前記第2の端部に対して上昇しかつ後退する方向に回動すること
を特徴とする請求項2に記載のアームレスト装置。
【請求項4】
前記アームレストが前記後傾状態にあるときに、前記第1のリンクは、前記アームレストにおける前記第1のリンクとの連結箇所よりも前方側に負荷される下向き荷重に応じて、前記第1の端部が前記第2の端部に対して下降しかつ前進する方向に回動すること
を特徴とする請求項1に記載のアームレスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートの側部に設けられ乗員の前腕部を支持するアームレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、乗員の前腕部が載せられるアームレスト装置が設けられる。
アームレストに関する技術として、特許文献1には、自動運転モードと手動運転モードを切り替え可能な車両において、自動運転モードから手動運転への切り替えが行われる場合に、ドライバによるステアリングの把持を促すため、アームレストのドライバの腕を支持する支持部を、ステアリングホイールへ近づくように移動させるアームレスト制御部を備えることが記載されている。
特許文献2には、誤作動を生ずることがなく、シートバックのリクライニング角度の変更を行うため、ヘッドレストへの押圧を検出する圧力センサの検出があった際に、リクライニングモータを制御してシートバックのリクライニング角度を変更することが記載されている。また、アクチュエータを用いて、アームレストの前端部が昇降する方向に駆動することが記載されている。
特許文献3には、乗員が前向きの着座姿勢のままで、収納状態にあるアームレストを使用状態に操作可能とするため、車両用シートのアームレストを、その使用状態あるいはシートバックの側面に添わせた収納状態に操作できる形式のアームレスト支持構造を、アームレストは、シートバックに対してリンク機構等の作動機構によって使用状態あるいは収納状態に作動するように支持されるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017- 94899号公報
【特許文献2】特開2018-127025号公報
【特許文献3】特開2009-276646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、レベル2プラス以上の自動運転を行う自動車においては、所定の走行環境下で一定条件が整えば、ドライバは安楽な姿勢でスマートフォンやタブレット端末等の携帯電子機器等を使用することが可能となる。
このような場合に、ドライバが前腕部を載せるアームレストを、前方側が後方側に対して上昇する方向に後傾させれば、ドライバは前腕部が支えられた状態で快適に携帯電子機器等を閲覧することができると考えられる。
しかし、このような場合でも、自動運転から手動運転への推移が行われる場合においては、ドライバは直ちに運転操作を開始できることが求められる。
アームレストを後傾させた場合であっても、手動運転を開始する際には直ちに通常の位置へ復帰させることが可能なアームレスト装置が要望されている。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、自動運転時における快適性を向上するとともに手動運転に復帰する際に運転操作を妨げないアームレスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係るアームレスト装置は、乗員が着座するシートの側部に設けられ前記乗員の前腕部を支持するアームレストを有するアームレスト装置であって、第1の端部が前記アームレストの前後方向中間部に連結され第2の端部が前記第1の端部より下方で基部に連結された第1リンクと、第1の端部が前記アームレストの後部に連結され第2の端部が前記第1の端部よりも前方側で前記基部に連結された第2リンクとを備え、前記アームレストは、通常状態と、前記通常状態に対して前端部が上昇する方向に回動した後傾状態との間で推移することを特徴とする。
車両が自動運転を開始し、乗員が携帯電子端末の閲覧等を開始する場合、乗員は肘をアームレストの後部に載せた状態(アームレストの後部に下向き荷重が作用した状態)で手を顔面近くまで上昇させた姿勢をとることが想定される。
このとき、本発明によれば、乗員の肘部からアームレストに入力される下向き荷重に応じて第1のリンク、第2のリンクが回動し、アームレストの前部が後部に対して上昇する後傾状態へ推移させることができる。
これにより、乗員は前腕部をアームレストに支えられた状態で安楽に携帯電子端末等の利用を行うことができる。
一方、乗員が運転操作に復帰する場合には、ステアリングホイールを把持するために前腕部はアームレストに対して前進する。
このとき、乗員の前腕部の前部からアームレストに入力される下向き荷重に応じて第1のリンク、第2のリンクが回動し、アームレストの前部が後部に対して下降してアームレストが運転操作への復帰を阻害することを防止できる。
【0006】
本発明において、前記アームレストが前記通常状態から前記後傾状態へ推移する際に、前記第2のリンクは、前記アームレストの後部に負荷される下向き荷重に応じて、前記第1の端部が前記第2の端部に対して下降する方向に回動する構成とすることができる。
これによれば、アームレストの後部を下降させることにより、後傾状態におけるアームレストの傾斜角を大きくすることができる。
この場合、前記アームレストが前記通常状態から前記後傾状態へ推移する際に、前記第1のリンクは、前記第1の端部が前記第2の端部に対して上昇しかつ後退する方向に回動する構成とすることができる。
これによれば、アームレストの上部を上昇させることにより、後傾状態におけるアームレストの傾斜角をさらに大きくすることができる。
【0007】
本発明において、前記アームレストが前記後傾状態にあるときに、前記第1のリンクは、前記アームレストにおける前記第1のリンクとの連結箇所よりも前方側に負荷される下向き荷重に応じて、前記第1の端部が前記第2の端部に対して下降しかつ前進する方向に回動する構成とすることができる。
これによれば、アームレストが後傾状態にある場合から乗員が運転操作を再開しようとしたときに、前腕部の前部からアームレストに入力される荷重に応じて、第1のリンクがアームレストの前部を下降させかつ前進させる方向に回動することにより、アームレストが運転操作を阻害することを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、自動運転時における快適性を向上するとともに手動運転に復帰する際に運転操作を妨げないアームレスト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用したアームレスト装置の実施形態の模式的側面視図であって通常状態を示す図である。
図2】実施形態のアームレスト装置の模式的側面視図であって後傾状態を示す図である。
図3】実施形態のアームレスト装置の模式的側面視図であって後傾状態から乗員が運転操作を再開する際の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用したアームレスト装置の実施形態について説明する。
実施形態のアームレスト装置は、例えば、乗員がステアリング操作を行わないいわゆるハンズオフでの走行が可能なレベル2プラス以上の自動運転機能を有する乗用車等の自動車の運転席に設けられ、ドライバの前腕部が載せられるものである。
図1は、実施形態のアームレスト装置の模式的側面視図であって通常状態を示す図である。
【0011】
アームレスト装置1は、アームレスト10、フロントリンク20、リアリンク30等を有する。
アームレスト10は、車両の走行時に乗員の前腕部が載せられ、前腕部を下方から支持する部材である。
アームレスト10は、例えば車両のセンターコンソール等の図示しない基部(車体又はシートに固定された箇所)に、フロントリンク20、リアリンク30を介して、相対変位可能に取り付けられている。
【0012】
アームレスト10は、上面部がほぼ水平となる通常状態(前端部が上昇していない状態・前腕部補助解除状態)と、上面部の前部が後部に対して上昇する方向に後傾する後傾状態(前端部が上昇した状態・前腕部補助状態)との間で推移する。
この推移時の各部の挙動については、後に詳しく説明する。
図1に示す通常状態においては、アームレスト10は上面部がほぼ水平に配置されている。
アームレスト10には乗員の前腕部FAが載せられ、前腕部FAから下向きかつ前後方向に分布した入力F1を受ける。
【0013】
フロントリンク20は、アームレスト10の前後方向中間部を支持するリンクである。
フロントリンク20の第1の端部21は、アームレスト10の前後方向中間部に、車幅方向に沿った軸回りに揺動可能に連結されている。
フロントリンク20の第2の端部22は、第1の端部21よりも下方において、センターコンソール等の基部に車幅方向に沿った軸回りに揺動可能に連結されている。
図1に示す通常状態においては、フロントリンク20の第1の端部21は、第2の端部22よりも前進した位置に配置されている。
【0014】
リアリンク30は、アームレスト10の後部を支持するリンクである。
リアリンク30の第1の端部31は、アームレスト10の後端部近傍に、車幅方向に沿った軸回りに揺動可能に連結されている。
リアリンク30の第2の端部32は、第1の端部31よりも車両前方側において、センターコンソール等の基部に車幅方向に沿った軸回りに揺動可能に連結されている。
図1に示す通常状態においては、リアリンク30の第1の端部31は、第2の端部32よりも車両後方側でありかつ高い位置に配置されている。
リアリンク30の第1の端部31と第2の端部32との間隔(リアリンク30の長さ)は、フロントリンク20の第1の端部21と第2の端部22との間隔(フロントリンク20の長さ)よりも短く設定されている。
アームレスト10、フロントリンク20、リアリンク30は、協働してチェビシエフリンク機構を構成する。
なお、フロントリンク20、リアリンク30は、左右方向に離間して複数(例えば一対)設けられるようにしてもよい。
【0015】
以上説明した通常状態は、例えば車両が手動運転状態(乗員が運転操作を行う状態)である場合等に選択される。
車両が手動運転状態から自動運転状態に推移し、乗員が携帯電子端末等の利用を意図すると、アームレスト10は通常状態から後傾状態へ推移される。
図2は、実施形態のアームレスト装置の模式的側面視図であって後傾状態を示す図である。
このような状態は、例えば、車両の自動運転中に乗員が前腕部FAをアームレスト10の上面部に載せた状態で携帯電子端末等の利用を行う場合に発生し得る。
この状態では、アームレスト10は、前端部が上昇した後傾状態となっている
【0016】
図1に示す通常状態に対して、図2に示す後傾状態では、アームレスト10は、前部が後部に対して高くなるよう傾斜している。
フロントリンク20が回動し、フロントリンク20の第1の端部21は、第2の端部22に対して上昇しかつ後退している。
フロントリンク20の第1の端部21は、第2の端部22の上方に配置されている。
【0017】
リアリンク30が回動し、リアリンク30の第1の端部31は、第2の端部32に対して下降しかつ前進している。
リアリンク30の第1の端部31は、第2の端部32に対して後方側かつ下方側に配置されている。
アームレスト10の通常状態から後傾状態への推移は、乗員の肘部ELが、アームレスト10の後端部を下方に押し下げかつ前向きの入力F2を付与することに応じて行われる。
【0018】
図3は、実施形態のアームレスト装置の模式的側面視図であって後傾状態から乗員が運転操作を再開する際の状態を示す図である。
車両が自動運転状態から手動運転状態に推移し、乗員が運転操作に復帰する場合、前腕部FAからアームレスト10の前部(フロントリンク20の第1の端部21よりも前方側)には下向きの入力F3が作用する。
また、乗員がステアリングホイールを把持するため、前腕部FAはアームレスト10に対して前進する。
このとき、アームレスト10は、前部が後部に対して下降する方向に回動しつつ前進するため、前腕部FAの前進を妨げることがない。
【0019】
図2に示す後傾状態に対して、図3に示す運転操作再開時の状態においては、フロントリンク20が回動し、フロントリンク20の第1の端部21は、第2の端部22に対して前進しかつ下降している。
フロントリンク20の第1の端部21は、第2の端部22に対して前方側かつ上方側に配置されている。
また、リアリンク30が回動し、リアリンク30の第1の端部31は、第2の端部32に対して前進しかつ下降している。
リアリンク30の第1の端部31は、第2の端部32に対して後方側かつ下方側に配置されている。
【0020】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車両が自動運転を開始し、乗員が携帯電子端末の閲覧等を開始する場合、乗員は肘をアームレスト10の後部に載せた状態(アームレスト10の後部に下向き荷重が作用した状態)で手を顔面近くまで上昇させた姿勢をとることが想定される。
このとき、本発明によれば、乗員の肘部ELからアームレスト10に入力される下向き荷重に応じてフロントリンク20、リアリンク30が回動し、アームレスト10の前部が後部に対して上昇する後傾状態へ推移させることができる。
これにより、乗員は前腕部FAをアームレスト10に支えられた状態で安楽に携帯電子端末等の利用を行うことができる。
一方、乗員が運転操作に復帰する場合には、ステアリングホイールを把持するために前腕部FAはアームレスト10に対して前進する。
このとき、乗員の前腕部FAの前部からアームレスト10に入力される下向き荷重に応じてフロントリンク20、リアリンク30が回動し、アームレスト10の前部が後部に対して下降してアームレスト10が運転操作への復帰を阻害することを防止できる。
(2)アームレスト10が通常状態から後傾状態へ推移する際に、リアリンク30は、アームレスト10の後部に負荷される下向き荷重に応じて、第1の端部31が第2の端部32に対して下降する方向に回動することにより、アームレスト10の後部を下降させることで、後傾状態におけるアームレスト10の傾斜角を大きくすることができる。
(3)アームレスト10が通常状態から後傾状態へ推移する際に、フロントリンク20は、第1の端部21が第2の端部22に対して上昇しかつ後退する方向に回動することにより、アームレスト10の上部を上昇させることで、後傾状態におけるアームレスト10の傾斜角をさらに大きくすることができる。
(4)アームレスト10が後傾状態にある場合から乗員が運転操作を再開しようとしたときに、前腕部FAの前部からアームレスト10に入力される荷重に応じて、フロントリンク20がアームレスト10の前部を下降させかつ前進させる方向に回動することにより、アームレスト10が運転操作を阻害することを防止できる。
【0021】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)アームレスト装置を構成する各部材の形状、構造、配置、数量等は、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
(2)実施形態において、アームレストはセンターコンソールに取り付けられているが、本発明はこれに限定されず、アームレストの基部がシートに取り付けられる構成としてもよい。
(3)第1のリンク、第2のリンク及びこれらの各端部の具体的な配置は上述した実施形態によって限定されず、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 アームレスト装置 10 アームレスト
20 フロントリンク 21 第1の端部
22 第2の端部 30 リアリンク
31 第1の端部 32 第2の端部
FA 前腕部 EL 肘部
図1
図2
図3