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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133853
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240926BHJP
   F16H 57/08 20060101ALI20240926BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F16H57/04 F
F16H57/08
E02F9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043848
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】辺見 真
(72)【発明者】
【氏名】山下 智彬
(72)【発明者】
【氏名】森田 友晴
(72)【発明者】
【氏名】大野 達也
(72)【発明者】
【氏名】栗原 圭一
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA15
3J063AB12
3J063AC01
3J063BB48
3J063CA01
3J063CB06
3J063CD41
3J063XD03
3J063XD16
3J063XD32
3J063XD52
3J063XD63
3J063XE05
(57)【要約】
【課題】歯車装置のケーシング内に貯留されている潤滑油中の異物を検出する検出器として機能する構成体のメンテナンス性向上が可能である建設機械を提供する。
【解決手段】建設機械1は、回転駆動源31の動力を伝達する歯車装置として減速装置32を備える。減速装置32は、ケーシング40に着脱可能に取り付けられ潤滑油中の磁性体の異物を吸着可能な吸着体51を含む。吸着体51は、ケーシングの内部に潤滑油が貯留されるときの油面Fよりも高い位置でケーシング40に取り付けられている。減速装置32は、歯車機構34、35、36のうち第1キャリア35cに設けられ、第1キャリア35cの回転に伴い油面Fよりも低い位置と高い位置との間を移動するよう構成された供給部材61を有する。供給部材61は、油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によりケーシング40内に貯留されている潤滑油の一部を吸着体51に供給する構成である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の動力を伝達する歯車装置を備え、
前記歯車装置は、
前記回転駆動源の回転を伝達する複数の回転部材と、
前記複数の回転部材を収容すると共に、前記複数の回転部材を潤滑するための潤滑油を貯留可能であるケーシングと、
前記ケーシングに着脱可能に取り付けられ、潤滑油中に含まれる磁性体の異物を吸着可能な吸着体とを含む建設機械において、
前記吸着体は、前記ケーシングの内部において潤滑油が貯留される油面よりも高い位置に取り付けられ、
前記歯車装置は、前記複数の回転部材のうちの1つである第1回転部材に設けられ、前記第1回転部材の回転に伴い前記油面よりも低い位置と高い位置との間を移動するように構成された供給部材を有し、
前記供給部材は、前記油面よりも低い位置から高い位置への移動によって前記ケーシングの内部に貯留される潤滑油の一部を前記吸着体に対して供給するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記吸着体と前記供給部材は、前記歯車装置の軸方向における位置が重なるように配置され、
前記供給部材は、前記第1回転部材における径方向外側の端面又は軸方向一方側の側面に設けられて突起状に形成され、
前記供給部材は、前記第1回転部材の回転に伴い回転することによって前記ケーシングの内部に貯留される潤滑油を掻き上げるように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記供給部材は、前記第1回転部材の回転方向に開口する開口部を有し、前記油面よりも低い位置から高い位置への移動によって前記ケーシングの内部に貯留される潤滑油の一部を前記開口部から汲み上げるように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記歯車装置は、太陽歯車と遊星歯車とキャリアとを有する遊星歯車機構を含み、
前記第1回転部材は、前記遊星歯車機構の前記キャリアである
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記歯車装置は、前記吸着体に隣接した位置で前記ケーシングの内周面側に取り付けられた案内部材を更に含み、
前記案内部材は、前記案内部材に付着した潤滑油の油滴を前記吸着体に案内するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記案内部材は、前記吸着体に近づくにつれて下方に位置するように傾斜する張出部又は溝を有している
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1に記載の建設機械において、
前記吸着体は、潤滑油中に含まれる異物を検出する検出器の一部を構成するものであり、
前記吸着体を含む前記検出器が前記ケーシングに着脱可能に取り付けられている
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、さらに詳しくは、回転駆動源の回転を伝達する歯車装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダなどの建設機械には、油圧モータ等の回転駆動源の回転を伝達する歯車装置として減速装置を搭載しているものがある。減速装置は、歯車や軸受等の構成部品をケーシング内に収容しており、ケーシング内には歯車や軸受等を潤滑するための潤滑油を封入している。減速装置では、歯車等の構成部品の摩耗により生じた金属粉や破損片等の異物が潤滑油に混入することがある。潤滑油中に異物が混入すると、歯車や軸受、オイルシール等に損傷を与えることが懸念される。
【0003】
そのような懸念に対して、減速装置のケーシング内に封入されている潤滑油中に混入した異物を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載のギヤボックスの異常警報装置においては、ギヤボックス内に生じた金属粉を検出するチップ検知器がギヤボックスのケース底部からオイル溜まり中に突出するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-67467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のギヤボックスのように、潤滑油中に混入した異物(磁性体)を検出可能なセンサ(チップ検知器)が減速装置のケース底部からオイル溜まり中に突出するように取り付けられている場合には、当該センサの保守や点検を行うとき、センサをケースから取り外す前にケース内に貯留されているオイルを抜く必要がある。この手間の分、メンテナンスの工数が増えるので、センサのメンテナンスの容易性が求められている。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、歯車装置のケーシング内に貯留されている潤滑油中に含まれる異物を検出する検出器として機能する構成体のメンテナンス性向上が可能である建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいる。その一例を挙げるならば、回転駆動源の動力を伝達する歯車装置を備え、前記歯車装置は、前記回転駆動源の回転を伝達する複数の回転部材と、前記複数の回転部材を収容すると共に前記複数の回転部材を潤滑するための潤滑油を貯留可能であるケーシングと、前記ケーシングに着脱可能に取り付けられ、潤滑油中に含まれる磁性体の異物を吸着可能な吸着体とを含む建設機械において、前記吸着体は、前記ケーシングの内部において潤滑油が貯留される油面よりも高い位置に取り付けられ、前記歯車装置は、前記複数の回転部材のうちの1つである第1回転部材に設けられ、前記第1回転部材の回転に伴い前記油面よりも低い位置と高い位置との間を移動するように構成された供給部材を有し、前記供給部材は、前記油面よりも低い位置から高い位置への移動によって前記ケーシングの内部に貯留される潤滑油の一部を前記吸着体に対して供給するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸着体がケーシング内の油面よりも高い位置でケーシングに取り付けられるので、当該吸着体のメンテナンスの際にケーシング内の潤滑油を抜く手順が不要となり、当該吸着体のメンテナンス性が向上する。また、歯車装置の第1回転部材に設けた供給部材が油面よりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング内の潤滑油を吸着体に供給する構成なので、吸着体を油面よりも高い位置に取り付けても潤滑油中の異物の検出が可能となる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る建設機械としての油圧ショベルを示す外観図である。
図2図1に示す第1の実施形態に係る建設機械をII-II矢視から見た縦断面図である。
図3図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の減速装置をIII-III矢視から見た模式的な横断面図である。
図4図3に示す異物検出センサと第1キャリア上の供給部材との位置関係を減速装置の軸方向に直交する方向から見た模式図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る建設機械の減速装置を図2に示す減速装置の縦断面図と同様な矢視から見た縦断面図である。
図6図5に示す第2の実施形態に係る建設機械の減速装置における案内板の構造の第1例を示す斜視図である。
図7図5に示す第2の実施形態に係る建設機械の減速装置における案内板の構造の第2例を示す斜視図である。
図8図5に示す第2の実施形態に係る建設機械の減速装置における異物検出センサと案内板の位置関係を拡大した状態で示す模式図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る建設機械の減速装置を図3に示す減速装置の横断面図と同様な矢視から見た概略横断面図である。
図10】本発明の第4の実施形態の変形例に係る建設機械の減速装置を図3に示す減速装置の横断面図と同様な矢視から見た概略横断面図である。
図11】第4の実施形態の変形例に係る建設機械の減速装置を図3に示す減速装置の横断面図と同様な矢視から見た概略横断面図である。
【0010】
本発明の第3の実施形態に係る建設機械の減速装置を図2に示す減速装置の縦断面図と同様な矢視から見た縦断面図である。
図12】本発明の第5の実施形態に係る建設機械の減速装置を図2に示す減速装置の縦断面図と同様な矢視から見た縦断面図である。
図13図12に示す第5の実施形態に係る建設機械の減速装置における第2遊星歯車機構の第2キャリアを示す概略斜視図である。
図14】本発明の第6の実施形態に係る建設機械が利用する複数のコンピュータのネットワークを示す構成図である。
図15図14に示すネットワークのサーバが行う減速装置の潤滑油の診断処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図16】第6の実施形態に係る建設機械の異物検出センサによる稼働時間に対する潤滑油中の異物の検出量の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の建設機械の実施形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、建設機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。なお、本明細書で述べる前後左右の方向は、建設機械に搭乗したオペレータから見た方向を示している。
【0012】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る建設機械としての油圧ショベルの概略構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る建設機械としての油圧ショベルを示す外観図である。
【0013】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられたフロント作業装置4とを備えている。油圧ショベル1は、フロント作業装置4の動作によって土砂の掘削作業などを行うように構成されている。
【0014】
下部走行体2は、例えばクローラ式であり、ベースとなるトラックフレーム11を備えている。トラックフレーム11は、前後方向に延在するサイドフレーム12を左右に有している(左側のみ図示)。各サイドフレーム12の長手方向の一端側には遊動輪13が回転可能に支持され、各サイドフレーム12の長手方向の他端側には駆動輪14が回転可能に支持されている。遊動輪13と駆動輪14とには、無端状の履帯(クローラ)15が巻回されている。駆動輪14は、後述の走行駆動装置30(後述の図2参照)の動力が伝達されるように構成されている。
【0015】
上部旋回体3は、オペレータが搭乗するキャブ17と、各種機器を収容する機械室18とを含んでいる。機械室18には、例えば、後述の走行駆動装置30の油圧モータ31へ圧油を供給する油圧システムを構成する各種の油圧機器が収容されている。上部旋回体3には、後述の走行駆動装置30に含まれる減速装置32の異常を潤滑油の状態に基づいて診断する処理を行うコントローラ90と、コントローラ90が処理するデータを外部端末と相互通信するための無線通信装置91とが搭載されている。コントローラ90は、プロセッサ(例えばCPU)と記憶装置(例えばメモリ)とを備え、当該記憶装置に記憶されたプログラムに基づいてプロセッサが各種処理を実行する。
【0016】
フロント作業装置4は、複数の被駆動部材を回動可能に連結することで構成された多関節型の作業装置である。複数の被駆動部材は、例えば、ブーム21、アーム22、作業具(アタッチメント)としてのバケット23とで構成されている。アタッチメントは、グラップル、ブレーカ、リフティングマグネットなど種々のものに付け替え可能である。
【0017】
次に、第1の実施形態に係る建設機械における下部走行体の走行駆動装置の構成について図2を用いて説明する。図2図1に示す第1の実施形態に係る建設機械をII-II矢視から見た縦断面図である。
【0018】
図2において、下部走行体2は、駆動輪14を回転駆動する走行駆動装置30を備えている。走行駆動装置30は、回転駆動源としての油圧モータ31と、油圧モータ31の回転を減速しつつ動力を駆動輪14へ伝達する減速装置32とを備えている。
【0019】
油圧モータ31は、上部旋回体3の機械室18に収容されている油圧ポンプなどからの圧油の供給により動力を出力するものであり、出力軸31aを有している。油圧モータ31の出力軸31aには、雄スプライン12bが形成されている。油圧モータ31は、減速装置32の後述のケーシング40に取り付けられており、出力軸31aが当該ケーシング40を貫通して内部へ延在した状態となっている。
【0020】
歯車装置としての減速装置32は、油圧モータ31の回転を減速して伝達する複数の歯車機構と、複数の歯車機構を内部に収容するケーシング40とを備えている。複数の歯車機構は、例えば、油圧モータ31の回転が伝達される減速歯車機構34と、減速歯車機構34の回転が伝達される第1段の遊星歯車機構35と、第1段の遊星歯車機構35の回転が伝達される第2段の遊星歯車機構36とで構成されている。ケーシング40は、減速歯車機構34を収容する第1ケース41及びカバー42と、第1段の遊星歯車機構35を収容する第2ケース43と、第2段の遊星歯車機構36を収容する第3ケース44とを有している。第1ケース41、第2ケース43、第3ケース44は、駆動輪14の回転軸線に沿って延在するものである。減速装置32は、ブラケット12aを介してサイドフレーム12(図1参照)の長手方向の他端側に(駆動輪14側の端部)に取り付けられている。
【0021】
減速歯車機構34は、軸受34cを介して回転可能に第1ケース41に支持された小径な駆動歯車34a(ピニオン)と、軸受34dを介して回転可能に第1ケース41に、駆動歯車34aと噛合する大径な従動歯車34bとにより構成されている。駆動歯車34aは、油圧モータ31の出力軸31aに組み付けられて出力軸31aと一体に回転するように構成されている。駆動歯車34aは、例えば、出力軸31aの雄スプライン31bとスプライン結合されている。従動歯車34bは、第1段の遊星歯車機構35の後述の第1太陽歯車35aの軸部に組み付けられている。
【0022】
第1段の遊星歯車機構35は、減速歯車機構34の従動歯車34bの回転軸線と同軸上に配置されている。遊星歯車機構35は、従動歯車34bにスプライン結合された第1太陽歯車35aと、第1太陽歯車35aと後述のリングギアの内歯43a(第2ケース43の一部)とに噛合する複数の第1遊星歯車35b(1つのみ図示)と、第1遊星歯車35bを回転可能に支持する第1キャリア35cとを有している。第1遊星歯車35bは、自転しつつ、第1太陽歯車35aの周囲を公転するものである。第1キャリア35cは、第1遊星歯車35bの回転中心部に挿入されたピンに固定されており、第1遊星歯車35bの公転速度で回転するように構成されている。第1キャリア35cは、第2段の遊星歯車機構36の後述の第2太陽歯車36aとスプライン結合されるものである。第1キャリア35cは、第2ケース43の内周面に対向する径方向外側の端面35c1を有している。
【0023】
第2段の遊星歯車機構36は、減速歯車機構34の従動歯車34b及び第1段の遊星歯車機構35の回転軸線と同軸上に配置されている。第2段の遊星歯車機構36は、第1段の遊星歯車機構35の第1キャリア35cにスプライン結合された第2太陽歯車36aと、第2太陽歯車36aと後述のリングギアの内歯44a(第3ケース44の一部)とに噛合する複数の第2遊星歯車36b(1つのみ図示)と、第2遊星歯車36bを回転可能に支持する第2キャリア36cとを有している。第2遊星歯車36bは、自転しつつ、第2太陽歯車36aの周囲を公転するものである。第2キャリア36cは、第2遊星歯車36bの回転中心部に挿入されたピンに固定されており、第2遊星歯車36bの公転速度で回転するように構成されている。第2キャリア36cは、第3ケース44の内周面に対向する径方向外側の端面36c1と、駆動輪14側に形成された後述の第2スペースS2側を向く軸方向一方側の側面36c2と、第1段の遊星歯車機構35の第1キャリア35cに対向する軸方向他方側の側面36c3とを有している。第2キャリア36cは、第1段及び第2段の遊星歯車機構35、36と同軸上の回転軸37に対して結合されている。
【0024】
回転軸37は、減速装置32の動力を駆動輪14に伝達するものである。具体的には、回転軸37は、軸方向一方側が駆動輪14の中心部にスプライン結合され、軸方向他方側が第2段の遊星歯車機構36の第2キャリア36cにスプライン結合されている。回転軸37は、軸方向の中間部位が軸受38を介して回転可能にサイドフレーム12のブラケット12aに支持されている。
【0025】
第1ケース41は、減速歯車機構34の従動歯車34bの回転軸線に沿って延びる筒状の周壁部と、周壁部の軸方向一方側(駆動輪14に近い側)の周縁部に設けた取付フランジとを有している。第1ケース41の周壁部の軸方向他方側には、周壁部の開口を閉塞するようにカバー42が取り付けられている。第1ケース41は、取付フランジ部を介して第2ケース43に取り付けられている。カバー42には、油圧モータ31が取り付けられている。
【0026】
第2ケース43は、第1段の遊星歯車機構35の回転軸線に沿って延びる筒状の周壁部と、周壁部の軸方向一方側(駆動輪14に近い側)の周縁部に設けた取付フランジとを有している。第2ケース43の周壁部における軸方向他方側には、第1ケース41が取り付けられている。第2ケース43の取付フランジが第3ケース44の軸方向他方側(駆動輪14から遠い側)に取り付けられている。第2ケース43の周壁部における第1ケース41に近い部分の内周面には、第1段の遊星歯車機構35の第1遊星歯車35bと噛合する内歯43aが全周に亘って設けられている。すなわち、第2ケース43は、第1段の遊星歯車機構35のリングギアとして機能するものである。第2ケース43の周壁部のうち内歯43aが形成されていない部分には、第1段の遊星歯車機構35の第1キャリア35cの径方向外側の端面35c1との間に第1スペースS1が形成されている。
【0027】
第3ケース44は、第2段の遊星歯車機構36の回転軸線に沿って延びる筒状体として構成されている。第3ケース44の軸方向一方側は、サイドフレーム12のブラケット12aに固定されている。第3ケース44の軸方向他方側(駆動輪14から遠い側)には、第2ケース43の取付フランジが取り付けられている。第3ケース44の周壁部における第2ケース43に近い部分の内周面には、第2段の遊星歯車機構36の第2遊星歯車36bと噛合する内歯44aが全周に亘って設けられている。すなわち、第3ケース44は、第2段の遊星歯車機構36のリングギアとして機能するものである。第3ケース44の周壁部のうち内歯44aが形成されていない部分(駆動輪14に近い部分)には、第2段の遊星歯車機構36の第2キャリア36cうち回転軸37と結合する部分との間に第2スペースS2が形成されている。
【0028】
ケーシング40は、減速歯車機構34と第1段及び第2段の遊星歯車機構35、36の構成部品を潤滑する潤滑油を貯留する機能も有している。潤滑油の油面Fは、例えば、第1太陽歯車35aや第2太陽歯車36a、回転軸37のスプラインに潤滑油がかかりつつ撹拌抵抗を下げるために、第1太陽歯車35aや第2太陽歯車36a、回転軸37の高さに達する位置にある。
【0029】
減速装置32のケーシング40には、ケーシング40の内部に貯留されている潤滑油中に含まれる磁性体の異物(例えば、減速装置32の構成部品の摩耗粉)を検出する異物検出器51(以下、センサと称する)が着脱可能に取り付けられている。センサ51は、例えば、磁力式のものが用いられる。具体的には、センサ51は、磁性体の異物を磁力により吸着する吸着する吸着体と、吸着体が吸着した異物の量に応じた検出信号を出力する回路とを備えている。センサ51は、コントローラ90に電気的に接続されており、検出データをコントローラ90へ出力する。
【0030】
次に、第1の実施形態に係る建設機械の減速装置におけるセンサが異物検出のための構成及び構造について図2図4を用いて説明する。図3図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の減速装置をIII-III矢視から見た概略横断面図である。図4図3に示すセンサとキャリア上の供給部材との関係を減速装置の軸線に沿った断面で見た模式図である。
【0031】
本実施の形態のセンサ51は、ケーシング40の内部に貯留されている潤滑油中に含まれる磁性体の異物(例えば、減速装置32の構成部品の摩耗粉)を検出するものであり、磁力式のものが用いられる。具体的には、センサ51は、磁性体の異物を磁力により吸着する吸着体と、吸着体が吸着した異物の量に応じた検出信号を出力する回路とを備えている。センサ51は、その先端部の特に先端面51a(図3参照)に吸着された異物の量を検出可能な構成である。
【0032】
本実施の形態は、図2及び図3に示すように、センサ51が潤滑油の油面Fよりも高い位置(上方の位置)でケーシング40の第2ケース43に着脱可能に取り付けられる構成である。より詳細には、第2ケース43における内歯43aの無い第1スペースS1が形成されている位置にある部分の最頂部には、センサ51を取り付けるための取付孔43bが設けられている。センサ51は、第2ケース43の取付孔43bに挿入された状態で第2ケース43に取り付けられている。センサ51は、センサ面51aが遊星歯車機構35、36の回転軸線の方向を向くように第2ケース43に取り付けられている。
【0033】
センサ51と第2ケース43の取付孔43bとの間には、センサシール52が挟み込まれている。センサシール52は、例えば、Oリングであり、ケーシング40内の潤滑油がセンサ51の取付孔43bを介して外部へ漏れ出ること封止するものである。第2ケース43には、センサ51が取付孔43bに取り付けられている状態でセンサ51を覆うセンサケース53が取り付けられている。センサケース53は、センサ51や当該センサ51から延びるケーブル(図示せず)を保護するものである。
【0034】
センサ51は、潤滑油の油面Fよりも上方の位置(高い位置)でケーシング40(本実施の形態においては第2ケース43の最頂部)に取り付けられているので、ケーシング40内の潤滑油に浸かっていない状態である。そこで、本実施の形態においては、センサ51が取り付けられた第2ケース43の径方向内側に位置する第1段の遊星歯車機構35の第1キャリア35cの径方向外側の端面35c1のうち、センサ51のセンサ面51aに対向するような位置に、供給部材61を設けている。すなわち、センサ51と供給部材61は、第1段の遊星歯車機構35の軸方向における位置が重なるように配置されている。供給部材61は、第1キャリア35cの径方向外側の端面35c1から径方向外側に突出するような突起状に形成にされている。供給部材61は、第1キャリア35cの回転に伴い潤滑油の油面Fよりも低い位置と高い位置との間を移動するように構成され、ケーシング40の内部に貯留される潤滑油の一部をセンサ51に対して供給する機能を有している。
【0035】
より詳細には、供給部材61は、第1キャリア35cの回転に伴い回転することで、ケーシング40内の潤滑油を第1キャリア35cの径方向外側に向かって回転方向に掻き上げる掻上部材である。供給部材61は、例えば、第1キャリア35cに一体に形成されたものであり、図3に示すように、第1キャリア35cの周方向に間隔をあけて複数(図3中、12個)配置されている。掻上部材としての各供給部材61は、例えば図4に示すように、第1キャリア35c(減速装置32)の周方向が厚み方向であり且つ第1キャリア35c(減速装置32)の軸方向が幅方向である板状の構造物である。また、供給部材(掻上部材)61は、外周縁(径方向外側の先端)61aが第1キャリア35c(減速装置32)の軸方向に対して略平行に延在するように構成されている。供給部材(掻上部材)61は、外周縁61aがセンサ51のセンサ面51aと接触しない範囲で接近させることが望ましい。
【0036】
なお、供給部材61は、第1キャリア35cと別体に加工して第1キャリア35cに溶接やねじなどで接合するように構成することも可能である。また、供給部材61は、少なくも1つである構成も可能である。また、供給部材(掻上部材)61は、図4に示すように、外周縁61b(図4中、二点鎖線で示した部分)が第1キャリア35c(減速装置32)の軸方向に対して傾斜するように延在する構成も可能である。
【0037】
次に、第1の実施形態に係る建設機械の動作及び効果について図1図3を用いて説明する。
【0038】
図1に示す油圧ショベル1のオペレータが走行操作を行うと、図2に示す走行駆動装置30の油圧モータ31に圧油が供給され、油圧モータ31が回転駆動する。減速装置32では、油圧モータ31の出力軸31aの回転により駆動歯車34aが回転すると、駆動歯車34aの回転が従動歯車34bと第1段の遊星歯車減速機構35と第2段の遊星歯車減速機構36とによってこの順で減速される。すなわち、従動歯車34bの回転速度よりも第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cの回転速度の方が低速度になり、当該第1キャリア35cの回転速度よりも第2段の遊星歯車減速機構36の第2キャリア36cの回転速度の方が低速度になる。減速装置32により減速された回転が回転軸37に伝達されて駆動輪14を大きなトルクをもって回転させる。駆動輪14が回転軸37の回転により駆動することで、図1に示す履帯15が周回駆動する。これにより、油圧ショベル1が走行する。
【0039】
図2に示す減速装置32が駆動すると、ケーシング40内に貯留されている潤滑油が減速装置32の構成部品の潤滑に利用されてケーシング40の下部へ戻るように循環する。しかし、減速装置32の各歯車34a、34b、35a、35b、36a、36bが噛合い回転すると、運転時間の経過とともに各歯車34a、34b、35a、35b、36a、36bが摩耗して摩耗紛(磁性体)が減速装置32のケーシング40内の下部へと沈降していく。この摩耗紛は、図2及び図3に示す第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cの径方向外側の外面に設けられた突起状の供給部材(掻上部材)61が第1キャリア35cの回転に伴い回転することによって、潤滑油と共に掻き上げられる。掻き上げられた潤滑油の一部は、センサ51に到達して付着する。センサ51に到達した潤滑油中に摩耗紛が含まれる場合には、摩耗紛がセンサ51の吸着体(磁力)によって主に先端面51aに吸着される。センサ51は、吸着された摩耗粉の量に応じた検出信号を図1に示すコントローラ90へ出力する。コントローラ90は、センサ51から出力された検出データを記憶装置に記憶する。
【0040】
センサ51によって検出されたデータ及び当該検出データに基づく減速装置32の異常診断は、油圧ショベル1のコントローラ90が実行する構成や、外部のコンピュータ等の端末が実行する構成が可能である。外部のコンピュータ等の端末が実行する場合の検出データの移動は、例えば、油圧ショベル1に搭載した無線通信装置91を介して外部端末に逐次送信する構成や定期的にサービスマン等に検出データを記録メディアに複製又は移動させることで行う構成も可能である。コントローラ90や外部端末によるセンサ51の検出データに基づく異物量のカウントに際しては、カウント期間(つまりデータ取得期間)を予め決めておくことが好ましい(例えば、60秒)。
【0041】
本実施の形態においては、センサ51を潤滑油内に設置せずに油面Fよりも高い位置に配置している。これは、センサ51を減速装置32のケーシング40の下部(潤滑油の油面Fよりも下方の位置)に設置した場合、当該センサ51の保守や点検を行うとき、当該センサ51をケーシング40から取り外す前にケーシング40内に貯留されている潤滑油を抜く必要があり、メンテナンスの工数が増えることを回避するためである。また、油圧ショベル1の走行時には、地面上の岩石等の障害物が減速装置32の下部に接触することがあり、この障害物の接触によってケーシング40が変形することでセンサ51の取付部分から潤滑油が漏洩することが懸念されるからである。
【0042】
さらに、本実施の形態においては、減速装置32の第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cに供給部材61を設けることで、潤滑油をセンサ51へ送給することができ、潤滑油中に含まれる摩耗粉の量を把握することが可能となる。すなわち、センサ51を潤滑油中に設置することなく、減速装置32の潤滑油の状態を診断することが可能である。また、潤滑油中に含まれる摩耗粉の量をセンサ51によって常に把握することが可能なので、減速装置32を構成する歯車34a、34b、35a、35b、36a、36bや軸受等の損傷の有無を早期に発見することができる。また、コントローラ90などによる減速装置32の異常診断に基づき、減速装置32の適切な点検時期を設定することができる。
【0043】
また、本実施の形態においては、センサ51を油面Fよりも高い位置でケーシングに取り付けると共に、第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cに供給部材61を設けることで、潤滑油中に含まれる摩耗粉の量を検出する構成であるので、既存の走行駆動装置の改造によって対応可能であり、当該構成の導入が容易であるというメリットがある。
【0044】
上述したように、第1の実施形態に係る油圧ショベル1(建設機械)は、回転駆動源である油圧モータ31の動力を伝達する歯車装置としての減速装置32を備えている。減速装置32(歯車装置)は、油圧モータ31(回転駆動源)の回転を伝達する歯車機構34、35、36(複数の回転部材)と、歯車機構34、35、36(複数の回転部材)を収容すると共に、歯車機構34、35、36(複数の回転部材)を潤滑するための潤滑油を貯留可能であるケーシング40と、ケーシング40に着脱可能に取り付けられ、潤滑油中に含まれる磁性体の異物を吸着可能な吸着体を有するセンサ51とを含んでいる。センサ51の吸着体は、ケーシング40の内部において潤滑油が貯留される油面Fよりも高い位置に取り付けられている。減速装置32(歯車装置)は、歯車機構34、35、36(複数の回転部材)のうちの1つである第1段の遊星歯車機構35の第1キャリア35c(第1回転部材)に設けられ、第1キャリア35c(第1回転部材)の回転に伴い油面Fよりも低い位置と高い位置との間を移動するように構成された供給部材61を有している。供給部材61は、油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40の内部に貯留される潤滑油の一部をセンサ51の吸着体に対して供給するように構成されている。
【0045】
この構成によれば、センサ51の吸着体がケーシング40内の油面Fよりも高い位置でケーシング40に取り付けられるので、吸着体を含むセンサ51のメンテナンスの際にケーシング40内の潤滑油を抜く手順が不要となり、吸着体を含むセンサ51のメンテナンス性が向上する。また、減速装置32(歯車装置)の第1キャリア35c(第1回転部材)に設けた供給部材61が油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40内の潤滑油をセンサ51の吸着体に供給する構成なので、センサ51の吸着体を油面Fよりも高い位置に取り付けても潤滑油中に含まれる異物をセンサ51の吸着体が吸着することで異物の検出が可能となる。
【0046】
また、本実施の形態においては、センサ51の吸着体と供給部材61が減速装置32(歯車装置)の軸方向における位置が重なるように配置されている。さらに、供給部材61は、第1キャリア35c(第1回転部材)における径方向外側の端面35c1又は軸方向一方側の側面に設けられて突起状に形成され、第1キャリア35c(第1回転部材)の回転に伴い回転することによってケーシング40の内部に貯留される潤滑油を掻き上げるように構成されている。
【0047】
この構成によれば、センサ51の吸着体にケーシング40内の潤滑油を供給する構成として、減速装置32(歯車装置)の歯車機構34、35、36(複数の回転部材)のうちの第1キャリア35c(第1回転部材)に突起状の供給部材61を設けるだけなので、減速装置32(歯車装置)の構造の複雑化を避けることができる。
【0048】
また、本実施の形態においては、減速装置32(歯車装置)が第1太陽歯車35a(太陽歯車)と第1遊星歯車(遊星歯車)と第1キャリア35c(キャリア)とを有する遊星歯車機構35を含んでいる。供給部材61を設ける第1回転部材は、遊星歯車機構35の第1キャリア35c(キャリア)である。
【0049】
この構成によれば、遊星歯車機構を含む既存の減速装置(歯車装置)に供給部材61を設ける構成を適用することが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態においては、吸着体が潤滑油中に含まれる異物を検出するセンサ51(検出器)の一部を構成するものであり、吸着体を含むセンサ51(検出器)がケーシング40に着脱可能に取り付けられている。
【0051】
この構成によれば、センサ51(検出器)がケーシング40に着脱可能に取り付けられているので、センサ51(検出器)を取り外すことなく、減速装置(歯車装置)の潤滑油の状態を診断することができる。
【0052】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る建設機械を図5図8を用いて説明する。図5は本発明の第2の実施形態に係る建設機械の減速装置を図2に示す減速装置の縦断面図と同様な矢視から見た縦断面図である。図6図5に示す第2の実施形態に係る建設機械の減速装置における案内板の構造の第1例を示す斜視図である。図7図5に示す第2の実施形態に係る建設機械の減速装置における案内板の構造の第2例を示す斜視図である。図8図5に示す第2の実施形態に係る建設機械の減速装置における異物検出センサと案内板の位置関係を拡大した状態で示す模式図である。なお、図5図8において、図1図4に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0053】
図5に示す第2の実施形態に係る建設機械が第1の実施形態と相違する点は、減速装置32Aのケーシング40の内周面におけるセンサ51に隣接した位置に案内部材62が取り付けられていることである。案内部材62は、第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cに設けた突起状の供給部材61が掻き上げた潤滑油の油滴を付着させ、付着した油滴をセンサ51に向かって流下させて案内するものである。
【0054】
具体的には、案内部材62は、図5に示すように、第1キャリア35cよりも径方向外側に形成された第1スペースS1内に位置すると共に、減速装置32Aの軸方向(回転軸線の延びる方向)においてセンサ51に隣接している。案内部材62は、例えば、第2段の遊星歯車減速機構36の第2キャリア36cの軸方向他方側(第1スペースS1側)の側面36c3とセンサ51との間に位置している。
【0055】
案内部材62の第1例としては、例えば図6に示すように、板状の本体部62aと、本体部62aの表面から張り出した張出部62bとで構成されている。本体部62aは、板状の表面に供給部材61が掻き上げた潤滑油の油滴を付着させるものである。張出部62bは、本体部62aの幅方向に延在すると共に、その一方側端部62b1が他方側端部62b2よりも高い位置となるように傾斜している。案内部材62は、図8に示すように、張出部62bの他方側端部62b2が一方側端部62b1よりもセンサ51に接近した位置になるように配置される。すなわち、張出部62bは、センサ51に近づくにつれて下方に位置するように傾斜することで、本体部62aに付着した油滴をセンサ51に向かって流下させて案内するものである。案内部材62は、張出部62bを板状の本体部62aの両面に設ける構成や一方の表面にのみ設ける構成が可能である。また、案内部材62は、張出部62bを本体部62aに1つ設ける構成や複数設ける構成が可能である。
【0056】
案内部材62の第2例は、例えば図7に示すように、板状の本体部62aの表面に溝62cが形成された構成である。溝62cは、本体部62aの幅方向に延在すると共に、その一方側端部62c1が他方側端部62c2よりも高い位置となるように傾斜している。案内部材62は、図8に示すように、溝62cの他方側端部62c2が一方側端部62c1よりもセンサ51に接近した位置になるように配置される。すなわち、溝62cは、センサ51に近づくにつれて下方に位置するように傾斜することで、本体部62aに付着した油滴をセンサ51に向かって流下させて案内するものである。案内部材62は、溝62cを板状の本体部62aの両面に設ける構成や一方の表面にのみ設ける構成が可能である。また、案内部材62は、溝62cを本体部62aに1つ設ける構成や複数設ける構成が可能である。
【0057】
第1例又は第2例の案内部材62は、本体部62aの幅方向が減速装置32Aの軸方向に沿うように配置される構成や本体部62aの幅方向が減速装置32Aの軸方向に対して傾斜するように配置される構成が可能である。
【0058】
本実施の形態においては、図5に示す減速装置32Aの第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cに設けられた突起状の供給部材61が第1キャリア35cの回転に伴い回転することによって潤滑油を掻き上げる。掻き上げられた潤滑油の一部は、センサ51や案内部材62に到達して付着する。案内部材62に付着した油滴は、張出部62b又は溝62cに沿って流下して張出部62b又は溝62cの他方側端部62b2、62c2を介してセンサ51に案内される。これにより、掻き上げられた潤滑油の油滴が、センサ51に直接的に付着しなくとも、案内部材62に付着することで、センサ51は潤滑油中に含まれる異物の検出が可能となる。
【0059】
上述した第2の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、センサ51の吸着体がケーシング40内の油面Fよりも高い位置でケーシング40に取り付けられるので、吸着体を含むセンサ51のメンテナンスの際に潤滑油を抜く手順が不要となり、吸着体を含むセンサ51のメンテナンス性が向上する。また、減速装置32A(歯車装置)の第1キャリア35c(第1回転部材)に設けた供給部材61が油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40内の潤滑油をセンサ51の吸着体に供給する構成なので、センサ51の吸着体を油面Fよりも高い位置に取り付けても潤滑油中に含まれる異物をセンサ51の吸着体が吸着することで異物の検出が可能となる。
【0060】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1(建設機械)の減速装置32B(歯車装置)は、センサ51の吸着体に隣接した位置でケーシング40の内周面側に取り付けられた案内部材62を更に含んでいる。案内部材62は、案内部材62に付着した潤滑油の油滴をセンサ51の吸着体に案内するように構成されている。
【0061】
この構成によれば、供給部材61によって供給された潤滑油を案内部材62によりセンサ51の吸着体へ案内することが可能となる。これにより、センサ51の吸着体に直接的に付着する以外の潤滑油がセンサ51の吸着体に供給されるので、潤滑油中に含まれる異物の更なる検出が可能となる。
【0062】
また、本実施の形態においては、案内部材62がセンサ51の吸着体に近づくにつれて下方に位置するように傾斜する張出部62b又は溝62cを有している。
【0063】
この構成によれば、供給部材61によって供給された潤滑油のセンサ51の吸着体への案内を簡素な構造の案内部材62により達成することができる。
【0064】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る建設機械について図9を用いて説明する。図9は本発明の第3の実施形態に係る建設機械の減速装置を図3に示す減速装置の横断面図と同様な矢視から見た概略横断面図である。なお、図9において、図1図8に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図9に示す第3の実施形態に係る建設機械が第1の実施形態と相違する点は、油受け部材63をセンサ51の先端部51aの下側に支持部材64を介して減速装置32Bのケーシング40の内周面に取り付けたことである。油受け部材63は、第1キャリア35cに設けられた突起状の供給部材61によって掻き上げられた潤滑油の油滴を受け止めて貯留するものである。油受け部材63に溜められた潤滑油中に含まれる異物は、センサ51の先端面51aに吸着される。すなわち、供給部材61によって掻き上げられた潤滑油の油滴は、センサ51に直接的に付着した場合及び油受け部材63に受け止められて貯留された場合に、センサ51に到達する。したがって、センサ51は、自身51に直接的に付着した油滴以外に、油受け部材63に溜められた潤滑油に含まれる異物を検出することが可能である。
【0066】
上述した第3の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、センサ51の吸着体がケーシング40内の油面Fよりも高い位置でケーシング40に取り付けられるので、吸着体を含むセンサ51のメンテナンスの際に潤滑油を抜く手順が不要となり、吸着体を含むセンサ51のメンテナンス性が向上する。また、減速装置32B(歯車装置)の第1キャリア35c(第1回転部材)に設けた供給部材61が油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40内の潤滑油をセンサ51の吸着体に供給する構成なので、センサ51の吸着体を油面Fよりも高い位置に取り付けても潤滑油中に含まれる異物をセンサ51の吸着体が吸着することで異物の検出が可能となる。
【0067】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る建設機械について図10を用いて説明する。図10は本発明の第4の実施形態に係る建設機械の減速装置を図3に示す減速装置の横断面図と同様な矢視から見た概略横断面図である。なお、図10において、図1図9に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。図10中、太い矢印は第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cの回転方向を示している。
【0068】
図10に示す第4の実施形態に係る建設機械が第1の実施形態と相違する点は、減速装置32Cのケーシング40に対するセンサ51の取付位置が異なることである。具体的には、第1の実施形態の減速装置32は、ケーシング40の第2ケース43における第1スペースS1が形成されている領域の最頂部に取付孔43bが設けられ、取付孔43bにセンサ51が取り付けられた構成である(図2参照)。それに対して、本実施の形態の減速装置32Cは、ケーシング40の第2ケース43における第1スペースS1が形成されている領域の最頂部よりも低い位置で且つ潤滑油の油面Fよりも高い位置に取付孔43cが設けられ、取付孔43cにセンサ51が取り付けられた構成である。第2ケース43における第1スペースS1が形成されている領域では、第1キャリア35cに設けた突起状の供給部材61及びセンサ51の両者を配置可能な空間を確保することができる。
【0069】
センサ51は、例えば図10に示すように、潤滑油の油面Fに対して約45°傾いた高い位置に取り付けられている。なお、センサ51の第2ケース43への取付位置は、潤滑油の油面Fよりも高い位置であれば、潤滑油の油面Fに対する傾斜角は任意である。また、センサ51は、異物を吸着する先端面51aが第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cの回転軸線に向かうように取り付けられている。また、センサ51は、例えば、第2ケース43における油圧ショベル1の前進方向とは反対側(後進方向側)に取り付けられている。これは、油圧ショベル1の前進走行時にセンサ51と障害物との接触の機会を低減することを意図したものである。
【0070】
本実施の形態においては、センサ51が第2ケース43における潤滑油の油面Fよりも高い位置且つ最頂部よりも低い位置で第2ケース43に取り付けられている。油圧ショベル1のオペレータの前進操作に応じて第1キャリア35cが第1回転方向(太い矢印)に回転されると、潤滑油が第1キャリア35cに設けた供給部材61により第1回転方向に掻き上げられてセンサ51に到達する。本実施の形態のセンサ51は、第1の実施形態の場合と比べて潤滑油の液面Fに近いので、供給部材61により掻き上げられた潤滑油の油滴が到達しやすくなる。
【0071】
上述した第4の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、センサ51の吸着体がケーシング40内の油面Fよりも高い位置でケーシング40に取り付けられるので、吸着体を含むセンサ51のメンテナンスの際に潤滑油を抜く手順が不要となり、吸着体を含むセンサ51のメンテナンス性が向上する。また、減速装置32C(歯車装置)の第1キャリア35c(第1回転部材)に設けた供給部材61が油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40内の潤滑油をセンサ51の吸着体に供給する構成なので、センサ51の吸着体を油面Fよりも高い位置に取り付けても潤滑油中に含まれる異物をセンサ51の吸着体が吸着することで異物の検出が可能となる。
【0072】
[第4の実施形態の変形例]
次に、第4の実施形態の変形例に係る建設機械について図11を用いて説明する。図11は第4の実施形態の変形例に係る建設機械の減速装置を図3に示す減速装置の横断面図と同様な矢視から見た概略横断面図である。なお、図11において、図1図10に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0073】
図11に示す第4の実施形態の変形例に係る建設機械が第4の実施形態と相違する点は、減速装置32Dのケーシング40の第2ケース43に取り付けたセンサ51の取付向きが異なる。具体的には、第4の実施形態の減速装置32Cのセンサ51は、その先端面51が第1段の遊星歯車減速機構35の第1キャリア35cの回転軸線に向かうようにケーシング40の第2ケース43に取り付けられている(図10参照)。それに対して、本変形例の減速装置32Dのセンサ51は、その先端面51がケーシング40内の潤滑油の油面Fに向かうようにケーシング40の第2ケース43に取り付けられている。すなわち、センサ51の先端面51aは、鉛直方向の下側を向いている。
【0074】
具体的には、第2ケース43における最頂部よりも低い位置で且つ潤滑油の油面Fよりも高い位置に設けられた取付孔43dには、センサケース53Dが取り付けられている。センサケース53Dは、鉛直方向に延びる筒状のケースであり上側に蓋部を有している。センサケース53Dの内周面には、雌ねじ部が形成されている。センサ51は、雄ねじ部51bを有している。センサ51は、雄ねじ部51bがセンサケース53Dの雌ねじ部にねじ込まれることで、先端面51aを含む先端部が第2ケース43の内部へ突き出るようにセンサケース53Dの内部に取り付けられる。これにより、センサ51の先端面51aは、鉛直方向の下側を向いてケーシング40内の潤滑油の油面Fに向くように配置される。センサケース53Dとセンサ51との間にはセンサシール52が挟み込まれている。この構成により、第1キャリア35cに設けた供給部材61により第1回転方向(太い矢印)に掻き上げられた潤滑油の油滴がセンサ51の先端面51aに付着しやすくなると共に、センサ51の先端面51a以外の部分に付着した油滴が先端面51aに流下しやすくなる。
【0075】
上述した第4の実施形態の変形例によれば、前述した第4の実施形態と同様に、センサ51の吸着体がケーシング40内の油面Fよりも高い位置でケーシング40に取り付けられるので、吸着体を含むセンサ51のメンテナンスの際に潤滑油を抜く手順が不要となり、吸着体を含むセンサ51のメンテナンス性が向上する。また、減速装置32D(歯車装置)の第1キャリア35c(第1回転部材)に設けた供給部材61が油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40内の潤滑油をセンサ51の吸着体に供給する構成なので、センサ51の吸着体を油面Fよりも高い位置に取り付けても潤滑油中に含まれる異物をセンサ51の吸着体が吸着することで異物の検出が可能となる。
【0076】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係る建設機械を図12及び図13を用いて説明する。図12は本発明の第5の実施形態に係る建設機械の減速装置を図2に示す減速装置の縦断面図と同様な矢視から見た縦断面図である。図13図12に示す第5の実施形態に係る建設機械の減速装置における第2遊星歯車機構の第2キャリアを示す概略斜視図である。なお、図12及び図13において、図1図11に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0077】
図12に示す第5の実施形態に係る建設機械が第1の実施形態と相違する点は、減速装置32Eのケーシング40に対するセンサ51の取付位置が異なることである。第1の実施形態の減速装置32は、ケーシング40の第2ケース43における第1スペースS1が形成されている領域の部分にセンサ51が取り付けられた構成である(図2参照)。それに対して、本実施の形態の減速装置32Eは、ケーシング40の第3ケース44における第2スペースS2が形成されている領域の部分にセンサ51が取り付けられた構成である。
【0078】
具体的には、図12に示すように、センサ51が潤滑油の油面Fよりも高い位置(上方の位置)でケーシング40の第3ケース44に着脱可能に取り付けられている。より詳細には、第3ケース44における内歯44aの無い第2スペースS2が形成されている位置にある部分の最頂部には、センサ51を取り付けるための取付孔44eが設けられている。取付孔44eには、センサケース53Eが取り付けられている。センサケース53Eは、筒状のケースであり上側に蓋部を有している。センサケース53Eの内周面には、雌ねじ部が形成されている。センサ51は、雄ねじ部51bを有している。センサ51は、雄ねじ部51bがセンサケース53Eの雌ねじ部にねじ込まれることで、先端面51aを含む先端部が第3ケース44の内部の第2スペースS2へ突き出るようにセンサケース53Eの内部に取り付けられている。センサ51は、例えば、先端面51aが遊星歯車機構35、36の回転軸線の方向を向いている。センサケース53Eとセンサ51との間にはセンサシール52が挟み込まれている。
【0079】
本実施の形態においては、センサ51が取り付けられた第3ケース44の内部に位置する第2段の遊星歯車機構36の第2キャリア36cにおける軸方向一方側の側面36c2に、ケーシング40の内部に貯留される潤滑油の一部をセンサ51へ向かって供給する供給部材61Eが設けられている。供給部材61Eは、第2キャリア36cの回転に伴い潤滑油の油面Fよりも下方の位置と上方の位置との間を移動するように構成されている。具体的には、供給部材61Eは、図13に示すように、筒状に形成されたものであり、第1回転方向に開口する第1開口部61E1と第1回転方向とは反対側の回転方向に開口する第2開口部61E2を有している。供給部材61Eは、筒状の中間部には第1開口部61E1と第2開口部61E2とが連通しないように仕切部が設けられている。このような構成の供給部材61Eは、図12に示す第2キャリア36cの回転に伴い回転することで、油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40の内部に貯留される潤滑油の一部を第1開口部61E1又は第2開口部61E2から汲み上げる汲上部材として機能するものである。汲上部材としての有底筒状の供給部材61Eは、例えば図13に示すように、第2キャリア36cの周方向に間隔をあけて複数(図13中、6個)配置されている。供給部材61Eは、第2キャリア36cと一体に又は別体に形成することが可能である。汲上部材としての供給部材61Eは、図12に示すように、センサ51の先端面51aよりも径方向外側の位置に配置されている。供給部材61Eは、第2キャリア36cに少なくとも1つ設ける構成が可能である。なお、汲上部材としての供給部材61Eは、形状が複雑なので、別に加工したものを第2キャリア36c取り付けることが好ましく、金属3次元プリンタで製造することが可能である。また、汲上部材としての供給部材61Eは、図13に示す筒形状以外に、回転方向に開口する開口部を有する略四角形状の凸部として構成することも可能である。
【0080】
第3ケース44における第2スペースS2が形成されている領域では、図12に示すように、第2キャリア36cに設けた供給部材(汲上部材)61E及びセンサ51の両者を配置可能な空間を確保することができる。
【0081】
センサケース53E又は第3ケース44には、潤滑油を受ける油受け66が取り付けられている。油受け66は、断面が略L字状に形成され、L字状の軸方向に突き出る部分が駆動輪14側から第2段の遊星歯車機構36の第2キャリア36cの軸方向一方側の側面36c2に向かって延びている。油受け66は、L字状の軸方向への突出部分の先端部が第2キャリア36cに設けた筒状の供給部材(汲上部材)61Eの径方向内側の位置にあると共に、当該突出部分の中間位置がセンサ51の先端面51aの径方向内側の位置にあるように配置される。油受け66のL字状の軸方向への突出部分は、先端部から根元部に向かって低くなるように傾斜した構造である。
【0082】
本実施の形態においては、図13に示す第2キャリア36cが第1回転方向(太い矢印)に回転されると、第2キャリア36cに設けた汲上部材としての供給部材61Eは、回転して図12に示すケーシング40に貯留されている潤滑油の中を通過することで潤滑油の一部を第1開口部61E1を介して汲み上げる。潤滑油を汲み上げた供給部材61Eは、潤滑油の油面Fよりも上方に移動すると、汲み上げた潤滑油が第1開口部61E1から徐々にこぼれ落ちる。このとき、油受け66が供給部材61Eから流出する潤滑油を受け止めて貯留する。油受け66に貯留された潤滑油は、センサ51の先端面51aに到達する。潤滑油中に異物が含まれる場合には、センサ51の先端面51aが異物を吸着し、センサ51が異物を検出する。
【0083】
上述した第5の実施形態によれば、センサ51の吸着体がケーシング40内の油面Fよりも高い位置でケーシング40に取り付けられるので、吸着体を含むセンサ51のメンテナンスの際に潤滑油を抜く手順が不要となり、吸着体を含むセンサ51のメンテナンス性が向上する。また、減速装置32E(歯車装置)の第2キャリア36c(第1回転部材)に設けた汲上部材としての供給部材61Eが油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40内の潤滑油をセンサ51の吸着体に供給する構成なので、センサ51の吸着体を油面Fよりも高い位置に取り付けても潤滑油中に含まれる異物をセンサ51の吸着体が吸着することで異物の検出が可能となる。
【0084】
また、本実施の形態においては、第2キャリア36c(第1回転部材)に設けた供給部材61Eが、第2キャリア36c(第1回転部材)の回転方向に開口する開口部61E1、61E2を有し、油面Fよりも低い位置から高い位置への移動によってケーシング40の内部に貯留される潤滑油の一部を開口部61E1、61E2から汲み上げるように構成されている。
【0085】
この構成によれば、第2キャリア36c(第1回転部材)の回転速度が低速度の場合であっても、第2キャリア36c(第1回転部材)に設けた供給部材61Eが潤滑油を開口部61E1、61E2から汲み上げてセンサ51の吸着体へ供給することが可能である。
【0086】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態に係る建設機械を図14図16を用いて説明する。図14図16において、図1図13に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。図14は本発明の第6の実施形態に係る建設機械が利用する複数のコンピュータのネットワークを示す構成図である。
【0087】
本実施の形態は、図14に示すように、コントローラ90の他に、サーバ用コンピュータ101とサービス用コンピュータ111と管理者用コンピュータ112とが利用される。図14中の矢印はデータの流れを示している。なお、各コンピュータ101、111、112は、コントローラ90と同様に、プロセッサ(例えばCPU)と記憶装置(例えばメモリ)を備え、当該記憶装置に記憶されたプログラムに基づいてプロセッサが各種処理を実行可能に構成されている。
【0088】
油圧ショベル1のコントローラ90が収集した異物検出センサの検出データを無線通信装置91などによってサーバ用コンピュータ101(以下サーバと称する)に送信し、当該データに基づいてサーバ101で油圧ショベル1の潤滑油の診断を行い、その診断結果をサービス用コンピュータ111や管理者用コンピュータ112に送信している。
【0089】
ここでは、サーバ101で行われる潤滑油診断のフローについて図15を用いて説明する。図15図14に示すネットワークのサーバが行う減速装置の潤滑油の診断処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0090】
図15に示すフローは繰り返し処理であり、油圧ショベル1の動作後に処理を開始して、タイマー等で設定された所定の時間間隔、例えば1時間ごとにセンサ51が検出したデータがサーバ101に送信され、当該データに基づいてサーバ101で診断処理が行われる。
【0091】
先ず、サーバ101(プロセッサ(以下の処理についても同様))は、油圧ショベル1のセンサ51に付着された異物の量の測定を開始する(ステップS10)。
【0092】
次に、サーバ101は、センサ51の検出データに基づいて潤滑油中の異物量のカウントを開始し、過去にカウントされた異物量から今回カウントされた異物量への変化の度合いを示す変化指標値が予め設定した閾値を超えるか否かを判定する(ステップS20)。変化指標値としては、例えば、前回測定値と今回測定値の差や、当該差を稼働時間で除した時間当たりの測定値変化数や、直近の所定回数の測定値の移動平均などが利用できる。
【0093】
異物検出センサによる異物測定の一例を図16に示す。図16は異物検出センサによる稼働時間に対する潤滑油中の異物の検出量の変化の一例を示す図である。図16に示す例では、稼働時間Tの増加により、異物の付着量Qが増加傾向である。さらに、ある稼働時間を境に付着量の傾きが大きく変化している。
【0094】
本実施形態においては、サーバ101は、変化指標値が前回値と比較して10%を超えて増加した場合に異常と診断するものとして構成する。変化指標値の変化が10%を超えた場合には、ステップS30に処理を進める。一方、変化指標値の変化が10%以下の場合には、サーバ101は減速装置32の状態が正常(歯車の損傷は無い)であると判断してステップS40に処理を進める。
【0095】
ステップS30において、サーバ101は、サービス用コンピュータ111と管理者用コンピュータ112に油圧ショベル1の減速装置32に異常が発生したことを通知する。これにより、油圧ショベル1の稼働が停止される。減速装置32を分解して歯車の状態確認を行う。
【0096】
一方、ステップS40においては、サーバ101が異物の計測値を保存し、次の処理開始タイミングまで待機する。
【0097】
以上のように、サーバ101で異常診断を行うと減速装置32の異常を早期に発見することができ、油圧ショベル1のダウンタイムの増加を抑制できる。
【0098】
なお、図15のフローに係る処理は、コントローラ90でも実行可能である。また、図15のフローに係る処理は、センサ51内にマイクロコンピュータを搭載し当該マイクロコンピュータで実行することも可能である。
【0099】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上述した第1~6の実施形態及びそれらの変形例に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0100】
例えば、上述した第1の実施形態及び第5の実施形態の構成を組み合わせることが可能である。つまり、減速装置のケーシング40の第2ケース43及び第3ケース44の両方にセンサ51を取り付ける構成が可能である。この場合、第1段の遊星歯車機構35の第1キャリア35cに供給部材としての掻上部材61を設けると共に、第2段の遊星歯車機構36の第2キャリア36cに供給部材としての汲上部材61Eを設ける。
【0101】
また、上述した第5の実施形態の構成を第1の実施形態の構成に置換することも可能である。具体的には、第2キャリア36cには第5の実施形態の汲上部材としての供給部材61Eではなく第1の実施形態の掻上部材としての供給部材61を設ける構成も可能である。
【0102】
また、上述した各実施形態及びその変形例においては、減速装置32、32A、32B,32C,32D,32Eがセンサ51を有する構成の例を示した。しかし、本発明は、減速装置だけでなく、複数の歯車などの回転部材を含む増速装置などの歯車装置に適用することが可能である。
【0103】
上述した各実施形態及びその変形例においては、減速装置のケーシング40にセンサ51を取り付ける構成の例を示した。しかし、減速装置は、ケーシング40にセンサ51を取り付ける代わりに、潤滑油中に含まれる異物を吸着可能な吸着体をケーシング40に取り付ける構成も可能である。この構成の場合でも、吸着体をケーシング40から取り外し、吸着体に吸着された異物を目視などにより確認することで、減速装置の潤滑油の異常の有無の診断を行うことが可能である。
【0104】
また、上述した実施形態のコントローラ90及びサーバ101に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、コントローラ90及びサーバ101に係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。
【符号の説明】
【0105】
1…油圧ショベル(建設機械)、 32、32A、32B、32C、32D、32E…減速装置(歯車装置)、 35…第1段の遊星歯車機構(遊星歯車機構)、 35a…第1太陽歯車(太陽歯車)、 35b…第1遊星歯車(遊星歯車)、 35c…第1キャリア(キャリア、第1回転部材)、 36…第2段の遊星歯車機構(遊星歯車機構)、 36a…第2太陽歯車(太陽歯車)、 36b…第2遊星歯車(遊星歯車)、 36c…第2キャリア(キャリア、第1回転部材)、 40…ケーシング、 43…第2ケース、 44…第3ケース、 51…異物検出器(検出器)、 61…供給部材、 61E…供給部材、 61E1、61E2…開口部、 62…案内部材、 62b…張出部、 62c…溝
図1
図2
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