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  • 特開-コンデンサユニット、開閉装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133854
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コンデンサユニット、開閉装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/38 20060101AFI20240926BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01G4/38 A
H01G2/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043850
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 慎晶
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AA20
5E082CC05
5E082CC12
5E082HH03
5E082HH08
5E082HH22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンデンサ素子のアール形状による微小ギャップを改善し、トリプルジャンクション(TJ)部の電界緩和を図る開閉装置の遮断部と並列に配置されるコンデンサユニット及び該コンデンサユニットを備える開閉装置を提供する。
【解決手段】コンデンサユニットは、複数のコンデンサ素子2を直列に接続したコンデンサ積層体の群と、各コンデンサ積層体を収納する絶縁筒3と、各コンデンサ積層体の両端部を、接続電極を介して接続するシールド電極と、素子2の外周面2g毎に個別に巻かれた絶縁テープ30と、を備える。素子2の外周縁部2e、2fはアール形状に形成され、絶縁テープ30は外周縁部2e,2fを避けて外周面2gに巻かれて固着されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサ素子を直列に接続したコンデンサ積層体群と、
前記各コンデンサ積層体を収納する絶縁筒と、
前記各コンデンサ積層体の両端部を、接続電極を介して接続するシールド電極と、
前記各素子と前記絶縁筒との間に介在し、前記各素子の外周面毎に個別に設けられた絶縁体と、
を有することを特徴とするコンデンサユニット。
【請求項2】
前記素子の外周縁部はアール形状に形成され、
前記絶縁体は、前記外周縁部のアール形状を避けて前記素子の外周面に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のコンデンサユニット。
【請求項3】
前記絶縁体は、前記素子の外周面に巻回された絶縁テープである
ことを特徴とする請求項2記載のコンデンサユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の前記コンデンサユニットを遮断部と並列に接続したことを特徴とする開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉装置の遮断部と並列に配置されるコンデンサユニットおよび該コンデンサユニットを備える開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチギアにおいては、真空インタラプタ(VI)の分担電圧を減らすための並列に分圧コンデンサを接続している。そのため、高電圧化によりコンデンサ周辺に生じる電界が大きくなり、それに伴い予期しない放電などの不具合を防ぐべく、電界を緩和させることが必要である。
【0003】
コンデンサの電界緩和を図る技術の一例として、特許文献1が公知となっている。図6に基づき説明すれば、特許文献1のコンデンサユニット1は複数のコンデンサ素子2を直列に積層したコンデンサ積層体20群と、コンデンサ積層体20群を収納するFRP製の絶縁筒3と、接続電極4を介してコンデンサ積層体20群の両端部を接続するシールド電極5とを備え、絶縁筒3内に絶縁性ガス(SF6など)が密封されている。
【0004】
前記素子2は、図7に示すように、誘電体(コンデンサセラミック部)2aの周囲を絶縁体(コンデンサモールド部)2bで被覆して構成され、電極2c,2dを有している。また、絶縁筒3の内周面は比誘電率1~4の絶縁シート6に前面被覆され、前記各素子2と前記絶縁筒3との間に絶縁シート6が介在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-247144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、絶縁筒3と前記素子との間に絶縁シート6を介在させることで絶縁ガスとの比誘電率差を小さくし、図8中のトリプルジャンクション部(以下、TJ部とする。)の高電界化を抑えようとしている。
【0007】
ところが、特許文献1では前記素子2の上下の外周縁部2e,2fが直角に形成されているものの、実際には製作上の都合によりアール形状となっていることが少なくない。
【0008】
この場合に絶縁シート6で絶縁筒3の内周面のすべてを被覆すると、前記外周縁部2e,2fのアール形状により楔状の微小ギャップが発生する。そこに絶縁性ガスが入り込んで誘電率の異なる絶縁部材が微小で存在し、電界が集中する。その結果、図8中のTJ部が高電界化することで部分放電が発生し、また絶縁破壊を生じる電界値となるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、コンデンサ素子のアール形状による微小ギャップを改善し、TJ部の電界を緩和することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、
複数のコンデンサ素子を直列に接続したコンデンサ積層体群と、
前記各コンデンサ積層体を収納する絶縁筒と、
前記各コンデンサ積層体の両端部を、接続電極を介して接続するシールド電極と、
前記各素子と前記絶縁筒との間に介在し、前記各素子の外周面毎に個別に設けられた絶縁体と、
を有することを特徴としている。
【0011】
(2)本発明の一態様において、
前記素子の外周縁部はアール形状に形成され、
前記絶縁体は、前記外周縁部のアール形状を避けて前記素子の外周面に設けられていることを特徴としている。
【0012】
(3)本発明の他の態様において、
前記絶縁体は、前記素子の外周面に巻回された絶縁テープであることを特徴としている。
【0013】
(4)なお、本発明は、前記コンデンサユニットを遮断部と並列に接続した開閉装置として構成することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンデンサ端部のアール形状による微小ギャップを改善し、TJ部の電界を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るコンデンサユニットのコンデンサ積層体を示す縦断面図。
図2図1の部分拡大図。
図3図2のコンデンサ素子の拡大図。
図4】実施例の部分拡大図。
図5】比較例の部分拡大図。
図6】特許文献1のコンデンサ積層体を示す縦断面図。
図7図6の部分拡大図。
図8図7のコンデンサ素子の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。ここでは図6図8のコンデンサユニット1と同一の構成については同じ符号を用いるものとする。
【0017】
≪構成例≫
図1図3に基づき本実施形態に係るコンデンサユニットの構成例を説明する。図1中の10は前記コンデンサユニットを示し、ここでは中心線Sの右半分のみを図示している。
【0018】
コンデンサユニット10は、スイッチギアの真空インタラプタ(VI)と並列に接続される分圧コンデンサとして用いられ、図1に示すように、複数のコンデンサ素子2を直列に積層したコンデンサ積層体20群と、該積層体20群を収納するFRP製の絶縁筒3と、接続電極4を介して前記積層体20群の両端部を接続するシールド電極5とを備え、絶縁筒3内に絶縁性ガス(SF6など)が密封されている。
【0019】
また、コンデンサユニット10は、前記積層体20を構成する個々の前記素子2の外径が絶縁筒3の内径よりも小さく形成されている。したがって、前記積層体20の両端に設けられた接続電極4の外径も絶縁筒3の内径よりも小さく形成されている。
【0020】
前記各素子2は、図2に示すように、誘電体(コンデンサセラミック部)2aの周囲を絶縁体(コンデンサモールド部)2bで被覆して構成され、電極2c,2dを有している。ここでは前記積層体20はn個の電極2c,2dを直列に接続され、コンデンサユニット10は直列に接続される前記素子2の個数および前記積層体20の並列数に応じて所望の静電容量および耐電圧性能を得ている。
【0021】
シールド電極5は、円板状に形成され、外周に沿って接続電極4を囲繞する外部シールド41を有している。この外部シールド41内に前記積層体20を収納した複数の絶縁筒3が周方向に等間隔に配置されている。
【0022】
ここでは製作の都合上により前記各素子2は、図3に示すように、前記素子2の上下の外周縁部2e,2fがアール形状に形成されている。以下、前記外周縁部2e,2fをR部2e,2fと呼ぶ。
【0023】
ただし、前記積層体20は特許文献1のように絶縁筒3の内周面を絶縁シート6で全面被覆するのではなく、前記各素子2の外周面(平坦部)2g毎に絶縁テープ(比誘電率=1より大きく4以下)30が個別に巻かれている点で相違する。
【0024】
すなわち、絶縁テープ30は、前記各素子2の外周面2gと前記絶縁筒3の内周面との間に介在しているものの、R部2e,2fを避けて外周面2gに巻回されて固着されている。
【0025】
この絶縁テープ30は、例えばフッ素樹脂(PTFE)粘着テープを用いることができ、比誘電率が1より大きく4以下であれば他の粘着テープを用いてもよい。また、絶縁テープ30は、前記素子2の外周面2gと同程度の幅・厚さ(0.5mm~2.00mm)程度のサイズが用いられている。
【0026】
その結果、前記各素子2のR部2e,2fでは、特許文献1のような楔状の微小ギャップが改善される。そのため、特許文献1のように絶縁性ガス(SF6など)が微小ギャップに入り込むことがなく、図3中のTJ部の電界集中が緩和される。この点で前記各素子2のR部2e,2fの部分放電や絶縁破壊などを防止することできる。
【0027】
≪比較試験≫
表1は、コンデンサユニット10の実施例1~4とコンデンサユニット1の比較例1,2との比較試験の結果を示している。
【0028】
【表1】
【0029】
表1の比較試験は、試験装置にスイッチギアを使用した。このスイッチギアは一対の遮断部を備えた二点切りに構成され、各遮断部の真空インタラプタの分圧コンデンサにコンデンサユニット1,10を用いた。ここでは所定電圧を印加して実施例1~4と比較例1,2についてR部2e,2f周辺のTJ部の発生電界を比較した。
【0030】
(A)試験条件(解析条件)
実施例1~4は、図4に示すように、前記各素子2の外周面2g毎に絶縁テープ30として、テフロン(登録商標、以下同じ。)シートがR部2e,2fを避けた状態で巻回されている。
【0031】
表1に示すように、実施例1,2は「厚さ=1mm」のテフロンシートが用いられ、実施例3は「厚さ=0.5mm」のテフロンシートが用いられ、実施例4は「厚さ=2mm」のテフロンシートが用いられている。
【0032】
一方、比較例1,2は、図5に示すように、絶縁筒3の内周面3aの全域に絶縁シート6として、テフロンシートが固着されている。比較例1には「厚さ=1mm」のテフロンシートが用いられ、比較例2には「厚さ=3mm」のテフロンシートが用いられている。
【0033】
ここで図4および図5中の「L1」は前記素子2の外周面2gの幅を示し、同「L2」はテフロンテープの幅を示している。また、「L3」はR部2e,2fの幅を示し、L4は「L1+(L3×2)」の幅を示している。
【0034】
表1によれば、実施例1のテフロンテープは「L2/L1=80%(0.8)」と示され、実施例2~4のテフロンテープは「L2/L1=90%(0.9)」と示され、いずれも外周面2gの幅よりも狭いタイプのテフロンテープが用いられている。
【0035】
(B)試験結果(解析結果)
表1中の「発生電界」は実施例1~4と比較例1,2のTJ部における発生電界を示し、基準電界値に対する「%表示」を示し、基準電界値は比較例1の電界値とする。
【0036】
ここでは比較例1,2は、TJ部に楔状の微小ギャップが発生するため、テフロンシートの厚みを変えても高い電界値となり、特に比較例2では基準電界値を超えてしまった。
【0037】
これに対して実施例1~4は、TJ部の楔状が改善されるため、基準電界値の「80%」以下となることが確認された。その結果、実施例1~4によれば、前記素子2の外周面2gにテフロンテープをR部2e,2fを避けて巻くことで、比較例1,2よりも電界率を「20%」以上も改善する効果が得られる。
【0038】
ただし、テフロンテープの厚みが薄いとTJ部の電界が高くなる傾向があるので、テープ厚みを「1mm」以上とすることが好ましい。
【0039】
また、実施例1は、「L2/L1」の割合が実施例2~4より低いため、TJ部の電界が若干高くなっている。一方、「L2/L1」の値が「100%」を超えるとテフロンテープが外周面2gからはみ出してTJ部に微小ギャップが生じるおそれがある。この点で実施例2~4の「L2/L1」の値が好ましい。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載さえた範囲内で変形して実施することができる。例えば絶縁テープ30ではなく、個々の前記素子2の外周面2g毎に絶縁シート(テフロンシートなど)を設ける構成としてもよい。この場合も、絶縁テープ30と同様に絶縁シートを前記素子2のR部2e,2fを避けて固着することが好ましい。
【0041】
また、本発明は、コンデンサユニット10を備えた開閉装置(スイッチギアなど)として構成することもできる。この場合には、電極の開閉により高圧の電流を遮断する遮断部とコンデンサユニット10とが容器内に収納される。このとき遮断部には真空インタラプタを用いることができ、また真空インタラプタと並列にコンデンサユニット10を分圧コンデンサとして用いればよく。例えば比較試験に用いた二点切りのスイッチギアなどとして構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
2…コンデンサ素子
2e,2f…同 外周縁
2g…同 外周面
3…絶縁筒
4…接続電極
5…シールド電極
10…コンデンサユニット
20…コンデンサ積層体
30…絶縁テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8