(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133859
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】車両自動運転装置用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240926BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01M17/007 D
H02K7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043855
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 安紀彦
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 伸夫
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE55
5H607EE60
(57)【要約】
【課題】簡素な装置構成のもとで、スイッチ類の押圧操作、回転操作、及び押圧・回転操作の3通りの態様が可能な車両自動運転装置用アクチュエータの提供。
【解決手段】アクチュエータ1において、ベースプレート2はガイドレール9を備える。アクチュエータハウジング3はガイドレール9にスライド可能に支持される。第1モータ部4はアクチュエータハウジング3の先端面からスライド方向に沿って突出したアクチュエータ軸(回転軸41)を回転駆動する。第2モータ部5はアクチュエータハウジング3の後端寄りの端部に収容される。クランクピン6は第2モータ部5の回転軸51から偏心した位置にて第2モータ部5から下方に突出する。カム溝7は、ベースプレート2に前記スライド方向と交差する方向に沿って形成され、クランクピン6と係合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスイッチの押圧操作、回転操作及び押圧回転操作が可能な車両自動運転装置用アクチュエータであって、
ガイドレールを備えたベースプレートと、
前記ガイドレールにスライド可能に支持されたアクチュエータハウジングと、
前記アクチュエータハウジングの先端寄りの端部に収容され、当該アクチュエータハウジングの先端面からスライド方向に沿って突出したアクチュエータ軸を回転駆動する第1モータ部と、
前記アクチュエータハウジングの後端寄りの端部に収容される第2モータ部と、
この第2モータ部の回転軸から偏心した位置にて、当該第2モータ部の下方に突出するクランクピンと、
前記ベースプレートに前記スライド方向と交差する方向に沿って形成され、前記クランクピンと係合するカム溝と、
を備えた車両自動運転装置用アクチュエータ。
【請求項2】
前記アクチュエータ軸は、前記第1モータ部の回転軸からなり、
前記第2モータ部の回転軸には、前記クランクピンを備えたドライブプレートが固定され、
前記第1モータ部と前記第2モータ部の回転軸は、互いに90°異なる方向に沿う
請求項1に記載の車両自動運転装置用アクチュエータ。
【請求項3】
前記カム溝は、前記クランクピンが180°以上回転可能な長さを有し、
前記クランクピンの偏心量の2倍のストロークで前記アクチュエータハウジングの前進及び後退が可能である、
請求項1に記載の車両自動運転装置用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシャシダイナモメータ上で車両の走行試験を行う際に車両のペダル操作やシフトレバー操作を運転者に代わって行う車両自動運転装置の分野に関し、特に、車両のイグニッションスイッチ等のスイッチ類の操作を行うアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行試験に供される車両のスイッチとしては、ボタンのように単純に押圧操作する形式のものやダイヤルのように回転操作する形式のもの、さらには、押圧しながら回転操作が必要な形式のもの、等種々のものがある。例えば、押圧・回転操作が必要なイグニッションスイッチを操作することができるアクチュエータとして、特許文献1に記載されているような押圧回転式のアクチュエータが提案されている。
【0003】
特許文献1の押圧回転式のアクチュエータは、イグニッションスイッチを空気圧により押圧する押し込み機構と、当該イグニッションスイッチを空気圧により回転させる回転機構と、を組み合わせた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-068918号公報
【特許文献2】特開2021-148613号公報
【特許文献3】特開2010-145084号公報
【特許文献4】特開2011-196959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来(特許文献1)の押圧回転式のアクチュエータは、イグニッションスイッチを押圧回転する機構として、空気圧を利用する。すなわち、回転方向の駆動を行う2つの圧力室と、軸方向に動作させるための圧力室と、の3つの圧力室に選択的に空気圧を導入する構成となる。そのため、前記アクチュエータの装置全体としては、イグニッションスイッチに対して取り付けられるアクチュエータ部分のほかに、空気圧を生成させるコンプレッサや、その切換弁、配管類、等が必要であり、大がかりな装置構成となり、周辺機器との取り合いも複雑となる。
【0006】
本発明は、以上のことを鑑み、簡素な装置構成のもとで、スイッチ類の押圧操作、回転操作、及び押圧・回転操作の3通りの態様が可能な車両自動運転装置用アクチュエータの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、車両のスイッチの押圧操作、回転操作及び押圧回転操作が可能な車両自動運転装置用のアクチュエータであって、ガイドレールを備えたベースプレートと、前記ガイドレールにスライド可能に支持されたアクチュエータハウジングと、前記アクチュエータハウジングの先端寄りの端部に収容され、当該アクチュエータハウジングの先端面からスライド方向に沿って突出したアクチュエータ軸を回転駆動する第1モータ部と、前記アクチュエータハウジングの後端寄りの端部に収容される第2モータ部と、この第2モータ部の回転軸から偏心した位置にて、当該第2モータ部の下方に突出するクランクピンと、前記ベースプレートに前記スライド方向と交差する方向に沿って形成され、前記クランクピンと係合するカム溝と、を備える。
【0008】
本発明の一態様は、前記車両自動運転装置用アクチュエータにおいて、前記アクチュエータ軸は、前記第1モータ部の回転軸からなり、前記第2モータ部の回転軸には、クランクピンを備えたドライブプレートが固定され、前記第1モータ部と前記第2モータ部の回転軸は、互いに90°異なる方向に沿う。
【0009】
本発明の一態様は、前記車両自動運転装置用アクチュエータにおいて、前記カム軸は、前記クランクピンが180°以上回転可能な長さを有し、前記クランクピンの偏心量の2倍のストロークで前記アクチュエータハウジングの前進及び後退が可能である。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明によれば、簡素な装置構成のもとで、スイッチ類の押圧操作、回転操作、及び押圧・回転操作の3通りの態様が可能な車両自動運転装置用アクチュエータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一態様である車両自動運転装置用アクチュエータの斜視図。
【
図2】アクチュエータハウジング及び保持具を取り外した前記車両自動運転装置用アクチュエータの前方斜視図。
【
図3】アクチュエータハウジング、保持具及び連結プレートを取り外した前記車両自動運転装置用アクチュエータの側面図。
【
図4】アクチュエータハウジング、保持具及びベースプレートを取り外した前記車両自動運転装置用アクチュエータの下面図。
【
図5】アクチュエータハウジング及び保持具を取り外した前記車両自動運転装置用アクチュエータの後方斜視図。
【
図6】前記車両自動運転装置用アクチュエータの保持具の一態様を例示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1に示された本発明の一態様のアクチュエータ1は、車両自動運転装置の本体部分から延びる図示しないアームの先端に取り付けられ、試験対象となる車両のスイッチの形式に応じて、押圧操作、回転操作及び押圧回転操作のいずれかを行うアクチュエータである。尚、車両自動運転装置としては、例えば特許文献2等に記載されているが、車両自動運転装置自体はどのような形式・構成のものであってもよい。
【0014】
アクチュエータ1は、長方形状を成すベースプレート2と、このベースプレート2の上に搭載された矩形の箱状を成すアクチュエータハウジング3と、を有する。そして、
図2に示すようにアクチュエータハウジング3の内部には第1モータ部4及び第2モータ部5が収容されている。
【0015】
ベースプレート2は、前記アームの先端に支持されるものであり、
図1-3,5のように上面にガイドレール9が突出して設けられている。ガイドレール9は、長方形状をなすベースプレート2の長手方向に沿って延びており、かつベースプレート2の幅方向中央部に位置する。
【0016】
アクチュエータハウジング3は、このガイドレール9にスライド可能に支持される。つまり、アクチュエータハウジング3全体がベースプレート2に対してスライドするように構成されている。
【0017】
第1モータ部4は、
図2に示すように、アクチュエータハウジング3(
図1参照)の先端寄りの端部に収容されており、
図2,3のようにアクチュエータハウジング3の先端面からスライド方向に沿って突出した回転軸41を備えている。図示例では、歯車機構等を介さずに第1モータ部4の回転軸41そのものがアクチュエータ軸となっている。この回転軸41は、ガイドレール9と平行をなすように配置されており、また比較的上方に偏って位置している。
【0018】
第2モータ部5は、
図1のアクチュエータハウジング3の後端寄りの端部に収容される。つまり、第1モータ部4の回転軸41の突出方向とは反対側となる側において、当該第1モータ部4に隣接して第2モータ部5が配置されている。この第2モータ部5は、下方へ向かって、換言すればベースプレート2へ向かって突出した回転軸51を有する(
図4,5参照)。回転軸51には円板状のドライブプレート52が固定されており、このドライブプレート52にクランクピン6が取り付けられている。クランクピン6は、
図2,4,5のように第2モータ部5の回転軸51から偏心した位置にてドライブプレート52から下方に突出する。
【0019】
このようなクランクピン6に対応して、ベースプレート2の上面にカム溝7が設けられている。カム溝7は、
図4のようにスライド方向と直交する方向に沿って延びており、クランクピン6が係合する。図示例では、カム溝7が長孔状に貫通形成されたカム形成部材71がベースプレート2上面に固定されることでカム溝7が配置される。特に
図4に示すようにカム形成部材71とガイドレール9とは略T字形を成すようにベースプレート2上に配置されている。
【0020】
第2モータ部5の回転軸51は、ベースプレート2の上面に対し垂直な方向に延びている。したがって、第1モータ部4の回転軸41と第2モータ部5の回転軸51は、
図3-5のように互いに90°異なる方向に沿って配置されており、図示例では、各々の中心軸線が互いに直交する。そして、アクチュエータ軸となる第1モータ部4の回転軸41には、例えば
図1のように、シリンダ錠からなるイグニッションスイッチに対応するキーを保持する細長い筒状の保持具10が装着される。保持具10としては例えば特許文献3に開示の保持具が適用される。
図1に例示した保持具10は、基本的に回転操作のみを行う形式に対応している。
【0021】
第2モータ部5が駆動するクランクピン6とベースプレート2のカム溝7とが互いに係合していることで、一種のカム機構が構成される。第2モータ部5によってクランクピン6が回転軸51回りに移動することで、カム作用により、ベースプレート2上にスライド可能に支持されているアクチュエータハウジング3が移動する。カム溝7は、
図4のようにクランクピン6が回転軸51回りに180°以上回転可能な長さを有し、したがって、クランクピン6の偏心量の2倍のストロークでアクチュエータハウジング3の前進及び後退が可能である。
【0022】
アクチュエータハウジング3内に隣接して配置された第1モータ部4及び第2モータ部5は、一対の連結プレート8によって互いに固定されている。連結プレート8は、
図2のように第1モータ部4及び第2モータ部5の両側面に取り付けられ、第1モータ部4と第2モータ部5を前記スライド方向に沿って連結している。尚、連結プレート8はアクチュエータ1において必須ではなく、第1モータ部4と第2モータ部5とを個々にアクチュエータハウジング3に固定するようにしてもよい。
【0023】
図1-5を参照してアクチュエータ1の動作例について説明する。
【0024】
第2モータ部5の駆動による回転軸51の正転及び逆転によりクランクピン6を回転させると、カム溝7とクランクピン6とからなるカム作用によりアクチュエータハウジング3がベースプレート2上でガイドレール9に沿って前進及び後退する。つまり、第1モータ部4と第2モータ部5とが一体となって前後方向に移動する。また、第1モータ部4の駆動によりアクチュエータ軸(回転軸41)を回転させると、保持具10が回転する。以上の両者の動作の組み合わせにより、操作対象となるイグニッションスイッチ等のスイッチの形式に応じて、押圧操作、回転操作及び押圧・回転操作が可能となる。
【0025】
したがって、本実施形態のアクチュエータ1によれば、駆動源として2つのモータを用いた簡単な構成により車両のスイッチの押圧操作、回転操作及び押圧・回転操作を実現できる。
【0026】
また、アクチュエータハウジング3に2つのモータ部が搭載されることで、アクチュエータハウジング3自体がベースプレート2上において前進及び後退する構成となるので、例えば前進・後退用の駆動機構と回転操作用の駆動機構とが別個に構成されている場合と比較して装置全体が小型となる。特に、前記モータ部は電気のみで動作可能なので駆動用の空気圧を供給するエア配管やコンプレッサ等の外部機器が不要となる。
【0027】
さらに、第1モータ部4及び第2モータ部5のトルク制御により、前記スイッチの押込力や回転力を任意に調整可能となる。そして、第1モータ部4及び第2モータ部5に位置検出器を備えると第1モータ部4及び第2モータ部5の位置を任意に調整可能となる。
【0028】
尚、図示例のアクチュエータ1は操作の対象物に応じて保持具を任意に交換することができる。例えば、前記対象物が押圧・回転操舵が必要なダイヤル式変速機セレクタの場合、
図1の保持具10に代えて
図6に例示の保持具11が第1モータ部4の回転軸41の一端に装着される。保持具11としてはそのほか特許文献4に開示の固定具等を用いることも可能である。
図6の保持具11は、ダイヤル式変速機セレクタを挟持する挟持体111と、前記挟持とその解除を可能とする送り板112を備える。このような保持具11を備えたアクチュエータ1によればダイヤル式変速機セレクタを押圧しながら回転操作することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…アクチュエータ
2…ベースプレート
3…アクチュエータハウジング
4…第1モータ部、41…回転軸
5…第2モータ部、51…回転軸
6…クランクピン
7…カム溝、71…カム形成部材
8…連結プレート
9…ガイドレール
10,11…保持具