(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133869
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】パターン設計方法、テンプレート製造方法及びパターン設計装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240926BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043866
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸子
(72)【発明者】
【氏名】高畑 和宏
(72)【発明者】
【氏名】三木 聡
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AC05
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AR07
4F209AR12
4F209AR14
4F209PA02
4F209PB01
4F209PJ06
4F209PJ26
4F209PN09
4F209PN13
5F146AA32
(57)【要約】
【課題】インプリント処理における被処理層の流動による影響を抑制する。
【解決手段】実施形態のパターン設計方法は、被処理層の表面にテンプレートに押し付けて所定のパターンを形成するインプリント処理に用いられるテンプレートのパターンを設計する方法であって、被処理層に押し付けられるショット面の端部から所定距離だけ内側の外縁領域に対応する外縁被覆率範囲を、外縁領域より内側の内部領域に対応する内部被覆率範囲とは異なるように設定し、外縁領域内のパターンをその被覆率が外縁被覆率範囲内となるように設計し、内部領域内のパターンをその被覆率が内部被覆率範囲内となるように設計する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理層の表面にテンプレートに押し付けて所定のパターンを形成するインプリント処理に用いられる前記テンプレートのパターンを設計する方法であって、
前記被処理層に押し付けられるショット面の端部から所定距離だけ内側の外縁領域に対応する外縁被覆率範囲を、前記外縁領域より内側の内部領域に対応する内部被覆率範囲とは異なるように設定し、
前記外縁領域内のパターンをその被覆率が前記外縁被覆率範囲内となるように設計し、
前記内部領域内のパターンをその被覆率が前記内部被覆率範囲内となるように設計する、
パターン設計方法。
【請求項2】
前記外縁被覆率範囲は、前記内部被覆率範囲より狭い、
請求項1に記載のパターン設計方法。
【請求項3】
前記外縁被覆率範囲の上限値は、前記内部被覆率範囲の上限値より低い、
請求項1に記載のパターン設計方法。
【請求項4】
前記外縁領域は、前記ショット面の端部から第1所定距離だけ内側の第1外縁領域と、前記第1外縁領域の内側の端部から第2所定距離だけ内側の第2外縁領域と、を含み、
前記外縁被覆率範囲は、前記第1外縁領域に対応する第1被覆率範囲と、前記第2外縁領域に対応し前記第1被覆率範囲とは異なる第2被覆率範囲と、を含み、
前記第1外縁領域内のパターンは、その被覆率が前記第1被覆率範囲内となるように設計され、
前記第2外縁領域内のパターンは、その被覆率が前記第2被覆率範囲内となるように設計される、
請求項1に記載のパターン設計方法。
【請求項5】
前記第1被覆率範囲は、前記第2被覆率範囲より狭い、
請求項4に記載のパターン設計方法。
【請求項6】
前記第1被覆率範囲の上限値は、前記第2被覆率範囲の上限値より低い、
請求項4に記載のパターン設計方法。
【請求項7】
前記ショット面は、ステップアンドリピート方式で行われる前記インプリント処理における押印方向の下流側の端部から所定距離だけ内側の領域である先行領域と、前記押印方向の上流側の端部から所定距離だけ内側の領域である後続領域と、を含み、
前記先行領域に対応する被覆率範囲である先行被覆率範囲を、前記後続領域に対応する被覆率範囲である後続被覆率範囲とは異なるように設定し、
前記先行領域内のパターンをその被覆率が前記先行被覆率範囲内となるように設計し、
前記後続領域内のパターンをその被覆率が前記後続被覆率範囲内となるように設計する、
請求項1に記載のパターン設計方法。
【請求項8】
前記先行被覆率範囲は、前記後続被覆率範囲より狭い、
請求項7に記載のパターン設計方法。
【請求項9】
前記先行被覆率範囲の上限値は、前記後続被覆率範囲の上限値より低い、
請求項7に記載のパターン設計方法。
【請求項10】
前記ショット面は、内部にパターンが形成される本体領域と、前記本体領域の周囲に形成され内部にパターンが形成されないカーフ領域と、を含み、
前記本体領域に対応する被覆率範囲である本体被覆率範囲を、前記カーフ領域に対応する被覆率範囲であるカーフ被覆率範囲とは異なるように設定し、
前記本体領域内のパターンをその被覆率が前記本体被覆率範囲内となるように設計し、
前記カーフ領域内のパターンをその被覆率が前記カーフ被覆率範囲内となるように設計する、
請求項1に記載のパターン設計方法。
【請求項11】
前記本体被覆率範囲は、前記カーフ被覆率範囲より狭い、
請求項10に記載のパターン設計方法。
【請求項12】
前記本体被覆率範囲の上限値は、前記カーフ被覆率範囲の上限値より低い、
請求項10に記載のパターン設計方法。
【請求項13】
ステップアンドリピート方式で行われる前記インプリント処理において、前記被処理層上でショット領域の境界を越えて流動する前記被処理層の挙動の予測を示す流動予測情報に基づいて、流動する前記被処理層の影響が前記本体領域に及ばないように、前記ショット面の端部と前記本体領域と前記カーフ領域との位置関係を調整する、
請求項10に記載のパターン設計方法。
【請求項14】
前記ショット面の端部は、ジグソー形状を有する、
請求項1に記載のパターン設計方法。
【請求項15】
被処理層の表面にテンプレートに押し付けて所定のパターンを形成するインプリント処理に用いられる前記テンプレートを製造する方法であって、
前記被処理層に押し付けられるショット面の端部から所定距離だけ内側の外縁領域に対応する外縁被覆率範囲を、前記外縁領域より内側の内部領域に対応する内部被覆率範囲とは異なるように設定し、
被覆率が前記外縁被覆率範囲内となるように設計された前記外縁領域内のパターンを示す情報と、被覆率が前記内部被覆率範囲内となるように設計された前記内部領域内のパターンを示す情報と、を含む設計情報を生成し、
前記設計情報に基づいて前記ショット面にパターンを形成する、
テンプレート製造方法。
【請求項16】
被処理層の表面にテンプレートに押し付けて所定のパターンを形成するインプリント処理に用いられる前記テンプレートのパターンを設計するための処理を実行する演算装置を備え、
演算装置は、
前記被処理層に押し付けられるショット面の端部から所定距離だけ内側の外縁領域に対応する外縁被覆率範囲を、前記外縁領域より内側の内部領域に対応する内部被覆率範囲とは異なるように設定し、
前記外縁領域内のパターンをその被覆率が前記外縁被覆率範囲内となるように設計し、
前記内部領域内のパターンをその被覆率が前記内部被覆率範囲内となるように設計する、
パターン設計装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン設計方法、テンプレート製造方法及びパターン設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、所定のパターンが形成されたテンプレートをレジスト等の被処理層の表面に区画された複数のショット領域に順次押し付けていくことにより被処理層にパターンを形成するステップアンドリピート方式のインプリント処理が利用されている。このようなインプリント処理においては、流動性の被処理層(例えば硬化前のレジスト等)がショット領域の境界を越えて流動することにより不具合が生ずる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-181878号公報
【特許文献2】特開2020-198428号公報
【特許文献3】特開2021-82808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの実施形態は、インプリント処理における被処理層の流動による影響を抑制可能なパターンを設計可能なパターン設計方法、テンプレート製造方法及びパターン設計装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のパターン設計方法は、被処理層の表面にテンプレートに押し付けて所定のパターンを形成するインプリント処理に用いられるテンプレートのパターンを設計する方法であって、被処理層に押し付けられるショット面の端部から所定距離だけ内側の外縁領域に対応する外縁被覆率範囲を、外縁領域より内側の内部領域に対応する内部被覆率範囲とは異なるように設定し、外縁領域内のパターンをその被覆率が外縁被覆率範囲内となるように設計し、内部領域内のパターンをその被覆率が内部被覆率範囲内となるように設計するものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態のインプリント装置の構成の一例を示す図。
【
図2】第1実施形態のテンプレートのショット面の構成の一例を示す図。
【
図3】第1実施形態の基板に設けられた複数のショット領域の一例を示す図。
【
図5】先行ショット領域に対する未硬化レジストの影響の一例を示す図。
【
図6】後続ショット領域に対する未硬化レジストの影響の一例を示す図。
【
図7】第1実施形態のパターン設計装置の構成の一例を示す図。
【
図9】第1実施形態のパターンの被覆率と未硬化レジストの流動量との関係の一例を示す図。
【
図10】第1実施形態のショット面における外縁領域、内部領域、先行領域及び後続領域の一例を示す図。
【
図11】第1実施形態のショット面における本体領域及びカーフ領域の一例を示す図。
【
図12】第1実施形態の被覆率規定情報の一例を示す図。
【
図13】第1実施形態のパターン設計装置による処理の一例を示すフローチャート。
【
図14】第2実施形態のパターン設計装置の構成の一例を示す図。
【
図15】第2実施形態の未硬化レジストの流動による影響の予測方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のインプリント装置100の構成の一例を示す図である。インプリント装置100は、基板W上に塗布されたレジスト等の被処理層にテンプレート10を押し付けることにより被処理層に所定のパターンを形成するステップアンドリピート方式のインプリント処理を実行可能な装置である。ステップアンドリピート方式とは、被処理層上に区画された複数のショット領域にテンプレート10を所定の順番で順次押し付けていく方式である。
【0009】
ここで例示するインプリント装置100は、テンプレートステージ81、載置台82、基準マーク85、アライメントセンサ86、液滴下装置87、ステージベース88、光源89及び制御部90を備えている。
【0010】
載置台82は、本体83及びウェハチャック84を備える。ウェハチャック84は、処理対象となる基板Wを本体83上の所定位置に固定する。載置台82上には、基準マーク85が設けられている。基準マーク85は、基板Wを載置台82上に固定する際の位置合わせに用いられる。載置台82は、基板Wを載置するとともに、載置した基板Wと平行な平面内(水平面内)を移動する。載置台82は、基板Wにレジスト(被処理層の一例)を滴下する際には基板Wを液滴下装置87の下方側に移動させ、基板Wへの転写処理を行う際には基板Wをテンプレート10の下方側に移動させる。なお、基板W上にレジストを塗布する方法は上記に限定されるものではない。例えば、他の装置によりスピンコート法等を利用して基板Wにレジストを塗布してもよい。この場合、既にレジストが塗布された状態の基板Wが載置台82に設置される。基板Wは、例えばシリコンウエハ等の半導体基板であり得る。
【0011】
ステージベース88は、テンプレートステージ81によってテンプレート10を支持するとともに、上下方向及び水平方向に移動可能に構成される。これにより、テンプレート10のショット面11を基板W(レジスト)上に区画された複数のショット領域に順次押し付けていくステップアンドリピート方式のインプリント処理を実現できる。また、ステージベース88上には、基板Wの位置検出やテンプレート10の位置検出等を行うアライメントセンサ86が設けられている。
【0012】
テンプレート10は、紫外線を透過する透明材料から構成され、下方に突出した形状のメサ部15を有する。メサ15Mの上面部には、ザグリ16が形成され、下面部には、基板W上の被処理層(本実施形態ではレジスト)に押し付けられるショット面11が形成されている。ショット面11には、所定のパターンPが形成されている。パターンPは、後述するように、半導体デバイスの回路構成に寄与する実パターン、回路構成に寄与しないダミーパターン、及び/又は、アライメントマーク等のマークパターンを含む。
【0013】
液滴下装置87は、インクジェット方式によって基板W上にレジストを滴下する装置である。液滴下装置87が備えるインクジェットヘッドは、レジストの液滴(ドロップレット)を噴出する複数の微細孔を有しており、レジストの液滴を基板W上に滴下する。
【0014】
ここで、レジストとは、樹脂系マスク材であって、光を照射することによって硬化する光硬化型樹脂や、熱を加えることによって硬化する熱硬化型樹脂等であり得る。本実施形態では、光硬化型樹脂のレジストを用いることを想定する。
【0015】
光源89は、例えば紫外線を照射する装置であり、ステージベース88の上方に設けられている。光源89は、テンプレート10がレジストに押し当てられた状態で、テンプレート10上から光を照射する。これにより、テンプレート10のパターンPが転写されたレジストを硬化させることができる。
【0016】
制御部90は、テンプレートステージ81、載置台82、基準マーク85、アライメントセンサ86、液滴下装置87、ステージベース88及び光源89を制御する。
【0017】
図2は、第1実施形態のテンプレート10のショット面11の構成の一例を示す下面図である。
図2は、テンプレート10のショット面11を下方から見た図である。
図2において、方向Xは、紙面の左側から右側へ向かう方向を示し、方向Yは、紙面の下側から上側へ向かう方向を示し、方向Zは、紙面の手前側から奥側へ向かう方向を示している。これらの方向X,Y,Zは、他の図面における方向X,Y,Zと対応している。
【0018】
図2に示すように、ショット面11の端部Eの内側の領域には、パターンPが形成されている。本実施形態のショット面11の端部Eは、ジグソー形状を有する。ジグソー形状とは、端部Eを構成する各辺が屈折しており、複数のショット面11を互いに隣接するように配置したときに隣接する辺同士が噛合する形状である。本実施形態の端部Eは、2つのショット面11を左右方向に(X方向に沿って)隣接するように配置したときに右辺部E1と左辺部E2とが噛合し、2つのショット面11を上下方向に(Y方向に沿って)隣接するように配置したときに上辺部E3と下辺部E4とが噛合するように形成されている。なお、ジグソー形状の態様をこれに限定されるものではない。
【0019】
上記のような端部Eの内側の領域には、ショット面11の底面(XY平面)21から垂直方向(Z方向の反対方向)突出するように形成された複数の凸部22が形成されている。
図2中、ハッチングで示される部分は、凸部22の端面23を表している。端面23は、テンプレート10を被処理層に押し付ける際に被処理層と最初に接触する部分である。このような凸部22の形状や配置の組み合わせによりパターンPが構成される。
【0020】
図3は、第1実施形態の基板Wに設けられた複数のショット領域Shの一例を示す上面図である。
図3に示すように、基板W(レジスト等の被処理層を含む)の表面には、複数のショット領域Shが設定される。各ショット領域Shは、上述したようなテンプレート10のショット面11が順次押し付けられる領域であり、本実施形態においては、ショット面11の端部Eと同様にジグソー形状となっている。
図3中、境界領域Bは、隣り合うショット領域Sh間に形成される隙間の領域を示している。
【0021】
各ショット領域Shには、上述したようなテンプレート10を用いたステップアンドリピート方式の押印動作(ショット面11を被処理層に押し付ける動作)が所定の順番で順次行われる。
図3中、押印方向Dは、押印動作が順次行われる方向の一例を示しており、本例では右から左へ向かう方向となっている。なお、押印方向Dは、基板W上の領域によって変化してもよい。例えば、押印方向Dは、左右方向(X方向に平行な方向)に並ぶ複数のショット領域Shからなる行毎に左右反転してもよいし、上下方向(Y方向に平行な方向)であってもよい。また、
図3において、押印方向Dに沿って隣接する先行ショット領域Sh1及び後続ショット領域Sh2が例示されている。先行ショット領域Sh1は、先に押印動作が行われるショット領域であり、後続ショット領域Sh2は、先行ショット領域Sh1の次に押印動作が行われるショット領域である。
【0022】
図4は、第1実施形態の押印動作の一例を示す図である。
図4において、基板Wの表面に被処理層としてのレジストRが塗布され、押印方向Dに沿って隣接する先行ショット領域Sh1及び後続ショット領域Sh2にパターンを形成する際の状況が例示されている。
【0023】
先ず、先行ショット領域Sh1の上方に位置するテンプレート10を下降させ、ショット面11をレジストRに押し付ける。その後、ショット面11がレジストRに押し付けられた状態で露光し、先行ショット領域Sh1のレジストRを硬化させる。その後、テンプレート10を上昇させてレジストRから離型する。
【0024】
次いで、テンプレート10を押印方向Dに移動させて後続ショット領域Sh2の上方に配置する。このとき、先行ショット領域Sh1と後続ショット領域Sh2との間には所定の幅の境界領域Bが形成される。その後、後続ショット領域Sh2の上方に位置するテンプレート10を下降させ、ショット面11をレジストRに押し付ける。その後、ショット面11がレジストRに押し付けられた状態で露光し、後続ショット領域Sh2のレジストRを硬化させる。その後、テンプレート10を上昇させてレジストRから離型する。
【0025】
上記のような処理を順次行うことにより、複数のショット領域Shのそれぞれにテンプレート10のパターンPと同一のパターンを形成できる。
【0026】
上記のようなステップアンドリピート方式のインプリント処理においては、未硬化のレジストRの流動による不具合が発生する可能性がある。以下、硬化前の流動性のあるレジストRを未硬化レジストRf、露光により硬化されたレジストRを硬化レジストRsと称する。
【0027】
図5は、先行ショット領域Sh1に対する未硬化レジストRfの影響の一例を示す図である。
図6は、後続ショット領域Sh2に対する未硬化レジストRfの影響の一例を示す図である。なお、
図5及び
図6においては、ショット面11に形成されているパターンPの記載が省略されている。
【0028】
図5(A)は、先行ショット領域Sh1においてテンプレート10を未硬化レジストRfに押し付け始めるとき(押印開始時)の状態を例示している。このとき、テンプレート10のメサ部15は、テンプレート10に対する背圧及び未硬化レジストRfの液面からの表面張力により若干下方へ撓んでおり、ショット面11の端部E(
図5においては左辺部E2)付近の部分は、若干湾曲した状態となる。そして、先行ショット領域Sh1内の未硬化レジストRfは、テンプレート10の下降による圧力により境界領域Bへ流出する。
【0029】
図5(B)は、先行ショット領域Sh1においてテンプレート10を所定位置まで下降させた状態で露光するとき(露光時)の状態を例示している。当該露光により、未硬化レジストRfが硬化レジストRsに変化する。このとき、上記のようにテンプレート10の下降により境界領域Bに流出した未硬化レジストRfは、テンプレート10の端部Eにより堰き止められ、未硬化レジストRfの表面張力の効果によりメサ部15の側面が未硬化レジストRfにより濡れた状態となる。
【0030】
図5(C)は、先行ショット領域Sh1において露光完了後にテンプレート10を上昇させ始めるとき(離型開始時)の状態を例示している。このとき、境界領域Bにおいてテンプレート10の端部Eにより堰き止められていた未硬化レジストRfは、表面張力の効果等により先行ショット領域Sh1に流入する。
【0031】
図5(D)は、先行ショット領域Sh1においてテンプレート10の上昇が完了したとき(離型完了時)の状態を例示している。このとき、上記のように境界領域Bから流入してきた未硬化レジストRfは、硬化レジストRs上に滞留する。
【0032】
図6(A)は、後続ショット領域Sh2においてテンプレート10を未硬化レジストRfに押し付け始めるとき(押印開始時)の状態を例示している。このとき、テンプレート10のメサ部15は、
図5(A)に示した状態と同様に、テンプレート10に対する背圧及び未硬化レジストRfの液面からの表面張力により若干下方へ撓んでおり、ショット面11の端部E(
図6においては右辺部E1)付近の部分は、若干湾曲した状態となる。そして、後続ショット領域Sh2内の未硬化レジストRfは、テンプレート10の下降による圧力により境界領域Bへ流出する。
【0033】
図6(B)は、後続ショット領域Sh2においてテンプレート10を所定位置まで下降させた状態で露光するとき(露光時)の状態を例示している。当該露光により、未硬化レジストRfが硬化レジストRsに変化する。このとき、上記のようにテンプレート10の下降により境界領域Bに流出した未硬化レジストRfは、テンプレート10の端部Eにより堰き止められ、未硬化レジストRfの表面張力の効果によりメサ部15の側面が未硬化レジストRfにより濡れた状態となる。
【0034】
図6(C)は、後続ショット領域Sh2において露光完了後にテンプレート10を上昇させ始めるとき(離型開始時)の状態を例示している。このとき、境界領域Bにおいてテンプレート10の端部Eにより堰き止められていた未硬化レジストRfは、表面張力の効果等により後続ショット領域Sh2に流入する。
【0035】
図6(D)は、後続ショット領域Sh2においてテンプレート10の上昇が完了したとき(離型完了時)の状態を例示している。このとき、上記のように境界領域Bから流入してきた未硬化レジストRfは、硬化レジストRs上に滞留する。
【0036】
上記のように、ステップアンドリピート方式でインプリント処理を行う場合、未硬化レジストRfが先行ショット領域Sh1と境界領域Bとの間、及び後続ショット領域Sh2と境界領域Bとの間で流動し、既にパターンが形成された硬化レジストRsの表面を汚損する可能性がある。なお、未硬化レジストRfによる影響の態様は、上記に限定されるものではない。
【0037】
上記のような未硬化レジストRfの流動による影響は、テンプレート10に形成されるパターンPの被覆率に応じて変化する場合がある。特に、未硬化レジストRfをショット領域Shから境界領域Bへ流出させる圧力は、ショット面11の端部E近傍の領域に形成されたパターンPの被覆率に大きく影響される。そこで、本実施形態は、未硬化レジストRfの流動による影響を抑制可能なテンプレート10のパターンPを形成するための手法を提供する。
【0038】
図7は、第1実施形態のパターン設計装置201の構成の一例を示すブロック図である。パターン設計装置201は、テンプレート10のパターンPを設計するための処理を実行する情報処理装置である。
【0039】
パターン設計装置201の具体的なハードウェア構成は、特に限定されるべきものではないが、例えば、汎用のコンピュータと同様の構成であり得る。この場合、パターン設計装置201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ストレージ、ユーザインターフェース、通信インターフェース等を備え、ROMやストレージ等に記憶されたプログラムに従ってRAMを作業領域として使用してCPUが所定の演算処理等を実行するものであり得る。また、パターン設計装置201は、単独のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータや電子機器等が連携して構成されるシステムであってもよい。
【0040】
パターン設計装置201は、入力装置211、記憶装置212、演算装置213及び出力装置214を備える。
【0041】
入力装置211は、パターンPの設計に必要な各種情報を入力する装置であり、例えば、所定の記憶媒体との間でデータの読み書きが可能なデバイス、他の電子機器と通信可能なデバイス、ユーザの入力操作を受け付けるキーボードやタッチパネル等であり得る。本実施形態の入力装置211は、インプリント情報を入力可能に構成される。インプリント情報は、上述したようなステップアンドリピート方式のインプリント処理を実行するために必要な情報である。インプリント情報には、例えば、使用する基板Wに関する情報、ショット領域Shに関する情報、押印方向D、レジストRに形成しようとしているパターンに関する情報等が含まれ得る。
【0042】
記憶装置212は、パターンPの設計に必要な各種情報を記憶する装置であり、例えば、適宜な不揮発性メモリ、揮発性メモリ等を利用して構成され得る。本実施形態の記憶装置212が記憶するデータには、パターン設計プログラム及び被覆率規定情報251が含まれる。パターン設計プログラムは、パターンPを設計するための演算処理等を演算装置213に実行させるプログラムである。
【0043】
被覆率規定情報251は、パターンPを設計する際に用いられる被覆率範囲を決定するための情報である。被覆率範囲とは、テンプレート10のショット面11にパターンPを形成する際に遵守されるべき被覆率の範囲である。本実施形態においては、ショット面11が複数の領域に区画され、領域毎に被覆率範囲が設定される(後に詳述する)。本実施形態の被覆率規定情報251は、ショット面11上の各領域と被覆率範囲との関係を示す情報を含む。
【0044】
演算装置213は、パターンPを設計するための各種演算処理等を実行する装置であり、例えば、CPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を利用して構成され得る。
【0045】
演算装置213は、機能部として、被覆率範囲設定部221及びパターン設計部222を備える。
【0046】
被覆率範囲設定部221は、インプリント情報や被覆率規定情報251等に基づいて、テンプレート10のショット面11に設定された複数の領域のそれぞれについて被覆率範囲を設定する。
【0047】
パターン設計部222は、インプリント情報や被覆率範囲設定部221による設定結果等に基づいて、ショット面11上の各領域の被覆率がそれぞれ対応する被覆率範囲内となるようにパターンPを設計する。
【0048】
出力装置214は、演算装置213により生成された各種情報を出力する装置であり、例えば、外部機器との通信を確立するデバイス、ディスプレイ、スピーカ等であり得る。本実施形態の出力装置214は、演算装置213により設計されたパターンPを示す設計情報をテンプレート製造装置301に出力する。
【0049】
テンプレート製造装置301は、設計情報に基づいてテンプレート10のショット面11にパターンPを形成することが可能な装置やシステムである。テンプレート製造装置301により、演算装置213により設計されたパターンPが形成されたテンプレート10が製造される。
【0050】
図8は、第1実施形態の被覆率の一例を示す図である。
図8において、テンプレート10のショット面11に形成されたパターンPの一部が例示されている。本実施形態の被覆率は、ショット面11上の所定領域S1の面積に対する、当該所定領域S1内に存在するパターンPを構成する凸部22の端面23の総面積の割合である。例えば、所定領域S1が50μm×50μmの正方形であり(面積:2500μm)、端面23の総面積が1250μm
2である場合には、被覆率が50%となる。
【0051】
上述したように、押印動作に伴って生ずるショット領域Shと境界領域Bとの間の未硬化レジストRfの流動は、硬化レジストRsに形成されたパターンの汚損の要因となるが、当該押印動作時における未硬化レジストRfの流動量は、テンプレート10に形成されたパターンPの被覆率に応じて変化する。
【0052】
図9は、第1実施形態のパターンPの被覆率と未硬化レジストRfの流動量との関係の一例を示す図である。
図9(A)~
図9(C)において、被覆率が100%、70%及び50%のときのそれぞれにおける未硬化レジストRfの流動量が概念的に例示されている。同図において、矢印の太さは、未硬化レジストRfの流動量に対応しており、矢印が太いほど流動量が多いことを示している。
【0053】
図9(A)~
図9(B)に示すように、被覆率が小さいほど、テンプレート10のメサ部15に形成された凹部25(複数の凸部22の間に形成される空間)に未硬化レジストRfが保持されるため、未硬化レジストRfの流動量は少なくなる。このような現象は、ショット面11の端部Eに近い領域ほど顕著となる。すなわち、端部Eに近い領域に形成されたパターンPの被覆率が高い場合、ショット領域Shと境界領域Bとの間での未硬化レジストRfの流動量が多くなる。そこで、本実施形態の演算装置213(被覆率範囲設定部221)は、このような被覆率と未硬化レジストRfの流動量との関係を考慮して、未硬化レジストRfの流動による影響が低減されるように、ショット面11上の領域毎に最適化された被覆率範囲を設定する。
【0054】
以下に、ショット面11に設定される領域と被覆率範囲との関係の例について説明する。
【0055】
図10は、第1実施形態のショット面11における外縁領域A1,A2、内部領域A3、先行領域Ap1,Ap2及び後続領域As1,As2の一例を示す下面図である。外縁領域A1,A2は、ショット面11の端部Eから所定距離D1だけ内側の領域である。本実施形態の外縁領域A1,A2は、2つの領域、すなわち第1外縁領域A1及び第2外縁領域A2を含む。第1外縁領域A1は、ショット面11の端部Eから所定距離D2(第1所定距離の一例)だけ内側の領域である。第2外縁領域A2は、第1外縁領域A1の内側の端部E2から所定距離D3(第2所定距離の一例)だけ内側の領域である。内部領域A3は、外縁領域(本実施形態では第2外縁領域A2)の内側の端部E3より内側の領域である。
【0056】
外縁領域A1,A2に対応する被覆率範囲である外縁被覆率範囲は、内部領域A3に対応する被覆率範囲である内部被覆率範囲とは異なるように設定される。外縁領域A1,A2は、内部領域A3より未硬化レジストRfの流動に与える影響が大きい領域であるから、外縁被覆率範囲は、内部被覆率範囲より厳格な条件で設定されるべきである。具体的には、例えば、外部被覆率範囲を内部被覆率範囲より狭く設定したり、外部被覆率範囲の上限値を内部被覆率範囲の上限値より低く設定したりすることが考えられる。例えば、外部被覆率範囲を30%~60%等とし、内部被覆率範囲を20%~70%等とすることが考えられる。なお、当該数値は単なる例示であり、具体的な数値は使用状況に応じて適宜設定されるべき事項である。
【0057】
また、第1外縁領域A1に対応する被覆率範囲である第1外縁被覆率範囲は、第2外縁領域A2に対応する被覆率範囲である第2外縁被覆率範囲とは異なるように設定される。第1外縁領域A1は、第2外縁領域A2より未硬化レジストRfの流動に与える影響が大きい領域であるから、第1外縁被覆率範囲は、第2外縁被覆率範囲より厳格な条件で設定される。具体的には、例えば、第1外縁被覆率範囲を第2外縁被覆率範囲より狭く設定したり、第1外部被覆率範囲の上限値を第2外縁被覆率範囲の上限値より低く設定したりすることが考えられる。例えば、第1外部被覆率範囲を45%~55%等とし、第2外部被覆率範囲を30%~60%等とすることが考えられる。なお、当該数値は単なる例示であり、具体的な数値は使用状況に応じて適宜設定されるべき事項である。
【0058】
また、ショット面11は、先行領域Ap1,Ap2及び後続領域As1,As2を含む。先行領域Ap1,Ap2は、ショット面11の押印方向Dの下流側の端部Ebから所定距離D1だけ内側の領域である。先行領域Ap1,Ap2は、ステップアンドリピート方式で行われるインプリント処理において押印動作が未だ行われていないショット領域Shに隣接する領域である。本実施形態の先行領域Ap1,Ap2は、2つの領域、すなわち第1先行領域Ap1及び第2先行領域Ap2を含む。第1先行領域Ap1は、下流側の端部Ebから所定距離D2だけ内側の領域である。第2先行領域Ap2は、第1先行領域Ap1の内側の端部E2から所定距離D3だけ内側の領域である。
【0059】
後続領域As1,As2は、ショット面11の押印方向Dの上流側の端部Eaから所定距離D1だけ内側の領域である。後続領域As1,As2は、ステップアンドリピート方式で行われるインプリント処理において押印動作が既に行われたショット領域Shに隣接する領域である。本実施形態の後続領域As1,As2は、2つの領域、すなわち第1後続領域As1及び第2後続領域As2を含む。第1後続領域As1は、上流側の端部Eaから所定距離D2だけ内側の領域である。第2後続領域As2は、第1後続領域As1の内側の端部E2から所定距離D3だけ内側の領域である。
【0060】
先行領域Ap1,Ap2に対応する被覆率範囲である先行被覆率範囲は、後続領域As1,As2に対応する被覆率範囲である後続被覆率範囲とは異なるように設定される。先行領域Ap1,Ap2は、後続領域As1,As2より未硬化レジストRfの流動(流出及び再流入)に与える影響が大きい領域であるから、先行被覆率範囲は、後続被覆率範囲より厳格な条件で設定されるべきである。具体的には、例えば、先行被覆率範囲を後続被覆率範囲より狭く設定したり、先行被覆率範囲の上限値を後続被覆率範囲の上限値より低く設定したりすることが考えられる。
【0061】
また、第1先行領域Ap1に対応する被覆率範囲である第1先行被覆率範囲は、第2先行領域Ap2に対応する被覆率範囲である第2先行被覆率範囲とは異なるように設定され、第1後続領域As1に対応する被覆率範囲である第1後続被覆率範囲は、第2後続領域As2に対応する被覆率範囲である第2後続被覆率範囲とは異なるように設定される。第1先行領域Ap1は、第2先行領域Ap2より未硬化レジストRfの流動に与える影響が大きい領域であるから、第1先行被覆率範囲は、第2先行被覆率範囲より厳格な条件で設定されるべきである。また、第1後続領域As1は、第2後続領域As2より未硬化レジストRfの流動に与える影響が大きい領域であるから、第1後続被覆率範囲は、第2後続被覆率範囲より厳格な条件で設定されるべきである。具体的には、例えば、第1先行被覆率範囲を第2先行被覆率範囲より狭く設定したり、第1先行被覆率範囲の上限値を第2先行被覆率範囲の上限値より低く設定したりすることが考えられる。また、第1後続被覆率範囲を第2後続被覆率範囲より狭く設定したり、第1後続被覆率範囲の上限値を第2後続被覆率範囲の上限値より低く設定したりすることが考えられる。なお、先行被覆率範囲及び後続被覆率範囲の具体的な数値は、使用状況に応じて適宜設定されるべき事項である。
【0062】
図11は、第1実施形態のショット面11における本体領域Am及びカーフ領域Akの一例を示す図である。本体領域Amは、内部に製造目的となる半導体デバイスの回路パターンに対応するパターンPが形成される領域である。カーフ領域Akは、本体領域Amの周囲に形成され内部に当該回路パターンに対応するパターンPが形成されない領域であり、半導体デバイス(チップ)間のダイシングラインに相当する。本実施形態のカーフ領域Akには、基板W上の被処理層(レジスト)にアライメント用のアライメントマークを形成するためのアライメントパターンPAを含むパターンPが形成されている。
図11中、一点鎖線は、本体領域Amとカーフ領域Akとの境界線を示している。パターンP及びアライメントパターンPAは、当該境界線を跨がないように形成される。本体領域Am及びカーフ領域Akには、例えば、実パターンに接続されず、電気的にフローティングの状態を有するダミーパターンが形成されてもよい。
【0063】
本体領域Amに対応する被覆率範囲である本体被覆率範囲は、カーフ領域Akに対応する被覆率範囲であるカーフ被覆率範囲とは異なるように設定される。本体領域Amは、カーフ領域Akより未硬化レジストRfの流動による影響を厳格に排除する必要がある領域であるから、本体被覆率範囲は、カーフ被覆率範囲より厳格な条件で設定されるべきである。具体的には、例えば、本体被覆率範囲をカーフ被覆率範囲より狭く設定したり、本体被覆率範囲の上限値をカーフ被覆率範囲の上限値より低く設定したりすることが考えられる。なお、本体被覆率範囲及びカーフ被覆率範囲の具体的な数値は、使用状況に応じて適宜設定されるべき事項である。
【0064】
図12は、第1実施形態の被覆率規定情報251の一例を示す図である。ここで例示する被覆率規定情報251は、上述したような各種領域と被覆率範囲との関係を規定する情報である。「位置」は、被覆率範囲の設定の対象となる対象領域が外縁領域A1,A2又は内部領域A3のいずれに該当するかを示す項目である。「順番」は、対象領域が先行領域Ap1,Ap2又は後続領域As1,As2のいずれに該当するかを示す項目である。「内容」は、対象領域が本体領域Am又はカーフ領域Akのいずれに該当するかを示す項目である。
【0065】
図12に示す例では、対象領域が第1外縁領域A1であり、且つ先行領域(第1先行領域)Ap1であり、且つ本体領域Amである場合には、被覆率範囲はα1に設定される。対象領域が第1外縁領域A1であり、且つ先行領域Ap1であり、且つカーフ領域Akである場合には、被覆率範囲はα2に設定される。このとき、本体領域Amはカーフ領域Akより厳格性が求められるため、α1はα2より厳格な値(例えば、範囲が狭い、及び/又は、上限値が低い数値範囲)となる。
【0066】
対象領域が第1外縁領域A1であり、且つ後続領域(第1後続領域)As1であり、且つ本体領域Amである場合には、被覆率範囲はα3に設定される。対象領域が第1外縁領域A1であり、且つ後続領域As1であり、且つカーフ領域Akである場合には、被覆率範囲はα4に設定される。このとき、本体領域Amはカーフ領域Akより厳格性が求められるため、α3はα4より厳格な値となる。また、先行領域Ap1は後続領域As1より厳格性が求められるため、α1はα3より厳格な値となり、α2はα4より厳格な値となる。
【0067】
対象領域が第2外縁領域A2であり、且つ先行領域(第2先行領域)Ap2であり、且つ本体領域Amである場合には、被覆率範囲はβ1に設定される。対象領域が第2外縁領域A2であり、且つ先行領域Ap2であり、且つカーフ領域Akである場合には、被覆率範囲はβ2に設定される。このとき、本体領域Amはカーフ領域Akより厳格性が求められるため、β1はβ2より厳格な値となる。また、第1外縁領域A1は第2外縁領域A2より厳格性が求められるため、α1はβ1より厳格な値となり、α2はβ2より厳格な値となる。
【0068】
対象領域が第2外縁領域A2であり、且つ後続領域(第2後続領域)As2であり、且つ本体領域Amである場合には、被覆率範囲はβ3に設定される。対象領域が第2外縁領域A2であり、且つ後続領域As2であり、且つカーフ領域Akである場合には、被覆率範囲はβ4に設定される。このとき、本体領域Amはカーフ領域Akより厳格性が求められるため、β3はβ4より厳格な値となる。また、先行領域Ap2は後続領域As2より厳格性が求められるため、β1はβ3より厳格な値となり、β2はβ4より厳格な値となる。また、第1外縁領域A1は第2外縁領域A2より厳格性が求められるため、α3はβ3より厳格な値となり、α4はβ4より厳格な値となる。
【0069】
対象領域が内部領域A3である場合には、「順番」及び「内容」に関わらず、被覆率範囲はγに設定される。γは従来の手法等に基づいて適宜設定されればよいが、例えばα1~α4,β1~β4のいずれよりも厳格性が低い値(例えば、範囲が広い、及び/又は、上限値が高い数値範囲)であり得る。
【0070】
図13は、第1実施形態のパターン設計装置201による処理の一例を示すフローチャートである。演算装置213(被覆率範囲設定部221)は、インプリント情報及び被覆率規定情報251に基づいて、ショット面11上に区画された複数の領域のそれぞれについて被覆率範囲を設定する(S101)。その後、演算装置213(パターン設計部222)は、各領域の被覆率が領域毎に設定された被覆率範囲内となるように、ショット面11の全域に亘ってパターンPを設計する(S102)。出力装置214は、パターンPの設計結果を含む設計情報をテンプレート製造装置301に出力する(S103)。
【0071】
以上のように、本実施形態によれば、被処理層(本実施形態では未硬化レジストRf)の流動の影響を考慮して、ショット面11上に区画された複数の領域のそれぞれについて最適化された被覆率範囲が設定される。これにより、ステップアンドリピート方式のインプリント処理を実行する際に生じ得る被処理層の流動による不具合(例えばパターン形成後の硬化レジストRsに対する汚損等)を抑制できる。
【0072】
以下に、他の実施形態について説明するが、第1実施形態と同一又は同様の箇所についてはその説明を適宜省略する。
【0073】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態のパターン設計装置401の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態のパターン設計装置401は、被処理層の流動の予測に基づいて、ショット面11の端部Eの位置を調整する機能を備える。
【0074】
本実施形態の記憶装置212は、流動予測情報261を記憶する。流動予測情報261は、ステップアンドリピート方式で行われるインプリント処理において、被処理層上でショット領域Shの境界を越えて流動する(ショット領域Shと境界領域Bとの間を流動する)被処理層(未硬化レジストRf)の挙動の予測を示す情報である。流動予測情報261には、例えば、被処理層として使用するレジストRの粘度、流動速度、硬化速度等に関する情報が含まれ得る。流動予測情報261は、事前に行われた試験やシミュレーション等の結果に基づいて生成されてもよいし、所定の条件下で逐次生成、更新等されてもよい。
【0075】
本実施形態の演算装置213のパターン設計部222は、流動予測情報261に基づいて、被処理層(未硬化レジストRf)の流動による影響が本体領域Amに及ばないように、ショット面11の端部と本体領域Amとカーフ領域Akとの関係を調整する。
【0076】
図15は、第2実施形態の未硬化レジストRfの流動による影響の予測方法の一例を示す図である。
図15において、先行ショット領域Sh1及び後続ショット領域Sh2、並びにそれらの間の境界領域Bが例示されている。図中、本体ショット領域Smは、製造目的となる半導体デバイスの回路パターンが形成される領域であって、上述したテンプレート10のショット面11に形成される本体領域Amに対応する領域である。カーフショット領域Skは、回路パターンが形成されず、半導体デバイスの製造プロセスにおいて用いられるアライメントマーク等が形成され、最終的に切断領域(ダイシングライン)として利用される領域であって、上述したテンプレート10のショット面11に形成されるカーフ領域Akに対応する領域である。
【0077】
本実施形態のパターン設計部222は、流動予測情報に基づいて、
図15(A)に示すように境界領域Bの近傍に設定された検査位置P1,P2における未硬化レジストRfの流動を予測する。検査位置P1,P2を中心とする円は、未硬化レジストRfの流動範囲を示している。
図15(A)には、先行ショット領域Sh1のカーフショット領域Sk内に存在する未硬化レジストRfが後続ショット領域Sh2の本体ショット領域Smに影響を及ぼす場合が例示されている。
【0078】
上記のような場合、すなわち、境界領域B付近における未硬化レジストRfの本体ショット領域Smへの影響が予測される場合には、パターン設計部222は、当該影響がなくなるように境界領域Bの位置を調整する。
図15(B)は、境界領域Bの調整後の状態を例示している。
図15(B)に示すように、調整後においては、検査位置P1における未硬化レジストRfの影響が及ぶ範囲に本体ショット領域Smが存在しなくなる。そして、本実施形態のパターン設計部222は、調整後の境界領域Bと、本体ショット領域Smと、カーフショット領域Skと、の位置関係に対応するように、テンプレート10のショット面11の端部Eと、本体領域Amと、カーフ領域Akと、の位置関係を調整する。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、ショット領域Shの境界付近における被処理層の流動による本体ショット領域Smへの影響が予測され、その予測結果に基づいて当該影響がなくなるようにショット面11の端部Eと本体領域Amとカーフ領域Akとの位置関係が調整される。これにより、本体ショット領域Smへの影響をより確実に抑制可能なテンプレート10を製造できる。
【0080】
上述したようなパターン設計装置の機能を実現するために、コンピュータ(演算装置)に所定の処理を実行させるプログラムは、コンピュータにインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10…テンプレート、11…ショット面、15…メサ部、22…凸部、23…端面、100…インプリント装置、201,401…パターン設計装置、211…入力装置、212…記憶装置、213…演算装置、214…出力装置、221…被覆率範囲設定部、222…パターン設計部、251…被覆率規定情報、261…流動予測情報、301…テンプレート製造装置、A1…第1外縁領域、A2…第2外縁領域、A3…内部領域、Ak…カーフ領域、Am…本体領域、Ap1…第1先行領域、Ap2…第2先行領域、As1…第1後続領域、As2…第2後続領域、B…境界領域、D…押印方向、E…端部、P…パターン、P1,P2…検査位置、PA…アライメントパターン、R…レジスト、Rf…未硬化レジスト、Rs…硬化レジスト、S1…所定領域、Sh…ショット領域、Sh1…先行ショット領域、Sh2…後続ショット領域、Sk…カーフショット領域、Sm…本体ショット領域、W…基板