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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133882
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電流センサ、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
G01R15/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043884
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平形 政樹
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA15
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】電流の検出精度を向上させること。
【解決手段】本開示の電流センサの一態様は、複数本の板状のバスバー20のそれぞれに対応する磁気検出素子300が設けられる電流センサ1Aであって、複数本のバスバー20は、長さ方向が互いに平行になる姿勢で配置されており、複数本のバスバー20の長さ方向に垂直な断面Aにおいて、磁気検出素子300は、それぞれ、自身が設けられるバスバー20の隣に位置するバスバー20の厚さDaに対応する範囲に少なくとも一部が入り込む位置に、隣に位置するバスバー20の中心20Cを通って隣のバスバー20の幅方向に延びる中心線CLに磁束密度の検出軸300Kが沿う姿勢で、配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の板状のバスバーのそれぞれに対応する磁気検出素子が設けられる電流センサであって、
前記複数本のバスバーは、長さ方向が互いに平行になる姿勢で配置されており、
前記複数本のバスバーの前記長さ方向に垂直な断面において、
前記磁気検出素子は、それぞれ、
自身が設けられるバスバーの隣に位置するバスバーの厚さに対応する範囲に少なくとも自身の一部が入り込む位置に、
前記隣に位置するバスバーの中心を通って前記隣のバスバーの幅方向に延びる中心線に磁束密度の検出軸が沿う姿勢で、
配置される、電流センサ。
【請求項2】
前記複数本のバスバーの本数はn本(ただし、nは3以上の整数)であり、
前記n本のバスバーの前記長さ方向に垂直な断面において、
前記磁気検出素子は、それぞれ、
前記バスバーの幅方向に沿った第1の方向、及び、前記第1の方向と反対の第2の方向のそれぞれにおいて自身が設けられるバスバーから数えて奇数番目に位置する各バスバーの厚さに対応する範囲に少なくとも自身の一部が入り込む位置に、
前記奇数番目に位置する各バスバーの中心を通って前記奇数番目に位置する各バスバーの幅方向に延びる中心線に前記磁束密度の検出軸が沿う姿勢で、
配置される、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記磁気検出素子は、それぞれ、前記中心線上に配置される
請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項4】
1以上の前記バスバーごとに、磁性材料を主材とする一対のシールド板を備え、
前記一対のシールド板のそれぞれの間に、対応する前記1以上の前記バスバーと、前記1以上の前記バスバーのそれぞれに設けられた前記磁気検出素子と、が配置される
請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記磁気検出素子は、それぞれ、
対応する前記バスバーにスペーサーを介して取り付けられている、
請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項6】
複数相分の板状の出力端子と、
前記出力端子のそれぞれに対応して設けられる磁気検出素子と、を備えた電力変換装置であって、
前記複数相分の出力端子は、長さ方向が互いに平行になる姿勢で配置されており、
前記複数相分の出力端子の前記長さ方向に垂直な断面において、
前記磁気検出素子は、それぞれ、
自身が設けられる出力端子の隣に位置する出力端子の厚さに対応する範囲に少なくとも自身の一部が入り込む位置に、
前記隣に位置する出力端子の中心を通って前記隣の出力端子の幅方向に延びる中心線に磁束密度の検出軸が沿う姿勢で、
配置される、電力変換装置。
【請求項7】
前記複数相分の出力端子の本数はn本(ただし、nは3以上の整数)であり、
前記n本の出力端子の前記長さ方向に垂直な断面において、
前記磁気検出素子は、それぞれ、
前記出力端子の幅方向に沿った第1の方向、及び、前記第1の方向と反対の第2の方向のそれぞれにおいて自身が設けられる出力端子から数えて奇数番目に位置する各出力端子の厚さに対応する範囲に少なくとも自身の一部が入り込む位置に、
前記奇数番目に位置する各出力端子の中心を通って前記奇数番目に位置する各出力端子の幅方向に延びる中心線に前記磁束密度の検出軸が沿う姿勢で、
配置される、
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記磁気検出素子は、それぞれ、
対応する前記出力端子にスペーサーを介して取り付けられている、
請求項6または7に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流センサ、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を流すための導体であるバスバーと、当該バスバーに設けられた磁気検出素子と、を備え、バスバーに流れる電流によって形成された磁界の磁束に応じた信号を磁気検出素子が出力する電流センサが知られている。この種の電流センサは、バスバーに流れる大電流を測定可能であり、また、電流の方向を正確に測定できるため、インバータなどの電力変換装置、及び電動機の駆動装置などで電流検出のために用いられている。
【0003】
特許文献1には、複数のバスバーと、バスバーごとに設けられた磁気検出素子と、複数のバスバーを一括して挟み込むように配置された磁性材料からなる一対のシールド板と、を備えた電流センサが示されている。また、この特許文献1には、「磁気検出素子が、電流検出対象となるバスバー以外のバスバーで発した磁界の影響(他相からの干渉)を受けてしまい、検出精度が低下してしまうおそれがあった」こと、「他相からの干渉を抑制し検出精度の向上を図った電流センサを提供すること」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-138815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電流センサにおいて、一対のシールド板を備えても、ある磁気検出素子が電流検出対象となるバスバー以外のバスバーで発生した磁界から受ける影響を完全に取り除くことができない。したがって、磁気検出素子の信号には他のバスバーの磁界による誤差が含まれており、電流の検出精度の点で更なる改善の余地があった。
【0006】
本開示は、電流の検出精度を向上させることができる電流センサ、及び電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの態様に係る電流センサは、複数本の板状のバスバーのそれぞれに対応する磁気検出素子が設けられる電流センサであって、前記複数本のバスバーは、長さ方向が互いに平行になる姿勢で配置されており、前記複数本のバスバーの前記長さ方向に垂直な断面において、前記磁気検出素子は、それぞれ、自身が設けられるバスバーの隣に位置するバスバーの厚さに対応する範囲に少なくとも自身の一部が入り込む位置に、前記隣に位置するバスバーの中心を通って前記隣のバスバーの幅方向に延びる中心線に磁束密度の検出軸が沿う姿勢で、配置される。
【0008】
本開示の1つの態様に係る電力変換装置は、複数相分の板状の出力端子と、前記出力端子のそれぞれに対応して設けられる磁気検出素子と、を備えた電力変換装置であって、前記複数相分の出力端子は、長さ方向が互いに平行になる姿勢で配置されており、前記複数相分の出力端子の前記長さ方向に垂直な断面において、前記磁気検出素子は、それぞれ、自身が設けられる出力端子の隣に位置する出力端子の厚さに対応する範囲に少なくとも自身の一部が入り込む位置に、前記隣に位置する出力端子の中心を通って前記隣の出力端子の幅方向に延びる中心線に磁束密度の検出軸が沿う姿勢で、配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示のそれぞれの態様によれば、電流の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る電流センサの構成の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図1に一点鎖線で示した断面Aにおける断面図である。
図3】バスバーに流れる電流によって生じる磁界の磁束密度の説明図である。
図4】第2電流センサ部のバスバーで発生する磁界が第1電流センサ部の磁気検出素子に及ぼす影響についての説明図である。
図5】第2電流センサ部のバスバーの電流によって生じる磁界のシミュレーション結果を示す図である。
図6】磁束密度のX軸方向成分と、第2電流センサ部のバスバーの中心からの距離との関係を示す図である。
図7】本開示の第2実施形態に係る電流センサの構成の一例を模式的に示す断面図である。
図8】本開示の第3実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す斜視図である。
図9】電力変換装置の構成の一例を示す断面図である。
図10】電力変換回路の回路構成の一例を示す図である。
図11】本開示の変形例3に係る電力変換装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示に係る好適な形態を説明する。なお、図面において、各部の寸法、及び縮尺が実際と適宜に異なる場合があり、理解を容易にするために模式的に示している部分を含む場合がある。また、以下の説明において、本開示を限定する旨の特段の記載が無い限り、本開示の範囲は以下の説明に記載された形態に限られない。本開示の範囲は当該形態の均等の範囲を含む。
【0012】
1.第1実施形態
図1は、本実施形態に係る電流センサ1Aの構成の一例を模式的に示す斜視図である。
電流センサ1Aは、本開示の電流センサの一例である。本実施形態の電流センサ1Aは、2相分のバスバー20に流れる電流を検出するコアレス電流センサであり、図1に示すに、第1相のバスバー20に流れる電流を検出する第1電流センサ部10-1と、第2相のバスバー20に流れる電流を検出する第2電流センサ部10-2と、を備える。
【0013】
第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2は、互いに同じ部材を備える。すなわち、第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2は、いずれも、検出対象の電流が流れる板状の導体であるバスバー20と、このバスバー20に設けられる磁気検出装置30と、バスバー20ごとに設けられ、対応するバスバー20と磁気検出装置30とを間に挟む一対のシールド板40と、を備える。
バスバー20、磁気検出装置30、及び、一対のシールド板40は、いずれも、第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2の間で同じもの、より正確には、形状、サイズ、材質、及び、各種の特性が同じものが用いられる。
【0014】
図2は、図1に一点鎖線で示した断面Aにおける断面図である。なお、断面Aは、2本のバスバー20の長さ方向に垂直な断面に相当する。
バスバー20は、導電性材料を主材とする一方向に長い板状の導体である。導電性材料には、例えば、銅、及びアルミニウム等の金属が用いられる。バスバー20の長さ方向に垂直な断面の形状は、図2に示すように、厚さDaよりも幅Dbが大きな矩形状である。
磁気検出装置30は、磁界の磁束密度に応じた信号を出力する磁気検出素子300と、当該磁気検出素子300をパッケージングするパッケージ302と、を備える。磁気検出素子300は1軸方向のみの磁束密度を検出する素子、すなわち、当該1軸方向の磁束密度に応じた信号を出力する素子である。係る磁気検出素子300の代表的な例にホール素子、あるいは、巨大磁気抵抗素子(GMR:Giant Magneto Resistive)、トンネル磁気抵抗素子(TMR:Tunnel Magneto Resistive)等の磁気抵抗素子が挙げられる。以下の説明では、磁気検出素子300の検出方向を示す軸を「検出軸300K」と称する。
【0015】
一対のシールド板40は、磁性材料を主材とする板状の部材であり、一対のシールド板40によって挟まれた内部空間40SAと外の空間との間で磁界を遮蔽する。この内部空間40SAに磁気検出装置30が配置されることにより、内部空間40SAの外の空間で生じた磁界が磁気検出装置30に及ぼす影響が抑えられる。
【0016】
本開示において、バスバー20を基準にX軸、Y軸、及びZ軸から成る直交三次元座標を定義する。具体的には、バスバー20の幅Dbの方向をX軸方向、バスバー20の長さ方向をY軸方向、及びバスバー20の厚さDaの方向をZ軸方向と定義する。また、Z軸方向の正の値側、及び負の値側から視たバスバー20の面を、それぞれ「第1主面20A」、及び「第2主面20B」と称する。
【0017】
電流センサ1Aの断面Aにおける構成について更に詳述すると、図2に示すように、第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2の各バスバー20は、それぞれの長さ方向(Y軸方向)が互いに平行であり、また、それぞれの第1主面20A、及び第2主面20Bの法線方向20Kが互いに平行となる姿勢で、互いの間に離間距離Dcをあけてケース内に配置される。
【0018】
第1電流センサ部10-1において、磁気検出装置30(磁気検出素子300)は、自身の電流検出対象である第1電流センサ部10-1のバスバー20の第1主面20Aに設けられる。一方、第2電流センサ部10-2において、磁気検出装置30(磁気検出素子300)は、自身の電流検出対象である第2電流センサ部10-2のバスバー20の第2主面20Bに設けられる。
すなわち、第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2の各磁気検出装置30が備える磁気検出素子300は、それぞれ、自身の電流検出対象のバスバー20の第1主面20A、及び第2主面20Bのうち、相手の磁気検出素子300が設けられている面と反対の面に設けられる。
【0019】
また、第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2の磁気検出素子300は、それぞれ、自身の電流検出対象のバスバー20に隣接するバスバー20の中心線CL上に配置される。バスバー20の中心線CLとは、断面Aの断面視において、そのバスバー20の厚さDaの中心を通り、そのバスバー20の幅Dbの方向に延びる線である。さらにまた、第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2の磁気検出素子300は、それぞれ、検出軸300Kが中心線CLに沿う姿勢で、当該CL上に配置される。なお、本開示において、「検出軸300Kが中心線CLに沿う」とは、検出軸300Kと中心線CLとが平行であることを意味する。ただし、この「平行」は、完全な平行に限定されるものでは無く、設計交差などに起因した誤差を許容する。
【0020】
第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2の各バスバー20、及び各磁気検出素子300がこのように配置されることにより、各磁気検出素子300において、電流検出対象となるバスバー20以外のバスバー20で発生した磁界の磁束密度の影響が抑えられる。以下、この点について詳述する。
【0021】
図3は、バスバー20に流れる電流によって生じる磁界の磁束密度の説明図である。なお、図3には、図1の一点鎖線で示した断面Aにおける磁界を示す。図4は、第2電流センサ部10-2のバスバー20で発生する磁界が第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300に及ぼす影響についての説明図である。
バスバー20の長さ方向に電流が流れると、バスバー20の周りに同心円状に磁界が発生する。バスバー20の中心20Cから距離Rだけ離れた点αにおける磁束密度BαのX軸方向成分Bxは、点αにおけるX軸方向からの角度をθとすると、次式(1)によって表される。
【0022】
Bx=Bα×sinθ (1)
【0023】
式(1)から分かるように、角度θがゼロ度の点α0における磁束密度BαのX軸方向成分Bxはゼロとなる。
【0024】
一方、本実施形態では、図4に示すように、第1電流センサ部10-1の磁気検出装置30の磁気検出素子300は、隣接する第2電流センサ部10-2のバスバー20の中心線CLの上に、当該中心線CLに自身の検出軸300Kが沿う姿勢で配置される。
バスバー20の中心線CLはX軸方向(すなわちバスバー20の幅Dbの方向)に延びる線であり、第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300の配置位置は、図3における点α0に相当する。したがって、第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300の配置位置において、第2電流センサ部10-2のバスバー20の磁界による磁束密度BαのX軸方向成分Bxがゼロとなる。この結果、第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300が出力する信号は、自身の電流検出対象である第1電流センサ部10-1のバスバー20の磁界の磁束密度Bα(より正確には、当該磁束密度BαのX軸方向成分Bx)のみに応じたものとなる。
第2電流センサ部10-2の磁気検出素子300も同様に、第1電流センサ部10-1のバスバー20の中心線CLの上に、当該中心線CLに自身の検出軸300Kが沿う姿勢で配置されている。したがって、第2電流センサ部10-2の磁気検出素子300が出力する信号も、自身の電流検出対象である第2電流センサ部10-2のバスバー20の磁界の磁束密度Bα(より正確には、当該磁束密度BαのX軸方向成分Bx)のみに応じたものとなる。
【0025】
図5は、第2電流センサ部10-2のバスバー20の電流によって生じる磁界のシミュレーション結果を示す図である。このシミュレーションにおいて、第1電流センサ部10-1のバスバー20に流れる電流はゼロである。また、図6は、磁束密度BαのX軸方向成分Bxと、第1電流センサ部10-1における一対のシールド板40の一方のシールド板40-1Aの表面から他方のシールド板40-1Bの側へのZ軸方向の距離と、の関係を示す図である。なお、図6の値は、図5のシミュレーション結果に基づいて求めたれた値である。
図5に示すように、磁界の磁力線は、第2電流センサ部10-2のバスバー20の中心線CLと概ね直交する。また、図6に示すように、第1電流センサ部10-1において、一対のシールド板40の間では、第2電流センサ部10-2のバスバー20の中心線CLが交差する点Pにおいて、磁束密度BαのX軸方向成分Bxの絶対値がゼロ近傍となる。この点Pは図3における上述の点α0に相当する。したがって、図5、及び図6のシミュレーションに基づく結果により、第2電流センサ部10-2のバスバー20の中心線CL上に、第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300を、当該中心線CLに検出軸300Kが沿う姿勢で配置することにより、当該磁気検出素子300は、第2電流センサ部10-2のバスバー20の電流によって生じる磁界の磁束密度BαのX軸方向成分Bxの影響を最小とし、自身の電流検出対象のバスバー20の磁界に応じた信号を出力できることが示される。なお、第2電流センサ部10-2の磁気検出素子300についても同様である。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ1Aは、2本の板状のバスバー20のそれぞれに、磁束密度に応じた信号を出力する磁気検出素子300が設けられるセンサである。また、2本のバスバー20は、長さ方向が互いに平行になる姿勢で配置される。更にまた、2本のバスバー20の長さ方向に垂直な断面Aの断面視において、磁気検出素子300は、それぞれ、自身が設けられるバスバー20の隣に位置するバスバー20の中心線上に、当該中心線CLに磁束密度の検出軸300Kが沿う姿勢で配置される。
この構成により、2本のバスバー20のそれぞれに設けられた各磁気検出素子300に対し、電流検出対象となるバスバー20以外のバスバー20で発生した磁界の磁束密度Bαが与える影響が抑えられる。
【0027】
また、本実施形態の電流センサ1Aは、1本のバスバー20ごとに、磁性材料を主材とする一対のシールド板40を備え、一対のシールド板40のそれぞれの間に、対応するバスバー20と、そのバスバー20に設けられた磁気検出素子300と、が配置される。
この構成により、一対のシールド板40の外の空間で生じた磁界が磁気検出素子300に及ぼす影響が抑えられる。
【0028】
2.第2実施形態
図7は、本開示の第2実施形態に係る電流センサ1Bの構成の一例を模式的に示す断面図である。なお、第1実施形態において説明した部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態の電流センサ1Bは、第1実施形態の電流センサ1Aが2相分の電流を検出する構成であるのに対し、n相分(ただし、nは3以上の整数)の電流を検出する構成である点で、第1実施形態の電流センサ1Aと構成を異にする。すなわち、本実施形態の電流センサ1Bは、互いに長さ方向が平行に配置されたn本のバスバー20のそれぞれの電流を検出するために、第1電流センサ部10-1、第2電流センサ部10-2、・・・、第n電流センサ部10-nのn個の電流センサ部を備える。第1電流センサ部10-1、第2電流センサ部10-2、・・・、第n電流センサ部10-nは、いずれも、第1実施形態の第1電流センサ部10-1と同様に、バスバー20に設けられる磁気検出装置30と、一対のシールド板40と、を備える。
【0029】
なお、以下の説明では、電流センサ1Bにおいて、X軸方向に並んだn本のバスバー20は、それぞれ、直交三次元座標の原点に近い側(図7において最左端)のバスバー20から順番に第1相、第2相、・・・第n相に対応するものとする。また、電流センサ1Bにおいて、第i相(iは2以上n以下の整数)に対応する電流センサ部を「第i電流センサ部10-i」と称する。
【0030】
本実施形態の電流センサ1Bは、図7に示すように、断面Aの断面視において、第i相に対応する第i電流センサ部10-iの磁気検出素子300のX軸方向における両隣に位置する第[i-1]電流センサ部10-[i-1]、及び第[i+1]電流センサ部10-[i+1]のそれぞれのバスバー20は中心線CLが一致する。加えて、第i相に対応する第i電流センサ部10-iの磁気検出素子300は、両隣の各バスバー20の中心線CL上に、その検出軸300Kが中心線CLに沿う姿勢で配置される。
係る配置においては、第i電流センサ部10-iの磁気検出素子300は、X軸に沿った第1の方向、及び第1の方向と反対の第2の方向のそれぞれにおいて自身が設けられたバスバー20から数えて奇数番目に位置する他の電流センサ部の各バスバー20の中心線CL上に位置することになる。
【0031】
ここで、例えば、第1相(i=1)に対応する第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300が、自身の電流検出対象のバスバー20以外の各バスバー20において生じる磁界から受ける磁束密度のX軸方向成分を外部磁束密度Bo1xとする。この場合、外部磁束密度Bo1xは、次式(2)に示すように、各磁界の磁束密度B2、B3、・・・、BnのX軸方向成分の和で表される。
【0032】
外部磁束密度Bo1x=
B2sinθ2+B3sinθ3+B4sinθ4・・・+Bnsinθn (2)
ただし、θj(j=2からnまでの整数)は、第j相のバスバー20の中心20Cと第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300とを結ぶ線と、X軸とが成す角度である。
【0033】
本実施形態において、第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300は、自身から数えて奇数番目のバスバー20の中心線CLに配置されるため、当該奇数番目のバスバー20に対応する角度θ2(1番目に相当)、θ4(3番目に相当)、・・・はいずれもゼロ度となる。したがって、式(2)において、第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300が、自身の電流検出対象のバスバー20から数えて奇数番目のバスバー20の磁界から受ける磁束密度B2、B4、・・・のX軸方向成分はゼロとなるため、式(2)は式(3)のようになる。
【0034】
外部磁束密度Bo1x=B3sinθ3+・・・ (3)
ただし、θ2(1番目)、θ4(3番目)、・・・・=ゼロ度
【0035】
式(3)から明らかなように、磁束密度B2、B4、・・・がゼロとなることにより、第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300における外部磁束密度Bo1xは小さくなる。この結果、第1電流センサ部10-1の磁気検出素子300に対し、電流検出対象となるバスバー20以外の各バスバー20で発生した磁界の磁束密度が与える影響が抑えられる。
特に本実施形態では、磁気検出素子300から数えて1番目に位置するバスバー20、すなわち、最も近いバスバー20から受ける磁束密度B1の影響が略ゼロとなっている。各バスバー20に流れる電流の最大値が等しい場合、式(2)の外部磁束密度Bo1xにおいては、各バスバー20の磁束密度Biの中で、この磁束密度B1が最も大きくなる。したがって、この磁束密度B1の影響が略ゼロとなるため、磁気検出素子300が、自身の電流検出対象のバスバー20以外の他のバスバー20で発生した磁界の磁束密度から受ける影響が効率良く抑えられることとなる。
なお、以上述べた効果は、第i電流センサ部10-iの磁気検出素子300についても同様に言えることである。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ1Bは、n本(ただし、nは3以上の整数)の板状のバスバー20のそれぞれに、磁束密度に応じた信号を出力する磁気検出素子300が設けられる電流センサである。また、n本のバスバー20は、長さ方向が互いに平行になる姿勢で配置される。さらに、n本のバスバー20の長さ方向に垂直な断面Aの断面視において、磁気検出素子300は、それぞれ、バスバー20の幅方向Db(X軸方向)に沿った第1の方向、及び、第1の方向と反対の第2の方向において自身が設けられたバスバー20から数えて奇数番目に位置する各バスバー20の中心線CL上に、当該中心線CLに磁束密度の検出軸300Kが沿う姿勢で配置される。
この構成により、磁気検出素子300のそれぞれが、電流検出対象となるバスバー20から数えて奇数番目に位置する各バスバー20で発生した磁界から受ける影響が抑えられる。
【0037】
また、本実施形態の電流センサ1Bは、第1実施形態と同様に、1本のバスバー20ごとに、磁性材料を主材とする一対のシールド板40を備え、一対のシールド板40のそれぞれの間に、対応するバスバー20と、そのバスバー20に設けられた磁気検出素子300と、が配置される。
この構成により、一対のシールド板40の外の空間で生じた磁界が磁気検出素子300に及ぼす影響が抑えられる。
【0038】
3.第3実施形態
図8は、本開示の第3実施形態に係る電力変換装置100の構成の一例を示す斜視図であり、図9は電力変換装置100の構成の一例を示す断面図である。なお、第1実施形態、又は第2実施形態において説明した部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
電力変換装置100は、本開示の電力変換装置の一例である。本実施形態の電力変換装置100は、直流電源から入力される直流電力を三相の交流電力に変換し、当該交流電力を例えば電動機などの負荷に出力する装置である。具体的には、電力変換装置100は、直流電力が入力される2本の入力端子150と、2本の入力端子150から入力された直流電力を交流電力に変換する電力変換回路160を内包したパワーモジュール部162と、三相の交流電力を外部の機器に出力するための3本の出力端子170と、各出力端子170に流れる電流を検出する電流センサ1Cと、を備える。電流センサ1Cは、本開示の電流センサの一例に相当する。なお、電力変換装置100は、図9、及び図10に示す構成部材の他にも、電力変換回路160を制御する制御回路などの各種の回路を備える。
【0039】
図10は、電力変換回路160の回路構成の一例を示す図である。
電力変換回路160は、スイッチング素子の一例であるパワー半導体素子180を直列に接続した3相分の上下アーム回路182を備える。パワー半導体素子180は例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
各上下アーム回路182は、直流電源の正極、及び負極にそれぞれ接続される上述の2本の入力端子150に並列に接続される。また、3相分の上下アーム回路182のそれぞれから上述の出力端子170が引き出される。各出力端子170は第1実施形態において説明したバスバー20に相当する部材である。すなわち、各出力端子170は、一方向に長い板状の部材であり、互いに平行に配置されており、各出力端子170に流れる電流が電流センサ1Cによって検出される。
【0040】
電流センサ1Cは、3相分の電流を検出するために、第1電流センサ部10-1、第2電流センサ部10-2、及び、第3電流センサ部10-3と、を備える。第1電流センサ部10-1、第2電流センサ部10-2、及び第3電流センサ部10-3は、第1実施形態、及び第2実施形態と同様に、出力端子170に設けられる磁気検出装置30と、出力端子170及び磁気検出装置30を間に挟む一対のシールド板40を備える。ただし、一対のシールド板40には、第1電流センサ部10-1、第2電流センサ部10-2、及び第3電流センサ部10-3に亘って延びることにより、3本の出力端子170、及び3つの磁気検出装置30を間に挟む一対の板材が用いられている。換言すれば、電流センサ1Cは、一対のシールド板40を備え、一対のシールド板40の間に、3本の出力端子170と、出力端子170のそれぞれに設けられた磁気検出素子300と、が配置される。
【0041】
電流センサ1Cにおいて、各磁気検出装置30の磁気検出素子300と、各出力端子170との位置関係は、第2実施形態の電流センサ1Bにおいて相数nが「3」である場合と同様である。すなわち、図9に示すように、電流センサ1Cの断面視において、第2相に対応する第2電流センサ部10-2の磁気検出素子300が、X軸方向における両隣の第1電流センサ部10-1、及び第3電流センサ部10-3のそれぞれの出力端子170の中心線CL上に、その検出軸300Kが中心線CLに沿った姿勢で配置される。なお、上述の通り、出力端子170はバスバー20に相当し、出力端子170の中心線CLは、断面矩形状の出力端子170の中心170Cを通り、幅Daの方向に延びる線である。
この配置により、第1電流センサ部10-1、第2電流センサ部10-2、及び第3電流センサ部10-3の磁気検出素子300のそれぞれにおいて、自身の電流検出対象の出力端子170以外の出力端子170の磁界の影響が抑えられる。
【0042】
また、電流センサ1Cは、図8、及び図9に示すように、第1主面190A、及び第2主面190Bを有する基板190を備える。断面Aの断面視において、各出力端子170は、X軸方向にかけて、基板190を間に挟んで第1主面190Aの側、及び第2主面190Bの側に交互に配置されている。また、各磁気検出装置30は、それぞれ、基板190を間に挟んで自身の電流検出対象の出力端子170に設けられる。
この場合において、基板190と磁気検出装置30との間に、当該磁気検出装置30の磁気検出素子300を、X軸方向における隣の出力端子170の中心線CL上に位置させるためのスペーサーが設けられてもよい。また、基板190と、各出力端子170との間には適宜の大きさの隙間δが設けられてもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置100は、3相分の板状の出力端子170と、出力端子170のそれぞれに設けられる、磁束密度に応じた信号を出力する磁気検出素子300と、を備えた装置ある。また、3相分の出力端子170は、長さ方向が互いに平行になる姿勢で配置されている。さらにまた、3相分の出力端子170の長さ方向に垂直な断面Aにおいて、磁気検出素子300は、それぞれ、自身が設けられる出力端子170の隣に位置する出力端子170の中心線CL上に、当該中心線CLに磁束密度の検出軸300Kが沿う姿勢で配置される。
この構成によれば、第1実施形態、及び第2実施形態と同様に、各磁気検出素子300が、自身の電流検出対象の出力端子170以外の他の出力端子170で発生した磁界の磁束密度から受ける影響が抑えられる。
【0044】
4.変形例
以上に例示した各実施形態に付加される具体的な変形の形態を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の形態を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0045】
(変形例1)第1実施形態の電流センサ1Aにおいて、第1電流センサ部10-1、及び第2電流センサ部10-2の組を2つ以上備え、各組がX軸方向に並べて配置されてもよい。
【0046】
(変形例2)
第3実施形態の電力変換装置100において、出力端子170の数は3本に限らない。すなわち、出力端子170の数は2本でもよいし、n本(nは3以上の整数)でもよい。
出力端子170の数が2本である場合、断面Aの断面視において、第1実施形態と同様に、磁気検出素子300は、それぞれ、自身が設けられる出力端子170の隣に位置する出力端子170の中心線CL上に、当該中心線CLに磁束密度の検出軸300Kが沿う姿勢で配置される。
また、出力端子170の数がn本である場合、第2実施形態と同様に、断面Aの断面視において、磁気検出素子300は、それぞれ、出力端子170の幅方向Db(X軸方向)に沿った第1の方向、及び、第1の方向と反対の第2の方向のそれぞれにおいて自身が設けられる出力端子170から数えて奇数番目に位置する各出力端子170の中心線CL上に、当該中心線CLに磁束密度の検出軸300Kが沿う姿勢で配置される。
【0047】
(変形例3)
第3実施形態の電力変換装置100において、図11に示すように、基板190が磁気検出素子300ごとに設けられてもよい。また、基板190は、複数の磁気検出素子300ごとに設けられてもよい。
【0048】
(変形例4)
第3実施形態の電力変換装置100において、一対のシールド板40は、第1実施形態、及び第2実施形態と同様に、出力端子170ごとに設けられてもよい。また、一対のシールド板40は、複数の出力端子170ごと、又は複数のバスバー20ごとに設けられてもよい。
【0049】
(変形例5)
第1実施形態、及び第2実施形態のバスバー20、あるいは、第3実施形態の出力端子170の断面Aにおける形状は、中心線CLにおける磁束密度のX軸方向成分がゼロとなる形状であれば矩形状に限定されない。
【0050】
(変形例6)
第1実施形態、又は第3実施形態において、磁気検出素子300のそれぞれの配置位置が、隣のバスバー20又は出力端子170の中心線CL上でなくてもよい。すなわち、磁気検出素子300のそれぞれの配置位置は、隣のバスバー20又は出力端子170の厚さDaの範囲に、磁気検出素子300の一部が入り込む位置であれば、各磁気検出素子300において、隣のバスバー20、又は出力端子170で発生する磁界の影響が抑えられる。
また、第2実施形態、及び、変形例2において、磁気検出素子300のそれぞれの配置位置は、自身が設けられるバスバー20から数えて奇数番目の各バスバー20又は各出力端子170の各中心線CL上でなくてもよい。すなわち、磁気検出素子300のそれぞれの配置位置は、上記奇数番目の各バスバー20又は各出力端子170の厚さDaの範囲に、磁気検出素子300の一部が入り込む位置であれば、各磁気検出素子300において、奇数番目の各バスバー20、又は各出力端子170で発生する磁界の影響が抑えられる。
【0051】
(変形例7)
各実施形態において、磁気検出素子300と、バスバー20又は出力端子170との一対のシールド板40の間におけるZ方向の位置は適宜である。
【0052】
(変形例8)
各実施形態において、各磁気検出素子300の位置を調整するためのスペーサーを備えてもよい。具体的には、第1実施形態、及び第2実施形態において、各磁気検出素子300は、それぞれ、対応するバスバー20にスペーサーを介して取り付けられてもよい。また、第3実施形態において、各磁気検出素子300は、それぞれ、対応する出力端子170にスペーサーを介して取り付けられてもよい。
本変形例によれば、磁気検出素子300を、バスバー20、又は出力端子170の中心線CLに合わせて正確に配置できる。
【符号の説明】
【0053】
1A、1B、1C…電流センサ、20…バスバー、20C…中心、30…磁気検出装置、40…シールド板、100…電力変換装置、160…電力変換回路、170…出力端子、170C…中心、190…基板、300…磁気検出素子、300K…検出軸、A…断面、CL…中心線、Da…厚さ、Db…幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11