(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133884
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】静電荷像現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20240926BHJP
G03G 9/113 20060101ALI20240926BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/113
G03G9/097 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043886
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 洋介
(72)【発明者】
【氏名】角倉 康夫
(72)【発明者】
【氏名】井口 もえ木
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA03
2H500AB04
2H500CA03
2H500CA24
2H500EA16A
2H500EA34A
2H500EA58E
2H500EA60E
(57)【要約】
【課題】低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤の提供。
【解決手段】結着樹脂を含有するトナー粒子を含み、温度90℃歪み量1%のtanδをD1(90)、温度90℃歪み量50%のtanδをD50(90)、温度150℃歪み量1%のtanδをD1(150)、温度150℃歪み量50%のtanδをD50(150)としたとき、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がそれぞれ0.5以上2.5以下、D50(150)-D1(150)の値が1.5未満、D50(90)-D1(90)の値が1.0未満であるトナーと、凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaが0.5μm≦Sm≦2.5μmかつ0.3μm≦Ra≦1.2μmを満たす磁性粒子と磁性粒子の表面に付着する樹脂層とを含むキャリアと、を有する静電荷像現像剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子を含むトナーであって、前記トナーの動的粘弾性測定において、温度90℃かつ歪み量1%の損失正接tanδをD1(90)、温度90℃かつ歪み量50%の損失正接tanδをD50(90)、温度150℃かつ歪み量1%の損失正接tanδをD1(150)、温度150℃かつ歪み量50%の損失正接tanδをD50(150)としたとき、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がそれぞれ0.5以上2.5以下であり、D50(150)-D1(150)の値が1.5未満であり、D50(90)-D1(90)の値が1.0未満であるトナーと、
表面における凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaが0.5μm≦Sm≦2.5μmかつ0.3μm≦Ra≦1.2μmを満たす磁性粒子と前記磁性粒子の表面に付着する樹脂層とを含むキャリアと、
を有する静電荷像現像剤。
【請求項2】
前記D1(90)と前記凹凸平均間隔Smとの関係が、下記式(1)を満たす、請求項1に記載の静電荷像現像剤。
式(1):D1(90)≦Sm≦D1(90)+1.1
【請求項3】
前記D1(90)と前記算術平均粗さRaとの関係が、下記式(2)を満たす、請求項1に記載の静電荷像現像剤。
式(2):1.05-0.3×D1(90)≦Ra≦1.36-0.3×D1(90)
【請求項4】
前記D50(150)と前記算術平均粗さRaとの関係が、下記式(3)を満たす、請求項3に記載の静電荷像現像剤。
式(3):1.05-0.3×D50(150)≦Ra≦1.36-0.3×D50(150)
【請求項5】
前記キャリアの表面における前記磁性粒子の露出面積率は、4%以上20%以下である、請求項1に記載の静電荷像現像剤。
【請求項6】
前記トナー粒子がさらに樹脂粒子を含有する、請求項1に記載の静電荷像現像剤。
【請求項7】
前記樹脂粒子は、架橋樹脂粒子である、請求項6に記載の静電荷像現像剤。
【請求項8】
前記架橋樹脂粒子は、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子である、請求項7に記載の静電荷像現像剤。
【請求項9】
前記トナー粒子中のテトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量が5000以上15000以下である、請求項1に記載の静電荷像現像剤。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を補給用現像剤として収容し、
画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジ。
【請求項11】
請求項10に記載の現像剤カートリッジと、
前記現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項10に記載の現像剤カートリッジと、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
前記現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項13】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項10に記載の現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項14】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項15】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項16】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、結着樹脂を含有するトナー粒子を含み、前記結着樹脂が、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有し、温度130℃、周波数1Hz、歪み振幅1.0~500%の条件下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、歪み振幅100%における応力歪み曲線の応力の積分値をS130、長径の傾きをθ130としたとき、前記S130が、0Pa超350000Pa以下であり、前記θ130が、22°超90°未満である静電潜像現像用トナーを用いた現像剤が開示されている。
【0003】
特許文献2には、少なくとも結着樹脂、および離型剤を含有し、前記結着樹脂が、少なくとも結晶性樹脂を含み、周波数1Hzかつ150℃で歪を0.01%から1000%まで変化させて測定した際の貯蔵弾性率が、特定の関係を満たす静電荷像現像用トナーを用いた現像剤が開示されている。
【0004】
特許文献3には、結着樹脂を含有するトナー粒子を含み、前記結着樹脂が、非晶性ビニル樹脂及び結晶性樹脂を含有し、温度130℃、周波数1Hz、歪み振幅1.0~500%の条件下で動的粘弾性の歪み分散測定を行い、歪み振幅100%における応力歪み曲線の応力の積分値をS130、長径の傾きをθ130としたとき、前記S130が、0Pa超350000Pa以下であり、前記θ130が、0°以上10°未満である静電潜像現像用トナーを用いた現像剤が開示されている。
【0005】
特許文献4には、少なくとも結着樹脂及び離型剤を含有するトナー母体粒子と外添剤とを含有し、前記結着樹脂が、少なくとも結晶性樹脂を含有し、周波数1Hzかつ昇温速度6℃/minの条件下にて25℃から100℃まで測定した際の損失正接のピークトップの値tanδ6℃/min、及び周波数1Hzかつ昇温速度3℃/minの条件下にて25℃から100℃まで測定した際の損失正接ピークトップの値tanδ3℃/minが、特定の関係を満たす静電荷像現像用トナーを用いた現像剤が開示されている。
【0006】
特許文献5には、結着樹脂、着色剤及び離型剤を少なくとも含有し、貯蔵弾性率G’の変化率γG’が50%<γG’<86%、且つ損失弾性率G”の変化率γG”が50%より大きく、温度150℃における1~50%歪みの範囲における貯蔵弾性率G’が5×102~3.5×103Pa・sであり、前記結着樹脂は、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とを含む静電荷像現像用トナーを用いた現像剤が開示されている。
【0007】
特許文献6及び特許文献7には、結着樹脂を含有するトナー粒子よりなり、トナー粒子の断面についての原子間力顕微鏡(AFM)による弾性像において、前記結着樹脂が、ドメインを構成する高弾性樹脂およびマトリクスを構成する低弾性樹脂よりなるドメイン・マトリクス構造を有し、個々のドメインの長径Lと短径Wとの比(L/W)の算術平均値が1.5~5.0の範囲内にあって、当該長径Lが60~500nmの範囲内にあるドメインが80個数%以上存在し、かつ、当該短径Wが45~100nmの範囲内にあるドメインが80個数%以上存在することを特徴とする静電荷像現像用トナーを用いた現像剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-042122号公報
【特許文献2】特開2020-106685号公報
【特許文献3】特開2020-042121号公報
【特許文献4】特開2019-144368号公報
【特許文献5】特開2013-160886号公報
【特許文献6】特開2011-237793号公報
【特許文献7】特開2011-237792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
トナーを含む静電荷像現像剤を用いた画像形成では、例えば、記録媒体に転写されたトナー画像を、加熱及び加圧により記録媒体に定着させる。良好な定着性を得るため、加熱によって溶融しやすいトナーを含む静電荷像現像剤を用いた場合、高温高圧条件下で定着された定着画像の光沢度と、低温低圧条件下で定着された定着画像の光沢度と、の差が大きくなることがある。また、加熱によって溶融しやすいトナーを含む静電荷像現像剤を用いた場合、画像にカブリが生じることがある。
【0010】
本発明の課題は、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のいずれかが0.5未満若しくは2.5超え、D50(150)-D1(150)の値が1.5以上、50(90)-D1(90)の値が1.0以上、凹凸平均間隔Smが0.5μm未満若しくは2.5μm超え、又は算術平均粗さRaが0.3μm未満若しくは1.2μm超えである場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
【0012】
<1>
結着樹脂を含有するトナー粒子を含むトナーであって、前記トナーの動的粘弾性測定において、温度90℃かつ歪み量1%の損失正接tanδをD1(90)、温度90℃かつ歪み量50%の損失正接tanδをD50(90)、温度150℃かつ歪み量1%の損失正接tanδをD1(150)、温度150℃かつ歪み量50%の損失正接tanδをD50(150)としたとき、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がそれぞれ0.5以上2.5以下であり、D50(150)-D1(150)の値が1.5未満であり、D50(90)-D1(90)の値が1.0未満であるトナーと、
表面における凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaが0.5μm≦Sm≦2.5μmかつ0.3μm≦Ra≦1.2μmを満たす磁性粒子と前記磁性粒子の表面に付着する樹脂層とを含むキャリアと、
を有する静電荷像現像剤。
【0013】
<2>
前記D1(90)と前記凹凸平均間隔Smとの関係が、下記式(1)を満たす、<1>
に記載の静電荷像現像剤。
式(1):D1(90)≦Sm≦D1(90)+1.1
<3>
前記D1(90)と前記算術平均粗さRaとの関係が、下記式(2)を満たす、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像剤。
式(2):1.05-0.3×D1(90)≦Ra≦1.36-0.3×D1(90)
<4>
前記D50(150)と前記算術平均粗さRaとの関係が、下記式(3)を満たす、<3>に記載の静電荷像現像剤。
式(3):1.05-0.3×D50(150)≦Ra≦1.36-0.3×D50(150)
<5>
前記キャリアの表面における前記磁性粒子の露出面積率は、4%以上20%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
【0014】
<6>
前記トナー粒子がさらに樹脂粒子を含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
<7>
前記樹脂粒子は、架橋樹脂粒子である、<6>に記載の静電荷像現像剤。
<8>
前記架橋樹脂粒子は、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子である、<7>に記載の静電荷像現像剤。
<9>
前記トナー粒子中のテトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量が5000以上15000以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
【0015】
<10>
<1>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤を補給用現像剤として収容し、
画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジ。
<11>
<10>に記載の現像剤カートリッジと、
前記現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<12>
<10>に記載の現像剤カートリッジと、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
前記現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
<13>
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<10>に記載の現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【0016】
<14>
<1>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<15>
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
<1>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
<16>
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<1>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0017】
<1>又は<6>に係る発明によれば、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のいずれかが0.5未満若しくは2.5超え、D50(150)-D1(150)の値が1.5以上、50(90)-D1(90)の値が1.0以上、凹凸平均間隔Smが0.5μm未満若しくは2.5μm超え、又は算術平均粗さRaが0.3μm未満若しくは1.2μm超えである場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0018】
<2>に係る発明によれば、D1(90)と凹凸平均間隔Smとの関係が式(1)を満たさない場合に比べ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<3>に係る発明によれば、D1(90)と算術平均粗さRaとの関係が式(2)を満たさない場合に比べ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<4>に係る発明によれば、D50(150)と算術平均粗さRaとの関係が式(3)を満たさない場合に比べ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<5>に係る発明によれば、キャリアの表面における磁性粒子の露出面積率が4%未満又は20%超えである場合に比べ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0019】
<7>に係る発明によれば、樹脂粒子が無架橋樹脂粒子である場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さい静電荷像現像用トナーが提供される。
<8>に係る発明によれば、架橋樹脂粒子がポリエステル樹脂粒子である場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さい静電荷像現像用トナーが提供される。
<9>に係る発明によれば、テトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量が5000未満又は15000超えである場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さい静電荷像現像剤が提供される。
【0020】
<10>、<11>、<12>、又は<13>に係る発明によれば、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のいずれかが0.5未満若しくは2.5超え、D50(150)-D1(150)の値が1.5以上、D50(90)-D1(90)の値が1.0以上、凹凸平均間隔Smが0.5μm未満若しくは2.5μm超え、算術平均粗さRaが0.3μm未満若しくは1.2μm超え、キャリアのBET比表面積が0.12m2/g未満若しくは0.20m2/g超え、又はキャリアの体積平均粒径が26μm未満若しくは34μm超えである静電荷像現像剤を適用した場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制される現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、又は画像形成方法が提供される。
【0021】
<14>、<15>、又は<16>に係る発明によれば、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のいずれかが0.5未満若しくは2.5超え、D50(150)-D1(150)の値が1.5以上、D50(90)-D1(90)の値が1.0以上、凹凸平均間隔Smが0.5μm未満若しくは2.5μm超え、算術平均粗さRaが0.3μm未満若しくは1.2μm超え、キャリアのBET比表面積が0.12m2/g未満若しくは0.20m2/g超え、又はキャリアの体積平均粒径が26μm未満若しくは34μm超えである静電荷像現像剤を適用した場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制されるプロセスカートリッジ、画像形成装置、又は画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書中において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの双方を意味する。
【0024】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0025】
[静電荷像現像剤]
本実施形態に係る静電荷像現像剤(以下「現像剤」ともいう)は、結着樹脂を含有するトナー粒子を含むトナーであって、前記トナーの動的粘弾性測定において、温度90℃かつ歪み量1%の損失正接tanδをD1(90)、温度90℃かつ歪み量50%の損失正接tanδをD50(90)、温度150℃かつ歪み量1%の損失正接tanδをD1(150)、温度150℃かつ歪み量50%の損失正接tanδをD50(150)としたとき、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がそれぞれ0.5以上2.5以下であり、D50(150)-D1(150)の値が1.5未満であり、D50(90)-D1(90)の値が1.0未満であるトナーと、表面における凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaが0.5μm≦Sm≦2.5μmかつ0.3μm≦Ra≦1.2μmを満たす磁性粒子と前記磁性粒子の表面に付着する樹脂層とを含むキャリアと、を有する。
以下、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がそれぞれ0.5以上2.5以下であり、D50(150)-D1(150)の値が1.5未満であり、D50(90)-D1(90)の値が1.0未満であるトナーを「特定トナー」、表面における凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaが0.5μm≦Sm≦2.5μmかつ0.3μm≦Ra≦1.2μmを満たす磁性粒子を「特定磁性粒子」、特定磁性粒子と樹脂層とを含むキャリアを「特定キャリア」ともいう。
【0026】
本実施形態に係る現像剤は、上記構成により、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制される。その理由は、次の通り推測される。なお、以下、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差を「光沢度条件差」ともいう。
【0027】
前記の通り、良好な定着性を得るため、加熱によって溶融しやすいトナーを含む現像剤を用いることが考えられる。一方、加熱によって溶融しやすいトナーを含む現像剤を用いて画像形成を行うと、光沢度条件差が大きくなることがある。これは、高温高歪み量におけるトナー粒子の変形量が、低温低歪み量におけるトナー粒子の変形量に比べて大きいためであると推測される。
【0028】
また、加熱によって溶融しやすいトナーを含む現像剤を用いて画像形成を行うと、画像にカブリが生じることがある。例えば、トナーとキャリアを含む現像剤の輸送時に振動がかかると、キャリアが自重で沈むことでトナーに圧力がかかり、それによってトナー粒子が変形し、トナーの帯電性が低下することで、カブリが生じやすくなることがある。特に、トナーとキャリアを含む補給用現像剤が収容された現像剤カートリッジを、現像剤排出口を下にして縦置きした状態で輸送時の振動がかかると、キャリアが自重で沈み、現像剤排出口の近くに集まりやすくなる。そして、集まったキャリアとトナーが一度に現像装置に供給されると、トナーの帯電が追い付かず、カブリが生じやすくなることがある。
【0029】
これに対して、本実施形態では、特定トナー、つまり、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がそれぞれ0.5以上2.5以下であり、D50(150)-D1(150)の値が1.5未満であり、D50(90)-D1(90)の値が1.0未満であるトナーを用いる。
ここで、動的粘弾性測定における歪み量1%は、試料の高さ(すなわち、ギャップ)に対する変位を1%印加することを意味する。つまり、歪み量1%は、わずかな大きさの変位の印加であり、トナーの定着工程において定着器圧力が低い場合に対応する。一方、歪み量50%は、トナーの定着工程において定着器圧力が高い場合に対応する。そして、温度90℃かつ歪み量1%は低温低圧力での定着条件に対応し、温度150℃かつ歪み量50%は高温高圧力での定着条件に対応し、各損失正接tanδは各定着条件におけるトナー変形量に対応している。
特定トナーにおいては、90℃及び150℃のいずれにおいても、歪み量の変化に対する損失正接の変化が小さい。そのため、高温高歪み量と低温低歪み量とでトナーが近い粘弾性を有することで、高温かつ高圧の条件下で画像を定着しても、低温低圧条件下での定着画像との光沢度差が小さい定着画像が得られると推測される。
【0030】
そして、本実施形態では、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のすべてがそれぞれ0.5以上2.5以下である特定トナーと、0.5μm≦Sm≦2.5μmかつ0.3μm≦Ra≦1.2μmを満たす特定磁性粒子を用いた特定キャリアと、を組み合わせて用いる。この適度な凹凸を有するキャリアと適度な粘弾性を有するトナーとの組み合わせにより、キャリアの表面における微細な凹凸がトナーの表面に適度に引っかかりやすくなる。そのため、現像剤に振動がかかってもキャリアが自重で沈むことが抑制され、画像のカブリが生じにくくなると推測される。
【0031】
以上の理由により、本実施形態では、光沢度条件差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制されるものと推測される。
【0032】
上記トナーの損失正接は、以下のようにして求める。
具体的には、測定対象となるトナーを、プレス成型機により、常温(25℃)で錠剤型に成形することで、測定用試料を作製する。そして、この測定用試料を使用して、レオメータにより、以下の条件で動的粘弾性測定を実施し、得られた貯蔵弾性率及び損失弾性率の各曲線から、温度90℃又は150℃、歪み量1%又は50%における損失正接tanδを求め、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)を得る。
-測定条件-
測定装置:レオメータARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)
測定治具:8mmパラレルプレート
ギャップ:3mmに調整
周波数:1Hz
【0033】
特定トナーを得る方法は、特に限定されるものではない。
特定トナーを得る方法としては、例えば、2℃/分の昇温時における動的粘弾性測定において90℃以上150℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が1×104Pa以上1×106Pa以下である樹脂粒子を、トナー粒子の表面に近い領域及びトナー粒子の中心に近い領域の両方に満遍なく含有させる方法が挙げられる。
以下、90℃以上150℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が1×104Pa以上1×106Pa以下である樹脂粒子を「特定樹脂粒子」ともいう。
特定樹脂粒子を、トナー粒子の表面に近い領域及びトナー粒子の中心に近い領域の両方に満遍なく分散させることで、特定トナーが得られやすくなる理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0034】
特定樹脂粒子は、上記の通り、温度を150℃まで上げても貯蔵弾性率G’が1×104Pa以上である粒子である。つまり、特定樹脂粒子は、高温における弾性率が高い粒子である。そのため、トナー粒子が特定樹脂粒子を含むことにより、高温高歪み量におけるトナー全体としての損失正接が高くなりにくく、低温低歪み量におけるトナー全体の損失正接との差が小さくなると推測される。
特に、トナー粒子の表面に近い領域及びトナー粒子の中心に近い領域の両方に満遍なく特定樹脂粒子を分散させることで、低温低歪み量及び高温高歪み量の両方におけるトナーの損失正接が低減し、その差も小さくなることで、特定トナーが得られやすいと推測される。
【0035】
なお、樹脂粒子の貯蔵弾性率G’並びに後述する損失正接tanδ及びガラス転移温度Tgは、以下のようにして求める。
具体的には、測定対象となる樹脂粒子に対して圧力を付与することで、厚さ2mm、直径8mmの円盤状試料を作製し、測定用試料として使用する。なお、トナー粒子に含まれる樹脂粒子について測定する場合は、トナー粒子から樹脂粒子を取り出してから測定用試料を作製する。トナー粒子から樹脂粒子を取り出す方法としては、例えば、結着樹脂を溶解し樹脂粒子を溶解しない溶剤にトナー粒子を浸漬し、溶剤に結着樹脂を溶解させることで、樹脂粒子を取り出す方法等が挙げられる。
そして、得られた測定用試料である円盤状試料を、直径8mmのパラレルプレートに挟み、歪み量0.1~100%で、測定温度を10℃から150℃まで2℃/分で昇温させて、以下の条件で動的粘弾性測定を実施する。測定により得られた貯蔵弾性率及び損失弾性率の各曲線から、貯蔵弾性率G’及び損失正接tanδを求める。また損失正接tanδのピーク温度をガラス転移温度Tgとする。
-測定条件-
測定装置:レオメータARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)
ギャップ:3mmに調整
周波数:1Hz
【0036】
上記キャリアにおける磁性粒子表面の凹凸平均間隔Sm、算術平均粗さRaの具体的な測定方法は、磁性粒子50個について、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK-9500、(株)キーエンス製)を用い、倍率3,000倍で表面を換算して求める方法である。
凹凸平均間隔Smは、観察した磁性粒子表面の3次元形状から粗さ曲線を求め、該粗さ曲線が平均線と交差する交点から求めた山谷一周期の間隔の平均値を求める。Sm値を求める際の基準長さは10μmであり、カットオフ値は0.08mmである。
算術平均粗さRaは、粗さ曲線を求め、該粗さ曲線の測定値と平均値までの偏差の絶対値を合計し平均することで、Ra値を求める。Ra値を求める際の基準長さは10μmであり、カットオフ値は0.08mmである。
これらSm値、Ra値の測定はJIS B0601(1994年度版)に準じて行う。
【0037】
また、磁性粒子をキャリアから分離する方法としては、有機溶剤により樹脂被覆層を溶解させ、磁性粒子を分離する方法が好適に挙げられる。また、下記方法も好適に挙げられる。
キャリアから磁性粒子を分離する方法の一例として、より具体的には、例えば、樹脂被覆キャリア20gをトルエン100mLに入れる。40kHzの条件で超音波を30秒あてる。粒径に合わせ任意のろ紙を用いて磁性粒子と樹脂溶液とを分離する。ろ紙に残った磁性粒子に20mLのトルエンを上から流し、洗浄する。次に、ろ紙に残った磁性粒子を回収する。回収した磁性粒子を同様にトルエン100mLに入れ、40kHzの条件で超音波を30秒あてる。同様にろ過し、20mLのトルエンで洗ったのち、回収する。これを合計10回行う。最後に回収した磁性粒子を乾燥させる。
【0038】
磁性粒子の凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaを制御する方法は、特に限定されるものではない。
磁性粒子の凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaは、例えば、本焼成時の温度の調整、本焼成時の酸素濃度の調整、SiO2の添加量、Ca成分及びSr成分からなる群より選択される少なくとも1種の添加等により制御される。
【0039】
本実施形態では、光沢度条件差を小さくし、かつ、画像のカブリを抑制する観点から、磁性粒子のBET比表面積が0.12m2/g以上0.20m2/g以下であることが好ましい。また、本実施形態では、光沢度条件差を小さくし、かつ、画像のカブリを抑制する観点から、磁性粒子の体積平均粒径が26μm以上34μm以下であることが好ましい。
【0040】
磁性粒子のBET比表面積の測定は、SA3100比表面積測定装置(ベックマンコールター社製)を窒素置換、3点法にて行う。具体的には、磁性粒子5gをセルに入れ、60℃、120分の脱気処理を行い、窒素とヘリウムとの混合ガス(30:70)を用いて行う。
磁性粒子、及び、後述するキャリアの体積平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定装置LA-700((株)堀場製作所製)により測定される値とする。具体的には、測定装置により得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて累積50%となる粒子径を体積平均粒径とする。
【0041】
磁性粒子のBET比表面積及び体積平均粒径を制御する方法は、特に限定されるものではない。
磁性粒子のBET比表面積は、例えば、本焼成時の温度の調整、本焼成時の酸素濃度の調整、SiO2の添加量、Ca成分及びSr成分からなる群より選択される少なくとも1種の添加、本焼成後の後加熱等により制御される。磁性粒子の体積平均粒径は、例えば、スプレードライなどの造粒時の粒径制御、本焼成後の解砕、分級等により制御される。
【0042】
以下、本実施形態に係る現像剤に含まれるトナー及びキャリアの詳細について、それぞれ説明する。
【0043】
<トナー>
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0044】
(トナー粒子)
トナー粒子は、少なくとも結着樹脂を含有し、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
トナー粒子は、結着樹脂のほかに、さらに樹脂粒子を含有することが好ましい。
さらに、トナー粒子が樹脂粒子を含有することで、トナー定着画像の定着圧力に対する変形量が抑制され、光沢度差が小さい定着画像が得られると推測される。
【0045】
上記樹脂粒子は、架橋樹脂粒子であることが好ましい。
ここで「架橋樹脂粒子」とは、樹脂粒子に含有される高分子構造中の特定の原子間に橋掛構造を有する樹脂粒子をさす。
樹脂粒子を架橋樹脂粒子とすることで、90℃以上150℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が前記範囲である特定樹脂粒子になりやすく、特定トナーが得られやすくなる。
【0046】
上記架橋樹脂粒子は、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子であることが好ましい。
架橋樹脂粒子がスチレン(メタ)アクリル樹脂粒子であることで、90℃以上150℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が前記範囲である特定樹脂粒子になりやすく、特定トナーが得られやすくなる。
【0047】
トナー粒子は、前述のように、特定トナーを得る観点から、上記樹脂粒子として特定樹脂粒子を含有することが好ましい。
以下、特定トナーに含まれるトナー粒子の一例として、結着樹脂及び特定樹脂粒子を含有するトナー粒子について説明する。
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、特定樹脂粒子と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0048】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
結着樹脂はポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することで、特定樹脂粒子としてスチレン(メタ)アクリル樹脂粒子を用いた場合に、後述する特定樹脂粒子の溶解度パラメータSP値(S)と、結着樹脂の溶解度パラメータSP値(R)と、の差(SP値(S)-SP値(R))が好ましい数値範囲内となりやすくなる。これにより、特定樹脂粒子がトナー粒子中に分散しやすくなり、その結果、光沢度条件差が低減される。
差(SP値(S)-SP値(R))が上記範囲であることにより、小さすぎる場合に比べて、結着樹脂と特定樹脂粒子との親和性が高いことで一部相溶し分散性が低下することが抑制される。また、差(SP値(S)-SP値(R))が上記範囲であることにより、大きすぎる場合に比べて、結着樹脂と特定樹脂粒子との親和性が低いことで特定樹脂粒子がトナー粒子内に内包されずトナー粒子表面又はトナー粒子外に排出されることが抑制される。
【0050】
結着樹脂は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を含有することが好ましい。
ここで、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものをいう。
一方、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いた熱分析測定において、明確な吸熱ピークではなく、階段状の吸熱変化のみを有するものであり、常温固体で、ガラス転移温度以上の温度において熱可塑化するものを指す。
具体的には、例えば、結晶性樹脂とは、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを意味し、非晶性樹脂とは、半値幅が10℃を超える樹脂、又は明確な吸熱ピークが認められない樹脂を意味する。
【0051】
結晶性樹脂について説明する。
結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル樹脂(例えば、ポリアル
キレン樹脂、長鎖アルキル(メタ)アクリレート樹脂等)等の公知の結晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、トナーの機械的強度および低温定着性の点から、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0052】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0053】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0056】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0057】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0058】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、周知の製造方法により得られる。
【0059】
トナー粒子が結晶性樹脂を含有する場合、結着樹脂全体に対する結晶性樹脂の含有率は、4質量%以上50質量%以下であることが好ましく、6質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
結晶性樹脂の含有率が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて良好な定着性が得られやすい。また、結晶性樹脂の含有率が上記範囲であることにより、上記範囲よりも多い場合に比べて、相対的に弾性の低い結晶性樹脂が多すぎることに起因して高温高圧条件下で定着された定着画像の光沢度が過度に上昇することが抑制される。それにより、光沢度条件差が低減される。
【0060】
非晶性樹脂について説明する。
非晶性樹脂としては、例えば、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂(例えばスチレンアクリル樹脂等)、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等の公知の非晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂(特にスチレンアクリル樹脂)が好ましく、非晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0061】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0062】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0065】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶剤で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0066】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0067】
結着樹脂は、脂肪族ジカルボン酸単位(すなわち、脂肪族ジカルボン酸に由来する構造単位)を有するポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結着樹脂であるポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸単位を有する場合、芳香族ジカルボン酸単位のみを有する場合と比べ、結着樹脂の柔軟性が高まることにより特定樹脂粒子をより均一に近い状態に分散させることができ、損失正接tanδの変化幅をより小さくすることができる。
【0068】
また、結着樹脂は、脂肪族ジカルボン酸単位を有する非晶性ポリエステル樹脂と、脂肪族ジカルボン酸単位を有する結晶性ポリエステル樹脂と、を含むことが好ましい。結着樹脂が非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含む場合には、その両者が脂肪族ジカルボン酸単位を有することで、より特定樹脂粒子を均一に分散させることができる。
【0069】
なお、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、一般式「HOOC-(CH2)n-COOH」で表される飽和脂肪族ジカルボン酸を好ましく用いることができる。なお、上記一般式中のnは、4~20が好ましく、4~12がさらに好ましい。
【0070】
結着樹脂の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0071】
特定樹脂粒子の含有量に対する結晶性樹脂の含有量の比率は、特定樹脂粒子の含有量を1とした場合、0.2以上10以下であることが好ましく、より好ましくは1以上5以下である。
特定樹脂粒子の含有量に対する結晶性樹脂の含有量の比率が上記範囲であることにより、0.2未満となる場合に比べ、トナー中の90℃以上150℃以下での低粘度成分が過少となり高弾性成分である特定樹脂粒子の寄与が大きくなることによるトナーの溶融性の低下が抑制され、定着性が向上する。
また、特定樹脂粒子の含有量に対する結晶性樹脂の含有量の比率が上記範囲であることにより、10を超える場合に比べ、低減成分が過剰となり定着器による熱及び加圧によるトナーの変形量が多くなることが抑制され、定着条件による光沢度差が小さくなる。
なお、特定樹脂粒子の含有量に対する非晶性樹脂の含有量の比率は、特定樹脂粒子の含有量を1とした場合、1.3以上45以下であることが好ましく、より好ましくは3以上15以下である。
【0072】
-特定樹脂粒子-
特定樹脂粒子は、2℃/分の昇温時における動的粘弾性測定において90℃以上150℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が1×104Pa以上1×106Pa以下である樹脂粒子であればよく、特に限定されるものではない。
90℃以上150℃以下の範囲における特定樹脂粒子の貯蔵弾性率G’は、1×105Pa以上8×105Pa以下であることが好ましく、1×105Pa以上6×105Pa以下であることがより好ましい。
90℃以上150℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が上記範囲である樹脂粒子を用いることにより、上記範囲よりも低い樹脂粒子を用いた場合に比べ、高温高圧条件下で定着された定着画像の光沢度の過度な上昇が抑制される。それにより、光沢度条件差が低減される。また、90℃以上150℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が上記範囲である樹脂粒子を用いることにより、上記範囲よりも高い樹脂粒子を用いた場合に比べ、トナー粒子の弾性が高すぎることに起因する定着性の低下が抑制され、良好な定着性が得られやすくなる。
【0073】
特定樹脂粒子は、2℃/分の昇温時における動的粘弾性測定において30℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδが、0.01以上2.5以下のものであることが好ましい。特定樹脂粒子は、特に65℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδが、0.01以上1.0以下のものであることがより好ましく、0.01以上0.5以下のものであることがさらに好ましい。
30℃以上150℃以下の範囲における特定樹脂粒子の損失正接tanδが上記範囲であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べ、定着時にトナー粒子が変形しやすく、良好な定着性が得られやすくなる。また、さらにトナー粒子が変形し易い温度である65℃以上150℃以下の範囲における特定樹脂粒子の損失正接tanδが上記範囲であることにより、上記範囲よりも高い場合に比べ、高温高圧条件下で定着された定着画像の光沢度の過度な上昇が抑制される。それにより、光沢度条件差が低減される。
【0074】
・架橋樹脂粒子
特定樹脂粒子は架橋樹脂粒子であることが好ましい。
ここで、特定樹脂粒子をトナー粒子に内包させるためには、特定樹脂粒子と結着樹脂との親和性が高いことが好ましい。上記親和性を高める方法として、具体的には、SP値の制御、特定樹脂粒子の分散剤として界面活性剤を使用する方法などが挙げられる。しかし、結着樹脂との親和性が高い特定樹脂粒子を使用すると、特定樹脂粒子は無機フィラー、カーボンブラック、金属粒子などと異なり有機ポリマーで構成されているため、結着樹脂と相溶しやすく、分散性が低下することがある。
一方で、結着樹脂との親和性が低い特定樹脂粒子を使用すると、トナー粒子内に内包されにくく、トナー粒子の表面又はトナー粒子外に排出されることがある。
【0075】
結着樹脂との親和性が高い特定樹脂粒子と低い特定樹脂粒子との間の、中間の親和性を有する特定樹脂粒子を使用することで、トナー粒子内に特定樹脂粒子をある程度内包させることが可能となるが、乳化凝集法や混練粉砕法などのトナー製法に関わらず、特定樹脂粒子同士が接触した際には、同種の材料であるため親和性が高く、接触したままの状態を維持して偏在することがあり、特定樹脂粒子をトナー粒子内に満遍なく配置することは困難であった。特定樹脂粒子同士が接触したままの状態を維持する原因は、特定樹脂粒子を構成する高分子成分の高分子鎖が、接触時に絡み合うことが一因と考えられる。
そこで、特定樹脂粒子として架橋樹脂粒子を使用することで、高分子鎖の絡み合いを抑制し、接触したままの状態となりにくく、トナー粒子中に満遍なく配置することが可能となった。
【0076】
架橋樹脂粒子としては、例えば、イオン結合により架橋された架橋樹脂粒子(イオン架橋樹脂粒子)、共有結合により架橋された架橋樹脂粒子(共有結合架橋樹脂粒子)等が挙げられる。これらの中でも、架橋樹脂粒子としては、共有結合により架橋された架橋樹脂粒子が好ましい。
【0077】
架橋樹脂粒子に用いられる樹脂の種類としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、αポリメチルスチレン等)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリル等)、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの共重合樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、必要に応じて単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0078】
架橋樹脂粒子に用いられる樹脂としては、上記の樹脂の中でも、スチレン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂との共重合樹脂であるスチレン(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
つまり、架橋樹脂粒子としては、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子が好ましい。
スチレン(メタ)アクリル樹脂は、例えば、次のスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体をラジカル重合によって重合した樹脂が挙げられる。
【0079】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレンや、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等のアルキル鎖を持つアルキル置換スチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン、4-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン等が挙げられる。その中でも、スチレン、α-メチルスチレン、が好ましい。
【0080】
(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸n-メチル、(メタ)アクリル酸n-エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。その中でも、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、が好ましい。
【0081】
架橋樹脂粒子において、樹脂を架橋するための架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族の多ビニル化合物類;フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ホモフタル酸ジビニル、トリメシン酸ジビニル、トリメシン酸トリビニル、ナフタレンジカルボン酸ジビニル、ビフェニルカルボン酸ジビニル等の芳香族多価カルボン酸の多ビニルエステル類;ピリジンジカルボン酸ジビニル等の含窒素芳香族化合物のジビニルエステル類;ピロムチン酸ビニル、フランカルボン酸ビニル、ピロール-2-カルボン酸ビニル、チオフェンカルボン酸ビニル等の不飽和複素環化合物カルボン酸のビニルエステル類;ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オクタンジオールジアクリレート、オクタンジオールジメタクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ノナンジオールジメタクリレート、デカンジオールジアクリレート、デカンジオールジメタクリレート、ドデカンジオールジアクリレート、ドデカンジオールジメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ、1、3-ジアクリロキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、コハク酸ジビニル、フマル酸ジビニル、マレイン酸ビニル、マレイン酸ジビニル、ジグリコール酸ジビニル、イタコン酸ビニル、イタコン酸ジビニル、アセトンジカルボン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、3,3’-チオジプロピオン酸ジビニル、trans-アコニット酸ジビニル、trans-アコニット酸トリビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ドデカン二酸ジビニル、ブラシル酸ジビニル等の多価カルボン酸の多ビニルエステル類等が挙げられる。架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0082】
これらの中でも、樹脂を架橋するための架橋剤として、炭素数6以上のアルキレン鎖を有する2官能アルキルアクリレートを用いることが好ましい。つまり、架橋樹脂粒子は、2官能アルキルアクリレートを構成単位として有し、前記2官能アルキルアクリレートにおけるアルキレン鎖の炭素数が6以上であることが好ましい。
2官能アルキルアクリレートを構成単位として有し、アルキレン鎖の炭素数が6以上である架橋樹脂粒子を使用することでより、特定トナーが得られやすくなる。特定トナーでは、高圧定着条件でもトナー粒子の変形量を一定の範囲に抑制することが、光沢度差の抑制に対して、重要となる。架橋樹脂粒子である特定樹脂粒子と結着樹脂との弾性の差が大きすぎる場合には、特定樹脂粒子による損失正接tanδの変化抑制効果が得られにくい場合がある。このため、特定樹脂粒子の弾性が高くなりすぎないよう制御することが好ましい。特定樹脂粒子の架橋密度が高い(つまり、架橋点間距離が短い)場合には、弾性が高くなり過ぎてしまうのに対し、架橋剤として長鎖のアルキレン鎖を有する2官能アクリレートを使用した場合には、架橋密度が低く(つまり、架橋点間距離が長く)なり、特定樹脂粒子の弾性が高くなり過ぎるのを抑制することができる。この結果、光沢度差をより抑制することができる。
【0083】
架橋密度を適度な範囲に調整する観点から、2官能アルキルアクリレートにおけるアルキレン鎖の炭素数としては、6以上が好ましく、6以上12以下がより好ましく、8以上12以下がさらに好ましい。より具体的な2官能アルキルアクリレートとしては、1,6-ヘキサンジオールアクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタクリレート、1,8-オクタンジオールジアクリレート、1,8-オクタンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジアクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレートが挙げられ、その中でも1,10-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレートであることが好ましい。
【0084】
なお、特定樹脂粒子が、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び架橋剤を含む特定樹脂粒子形成用組成物の重合体である場合、組成物中に含まれる架橋剤の量を調整することで、特定樹脂粒子の粘弾性を制御してもよい。例えば、組成物に含まれる架橋剤の量を多くすることで、貯蔵弾性率G’の高い樹脂粒子が得られやすくなる。特定樹脂粒子形成用組成物における架橋剤の含有量としては、例えば、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び架橋剤の合計100質量部に対し、0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上2.5質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上2.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0085】
特定樹脂粒子の動的粘弾性測定から求められるガラス転移温度Tgは、10℃以上45℃以下であることが好ましい。特定樹脂粒子のガラス転移温度Tgが10℃以上45℃以下である場合、より良好な定着性を得つつ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が低減されるトナーとなる。
さらに特定樹脂粒子のガラス転移温度Tgは、15℃以上40℃以下であることが好ましく、20℃以上35℃以下であることがさらに好ましい。
特定樹脂粒子のガラス転移温度Tgが上記範囲であると、Tgが低すぎる場合に比べ、結着樹脂のTgとの差が大きくトナー粒子中で樹脂粒子同士が偏在し易くなることが抑制され、均一に近い特定樹脂粒子の分散状態が保持しやすく、定着時加圧に対する変形抑制効果が得られやすく、光沢度差が小さくなる。また、特定樹脂粒子のガラス転移温度Tgが上記範囲であると、Tgが高すぎる場合に比べ、結着樹脂の溶融性の悪化に起因する低温定着性の悪化が抑制される。
【0086】
特定樹脂粒子の個数平均粒径は、60nm以上300nm以下であることが好ましく、100nm以上200nm以下であることがより好ましく、130nm以上170nm以下であることがさらに好ましい。
特定樹脂粒子の個数平均粒径が上記範囲であることにより、上記範囲より小さい場合に比べ、トナー粒子が特定樹脂粒子の高い弾性の影響を受けやすいことによる定着性の低下が抑制され、良好な定着性が得られる。また、特定樹脂粒子の個数平均粒径が上記範囲であることにより、上記範囲より大きい場合に比べ、トナー粒子内において特定樹脂粒子が均一に近い状態で分散しやすいため、高温高歪み量と低温低歪み量とで近い粘弾性を有するトナーとなりやすくなる。それにより、光沢度条件差が低減される。
【0087】
特定樹脂粒子の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される値である。
透過型電子顕微鏡としては、例えば、日本電子データム(株)製、JEM-1010が使用可能である。
以下、特定樹脂粒子の個数平均粒径の測定方法について具体的に説明する。
トナー粒子をミクロトームで0.3μm程度の厚さに切る。トナー粒子の断面を透過型電子顕微鏡で4500倍の写真を撮り、トナー粒子中に分散している1000個の樹脂粒子について、個々の断面積よりその円相当径を算出し、これを算術平均した値を個数平均粒径とする。
また、特定樹脂粒子の個数平均粒径は、特定樹脂粒子分散液をレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA-700)により測定した値でもよい。
【0088】
特定樹脂粒子は、トナー粒子の表面に近い領域(以下「表面領域」ともいう)及びトナー粒子の中心に近い領域(以下「中心領域」ともいう)の両方に満遍なく含有されていることが好ましい。表面領域及び中心領域の両方に特定樹脂粒子が含有されていることにより、表面領域及び中心領域のいずれか一方のみに特定樹脂粒子が含有されている場合に比べ、光沢度条件差が低減される。
例えば表面領域のみに特定樹脂粒子が含有されている場合、低温低圧条件下では表面領域における粘弾性の影響を受けてトナー粒子の変形量が小さくなるのに対し、高温高圧条件下では中心領域の粘弾性の影響によりトナー粒子の変形量が大きくなると考えられる。そのため、光沢度条件差が大きくなることがある。また、中心領域のみに特定樹脂粒子が含有されている場合、低温低圧条件下ではトナー粒子の変形量が小さく、定着画像中の特定樹脂粒子の分散状態が悪い(偏在している)のに対し、高温高圧条件下ではトナー粒子の変形量が大きく、定着画像中の特定樹脂粒子の分散状態が良好(均一に近い状態)となり易い。定着画像中の特定樹脂粒子の分散状態が悪い場合、特定樹脂粒子が存在する部分は変形しくく凸部となり、特定樹脂粒子が存在しない部分は変形し易く凹部となるため、光沢度が低減する。分散状態が良好な場合は、前述の状態が抑制され、光沢度が上昇する。そのため、光沢度条件差が大きくなることがある。
これに対し、特定樹脂粒子が表面領域及び中心領域の両方に含有されている場合は、表面領域のみに含有される場合及び中心領域のみに含有される場合と異なり、光沢度条件差が低減されると推測される。
【0089】
特定樹脂粒子の含有率は、トナー粒子全体に対し、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
特定樹脂粒子の含有率が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べ、高温高歪み量と低温低歪み量とで近い粘弾性を有するトナーとなりやすくなり、光沢度条件差が低減される。また、特定樹脂粒子の含有率が上記範囲であることにより、上記範囲よりも多い場合に比べ、トナー粒子の弾性が高すぎることによる定着性の低下が抑制され、良好な定着性が得られる。
【0090】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0092】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0093】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0094】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0095】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0096】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0097】
-トナー粒子中の組成の関係-
・差(SP値(S)-SP値(R))
特定樹脂粒子の溶解度パラメータSP値(S)と、結着樹脂の溶解度パラメータSP値(R)と、の差(SP値(S)-SP値(R))は-0.32以上-0.12以下であることが好ましい。
【0098】
差(SP値(S)-SP値(R))が上記範囲であることで、上記範囲より小さい場合に比べ、トナー粒子の大部分を構成する結着樹脂と特定樹脂粒子との親和性が適度に保たれ、トナー粒子内において特定樹脂粒子が均一に近い状態で分散しやすい。そのため、高温高歪み量と低温低歪み量とで近い粘弾性を有するトナーとなりやすくなり、光沢度条件差が低減される。つまり、差(SP値(S)-SP値(R))が上記範囲より小さい場合に比べ、結着樹脂と特定樹脂粒子との親和性が高すぎて特定樹脂粒子がトナー粒子中で動きやすく特定樹脂粒子が一部凝集し特定樹脂粒子の効果が低減してしまうことが、起こりにくくなる。
また、差(SP値(S)-SP値(R))が上記範囲であると、上記範囲より大きい場合に比べ、トナー溶融時において特定樹脂粒子と結着樹脂が過度に混合、相溶することによるトナー全体の溶融粘度の上昇が抑制される。それにより、粘弾性が高すぎることに起因する定着性の低下が抑制され、良好な定着性が得られるという利点がある。
なお、結着樹脂が混合樹脂である場合、結着樹脂中の含有比が最も多い樹脂の溶解度パラメータをSP値(R)とする。
【0099】
差(SP値(S)-SP値(R))は-0.32以上-0.12以下であることがより好ましく、-0.29以上-0.18以下であることが更に好ましい。
【0100】
特定樹脂粒子の溶解度パラメータSP値(S)は9.00以上9.15以下であることが好ましく、9.03以上9.12以下であることがより好ましく、9.06以上9.10以下であることが更に好ましい。
【0101】
ここで、特定樹脂粒子の溶解度パラメータSP値(S)、及び結着樹脂の溶解度パラメータSP値(R)(単位:(cal/cm3)1/2)は、沖津法により算出する。沖津法については『日本接着学会誌、Vol.29、No.5(1993)』に詳細に記載されている。
【0102】
・特定樹脂粒子を除いた成分(除外成分)の粘弾性
トナー粒子から特定樹脂粒子を除いた成分の、30℃以上50℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が1×108Pa以上であり、かつ、貯蔵弾性率G’が1×105Pa未満
に達する温度が65℃以上90℃以下であることが好ましい。以下、トナー粒子から特定樹脂粒子を除いた成分を「除外成分」ともいい、貯蔵弾性率G’が1×105Pa未満に達する温度を「特定弾性率到達温度」ともいう。貯蔵弾性率G’が上記条件を満たす除外成分は、低温において弾性率が高く、かつ、65℃以上90℃以下において弾性率が低くなる。そのため、除外成分の貯蔵弾性率G’が上記条件を満たすと、貯蔵弾性率G’が1×105Pa未満に達する温度が90℃を超える場合に比べ、加熱によってトナー粒子が溶融しやすく、定着性が良好となる。
【0103】
除外成分における30℃以上50℃以下の貯蔵弾性率G’は、1×108Pa以上であることが好ましく、1×108Pa以上1×109Pa以下であることがより好ましく、2×108Pa以上6×108Pa以下であることがさらに好ましい。
除外成分における30℃以上50℃以下の貯蔵弾性率G’が上記範囲であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べてトナーの保管安定性が良好であり、上記範囲よりも高い場合に比べて良好な定着性が得られやすい。
【0104】
また、除外成分における特定弾性率到達温度は、65℃以上90℃以下であることが好ましく、68℃以上80℃以下であることがより好ましく、70℃以上75℃以下であることがさらに好ましい。
除外成分における特定弾性率到達温度が上記範囲であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べてトナーの保管安定性が良好であり、上記範囲よりも高い場合に比べて良好な定着性が得られやすい。
【0105】
除外成分の特定弾性率到達温度における損失正接tanδは、0.8以上1.6以下であることが好ましく、0.9以上1.5以下であることがより好ましく、1.0以上1.4以下であることがさらに好ましい。
除外成分の特定弾性率到達温度における損失正接tanδが上記範囲であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べて良好な定着性が得られやすい。また、除外成分の特定弾性率到達温度における損失正接tanδが上記範囲であることにより、上記範囲よりも高い場合に比べて、光沢度条件差が低減される。
【0106】
なお、除外成分の貯蔵弾性率G’及び損失正接tanδは、以下のようにして求める。
具体的には、まず、トナー粒子から樹脂粒子を除外して除外成分のみを取り出し、除外成分をプレス成型機により、25℃で錠剤型に成形することで、測定用試料を作製する。トナー粒子から樹脂粒子を除外して除外成分のみを取り出す方法としては、例えば、結着樹脂を溶解し樹脂粒子を溶解しない溶剤にトナー粒子を浸漬し、除外成分を抽出することで取り出す方法等が挙げられる。
そして、得られた測定用試料を、直径8mmのパラレルプレートに挟み、歪み量0.1~100%で、測定温度を30℃から150℃まで2℃/分で昇温させて、以下の条件で動的粘弾性測定を実施する。測定により得られた貯蔵弾性率及び損失弾性率の各曲線から、貯蔵弾性率G’及び損失正接tanδを求める。
-測定条件-
測定装置:レオメータARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)
測定治具:8mmパラレルプレート
ギャップ:3mmに調整
周波数:1Hz
【0107】
・特定樹脂粒子とトナー粒子と除外成分との関係
90℃以上150℃以下の範囲において、特定樹脂粒子の貯蔵弾性率をG’(p90-150)、トナー粒子の貯蔵弾性率をG’(t90-150)、トナー粒子から特定樹脂粒子を除いた成分の貯蔵弾性率をG’(r90-150)としたとき、G’(p90-1
50)が1×104Pa以上1×106Pa以下であり、かつ、logG’(t90-150)-logG’(r90-150)が1.0以上4.0以下であることが好ましい。
また、logG’(t90-150)-logG’(r90-150)の値は、1.0以上3.5以下であることがより好ましく、1.1以上3.4以下であることがさらに好ましく、1.2以上3.3以下であることが特に好ましい。
logG’(t90-150)-logG’(r90-150)の値は、特定樹脂粒子の添加有無によるトナー粒子の粘弾性の差分を意味する。特定樹脂粒子をトナー粒子中に均一に近い状態で分散且つ内包させることで、トナー粒子全体の粘弾性に対する特定樹脂粒子の粘弾性の影響を抑制し、logG’(t90-150)-logG’(r90-150)の値を上記範囲に制御することにより、上記範囲より小さい場合及び大きい場合に比べ、良好な定着性と、光沢度条件差の低減と、が両立される。
【0108】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と特定樹脂粒子と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂と特定樹脂粒子とを含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0109】
トナー粒子がコア・シェル構造である場合、コア粒子及びシェル層の両方に特定樹脂粒子が含有されていることが好ましい。コア粒子及びシェル層の両方に特定樹脂粒子が含有されることにより、トナー粒子の表面領域及び中心領域の両方に特定樹脂粒子が含有されることになるため、光沢度条件差がさらに低減される。
【0110】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましく、4μm以上6μm以下がさらに好ましい。
【0111】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0112】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0113】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0114】
・テトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量
トナー粒子中のテトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量は、5000以上15000以下であることが好ましい。以下、テトラヒドロフラン可溶分を「THF可溶分」ともいう。
トナー粒子中のTHF可溶分の数平均分子量が5000以上15000以下であることで、歪み量の変化に対する損失正接の変化が小さく、変形量が抑制された高粘弾性のトナーであっても、高い定着性が得られる。具体的には、THF可溶分の数平均分子量が上記範囲であることにより、小さすぎる場合に比べて、トナー粒子中に低分子量成分が多く存在することに起因して高温高圧定着条件下でトナー粒子の変形量が大きくなり光沢度差が大きくなることが抑制される。また、THF可溶分の数平均分子量が上記範囲であることにより、大きすぎる場合に比べて、トナー粒子中に高分子量成分が多く存在することに起因してトナー粒子の変形量が抑制される一方で低温定着性が得られにくくなることが抑制される。THF可溶分の数平均分子量は7000以上10000以下であることがさらに好ましい。
【0115】
上記トナー粒子におけるTHF可溶分の数平均分子量は、「HLC-8120GPC、SC-8020(東ソー(株)製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、トナー粒子のTHF可溶分を作製して行う。
具体的には、測定対象であるトナー粒子0.5mgをTHF1gに溶解させ、超音波分散をかけた後に、濃度が0.5質量%となるように調整を行って作製する。
試料濃度0.5質量%、流速0.6ml/min、試料注入量10μl、測定温度40℃の条件において、RI検出器を用いて測定を行う。
また、検量線は東ソー(株)製「Polystyrene標準試料TSK standard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製する。
【0116】
外添されたトナーからトナー粒子を得る場合、例えば、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル0.2質量%の水溶液に10質量%となるようにトナーを分散させ、30℃以下の温度を保ちながら超音波振動(周波数20kHz、出力30W)を60分作用させることで外添剤を遊離させる。得られた分散液からトナー粒子を濾別洗浄することで外添剤を除去したトナー粒子が得られる。
【0117】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0118】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0119】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0120】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0121】
(トナーの特性)
-トナーの粘弾性-
本実施形態に係るトナーは、前記の通り、特定トナーである。つまり、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のいずれも0.5以上2.5以下であり、D50(150)-D1(150)の値が1.5未満、D50(90)-D1(90)の値が1.0未満である。
【0122】
特定トナーにおけるD1(90)は、0.5以上2.5以下であり、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.6以上1.8以下であることがより好ましく、0.8以上1.6以下であることがさらに好ましく、1.0以上1.5以下であることが特に好ましい。
特定トナーにおけるD50(90)は、0.5以上2.5以下であり、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.6以上1.8以下であることがより好ましく、0.8以上1.6以下であることがさらに好ましく、1.1以上1.6以下であることが特に好ましい。
特定トナーにおけるD1(150)は、0.5以上2.5以下であり、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましく、0.55以上1.0以下であることがさらに好ましく、0.55以上0.8以下であることが特に好ましい。
特定トナーにおけるD50(150)は、0.5以上2.5以下であり、0.8以上2.2以下であることが好ましく、1.0以上2.0以下であることがより好ましく、1.2以上1.9以下であることがさらに好ましく、1.4以上1.7以下であることが特に好ましい。
D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がいずれも上記範囲であることにより、上記範囲より小さい場合及び大きい場合に比べて、画像のカブリが抑制される。また、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がいずれも上記範囲であることにより、上記範囲より小さい場合に比べて良好な定着性が得られ、上記範囲より大きい場合に比べて光沢度条件差が低減される。
【0123】
特定トナーにおけるD50(150)-D1(150)の値は、1.5未満であり、1.2以下であることが好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。D50(150)-D1(150)の値が上記範囲であることにより、上記範囲より大きい場合に比べて光沢度条件差が低減される。光沢度条件差低減の観点からは、D50(150)-D1(150)の値が小さいほど好ましい。
なお、D50(150)-D1(150)の値の下限値は特に限定されない。
【0124】
特定トナーにおけるD50(90)-D1(90)の値は、1.0未満であり、0.5未満であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.3以下であることがさらに好ましい。D50(90)-D1(90)の値が上記範囲であることにより、上記範囲より大きい場合に比べて光沢度条件差が低減される。光沢度条件差低減の観点からは、D50(90)-D1(90)の値が小さいほど好ましい。
なお、D50(90)-D1(90)の値の下限値は特に限定されない。
【0125】
トナーの、30℃以上50℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’が1×108Pa以上であり、かつ、貯蔵弾性率G’が1×105Pa未満に達する温度(すなわち、特定弾性率到達温度)が65℃以上90℃以下であることが好ましい。貯蔵弾性率G’が上記条件を満たすトナーは、低温において弾性率が高く、かつ、65℃以上90℃以下において弾性率が低くなる。そのため、トナーの貯蔵弾性率G’が上記条件を満たすと、貯蔵弾性率G’が1×105Pa未満に達する温度が90℃を超える場合に比べ、加熱によってトナーが溶融しやすく、定着性が良好となる。
【0126】
トナーにおける30℃以上50℃以下の貯蔵弾性率G’は、1×108Pa以上であることが好ましく、1×108Pa以上1×109Paであることがより好ましく、2×108Pa以上6×108Pa以下であることがさらに好ましい。
トナーにおける30℃以上50℃以下の貯蔵弾性率G’が上記範囲であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べてトナーの保管安定性が良好であり、上記範囲よりも高い場合に比べて良好な定着性が得られやすい。
【0127】
また、トナーにおける特定弾性率到達温度は、65℃以上90℃以下であることが好ましく、70℃以上87℃以下であることがより好ましく、75℃以上84℃以下であることがさらに好ましい。
トナーにおける特定弾性率到達温度が上記範囲であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べてトナーの保管安定性が良好であり、上記範囲よりも高い場合に比べて良好な定着性が得られやすい。
【0128】
なお、トナーの貯蔵弾性率G’及び特定弾性率到達温度は、以下のようにして求める。
具体的には、測定対象となるトナーを、プレス成型機により、常温(25℃)で錠剤型に成形することで、測定用試料を作製する。そして、得られた測定用試料を、直径8mmのパラレルプレートに挟み、歪み量0.1~100%で、測定温度を30℃から150℃まで2℃/分で昇温させて、以下の条件で動的粘弾性測定を実施する。測定により得られた貯蔵弾性率及び損失弾性率の各曲線から、貯蔵弾性率G’を求める。
-測定条件-
測定装置:レオメータARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)
測定治具:8mmパラレルプレート
ギャップ:3mmに調整
周波数:1Hz
【0129】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、必要に応じて、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0130】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0131】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液、及び特定樹脂粒子となる特定樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0132】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0133】
-樹脂粒子分散液準備工程-
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0134】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0135】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0137】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0138】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積5
0%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0139】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0140】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0141】
・特定樹脂粒子分散液の調製
特定樹脂粒子分散液の調製方法としては、例えば、乳化重合法、バンバリーミキサーやニーダー等を用いる溶融混練法、懸濁重合法、噴霧乾燥法等、公知の方法が適用されるが、乳化重合法が好ましい。
【0142】
特定樹脂粒子の貯蔵弾性率G’及び損失正接tanδを好ましい範囲内とする観点から、単量体としてスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体を用い、架橋剤存在下で重合することが好ましい。
また、特定樹脂粒子の製造において、複数回の乳化重合を行うことが好ましい。
以下、特定樹脂粒子の製造方法についてより具体的に説明する。
【0143】
特定樹脂粒子分散液の調製方法は、
単量体、架橋剤、界面活性剤、及び水を含む乳化液を得る工程(乳化液調製工程)と、
乳化液に対して重合開始剤を添加し、加熱することで単量体を重合する工程(第一乳化重合工程)と、
第一乳化重合工程後の反応溶液に、単量体及び架橋剤を含む乳化液を追加して、加熱することで単量体を重合する工程(第二乳化重合工程)と、
を含むことが好ましい。
【0144】
(乳化液調製工程)
単量体、架橋剤、界面活性剤、及び水を含む乳化液を得る工程である。
単量体、架橋剤、界面活性剤、及び水を、乳化機により乳化することで乳化液を得ることが好ましい。
乳化機としては、例えば、プロペラ型、アンカー型、パドル型、又はタービン型の撹拌羽根を備えた回転式撹拌機、スタティックミキサー等の静止型混合器、ホモジナイザー、クレアミックス等のローター・ステーター型乳化機、磨砕機能を備えたミル型乳化機、マントンゴーリン式圧力乳化機等の高圧乳化機、高圧下でキャビテーションを発生させる高圧ノズル型乳化機、マイクロフルイダイザー等の高圧下で液同士を衝突させることによりせん断力を与える高圧衝突型乳化機、超音波でキャビテーションを発生させる超音波乳化機、細孔を通して均一乳化を行う膜乳化機等が例示される。
【0145】
単量体としてはスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体を用いることが好ましい。
架橋剤としては既述のものが適用される。
【0146】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。これらの中でも、アニオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0147】
乳化液は連鎖移動剤を含んでいても良い。連鎖移動剤としては特に制限はないが、チオール成分を有する化合物を用いることができる。具体的には、ヘキシルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類が好ましい。
【0148】
特定樹脂粒子の貯蔵弾性率G’及び損失正接tanδを好ましい範囲内とする観点から、乳化液中のスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体の質量比(スチレン系単量体/(メタ)アクリル酸系単量体)は、0.2以上1.1以下であることが好ましい。
また、特定樹脂粒子の貯蔵弾性率G’及び損失正接tanδを好ましい範囲内とする観点から、乳化液全体に対する架橋剤の含有量は0.5質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
【0149】
(第一乳化重合工程)
乳化液に対して重合開始剤を添加し、加熱することで単量体を重合する工程である。
ここで、重合する際、重合開始剤を含んだ乳化液(反応溶液)を撹拌機により撹拌することが好ましい。
撹拌機としては、プロペラ型、アンカー型、パドル型、又はタービン型の撹拌羽根を備えた回転式撹拌機が挙げられる。
重合開始剤としては、過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
なお、重合開始剤を用いる場合、重合開始剤の添加量を調整することで、得られる特定樹脂粒子の粘弾性を制御してもよい。例えば、重合開始剤の添加量を少なくすることで、貯蔵弾性率G’の高い樹脂粒子が得られやすくなる。
【0150】
(第二乳化重合工程)
第一乳化重合工程後の反応溶液に、単量体を含む乳化液を追加して、加熱することで単量体を重合する工程である。
重合する際、第一乳化重合工程と同様に反応溶液を撹拌することが好ましい。
本工程では、単量体を含む乳化液の追加にかける時間を調整することで、得られる特定樹脂粒子の粘弾性を制御してもよい。例えば、単量体を含む乳化液の追加にかける時間を長くすることで、貯蔵弾性率G’の高い樹脂粒子が得られやすくなる。単量体を含む乳化液の追加にかける時間としては、例えば2時間以上5時間以下の範囲が挙げられる。
また、本工程では、反応溶液を撹拌する際の温度を調整することで、得られる特定樹脂粒子の粘弾性を制御してもよい。例えば、反応溶液を撹拌する際の温度を低くすることで、貯蔵弾性率G’の高い樹脂粒子が得られやすくなる。反応溶液を撹拌する際の温度としては、例えば55℃以上75℃以下の範囲が挙げられる。
単量体を含む乳化液は、例えば、単量体、界面活性剤、及び水を乳化機により乳化することで乳化液を得ることが好ましい。
【0151】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、特定樹脂粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子と特定樹脂粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子と特定樹脂粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0152】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0153】
本工程では、凝集剤を添加する際における混合分散液の温度を調整することで、得られるトナー粒子における特定樹脂粒子の分散状態を制御してもよい。例えば、混合分散液の温度を低くすることで、特定樹脂粒子の分散性が良好となる。混合分散液の温度としては、例えば、5℃以上40℃以下の範囲が挙げられる。
また、本工程では、凝集剤を添加した後の撹拌速度を調整することで、得られるトナー粒子における特定樹脂粒子の分散状態を制御してもよい。例えば、凝集剤を添加した後の撹拌速度を速くすることで、特定樹脂粒子の分散性が良好となる。
【0154】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0155】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酢酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0156】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0157】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、特定樹脂粒子が分散された特定樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子と特定樹脂粒子とを付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0158】
第2凝集粒子を形成する工程では、樹脂粒子分散液及び特定樹脂粒子分散液の添加と、凝集粒子の表面への樹脂粒子及び特定樹脂粒子の付着と、を複数回繰り返してもよい。複数回繰り返すことで、特定樹脂粒子がトナー粒子の表面領域及び中心領域の両方に満遍なく含有されたトナー粒子が得られる。
【0159】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0160】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0161】
<キャリア>
キャリアは、磁性粒子と、磁性粒子の表面に付着する樹脂層と、を含む。
【0162】
(磁性粒子)
本実施形態において、磁性粒子の表面の凹凸平均間隔Smは、0.5μm≦Sm≦2.5μmを満たす。
磁性粒子の表面の凹凸平均間隔Smが上記範囲であることにより、上記範囲よりも小さい場合に比べて、キャリア表面の凹凸がトナーに適度に引っかかりやすく、画像のカブリが抑制されると推測される。また、凹凸平均間隔Smが上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べて、キャリア表面の凹凸がトナーに引っかかりやすく、画像のカブリが抑制されると推測される。
磁性粒子のSmは、画像のカブリ抑制の観点から、0.8μm以上2.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。
【0163】
磁性粒子の表面の凹凸平均間隔Smは、画像のカブリを抑制する観点から、トナーにおけるD1(90)との関係が、下記式(1’)を満たすことが好ましく、下記式(1)を満たすことがより好ましく、下記式(1’’)を満たすことがさらに好ましい。
式(1’) :D1(90)-0.5≦Sm≦D1(90)+1.25
式(1) :D1(90)≦Sm≦D1(90)+1.1
式(1’’):D1(90)+0.05≦Sm≦D1(90)+1.05
Sm-D1(90)の値は、-0.5以上+1.3以下であることが好ましく、-0.5以上+1.25以下であることがより好ましく、0以上+1.1以下であることがさらに好ましく、+0.05以上+1.05以下であることが特に好ましく、+0.4以上+0.6以下であることが最も好ましい。
【0164】
トナーにおけるD1(90)とキャリアの磁性粒子における凹凸平均間隔Smとの関係が上記式を満たすことでカブリが抑制される理由は定かではないが、以下のように推測される。
具体的には、D1(90)が大きいトナーは、D1(90)が小さいトナーに比べてトナー表面の粘性が高い。そのため、凹凸平均間隔Smが大きい磁性粒子を含むキャリアと組み合わせることで、キャリアの表面における凹凸がトナーの表面に食い込みすぎることが抑制される。キャリア表面の凹凸がトナーの表面に食い込みすぎると、現像剤全体が流動しにくくなることでトナーが変形しやすくなることが考えられる。そこで、キャリア表面の凹凸がトナーの表面に食い込みすぎることが抑制されることで、トナーの変形に起因する画像のカブリが抑制されると推測される。
また、D1(90)が小さいトナーは、D1(90)が大きいトナーに比べてトナー表面の弾性が高い。そのため、凹凸平均間隔Smが小さい磁性粒子を含むキャリアと組み合わせることで、キャリア表面の凹凸がトナー表面に引っかかりやすくなり、カブリが抑制されると推測される。
【0165】
本実施形態において、磁性粒子の表面の算術平均粗さRaは、0.3μm≦Ra≦1.2μmを満たす。
磁性粒子の表面の算術表面粗さRaが上記範囲であることにより、上記範囲よりも小さい場合に比べて、キャリア表面の凹凸がトナーに引っかかりやすく、画像のカブリが抑制されると推測される。また、算術平均粗さRaが上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べて、キャリア表面の凹凸がトナーの表面に食い込みすぎることが抑制され、上記食い込みによるトナーの変形に起因する画像のカブリが抑制されると推測される。
磁性粒子のRaは、画像のカブリ抑制の観点から、0.5μm以上1.1μm以下であることが好ましく、0.7μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
【0166】
磁性粒子の表面の算術平均粗さRaは、画像のカブリを抑制する観点から、トナーにおけるD1(90)との関係が、下記式(2’)を満たすことが好ましく、下記式(2)を満たすことがより好ましく、下記式(2’’)を満たすことがさらに好ましい。
式(2’):1.03-0.3×D1(90)≦Ra≦1.45-0.3×D1(90)
式(2):1.05-0.3×D1(90)≦Ra≦1.36-0.3×D1(90)
式(2’’):1.10-0.3×D1(90)≦Ra≦1.25-0.3×D1(90)
Ra+0.3×D1(90)の値は、0.75以上1.55以下であることが好ましく、1.03以上1.45以下であることがより好ましく、1.05以上1.36以下であることがさらに好ましく、1.10以上1.25以下であることが特に好ましく、1.10以上1.20以下であることが最も好ましい。
【0167】
また、磁性粒子の表面の算術平均粗さRaは、画像のカブリをさらに抑制する観点から、トナーにおけるD50(150)との関係が、下記式(3’)を満たすことが好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましく、下記式(3’’)を満たすことがさらに好ましい。
式(3’):0.90-0.3×D50(150)≦Ra≦1.45-0.3×D50(150)
式(3):1.05-0.3×D50(150)≦Ra≦1.36-0.3×D50(150)
式(3’’):1.10-0.3×D50(150)≦Ra≦1.25-0.3×D50(150)
Ra+0.3×D50(150)の値は、0.75以上1.56以下であることが好ましく、0.90以上1.45以下であることがより好ましく、1.05以上1.36以下であることがさらに好ましく、1.10以上1.25以下であることが特に好ましい。
【0168】
上記式を満たすことでカブリが抑制される理由は定かではないが、以下のように推測される。
具体的には、前記のように、D1(90)が大きいトナーは、D1(90)が小さいトナーに比べてトナー表面の粘性が高い。また、D5(150)が大きいトナーは、D50(150)が小さいトナーに比べてトナー内部の粘性が高い。そのため、算術平均粗さRaが小さい磁性粒子を含むキャリアと組み合わせることで、キャリアの表面における凹凸がトナーに食い込みすぎることが抑制される。そして、キャリア表面の凹凸がトナーに食い込みすぎることが抑制されることで、トナーの変形に起因する画像のカブリが抑制されると推測される。
また、D1(90)が小さいトナーは、D1(90)が大きいトナーに比べてトナー表面の弾性が高い。また、D50(150)が小さいトナーは、D50(150)が大きいトナーに比べてトナー内部の弾性が高い。そのため、算術平均粗さRaが大きい磁性粒子を含むキャリアと組み合わせることで、キャリア表面の凹凸がトナーに引っかかりやすくなり、画像のカブリが抑制されると推測される。
【0169】
本実施形態において、磁性粒子の体積平均粒径は、26μm以上34μm以下であることが好ましい。
磁性粒子の体積平均粒径が上記範囲であることにより、上記範囲よりも小さい場合に比べて、現像剤の流動性が良好で、キャリアの表面に対するトナーの引っ掛かり効果が得られやすくなるため、画像のカブリが抑制されると推測される。また、体積平均粒径が上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べて、トナーの変形や劣化が抑えられ、キャリアの表面に対するトナーの引っ掛かり効果が得られやすくなるため、画像のカブリが抑制されると推測される。
磁性粒子の体積平均粒径は、画像のカブリ抑制の観点から、26μm以上34μm以下であることがより好ましく、28μm以上32μm以下であることがさらに好ましい。
【0170】
本実施形態において、磁性粒子のBET比表面積は、0.12m2/g以上0.20m2/g以下であることが好ましい。
磁性粒子のBET比表面積が上記範囲であることにより、上記範囲よりも小さい場合に比べて、キャリア表面の凹凸がトナーに引っかかりやすく、画像のカブリが抑制されると推測される。また、BET比表面積が上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べて、キャリア表面の凹凸がトナーの表面に食い込みすぎることが抑制され、上記食い込みによるトナーの変形に起因する画像のカブリが抑制されると推測される。
磁性粒子の体積平均粒径は、画像のカブリ抑制の観点から、0.14m2/g以上0.19m2/g以下であることがより好ましく、0.15m2/g以上0.18m2/g以下であることがさらに好ましい。
【0171】
磁性粒子の材質としては、キャリアの芯材として用いられる公知のものが適用される。
磁性粒子として、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属の粒子;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物の粒子;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸磁性粒子;樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散樹脂粒子;などが挙げられる。本実施形態において磁性粒子としては、フェライト粒子が好ましい。
【0172】
磁性粒子はSi元素を含んでもよい。特に磁性粒子がフェライト粒子である場合、後述するように、磁性粒子の製造過程においてSiO2等のSi含有成分を添加することで、磁性粒子表面の凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaを前述の範囲に制御しやすくなる。
磁性粒子全体に対するSi元素の含有率としては、例えば0質量%以上1質量%以下の範囲が挙げられ、0.1質量%以上0.5質量%以下の範囲であってもよく、0.1質量%以上0.3質量%以下の範囲であってもよい。
【0173】
磁性粒子はCa元素及びSr元素の少なくとも一方を含んでもよい。特に磁性粒子がフェライト粒子である場合、後述するように、磁性粒子の製造過程においてCaCO3等のCa含有成分及びSrCO3等のSr含有成分からなる群より選択される少なくとも1種を添加することで、磁性粒子表面の凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaを前述の範囲に制御しやすくなる。
磁性粒子全体に対するCa元素の含有率としては、例えば0質量%以上5質量%以下の範囲が挙げられ、0.1質量%以上2質量%以下の範囲であってもよく、0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲であってもよい。
磁性粒子全体に対するSr元素の含有率としては、例えば0質量%以上5質量%以下の範囲が挙げられ、0.1質量%以上2質量%以下の範囲であってもよく、0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲であってもよい。
【0174】
磁性粒子の磁力は、3,000エルステッドの磁場における飽和磁化が、50emu/g以上が好ましく、60emu/g以上がより好ましい。上記飽和磁化の測定は、振動試料型磁気測定装置VSMP10-15(東英工業(株)製)を用いて行う。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大3,000エルステッドまで掃引する。次いで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製する。カーブのデータより、飽和磁化、残留磁化、保持力を求める。
【0175】
磁性粒子の体積電気抵抗(体積抵抗率)は、1×105Ω・cm以上1×109Ω・cm以下が好ましく、1×107Ω・cm以上1×109Ω・cm以下がより好ましい。
磁性粒子の体積電気抵抗(Ω・cm)は以下のように測定する。20cm2の電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象物を1mm以上3mm以下の厚さになるように平坦に載せ、層を形成する。この上に前記20cm2の電極板を載せて層を挟み込む。測定対象物間の空隙をなくすため、層上に配置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから層の厚み(cm)を測定する。層の上下の両電極には、エレクトロメーター及び高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取る。測定環境は、温度20℃、相対湿度50%とする。測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)の計算式は、下記式に示す通りである。
R=E×20/(I-I0)/L
上記式中、Rは測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは層の厚み(cm)をそれぞれ表す。係数20は、電極板の面積(cm2)を表す。
【0176】
また、磁性粒子の体積抵抗値は、特に制限はないが、測定電界24,000V/cm以下の条件で、1×106Ω以上1×108Ω以下であることが好ましい。
【0177】
本実施形態における磁性粒子を製造する方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして製造することができる。
【0178】
磁性粒子の表面性状(すなわち、凹凸平均間隔Sm、表面の算術表面粗さRa、及びBET比表面積等)は、焼成時の温度と酸素濃度である程度調整される。しかし、焼成の主目的は磁性粒子に磁化を持つ構造に変化させることであるとともに、互いに相関する上記Sm,Ra、及びBET比表面積をそれぞれ制御することは難しい。
【0179】
そこで、本実施形態に係るキャリアを構成する磁性粒子は、以下の(A)乃至(E)の組み合わせによって好適に製造することができる。
(A)本焼成前に仮焼成を行う。
(B)更に粉砕し、粉砕粒径を調整したスラリーから造粒を行う。
(C)表面性調整剤としてSiO2等のSi含有成分、SrCO3等のSr含有成分、CaCO3等のCa含有成分などを用いる。
(D)本焼成時の温度、酸素濃度を調整する
(E)本焼成によって得られた磁性粒子を、流動させながら温度を与える(後加熱)。
【0180】
本焼成前に仮焼成を行った後、粉砕して粒径を制御する。目的の粒度を有する粉砕物に造粒し、体積平均粒径を決める。仮焼成後の粉砕粒径によって磁性粒子の基本となる粒界の大きさを制御する。
また、仮焼成前に添加剤としてSiO2、SrCO3、CaCO3等を添加することで、表面の凹凸を制御する。SiO2等のSi含有成分を加えると粒界の面積が広くなりSmが大きくなるように調整できる。SrCO3等のSr含有成分の添加はRaを大きくする作用がある。CaCO3等のCa含有成分の添加はSmを大きくする作用がある。
添加剤は、Si含有成分と、Sr含有成分及びCa含有成分からなる群より選択される少なくとも1種と、を併用してもよい。Si含有成分の添加量によ磁性粒子の表面性状を大まかに制御しつつ、Sr含有成分及びCa含有成分からなる群より選択される少なくとも1種の添加により磁性粒子の表面性状を微調整してもよい。
【0181】
次に本焼成を行い、焼成温度と酸素濃度を調整し、磁化を合わせフェライトとする。本焼成における焼成温度と酸素濃度によって粒界全体の大きさを調整する。本焼成における焼成温度が高いとSmが大きく、酸素濃度が高いとRaが大きくなりやすい。また、本焼成における焼成温度、酸素濃度は抵抗及び磁化に強く影響する。温度が高く酸素濃度が低い程、磁化が高く抵抗が低くなる。
【0182】
本焼成を終了してフェライト化が行われた後に、フェライト化反応が生じない程度の温度で内部空隙を減らす(後加熱)。これにより、目的の磁性粒子が得られる。流動させながら温度を掛けると、粒界間の隙間が小さくなるためSm、Raにあまり変化なくBET比表面積を下げることができる。
【0183】
以下に、具体的な材料、条件を示して本実施形態に係る磁性粒子の製造方法の一例を説明するが、本実施形態に係る磁性粒子は以下に記載する材料や数値に限定されるものではない。
【0184】
例えば、Fe2O3、Mn(OH)2、Mg(OH)2をそれぞれモル比で2:0.8:0.2になるように混合し、SiO2を全体の0.1質量%加え、更に混合する。
次に、分散剤と水とを加えメディア径1mmのジルコニアビーズで混合粉砕を行う。水分を乾燥した後、900℃の温度のもと仮焼成を行う。
仮焼成の温度としては、上記温度に限定されず、例えば800℃以上1200℃以下の範囲が挙げられる。また、仮焼成の時間としては、例えば60分以上180分以下の範囲が挙げられる。
【0185】
上記仮焼成物を、分散剤、水、結着樹脂としてのポリビニルアルコールとともに、湿式ボールミルで混合粉砕を行う。粉砕粒径が体積平均粒径で1.2μmとなったところで粉砕を止める。
次に、スプレードライヤーで体積平均粒径28μmの粒子になるように造粒、乾燥を行う。
乾燥粒子を電気炉で1240℃とし、酸素と窒素の混合気体の中、酸素濃度が1%になるように調整しながら本焼成を行う。
本焼成の温度としては、上記温度に限定されず、例えば1200℃以上1500℃以下の範囲が挙げられる。本焼成における酸素濃度としては、上記濃度に限定されず、例えば0.1%以上5%以下の範囲が挙げられる。また、本焼成の時間としては、例えば60分以上300分以下の範囲が挙げられる。
【0186】
本焼成後、解砕工程、分級工程を経て、体積平均粒径35μmのフェライト粒子を得る。更に、ロータリーキルンで15ppmの条件のもと900℃で後加熱する。
本焼成後の後加熱の温度としては、上記温度に限定されず、例えば500℃以上1000℃以下の範囲が挙げられる。また、本焼成後の後加熱の時間としては、例えば30分以上120分以下の範囲が挙げられる。
出来上がった粒子を再び解砕工程、分級工程、を経た後、26μmの目的の磁性粒子が得られる。
【0187】
(樹脂層)
樹脂層は、磁性粒子の表面に付着し、樹脂を含む層である。樹脂層は、磁性粒子の表面における少なくとも一部を被覆する層であってもよい。以下、樹脂層を「樹脂被覆層」ともいう。
【0188】
樹脂被覆層を構成する樹脂としては、スチレン・アクリル酸共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性物;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂;などが挙げられる。
中でも、樹脂被覆層を構成する樹脂は、帯電性、及び外添剤付着制御性の観点から、アクリル樹脂を含むことが好ましく、アクリル樹脂を、樹脂被覆層中の樹脂の全質量に対し、50質量%以上含むことがより好ましく、アクリル樹脂を、樹脂被覆層中の樹脂の全質量に対し、80質量%以上含むことが特に好ましい。
【0189】
樹脂被覆層は、温湿度に対する帯電変動抑制の観点から、脂環構造を有するアクリル樹脂を含有することが好ましい。脂環構造を有するアクリル樹脂の重合成分としては、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数が1以上9以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
脂環構造を有するアクリル樹脂は、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。脂環構造を有するアクリル樹脂に含まれるシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位の含有量は、脂環構造を有するアクリル樹脂の全質量に対して、75質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上100質量%以下がより好ましく、95質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
【0190】
樹脂被覆層に含まれる樹脂の重量平均分子量は、30万未満であることが好ましく、25万未満であることがより好ましく、5,000以上25万未満であることが更に好ましく、1万以上20万以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、磁性粒子への濡れが好適であり、膜厚の均一な樹脂被覆層が得られるという利点がある。
【0191】
樹脂被覆層には、帯電や抵抗を制御する目的で、導電性粒子が含まれていてもよい。導電性粒子としては、例えば、カーボンブラックのほか、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子などが挙げられる。
【0192】
樹脂被覆層を磁性粒子表面に形成する方法としては、例えば、湿式製法及び乾式製法が挙げられる。湿式製法は、樹脂被覆層を構成する樹脂を溶解又は分散させる溶剤を用いる製法である。一方、乾式製法は、上記溶剤を用いない製法である。
【0193】
湿式製法としては、例えば、磁性粒子を樹脂被覆層形成用樹脂液中に浸漬して被覆する浸漬法;樹脂被覆層形成用樹脂液を磁性粒子表面に噴霧するスプレー法;磁性粒子を流動床中に流動化させた状態で樹脂被覆層形成用樹脂液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中で磁性粒子と樹脂被覆層形成用樹脂液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法;などが挙げられる。これらの製法を繰り返したり、組み合わせたりしてもよい。
湿式製法において用いられる樹脂被覆層形成用樹脂液は、樹脂及びその他の成分を溶剤に溶解又は分散させて調製する。溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;などが使用される。
【0194】
乾式製法としては、例えば、磁性粒子と樹脂被覆層形成用樹脂の混合物を乾燥状態で加熱して樹脂被覆層を形成する方法が挙げられる。具体的には例えば、磁性粒子と樹脂被覆層形成用樹脂とを気相中で混合して加熱溶融し、樹脂被覆層を形成する。
【0195】
樹脂被覆層の平均厚さは、温湿度に対する抵抗変化抑制の観点から、0.6μm以上1.4μm以下であることが好ましく、0.8μm以上1.2μm以下であることがより好ましく、0.8μm以上1.1μm以下であることが特に好ましい。
樹脂被覆層の平均厚さは、下記の方法により求める。
キャリアをエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームで切削し、キャリア断面を作製する。キャリア断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)により撮影したSEM画像を、画像処理解析装置に取り込み画像解析を行う。キャリア1粒子あたり10箇所を無作為に選んで樹脂被覆層の厚さ(μm)を測定し、更にキャリア100個について測定し、すべてを算術平均し、これを樹脂被覆層の平均厚さ(μm)とする。
【0196】
(キャリアの特性)
キャリアの体積平均粒径は、現像剤の流動性の観点から、25μm以上36μm以下が好ましく、26μm以上35μm以下がより好ましく、28μm以上34μm以下が特に好ましい。
【0197】
キャリア表面における磁性粒子の露出面積率は、4%以上20%以下であることが好ましく、5%以上18%以下であることがより好ましく、8%以上12%以下であることが更に好ましい。キャリア表面における磁性粒子の露出面積率が上記範囲であることにより、上記範囲より低い場合に比べて画像のカブリが抑制される。その理由は定かではないが、トナーの電荷がリークしにくいためと推測される。また、キャリア表面における磁性粒子の露出面積率が上記範囲であることにより、上記範囲より高い場合に比べて画像のカブリが抑制される。その理由は定かではないが、現像剤の流動性が良好であるためと推測される。
キャリアにおける磁性粒子の露出面積率は、樹脂被覆層の形成に用いる樹脂の量で制御でき、磁性粒子の量に対する樹脂の量が多いほど露出面積率は小さくなる。
なお、磁性粒子100質量部に対する樹脂被覆層の含有量は、1.5質量部以上5質量部以下の範囲が好ましく、2質量部以上4質量部以下の範囲がより好ましく、2.5質量部以上3.5質量部以下の範囲がさらに好ましい。
【0198】
キャリア表面における磁性粒子の露出面積率は、以下の方法で求める値である。
対象となるキャリアと、対象となるキャリアから樹脂被覆層を除いた磁性粒子とを用意する。キャリアから樹脂被覆層を除く方法としては、例えば、有機溶剤で樹脂成分を溶解させて樹脂被覆層を除去する方法、800℃程度の加熱により樹脂成分を消失させて樹脂被覆層を除去する方法などが挙げられる。キャリアと磁性粒子とをそれぞれ測定試料にして、XPSにより試料表面のFe濃度(atomic%)を定量し、(キャリアのFe濃度)÷(磁性粒子のFe濃度)×100を算出し、磁性粒子の露出面積率(%)とする。
【0199】
<トナーとキャリアとの混合比>
現像装置に収容される現像剤である初期充填現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)は、例えば、キャリア100質量部に対し、トナーが1質量部以上30質量部以下の範囲が挙げられる。
また、現像剤カートリッジに収容され現像装置に補給される現像剤である補給用現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)は、例えば、トナー100質量部に対し、キャリアが0質量部超え20質量部以下の範囲が挙げられる。
【0200】
<現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法>
以下、前述の現像剤を用いた現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る現像剤カートリッジは、前述の現像剤を補給用現像剤として収容し、画像形成装置に着脱されるものであれば、特に限定されるものではない。
【0201】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、前述の現像剤を補給用現像剤として収容した現像剤カートリッジを含む第1のプロセスカートリッジでもよく、前述の現像剤を初期充填現像剤として収容した現像装置を含む第2のプロセスカートリッジでもよい。
第1のプロセスカートリッジとしては、前述の現像剤を補給用現像剤として収容した現像剤カートリッジと、現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む現像剤を収容し、現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジが挙げられる。
第2のプロセスカートリッジとしては、前述の現像剤を初期充填現像剤として収容し、現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジが挙げられる。
【0202】
本実施形態に係る画像形成装置は、前述の現像剤を補給用現像剤として収容した現像剤カートリッジを含む第1の画像形成装置でもよく、前述の現像剤を初期充填現像剤として収容した現像装置を含む第2の画像形成装置でもよい。
第1の画像形成装置としては、前述の現像剤を補給用現像剤として収容した現像剤カートリッジと、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む現像剤を収容し、現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、を備える画像形成装置が挙げられる。
第2の画像形成装置としては、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、前述の現像剤を初期充填現像剤として収容し、現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、を備える画像形成装置が挙げられる。
【0203】
本実施形態に係る画像形成方法は、前述の現像剤を補給用現像剤として用いた第1の画像形成方法でもよく、前述の現像剤を初期充填現像剤として用いた第2の画像形成方法でもよい。
第1の画像形成方法としては、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、現像剤カートリッジから補給された前述の現像剤である補給用現像剤を含む現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法が挙げられる。
第2の画像形成方法としては、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、現像装置に収容された前述の現像剤である初期充填現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法が挙げられる。
【0204】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0205】
(第1の画像形成装置及び第1の画像形成方法)
第1の画像形成装置及び第1の画像形成方法の一例について、図を用いて説明する。
図1に示す画像形成装置は、現像剤カートリッジに補給用現像剤として収容された前述の現像剤を、現像剤供給手段により現像装置における現像剤収容容器へ供給すると共に、現像剤収容容器に収容されている現像剤の少なくとも一部を、現像剤排出手段により排出する、トリクル現像方式を採用した構成となっている。
なお、
図1に示す画像形成装置は、像保持体の表面に残留した残留トナーをクリーニング装置により回収し、現像装置に戻して再利用するリクレーム方式を採用した構成となっている。
【0206】
画像形成装置100は、
図1において矢印aで示す時計回り方向に回転する像保持体110と、像保持体110の上方に、像保持体110に相対して設けられ、像保持体110の表面を負に帯電させる帯電装置120と、帯電装置120により帯電した像保持体110の表面に、現像剤(トナー)で形成しようとする画像を書き込んで静電荷像を形成する静電荷像形成装置130と、静電荷像形成装置130の下流側に設けられ、静電荷像形成装置130で形成された静電荷像にトナーを付着させて像保持体110の表面にトナー像を形成する現像装置140と、像保持体110に接触しつつ矢印bで示す方向に走行するとともに、像保持体110の表面に形成されたトナー像を転写する無端ベルト状の中間転写ベルト150と、中間転写ベルト150にトナー像を転写した後の像保持体110の表面を除電して、表面に残った残留トナーを除去し易くする除電装置160と、残留トナー回収手段として像保持体110の表面の残留トナーを除去し、回収するクリーニング装置170と、クリーニング装置170により除去され、回収された残留トナーを搬送して現像装置140へ供給する残留トナー搬送手段174と、を備える。
【0207】
帯電装置120、静電荷像形成装置130、現像装置140、中間転写ベルト150、除電装置160、及びクリーニング装置170は、像保持体110を囲む円周上に、時計回り方向に配置されている。
【0208】
中間転写ベルト150は、内側から、支持ロール150A、150B、背面ロール150C、及び駆動ロール150Dによって張力が掛かった状態で保持されるとともに、駆動ロール150Dの回転に伴い矢印bの方向に駆動される。中間転写ベルト150の内側における像保持体110に相対する位置には、中間転写ベルト150を正に帯電させて中間転写ベルト150の外側の面に像保持体110上のトナーを吸着させる1次転写ロール151が設けられている。中間転写ベルト150の下方における外側には、記録紙Pを正に帯電させて中間転写ベルト150に押圧することにより、中間転写ベルト150に形成されたトナー像を記録紙P上に転写する2次転写ロール152が背面ロール150Cに対向して設けられている。
【0209】
中間転写ベルト150の下方には、さらに、2次転写ロール152に記録紙Pを供給する記録媒体供給装置153と、2次転写ロール152においてトナー像が形成された記録紙Pを搬送しつつ、前記トナー像を定着させる定着装置180とが設けられている。
【0210】
記録媒体供給装置153は、1対の搬送ロール153Aと、搬送ロール153Aで搬送される記録紙Pを2次転写ロール152に向かって誘導する誘導スロープ153Bと、を備える。一方、定着装置180は、2次転写ロール152によってトナー像が転写された記録紙Pを加熱・押圧することにより、前記トナー像の定着を行う1対の熱ロールである定着ロール181と、定着ロール181に向かって記録紙Pを搬送する搬送コンベア182とを有する。
【0211】
記録紙Pは、記録媒体供給装置153と2次転写ロール152と定着装置180とにより、矢印cで示す方向に搬送される。
【0212】
中間転写ベルト150を挟んで駆動ロール150Dに対向配置されるように、2次転写ロール152において記録紙Pにトナー像を転写した後に中間転写ベルト150に残ったトナーを除去するクリーニングブレードを有する中間転写体クリーニング装置154が設けられている。
【0213】
以下、現像装置140について詳細に説明する。現像装置140は、現像領域で像保持体110に対向して配置されており、例えば、負(-)極性に帯電するトナー及び正(+)極性に帯電するキャリアを含む2成分現像剤を収容する現像剤収容容器141を有している。現像剤収容容器141は、現像剤収容容器本体141Aとその上端を塞ぐ現像剤収容容器カバー141Bとを有している。
【0214】
現像剤収容容器本体141Aはその内側に、現像ロール142を収容する現像ロール室142Aを有しており、現像ロール室142Aに隣接して、第1撹拌室143Aと第1撹拌室143Aに隣接する第2撹拌室144Aとを有している。また、現像ロール室142A内には、現像剤収容容器カバー141Bが現像剤収容容器本体141Aに装着された時点で、現像ロール142表面の現像剤の層厚を規制するための層厚規制部材145が設けられている。
【0215】
第1撹拌室143Aと第2撹拌室144Aとは仕切り壁141Cにより仕切られており、図示しないが、第1撹拌室143A及び第2撹拌室144Aは仕切り壁141Cの長手方向(現像装置長手方向)両端部で通じており、第1撹拌室143A及び第2撹拌室144Aによって循環撹拌室(143A+144A)を構成している。
【0216】
そして、現像ロール室142Aには、像保持体110と対向するように現像ロール142が配置されている。現像ロール142は、図示しないが磁性を有する磁性ロール(固定磁石)の外側にスリーブを設けたものである。第1撹拌室143Aの現像剤は磁性ロールの磁力によって現像ロール142の表面上に吸着されて、現像領域に搬送される。また、現像ロール142はそのロール軸が現像剤収容容器本体141Aに回転自由に支持されている。ここで、現像ロール142と像保持体110とは、逆方向に回転し、対向部において、現像ロール142の表面上に吸着された現像剤は、像保持体110の進行方向と同方向から現像領域に搬送するようにしている。
【0217】
また、現像ロール142のスリーブには、不図示のバイアス電源が接続され、予め定めた現像バイアスが印加されるようになっている(本実施形態では、現像領域に交番電界が印加されるように、直流成分(DC)に交流成分(AC)を重畳したバイアスを印加)。
【0218】
第1撹拌室143A及び第2撹拌室144Aには現像剤を撹拌しながら搬送する第1撹拌部材143(撹拌・搬送部材)及び第2撹拌部材144(撹拌・搬送部材)が配置されている。第1撹拌部材143は、現像ロール142の軸方向に伸びる第1回転軸と、回転軸の外周に螺旋状に固定された撹拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。また、第2撹拌部材144も、同様に、第2回転軸及び撹拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。なお、撹拌部材は現像剤収容容器本体141Aに回転自由に支持されている。そして、第1撹拌部材143及び第2撹拌部材144は、その回転によって、第1撹拌室143A及び第2撹拌室144Aの中の現像剤は互いに逆方向に搬送されるように配置されている。
【0219】
第2撹拌室144Aの長手方向一端側には、補給用現像剤を第2撹拌室144Aへ供給するための現像剤供給手段146の一端が連結されており、現像剤供給手段146の他端には、補給用現像剤を収容している現像剤カートリッジ147が連結されている。また、第2撹拌室144Aの長手方向一端側には、収容している現像剤を排出するための現像剤排出手段148の一端も連結されており、現像剤排出手段148の他端には図示しないが排出した現像剤を回収する現像剤回収容器と連結されている。
【0220】
このように現像装置140は、現像剤カートリッジ147から現像剤供給手段146を経て補給用現像剤を現像装置140(第2撹拌室144A)へ供給し、古くなった現像剤を現像剤排出手段148から排出する、所謂トリクル現像方式を採用している。トリクル現像方式は、具体的には、現像剤の帯電性能の低下を抑制して現像剤交換の期間を延ばすために、現像装置内に補給用現像剤(トリクル現像剤)を徐々に供給する一方で、過剰になった(劣化したキャリアを多く含む)劣化現像剤を排出しながら現像を行う現像方式である。
【0221】
次に、クリーニング装置170について詳細に説明する。クリーニング装置170は、ハウジング171と、ハウジング171から突出するように配置されるクリーニングブレード172を含んで構成されている。クリーニングブレード172は、像保持体110の回転軸の軸方向に延びる板状のものであって、像保持体110における1次転写ロール151による転写位置より回転方向(矢印a方向)下流側で且つ、除電装置160によって除電される位置より回転方向下流側に、先端部(エッジ部)が接触するように設けられている。
【0222】
クリーニングブレード172は、像保持体110が矢印a方向に回転することによって、1次転写ロール151により中間転写ベルト150に転写されずに像保持体110上に付着している残留トナー等の異物を、堰き止めて像保持体110から除去する。
【0223】
また、ハウジング171内の底部には、搬送部材173が配置されており、ハウジング171における搬送部材173の搬送方向下流側にはクリーニングブレード172により除去され、回収された残留トナー(現像剤)を搬送して現像装置140へ供給するための残留トナー搬送手段174の一端が連結されている。残留トナー搬送手段174の他端は現像剤供給手段146へ合流するように連結されている。
【0224】
このようにクリーニング装置170は、ハウジング171の底部に設けられた搬送部材173の回転に伴い、残留トナー搬送手段174を通じて残留トナーを現像装置140(第2撹拌室144A)へと搬送し、像保持体110の表面から回収された残留トナーは現像装置140に収容されている現像剤(トナー)とともに撹拌搬送されて再利用される。
【0225】
なお、本実施形態に係るリクレーム方式の画像形成装置において、例えば、現像剤カートリッジを含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(第1のプロセスカートリッジ)であってもよい。例えば、前述の現像剤を補給用現像剤として収容した現像剤カートリッジと、現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む現像剤を収容し、現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、現像剤カートリッジに収容された補給用現像剤を現像装置に供給する現像剤供給手段と、現像装置に収容された現像剤の一部を排出する現像剤排出手段と、を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0226】
(第2の画像形成装置及び第2の画像形成方法)
第2の画像形成装置及び第2の画像形成方法の一例について、図を用いて説明する。
図2に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0227】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0228】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0229】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電装置の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成装置の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写装置の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング装置の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0230】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0231】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0232】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0233】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0234】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0235】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写装置の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0236】
この後、記録紙Pは定着装置28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0237】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0238】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【実施例0239】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0240】
[特定樹脂粒子分散液の調製]
<特定樹脂粒子分散液1の調製>
・スチレン :47.9部
・アクリル酸n-ブチル :51.8部
・アクリル酸2-カルボキシエチル : 0.3部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1): 0.8部
・1,10-デカンジオールジアクリレート :1.65部
上記原料を混合溶解し、イオン交換水60部を加えてフラスコ中で分散、乳化し、乳化液を作製した。
続いて、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1)1.3部を
イオン交換水90部に溶解させ、その中に前記乳化液1部を加え、さらに、過硫酸アンモニウム5.4部を溶解したイオン交換水10部を投入した。
その後、乳化液の残りを180分間かけて投入し、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内の溶液を撹拌しながらオイルバスで65℃になるまで加熱し、500分間そのまま乳化重合を継続した後、固形分を24.5質量%に調整した特定樹脂粒子分散液1を得た。
得られた特定樹脂粒子分散液1に含まれる樹脂粒子について、前述の方法により求めた結果はそれぞれ以下の通りである。
動的粘弾性測定から求められるガラス転移温度Tg:32.1℃
貯蔵弾性率G’(p90-150)の最小値:2.6×105Pa
貯蔵弾性率G’(p90-150)の最大値:5.1×105Pa
30℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδの最小値:0.028
30℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδの最大値:2.35
65℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδの最小値:0.028
65℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδの最大値:0.203
個数平均粒径:153nm
SP値(S):9.07
【0241】
<特定樹脂粒子分散液2の調製>
スチレンの添加量を54.5部に、アクリル酸n-ブチルの添加量を44.6部に、アクリル酸2-カルボキシエチルの添加量を0.84部に、アニオン性界面活性剤の総添加量を1.26部にした以外は、特定樹脂粒子分散液1と同様にして、特定樹脂粒子分散液2を得た。
得られた特定樹脂粒子分散液2に含まれる樹脂粒子について、前述の方法により求めた結果はそれぞれ以下の通りである。
動的粘弾性測定から求められるガラス転移温度Tg:44.3℃
貯蔵弾性率G’(p90-150)の最小値:3.8×105Pa
貯蔵弾性率G’(p90-150)の最大値:5.9×105Pa
30℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδの最小値:0.028
30℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδの最大値:2.41
65℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδの最小値:0.028
65℃以上150℃以下の範囲における損失正接tanδの最大値:0.411
個数平均粒径:163nm
SP値(S):9.09
【0242】
[トナーの調製]
<非晶性樹脂粒子分散液1の調製>
・テレフタル酸 :28部
・フマル酸 :164部
・アジピン酸 :10部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 :26部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:542部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えた反応容器に上記の材料を仕込み、1時間かけて温度を190℃まで上げ、上記材料100部に対してジブチル錫オキサイド1.2部を投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて温度を240℃まで上げ、240℃を維持して3時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。
【0243】
反応物を溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)に毎分100gの速度で移送した。同時に、別途用意した濃度0.37質量%のアンモニア水を、熱交換器で120℃に加熱しながら、毎分0.1リットルの速度でキャビトロンCD1010に移送した。回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件でキャビトロンCD1010を運転し、体積平均粒径169nmの非晶性ポリエステル樹脂の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を得た。該樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整して、非晶性樹脂粒子分散液1とした。
得られた非晶性ポリエステル樹脂のSP値(R)は9.41であった。
【0244】
<結晶性樹脂粒子分散液の調製>
・1,10-ドデカン二酸 :225部
・1,6-ヘキサンジオール :143部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えた反応容器に上記の材料を仕込み、1時間かけて温度を160℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド0.8質量部を投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて温度を180℃まで上げ、180℃を維持して5時間脱水縮合反応を継続した。その後、減圧下において230℃まで徐々に温度を上げ、230℃を維持して2時間撹拌を行った。その後、反応物を冷却した。冷却後、固液分離を行い、固形物を乾燥させ、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0245】
・結晶性ポリエステル樹脂 : 100部
・メチルエチルケトン : 40部
・イソプロピルアルコール : 30部
・10%アンモニア水溶液 : 6部
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械社製:BJ-30N)に、上記の材料を加え、水循環式恒温槽にて80℃に維持しながら、100rpmで撹拌混合しつつ樹脂を溶解させた。その後、水循環式恒温槽を50℃に設定し、50℃に保温されたイオン交換水を7質量部/分の速度で、合計400部滴下し転相させて、乳化液を得た。得られた乳化液576質量部とイオン交換水500質量部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械社製)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径D50vは185nmであった。その後、イオン交換水を加えて、固形分濃度が22.1質量%の結晶性樹脂粒子分散液を得た。
【0246】
<着色剤分散液の調製>
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)) : 98部
・アニオン界面活性剤(テイカ(株)製TaycaPower): 2部
・イオン交換水 :420部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径164nm、固形分量21.1質量%の着色剤分散液を得た。
【0247】
<離型剤分散液の調製>
・合成ワックス(日本精蝋社製、FNP92、融解温度Tw:92℃) : 50部
・アニオン性界面活性剤(テイカ(株)製TaycaPower) : 1部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を混合して130℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、離型剤粒子が分散された離型剤分散液(固形分量20質量%)を得た。離型剤粒子の体積平均粒径は214nmであった。
【0248】
<トナー1の調製>
・非晶性樹脂粒子分散液1 : 169部
・特定樹脂粒子分散液1 : 33部
・結晶性樹脂粒子分散液 : 53部
・離型剤分散液 : 25部
・着色剤分散液 : 33部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1): 4.8部
液温を10℃に調整した上記原料を3Lの円筒ステンレス容器に入れ、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)により4000rpmでせん断力を加えながら2分間分散して混合した。
次いで、凝集剤として硫酸アルミニウムの10%硝酸水溶液1.75部を徐々に滴下して、ホモジナイザーの回転数を10000rpmにして10分間分散して混合し、原料分散液とした。
【0249】
その後、2枚パドルの撹拌翼を用いた撹拌装置、および温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、撹拌回転数を550rpmにしてマントルヒーターにて加熱し始め、40℃にて凝集粒子の成長を促進させた。またこの際、0.3Mの硝酸及び1Mの水酸化ナトリウム水溶液で原料分散液のpHを2.2から3.5の範囲に制御した。上記pH範囲で2時間ほど保持し、凝集粒子を形成した。
次に、非晶性樹脂粒子分散液1:21部と特定樹脂粒子分散液1:8部とを混合した分散液を追添加し、60分間保持し、前記凝集粒子の表面に結着樹脂の樹脂粒子及び特定樹脂粒子を付着させた。さらに53℃に昇温し、次に、非晶性樹脂粒子分散液1:21部を追添加し、60分間保持し、前記凝集粒子の表面に結着樹脂の樹脂粒子を付着させた。
【0250】
光学顕微鏡及びマルチサイザー3で粒子の大きさ及び形態を確認しながら凝集粒子を整えた。その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.8に調整し、15分間保持した。
その後、凝集粒子を融合させるためにpHを8.0に上げた後、85℃まで昇温させた。光学顕微鏡で凝集粒子が融合したのを確認した後、2時間後に加熱を止め、1.0℃/分の降温速度で冷却した。その後20μmメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、真空乾燥機で乾燥して、体積平均粒径が5.3μmである、トナー粒子1を得た。
【0251】
得られたトナー粒子100部とジメチルシリコーンオイル処理シリカ粒子(日本アエロジル社製RY200)0.7部とを、ヘンシェルミキサーにより混合し、トナー1を得た。
【0252】
<トナー2の調製>
特定樹脂粒子分散液1の代わりに、表1に示す種類の特定樹脂粒子分散液を、トナー粒子全体に対する樹脂粒子(すなわち、特定樹脂粒子)の含有率が表1に示す値となる量で用いた以外は、トナー1と同様にして、トナー2を得た。
【0253】
<トナー3の調製>
特定樹脂粒子分散液1を、トナー粒子全体に対する特定樹脂粒子の含有率が表1に示す値となる量で用い、かつ、結着樹脂全体に対する結晶性樹脂の含有率が表1に示す値となるように結晶性樹脂粒子分散液の添加量を調整した以外は、トナー1と同様にして、トナー3を得た。
【0254】
<トナー4の調製>
ホモジナイザーの回転数を10000rpmから5000rpmに変更した以外は、トナー1と同様にして、トナー4を得た。
【0255】
<トナー5の調製>
特定樹脂粒子分散液1を、トナー粒子全体に対する特定樹脂粒子の含有率が表1に示す値となる量で用い、かつ、凝集粒子の融合時のpHを8.0から6.0に変更した以外は、トナー1と同様にして、トナー5を得た。
【0256】
<トナー6の調製>
凝集粒子の融合時のpHを8.0から6.5に、昇温後の温度を85℃から75℃に変更し、75℃到達時にアニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1)を5.2部添加した以外は、トナー1と同様にして、トナー6を得た。
【0257】
<トナーC1の調製>
・非晶性樹脂粒子分散液1 : 169部
・特定樹脂粒子分散液1 : 41部
・結晶性樹脂粒子分散液 : 53部
・離型剤分散液 : 25部
・着色剤分散液 : 33部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1): 4.8部
液温を30℃に調整した上記原料を3Lの円筒ステンレス容器に入れ、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)により4000rpmでせん断力を加えながら2分間分散して混合した。
次いで、凝集剤として硫酸アルミニウムの10%硝酸水溶液1.75部を徐々に滴下して、ホモジナイザーの回転数を4000rpmにして3分間分散して混合し、原料分散液とした。
【0258】
その後、2枚パドルの撹拌翼を用いた撹拌装置、および温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、撹拌回転数を550rpmにしてマントルヒーターにて加熱し始め、40℃にて凝集粒子の成長を促進させた。またこの際、0.3Mの硝酸及び1Mの水酸化ナトリウム水溶液で原料分散液のpHを2.2から3.5の範囲に制御した。上記pH範囲で2時間ほど保持し、凝集粒子を形成した。
次に、非晶性樹脂粒子分散液1:42部を追添加し、60分間保持し、前記凝集粒子の表面に結着樹脂の樹脂粒子を付着させた。
【0259】
光学顕微鏡及びマルチサイザー3で粒子の大きさ及び形態を確認しながら凝集粒子を整えた。その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.8に調整し、15分間保持した。
その後、凝集粒子を融合させるためにpHを8.0に上げた後、85℃まで昇温させた。光学顕微鏡で凝集粒子が融合したのを確認した後、2時間後に加熱を止め、1.0℃/分の降温速度で冷却した。その後20μmメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、真空乾燥機で乾燥してトナー粒子C1を得た。
【0260】
得られたトナー粒子100部とジメチルシリコーンオイル処理シリカ粒子(日本アエロジル社製RY200)0.7部とを、ヘンシェルミキサーにより混合し、トナーC1を得た。
【0261】
得られたトナーにおける、特定樹脂粒子分散液の種類(表中の「粒子 種類」)、トナー粒子全体に対する特定樹脂粒子の含有率(表中の「粒子 含有率(%)」)、及び結着樹脂全体に対する結晶性樹脂の含有率(表中の「結晶性樹脂 含有率(%)」)を表1に示す。
また、得られたトナーにおける、特定樹脂粒子の含有量に対する結晶性樹脂の含有量の比率(表中の「結晶性含有比vs粒子」)及び特定樹脂粒子の含有量に対する非晶性樹脂の含有量の比率(表中の「非晶性含有比vs粒子」)を併せて表1に示す。
また、得られたトナーにおける、トナー粒子の体積平均粒径を併せて表1に示す。
【0262】
また、除外成分の30℃以上50℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’(表中の「30-50℃ G’(Pa)」)、除外成分の特定弾性率到達温度(表中の「到達温度(℃)」)、及び特定弾性率到達温度における損失正接tanδ(表中の「到達温度tanδ」)を前述の方法で求めた結果を併せて表1に示す。
また、得られたトナーにおける、D1(90)、D50(90)、D1(150)、D50(150)、D50(150)-D1(150)の値(表中の「差(150)」)、D50(90)-D1(90)の値(表中の「差(90)」)、トナー粒子中のTHF可溶分の数平均分子量(表中の「Mn」)、30℃以上50℃以下の範囲における貯蔵弾性率G’(表中の「30-50 G’(Pa)」)、特定弾性率到達温度(表中の「到達温度(℃)」)、logG’(t90-150)-logG’(r90-150)の値(表中の「粘弾差」)、及び差(SP値(S)-SP値(R))(表中の「SP値差」)を、前述の方法により求めた結果を併せて表2に示す。
【0263】
【0264】
【0265】
[キャリアの作製]
<磁性粒子1の作製>
Fe2O3、Mn(OH)2、Mg(OH)2、SiO2、SrCO3、及びCaCO3を表3に示す添加量で混合し、分散剤、水、及びメディア径1mmのジルコニアビーズを加え、サンドミルで解砕混合した。ジルコニアビーズをろ過、乾燥後、更にロータリーキルンで20rpm、900℃の条件で仮焼成を行い、混合酸化物とした。
次に、分散剤、水を加え、更にポリビニルアルコールを6.6質量部加え、湿式ボールミルで体積平均粒径(つまり、スラリー粉砕の解砕粒径)が表3に示す値になるまで粉砕を行った。次に、スプレードライヤーで乾燥粒径が表3に示す値になるように造粒、乾燥させた。更に、電気炉で温度1220℃、酸素濃度1%の酸素窒素混合雰囲気のもとで5時間の本焼成を行った。得られた粒子の解砕工程、分級工程を経た後、ロータリーキルンで15rpm、900℃の条件で2時間加熱し、同様に分級工程を経て磁性粒子1を得た
得られた磁性粒子1の凹凸平均間隔Sm、算術平均粗さRa、体積平均粒径(表中の「粒径」)、及びBET比表面積(表中の「BET」)を表4に示す。
【0266】
<磁性粒子2乃至12及びC1乃至C4の作製>
表3の組成及び反応条件に変更した以外は、磁性粒子1と同様にして、磁性粒子2乃至12及びC1乃至C4をそれぞれ作製した。得られた磁性粒子2乃至12及びC1乃至C4の凹凸平均間隔Sm、算術平均粗さRa、体積平均粒径(表中の「粒径」)、及びBET比表面積(表中の「BET」)をそれぞれ表4に示す。
【0267】
【0268】
<コート剤の調製>
シクロヘキシルメタクリレート(重量平均分子量:5万):30部
カーボンブラック(キャボット社製VXC72):0.5部
トルエン:250部
イソプロピルアルコール:50部
上記の材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とをサンドミルに投入し、回転速度190rpmで30分間撹拌し、固形分9質量%のコート剤を得た。
【0269】
<キャリア1乃至14及びC1乃至C4の作製>
表4に示す磁性粒子を1,000部と、上記コート剤を表4に示す量と、をニーダーに投入し、室温(25℃)で20分間混合した。次いで、70℃に加熱し且つ減圧して乾燥した。
次いで、乾燥物をニーダーから取り出し、目開き75μmのメッシュで篩い粗粉を除去して、キャリア1乃至14及びC1乃至C4を得た。得られたキャリアにおける樹脂層の平均厚さ及び磁性粒子の露出面積率を併せて表4に示す。
【0270】
【0271】
[現像剤の作製及び評価]
<光沢度差>
表5に示すトナー8部と、表5に示すキャリア100部と、を混合して、初期充填現像剤を得た。得られた現像剤における、Sm-D1(90)の値、Ra+0.3×D1(90)の値、及びRa+0.3×D50(150)の値を併せて表5に示す。
【0272】
定着器を取り出したカラー複写機ApeosPortIV C3370(富士フイルムビジネスイノベーション(株)社製)の現像器に得られた初期充填現像剤を充填し、トナー載り量が0.45mg/cm2となるように調整して未定着画像を出力した。記録媒体としては富士フイルムビジネスイノベーション(株)社製のOSコートW紙A4サイズ(坪量127gsm)を用いた。出力画像は50mm×50mm大の画像密度100%となる画像である。
【0273】
定着評価用装置としては、富士フイルムビジネスイノベーション(株)社製ApeosPortIV C3370の定着器を取り外し、ニップ圧力及び定着温度が変更できるように改造したものを使用した。プロセス速度は175mm/secであった。
この条件で前記未定着画像を、低温低圧条件下(具体的には、定着器の温度120度、ニップ圧力1.6kgf/cm2)と、高温高圧条件下(具体的には、定着器の温度180度、ニップ圧力6.0kgf/cm2)と、の2条件で定着し、定着画像を得た。定着画像部分の光沢度をBYK社製の光沢計マイクロトリグロスを使用し、60°グロスにより測定し、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差(すなわち、光沢度条件差)を求めた。結果を表5に示す。
なお、光沢度差が5未満では光沢度差の視認が困難であり、光沢度差が5以上10未満では光沢度差を視認できるが軽微であり、光沢度差が10以上15未満では光沢度差が見られるが許容範囲であり、光沢度差が15以上では光沢度差が大きく許容範囲外である。
【0274】
<カブリ>
表5に示すトナー300部と、表5に示すキャリア60部と、を混合して、補給用現像剤を得た。なお、得られた現像剤における、Sm-D1(90)の値、Ra+0.3×D1(90)の値、及びRa+0.3×D50(150)の値は、表5に示す通りである。
画像形成装置(DC VII C7773)用の現像剤カートリッジに、得られた補給用現像剤を充填した。これを、製品の通り個装箱に収納し、現像剤排出口を下にして、30℃、95%RHの条件下で、1か月放置した。その後、タッピング工程として、高さ5cmからの自重落下を100回繰り返した。
28℃、98%RH環境下で、画像形成装置(DC VII C7773)に、上記タッピング工程後の現像剤カートリッジを設置し、A4サイズのベタ画像を記録媒体である用紙に100枚印刷した。その後、白紙(つまり、画像密度0%の画像)を1枚印刷し、白紙におけるトナーカブリの状態を確認し、下記基準で評価した。結果を表5に示す。
G1:25倍の拡大鏡で観察した結果、トナーカブリなし
G2:25倍の拡大鏡で観察した結果、トナーが数個確認される程度
G3:25倍の拡大鏡で観察した結果、うっすらと、トナーカブリが確認される
G4:目視で観察した結果、うっすらと、トナーカブリが確認される
G5:目視で観察した結果、トナーカブリが確認される
【0275】
【0276】
上記結果から、本実施例の現像剤は、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制されることがわかる。
【0277】
本実施形態には、下記の態様が含まれる。
(((1)))
結着樹脂を含有するトナー粒子を含むトナーであって、前記トナーの動的粘弾性測定において、温度90℃かつ歪み量1%の損失正接tanδをD1(90)、温度90℃かつ歪み量50%の損失正接tanδをD50(90)、温度150℃かつ歪み量1%の損失正接tanδをD1(150)、温度150℃かつ歪み量50%の損失正接tanδをD50(150)としたとき、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)がそれぞれ0.5以上2.5以下であり、D50(150)-D1(150)の値が1.5未満であり、D50(90)-D1(90)の値が1.0未満であるトナーと、
表面における凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaが0.5μm≦Sm≦2.5μmかつ0.3μm≦Ra≦1.2μmを満たす磁性粒子と前記磁性粒子の表面に付着する樹脂層とを含むキャリアと、
を有する静電荷像現像剤。
【0278】
(((2)))
前記D1(90)と前記凹凸平均間隔Smとの関係が、下記式(1)を満たす、(((1)))
に記載の静電荷像現像剤。
式(1):D1(90)≦Sm≦D1(90)+1.1
(((3)))
前記D1(90)と前記算術平均粗さRaとの関係が、下記式(2)を満たす、(((1)))又は(((2)))に記載の静電荷像現像剤。
式(2):1.05-0.3×D1(90)≦Ra≦1.36-0.3×D1(90)
(((4)))
前記D50(150)と前記算術平均粗さRaとの関係が、下記式(3)を満たす、(((3)))に記載の静電荷像現像剤。
式(3):1.05-0.3×D50(150)≦Ra≦1.36-0.3×D50(150)
(((5)))
前記キャリアの表面における前記磁性粒子の露出面積率は、4%以上20%以下である、(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
【0279】
(((6)))
前記トナー粒子がさらに樹脂粒子を含有する、(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
(((7)))
前記樹脂粒子は、架橋樹脂粒子である、(((6)))に記載の静電荷像現像剤。
(((8)))
前記架橋樹脂粒子は、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子である、(((7)))に記載の静電荷像現像剤。
(((9)))
前記トナー粒子中のテトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量が5000以上15000以下である、(((1)))~(((8)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
【0280】
(((10)))
(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤を補給用現像剤として収容し、
画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジ。
(((11)))
(((10)))に記載の現像剤カートリッジと、
前記現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
(((12)))
(((10)))に記載の現像剤カートリッジと、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
前記現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
(((13)))
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
(((10)))に記載の現像剤カートリッジから補給された補給用現像剤を含む静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【0281】
(((14)))
(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
(((15)))
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
(((16)))
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【0282】
(((1)))又は(((6)))に係る発明によれば、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のいずれかが0.5未満若しくは2.5超え、D50(150)-D1(150)の値が1.5以上、50(90)-D1(90)の値が1.0以上、凹凸平均間隔Smが0.5μm未満若しくは2.5μm超え、又は算術平均粗さRaが0.3μm未満若しくは1.2μm超えである場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0283】
(((2)))に係る発明によれば、D1(90)と凹凸平均間隔Smとの関係が式(1)を満たさない場合に比べ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、D1(90)と算術平均粗さRaとの関係が式(2)を満たさない場合に比べ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、D50(150)と算術平均粗さRaとの関係が式(3)を満たさない場合に比べ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、キャリアの表面における磁性粒子の露出面積率が4%未満又は20%超えである場合に比べ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0284】
(((7)))に係る発明によれば、樹脂粒子が無架橋樹脂粒子である場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さい静電荷像現像用トナーが提供される。
(((8)))に係る発明によれば、架橋樹脂粒子がポリエステル樹脂粒子である場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さい静電荷像現像用トナーが提供される。
(((9)))に係る発明によれば、テトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量が5000未満又は15000超えである場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0285】
(((10)))、(((11)))、(((12)))、又は(((13)))に係る発明によれば、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のいずれかが0.5未満若しくは2.5超え、D50(150)-D1(150)の値が1.5以上、D50(90)-D1(90)の値が1.0以上、凹凸平均間隔Smが0.5μm未満若しくは2.5μm超え、算術平均粗さRaが0.3μm未満若しくは1.2μm超え、キャリアのBET比表面積が0.12m2/g未満若しくは0.20m2/g超え、又はキャリアの体積平均粒径が26μm未満若しくは34μm超えである静電荷像現像剤を適用した場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制される現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、又は画像形成方法が提供される。
【0286】
(((14)))、(((15)))、又は(((16)))に係る発明によれば、D1(90)、D50(90)、D1(150)、及びD50(150)のいずれかが0.5未満若しくは2.5超え、D50(150)-D1(150)の値が1.5以上、D50(90)-D1(90)の値が1.0以上、凹凸平均間隔Smが0.5μm未満若しくは2.5μm超え、算術平均粗さRaが0.3μm未満若しくは1.2μm超え、キャリアのBET比表面積が0.12m2/g未満若しくは0.20m2/g超え、又はキャリアの体積平均粒径が26μm未満若しくは34μm超えである静電荷像現像剤を適用した場合に比べ、低温低圧条件下での定着画像と高温高圧条件下での定着画像との光沢度差が小さく、かつ、画像のカブリが抑制されるプロセスカートリッジ、画像形成装置、又は画像形成方法が提供される。