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  • 特開-リチウム電池 図1
  • 特開-リチウム電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133894
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】リチウム電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/16 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01M6/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043900
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 皓己
【テーマコード(参考)】
5H024
【Fターム(参考)】
5H024AA03
5H024AA12
5H024FF14
5H024FF18
5H024HH01
5H024HH08
(57)【要約】
【課題】難燃性の電解液を用いた高性能のリチウム電池を実現する。
【解決手段】リチウム電池100は、二酸化マンガンが用いられた正極11と、リチウムが用いられた負極12と、それらの間に設けられるセパレータ13とを有する電池要素10を含む。リチウム電池100は更に、電池要素10が収容される外装体30と、外装体30内に収容される電解液20とを含む。電解液20として、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分と、当該成分に更に添加されたフルオロエチレンカーボネート等の有機系低粘度溶媒とを含むものが用いられる。有機系低粘度溶媒は、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分に、当該成分の20体積%以下に相当する量、更に添加される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化マンガンが用いられた正極と、リチウムが用いられた負極と、前記正極と前記負極との間に設けられるセパレータとを有する電池要素と、
前記電池要素が収容される外装体と、
前記外装体内に収容される電解液と、
を含み、
前記電解液は、
リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分と、
前記成分に、前記成分の20体積%以下に相当する量、更に添加された有機系低粘度溶媒と、
を含む、リチウム電池。
【請求項2】
前記有機系低粘度溶媒は、前記成分の粘度よりも低い粘度を有する、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項3】
前記電解液は、前記有機系低粘度溶媒としてフルオロエチレンカーボネートを含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項4】
前記電解液は、前記有機系低粘度溶媒が、前記成分に、前記成分の1体積%以上3体積%以下に相当する量、更に添加される、請求項1に記載のリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の1種として、電解液を用いるリチウム電池(「リチウム一次電池」とも言う)が知られている。このようなリチウム電池の電解液に関し、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解したリチウム電池用電解液において、リン酸エステルを含んだ溶媒を使用する、難燃性電解液が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-184870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、リチウム電池(リチウム一次電池)は、二酸化マンガンが用いられた正極と、リチウムが用いられた負極と、正極と負極との間に設けられるセパレータとを有する電池要素が、電解液と共に、フィルムや缶等の外装体内に収容される構成を有する。ここで、電解液として、リチウム電解質塩と可燃性溶媒とを含む組成の電解液が用いられるリチウム電池の場合、ショート等によって発火や破裂等が生じる恐れがある。そのため、従来、比較的高引火点を有するリン酸エステル化合物等の難燃剤を溶媒に使用することによって電解液を難燃化する技術が知られている。しかし、このように難燃剤を用いて電解液を難燃化する技術では、電解液が高粘度化し、放電特性が低下する等、十分な電池性能が得られない場合があった。
【0005】
1つの側面では、本発明は、難燃性の電解液を用いた高性能のリチウム電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、二酸化マンガンが用いられた正極と、リチウムが用いられた負極と、前記正極と前記負極との間に設けられるセパレータとを有する電池要素と、前記電池要素が収容される外装体と、前記外装体内に収容される電解液と、を含み、前記電解液は、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分と、前記成分に、前記成分の20体積%以下に相当する量、更に添加された有機系低粘度溶媒と、を含む、リチウム電池が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、難燃性の電解液を用いた高性能のリチウム電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】リチウム電池の一例について説明する図である。
図2】電解液の有機系低粘度溶媒添加量とパルス放電時の最小電圧値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
はじめに、リチウム電池の一例について説明する。
電池の1種として、リチウム電池(リチウム一次電池)が知られている。リチウム電池は、例えば、二酸化マンガンが用いられた正極と、リチウムが用いられた負極と、正極と負極との間に設けられるセパレータとを有するリチウム電池用の電池要素が、電解液と共に、外装体内に収容される構成を有する。リチウム電池の形態としては、袋状のラミネートフィルムを外装体に用いる薄形電池の形態や、所定の形状の缶を外装体に用いるコイン形電池、円筒電池、角形電池等の形態が知られている。
【0010】
図1はリチウム電池の一例について説明する図である。図1(A)には、リチウム電池の一例の要部平面図を模式的に示している。図1(B)には、リチウム電池の一例の要部断面図を模式的に示している。図1(B)は、図1(A)のI-I断面模式図である。
【0011】
図1(A)及び図1(B)に示すリチウム電池100は、薄形リチウム電池の一例である。リチウム電池100は、電池要素10、電解液20及び外装体30を含む。
電池要素10は、リチウム電池用の電池要素であって、図1(B)に示すように、正極11及び負極12とそれらの間に設けられるセパレータ13とを有する。
【0012】
正極11には、正極活物質を含む正極材料が用いられる。正極活物質には、二酸化マンガンが用いられる。正極材料には、正極活物質のほか、炭素材料等の導電剤、及び、結着剤、溶剤等の有機成分が含まれてもよい。このような材料が正極活物質と共に混練され、正極材料(正極合剤)が形成されてもよい。正極11は、ステンレス製エキスパンドメタル等の集電体を含み、その上に正極材料を積層したものであってもよい。例えば、集電体にスラリー状の正極材料を塗布し、乾燥後、プレスすることで、正極11が形成される。正極11には、外部接続のため、図1(A)及び図1(B)に示すように、帯状の金属等を用いた正極タブ11aが接続される。
【0013】
負極12には、負極活物質を含む負極材料が用いられる。負極活物質には、リチウム、例えば、金属リチウム又はリチウム合金が用いられる。負極12は、銅箔等の集電体を含み、その上に負極材料のリチウムを積層したものであってもよい。例えば、集電体に負極材料のリチウムを貼り付けることで、負極12が形成される。負極12には、外部接続のため、図1(A)及び図1(B)に示すように、帯状の金属等を用いた負極タブ12aが接続される。
【0014】
正極11と負極12とは、図1(B)に示すように、セパレータ13を介して、互いに対向するように設けられる。対向する正極11と負極12とは、セパレータ13によって隔離される。セパレータ13には、ポリオレフィン系やセルロース系の多孔質膜、織布、不織布等が用いられる。このほか、セパレータ13には、セラミック等が用いられてもよい。
【0015】
電池要素10の正極11、負極12及びセパレータ13は、図1(A)及び図1(B)に示すように、正極タブ11a及び負極タブ12aの先端部が突出するように、外装体30内、例えば、2枚の外装フィルム30aの縁部を貼り合わせて袋状にした外装体30内に収容される。外装体30の外装フィルム30aには、アルミニウムやステンレス等の金属層の両面に、ポリアミドやポリプロピレン等の絶縁層が積層されたラミネートフィルムが用いられる。
【0016】
外装体30内には、電池要素10と共に、リチウムイオンの伝導媒体となる電解液20が収容される。
例えば、2枚の矩形状の外装フィルム30aの三辺の縁部を溶着して一辺を開口した袋状の外装体30内に、電池要素10が、その正極タブ11a及び負極タブ12aが外装体30外に突出するように、電解液20と共に収容され、開口している一辺が溶着される。このような手法が用いられ、図1(A)及び図1(B)に示すようなリチウム電池100、即ち、外装体30内に電池要素10及び電解液20が収容され、正極タブ11a及び負極タブ12aが外装体30外に突出した、リチウム電池100が得られる。
【0017】
ここではリチウム電池の一例として、薄形電池の形態を有するリチウム電池100を例示するが、このほか、リチウム電池としては、正極及び負極とそれらの間に設けられるセパレータとを有する電池要素を電解液と共にコイン形の外装缶内に収容したコイン形電池や、電池要素を電解液と共に円筒形や角筒形の外装缶内に収容した円筒形電池や角形電池等の形態も知られている。いずれの形態のリチウム電池においても、電池要素は、2層以上のセパレータを含んでもよく、各セパレータを介して正極と負極とが対向するように(即ち正極又は負極が2層以上)設けられてもよい。また、電池要素は、正極、負極及びセパレータが所定の層数、所定の順で一方向に積層されたもののほか、積層されたものが巻回されたり折り畳まれたりしたものであってもよい。
【0018】
上記リチウム電池100の電解液20等、リチウム電池の電解液としては、従来、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のリチウム電解質塩と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン等の溶媒とを含むものが知られている。但し、このような組成の電解液では、溶媒が可燃性であり、当該組成ではショート等によって発火や破裂等が生じる恐れがあった。
【0019】
リチウム電池では、保護素子等の外部安全装置を用いることで、過充電、過放電、外部ショート等による発火等を回避する方法が知られているが、電池内部でショートが発生した場合には、そのような外部安全装置は機能しない。そのため、外部安全装置に依存しない安全化のため、電解液を難燃化する方法が採用される。例えば、上記のようなリチウム電解質塩を含む電解液の溶媒に、難燃剤として、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル化合物を使用する技術が知られている。
【0020】
しかし、このように電解液の溶媒に難燃剤を用いると、電解液の粘度が高くなる傾向がある。特に発火性の高い電解液では、発火等を抑えるために多量の難燃剤を用いることを要する場合があり、難燃剤量の増加に伴って電解液の粘度が高くなる傾向が顕著となり得る。また、難燃剤が用いられた電解液の粘度は、低温になるほど高くなる傾向がある。難燃剤によって電解液の粘度が高くなると、リチウムイオン伝導度の低下、セル抵抗の上昇等を招き、所定の温度、例えば0℃又はその付近といった比較的低い温度で、所定の放電特性が得られない等、十分な電池性能が得られなくなることが起こり得る。
【0021】
このような点に鑑み、ここではリチウム電池の電解液として、以下に示すようなものを用い、難燃性の電解液を用いた高性能のリチウム電池を実現する。
即ち、ここではリチウム電池の電解液として、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分と、その成分に更に添加された有機系低粘度溶媒とを含む電解液が用いられる。
【0022】
電解液のリチウム電解質塩には、例えば、リチウム塩の1種であるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドが用いられる。このほか、電解液のリチウム電解質塩には、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等、各種リチウム塩が用いられてもよい。電解液のリチウム電解質塩には、1種のリチウム塩が用いられてもよいし、2種以上のリチウム塩が用いられてもよい。
【0023】
電解液のリン酸エステル化合物は、難燃剤として機能する。電解液のリン酸エステル化合物には、例えば、リン酸トリメチルが用いられる。このほか、電解液のリン酸エステル化合物には、リン酸トリエチル等が用いられてもよい。電解液のリン酸エステル化合物には、1種のリン酸エステル化合物が用いられてもよいし、2種以上のリン酸エステル化合物が用いられてもよい。
【0024】
このようなリチウム電解質塩と、難燃剤であるリン酸エステル化合物とを含有する成分は、難燃性を有する電解液として機能し得る成分である。難燃性を有する電解液として機能すれば、当該成分には、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物とは異なる他の物質、例えば、溶媒や不可避不純物等が含まれてもよい。
【0025】
上記のようなリチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分に、有機系低粘度溶媒が更に添加される。電解液の有機系低粘度溶媒は、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分の粘度よりも低い粘度を有する溶媒である。電解液の有機系低粘度溶媒には、例えば、フルオロエチレンカーボネートが用いられる。このほか、電解液の有機系低粘度溶媒には、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が用いられてもよい。電解液の有機系低粘度溶媒には、1種の有機系低粘度溶媒が用いられてもよいし、2種以上の有機系低粘度溶媒が用いられてもよい。
【0026】
電解液において、有機系低粘度溶媒は、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分に、所定の量、添加される。例えば、有機系低粘度溶媒は、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分に、当該成分の20体積%以下に相当する量、好ましくは当該成分の1体積%以上3体積%以下に相当する量、更に添加される。換言すれば、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分の体積V1と、有機系低粘度溶媒の体積V2との比率を、V1:V2=100:Xとした場合に、Xが20以下、好ましくはXが1以上3以下となるように、当該成分に有機系低粘度溶媒が添加される。
【0027】
上記のように、リチウム電池の電解液として、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分に、所定の量、有機系低粘度溶媒が更に添加されたものが用いられる。この電解液では、リン酸エステル化合物が含まれることで、過充電、過放電、ショート等の異常時の発火が抑えられる、或いは、自己消火性が高められる。
【0028】
更に、この電解液では、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分に、有機系低粘度溶媒が更に添加されることで、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含む当該成分が単独で電解液として用いられる場合に比べて、電解液が低粘度化される。例えば、このように有機系低粘度溶媒が添加される電解液は、0℃又はその付近といった比較的低い温度で、有機系低粘度溶媒が添加されない電解液よりも低粘度となる。また、この電解液は、有機系低粘度溶媒の添加量が増加するほど、比較的広い温度範囲(例えば、少なくとも-5℃から25℃といった温度範囲)において、有機系低粘度溶媒が添加されない電解液よりも低粘度となる。
【0029】
このように低粘度化された電解液が用いられるリチウム電池では、イオン伝導度が増加し、セル抵抗が低減され、良好な放電特性が得られる。例えば、リチウム電池が、0℃又はその付近といった比較的低温の環境で使用されるような場合でも、電解液の粘度が高くなるのを抑え、放電特性が低下してしまうのを抑えることが可能になる。
【0030】
リチウム電池の電解液として、リチウム電解質塩及びリン酸エステル化合物を含有する成分に、所定の量、有機系低粘度溶媒が更に添加されたものが用いられることで、発火等の危険性が低く抑えられ、且つ、高粘度化による放電特性の低下が抑えられる、高性能のリチウム電池が実現される。
【0031】
以下、実施例及び比較例の電解液及びリチウム電池並びにそれらの特性評価の結果について説明する。
<実施例1>
(正極)
正極活物質として二酸化マンガンを用い、これを導電剤及び結着剤等と混合し、スラリー状の正極材料を得た。得られた正極材料を、正極集電体となるシート状のステンレス製エキスパンドメタルに塗布し、乾燥、プレス後に、正極電極部と正極端子部とを切り出し、熱融着樹脂付きの正極タブを正極端子部に抵抗溶接し、正極タブが接続された正極を得た。
【0032】
(負極)
負極集電体となる銅箔からリチウム貼り付け部と負極端子部とを切り出し、リチウム貼り付け部に、負極材料又は負極活物質として、切断した金属リチウムを貼り付け、熱融着樹脂付きの負極タブを負極端子部に抵抗溶接し、負極タブが接続された負極を得た。
【0033】
(セパレータ)
セパレータとして、ポリプロピレン系セパレータを用いた。
(電解液)
リチウム電解質塩としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(「LIFSI」とも言う)を用い、難燃剤のリン酸エステル化合物としてリン酸トリメチル(「TMP」とも言う)を用い、有機系低粘度溶媒としてフルオロエチレンカーボネート(「FEC」とも言う)を用いた。
【0034】
電解液の作製では、まず、リチウム電解質塩のLIFSIを、難燃剤のTMPに、塩濃度が0.6M(mol/L)となるように溶解し、LIFSI及びTMPを含有する溶液を作製した。次いで、作製した溶液に、有機系低粘度溶媒のFECを、当該作製した溶液の1体積%に相当する量、更に添加した。これにより、LIFSI及びTMPを含有する成分(100体積%)と、更にその1体積%相当量のFEC(1体積%)とを含む、実施例1の電解液を得た。
【0035】
(セルの作製)
正極タブ付きの正極、セパレータ、負極タブ付きの負極の順に積層した積層体を、電解液と共に、別途用意しておいたラミネートフィルム製の外装体内に、正負極タブが突出するように収容し、外装体を密封した。尚、外装体外に正負極タブが突出するように、外装体内に積層体及び電解液を収容して外装体を密封する手順としては、例えば、次のような手順を採用することができる。即ち、互いに対面させた2枚の矩形状のラミネートフィルム(外装フィルム)の三辺を溶着して一辺が開口する袋状の外装体を作製し、その袋状の外装体内に、正負極タブが突出するように、積層体を収容し、更に電解液を注入して収容し、袋状の外装体における正負極タブ突出側の開口している一辺を封止する。例えば、このような手順が採用され、外装体外に正負極タブが突出するように、外装体内に積層体及び電解液が収容される。
【0036】
上記のような手順で組み立てることにより、実施例1のリチウム電池を得た。尚、リチウム電池のセルサイズは縦7mm×横7mm×厚み1mmとした。
<実施例2>
塩濃度0.6MのLIFSI及び難燃剤のTMPを含有する溶液に、有機系低粘度溶媒のFECを、当該溶液の3体積%に相当する量、更に添加し、LIFSI及びTMPを含有する成分(100体積%)と、更にその3体積%相当量のFEC(3体積%)とを含む、実施例2の電解液を得た。このような電解液を用いること以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2のリチウム電池を得た。
【0037】
<実施例3>
塩濃度0.6MのLIFSI及び難燃剤のTMPを含有する溶液に、有機系低粘度溶媒のFECを、当該溶液の5体積%に相当する量、更に添加し、LIFSI及びTMPを含有する成分(100体積%)と、更にその5体積%相当量のFEC(5体積%)とを含む、実施例3の電解液を得た。このような電解液を用いること以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3のリチウム電池を得た。
【0038】
<実施例4>
塩濃度0.6MのLIFSI及び難燃剤のTMPを含有する溶液に、有機系低粘度溶媒のFECを、当該溶液の10体積%に相当する量、更に添加し、LIFSI及びTMPを含有する成分(100体積%)と、更にその10体積%相当量のFEC(10体積%)とを含む、実施例4の電解液を得た。このような電解液を用いること以外は、上記実施例1と同様にして、実施例4のリチウム電池を得た。
【0039】
<実施例5>
塩濃度0.6MのLIFSI及び難燃剤のTMPを含有する溶液に、有機系低粘度溶媒のFECを、当該溶液の15体積%に相当する量、更に添加し、LIFSI及びTMPを含有する成分(100体積%)と、更にその15体積%相当量のFEC(15体積%)とを含む、実施例5の電解液を得た。このような電解液を用いること以外は、上記実施例1と同様にして、実施例5のリチウム電池を得た。
【0040】
<実施例6>
塩濃度0.6MのLIFSI及び難燃剤のTMPを含有する溶液に、有機系低粘度溶媒のFECを、当該溶液の20体積%に相当する量、更に添加し、LIFSI及びTMPを含有する成分(100体積%)と、更にその20体積%相当量のFEC(20体積%)とを含む、実施例6の電解液を得た。このような電解液を用いること以外は、上記実施例1と同様にして、実施例6のリチウム電池を得た。
【0041】
<比較例1>
塩濃度0.6MのLIFSI及び難燃剤のTMPを含有する溶液を、比較例1の電解液とした。即ち、LIFSI及びTMPを含み(100体積%)、FECを含まない(0体積%)、比較例1の電解液を得た。このような電解液を用いること以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1のリチウム電池を得た。
【0042】
<比較例2>
リチウム電解質塩としてトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを用い、溶媒としてエチレンカーボネート(「EC」とも言う)、プロピレンカーボネート(「PC」とも言う)、及び、1,2-ジメトキシエタン(「DME」とも言う)を用いた。リチウム電解質塩のトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを、EC、PC及びDMEを含む溶媒に、塩濃度が0.63Mとなるように溶解し、比較例2の電解液を得た。比較例2の電解液は、難燃剤のTMPを含まない。このような電解液を用いること以外は、上記実施例1と同様にして、比較例2のリチウム電池を得た。
【0043】
<特性評価>
(電解液の炎着火性及び燃焼性)
上記実施例1-6及び比較例1-2の電解液を、それぞれ1cm角のセラミックウールに浸み込ませ、これにアルコールランプの炎を近付け、電解液を浸み込ませたセラミックウールへの着火の有無及びその燃焼の状況を観察した。
【0044】
(リチウム電池のパルス放電特性)
上記実施例1-6及び比較例1-2の電解液を用いたリチウム電池のそれぞれに対し、電流値16.1mA、時間1s(秒)、温度0℃の条件でパルス放電を行った。リチウム電池は、パルス放電の際、その負荷期間(放電開始から1秒間)に電圧が降下する放電挙動を示す。上記実施例1-6及び比較例1-2の電解液を用いたリチウム電池のそれぞれについて、上記条件でパルス放電を行った際の放電挙動(放電グラフ)から、パルス放電時(負荷期間)の電圧における最小電圧値を求めた。電解液の有機系低粘度溶媒であるFECの添加量と、パルス放電時の最小電圧値との関係を、図2に示す。
【0045】
<特性評価の結果>
(電解液の炎着火性及び燃焼性)
LIFSI及びTMPを含み、FECを含まない(0体積%)、比較例1の電解液を浸み込ませたセラミックウールは、アルコールランプの炎を近付けた時に一瞬着火するが、すぐに鎮火した。また、アルコールランプの炎を遠ざけた後の燃焼もなかった。
【0046】
LIFSI及びTMPを含有する成分(100体積%)と、更にその1体積%から20体積%の範囲で添加されるFECとを含む、実施例1-6の各電解液を浸み込ませたセラミックウールも同様に、アルコールランプの炎を近付けた時に一瞬着火するが、すぐに鎮火した。また、アルコールランプの炎を遠ざけた後の燃焼もなかった。
【0047】
これらに対し、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムと、溶媒のEC、PC及びDMEとを含む、比較例2の電解液を浸み込ませたセラミックウールは、アルコールランプの炎を近付けると容易に着火し、炎を遠ざけた後も激しく燃焼が継続した。
【0048】
比較例1及び実施例1-6のように、電解液にTMPが含まれると、それが難燃剤として働き、電解液が難燃性となることが確認された。実施例1-6のように、LIFSI及びTMPを含む電解液に、所定添加量(1体積%から20体積%)のFECが更に添加されても、難燃性への影響(難燃性の低下)は認められず、電解液の難燃性が確保されることが確認された。
【0049】
(リチウム電池のパルス放電特性)
図2は電解液の有機系低粘度溶媒添加量とパルス放電時の最小電圧値との関係を示す図である。図2において、横軸は比較例1及び実施例1-6の電解液のFEC添加量[体積%]を表し、縦軸は比較例1及び実施例1-6の電解液を用いたリチウム電池のパルス放電時の最小電圧値[V]を表している。図2には、比較例2の電解液を用いたリチウム電池のパルス放電時の最小電圧値を点線L2で示している。
【0050】
まず、リチウム電池に、比較例1の電解液が用いられる場合と、比較例2の電解液が用いられる場合の、パルス放電(電流値16.1mA、時間1s、温度0℃)時の最小電圧値を比較する。
【0051】
リチウム電池に、LIFSI及びTMPを含み且つFEC添加量が0体積%である電解液が用いられる場合(比較例1)には、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、EC、PC及びDMEを含み且つ難燃剤のTMPを含まない電解液が用いられる場合(比較例2)に比べて、パルス放電時の最小電圧値が低下した。難燃剤のTMPを含む電解液が用いられるリチウム電池では、難燃剤のTMPによって電解液が高粘度化するために、難燃剤のTMPを含まない電解液が用いられるリチウム電池に比べて、パルス放電時の電池電圧が低下するものと考えられる。
【0052】
続いて、リチウム電池に、比較例1の電解液が用いられる場合と、実施例1-6の電解液が用いられる場合の、パルス放電(電流値16.1mA、時間1s、温度0℃)時の最小電圧値を比較する。
【0053】
リチウム電池に、LIFSI及びTMPを含有する成分を含み且つ当該成分に対するFEC添加量が当該成分の1体積%から20体積%の範囲である電解液が用いられる場合(実施例1-6)には、LIFSI及びTMPを含み且つFEC添加量が0体積%である電解液が用いられる場合(比較例1)に比べて、パルス放電時の最小電圧値が上昇した。FEC添加量が1体積%から20体積%の範囲である電解液が用いられるリチウム電池では、有機系低粘度溶媒のFECによって電解液が低粘度化されるために、有機系低粘度溶媒のFEC添加量が0体積%である電解液が用いられるリチウム電池に比べて、パルス放電時の電池電圧が上昇するものと考えられる。
【0054】
特に、リチウム電池に、FEC添加量が1体積%から3体積%の範囲である電解液が用いられる場合(実施例1-2)、パルス放電時の最小電圧値の上昇が大きくなった。FEC添加量が1体積%から3体積%の範囲である電解液が用いられるリチウム電池では、パルス放電時の電池電圧の低下が効果的に抑えられた。
【0055】
以上の特性評価の結果から、LIFSI及びTMPを含有する成分を含み且つ当該成分に対するFEC添加量が当該成分の1体積%から20体積%の範囲である電解液が用いられるリチウム電池によれば、TMPによる難燃性向上及びFECによる放電性能向上が実現される。リチウム電池の放電性能向上の観点では、LIFSI及びTMPを含有する成分に対するFEC添加量が、当該成分の1体積%から3体積%の範囲である電解液が用いられることが、より好ましい。
【0056】
ここでは、リチウム電解質塩のLIFSI及び難燃剤のTMPを含有する成分と、有機系低粘度溶媒として所定添加量のFECとを含む電解液を例示した。
このほか、電解液に含まれる有機系低粘度溶媒として、ジメチルカーボネート(「DMC」とも言う)、エチルメチルカーボネート(「EMC」とも言う)、ジエチルカーボネート(「DEC」)等が用いられても、上記FECが用いられる場合と同様の効果が期待できると考えられる。更に、電解液に含まれる有機系低粘度溶媒として、FEC、DMC、EMC、DEC等のうちの2種以上が用いられる場合も、上記同様の効果が期待できると考えられる。
【0057】
また、電解液に含まれるリチウム電解質塩としてLIFSI以外の他のリチウム塩が用いられる場合や、電解液に含まれる難燃剤としてTMP以外の他のリン酸エステル化合物が用いられる場合でも、上記同様の効果が期待できると考えられる。
【符号の説明】
【0058】
10 電池要素
11 正極
11a 正極タブ
12 負極
12a 負極タブ
13 セパレータ
20 電解液
30 外装体
30a 外装フィルム
100 リチウム電池
図1
図2