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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133896
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B41J2/165 505
B41J2/165 203
B41J2/165 101
B41J2/165 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043902
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】澤田石 誠
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC23
2C056EC24
2C056FA13
2C056JA01
2C056JB04
(57)【要約】
【課題】吐出ヘッドを加圧する加圧機構の構成と、加圧機構の液体貯留室を加圧する駆動系とを簡単な構成とすることができる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体吐出装置は、キャリッジの一例としてのワイパーキャリッジ59と、液体収容部101から吐出ヘッド20Hへ液体を供給する液体供給流路73の途中に配置される加圧機構60とを備える。ワイパーキャリッジ59は、メンテナンス部の一例としてのワイパー58を搭載する。加圧機構60は、液体供給流路73の一部を形成する液体貯留室63と、液体貯留室63の容積を変化させる変形が可能に構成される変形部材の一例としてのダイヤフラム62とを有する。ワイパーキャリッジ59は加圧位置でダイヤフラム62に対する押圧により液体貯留室63を加圧することで、液体貯留室63と連通する吐出ヘッド20Hのノズル20N内の液体を排出方向に流動させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出する吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部を搭載するキャリッジと、
液体収容部から前記吐出ヘッドへ液体を供給する液体供給流路の途中に配置される加圧機構とを備え、
前記加圧機構は、
前記液体供給流路の一部を形成する液体貯留室と、
前記液体貯留室の容積を変化させる変形が可能に構成される変形部材と、
を有し、
前記キャリッジは移動経路上の加圧位置で前記変形部材を押圧可能に構成され、
前記キャリッジは前記加圧位置で前記変形部材に対する押圧により前記液体貯留室を加圧することで、前記液体貯留室と連通する前記吐出ヘッドの前記ノズル内の液体を排出方向に流動させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体貯留室を加圧することで、前記ノズルから液体を排出するクリーニングを行うことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記変形部材は、ダイヤフラムであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置において、
前記加圧機構は、前記ダイヤフラムを前記液体貯留室の容積を大きくする方向に付勢する付勢部材を備え、
前記キャリッジが前記ダイヤフラムから離間すると、前記液体貯留室に前記液体収容部から液体が充填されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記吐出ヘッドは、ラインヘッドであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記メンテナンス部は、前記吐出ヘッドにおける前記ノズルが開口するノズル面を払拭するワイパーであり、
前記キャリッジは、前記ワイパーを搭載するワイパーキャリッジであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記メンテナンス部は、前記吐出ヘッドの前記ノズルから排出された液体を受容するキャップであり、
前記キャリッジは、前記キャップを搭載するキャップキャリッジであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体供給流路の途中に配置され、前記液体収容部から前記吐出ヘッドへ液体が供給される液体供給方向において前記加圧機構よりも上流に位置する第1開閉弁と、
前記液体供給流路の途中に配置され、前記液体供給方向において前記加圧機構よりも下流に位置する第2開閉弁と、
前記キャリッジ、前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1開閉弁を閉じ、且つ前記第2開閉弁を開いた状態で、前記キャリッジを前記加圧位置に移動させることで前記液体貯留室を加圧することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液体吐出装置において、
前記制御部は、前記液体貯留室を加圧した後、前記キャリッジが前記加圧位置にある状態の下で、前記第2開閉弁を閉じることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出装置において、
前記制御部は、前記キャリッジが前記加圧位置から離れる前に、前記第1開閉弁を開けることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
請求項6に記載の液体吐出装置において、
前記ワイパーキャリッジは、前記加圧位置で前記液体貯留室を加圧することで前記ノズル内の液体を加圧し、前記加圧の状態の下で、前記ワイパーが前記吐出ヘッドの前記ノズル面を払拭することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する吐出ヘッドと、吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンス部とを備える液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、吐出ヘッド等の印刷部を備え、搬送される用紙等の媒体に印刷するインクジェット印刷装置(液体吐出装置の一例)が開示されている。この種の印刷装置は、吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンス部を備える。メンテナンス部は、吐出ヘッドと対向する状態でメンテナンス作業を行う。このため、吐出ヘッドとメンテナンス部のうち少なくとも一方が、双方が互いに対向する位置まで移動する必要がある。
【0003】
例えば、ラインヘッド型の印刷装置では、メンテナンス部の一例としてキャップとワイパーとを有するキャップユニットが移動する構成を採用する。キャップユニットは、印刷部のインク吐出面を覆うキャップと、ノズル面からインクを拭き取るワイパーとを一体に備える。また、この種の印刷装置には、キャップ(メンテナンス部の一例)を有するキャップユニットと、ワイパー(メンテナンス部の一例)を有するワイパーユニットとをそれぞれ個別に移動可能に備えるものがある。
【0004】
また、印刷装置は、吐出ヘッドのノズルから液体を強制的に排出するクリーニングを行う。クリーニングには、加圧クリーニングと吸引クリーニングとが知られている。加圧クリーニングは、吐出ヘッドの上流側に液体供給源(例えばインクパック等)を加圧することで、ノズルから液体を強制的に排出する。一方、吸引クリーニングは、キャップが吐出ヘッドをキャッピングする状態において、キャップと吐出ヘッドとの間にノズルと連通する状態で形成される閉空間に吸引ポンプで負圧を導入することで、ノズルから液体を強制的に排出する。
【0005】
特許文献1に記載された液体吐出装置は、加圧クリーニングを採用する。液体吐出装置は、加圧機構を備える。加圧機構は、可撓性部材を隔てて区画される2室を備える。1室は空気室であり、他の1室は液室(液体貯留室の一例)である。空気室内には可撓性部材を液体貯留室側へ付勢するばねが配置される。また、空気室は圧力ポンプに接続され、圧力ポンプの駆動により減圧される。空気室が減圧されると、可撓性部材はばねの付勢力に抗して液体貯留室の容積を大きくする側に変形する。これにより、液体貯留室内に液体が蓄えられる。この状態から、空気室の減圧が解消されると、ばねの付勢力により可撓性部材が液体貯留室内の液体を押し出す。押し出された液体が、吐出ヘッドのノズルから排出されることで、加圧クリーニングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-6583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、圧力ポンプを使ってインク等の液体を蓄えた後、ばねで可撓性部材を加圧するためには、可撓性部材の液体貯留室側と空気室側の両面で密閉空間を作る必要がある。そのため、製造工程においてこれら2つの室を密閉が確保された状態に作る工程や、密閉が確保されていることを確認する工程などが必要になり、工程管理が複雑になる。また、可撓性部材を動かすために圧力ポンプによる圧力管理をするために圧力センサー等の部品が必要であり、製品コスト増大の原因になっている。このため、加圧機構および加圧機構を駆動させる駆動系の構成を簡単にすることができる液体吐出装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部を搭載するキャリッジと、液体収容部から前記吐出ヘッドへ液体を供給する液体供給流路の途中に配置される加圧機構とを備え、前記加圧機構は、前記液体供給流路の一部を形成する液体貯留室と、前記液体貯留室の容積を変化させる変形が可能に構成される変形部材と、を有し、前記キャリッジは移動経路上の加圧位置で前記変形部材を押圧可能に構成され、前記キャリッジは前記加圧位置で前記変形部材に対する押圧により前記液体貯留室を加圧することで、前記液体貯留室と連通する前記吐出ヘッドの前記ノズル内の液体を排出方向に流動させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における液体吐出装置を示す斜視図である。
図2】液体吐出装置の内部構成を示す模式正断面図である。
図3】印刷部及びメンテナンス部を示すB方向から見た模式平面図である。
図4】メンテナンス動作を説明するB方向から見た模式平面図である。
図5】加圧動作を説明する-A方向から見た模式側面図である。
図6】加圧後のワイピング動作を説明する-A方向から見た模式側面図である。
図7】加圧機構及びメンテナンス機構を示す模式図である。
図8】加圧機構及びメンテナンス機構を示す模式図である。
図9】加圧機構及びメンテナンス機構を示す模式図である。
図10】加圧機構及びメンテナンス機構を示す模式図である。
図11】比較例における吐出ヘッドに対するワイピングを示す模式図である。
図12】比較例における吐出ヘッドに対するワイピングを示す模式図である。
図13】比較例における吐出ヘッドに対するワイピングを示す模式図である。
図14】実施例における吐出ヘッドに対するワイピングを示す模式図である。
図15】実施例における吐出ヘッドに対するワイピングを示す模式図である。
図16】実施例における吐出ヘッドに対するワイピングを示す模式図である。
図17】液体吐出装置の電気的構成を示すブロック図である。
図18】加圧クリーニング処理ルーチンを示すフローチャートである。
図19】変更例の加圧機構及びワイパーユニットを示す模式側面図である。
図20図19とは異なる変更例における加圧機構及びキャップユニットを示す模式正面図である。
図21図20とは異なる変更例における加圧機構及びキャップユニットを示す模式側面図である。
図22】キャップ部が加圧機構を押圧する加圧状態を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の液体吐出装置について、図面を参照して説明する。図面では、液体吐出装置11は、水平な設置面に置かれているものとする。液体吐出装置11の設置面に直交するZ軸と直交する2つの軸をそれぞれX軸、Y軸とする。X軸と平行なX方向は、+X方向と-X方向との両方向を含む。Y軸と平行なY方向は、+Y方向と-Y方向との両方向を含む。Z軸と平行なZ方向を鉛直方向Zともいう。X方向は、媒体Mの幅方向であるので、幅方向Xともいう。
【0011】
<液体吐出装置11の全体構成>
図1に示すように、液体吐出装置11は、例えば、複合機である。液体吐出装置11は、スキャン機能、コピー機能および印刷機能を含む複数の機能を有する。本実施形態の液体吐出装置11は、用紙等の媒体に液体の一例としてのインクを吐出するインクジェット印刷方式で印刷を行う。つまり、液体吐出装置11は、複合機の機能を有するインクジェットプリンターである。
【0012】
液体吐出装置11は、直方体形状を呈する装置本体12と、装置本体12の上部に配置される画像読取部13とを備える。装置本体12は、用紙等の媒体Mを搬送する搬送経路T(図2参照)を有する。液体吐出装置11は、搬送される媒体Mに印刷する印刷部20を備える。本実施形態の印刷部20は、ライン印刷方式を採用する。印刷部20は、媒体Mの幅寸法よりも幅方向Xに長い長尺形状を呈する。印刷部20は、所定の搬送速度で搬送される媒体Mに印刷する。
【0013】
画像読取部13は、読取部13Aと自動原稿給送部13Bとを備える。画像読取部13は、フィード式読取機能と、フラットベッド式読取機能とを有する。フィード式読取機能では、自動原稿給送部13Bが原稿トレイ13Cに載置された原稿Dを給送してその給送過程の原稿Dを読取部13Aが読み取る。一方、フラットベッド式読取機能では、自動原稿給送部13Bを開けると露出する原稿台(図示略)上にセットされた原稿Dを読取部13Aが読み取る。液体吐出装置11は、コピー機能が使われるとき、読取部13Aが原稿Dを読み取った読取データに基づき印刷を行う。
【0014】
図1に示すように、液体吐出装置11は、装置本体12上部に操作部14を有してもよい。操作部14は、例えば、タッチパネルよりなる表示部14Aを有してもよい。ユーザーは、表示部14Aをタッチ操作することで、液体吐出装置11に指示を与えることが可能であってもよい。なお、操作部14は、操作ボタンを有する構成でもよい。
【0015】
液体吐出装置11は、複数の媒体Mを収容可能なカセット15を備えてもよい。カセット15は、1段または複数段(図1では例えば4段)備えられてもよい。カセット15は、X方向に着脱可能な状態で装置本体12の下部に挿着されている。複数のカセット15には、例えば、サイズまたは種類の異なる用紙等の媒体Mが収容される。ユーザーは、把手15Aを用いてカセット15をX方向にスライドさせることで、カセット15内の媒体Mの交換又は補充等を行う。
【0016】
図1に示すように、装置本体12は、その側面11Sに、媒体Mを載置可能な給送トレイ16を備える。給送トレイ16は、側面11Sに対して開閉可能に取り付けられている。給送トレイ16は、図1に示す収納状態から下端を中心に回動させることで、使用時の所定の姿勢角に開くことが可能である。
【0017】
液体吐出装置11は、媒体Mに印刷する印刷部20を有する。印刷部20は、カセット15から給送された媒体M又は給送トレイ16から給送された媒体Mに印刷する。
液体吐出装置11は、印刷後の媒体Mが排出される排出部19を備える。排出部19は、装置本体12から排出された媒体Mを積載する排出トレイ19Aを備える。
【0018】
<液体吐出装置11の内部構成>
次に、図2を参照して液体吐出装置11の内部構成について説明する。液体吐出装置11は、装置本体12内に、媒体Mを搬送する搬送部21と、媒体Mに印刷する印刷部20とを備える。印刷部20は、インク等の液体を吐出する吐出ヘッド20Hを有する。印刷部20は、吐出ヘッド20Hから液体を吐出することで媒体Mに印刷する。さらに、液体吐出装置11は、印刷部20をメンテナンスするメンテナンスユニットとして、キャップユニット40と払拭ユニット50(図3図6を参照)とを備える。
【0019】
搬送部21は、媒体Mが搬送される図2に破線で示す搬送経路Tを有する。Y-Z面に示されるA-B座標系は、直交座標系である。A方向は、印刷部20と対向する印刷位置における媒体Mの搬送方向に等しい。A方向の上流に向かう方向を-A方向、下流に向かう方向を+A方向と称する。A方向は、例えば、水平方向に対して鋭角な角度で傾斜した方向である。なお、A方向は、鉛直方向Zと平行な方向であってもよい。
【0020】
図2に示すように、印刷部20は、搬送ベルト25Bと対向する方向であるB方向に移動可能に設けられる。搬送ベルト25Bは、印刷部20と対向する位置で媒体Mを支持する。本実施形態の印刷部20は、水平面に対して所定角度だけ傾くB方向を移動方向とする。B方向は、吐出ヘッド20Hが搬送ベルト25Bに近づく方向を+B方向、搬送ベルト25Bから離れる方向を-B方向とする方向である。B方向は、Y-Z平面においてA方向と直交している。
【0021】
印刷部20は、図2に二点鎖線で示す交換位置PH1と、図2に実線で示す印刷位置PH5との間で移動可能に構成される。印刷部20は、交換位置PH1から+B方向に移動することで、少なくとも交換位置PH1と印刷位置PH5とを含む複数の位置に移動可能である。なお、本例では、印刷部20の移動方向であるB方向を移動方向Bともいう。
【0022】
印刷位置PH5は、吐出ヘッド20Hが媒体Mにインク等の液体を吐出する位置である。交換位置PH1は、ユーザー又はサービスマン等がメンテナンス等のために印刷部20を交換する位置である。装置本体12内には、印刷部20を検知可能な第1センサーSE1が配置されてもよい。なお、交換位置PH1にある印刷部20は、排出トレイ19Aを取り外すと露出する開口を介して交換可能である。なお、印刷部20は、B方向(±B方向)に沿って移動することで、+B方向に、交換位置PH1、退避位置PH2、被払拭位置PH3、被キャップ位置PH4、印刷位置PH5等の複数の停止位置にこの順で停止可能である。
【0023】
カセット15に収容された媒体Mは、ピックアップローラー22及び搬送ローラー対23,24によって、搬送経路Tに沿って搬送される。搬送経路Tには、外部装置から延びる搬送路T1と、装置本体12に設けられた給送トレイ16から延びる搬送路T2とが合流している。
【0024】
また、搬送経路Tに沿う位置には、搬送ベルト25Bと、複数の搬送ローラー対26と、複数のフラップ27と、媒体MのX方向の幅を検出する媒体幅センサーSE4とが配置されている。搬送ベルト25Bは、一対のローラー25Aに巻き掛けられている。搬送ベルト25Bにおいて印刷部20と対向する表面が、印刷位置で媒体Mが支持される支持面として機能する。フラップ27は、媒体Mが搬送される経路を切り替える機能を有する。
【0025】
搬送経路Tは、媒体幅センサーSE4と対向する領域で湾曲部を形成し、この湾曲部より下流の領域ではA方向に延びている。搬送経路Tにおける搬送ベルト25Bよりも下流には、排出部19に向かう搬送路T3及び搬送路T4と、媒体Mの表裏を反転させる反転路T5とが設けられている。排出部19には、搬送路T4から排出される媒体Mを載置可能な不図示の排出トレイが設けられてもよい。なお、反転路T5は、両面印刷が行われるとき、第1面の印刷を終えた媒体Mが第2面の印刷が行われる前に搬入される経路である。この反転路T5で反転した媒体Mは再び搬送経路Tを通って印刷位置に送られることで、その第2面に印刷が行われる。なお、搬送ベルト25Bは、媒体Mを吸着可能に構成されてもよい。この場合、吸着方式は、エアー吸着方式や静電吸着方式などを採用できる。
【0026】
本実施形態の吐出ヘッド20Hは、ラインヘッドである。ラインヘッドである吐出ヘッド20Hは、媒体Mの幅方向Xの全域をカバーする範囲で一斉に印刷可能な複数のノズル20N(図7参照)を有する。印刷部20は、媒体Mの幅方向Xへの移動を伴わないで媒体Mの幅方向Xの全域に印刷する。印刷済みの媒体Mは、搬送路T3,T4から排出されて排出トレイ19Aの積載面19Bに積載される。なお、印刷部20は、キャリッジに搭載されて媒体Mの幅方向Xに移動しながらインク等の液体を吐出するシリアル印刷方式でもよい。
【0027】
図2に示すように、液体吐出装置11は、印刷部20に対してメンテナンスを行うキャップ部41を備える。キャップ部41は、印刷部20と搬送ベルト25Bとの間に対して、A方向に進退可能に設けられる。キャップ部41は、印刷中は図2に示す待機位置PC1で待機する。印刷中でないとき、キャップ部41は、吐出ヘッド20Hを覆う。吐出ヘッド20Hは、ノズル20Nが開口するノズル面20A(いずれも図7参照)を有する。キャップ部41は、ノズル面20Aに当接する状態で吐出ヘッド20Hをキャッピングする。このキャッピングによって、ノズル面20Aとキャップ部41との間にノズル20Nに連通する閉空間が形成されることで、ノズル20N内のインク等の液体の増粘及び乾燥が抑制される。
【0028】
液体吐出装置11は、制御部100を備える。制御部100は、液体吐出装置11の制御を司る。制御部100は、搬送部21及び吐出ヘッド20H等を制御する。また、装置本体12内には、インク等の液体を収容する液体収容部101と、インク等の廃液を貯留する廃液収容部102とが設けられる。液体収容部101は、鉛直方向Zにおいて吐出ヘッド20Hのノズル20N(図7参照)よりも低い高さ位置に配置されている。液体収容部101は、チューブ等の液体供給流路73(図7参照)を介して吐出ヘッド20Hへインク等の液体を供給する。吐出ヘッド20Hは、液体収容部101から供給された液体を吐出する。
【0029】
<印刷部20及びメンテナンス部の構成>
次に、図3図6を参照して、印刷部20及びメンテナンス部の構成について説明する。なお、図3図4は、B方向から見た印刷部20及びメンテナンス部を示す。本実施形態の液体吐出装置11は、メンテナンス部として、キャップ部41及び払拭部51を備える。すなわち、液体吐出装置11は、キャップ部41を含むキャップユニット40と、払拭部51を含む払拭ユニット50とを備える。なお、図5図6は、払拭部51の動作を示す。
【0030】
まず、図3図4を参照して、印刷部20及びその移動機構について説明する。液体吐出装置11は、印刷部20をノズル面20Aと交差する移動方向Bに移動させる第1移動機構31を備える。第1移動機構31は、印刷部20をB方向(±B方向)に案内するガイドレール32と、駆動源である昇降モーター33(図17参照)と、昇降モーター33の駆動力を印刷部20に伝達する動力伝達機構(図示略)とを備える。動力伝達機構は、例えば、ラックアンドピニオン機構又はベルト式動力伝達機構などにより構成される。昇降モーター33が駆動されることによって、印刷部20は、ガイドレール32に案内されてB方向に移動する。
【0031】
印刷部20は、印刷時以外のときは、印刷位置PH5に対して搬送ベルト25Bから離れる方向に位置する、退避位置PH2(図5)、被払拭位置PH3(図6)、被キャップ位置PH4などの各停止位置に移動する。図3図4に示すように、ラインヘッドである吐出ヘッド20Hは、媒体Mの最大幅に相当する範囲に亘り複数の単位ヘッド20Uを備える。なお、吐出ヘッド20Hは、長尺形状を呈する1つのラインヘッドで構成されてもよい。
【0032】
<キャップユニット40及び払拭ユニット50の構成>
次に、図3図4を参照して、キャップユニット40及び払拭ユニット50の構成について説明する。キャップユニット40は、キャップ部41を移動させる第2移動機構42を備える。第2移動機構42は、キャップ部41をA方向(±A方向)に案内するガイドレール43と、駆動源であるキャップモーター44(図17参照)と、キャップモーター44の動力をキャップ部41に伝達する動力伝達機構(図示略)とを備える。動力伝達機構は、例えば、ラックアンドピニオン機構(図示略)又はベルト式動力伝達機構である。キャップモーター44が駆動されることによって、キャップ部41は、ガイドレール43に案内されてA方向に移動する。
【0033】
キャップ部41は、複数のキャップ45と、複数のキャップ45を搭載するキャップキャリッジ46とを備える。複数のキャップ45は、複数の単位ヘッド20Uと対応する位置に配置される。キャップ部41は、複数のキャップ45で複数の単位ヘッド20Uを覆うことで、吐出ヘッド20Hをキャッピングする。また、キャップ45は、吐出ヘッド20Hのノズル20N(図7参照)から排出された液体を受容する機能を有する。
【0034】
キャップ部41は、図3に示す待機位置PC1と、図4に示すキャップ位置PC2との間をA方向に移動可能である。印刷部20が退避位置PH2にあるとき、キャップ部41は、吐出ヘッド20Hと対向するキャップ位置PC2に移動可能である。キャップ部41が、図4に示すキャップ位置PC2にある状態の下で、印刷部20が退避位置PH2から被キャップ位置PH4に下降することで、吐出ヘッド20Hはキャップ部41にキャッピングされる。すなわち、複数の単位ヘッド20Uが複数のキャップ45によりキャッピングされる。印刷動作中、キャップ部41は待機位置PC1で待機する。印刷待機中、キャップ部41は、印刷部20をキャッピングする。また、吐出ヘッド20Hのクリーニングは、キャップ部41が印刷部20をキャッピングする状態の下で行われる。なお、クリーニングの詳細は後述する。
【0035】
<払拭ユニット50の構成>
図3図6に示すように、払拭ユニット50は、払拭部51と、払拭部51を移動させる第3移動機構52とを備える。図5図6に示すように、第3移動機構52は、ガイドレール53と、駆動源であるワイパーモーター54(図17参照)と、ワイパーモーター54の動力を払拭部51に伝達する動力伝達機構55とを備える。動力伝達機構55は、例えば、ベルト式動力伝達機構である。動力伝達機構55は、一対のプーリー56と、一対のプーリー56に巻き掛けられたタイミングベルト57とを備える。プーリー56の一方は、ワイパーモーター54の出力軸に取着される。ワイパーモーター54が駆動されることによって、払拭部51は、ガイドレール53に案内されてX方向(±X方向)に移動する。X方向は、印刷部20の移動方向であるB方向及びキャップ部41の移動方向であるA方向と直交する方向である。なお、動力伝達機構55は、ラックアンドピニオン機構でもよい。
【0036】
払拭部51は、ワイパー58と、ワイパー58を搭載するワイパーキャリッジ59とを備える。払拭部51がX方向に移動するときは、キャップユニット40は図3に示す待機位置PC1で待機する。払拭部51は+X方向に移動する往動過程と、-X方向に移動する復動過程との少なくとも一方で、複数の単位ヘッド20Uのノズル面20Aをワイパー58で払拭する。本実施形態では、払拭部51は、往動過程で、退避位置PH2へ退避した吐出ヘッド20Hの下方を通過し、復動過程で、被払拭位置PH3に配置された吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭する。このように、ワイパー58は、吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭するワイピングを行う。本実施形態では、吐出ヘッド20Hのメンテナンスとしてノズル面20Aを払拭するワイピングを行うワイパー58が、メンテナンス部の一例に相当する。また、ワイパー58を搭載するワイパーキャリッジ59が、キャリッジの一例に相当する。
【0037】
払拭部51は、図3図5に示す待機位置PW1で待機する。ワイパーモーター54が正転駆動すると、払拭部51は+X方向に往動する。この往動過程では印刷部20はワイパー58と接触しない退避位置PH2に退避している。払拭部51は、待機位置PW1から図5に示す折返し位置PW2に移動する。その後、印刷部20はワイパー58と接触可能な図6に示す被払拭位置PH3に下降する。印刷部20が被払拭位置PH3に配置された状態で、ワイパーモーター54が逆転駆動すると、払拭部51は-X方向に復動する。この払拭部51の復動過程で、ワイパー58が吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭する。ノズル面20Aを払拭し終わった払拭部51は、図5に示す二点鎖線で示す待機位置PW1に復帰する。なお、待機位置PW1にある払拭部51は、第3センサーSE3により検知される。
【0038】
<加圧機構60の構成>
図3図6に示すように、ワイパーキャリッジ59の移動経路上に加圧機構60が配置されている。加圧機構60は、液体収容部101(図7参照)と吐出ヘッド20Hとを接続する液体供給流路73(図7参照)の途中に配置されている。つまり、加圧機構60は、液体収容部101から吐出ヘッド20Hへ液体を供給する液体供給流路73の途中に配置される。
【0039】
加圧機構60は、ケース61と、変形部材の一例としてのダイヤフラム62とを備える。ケース61は、ダイヤフラム62が組み付けられる一端が開口により開放された有底筒形状を呈する。加圧機構60は、ケース61の開口側端部にダイヤフラム62が開口を塞ぐ状態に組み付けられることで、ケース61とダイヤフラム62とで囲み形成された液体貯留室63を有する。液体貯留室63は、液体供給流路73の一部を形成する。
【0040】
加圧機構60は、ダイヤフラム62を液体貯留室63の容積を大きくする方向に付勢する付勢部材の一例としてばね64を備える。ばね64は、液体貯留室63内に収容されている。ばね64は、その両端がケース61の内底面とダイヤフラム62の内面とに当接する状態で液体貯留室63内に収容されている。ばね64は、液体貯留室63の容積を大きくする方向にダイヤフラム62を付勢している。ダイヤフラム62は、液体貯留室63の容積を変化させる変形が可能に構成される。ダイヤフラム62は、例えば、弾性を有する合成樹脂又はゴムにより形成される。
【0041】
図4図6に示すように、ワイパーキャリッジ59は、加圧位置PPに配置されたときに、ダイヤフラム62を押圧可能な押圧部59Aを有する。図4図6に示す例では、押圧部59Aは、ワイパーキャリッジ59の側面から+X方向に突出する凸部であるが、ダイヤフラム62を必要な量だけ押し込み変形可能であれば、その形状は任意な形状に変更できる。例えば、凸部がなく、ワイパーキャリッジ59の+X方向側の側面でダイヤフラム62を押圧する構成でもよい。
【0042】
図3図5に示すように、加圧機構60の液体貯留室63は、ばね64の付勢力によりダイヤフラム62が外側に向かって膨出することで、容積が増大する。つまり、液体貯留室63内に液体が蓄積される。一方、図4図6に示すように、ダイヤフラム62がばね64の付勢力に抗して押圧されると、加圧機構60の液体貯留室63は容積が小さくなる。つまり、加圧機構60の液体貯留室63が加圧されて液体貯留室63から液体が押し出される。
【0043】
なお、加圧位置PPは、X方向において、ダイヤフラム62を加圧可能な所定の位置であってもよいし、ダイヤフラム62を加圧可能な所定の範囲に及ぶ領域であってもよい。後者である場合、ワイパーキャリッジ59の押圧部59Aが、膨出したダイヤフラム62の表面に接触する押圧開始位置から、図4図6に示すように、ダイヤフラム62を押圧し切った押圧終了位置まで移動する範囲が、加圧位置PPに相当する。
【0044】
このように、キャリッジの一例であるワイパーキャリッジ59は、移動経路上の加圧位置PPでダイヤフラム62を押圧可能に構成される。ワイパーキャリッジ59は、加圧位置PPでダイヤフラム62を押圧することで液体貯留室63を加圧し、加圧された液体貯留室63と連通する吐出ヘッド20Hのノズル20N内の液体を加圧する。本実施形態では、加圧機構60の液体貯留室63を加圧することで、ノズル20N内の液体を排出方向に流動させる。特に本例では、ノズル20Nから排出できる液体の量が液体貯留室63の容積以下の値に制限される。そのため、液体貯留室63の加圧により、ノズル20Nから液体を漏出させる簡易加圧クリーニングが行われる。
【0045】
<加圧クリーニング機構の構成>
次に、図7図10を参照して、加圧機構60を含む加圧クリーニング機構の構成について説明する。なお、図7図10では、キャップ部41の移動方向を模式的に上下方向として示されている。
【0046】
図7に示すように、加圧機構60は、ワイパーキャリッジ59の移動経路上又は移動経路の近傍位置に配置されている。加圧機構60は、液体収容部101と吐出ヘッド20Hとを接続する液体供給流路73の途中に設けられている。液体供給流路73において液体収容部101と加圧機構60との間の位置には、液体供給流路73を開閉する第1開閉弁71が配置されている。第1開閉弁71は、液体供給流路73の途中に配置され、液体収容部101から吐出ヘッド20Hへ液体が供給される液体供給方向において加圧機構60よりも上流に位置する。
【0047】
また、液体供給流路73において加圧機構60と印刷部20との間の位置には、液体供給流路73を開閉する第2開閉弁72が配置されている。第2開閉弁72は、液体供給流路73の途中に配置され、液体供給方向において加圧機構60よりも下流に位置する。なお、図7図10では、第1開閉弁71及び第2開閉弁72の開閉状態を白と黒の色で区別し、白色は開弁状態、黒色は閉弁状態を示している。
【0048】
図7に示すように、印刷部20は、液体供給流路73とノズル20Nとの間を連通する流路81を有する。流路81の途中には液室82が介在している。液室82は、それよりも下流の位置で複数に分岐した部分の流路81を通じて各ノズル20Nに連通している。図7に示すように、液体収容部101内の液面よりもノズル20Nは高くに位置する(図2も参照)。このため、加圧機構60の液体貯留室63が加圧されていない通常の状態では、水頭差によって印刷部20内の液室82のインクには1気圧よりも低い圧力がかかっている。このため、ノズル20Nから液体(例えばインク)が垂れることはない。一方、加圧機構60の液体貯留室63が加圧されることにより流路81及び液室82内のインクが加圧されると、ノズル20Nから液体が漏出するか、あるいは漏出しなくても膨出する。本実施形態では、ノズル20Nから液体を漏出させることで、ノズル20Nを加圧クリーニングする。ノズル20N内の増粘インクやインク中の気泡が漏出する液体と共にノズル20Nから排出される。これにより、ノズル20Nがクリーニングされる。また、この加圧クリーニングは、ワイパー58がノズル面20Aを払拭するワイピングによるノズル20N内への気泡の混入を抑制する目的も兼ねる。
【0049】
また、図7に示すように、キャップユニット40は、キャップ45と廃液収容部102とを接続するチューブ47と、チューブ47の途中に介在するポンプ48とを備える。ポンプ48は、例えば吸引ポンプであり、その駆動によってキャップ45内に吸引力を及ぼす。図8は、キャップ45が図4に示すキャップ位置PC2にある状態を示す。キャップ45は、加圧クリーニング時に吐出ヘッド20Hのノズル20Nから漏出する液体を受容する。ポンプ48が駆動されることで、キャップ45内の液体はチューブ47を通じて廃液収容部102に回収される。
【0050】
また、キャップ45が吐出ヘッド20Hのノズル面20Aに接触するキャッピング状態の下で、ポンプ48が駆動されることによって、キャップ45とノズル面20Aとの間で囲み形成された略閉空間が負圧になる。この負圧によってノズル20Nから液体が強制的に排出される本クリーニングが行われる。本クリーニングによってノズル20N内の増粘した液体や気泡等が排出される。これにより、ノズル20Nの目詰まりが予防または解消される。本クリーニングによりキャップ45が受容した液体(廃液)は、チューブ47を通じて廃液収容部102に回収される。なお、本クリーニングは、吸引式に限らず、液体収容部101内の液体を加圧することで、ノズル20Nから液体を強制的に排出する加圧式でもよい。
【0051】
図7に示すように、本実施形態では、本クリーニングとは別に、簡易クリーニングとして加圧クリーニングを行う。加圧クリーニングは、払拭部51が吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭する前に実施される。加圧クリーニングは、本クリーニングよりもノズル20Nから排出される液体の量が少ないクリーニングである。加圧クリーニングは、払拭部51が吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭するワイピングを適切に行うために実施される。このワイピングを適切に行う加圧クリーニングの目的の詳細については後述する。
【0052】
図8図9に示すように、ワイパーキャリッジ59が加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する。これによりノズル20Nから液体が漏出する。制御部100は、第1開閉弁71を閉じ、且つ第2開閉弁72を開いた状態で、ワイパーキャリッジ59を加圧位置PPに移動させることで液体貯留室63を加圧する。つまり、ワイパーキャリッジ59を加圧位置PPに移動させることで、ワイパーキャリッジ59の押圧部59Aがダイヤフラム62を押圧する。ダイヤフラム62が押圧されることで、液体貯留室63内の液体が印刷部20に向かって押し出される。この結果、印刷部20内の流路81が加圧される。つまり、ワイパーキャリッジ59が加圧位置PPで液体貯留室63を加圧することでノズル20N内の液体が加圧される。このとき、第1開閉弁71が閉じているので、液体貯留室63から印刷部20に向かって液体が押し出される。
【0053】
この液体が押し出される際の加圧によって、ノズル20N内の液体は排出方向に流動する。液体貯留室63から押し出される液体の量は、ノズル20Nの容積よりも十分多い。この結果、ノズル20Nから液体が漏出する。ノズル20Nから漏出した液体は、ノズル面20Aと対向するキャップ位置PC2に配置されたキャップ45が受容する。このとき、ノズル20Nから排出される液体の量は、液体貯留室63から押し出された液体の量以下に限られるので、ノズル20Nから液体が漏出する程度となる。この簡易加圧クリーニングでは、本クリーニングに比べノズル20Nから排出される液体の量がかなり少ないものの、ノズル20N内の液体が漏出されることで、ノズル20N内の増粘液体及び気泡を除去する効果が少なからずある。
【0054】
そして、図9に示すように、吐出ヘッド20H内が加圧された状態のまま第2開閉弁72が閉じる。この結果、印刷部20内の流路81、液室82及びノズル20Nは加圧状態に保持される。制御部100は、液体貯留室63を加圧した後、ワイパーキャリッジ59が加圧位置PPにある状態の下で、第2開閉弁72を閉じる。制御部100は、ワイパーキャリッジ59が加圧位置PPから離れる前に、第1開閉弁71を開ける。
【0055】
図10に示すように、ノズル20N内が加圧された状態の下で、ワイパー58が吐出ヘッド20Hを払拭する。印刷部20の加圧状態が維持された状態の下で払拭部51が復動することで、ワイパー58により吐出ヘッド20Hのノズル面20Aが払拭される。こうして、ノズル20Nから漏出した液体が、ノズル面20Aから拭き取られる。
【0056】
<加圧クリーニングの目的>
図11図16を参照して、加圧クリーニングの目的について説明する。なお、図11図13は、加圧クリーニングを行わずにワイピングを行う比較例を示す。また、図14図16は、加圧クリーニングを終えた加圧状態の下でワイピングを行う実施例を示す。
【0057】
まず、図11図13を参照して、比較例のワイピングについて説明する。
図11に示すように、比較例では、ノズル20N内のインク等の液体ILが加圧されていない状態で、ワイピングが行われる。ノズル20N内の液体ILが加圧されていない状態では、液体収容部101(図7参照)内の液体とノズル20N内の液体との水頭差によって吐出ヘッド20H内の液室82(図7参照)内の液体ILには1気圧よりも低い圧力がかかっている。このため、図11に示すように、ノズル20N内には、インク等の液体ILの凹状のメニスカスMSが形成されている。
【0058】
この状態の下で、図12に示すように、ワイパー58がノズル面20Aを払拭すると、ノズル20Nの開口の部分に液膜MLが形成される。この結果、メニスカスMSと液膜MLとの間に空気層が形成される。そして、この空気層が、図13に示すように、ノズル20N内の液体IL中の気泡BLになる。つまり、ノズル20N内の液体ILに気泡BLが混入する。
【0059】
次に、図14図16を参照して、本実施例のワイピングについて説明する。
本実施例のワイピングは、気泡BLの混入を抑制するため、ワイピング時にノズル20Nから液体ILを漏出させる。ノズル20Nから液体が膨出する膨出部ELがある状態の下で、図15に示すように、ワイパー58がノズル面20Aを払拭する。これにより、メニスカスMSと液膜ML(図12参照)に起因する空気層が形成されないので、ノズル20N内の液体IL中への気泡BL(図13参照)の混入が抑制される。その後、加圧が解除されると、図16に示すように、ノズル20N内の液体ILにメニスカスMSが形成される。
【0060】
<液体吐出装置11の電気的構成>
次に、図17を参照して、液体吐出装置11の電気的構成について説明する。液体吐出装置11は、例えば、ホスト装置(図示略)から印刷データPDを受信する。印刷データPDには、印刷条件情報と画像データとが含まれる。制御部100は、画像読取部13及び印刷機構12Aの構成要素と電気的に接続されている。印刷機構12Aの電気的な構成要素は、吐出ヘッド20H、昇降モーター33、キャップモーター44、ワイパーモーター54、ポンプ48、給送モーター95、搬送モーター96、第1開閉弁71及び第2開閉弁72等である。制御部100は、これらの電気的な構成要素を制御することで、印刷機構12Aに印刷動作を行わせる。
【0061】
制御部100は、吐出ヘッド20Hを制御することで、ノズル20Nからインク等の液体を吐出する印刷制御を行う。制御部100は、昇降モーター33を制御することで、印刷部20を移動方向Bに移動させる移動制御を行う。制御部100は、キャップモーター44を制御することで、キャップ部41をA方向に移動させるキャップ移動制御を行う。制御部100は、ワイパーモーター54を制御することで、ワイパー58をX方向に移動させるワイパー移動制御を行う。
【0062】
また、制御部100は、ポンプ48を駆動させることで、吐出ヘッド20Hのノズル20Nからインク等の液体を強制的に排出する本クリーニングを行う。本クリーニングが、例えば、吸引クリーニングである場合、キャップ45に接続された吸引ポンプよりなるポンプ48の駆動により、吐出ヘッド20Hのノズル面20Aに接触するキャップ45内を負圧することでノズル20Nからインク等の液体を強制的に排出させる。なお、本クリーニングは、吸引クリーニングに限定されない。例えば、液体収容部101を加圧することで、ノズル20Nからインク等の液体を強制的に排出させる加圧クリーニングでもよい。
【0063】
制御部100は、給送モーター95を制御してピックアップローラー22(図2参照)を回転させることで、カセット15内の媒体Mを1枚ずつ給送する。また、制御部100は、搬送モーター96を制御して搬送ローラー対23,24,26及び搬送ベルト25B(図2参照)を駆動させることで、媒体Mを搬送経路Tに沿って搬送する搬送制御を行う。
【0064】
また、制御部100には、第1センサーSE1、第2センサーSE2、第3センサーSE3及び媒体幅センサーSE4が電気的に接続されている。また、制御部100には、第1エンコーダー91、第2エンコーダー92及び第3エンコーダー93が電気的に接続されている。
【0065】
また、制御部100は、コンピューター110を備える。コンピューター110は、図示を省略するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージを含んで構成される。制御部100は、液体吐出装置11における媒体Mの搬送や、印刷部20による媒体Mへの印刷動作を制御する。詳しくは、制御部100は、自身が実行する全ての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。たとえば、制御部100は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、制御部100は、コンピュータープログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサー、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリー114を含み、メモリー114は、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリー114すなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューター110でアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0066】
コンピューター110は、第1カウンター111、第2カウンター112、第3カウンター113、及び前述のメモリー114を備える。メモリー114には、プログラムPR及び位置情報PI等が記憶されている。プログラムPRには、図18にフローチャートで示される加圧クリーニング制御ルーチンのプログラムが含まれる。図17に示す位置情報PIは、印刷部20、キャップキャリッジ46及びワイパーキャリッジ59の各々の停止位置を規定するデータが含まれる。位置情報PIには、例えば、ワイパーキャリッジ59が加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する加圧位置PP(図4図6を参照)の位置データが含まれる。
【0067】
第1カウンター111は、例えば、交換位置PH1を原点とする印刷部20の移動経路上の位置を示す値を計数する。第1カウンター111は、第1エンコーダー91から入力する検出信号の例えばパルスエッジの数を計数する。印刷部20の原点出し動作において、第1センサーSE1が交換位置PH1に達した印刷部20を検知すると、第1カウンター111はリセットされる。
【0068】
第2カウンター112は、待機位置PC1を原点とするキャップ部41の移動経路上の位置を示す値を計数する。第2カウンター112は、第2エンコーダー92から入力する検出信号の例えばパルスエッジの数を計数する。キャップ部41の原点出し動作において、第2センサーSE2が待機位置PC1に達したキャップ部41を検知すると、第2カウンター112はリセットされる。
【0069】
第3カウンター113は、待機位置PW1を原点とする払拭部51の移動経路上の位置を示す値を計数する。第3カウンター113は、第3エンコーダー93から入力する検出信号の例えばパルスエッジの数を計数する。払拭部51の原点出し動作において、第3センサーSE3が待機位置PW1に達した払拭部51を検知すると、第3カウンター113はリセットされる。
【0070】
<実施形態の作用>
次に、液体吐出装置11の作用について説明する。
ユーザーは、操作部14又はホスト装置の入力部(キーボード等)を操作することで、液体吐出装置11に印刷を指示する。液体吐出装置11は、例えば、ホスト装置から印刷データPDを入力する。制御部100は、印刷データPDに含まれる印刷コマンドに従って搬送部21を制御するとともに、画像データに基づいて吐出ヘッド20Hを制御する。こうして、液体吐出装置11は、搬送部21により搬送される媒体Mに画像データに基づく画像等を印刷する。
【0071】
また、液体吐出装置11は、電源オン中に定期又は不定期にクリーニングを行う。例えば、制御部100は、前回のクリーニング実施時期から一定の時間が経過する度にクリーニングを行う。また、制御部100は、印刷枚数を計数した計数値が所定の枚数閾値に達する度に、クリーニングを行う。さらに、液体吐出装置11がノズル検査装置(図示せず)を備える場合、制御部100は、ノズル目詰まり等が原因で液滴を適切に吐出できない不良ノズルがノズル検査装置によって検出されると、クリーニングを行う。これらのクリーニングは、ノズル20Nからの液体の排出量が比較的多い本クリーニングである。
【0072】
一方、本クリーニングを行うほどではないが、ワイピングを含む簡易クリーニングを行うことが好ましい場合がある。例えば、ノズル面20Aにおいてノズル20Nの周辺に付着したインクミストに起因してノズル20Nの開口周辺が液体で濡れている場合や、ノズル20Nの開口にかかるように紙粉等の異物が付着している場合などである。これらの場合、ノズル20Nから吐出される液滴が、ノズル面20Aに付着した液体や紙粉に当たって抵抗を受けることで、目標方向からずれた飛翔方向に吐出される場合がある。この場合、媒体Mの表面への液滴の着弾位置(ドット形成位置)が目標位置からずれてしまうので、印刷品質の低下を招く。この場合、ノズル面20Aに付着した液体や紙粉を除去できれば足りるので、本クリーニングを行うまでではない。ノズル面20Aをワイピングすれば足りる場合がある。このため、制御部100は、本クリーニングよりも短い間隔で定期又は不定期にワイピングを含む簡易クリーニングを行う。ワイピングする場合、図12図13に示すように気泡BLが混入する恐れがある。このため、簡易クリーニングでは、加圧機構60のダイヤフラム62を押圧してノズル20Nから液体を漏出させる加圧クリーニングが行われる。
【0073】
以下、図18を参照して、加圧クリーニング処理ルーチンについて説明する。制御部100を構成するコンピューター110は、この加圧クリーニング処理を実行することによって、吐出ヘッド20Hに対する簡易クリーニングを行う。なお、この加圧クリーニング処理の実行前においては、第1開閉弁71及び第2開閉弁72は、共に印刷時の開いた状態にある。
【0074】
まず、ステップS11において、コンピューター110は、第1開閉弁71を閉じる。
次のステップS12において、コンピューター110は、吐出ヘッド20Hを退避位置PH2へ上昇させる。
【0075】
ステップS13において、コンピューター110は、ワイパーキャリッジ59を加圧位置PPへ移動して加圧機構60のダイヤフラム62を押すことで、吐出ヘッド20Hから液体を排出する。すなわち、図5に示すように、払拭部51が加圧位置PPに移動し、その加圧位置PPの範囲内で払拭部51がダイヤフラム62を押す側に移動する。これにより、ワイパーキャリッジ59の押圧部59Aがダイヤフラム62を押圧することによって、加圧機構60の液体貯留室63が加圧される。図8に示すように、第1開閉弁71が閉じ、且つ第2開閉弁72が開いた状態で、液体貯留室63が容積が小さくなる側に加圧されることで、液体貯留室63内の一部の液体が吐出ヘッド20Hへ加圧供給される。この結果、ノズル20Nから液体が漏出する。このとき、図4に示すように、キャップ部41は、吐出ヘッド20Hと対向するキャップ位置PC2にあるので、ノズル20Nから漏出した液体は、キャップ45内に受容される。ノズル20Nから液体が漏出することで、ノズル20N内の液体の一部又は全部が入れ替わる。例えば、ノズル20N内の増粘した液体が排出される。
【0076】
ステップS14において、コンピューター110は、第2開閉弁72を閉じる。
次のステップS15において、コンピューター110は、第1開閉弁71を開ける。
この結果、図9に示すように、加圧機構60の液体貯留室63が加圧された状態の下で、第2開閉弁72が閉じられることで、吐出ヘッド20H内の流路81及び液室82が加圧状態が維持される。この加圧によって、図14に示すように、ノズル20Nの開口から液体ILが膨出する膨出部ELが形成される。
【0077】
ステップS16において、コンピューター110は、ワイピングを実施する。詳しくは、コンピューター110は、吐出ヘッド20Hを退避位置PH2から被払拭位置PH3まで下降させる。次に、コンピューター110は、ワイパーモーター54を逆転駆動させる。これにより、図6図10に示すように、払拭部51が加圧位置PPから待機位置PW1まで-X方向に復動する。この復動過程で、ワイパー58が吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭する。こうして、ノズル面20Aに付着した液体や紙粉が除去される。このとき、図15に示すように、ノズル20Nの部分では、その開口から膨出する膨出部ELが払拭される。これにより、ワイピング時にノズル20N内の液体ILに気泡BLが混入することが抑制される。これに加え、ワイピング時に他の色の液体がノズル20N内に混入することなども抑制されやすい。
【0078】
次のステップS17において、コンピューター110は、加圧機構60の液体貯留室63へのインク充填を待機する。払拭部51が加圧位置PPから復動方向(-X方向)に移動を開始すると、ばね64がダイヤフラム62を膨らむ方向に押すことで、液体貯留室63内に液体(インク)が充填される。液体貯留室63内に液体が充填されるまでには、所定の時間を要する。この所定の時間は予め既知であるので、コンピューター110は、払拭部51が加圧位置PPを離れてから必要な所定の時間が経過するまで待機する。例えば、払拭部51が加圧位置PPから待機位置PW1まで移動するのに要する所要時間が所定の時間以上である場合、払拭部51が待機位置PW1に復帰した後の待ち時間は0秒でもよい。この液体貯留室63に液体が充填されるまでの間、第2開閉弁72は閉じている。よって、吐出ヘッド20H内の液体が液体貯留室63へ引き込まれることが抑制されるので、ノズル20N内に空気が入り込むことが回避される。
【0079】
次のステップS18において、コンピューター110は、第2開閉弁72を開ける。こうして、図7に示すように、第1開閉弁71と第2開閉弁72が共に開いた状態となる。
次のステップS19において、コンピューター110は、フラッシング(空吐出)を行う。詳しくは、コンピューター110は、吐出ヘッド20Hの全ノズル20Nから印刷とは関係のない液滴を吐出させる。このフラッシングによって、ワイピング後のノズル20N内の液体の一部が液滴として吐出される。これによって、ワイピング時にノズル面20Aに付着していた液体の一部が仮にノズル20N内に押し込まれても、その液体の一部はフラッシングによってノズル20N内から排出される。こうして、フラッシングによって、ノズル20N内の液体がリフレッシュされるとともに、ノズル20N内の液体ILの表面にメニスカスMSが形成される。
【0080】
その後、印刷が開始されると、所定形状のメニスカスMSが形成された状態で吐出動作が行われる。このため、吐出動作1回当たりの液滴の体積がばらつきにくい。この結果、液滴が媒体Mに着弾して形成される印刷ドットのサイズのばらつきが抑制される。本実施形態の液体吐出装置11は、吐出ヘッド20Hのノズル20Nから吐出される液滴のサイズを複数種に打ち分ける吐出制御を行ってもよい。この場合、ノズル20Nから吐出される液滴のサイズが少ないばらつきで適切に打ち分けられる。
【0081】
<実施形態の効果>
実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)液体吐出装置11は、キャリッジの一例としてのワイパーキャリッジ59と、液体収容部101から吐出ヘッド20Hへ液体を供給する液体供給流路73の途中に配置される加圧機構60とを備える。ワイパーキャリッジ59は、ノズル20Nから液体を吐出する吐出ヘッド20Hのメンテナンスを行うメンテナンス部の一例としてのワイパー58を搭載する。加圧機構60は、液体供給流路73の一部を形成する液体貯留室63と、液体貯留室63の容積を変化させる変形が可能に構成される変形部材の一例としてのダイヤフラム62と、を有する。ワイパーキャリッジ59は移動経路上の加圧位置PPでダイヤフラム62を押圧可能に構成される。ワイパーキャリッジ59は加圧位置PPでダイヤフラム62に対する押圧により液体貯留室63を加圧することで、液体貯留室63と連通する吐出ヘッド20Hのノズル20N内の液体を排出方向に流動させる。
【0082】
この構成によれば、液体貯留室63は、液体供給流路73の一部とダイヤフラム62とにより囲み形成された構成なので、加圧機構60の構成が簡単で済む。また、液体貯留室63のダイヤフラム62を押圧するためにメンテナンス部のワイパーキャリッジ59を利用するので、液体貯留室63に貯留された液体を加圧するためにダイヤフラム62を押圧する駆動系を簡単な構成で済ませることができる。よって、吐出ヘッド20Hを加圧する加圧機構60の構成と、加圧機構60の液体貯留室63を加圧する駆動系とを簡単な構成とすることができる。
【0083】
(2)液体貯留室63を加圧することで、ノズル20Nから液体を排出するクリーニングを行う。この構成によれば、吐出ヘッド20H内を加圧することでノズル20Nから液体を排出するクリーニングが行われる。クリーニング用の液体を貯留する液体貯留室63を有する加圧機構60を簡単な構成で実現できる。
【0084】
(3)変形部材は、ダイヤフラム62である。この構成によれば、ダイヤフラム62を押圧することで吐出ヘッド20H内を加圧できるので、液体貯留室63を有する加圧機構60の構成を簡単にすることができる。
【0085】
(4)加圧機構60は、ダイヤフラム62を液体貯留室63の容積を大きくする方向に付勢する付勢部材としてのばね64を備える。ワイパーキャリッジ59がダイヤフラム62から離間すると、液体貯留室63に液体収容部101から液体が充填される。この構成によれば、加圧後に液体貯留室63に液体を貯留する加圧機構60の構成を簡単にすることができる。
【0086】
(5)吐出ヘッド20Hは、ラインヘッドである。この構成によれば、吐出ヘッド20Hがラインヘッドであっても、加圧機構60の構成及び加圧機構60を駆動させる駆動系の構成を簡単にすることができる。例えば、吐出ヘッド20Hがシリアルヘッドであれば、吐出ヘッド20Hを移動させるヘッド用キャリッジが加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する構成を採用することもできるが、この種のヘッド用キャリッジがないラインヘッドであっても、メンテナンス部のワイパーキャリッジ59を利用して加圧機構60のダイヤフラム62を押圧することができる。
【0087】
(6)メンテナンス部は、吐出ヘッド20Hにおけるノズル20Nが開口するノズル面20Aを払拭するワイパー58である。キャリッジは、ワイパー58を搭載するワイパーキャリッジ59である。この構成によれば、ワイパーキャリッジ59を利用して加圧機構60のダイヤフラム62を押圧することで、吐出ヘッド20Hを加圧できる。加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する専用のキャリッジが不要である。よって、加圧機構60を駆動させる駆動系の構成を簡単にすることができる。ひいては、液体吐出装置11の構成が簡単で済む。
【0088】
(7)液体吐出装置11は、第1開閉弁71と、第2開閉弁72と、制御部100とを備える。第1開閉弁71と第2開閉弁72は、液体供給流路73の途中に配置される。第1開閉弁71は、液体収容部101から吐出ヘッド20Hへ液体が供給される液体供給方向において、加圧機構60よりも上流に位置する。第2開閉弁72は、液体供給方向において、加圧機構60よりも下流に位置する。制御部100は、ワイパーキャリッジ59、第1開閉弁71及び第2開閉弁72を制御する。制御部100は、第1開閉弁71を閉じ、且つ第2開閉弁72を開いた状態で、ワイパーキャリッジ59を加圧位置PPに移動させることで液体貯留室63を加圧する。この構成によれば、ワイパーキャリッジ59が加圧位置PPでダイヤフラム62を押圧して液体貯留室63から押し出された液体を吐出ヘッド20H内の加圧に有効利用できる。例えば、液体貯留室63の容積を小さく抑えることができる。この場合、加圧機構60の小型化に寄与する。
【0089】
(8)制御部100は、液体貯留室63を加圧した後、ワイパーキャリッジ59が加圧位置PPにある状態の下で、第2開閉弁72を閉じる。この構成によれば、第2開閉弁72を閉じた後、ダイヤフラム62の押圧を解除しても吐出ヘッド20H内を加圧状態に維持できる。例えば、ワイパー58が吐出ヘッド20Hを払拭する際にノズル20N内への気泡の混入を抑制できる。
【0090】
(9)制御部100は、ワイパーキャリッジ59が加圧位置PPから離れる前に、第1開閉弁71を開ける。この構成によれば、吐出ヘッド20Hを加圧した後、液体貯留室63に液体を速やかに貯留できる。例えば、液体貯留室63に所定量の液体が貯留されるまでの待ち時間を少なくすることができる。
【0091】
(10)ワイパーキャリッジ59は、加圧位置PPで液体貯留室63を加圧することでノズル20N内の液体を加圧し、加圧の状態の下で、ワイパー58が吐出ヘッド20Hを払拭する。この構成によれば、吐出ヘッド20H内を加圧してノズル20Nから液体が膨出する状態の下で吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭できる。例えば、ワイパー58が吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭する際にノズル20N内への気泡の混入等を抑制できる。
【0092】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0093】
図19に示すように、ワイパーキャリッジ59が待機位置PW1から払拭動作時の移動方向と反対方向に移動した位置に加圧位置PPがあってもよい。ワイパーキャリッジ59は、待機位置PW1から往動方向とは反対の方向に短い距離を移動することで、加圧位置PPに到達し、加圧位置PPで加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する。この押圧によって、吐出ヘッド20H内の液室82(図7参照)を加圧する。加圧を終えて第2開閉弁72(図9等を参照)を閉じると、液室82は加圧状態に維持される。ワイパーキャリッジ59は、加圧位置PPから待機位置PW1を通過して+X方向に折返し位置PW2まで往動する。吐出ヘッド20Hが被払拭位置PH3に下降した後、ワイパーキャリッジ59は折返し位置PW2から復動する過程で、吐出ヘッド20Hのノズル面20Aをワイパー58で払拭する。なお、払拭部51は、往動時にノズル面20Aを払拭してもよい。
【0094】
・キャリッジは、ワイパーキャリッジ59に替え、キャップキャリッジ46であってもよい。すなわち、メンテナンス部は、吐出ヘッド20Hのノズル20Nから排出された液体を受容するキャップ45であってもよい。そして、キャリッジは、キャップ45を搭載するキャップキャリッジ46であってもよい。例えば、図20に示すように、吐出ヘッド20Hのノズル面20Aは、水平面に対して傾斜している。加圧したときにノズル20Nから漏出した液体はノズル面20Aを伝ってその下端から垂れる。キャップ45は、ノズル面20Aに当接する第1姿勢と、ノズル面の下端から垂れる液滴を受ける第2姿勢とをとることが可能に構成される。例えば、図20に示すキャップユニット40は、キャップ45及び不図示のキャップキャリッジを第1姿勢と第2姿勢とに傾動させる傾動機構(図示略)を搭載する。キャップ45が第2姿勢に傾動する動作によってキャップキャリッジは、図20の例ではキャップキャリッジ底面の一部を押圧部として、加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する。この押圧により液体貯留室63を加圧する。この結果、ノズル20Nから液体が漏出し、その漏出した液体がノズル面20Aを伝ってその下端から垂れる。垂れた液体は加圧位置PPにあるキャップ45が受容する。加圧が終了すると、第2開閉弁72を閉じることで、吐出ヘッド20Hのノズル20Nと連通する液室が加圧状態に維持される。この状態の下でワイパーキャリッジ59(図5等を参照)が移動することでワイパー58によりノズル面20Aが払拭される。
【0095】
このように、キャリッジは、メンテナンス部が待機位置とメンテナンス位置とに移動する移動経路上を移動することで、加圧位置PPに配置される構成に限定されない。メンテナンス部が姿勢角を変更させる構成や、移動経路とは交差する異なる方向に移動可能な構成である場合、移動経路とは異なる移動をするときにメンテナンス部又はメンテナンス部を搭載するメンテナンス用キャリッジが加圧機構のダイヤフラム62を押圧する構成であってもよい。図20に示すメンテナンス部がキャップ部である構成において、キャップ部41が移動経路とは異なる方向に回動又は移動することで加圧機構60のダイヤフラム62を押圧してもよい。図20では、キャップ部41は、姿勢角を変更可能に構成されるが、移動経路と交差する方向に移動することでダイヤフラム62を押圧する構成でもよい。なお、払拭部51について、同様に、移動経路に沿った移動方向と異なる方向に回動又は移動する構成とし、払拭部51が移動経路と異なる方向への回動又は移動によって加圧機構のダイヤフラム62を押圧する構成でもよい。
【0096】
この構成によれば、キャップキャリッジ46を利用して加圧機構60のダイヤフラム62を押圧することで、吐出ヘッド20Hを加圧できる。加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する専用のキャリッジが不要である。よって、加圧機構60を駆動させる駆動系の構成を簡単にすることができる。ひいては、液体吐出装置11の構成が簡単で済む。
【0097】
・メンテナンス部の移動経路に沿って加圧位置PPに移動することで加圧機構60のダイヤフラム62を押圧するキャリッジは、図21図22に示すキャップキャリッジ46でもよい。例えば、図21図22に示すように、メンテナンス部の一例としてのキャップ45を搭載するキャップキャリッジ46は、ガイドレール43に沿って待機位置PC1とキャップ位置PC2とを含む移動経路上を移動可能である。図21に示すように、キャップ位置PC2においてキャップ45が吐出ヘッド20Hのノズル面20Aに接触することで、吐出ヘッド20Hをキャッピングする。このキャッピング状態の下で本クリーニングが行われる。キャップ位置PC2とは異なる位置に加圧位置PPが設定される。図22に示すように、キャップ部41がガイドレール43に沿って移動経路上の加圧位置PPに移動することで、キャップキャリッジ46が加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する。この場合、加圧位置PPにあるキャップ45は、吐出ヘッド20Hのノズル20Nから漏出する液体を受容できる位置に配置される。このため、キャップ部41は、吐出ヘッド20Hの加圧と、加圧によりノズル20Nから漏出する液体の受容とを両立する。この構成によっても、加圧機構60が液体貯留室63の1室で済むうえ、加圧機構60のダイヤフラム62を押圧する専用のキャリッジが不要である。よって、加圧機構60の構成及び加圧機構60を駆動させる駆動系の構成を簡単にすることができる。ひいては、液体吐出装置11の構成が簡単で済む。
【0098】
・変形部材は、ベローズでもよい。例えば、加圧機構は、蛇腹状のベローズと、ベローズの室内に収容された付勢部材の一例としてのばねとを備える。ばねの付勢力によりベローズは容積を大きくする方向に変形する。ベローズ内の液室は、液体収容部101と印刷部20とを接続する液体供給流路73と連通する。液体供給流路73には、液体供給方向において加圧機構60よりも上流の位置に配置された第1開閉弁71と、加圧機構60よりも下流の位置に配置された第2開閉弁72とが配置される。このような変形部材としてベローズを備える加圧機構60であっても、前記実施形態と同様に簡易クリーニングとして加圧クリーニングを行うことができる。
【0099】
・加圧機構60に対する加圧は、ノズル20Nからの液体を漏出(排出)を伴わない加圧であってもよい。つまり、ノズル20Nの開口から液体が膨出するだけの加圧であってもよい。この場合、ノズル20Nの開口から膨出した液体の重力にその表面張力が打ち勝って垂れることがない。この構成であっても、ワイパー58が吐出ヘッド20Hのノズル面20Aを払拭する際にノズル20N内に気泡が混入することを抑制できる。
【0100】
・加圧機構60を構成するばね64等の付勢部材を無くしてもよい。例えば、ダイヤフラム62等の変形部材が、押圧なしの状態で、液体貯留室63の容積を大きくする方向に復元する構成であってもよい。この場合、キャリッジが変形部材を押圧している加圧位置PPから離れれば、変形部材が容積を大きくする方向に復元することで、液体収容部101から液体を液体貯留室63内に充填できる。
【0101】
・ワイピングを先に行い、その後に加圧機構の変形部材を押圧することで簡易クリーニングを行ってもよい。
・ワイパー58は、ワイパーブレードに限らず、布ワイパーでもよい。
【0102】
・付勢部材は、ばね64に限らずゴム部材でもよい。
・ダイヤフラム62等の変形部材を液体貯留室63の容積を大きくする方向に付勢するばね64等の付勢部材を備えなくてもよい。
【0103】
・印刷部20と対向する位置で媒体Mを支持する支持部は、搬送ベルト25Bに限定されず、例えば、プラテンでもよい。また、搬送ベルト25Bである場合、静電式と吸着式のどちらでもよい。
【0104】
・液体吐出装置11は、媒体の一例である布帛にインク等の液体を吐出することで媒体に印刷する捺染装置であってもよい。
・液体吐出装置11は、ロール紙などの長尺状の媒体Mが巻回されたロールを装着可能な給送部を備えるインクジェット式のプリンターでもよい。
【0105】
・吐出ヘッド20Hがノズル20Nからインク等の液体を吐出するために内蔵する吐出駆動素子は、圧電方式、静電方式、バブル方式等のうちいずれかの駆動方式でもよい。
・液体吐出装置11は、ラインプリンターに限定されず、シリアルプリンター又はページプリンターでもよい。液体吐出装置11がシリアルプリンターである場合、吐出ヘッド20Hを搭載するヘッド用キャリッジを備え、ヘッド用キャリッジが走査方向(例えば、媒体Mの幅方向X)に移動する過程で吐出ヘッド20Hが、プラテン等の支持部に支持される媒体Mに向かって液体を吐出することで媒体Mに印刷される。この構成においても、メンテナンス部を搭載するキャリッジ(例えば、ワイパーキャリッジ等)を、加圧機構60の変形部材を押圧する駆動系として利用できる。
【0106】
・液体吐出装置11は、複合機に限定されず、画像読取部13を備えないプリンターでもよい。
・媒体Mは、紙、プラスチック製のシート又はフィルム、金属製のシート又はフィルム、紙とプラスチックとを含むメディア、金属とプラスチックとを含むラミネートシートなどであってもよい。
【0107】
・液体吐出装置11は、液体の一例としてインクを吐出する印刷装置に限定されない。液体吐出装置11は、インク以外の他の液体を吐出するものでもよい。液体吐出装置11から液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。ここでいう液体は、液体吐出装置11から吐出させることができるような材料であればよい。例えば、液体は、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体を含むものとする。液体は、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置11の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する装置がある。液体吐出装置11は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。液体吐出装置11は、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する装置であってもよい。液体吐出装置11は、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する装置であってもよい。
【0108】
以下に、前記実施形態及び変更例から導かれる技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部を搭載するキャリッジと、液体収容部から前記吐出ヘッドへ液体を供給する液体供給流路の途中に配置される加圧機構とを備え、前記加圧機構は、前記液体供給流路の一部を形成する液体貯留室と、前記液体貯留室の容積を変化させる変形が可能に構成される変形部材と、を有し、前記キャリッジは移動経路上の加圧位置で前記変形部材を押圧可能に構成され、前記キャリッジは前記加圧位置で前記変形部材に対する押圧により前記液体貯留室を加圧することで、前記液体貯留室と連通する前記吐出ヘッドの前記ノズル内の液体を排出方向に流動させる。
【0109】
この構成によれば、液体貯留室は、液体供給流路の一部と変形部材とにより囲み形成された構成なので、加圧機構の構成が簡単で済む。また、液体貯留室の変形部材を押圧するためにメンテナンス部のキャリッジを利用するので、液体貯留室に貯留された液体を加圧するために変形部材を押圧する駆動系を簡単な構成で済ませることができる。よって、吐出ヘッドを加圧する加圧機構の構成と、加圧機構の液体貯留室を加圧する駆動系とを簡単な構成とすることができる。
【0110】
(B)上記(A)に記載の液体吐出装置において、前記液体貯留室を加圧することで、前記ノズルから液体を排出するクリーニングを行ってもよい。この構成によれば、吐出ヘッド内を加圧することでノズルをクリーニングさせるための液体を貯留する液体貯留室を有する加圧機構の構成を簡単にすることができる。
【0111】
(C)上記(A)又は(B)に記載の液体吐出装置において、前記変形部材は、ダイヤフラムであってもよい。この構成によれば、ダイヤフラムを押圧することで吐出ヘッド内を加圧できるので、液体貯留室を有する加圧機構の構成を簡単にすることができる。
【0112】
(D)上記(C)に記載の液体吐出装置において、前記加圧機構は、前記ダイヤフラムを前記液体貯留室の容積を大きくする方向に付勢する付勢部材を備え、前記キャリッジが前記ダイヤフラムから離間すると、前記液体貯留室に前記液体収容部から液体が充填されてもよい。この構成によれば、加圧後に液体貯留室に液体を貯留する加圧機構の構成を簡単にすることができる。
【0113】
(E)上記(A)~(D)のいずれか一つに記載の液体吐出装置において、前記吐出ヘッドは、ラインヘッドであってもよい。この構成によれば、吐出ヘッドがラインヘッドであっても、加圧機構の構成及び加圧機構を駆動させる駆動系の構成を簡単にすることができる。例えば、吐出ヘッドがシリアルヘッドであれば、吐出ヘッドを移動させるヘッド用キャリッジが加圧機構の変形部材を押圧する構成を採用することもできるが、この種のヘッド用キャリッジがないラインヘッドであっても、メンテナンス部のキャリッジを利用して加圧機構の変形部材を押圧することができる。
【0114】
(F)上記(A)~(E)のいずれか一つに記載の液体吐出装置において、前記メンテナンス部は、前記吐出ヘッドにおける前記ノズルが開口するノズル面を払拭するワイパーであり、前記キャリッジは、前記ワイパーを搭載するワイパーキャリッジであってもよい。
【0115】
この構成によれば、ワイパーキャリッジを利用して加圧機構の変形部材を押圧することで、吐出ヘッドを加圧できる。加圧機構の変形部材を押圧する専用のキャリッジが不要である。よって、加圧機構を駆動させる駆動系の構成を簡単にすることができる。ひいては、液体吐出装置の構成が簡単で済む。
【0116】
(G)上記(A)~(E)のいずれか一つに記載の液体吐出装置において、前記メンテナンス部は、前記吐出ヘッドの前記ノズルから排出された液体を受容するキャップであり、前記キャリッジは、前記キャップを搭載するキャップキャリッジであってもよい。この構成によれば、キャップキャリッジを利用して加圧機構の変形部材を押圧することで、吐出ヘッドを加圧できる。加圧機構の変形部材を押圧する専用のキャリッジが不要である。よって、加圧機構を駆動させる駆動系の構成を簡単にすることができる。ひいては、液体吐出装置の構成が簡単で済む。
【0117】
(H)上記(A)~(G)のいずれか一つに記載の液体吐出装置において、前記液体供給流路の途中に配置され、前記液体収容部から前記吐出ヘッドへ液体が供給される液体供給方向において前記加圧機構よりも上流に位置する第1開閉弁と、前記液体供給流路の途中に配置され、前記液体供給方向において前記加圧機構よりも下流に位置する第2開閉弁と、前記キャリッジ、前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1開閉弁を閉じ、且つ前記第2開閉弁を開いた状態で、前記キャリッジを前記加圧位置に移動させることで前記液体貯留室を加圧してもよい。
【0118】
この構成によれば、キャリッジが加圧位置で変形部材を押圧して液体貯留室から押し出された液体を吐出ヘッド内の加圧に有効利用できる。例えば、液体貯留室の容積を小さく抑えることができる。この場合、加圧機構の小型化に寄与する。
【0119】
(I)上記(H)に記載の液体吐出装置において、前記制御部は、前記液体貯留室を加圧した後、前記キャリッジが前記加圧位置にある状態の下で、前記第2開閉弁を閉じてもよい。この構成によれば、第2開閉弁を閉じた後、変形部材の押圧を解除しても吐出ヘッド内を加圧状態に維持できる。これにより、ノズルの開口から液体が膨出する状態を維持できる。例えば、ワイパーが吐出ヘッドを払拭する際にノズル内への気泡の混入を抑制できる。
【0120】
(J)上記(H)又は(I)に記載の液体吐出装置において、前記制御部は、前記キャリッジが前記加圧位置から離れる前に、前記第1開閉弁を開けてもよい。この構成によれば、吐出ヘッドを加圧した後、液体貯留室に液体を速やかに貯留できる。例えば、液体貯留室に所定量の液体が貯留されるまでの待ち時間を少なくすることができる。
【0121】
(K)上記(F)に記載の液体吐出装置において、前記ワイパーキャリッジは、前記加圧位置で前記液体貯留室を加圧することで前記ノズル内の液体を加圧し、前記加圧の状態の下で、前記ワイパーが前記吐出ヘッドの前記ノズル面を払拭してもよい。この構成によれば、吐出ヘッド内を加圧してノズルから液体が膨出する状態の下で吐出ヘッドを払拭(ワイピング)することができる。払拭時のノズル内への気泡の混入等を抑制できる。
【符号の説明】
【0122】
11…液体吐出装置、12…装置本体、13…画像読取装置、14…操作部、14A…表示部、15…カセット、15A…把手、16…給送トレイ、19…排出部、19A…排出トレイ、19B…積載面、20…印刷部、20H…吐出ヘッド、20A…ノズル面、20N…ノズル、20U…単位ヘッド、21…搬送部、22…ピックアップローラー、23…搬送ローラー対、24…搬送ローラー対、25A…ローラー、25B…搬送ベルト、26…搬送ローラー対、27…フラップ、31…移動機構の一例としての第1移動機構、32…ガイドレール、33…昇降モーター、40…キャップユニット、41…キャップ部、42…第2移動機構、43…ガイドレール、44…キャップモーター、45…メンテナンス部の一例としてのキャップ、46…キャリッジの一例としてのキャップキャリッジ、47…チューブ、48…ポンプ、50…払拭ユニット、51…払拭部、52…第3移動機構、53…ガイドレール、54…ワイパーモーター、55…動力伝達機構、56…プーリー、57…タイミングベルト、58…メンテナンス部の一例としてのワイパー、59…キャリッジの一例としてのワイパーキャリッジ、59A…押圧部、60…加圧機構、61…ケース、62…変形部材の一例としてのダイヤフラム、63…液体貯留室、64…付勢部材の一例としてのばね、71…第1開閉弁、72…第2開閉弁、73…液体供給流路、81…流路、82…液室、91…第1エンコーダー、92…第2エンコーダー、93…第3エンコーダー、95…給送モーター、96…搬送モーター、100…制御部、101…液体収容部、102…廃液収容部、110…コンピューター、111…第1カウンター、112…第2カウンター、113…第3カウンター、114メモリー、T…搬送経路、T1…搬送路、T2…搬送路、T3…搬送路、T4…搬送路、T5…反転路、M…媒体、A…キャップ部の移動方向であるA方向、B…印刷部の移動方向であるB方向(昇降方向)、X…払拭部の移動方向であるX方向(幅方向)、Z…鉛直方向、PH1…交換位置、PH2…退避位置、PH3…被払拭位置、PH4…被キャップ位置、PH5…印刷位置、PC1…待機位置、PC2…キャップ位置、PW1…待機位置、PW2…折返し位置、PP…加圧位置、SE1…第1センサー、SE2…第2センサー、SE3…第3センサー、SE4…媒体幅センサー、IL…液体(インク)、MS…メニスカス、ML…液膜、BL…気泡、EL…膨出部、PR…プログラム、PI…位置情報。
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