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特開2024-133902半導体装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133902
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240926BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240926BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240926BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043910
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老池 勇史
(72)【発明者】
【氏名】迫 紘平
(57)【要約】
【課題】ゲート絶縁膜の表面の凹凸を抑制できる半導体装置および半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【解決手段】本開示に係る半導体装置は、基板と、前記基板の第1面に設けられた第1電極と、前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、を備え、前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた改質層と、を有し、前記改質層は、前記下部層よりも結晶粒径が小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面に設けられた第1電極と、
前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、
前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、
前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、
前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、
前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた改質層と、を有し、
前記改質層は、前記下部層よりも結晶粒径が小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記改質層は、前記下部層よりも不純物濃度が低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記改質層は、前記下部層よりも不純物濃度が高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記改質層は、非晶質シリコンであることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板は、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の前記第1面側に設けられた第2導電型のベース層と、
前記ドリフト層の前記第2面側に設けられた前記第2導電型のコレクタ層と、
前記ベース層の前記第1面側に設けられた前記第1導電型のエミッタ層と、
を備え、
前記トレンチは、前記基板の前記第1面から前記ベース層および前記エミッタ層を貫通し、前記ドリフト層に到達することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板は、ワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドであることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
基板と、
前記基板の第1面に設けられた第1電極と、
前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、
前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、
前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、
前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、
前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた改質層と、を有し、
前記改質層は、前記下部層よりも不純物濃度が低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
基板と、
前記基板の第1面に設けられた第1電極と、
前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、
前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、
前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、
前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、
前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた非晶質シリコン層と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
前記基板は、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の前記第1面側に設けられた第2導電型のベース層と、
前記ドリフト層の前記第2面側に設けられた前記第2導電型のコレクタ層と、
前記ベース層の前記第1面側に設けられた前記第1導電型のエミッタ層と、
を備え、
前記トレンチは、前記基板の前記第1面から前記ベース層および前記エミッタ層を貫通し、前記ドリフト層に到達することを特徴とする請求項8または9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記基板は、ワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする請求項8または9の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドであることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有する基板の前記第1面にトレンチを形成し、
前記トレンチの内部に埋込電極を形成し、
前記埋込電極に表面改質処理を施し、前記埋込電極の前記第1面側に改質層を形成し、
前記改質層を酸化させて、または前記改質層の上に堆積させて、ゲート絶縁膜を形成し、
前記トレンチの内部のうち前記ゲート絶縁膜の上に上部電極を形成し、
前記改質層は、前記埋込電極のうち前記改質層以外の部分よりも結晶粒径が小さいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記表面改質処理は、イオン注入、プラズマ処理、レーザー照射の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記改質層は、非晶質シリコンであることを特徴とする請求項13または14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記改質層を形成した後、前記ゲート絶縁膜を形成する前に、前記改質層の表面を平坦化させることを特徴とする請求項13または14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有する基板の前記第1面にトレンチを形成し、
前記トレンチの内部に埋込電極を形成し、
前記トレンチの内部のうち前記埋込電極の上に非晶質シリコン層を形成し、
前記非晶質シリコン層を酸化させて、または前記非晶質シリコン層の上に堆積させて、ゲート絶縁膜を形成し、
前記トレンチの内部のうち前記ゲート絶縁膜の上に上部電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1導電型の半導体基板と、半導体基板のおもて面側に形成され、半導体基板の不純物濃度よりも高濃度である第1導電型の蓄積層とを備えた半導体装置が開示されている。この半導体装置は、さらに半導体基板のおもて面に形成されたトレンチ部と、半導体基板のおもて面に設けられたトランジスタ部およびダイオード部とを備える。トレンチ部は、第1導電部と、第1導電部の下方であって、蓄積層の深さ方向における中心位置よりも下方に形成された第2導電部と、第1導電部の側面および第2導電部の周囲を覆う絶縁膜とを有する。トレンチ部は、絶縁膜が第1導電部と第2導電部との間を絶縁するスプリット構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6844147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に特許文献1に示されるような半導体装置において、ゲートコレクタ間の寄生容量はスイッチング損失に影響を与える。この寄生容量は帰還容量と呼ばれる。特許文献1では、トレンチ内に異なる2つの電極を形成している。このような構造では、上側の上部電極をゲートと接続し、下側の埋込電極をエミッタと接続することで、埋込電極近傍の半導体領域が帰還容量に寄与しなくなる。このため、帰還容量を低減でき、スイッチング損失を低減することが可能となる。
【0005】
特許文献1のような半導体装置において、埋込電極と上部電極との間を電気的に分離する絶縁膜は、例えば埋込電極として形成したポリシリコンを酸化することにより形成されたシリコン酸化膜である。しかし、このようなシリコン酸化膜は一般に表面の凹凸が大きい。これは埋込電極と上部電極との間の絶縁耐圧の低下の要因となり得る。これにより、エミッタ-ゲート間のリーク電流の増加およびゲート絶縁膜の信頼性の低下が生じる可能性がある。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、ゲート絶縁膜の表面の凹凸を抑制できる半導体装置および半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示に係る半導体装置は、基板と、前記基板の第1面に設けられた第1電極と、前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、を備え、前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた改質層と、を有し、前記改質層は、前記下部層よりも結晶粒径が小さい。
【0008】
第2の開示に係る半導体装置は、基板と、前記基板の第1面に設けられた第1電極と、前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、を備え、前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた改質層と、を有し、前記改質層は、前記下部層よりも不純物濃度が低い。
【0009】
第3の開示に係る半導体装置は、基板と、前記基板の第1面に設けられた第1電極と、前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、を備え、前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた非晶質シリコン層と、を有する。
【0010】
第4の開示に係る半導体装置の製造方法は、第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有する基板の前記第1面にトレンチを形成し、前記トレンチの内部に埋込電極を形成し、前記埋込電極に表面改質処理を施し、前記埋込電極の前記第1面側に改質層を形成し、前記改質層を酸化させて、または前記改質層の上に堆積させて、前記ゲート絶縁膜を形成し、前記トレンチの内部のうち前記ゲート絶縁膜の上に上部電極を形成し、前記改質層は、前記埋込電極のうち前記改質層以外の部分よりも結晶粒径が小さい。
【0011】
第5の開示に係る半導体装置の製造方法は、第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有する基板の前記第1面にトレンチを形成し、前記トレンチの内部に埋込電極を形成し、前記トレンチの内部のうち前記埋込電極の上に非晶質シリコン層を形成し、前記非晶質シリコン層を酸化させて、または前記非晶質シリコンの上に堆積させて、ゲート絶縁膜を形成し、前記トレンチの内部のうち前記ゲート絶縁膜の上に上部電極を形成する。
【発明の効果】
【0012】
第1、第2、第3の開示に係る半導体装置および第4、第5の開示に係る半導体装置の製造方法では、改質層または非晶質シリコン層により、埋込電極と上部電極との間のゲート絶縁膜の表面の凹凸を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図4】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図6】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図7】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図8】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図9】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図10】実施の形態2の変形例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
各実施の形態に係る半導体装置および半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。同じまたは対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る半導体装置100の断面図である。半導体装置100はトレンチゲート型トランジスタである。半導体装置100は例えばnチャネル型の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)である。半導体装置100は、第1導電型のドリフト層11を有する基板を備える。基板は例えばシリコン基板である。第1導電型はn型、第2導電型はp型である。これに限らず、第1導電型がp型で、第2導電型がn型であっても良い。基板の第1面には第1電極であるエミッタ電極41が設けられる。基板の第1面と反対側の第2面には、第2電極であるコレクタ電極42が設けられる。
【0016】
ドリフト層11の第1面側には第2導電型のベース層12が設けられる。ドリフト層11の第2面側には第2導電型のコレクタ層13が設けられる。ベース層12の第1面側には第1導電型のエミッタ層14が設けられる。エミッタ層14は、ベース層12の表層の複数の部分に形成されている。基板の第1面にはトレンチ15が形成されている。トレンチ15は、基板の第1面からエミッタ層14およびベース層12を貫通し、ドリフト層11に到達する。
【0017】
トレンチ15の内部には埋込電極20と上部電極24が設けられる。上部電極24は、埋込電極20よりも第1面側に設けられる。ゲート絶縁膜30はトレンチ15の側壁と埋込電極20と上部電極24とを電気的に分離する。つまりゲート絶縁膜30は、埋込電極20とトレンチ15の側壁との間に形成された第1部分31と、上部電極24とトレンチ15の側壁との間に形成された第2部分32と、埋込電極20と上部電極24の間に形成された分離部分33を有する。分離部分33は、埋込電極20と上部電極24とを分離している。ゲート絶縁膜30は例えばシリコン酸化膜である。
【0018】
上部電極24の上にはゲート電極とエミッタ電極41を分離するための層間絶縁膜17が設けられる。エミッタ電極41は、ベース層12およびエミッタ層14とコンタクトしている。図示しないが、埋込電極20は半導体装置100の外周などにおいて、エミッタ電極41と接続されている。また、図示しないが、上部電極24は半導体装置100の外周などにおいて、ゲート電極と接続されている。
【0019】
埋込電極20は、下部層21と、下部層21よりも分離部分33に近い位置に設けられた改質層22とを有する。下部層21と改質層22は、それぞれポリシリコンを主材料とする。改質層22は、下部層21よりも結晶粒径が小さい。
【0020】
次に、半導体装置100の製造方法について説明する。図2~6は実施の形態1に係る半導体装置100の製造方法を説明する図である。まず、図2に示されるように、ドリフト層11を有する基板の第1面にトレンチ15を形成する。トレンチ15は、公知のリソグラフィ技術とエッチング技術を用いて形成できる。トレンチ15の深さと幅は、所望の耐圧と特性が確保できるように設計される。
【0021】
次に、図3に示されるように、トレンチ15の側壁および基板の第1面にゲート絶縁膜30aを形成する。ゲート絶縁膜30aは例えば、熱酸化法、堆積法、またはそれらの組み合わせで形成できる。次に、トレンチ15の内部に埋込電極20aを形成する。埋込電極20aは例えばポリシリコンを化学気相堆積法により堆積させることで形成できる。さらにエッチバックにより、堆積させたポリシリコンの上面を所望の深さに設定する。
【0022】
次に、図4に示されるように、埋込電極20aに表面改質処理を施す。これにより、埋込電極20aの第1面側に改質層22が形成される。つまり、下部層21と改質層22とを有する埋込電極20が形成される。上述の通り、改質層22は、埋込電極20のうち改質層22以外の部分よりも結晶粒径が小さい。
【0023】
改質層22は、例えば埋込電極20aの材料であるポリシリコンにSiをイオン注入して形成する。このような形成方法によると、改質層22の不純物濃度は下部層21と比較して低くなる。この場合、改質層22は下部層21よりも不純物濃度が低い層であると言える。
【0024】
改質層22は、例えば埋込電極20aの材料であるポリシリコンにAs、P、Geなどをイオン注入して形成しても良い。このような形成方法によると、改質層22の不純物濃度は下部層21と比較して高くなる。この場合、改質層22は、下部層21よりも不純物濃度が高い層であると言える。
【0025】
改質層22は、放電プラズマまたはレーザー照射によって形成しても良い。また、改質層22は、イオン注入、放電プラズマ、レーザー照射の何れかの組み合わせにより形成しても良い。このように、表面改質処理は、イオン注入、プラズマ処理、レーザー照射の少なくとも1つを含む。
【0026】
次に図5に示されるように、ゲート絶縁膜30aの埋込電極20より上の部分を除去する。このようなゲート絶縁膜30aの選択的なエッチングは、例えばウエットエッチ技術などで実現できる。これにより、ゲート絶縁膜30の第1部分31が形成される。
【0027】
次に図6に示されるように、埋込電極20の上にゲート絶縁膜30の第2部分32および分離部分33を同時に形成する。第2部分32および分離部分33は例えば熱酸化法、堆積法、またはそれらの組み合わせで形成できる。つまり、ゲート絶縁膜30の分離部分33は、改質層22を酸化させて、または改質層22の上にゲート絶縁膜30の材料を堆積させて形成される。
【0028】
なお、図5に示されるゲート絶縁膜30aを選択的に除去する工程は、省略しても良い。この場合、図4に示されるゲート絶縁膜30aにさらに酸化または堆積が行われる。このため、ゲート絶縁膜30aが第2部分32および分離部分33に含まれることとなる。
【0029】
次に、トレンチ15の内部のうちゲート絶縁膜30の分離部分33の上に上部電極24を形成する。以降の工程については、公知の成膜技術、エッチング技術、加工技術により図1に示される半導体装置100を製造することができる。
【0030】
次に、本実施の形態の効果を説明する。インバータ等のパワーエレクトロニクス機器の省エネのためには、半導体スイッチング装置の損失を低減させることが好ましい。一般に損失は、半導体スイッチング装置の導通損またはスイッチング損失により決定される。本実施の形態の半導体装置100は、同一トレンチ内に2つの電極である埋込電極20と上部電極24を有しており、上部電極24はゲート電極と接続され、埋込電極20はエミッタ電極と接続される。これにより、埋込電極20がエミッタ電位となるため、帰還容量を抑制できる。従って、スイッチング損失を低減することができる。
【0031】
さらに本実施の形態によれば、表面改質処理により、埋込電極20の表層において結晶の原子配列が乱れる。これにより、結晶粒径が小さい改質層22が形成される。下部層21よりも結晶粒径の小さい改質層22を酸化させて、ゲート絶縁膜30の分離部分33を形成することで、分離部分33の表面の凹凸を抑制できる。
【0032】
また、堆積法によって分離部分33を形成する場合、分離部分33の表面形状は埋込電極20の表面の凹凸形状を引き継ぐ。このため、結晶粒径が小さく表面の凹凸も小さい改質層22の上にゲート絶縁膜30の材料を堆積させることで、分離部分33の表面の凹凸を抑制できる。
【0033】
以上から本実施の形態によれば、分離部分33の平坦性を向上させて、分離部分33の絶縁耐圧の低下を抑制できる。これにより、エミッタ-ゲート間の絶縁性を向上でき、信頼性を向上できる。
【0034】
本実施の形態の半導体装置100の構造および製造方法は一例であり、支障をきたさない範囲で変更されて良い。本実施の形態の変形例として、表面改質処理はウエハ全面に行っても良く、公知のフォトリソグラフィ技術等を用いて埋込電極20aのみに選択的に行っても良い。特に、ウエハ全面に表面改質処理を施す場合、図5に示されるゲート絶縁膜30aを選択的に除去する工程により、ゲート絶縁膜30aのうち第1部分31以外のダメージを受けた部分を除去できる。
【0035】
また、原子配列がランダムになるとポリシリコンは非晶質シリコンとなる。表面改質処理では、ポリシリコンが非晶質シリコン化されるまで表面改質処理を行っても良い。つまり、改質層22は非晶質シリコン層であっても良い。これに限らず、表面改質処理では、改質層22をポリシリコンと非晶質シリコンの中間である微結晶の状態に留めても良い。なお、改質層22を非晶質シリコンとした場合の方が、微結晶の場合よりも分離部分33の凹凸の抑制効果は高いと考えられる。
【0036】
また、改質層22を酸化させてゲート絶縁膜30の分離部分33を形成する場合、酸化の結果として改質層22は残っても良く、残らなくても良い。改質層22が残らない場合、完成した半導体装置100において改質層22は存在せず、下部層21に接して分離部分33が設けられることとなる。
【0037】
図4に示される表面改質処理により改質層22を形成した後、ゲート絶縁膜30の分離部分33を形成する前に、改質層22の表面をさらに平坦化させても良い。平坦化処理は、例えばエッチングにより改質層22の表層を除去することで実施される。表面改質後に平坦化処理を追加することで、後に形成するゲート絶縁膜30の分離部分33をさらに平坦にすることができる。
【0038】
本実施の形態ではIGBTを例に説明した。これに限らず、半導体装置100はRC(Reverse-Conducting)-IGBTまたは金属―酸化膜―半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)であっても良い。
【0039】
また、基板はワイドバンドギャップ半導体で形成されていても良い。ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドである。本実施の形態によれば、半導体装置100がワイドバンドギャップ半導体で形成されて高電流が流れる場合にも、ゲート絶縁膜30の信頼性を向上できる。
【0040】
上述した変形は、以下の実施の形態に係る半導体装置および半導体装置の製造方法について適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る半導体装置および半導体装置の製造方法については実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0041】
実施の形態2.
本実施の形態では埋込電極に表面改質処理を施すのに代えて、埋込電極の上に非晶質シリコン層を形成する点が実施の形態1と異なる。他の構成は実施の形態1と同様である。図7~9は、実施の形態2に係る半導体装置100の製造方法を説明する図である。基板の第1面にトレンチ15を形成し、トレンチ15の内部に埋込電極20aを形成するまでの工程は実施の形態1の工程と同様である。次に、図7に示されるように、ゲート絶縁膜30aの埋込電極20aより上の部分を除去して第1部分31を形成する。ゲート絶縁膜30aの選択的なエッチングは、例えばウエットエッチ技術などで実現できる。
【0042】
次に図8に示されるように、トレンチ15の内部のうち埋込電極20aの上と、ゲート絶縁膜30aを選択的に除去した領域に、非晶質シリコン層234を形成する。つまり、埋込電極20aの上面と、埋込電極20aより上方のトレンチ15の側壁と、基板の第1面に非晶質シリコン層234を形成する。非晶質シリコン層34は、例えば化学気相堆積法またはプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する。
【0043】
次に、図9に示されるように、非晶質シリコン層234を酸化させて、ゲート絶縁膜の第2部分232および分離部分233を形成する。
【0044】
本実施の形態においても、ポリシリコンより結晶粒径が小さい非晶質シリコン層234を酸化させてゲート絶縁膜の分離部分233を形成することで、分離部分233の表面の凹凸を抑制できる。
【0045】
また、非晶質シリコン層234の上にゲート絶縁膜の材料を堆積させて、ゲート絶縁膜の第2部分232および分離部分233を形成しても良い。この場合も、実施の形態1と同様に分離部分233の表面の凹凸を抑制できる。
【0046】
非晶質シリコン層234を酸化させてゲート絶縁膜の分離部分233を形成する場合、酸化の結果として埋込電極20aの上の非晶質シリコン層234は残っても良く、残らなくても良い。非晶質シリコン層234が残らない場合は図9のような構造が得られる。非晶質シリコン層234が残る場合は、図9の埋込電極20aと分離部分233の間に非晶質シリコン層234が設けられることとなる。
【0047】
図10は、実施の形態2の変形例に係る半導体装置100の製造方法を説明する図である。図10は、非晶質シリコン層234を形成した状態を示している。変形例では、ゲート絶縁膜30aの上に非晶質シリコン層234を形成する。つまり、図7に示されるゲート絶縁膜30aを選択的に除去する工程を省略している。この場合、ゲート絶縁膜の第2部分と基板の第1面上の部分は、非晶質シリコン層234から形成されたシリコン酸化膜とゲート絶縁膜30aの2層構造となる。
【0048】
なお、本実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【0049】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
基板と、
前記基板の第1面に設けられた第1電極と、
前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、
前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、
前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、
前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、
前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた改質層と、を有し、
前記改質層は、前記下部層よりも結晶粒径が小さいことを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記改質層は、前記下部層よりも不純物濃度が低いことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記改質層は、前記下部層よりも不純物濃度が高いことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記4)
前記改質層は、非晶質シリコンであることを特徴とする付記1から3の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
前記基板は、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の前記第1面側に設けられた第2導電型のベース層と、
前記ドリフト層の前記第2面側に設けられた前記第2導電型のコレクタ層と、
前記ベース層の前記第1面側に設けられた前記第1導電型のエミッタ層と、
を備え、
前記トレンチは、前記基板の前記第1面から前記ベース層および前記エミッタ層を貫通し、前記ドリフト層に到達することを特徴とする付記1から4の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
前記基板は、ワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする付記1から5の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドであることを特徴とする付記6に記載の半導体装置。
(付記8)
基板と、
前記基板の第1面に設けられた第1電極と、
前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、
前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、
前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、
前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、
前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた改質層と、を有し、
前記改質層は、前記下部層よりも不純物濃度が低いことを特徴とする半導体装置。
(付記9)
基板と、
前記基板の第1面に設けられた第1電極と、
前記基板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、
前記基板の前記第1面に形成されたトレンチの内部に設けられた埋込電極と、
前記トレンチの内部に設けられ、前記埋込電極よりも前記第1面側に設けられた上部電極と、
前記トレンチの側壁と前記埋込電極と前記上部電極とを電気的に分離するゲート絶縁膜と、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は、前記埋込電極と前記上部電極とを分離する分離部分を有し、
前記埋込電極は、下部層と、前記下部層よりも前記分離部分に近い位置に設けられた非晶質シリコン層と、を有することを特徴とする半導体装置。
(付記10)
前記基板は、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の前記第1面側に設けられた第2導電型のベース層と、
前記ドリフト層の前記第2面側に設けられた前記第2導電型のコレクタ層と、
前記ベース層の前記第1面側に設けられた前記第1導電型のエミッタ層と、
を備え、
前記トレンチは、前記基板の前記第1面から前記ベース層および前記エミッタ層を貫通し、前記ドリフト層に到達することを特徴とする付記8または9に記載の半導体装置。
(付記11)
前記基板は、ワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする付記8から10の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記12)
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドであることを特徴とする付記11に記載の半導体装置。
(付記13)
第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有する基板の前記第1面にトレンチを形成し、
前記トレンチの内部に埋込電極を形成し、
前記埋込電極に表面改質処理を施し、前記埋込電極の前記第1面側に改質層を形成し、
前記改質層を酸化させて、または前記改質層の上に堆積させて、ゲート絶縁膜を形成し、
前記トレンチの内部のうち前記ゲート絶縁膜の上に上部電極を形成し、
前記改質層は、前記埋込電極のうち前記改質層以外の部分よりも結晶粒径が小さいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記14)
前記表面改質処理は、イオン注入、プラズマ処理、レーザー照射の少なくとも1つを含むことを特徴とする付記13に記載の半導体装置の製造方法。
(付記15)
前記改質層は、非晶質シリコンであることを特徴とする付記13または14に記載の半導体装置の製造方法。
(付記16)
前記改質層を形成した後、前記ゲート絶縁膜を形成する前に、前記改質層の表面を平坦化させることを特徴とする付記13から15の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記17)
第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有する基板の前記第1面にトレンチを形成し、
前記トレンチの内部に埋込電極を形成し、
前記トレンチの内部のうち前記埋込電極の上に非晶質シリコン層を形成し、
前記非晶質シリコン層を酸化させて、または前記非晶質シリコン層の上に堆積させて、ゲート絶縁膜を形成し、
前記トレンチの内部のうち前記ゲート絶縁膜の上に上部電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0050】
11 ドリフト層、12 ベース層、13 コレクタ層、14 エミッタ層、15 トレンチ、17 層間絶縁膜、20 埋込電極、20a 埋込電極、21 下部層、22 改質層、24 上部電極、30 ゲート絶縁膜、30a ゲート絶縁膜、31 第1部分、32 第2部分、33 分離部分、34 非晶質シリコン層、41 エミッタ電極、42 コレクタ電極、100 半導体装置、232 第2部分、233 分離部分、234 非晶質シリコン層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10