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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133908
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】照度測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20240926BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01J1/02 S
G01J1/42 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043928
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 義彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲司
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA03
2G065AA11
2G065AA20
2G065AB22
2G065BA04
2G065BB44
2G065BB48
2G065BC33
2G065BC35
(57)【要約】
【課題】水面に対して設定された1以上の測定点の照度を移動装置を使って測定する。
【解決手段】本開示の一態様に係る照度測定システム1は、1以上の測定点Pを含む航行ルートに沿って水上を移動する移動装置と、移動装置に設けられた測定ユニット40と、を備え、測定ユニット40は、照度センサ42と、撮影装置46と、照度センサ42、及び撮影装置46を保持するジンバル機構49と、を備え、照度センサ42が検出軸KAを水平面照度、又は鉛直面照度の測定に対応する方向に向けた姿勢でジンバル機構49に保持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の測定点を含む航行ルートに沿って水上を移動する移動装置と、
前記移動装置に設けられた測定ユニットと、を備え、
前記測定ユニットは、
照度センサと、
撮影装置と、
前記照度センサ、及び前記撮影装置を保持するジンバル機構と、
を備え、
前記照度センサが検出軸を、水平面照度、又は鉛直面照度の測定に対応する方向に向けた姿勢で前記ジンバル機構に保持される
照度測定システム。
【請求項2】
前記移動装置の操縦に係る信号を送信する送信機と、
前記信号を前記移動装置において受信する受信機と、
を備え、
前記受信機は、
前記撮影装置の撮影像を少なくとも含む送信データを前記送信機に送信するテレメトリ伝送装置を備える
請求項1に記載の照度測定システム。
【請求項3】
前記移動装置の無人による移動を制御する航行制御手段と、
前記移動装置の現在位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置によって検出された現在位置を補正するための補正データを生成する補正データ生成手段と、を備え、
前記航行制御手段は、
前記補正データに基づいて補正された前記現在位置に基づいて、前記移動装置の無人による移動を制御する
請求項1に記載の照度測定システム。
【請求項4】
前記照度センサの照度検出信号に基づく照度測定値と、前記補正データに基づいて補正された前記現在位置と、に基づいて、前記1以上の測定点での照度を示す照度分布を生成する照度分布生成手段を備える
請求項3に記載の照度測定システム。
【請求項5】
前記撮影装置が撮影軸を前記移動装置の進行方向に向けた姿勢で前記ジンバル機構に保持される
請求項1に記載の照度測定システム。
【請求項6】
前記移動装置には、前記ジンバル機構に所定の姿勢で保持された前記撮影装置の撮影範囲に入る箇所に目印が設けられ、
前記撮影装置の撮影像の表示画面には基準位置が表示され、
前記表示画面内での前記目印と前記基準位置とのそれぞれの相対的な位置関係が、前記ジンバル機構に保持されている前記撮影装置の姿勢と前記所定の姿勢とのズレに対応する
請求項1に記載の照度測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照度測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
施設等の照明設備において、そこに設置された複数の照明器具が予め設計したとおりの機能を発揮しているかを確認するため、被照射面における照度分布の測定が行われている。また、被照射面が比較的広い場合の照度分布を測定する手法として、次の手法が実施されている。すなわち、自身の位置を測定する位置測定装置と、照度を測定する照度計とを、作業者が搭乗する移動装置に設け、作業者の操縦によって移動装置が移動しながら、位置測定装置、及び照度計が、それぞれ、位置情報、及び照度を一定時間ごとに計測し、それぞれが計測結果をログデータに記録する、という手法である。
しかしながら、この手法では、位置情報、及び照度のそれぞれのログデータに記録された膨大なデータから、同一時刻に計測された位置情報と照度とを抽出する、という非常に煩雑な作業を要する。
【0003】
一方、特許文献1には、位置測定装置、及び照度計を自走式の移動装置に搭載し、移動装置が複数の測定点のそれぞれに順次に移動し、各測定点で照度計が照度を測定する照度測定システムが示されている。この照度測定システムによれば、広い範囲の中に設定された多数の測定点のそれぞれでの照度を比較的容易に計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6307475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の照度測定システムは、野球場、及び競技場などの地面の照度を測定するものであり、競艇場のコースのように比較的広い水面の照度を測定することについては開示がない。
また、上述の手法によって水面の照度分布を測定する場合、作業者がボートを操縦し、測定点に移動して照度測定を行うことになるが、正確な位置での測定が難しく、また作業者が誤って測定機器などを水面に落下させるおそれもあった。
【0006】
本開示は、水面に対して設定された1以上の測定点の照度を移動装置を使って測定する照度測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの態様に係る照度測定システムは、1以上の測定点を含む航行ルートに沿って水上を移動する移動装置と、前記移動装置に設けられた測定ユニットと、を備え、前記測定ユニットは、照度センサと、撮影装置と、前記照度センサ、及び前記撮影装置を保持するジンバル機構と、を備え、前記照度センサが検出軸を、水平面照度、又は鉛直面照度の測定に対応する方向に向けた姿勢で前記ジンバル機構に保持される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の1つの態様によれば、水面に対して設定された1以上の測定点の照度を移動装置を使って測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る照度測定システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図2】第1システムの構成の一例を示す図である。
図3】航行ルートの作成手順についての説明図である。
図4】表示装置における撮影像の表示画面の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示に係る好適な形態を説明する。なお、図面において、各部の寸法、及び縮尺が実際と適宜に異なる場合があり、理解を容易にするために模式的に示している部分を含む場合がある。また、以下の説明において、本開示を限定する旨の特段の記載が無い限り、本開示の範囲は以下の説明に記載された形態に限られない。本開示の範囲は当該形態の均等の範囲を含む。
【0011】
1.実施形態
図1は、本開示の実施形態に係る照度測定システム1の構成の一例を模式的に示す図である。
本実施形態の照度測定システム1は、本開示の「照度測定システム」の一例であり、競艇場のコースのように、複数の測定点P(図3)が設定されるような比較的広い範囲の水面Aにおける照度分布を測定するシステムである。照度測定システム1は、図1に示すように、遠隔操縦により水上を航行する無人のボート10と、遠隔操縦の操縦信号D1をボート10に無線によって送信する送信機20と、作業者が操作する作業者端末30と、を備える。ボート10は、本開示における「移動装置」の一例である。
【0012】
ボート10には、照度、及び撮影像を得るための測定ユニット40が設けられ、無人のボート10が各測定点Pを経由するルートに沿って自動で航行する間、測定ユニット40を用いて照度、及び撮影像が順次に取得される。本実施形態では、ボート10において取得された照度、及び撮影像が順次に送信機20を介して作業者端末30に入力される。送信機20、及び作業者端末30は、地上に配置される。そして、ボート10が水上を航行している間、照度、及び撮影像がリアルタイムに作業者端末30に入力され、作業者は、その照度、及び撮影像を作業者端末30で監視する等の作業を行う。また、ボート10が全ての測定点Pを経由することで、作業者端末30が各測定点Pの照度測定値MA(図2)に基づいて、水面における照度分布データD5を生成する。
【0013】
次いで、照度測定システム1の各部について詳述する。
【0014】
ボート10は、船体10Aと、当該船体10Aを推進させる推進装置10Bと、船体10Aの進行方向を変更する舵機構10Cとを備え、船体10Aには、第1システム50と、上述の測定ユニット40と、が搭載される。
測定ユニット40は、検出軸KAの方向の照度に応じた照度検出信号SA(図2)を出力する照度センサ42と、撮影軸KBの方向の撮影信号SB(図2)を出力する撮影装置46と、を備え、照度検出信号SA、及び撮影信号SBを第1システム50に入力する。
【0015】
図2は、第1システム50の構成の一例を示す図である。
第1システム50は、ボート10の自動航行機能と、測定ユニット40の照度検出信号SA、及び撮影信号SBに基づく測定データD2を収集する機能と、測定データD2を含む送信データD3を送信機20へ送信する機能とを実現するシステムである。具体的には、図2に示すように、第1システム50は、受信機500と、照度計本体502と、データ処理装置504と、映像信号処理装置506と、フライトコントローラ510とを含む。
【0016】
受信機500は、送信機20から無線によって送信された操縦信号D1をボート10において受信する機器であり、操縦信号D1をフライトコントローラ510に入力する。操縦信号D1は、ボート10の無人航行の開始、及び停止などを指示する信号である。
照度計本体502は、照度センサ42の照度検出信号SAに応じて照度測定値MAを生成し、この照度測定値MAをデータ処理装置504に出力する装置である。なお、照度計本体502は、照度センサ42とともに測定ユニット40に設けられてもよい。
データ処理装置504は、フライトコントローラ510が処理可能なデータ形式、換言すればフライトコントローラ510の仕様に適合するデータ形式に、照度測定値MAのデータ形式を変換し、変換後の照度測定値MAをフライトコントローラ510に出力する装置である。
映像信号処理装置506は、撮影装置46の撮影信号SBを、所定の映像フォーマットの映像信号SCに変換し、この映像信号SCをフライトコントローラ510に出力する装置である。
【0017】
フライトコントローラ510は、GNSS受信装置600と、第1記憶装置610と、第1制御装置620と、を備える。
GNSS受信装置600は、本開示における「位置検出装置」の一例である。GNSS受信装置600は、図1に示す測位衛星STが発するGNSS(Global Navigation Satellite System)信号をアンテナ600Aによって受信し、GNSS信号に基づいて自身の現在位置を計測し、当該現在位置を第1制御装置620に出力する。
【0018】
第1記憶装置610は、第1制御装置620が読み取り可能な記録媒体である。第1記憶装置610は、例えば、不揮発性メモリーと揮発性メモリーとを含む。不揮発性メモリーは、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。揮発性メモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。
第1制御装置620は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの1以上のプロセッサーを含む。第1制御装置620の機能の一部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路によって構成されてもよい。
【0019】
第1記憶装置610には、各種の機能を第1制御装置620に実現させるプログラムPRと、ボート10の航行ルートを示す航行ルートARと、ログデータLDと、が記憶される。
そして、第1制御装置620のプロセッサーがプログラムPRを実行することにより、第1制御装置620が現在位置補正部622、航行制御部624、ログ記録処理部626、及び測定データ送信処理部628として機能する。
【0020】
現在位置補正部622は、GNSS受信装置600によって計測された現在位置を補正することにより、現在位置の測位精度を高める機能部である。本実施形態において、現在位置の補正には、RTK(Real-time kinematic)技術が用いられる。すなわち、前掲図1に示すように、照度測定システム1は、RTK技術による補正を実現するための基準局70を備える。基準局70は、本開示における「補正データ生成手段」の一例である。基準局70は、位置情報が既知の地点に設置されており、GNSS信号を受信し、このGNSS信号から得られる自身の現在位置の計測値と、自身の既知の位置情報とに基づいて、当該GNSS信号から得られる計測値を補正するための補正データD4を生成する。この補正データD4が作業者端末30、及び送信機20を通じて第1システム50へ送信される。現在位置補正部622は、受信機500を通じて補正データD4を取得し、当該補正データD4に基づいて、GNSS受信装置600によって計測された現在位置を補正する。この補正により、ボート10の現在位置の計測誤差がセンチメートルオーダーに抑えられる。
【0021】
航行制御部624は、現在位置補正部622によって補正された現在位置と、航行ルートARとに基づいて、推進装置10B、及び舵機構10Cをそれぞれ制御することにより、ボート10を航行ルートARに沿って航行させる機能部である。すなわち、航行制御部624を備える第1制御装置620は、本開示における「航行制御手段」の一例でもある。なお、航行制御部624における推進装置10B、及び舵機構10Cの制御には、公知、又は周知の適宜の手法が用いられる。
航行ルートARは、ボート10を経由させるルート上に適宜の間隔で設定された複数のノードの位置座標の集合である。ノードの全て、又は、いずれか1以上が測定点Pに相当する。そして、航行制御部624は、各ノードを順に経由するように、推進装置10B、及び舵機構10Cをそれぞれ制御することで、1以上の測定点Pを順に経由するようにボート10が航行する。上述の通り、現在位置補正部622の補正により現在位置の測位精度が高められているため、高い精度でボート10を測定点Pに位置させることができる。
【0022】
ログ記録処理部626は、データ処理装置504から入力される照度測定値MA、及び現在位置補正部622によって補正された現在位置を間欠的に取得し、照度測定値MA、と、現在位置と時刻情報とを対応付けてログデータLDに記録する。これにより、航行ルートARに沿った位置と照度との対応がログデータLDに記録される。なお、ログ記録処理部626は、ボート10の航行制御に係る情報を照度測定値MAなどに対応付けて記録してもよい。航行制御に係る情報の例には、航行速度、バッテリー電圧、及び消費電力などが挙げられる。
【0023】
測定データ送信処理部628は、上記送信データD3を受信機500から送信機20へ送信する制御を実行する機能部である。
送信データD3は、照度測定の間に作業者が測定を監視するために利用されるデータであり、測定データD2と、補正後の現在位置と、を少なくとも含む。測定データD2は、上述の測定ユニット40の出力から得られるデータであり、本実施形態では、照度測定値MA、及び映像信号SCを含むデータである。また、本実施形態の送信データD3は、この測定データD2、及び、補正後の現在位置に加え、ボート10の航行制御に係る適宜の情報を含む。
【0024】
本実施形態の受信機500は、テレメトリ伝送装置500Aを備える。テレメトリ伝送装置500Aは、送信機20との間でテレメトリ(telemetry)方式によって双方向に通信する装置である。測定データ送信処理部628は、この受信機500を介して上記送信データD3を順次に送信する。
【0025】
図1に戻り、送信機20は、ボート10の遠隔操縦に用いられる、いわゆる「プロポ」と称される装置であり、上述の操縦信号D1を送信する。また、本実施形態の送信機20も、受信機500と同様に、上述のテレメトリ伝送装置20Aを備え、受信機500から順次に送信される送信データD3を受信する。送信機20は、無線、又は有線により作業者端末30に接続されており、送信データD3を順次に作業者端末30へ出力する。
【0026】
作業者端末30は、第2記憶装置300と、第2制御装置302と、信号出力装置304と、入力装置306と、を備えた電子機器である。作業者端末30には、ノート型、タブレット型、又は据置型のパーソナルコンピュータ、及びスマートフォンなどの適宜の電子機器が用いられる。
【0027】
第2記憶装置300は、第2制御装置302が読み取り可能な記録媒体である。第2記憶装置300は、例えば、不揮発性メモリーと揮発性メモリーとを含む。不揮発性メモリーは、例えば、ROM、EPROM、又はEEPROMである。揮発性メモリーは、例えば、RAMである。第2制御装置302は、例えばCPUなどの1つ以上のプロセッサーを含む。
信号出力装置304は、測定データD2、及びボート10の現在位置を表示するための信号を表示装置80に出力する。なお、作業者端末30は表示装置80を一体に備えてもよい。
ボート10が航行ルートARを航行することにより照度測定が行われている間、表示装置80には、測定データD2に基づく照度測定値MA、及び、撮影装置46の撮影像と、ボート10の現在位置とがリアルタイムに表示される。この表示により、作業者は、ボート10による照度測定をリアルタムに監視できる。
【0028】
また、第2制御装置302は、本開示における「照度分布生成手段」の一例でもある。すなわち、ボート10が航行ルートARに沿った航行を終えて全ての測定点Pを経由すると、第2制御装置302が、それまでの間に送られてきた測定データD2、及び現在位置に基づいて、各測定点Pの照度測定値MAを示す照度分布データD5を生成し、その照度分布データD5を第2記憶装置300に格納する。なお、第2制御装置302は、フライトコントローラ510によって記録されたログデータLDに基づいて照度分布データD5を生成してもよい。
【0029】
入力装置306は、各種の情報及び信号を入力するための装置である。本実施形態では、航行ルートARのデータが入力装置306から入力され、送信機20を通じて第1システム50へ送信される。
【0030】
図3は航行ルートARの作成手順についての説明図である。
航行ルートARは、作業者がコンピュータを用いて予め作成するデータである。具体的には、図3に示すように、コンピュータは、地図データに基づいて、測定対象である競艇場等の水面Aが写った航空写真表示形式の地図Eを表示装置に表示し、その地図Eにおける1以上の測定点Pの位置についてのユーザ入力を受け付ける(ステップSa1)。この場合において、障害物Fが水面Aに存在する場合には、当該障害物Fを避けて測定点Pが入力される。また、地図データは、インターネットから取得されるオンラインのデータでもよいし、ローカルに保存されているデータでもよい。
【0031】
コンピュータは、測定点Pの位置のユーザ入力を受け付け終えると、各測定点Pの位置(ノード)を経由するルートRを生成する(ステップSa2)。ステップSa2において、障害物Fが水面Aに存在する場合、コンピュータは、障害物Fを通らないルートRを生成する。なお、ルートRの生成手法には、公知、又は周知の適宜の手法を用いることができる。
そして、コンピュータは、各測定点Pの位置情報を地図Eの基となる地図データから取得し、それらをルートRの経由順に出力することにより、航行ルートARを生成する(ステップSa3)。
なお、コンピュータは、上記作業者端末30でもよい。また、航行ルートARは、フライトコントローラ510の第1記憶装置610に予め記憶されていてもよい。
【0032】
ここで、GNSS信号に基づく現在位置の計測値に含まれる誤差は数メートルのオーダーである。したがって、障害物Fを避ける航行ルートARが生成された場合でも、仮に、第1システム50がGNSS信号に基づく現在位置を使ってボート10の航行を制御しているときには、現在位置の計測値の誤差が大きいため、ボート10が障害物Fに衝突する可能性がある。
これに対して、本実施形態の第1システム50は、GNSS信号に基づく現在位置の計測値に代えて、補正データD4によって補正された後の現在位置をボート10の航行制御に使用するため、航行ルートARに沿って非常に正確にボート10を航行させることができ、ボート10が障害物Fに衝突することもない。
【0033】
なお、上述の特許文献1のように、レーザ測量機を用いることでも位置精度を非常に高めることができる。しかしながら、レーザ測量機においては、障害物Fが存在すると測量に不都合が生じるため、障害物Fが存在する水面Aの照度測定に用いることができない。
【0034】
次いで、測定ユニット40について詳述する。
【0035】
本実施形態の測定ユニット40は、上述した照度センサ42、及び撮影装置46の他に、船体10Aに固定されるジンバル機構49(図1)を備え、このジンバル機構49が照度センサ42、及び撮影装置46を、それぞれ所定の姿勢で保持する。ジンバル機構49は、水上を航行する船体10Aの揺れに対し、照度センサ42の検出軸KA、及び撮影装置46の撮影軸KBのそれぞれの方向を一定の方向に維持する機構であり、本実施形態では、2軸式よりも高精度に方向を一定に維持できる3軸式のジンバル機構49が用いられている。
【0036】
本実施形態において、図1に示すように、照度センサ42は、水面Aにおける水平面の照度測定値MAを計測するために、検出軸KAが鉛直方向Gaの上向きに向く姿勢でジンバル機構49に保持される。照度センサ42がジンバル機構49に保持されることにより、船体10Aの揺れに影響されることなく、常に照度センサ42の水面Aにおける水平面照度が測定されるため、照度の測定信頼度が高められる。なお、水面Aにおける鉛直面照度を測定する場合、照度センサ42は、検出軸KAが水平方向Gbに向く姿勢でジンバル機構49に保持される。
【0037】
一方、撮影装置46は、照度センサ42の検出軸KAに対し撮影軸KBが直交する姿勢を維持するようにジンバル機構49に保持される。したがって、ボート10の航行時には、船体10Aの揺れに影響されることなく、照度センサ42の検出軸KAに直交する方向の撮影像が撮影装置46に撮影され、この撮影像が表示装置80にリアルタイムに表示される。
【0038】
図4は、表示装置80における撮影像の表示画面Hの一例を模式的に示す図である。
本実施形態では、撮影装置46がジンバル機構49に所定の姿勢で保持された状態において、その撮影装置46の撮影範囲内に船体10Aの一部(図示例では、船首10A1)が入るように測定ユニット40が船体10Aに設置される。本実施形態において、「所定の姿勢」は、鉛直方向Ga又は水平方向Gbに向けられた照度センサ42の検出軸KAに対して撮影軸KBが直交する姿勢である。
また、船体10Aには、所定の姿勢でジンバル機構49に保持されている撮影装置46の撮影範囲に入る箇所に、図4に示すように、目印90が設けられる。目印90は、撮影装置46の姿勢を所定の姿勢に合わせるためのマークである。一方、表示装置80において、撮影装置46の撮影像を表示する表示画面Hには、2本の照準線HMの交点によって示された基準位置HMAが表示されている。基準位置HMAは、撮影装置46がジンバル機構49に所定の姿勢で保持された状態において撮影像に映り込む目印90が、表示画面H内で表示される位置を示すものである。すなわち、表示画面Hにおいて、目印90と基準位置HMAとのそれぞれの相対的な位置関係(すなわち両者のズレ)が、ジンバル機構49に保持されている撮影装置46の現在の姿勢と所定の姿勢との間のズレに対応する。
【0039】
したがって、作業者は、撮影像の表示画面Hにおいて、目印90と基準位置HMAとの相対的な位置関係を確認することにより、撮影装置46の現在の姿勢が所定の姿勢からズレているか否かを把握できる。ズレがある場合、作業者は、このズレを無くすようにジンバル機構49を調整して撮影装置46の姿勢を所定の姿勢に合わせることにより、照度センサ42の姿勢も、その検出軸KAが、水平面照度測定に対応する鉛直方向Gaを向く姿勢に自動的に正確に合わせられる。
【0040】
また、ジンバル機構49は、方向を検出する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)と、この慣性計測装置による検出値に基づいて、照度センサ42、及び撮影装置46の向きを動的に変更するためのアクチュエータとを備える。しかしながら、慣性計測装置は気温の変化などにより検出誤差が増大することがあり、この結果、照度センサ42の検出軸KA、及び撮影装置46の撮影軸KBの方向がズレることがある。このような場合であっても、作業者は、撮影像の表示画面Hを適宜のタイミングで確認することにより、方向のズレが生じたことを速やかに認識することができ、ジンバル機構49の調整などを実施できる。なお、ジンバル機構49の係る調整を自動で行うための機構を第1システム50などが備えてもよいことは勿論である。
【0041】
ところで、本実施形態のボート10は、現在位置の補正データD4を用いた航行制御により、航行ルートARに正確に沿って航行する。しかしながら、航行ルートARの作成に用いられる地図データの誤差に起因して、航行ルートARの各ノードの位置情報(図2)が、現実の位置から数メートルオーダーでズレている場合がある。この場合、ボート10が航行ルートARに正確に沿って航行しているにも関わらず、水面Aに障害物Fが存在したときには、航行中にボート10が障害物Fに衝突してしまう可能性がある。また、作業者から遠い位置をボート10が航行している場合には、ボート10と障害物Fとの衝突を目視により監視することは非常に困難である。
これに対して、本実施形態では、上述の通り、ボート10の進行方向の撮影像が表示装置80に表示されるため、作業者は、ボート10の位置によらずに衝突を常に監視することができる。また、撮影装置46の撮影軸KBの向きがジンバル機構49によって水平方向Gbに正確に維持されるため、船体10Aの揺れに影響されることなく、作業者は常に進行方向の障害物Fを監視することができる。そして、作業者は、仮に進行方向に障害物Fを発見した場合、送信機20を操作するなどして、ボート10の航行を速やかに停止し、障害物Fとの衝突を防ぐことができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の照度測定システム1は、1以上の測定点Pを含む航行ルートARに沿って水上を航行するボート10と、ボート10に設けられた測定ユニット40と、を備える。また、測定ユニット40は、照度センサ42と、撮影装置46と、照度センサ42、及び撮影装置46を保持するジンバル機構49と、を備える。そして、照度センサ42が検出軸KAを、水平面照度の測定に対応する方向である鉛直方向Gaの上向きに向けた姿勢でジンバル機構49に保持される。
【0043】
この構成によれば、照度センサ42、及び撮影装置46がジンバル機構49に保持されるため、航行中のボート10が揺れた場合でも、その揺れの影響を受けずに、照度センサ42は水平面の照度を常に検出するため、測定点Pにおける照度の測定値が水面Aを計った値であることが保証され、信頼性の高い照度測定が実現される。
【0044】
本実施形態の照度測定システム1は、ボート10の操縦信号D1を送信する送信機20と、操縦信号D1をボート10において受信する受信機500と、を備え、受信機500は、撮影装置46の撮影像を少なくとも含む送信データD3を送信機20に送信するテレメトリ伝送装置500Aを備える。
この構成によれば、作業者が送信機20の側で撮影像を確認できる。したがって、ボート10が遠方に位置して障害物Fの発見が目視では容易でない状況でも、撮影者は、撮影像により障害物Fを容易に発見でき、また、障害物Fの発見時には送信機20を用いて速やかにボート10を停止させることができる。
【0045】
本実施形態の照度測定システム1は、ボート10の航行を制御する航行制御部624と、ボート10の現在位置を検出するGNSS受信装置600と、GNSS受信装置600によって検出された現在位置を補正するための補正データD4を生成する基準局70と、を備え、航行制御部624は、補正データD4に基づいて補正された現在位置に基づいて、ボート10の航行を制御する。
【0046】
この構成によれば、補正データD4による補正が無い場合に比べ、現在位置の測位精度が高められるため、航行ルートAR上を正確に航行し、各測定点Pの正確な位置での照度を測定できる。
また、仮に、航行ルートARに示された位置情報が誤差を含み、その航行ルートARが、現実には障害物Fに衝突し得るルートであった場合でも、上述のように、撮影像によってボート10の進行方向が常に映し出されるため、作業者は、撮影像を監視することにより、進行方向に存在する障害物Fを速やかに発見し、ボート10の航行を停止させることができる。
【0047】
本実施形態の照度測定システム1は、照度センサ42の照度検出信号SAに基づく照度測定値MAと、補正データD4に基づいて補正された現在位置と、に基づいて、1以上の測定点Pでの照度を示す照度分布データD5を生成する作業者端末30を備える。
この構成によれば、各測定点Pについて正確な位置で測定され、信頼性の高い照度分布データD5が得られる。
【0048】
本実施形態の照度測定システム1において、撮影装置46が撮影軸KBをボート10の進行方向に向けた姿勢でジンバル機構49に保持される。
この構成によれば、ボート10が揺れた場合でも、撮影像によってボート10の進行方向が常に映し出されるため、進行方向に存在する障害物を撮影像から発見できる。
【0049】
ボート10には、ジンバル機構49に所定の姿勢で保持された撮影装置46の撮影範囲に入る箇所に目印90が設けられ、撮影装置46の撮影像の表示画面Hには基準位置HMAが表示され、表示画面H内での目印90と基準位置HMAとのそれぞれの相対的な位置関係が、ジンバル機構49に保持されている撮影装置46の姿勢と所定の姿勢とのズレに対応する。
この構成によれば、作業者が撮影像の表示画面H内での目印90と基準位置HMAとの相対的な位置関係を確認することにより、撮影装置46の現在の姿勢が所定の姿勢からズレているか否かを把握できる。また、ズレがある場合、作業者は、このズレを無くすようにジンバル機構49を調整して撮影装置46の姿勢を所定の姿勢に合わせることにより、照度センサ42の姿勢も、その検出軸KAが、水平面照度測定に対応する鉛直方向Gaを向く姿勢に自動的に正確に合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…照度測定システム、10…ボート(移動装置)、20…送信機、20A、500A…テレメトリ伝送装置、30…作業者端末、40…測定ユニット、42…照度センサ、46…撮影装置、49…ジンバル機構、70…基準局(補正データ生成手段)、80…表示装置、90…目印、302…第2制御装置(照度分布生成手段)、500…受信機、510…フライトコントローラ、600…GNSS受信装置(位置検出装置)、620…第1制御装置(航行制御手段)、A…水面、AR…航行ルート、D2…測定データ、D4…補正データ、D5…照度分布データ、F…障害物、KA…検出軸、KB…撮影軸、MA…照度測定値、P…測定点。
図1
図2
図3
図4