(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013391
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】シート状導電部材、コネクタ、衣服およびコネクタ実装方法
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20240125BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01R12/77
A41D27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115445
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】古本 哲也
【テーマコード(参考)】
3B035
5E223
【Fターム(参考)】
3B035AA23
3B035AD15
5E223AB42
5E223BA01
5E223BA04
5E223BA08
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD02
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB25
5E223EA03
(57)【要約】
【課題】導電糸により形成されるフレキシブル導体を有しながらも、コネクタのコンタクトおよび実装対象物の配線部に対する電気的接続の信頼性を向上させることができるシート状導電部材を提供する。
【解決手段】シート状導電部材は、シート本体に刺繍された、または、編み込まれた導電糸により形成されたフレキシブル導体20を備え、フレキシブル導体20は、衣服の配線部に電気的に接続される第1端部20Aと、コンタクトに電気的に接続される第2端部20Bと、第1端部20Aおよび第2端部20Bを互いに連結する連結部20Cとを有し、第1端部20Aおよび第2端部20Bにおける単位面積当たりの導電糸の露出面積は、連結部における単位面積当たりの導電糸の露出面積よりも広い。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装対象物に実装されるコネクタに取り付けられ且つ前記実装対象物の配線部を前記コネクタのコンタクトに電気的に接続するシート状導電部材であって、
絶縁性のシート本体と、
前記シート本体の表面上に露出するように前記シート本体に刺繍された、または、編み込まれた導電糸により形成され且つ前記シート本体の表面に沿って延びているフレキシブル導体と
を備え、
前記フレキシブル導体は、前記配線部に電気的に接続される第1端部と、前記コンタクトに電気的に接続される第2端部と、前記第1端部および前記第2端部を互いに連結する連結部とを有し、
前記第1端部および前記第2端部における単位面積当たりの前記導電糸の露出面積は、前記連結部における単位面積当たりの前記導電糸の露出面積よりも広いことを特徴とするシート状導電部材。
【請求項2】
複数の前記フレキシブル導体を備え、
前記複数の前記フレキシブル導体の前記第1端部は、第1配列ピッチで直線状に配列され、
前記複数の前記フレキシブル導体の前記第2端部は、前記複数の前記フレキシブル導体の前記第1端部と平行に第2配列ピッチで直線状に配列され、
前記第1配列ピッチは、前記第2配列ピッチよりも大きい請求項1に記載のシート状導電部材。
【請求項3】
前記シート本体は、前記コネクタへの取り付けに利用される開口部を有し、
前記複数の前記フレキシブル導体の前記第2端部は、前記開口部を挟んで互いに対向するように前記開口部の両側に2列に配列されている請求項2に記載のシート状導電部材。
【請求項4】
前記シート本体は、前記開口部に突出する突出片を有し、前記フレキシブル導体の前記第2端部は、前記突出片に配置されている請求項3に記載のシート状導電部材。
【請求項5】
前記第1端部は、前記第2端部の幅よりも広い幅を有し、前記連結部は、前記第2端部の前記幅と同じ幅を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のシート状導電部材。
【請求項6】
前記実装対象物に実装される前記コネクタであって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の前記シート状導電部材と、
前記シート状導電部材の前記第2端部に電気的に接続される前記コンタクトと、
前記シート状導電部材および前記コンタクトを保持するための絶縁性のハウジングと
を備え、嵌合方向に沿って相手側コネクタに嵌合することを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記シート状導電部材を間に挟んで所定の組み込み方向に沿って互いに組み込まれる第1インシュレータおよび第2インシュレータを有し、
前記コンタクトは、前記第1インシュレータから前記嵌合方向に突出し且つ前記相手側コネクタのコンタクトに接触するための接触部と、前記ハウジング内に位置し且つ前記シート状導電部材の前記フレキシブル導体の前記第2端部に接続される接続部とを有する請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第1インシュレータは、前記嵌合方向に沿って延びる第1対向面を有し、
前記第2インシュレータは、前記嵌合方向に沿って延び且つ前記第1対向面に対向する第2対向面を有し、
前記第1対向面と前記第2対向面との間に前記シート状導電部材の前記フレキシブル導体の前記第2端部と前記コンタクトの前記接続部とが挟まれた状態で互いに電気的に接続される請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コンタクトは、前記接触部と前記接続部の間に配置され且つ前記第1インシュレータと前記第2インシュレータとの間に挟まれることにより前記ハウジングに保持される被保持部を有する請求項7に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記被保持部は、前記第1インシュレータと前記第2インシュレータとの間において、前記所定の組み込み方向に挟まれている請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記所定の組み込み方向は、前記嵌合方向と同一である請求項7に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記第1インシュレータと前記シート状導電部材との間に挟まれる絶縁性のタブシートを備え、
前記タブシートは、前記実装対象物に縫合されることにより前記実装対象物に固定される請求項7に記載のコネクタ。
【請求項13】
請求項6に記載の前記コネクタが実装されたことを特徴とする衣服。
【請求項14】
前記シート状導電部材の一部を通すためのスリットを有する請求項13に記載の衣服。
【請求項15】
請求項6に記載の前記コネクタを前記衣服に実装するコネクタ実装方法であって、
前記シート状導電部材の前記第1端部が前記衣服の前記配線部に重なるように前記シート状導電部材を前記衣服に対して配置し、
前記第1端部を前記配線部に縫合することにより前記シート状導電部材を前記衣服に取り付け且つ前記第1端部を前記配線部に電気的に接続する
ことを特徴とするコネクタ実装方法。
【請求項16】
前記配線部は、前記衣服の裏面上に配置され、
前記シート状導電部材の前記第2端部を、前記衣服の表面側に配置し、
前記シート状導電部材の前記第1端部を、前記衣服に形成されたスリットを通して前記衣服の前記裏面側において前記配線部に重なるように配置し、
前記第1端部を前記配線部に縫合する請求項15に記載のコネクタ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート状導電部材に係り、特に、衣服等の実装対象物に実装されるコネクタに取り付けられ且つ実装対象物の配線部をコネクタのコンタクトに電気的に接続するシート状導電部材に関する。
また、この発明は、シート状導電部材を有するコネクタ、コネクタが実装された衣服、および、コネクタを衣服に実装するコネクタ実装方法にも関している。
【背景技術】
【0002】
近年、着用するだけで心拍数、体温等のユーザの生体情報を取得することができる、いわゆるスマート衣料が注目を浴びている。このスマート衣料は、計測箇所に配置された電極を備え、電極に計測機器としてのウエアラブルデバイスを電気的に接続することで、生体情報をウエアラブルデバイスに伝送することが可能となる。
電極とウエアラブルデバイスとの接続は、例えば、電極から引き出された配線部に接続されるコネクタを用いることにより行うことができる。
【0003】
この種のコネクタとして、例えば、特許文献1に、
図22に示されるようなコネクタ1が開示されている。コネクタ1は、第1インシュレータ2に複数のコンタクト3を保持させ、第1インシュレータ2と第2インシュレータ4との間に、タブシート5とシート状導電部材6とサポートシート7を挟んで保持した構造を有している。
タブシート5が衣服8に固定されることで、コネクタ1が衣服8に取り付けられる。
【0004】
シート状導電部材6の中央部には、シート状導電部材6をコネクタ1に取り付けるために利用される切り込み6Aが形成されており、また、シート状導電部材6の表面には、切り込み6Aの近傍に、複数のフレキシブル導体6Bの一端部が配置されている。
シート状導電部材6がコネクタ1に取り付けられると、それぞれのフレキシブル導体6Bの一端部が、対応するコンタクト3に接触することでコンタクト3に接続され、それぞれのフレキシブル導体6Bの他端部が、衣服8に配置された図示しない導電性の配線部に縫合等により接続される。
これにより、計測箇所に配置された衣服8の電極が、配線部およびフレキシブル導体6Bを介してコネクタ1のコンタクト3に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フレキシブル導体6Bが、シート本体に刺繍された、または、編み込まれた導電糸により形成される場合には、フレキシブル導体6Bの一端部をコンタクト3に接触させても、フレキシブル導体6Bを構成する導電糸とコンタクト3との接触面積が小さく、電気的接続の信頼性を損なうおそれがある。同様に、フレキシブル導体6Bの他端部を衣服8の配線部に縫い付けても、フレキシブル導体6Bを構成する導電糸と衣服8の配線部との接触面積が小さく、電気的接続の信頼性を損なうおそれがある。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、導電糸により形成されるフレキシブル導体を有しながらも、コネクタのコンタクトおよび衣服等の実装対象物の配線部に対する電気的接続の信頼性を向上させることができるシート状導電部材を提供することを目的とする。
また、この発明は、このようなシート状導電部材を有するコネクタ、コネクタが実装された衣服、および、コネクタを衣服に実装するコネクタ実装方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るシート状導電部材は、
実装対象物に実装されるコネクタに取り付けられ且つ実装対象物の配線部をコネクタのコンタクトに電気的に接続するシート状導電部材であって、
絶縁性のシート本体と、
シート本体の表面上に露出するようにシート本体に刺繍された、または、編み込まれた導電糸により形成され且つシート本体の表面に沿って延びているフレキシブル導体と
を備え、
フレキシブル導体は、配線部に電気的に接続される第1端部と、コンタクトに電気的に接続される第2端部と、第1端部および第2端部を互いに連結する連結部とを有し、
第1端部および第2端部における単位面積当たりの導電糸の露出面積は、連結部における単位面積当たりの導電糸の露出面積よりも広いものである。
【0009】
複数のフレキシブル導体を備え、
複数のフレキシブル導体の第1端部は、第1配列ピッチで直線状に配列され、
複数のフレキシブル導体の第2端部は、複数のフレキシブル導体の第1端部と平行に第2配列ピッチで直線状に配列され、
第1配列ピッチは、第2配列ピッチよりも大きいことが好ましい。
【0010】
シート本体は、コネクタへの取り付けに利用される開口部を有し、複数のフレキシブル導体の第2端部は、開口部を挟んで互いに対向するように開口部の両側に2列に配列されていることが好ましい。
さらに、シート本体は、開口部に突出する突出片を有し、フレキシブル導体の第2端部は、突出片の先端部との間に所定の間隔を隔てるように突出片に配置されるように構成することができる。
また、第1端部は、第2端部の幅よりも広い幅を有し、連結部は、第2端部の幅と同じ幅を有することが好ましい。
【0011】
この発明に係るコネクタは、
実装対象物に実装されるコネクタであって、
上記のシート状導電部材と、
シート状導電部材の第2端部に電気的に接続されるコンタクトと、
シート状導電部材およびコンタクトを保持するための絶縁性のハウジングと
を備え、嵌合方向に沿って相手側コネクタに嵌合するものである。
【0012】
ハウジングは、シート状導電部材を間に挟んで所定の組み込み方向に沿って互いに組み込まれる第1インシュレータおよび第2インシュレータを有し、
コンタクトは、第1インシュレータから嵌合方向に突出し且つ相手側コネクタのコンタクトに接触するための接触部と、ハウジング内に位置し且つシート状導電部材のフレキシブル導体の第2端部に接続される接続部とを有することが好ましい。
【0013】
第1インシュレータは、嵌合方向に沿って延びる第1対向面を有し、
第2インシュレータは、嵌合方向に沿って延び且つ第1対向面に対向する第2対向面を有し、
第1対向面と第2対向面との間にシート状導電部材のフレキシブル導体の第2端部とコンタクトの接続部とが挟まれた状態で互いに電気的に接続されるように構成することができる。
【0014】
コンタクトは、接触部と接続部の間に配置され且つ第1インシュレータと第2インシュレータとの間に挟まれることによりハウジングに保持される被保持部を有することが好ましい。
被保持部は、第1インシュレータと第2インシュレータとの間において、所定の組み込み方向に挟まれるように構成してもよい。
この場合、所定の組み込み方向は、嵌合方向と同一にすることができる。
第1インシュレータとシート状導電部材との間に挟まれる絶縁性のタブシートを備え、
タブシートは、実装対象物に縫合されることにより実装対象物に固定されることが好ましい。
【0015】
この発明に係る衣服は、上記のコネクタが実装されたものである。
シート状導電部材の一部を通すためのスリットを有することが好ましい。
【0016】
この発明に係るコネクタ実装方法は、
上記のコネクタを衣服に実装するコネクタ実装方法であって、
シート状導電部材の第1端部が衣服の配線部に重なるようにシート状導電部材を衣服に対して配置し、
第1端部を配線部に縫合することによりシート状導電部材を衣服に取り付け且つ第1端部を配線部に電気的に接続する
方法である。
【0017】
配線部は、衣服の裏面上に配置され、
シート状導電部材の第2端部を、衣服の表面側に配置し、
シート状導電部材の第1端部を、衣服に形成されたスリットを通して衣服の裏面側において配線部に重なるように配置し、
第1端部を配線部に縫合するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、シート本体に刺繍された、または、編み込まれた導電糸により形成されているフレキシブル導体は、配線部に電気的に接続される第1端部と、コンタクトに電気的に接続される第2端部と、第1端部および第2端部を互いに連結する連結部とを有し、第1端部および第2端部における単位面積当たりの導電糸の露出面積は、連結部における単位面積当たりの導電糸の露出面積よりも広いので、導電糸により形成されるフレキシブル導体を有しながらも、コネクタのコンタクトおよび実装対象物の配線部に対する電気的接続の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るコネクタを斜め上方から見た分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るコネクタを斜め下方から見た分解斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るコネクタに用いられる第1インシュレータを斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】実施の形態に係るコネクタに用いられる第1インシュレータを斜め下方から見た斜視図である。
【
図6】実施の形態に係るコネクタに用いられる第2インシュレータを斜め上方から見た斜視図である。
【
図7】実施の形態に係るコネクタに用いられる第2インシュレータを斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】実施の形態に係るコネクタに用いられるコンタクトを斜め上方から見た斜視図である。
【
図9】実施の形態に係るコネクタに用いられるコンタクトを斜め下方から見た斜視図である。
【
図10】実施の形態に係るコネクタに用いられるタブシートを示す斜視図である。
【
図11】実施の形態に係るコネクタに用いられるシート状導電部材を示す斜視図である。
【
図12】実施の形態に係るコネクタに用いられるシート状導電部材を示す部分平面図である。
【
図13】実施の形態に係るコネクタに用いられるシート状導電部材のフレキシブル導体の第1端部および第2端部に露出する導電糸を示す平面図である。
【
図14】実施の形態に係るコネクタに用いられるシート状導電部材のフレキシブル導体の連結部に露出する導電糸を示す平面図である。
【
図15】実施の形態に係るコネクタを示す部分拡大断面図である。
【
図16】衣服の表面に対して位置合わせされた実施の形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図17】衣服の裏面において衣服の配線部に実施の形態に係るコネクタのフレキシブル導体の第1端部が重ねられた状態を示す斜視図である。
【
図18】衣服の配線部に縫合された実施の形態に係るコネクタのフレキシブル導体の第1端部を示す側面断面図である。
【
図19】衣服の配線部に縫合された変形例に係るコネクタのフレキシブル導体の第1端部を示す側面断面図である。
【
図20】実施の形態に係るコネクタに嵌合される相手側コネクタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に、実施の形態に係るコネクタ11を示す。コネクタ11は、例えば、導電性の配線部を有する衣服(実装対象物)に装着され、ウエアラブルデバイスを嵌合するためのコネクタとして使用されるもので、絶縁性材料からなるハウジング12を有している。ハウジング12には、複数のコンタクト13が保持され、さらに、ハウジング12により、タブシート14とシート状導電部材15が互いに重ねられた状態で保持されている。
複数のコンタクト13は、互いに平行な2列に配列された状態で、シート状導電部材15に対して垂直に突出するように配置されている。
【0021】
ここで、便宜上、タブシート14およびシート状導電部材15がXY面に沿って延び、複数のコンタクト13の配列方向をY方向、複数のコンタクト13がそれぞれ突出する方向を+Z方向と呼ぶことにする。Z方向は、コネクタ11が相手側コネクタと嵌合する嵌合方向となる。
【0022】
図2および
図3は、コネクタ11の分解斜視図である。コネクタ11は、第1インシュレータ16および第2インシュレータ17を有しており、これら第1インシュレータ16および第2インシュレータ17によりハウジング12が構成されている。
また、複数のコンタクト13は、それぞれ、第1インシュレータ16に仮保持され、第2インシュレータ17は、シート状導電部材15とタブシート14を間に挟みながら、所定の組み込み方向D1であるZ方向に沿って、第1インシュレータ16に組み込まれる。なお、所定の組み込み方向D1は、コネクタ11が相手側コネクタと嵌合する嵌合方向と同一である。
【0023】
なお、シート状導電部材15は、シート本体18と、シート本体18に刺繍糸により縫い表された刺繍パターン19を有しており、
図2および
図3に示されるように、シート状導電部材15の+Z方向側の表面にも-Z方向側の裏面にも刺繍パターン19が見えている。
【0024】
図4および
図5に示されるように、第1インシュレータ16は、XY面に沿って延びる矩形の平板形状の基部16Aと、基部16Aの周縁部から+Z方向に突出する周壁部16Bと、周壁部16Bの内側において、それぞれ基部16Aの表面から+Z方向に向かって突出し且つ互いに平行な2列に配列された複数の突部16Cとを有している。互いに隣接する突部16Cの間には、それぞれ空隙16Dが形成されている。
【0025】
基部16Aの-Z方向側の面には、-Z方向に向かって開口する矩形状の凹部16Eが形成されており、凹部16Eの底部には、それぞれ、基部16Aの+Z方向側の対応する空隙16Dから凹部16Eにまで貫通する複数の貫通孔16Fが形成されている。複数の貫通孔16Fは、複数のコンタクト13に対応するもので、互いに平行な2列に配列されている。
【0026】
また、凹部16Eの底部には、複数の貫通孔16Fに対してX方向に隣接する複数の保持面16Gが形成されている。それぞれの保持面16Gは、対応する貫通孔16Fと凹部16EのX方向を向いた内壁面16Hとの間において、XY面に沿って平面状に延びている。
凹部16EのX方向を向いた内壁面16Hは、嵌合方向であるZ方向に沿って延びる第1対向面を構成している。
さらに、基部16Aの-Z方向側の面には、-Z方向に向かって突出する複数の固定ポスト16Jが形成されている。
【0027】
図6および
図7に示されるように、第2インシュレータ17は、XY面に沿って延びる平板形状の基部17Aと、基部17Aの中央に配置され且つ基部17Aから+Z方向に向かって突出する直方体形状の凸部17Bと、凸部17Bから+Z方向に向かって突出する複数の柱状部材17Cとを有している。
凸部17Bは、第1インシュレータ16との組み込み時に、第1インシュレータ16の凹部16Eに挿入されるもので、凹部16Eよりもわずかに小さいサイズを有している。
【0028】
複数の柱状部材17Cは、複数のコンタクト13に対応するもので、互いに平行な2列に配列されている。
また、基部17Aには、凸部17Bの周辺に配置され且つ基部17AをZ方向に貫通する複数の貫通孔17Dが形成されている。これらの貫通孔17Dは、第1インシュレータ16の複数の固定ポスト16Jに対応している。
なお、凸部17BのX方向を向いた外側面17Eは、嵌合方向であるZ方向に沿って延びる第2対向面を構成している。
【0029】
図2および
図3に示される複数のコンタクト13のうち、+X方向側に配列されたコンタクト13の構成を
図8および
図9に示す。
コンタクト13は、金属等の導電性材料により形成された帯状部材からなるプラグ型のコンタクトであり、Z方向に延び且つU字状に曲げられたU形状部13Aを有している。U形状部13Aは、それぞれYZ面に沿って延び且つ互いにX方向に対向する一対の伸長部13Bおよび13Cと、一対の伸長部13Bおよび13Cの+Z方向端部を互いに連結する頂部13Dとから形成されている。伸長部13Bの-Z方向端部に、XY面に沿って延びる被保持部13Eを介して、YZ面に沿って延びる平板部13Fが接続されている。
【0030】
U形状部13Aの外面により、相手側コネクタのコンタクトに接触するための接触部S1が形成され、平板部13Fの-X方向側の面により、シート状導電部材15の表面に接触する接続部S2が形成されている。
コンタクト13が
図2および
図3に示されるハウジング12に保持されたときに、コンタクト13の接触部S1は、ハウジング12から+Z方向に突出し、コンタクト13の接続部S2は、ハウジング12内に配置される。
なお、
図2および
図3に示される複数のコンタクト13のうち、-X方向側に配列されたコンタクト13は、
図8および
図9に示されるコンタクト13と同一の構成を有しているが、X方向に関して反対向きに配置されている。
【0031】
図10に示されるように、タブシート14は、衣服に縫合等により固定されることで、コネクタ11を衣服に取り付けるためのもので、樹脂または布地等の絶縁性材料から形成され、第1インシュレータ16の基部16Aおよび第2インシュレータ17の基部17AのXY面におけるサイズよりも大きいサイズを有している。
【0032】
タブシート14の中央部には、ほぼ正方形の開口部14Aが形成されている。開口部14Aの周辺に位置するタブシート14の部分は、第1インシュレータ16と第2インシュレータ17とが互いに組み込まれる際に、シート状導電部材15と共に第1インシュレータ16の基部16Aと第2インシュレータ17の基部17Aとの間に挟まれるが、このとき、開口部14Aに、第2インシュレータ17の凸部17Bと複数の柱状部材17Cが挿入される。
また、タブシート14の開口部14Aの周辺には、複数の貫通孔14Bが形成されている。これらの貫通孔14Bは、第1インシュレータ16の複数の固定ポスト16Jに対応している。
【0033】
シート状導電部材15は、コネクタ11が実装される衣服の複数の配線部を、複数のコンタクト13に電気的に接続するためのもので、
図11に示されるように、絶縁性の布地または編地から形成されたシート本体18と、シート本体18に刺繍糸により縫い表された刺繍パターン19を有している。
シート本体18は、ほぼ正方形状を有し且つXY面に沿って延びており、中央部にH字形状の開口部18Aを有している。開口部18Aは、シート状導電部材15をコネクタ11に取り付ける際に利用されるもので、開口部18Aには、シート本体18の一部からなり且つ開口部18A内に互いにX方向に対向するように突出する一対の突出片18Bが形成されている。
また、シート本体18の開口部18Aの周辺には、複数の貫通孔18Cが形成されている。これらの貫通孔18Cは、第1インシュレータ16の複数の固定ポスト16Jに対応している。
【0034】
刺繍パターン19を形成する刺繍糸のうち、シート本体18の+Z方向側の表面に露出する部分にのみ導電糸を使用し、シート本体18の-Z方向側の表面に露出する部分に絶縁性の糸を使用することで、シート状導電部材15の+Z方向側の表面に露出するフレキシブル導体20が形成されている。すなわち、フレキシブル導体20は、導電糸を用いた刺繍により形成されている。
導電糸としては、いわゆる銀糸を用いることができる。
シート状導電部材15は、シート本体18の開口部18Aの+X方向側に配置される複数のフレキシブル導体20と、開口部18Aの-X方向側に配置される複数のフレキシブル導体20を有している。
【0035】
それぞれのフレキシブル導体20は、正方形状のシート本体18のY方向に沿って延びる辺の近傍に配置された第1端部20Aと、シート本体18の突出片18Bに配置された第2端部20Bと、第1端部20Aおよび第2端部20Bを互いに連結する連結部20Cを有している。コネクタ11が衣服に実装されたときに、第1端部20Aは、衣服の対応する配線部に接続され、第2端部20Bは、コネクタ11の対応するコンタクト13に接続される。
なお、シート本体18の開口部18Aの+X方向側に配置される複数のフレキシブル導体20の第2端部20Bと、シート本体18の開口部18Aの-X方向側に配置される複数のフレキシブル導体20の第2端部20Bは、開口部18Aを挟んで互いに対向するように開口部18Aの両側に2列に配列されている。
【0036】
図12に示されるように、シート本体18の開口部18Aの+X方向側に配置される複数のフレキシブル導体20において、複数の第1端部20Aは、Y方向に沿って第1配列ピッチP1で直線状に配列され、複数の第2端部20Bは、複数の第1端部20Aと平行に、Y方向に沿って第2配列ピッチP2で直線状に配列されている。なお、複数の第2端部20Bの第2配列ピッチP2は、複数のコンタクト13のY方向における配列ピッチに対応している。
【0037】
ここで、複数の第1端部20Aの第1配列ピッチP1は、複数の第2端部20Bの第2配列ピッチP2よりも大きく設定されている。
また、それぞれのフレキシブル導体20の第1端部20AのY方向の幅W1は、第2端部20BのY方向の幅W2よりも大きく設定されており、連結部20Cは、第2端部20Bと同じ幅を有している。
【0038】
すなわち、複数の第1端部20Aは、複数のコンタクト13の配列ピッチよりも大きい第1配列ピッチP1でY方向に配列されており、第1端部20Aが第2端部20Bの幅W2より大きい幅W1を有しながらも、互いにY方向に隣接する第1端部20Aの間に大きい間隔を確保することができるように構成されている。
さらに、それぞれのフレキシブル導体20の第1端部20Aは、Y方向の幅W1よりも長いX方向の長さL1を有している。
【0039】
フレキシブル導体20を構成する第1端部20A、第2端部20Bおよび連結部20Cは、それぞれ、シート本体18に刺繍された導電糸により形成されているが、導電糸の刺繍の密度すなわち導電糸の詰まり具合は、均一ではなく、互いに異なっている。具体的には、第1端部20Aおよび第2端部20Bにおける導電糸の刺繍の密度は、連結部20Cにおける導電糸の刺繍の密度よりも高くなるように設定されている。
言い替えると、第1端部20Aおよび第2端部20Bにおいては、連結部20Cに比べて、導電糸が密に詰まった刺繍が施されている。
【0040】
導電糸の刺繍の密度または導電糸の詰まり具合は、同一面積の領域に使用された導電糸の本数だけでなく、導電糸の太さにも関わるものである。そこで、導電糸の刺繍の密度または導電糸の詰まり具合を表す指標として、単位面積当たりの導電糸の露出面積を用いることとする。
【0041】
例えば、
図13に示されるように、第1端部20Aおよび第2端部20Bにおいて、単位面積を有する領域Uに着目し、領域U内で+Z方向に向かって露出している導電糸21の占有面積の総和を露出面積A1とする。
同様に、
図14に示されるように、連結部20Cにおいて、単位面積を有する領域Uに着目し、領域U内で+Z方向に向かって露出している導電糸21の占有面積の総和を露出面積A2とする。
第1端部20Aおよび第2端部20Bにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A1は、連結部20Cにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A2よりも広くなるように設定されている。
【0042】
第1端部20Aおよび第2端部20Bに使用される導電糸21と連結部20Cに使用される導電糸21の太さが互いに等しければ、第1端部20Aおよび第2端部20Bの単位面積当たりに使用される導電糸21の本数が、連結部20Cの単位面積当たりに使用される導電糸21の本数よりも多くなるように設定されている。
また、第1端部20Aおよび第2端部20Bに使用される導電糸21の太さを、連結部20Cに使用される導電糸21の太さよりも太くすれば、第1端部20Aおよび第2端部20Bの単位面積当たりに使用される導電糸21の本数と連結部20Cの単位面積当たりに使用される導電糸21の本数が互いに等しい場合であっても、第1端部20Aおよび第2端部20Bにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A1を、連結部20Cにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A2よりも広くすることができる。
【0043】
なお、シート本体18の開口部18Aの-X方向側に配置される複数のフレキシブル導体20においても、同様に、複数の第1端部20Aは、Y方向に沿って第1配列ピッチP1で直線状に配列され、複数の第2端部20Bは、複数の第1端部20Aと平行に、Y方向に沿って第2配列ピッチP2で直線状に配列されている。
さらに、シート本体18の開口部18Aの-X方向側に配置される複数のフレキシブル導体20においても、同様に、それぞれのフレキシブル導体20の第1端部20Aは、第2端部20BのY方向の幅W2よりも大きいY方向の幅W1を有し、連結部20Cは、第2端部20Bと同じ幅を有し、第1端部20Aは、Y方向の幅W1よりも長いX方向の長さL1を有している。
【0044】
また、シート本体18の開口部18Aの-X方向側に位置しているフレキシブル導体20においても、第1端部20Aおよび第2端部20Bにおける導電糸の刺繍の密度は、連結部20Cにおける導電糸の刺繍の密度よりも高く、第1端部20Aおよび第2端部20Bにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A1は、連結部20Cにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A2よりも広くなるように設定されている。
【0045】
なお、導電糸として用いられる銀糸は、例えば、銀箔を糸に巻きつける、または、銀箔を細く切って織り糸に撚り合わせたものであり、高価な糸であるが、フレキシブル導体20の全体にわたって銀糸を密に刺繍するのではなく、第1端部20Aおよび第2端部20Bにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A1を連結部20Cにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A2よりも広くしているため、シート状導電部材15の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0046】
コネクタ11を組み立てる際には、まず、第1インシュレータ16に対して、複数のコンタクト13をそれぞれ-Z方向から+Z方向に向けて押し込むことにより、第1インシュレータ16に複数のコンタクト13を仮保持させる。このとき、それぞれのコンタクト13のU形状部13Aが、第1インシュレータ16の-Z方向側の凹部16Eから、対応する貫通孔16Fを通って、互いに隣接する突部16Cの間に形成されている空隙16Dに挿入され、U形状部13Aの外面により形成されている接触部S1が第1インシュレータ16の+Z方向側に露出される。
また、複数のコンタクト13の被保持部13Eと接続部S2を形成する平板部13Fは、第1インシュレータ16の凹部16E内に位置しており、平板部13Fは、第1インシュレータ16の凹部16Eの内壁面16Hに接する状態となる。
【0047】
ここで、第1インシュレータ16の複数の固定ポスト16Jを、タブシート14の複数の貫通孔14Bおよびシート状導電部材15の複数の貫通孔18Cに順次貫通させて、タブシート14およびシート状導電部材15を第1インシュレータ16の-Z方向側に位置させる。さらに、第1インシュレータ16の複数の固定ポスト16Jを第2インシュレータ17の複数の貫通孔17Dに貫通させて、第2インシュレータ17を第1インシュレータ16に向けて+Z方向に移動させ、第1インシュレータ16への組み込みを開始する。
【0048】
このとき、第2インシュレータ17の複数の柱状部材17Cが、それぞれ、対応するコンタクト13のU形状部13Aの内側に-Z方向から挿入される。
また、第2インシュレータ17の凸部17Bが、-Z方向からシート状導電部材15の開口部18Aおよびタブシート14の開口部14Aに順次通された後、第1インシュレータ16の凹部16Eに挿入される。このとき、シート状導電部材15の開口部18A内に配置されている一対の突出片18Bが、第2インシュレータ17の凸部17Bにより押されて+Z方向に折り曲げられながら、第1インシュレータ16の凹部16Eの内壁面16Hに接しているコンタクト13の平板部13Fと第2インシュレータ17の凸部17Bの外側面17Eとの間に入り込む。
【0049】
そのまま第2インシュレータ17を第1インシュレータ16に向けて+Z方向に移動させると、
図15に示されるように、複数のコンタクト13の被保持部13Eが、第2インシュレータ17の凸部17Bの+Z方向側の面と第1インシュレータ16の凹部16E内の保持面16Gとの間に挟み込まれる。これにより、複数のコンタクト13は、第1インシュレータ16および第2インシュレータ17に保持される。
【0050】
また、シート状導電部材15のシート本体18の突出片18Bが、第2インシュレータ17の凸部17Bにより押されて+Z方向に折り曲げられた状態で、第1対向面を構成する第1インシュレータ16の凹部16Eの内壁面16Hと第2対向面を構成する第2インシュレータ17の凸部17Bの外側面17Eとの間に挟み込まれ、突出片18Bの表面に露出しているフレキシブル導体20の第2端部20Bが、第1インシュレータ16の凹部16Eの内壁面16Hに接しているコンタクト13の平板部13Fの接続部S2に所定の接触圧で接触する。これにより、コンタクト13が、シート状導電部材15の対応するフレキシブル導体20の第2端部20Bに電気的に接続される。
【0051】
上述したように、フレキシブル導体20の第2端部20Bにおける導電糸の刺繍の密度は、連結部20Cにおける導電糸の刺繍の密度よりも高く、第2端部20Bにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A1は、連結部20Cにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A2よりも広くなっている。このため、コンタクト13の平板部13Fの接続部S2とフレキシブル導体20の第2端部20Bとの間の実質的な接触面積が大きくなり、高い信頼性をもって第2端部20Bをコンタクト13に電気的に接続することが可能となる。
【0052】
なお、第1インシュレータ16の複数の固定ポスト16Jは、第2インシュレータ17の対応する貫通孔17Dを貫通して第2インシュレータ17の-Z方向側に突出する。
第2インシュレータ17の-Z方向側に突出した第1インシュレータ16の固定ポスト16Jの-Z方向端部が加熱変形されることにより、第2インシュレータ17が第1インシュレータ16に対して固定される。
これにより、
図1に示されるコネクタ11が組み立てられる。
【0053】
次に、コネクタ11を衣服31に実装する方法について説明する。
図16に示されるように、衣服31には、コネクタ11の取り付けが予定される箇所に2本のスリット32が形成されている。2本のスリット32は、X方向に間隔を隔てて互いに平行にY方向に延びており、衣服31の表面から裏面まで貫通している。2本のスリット32は、それぞれ、Y方向に沿って、コネクタ11のシート状導電部材15のY方向の長さよりもわずかに長い長さを有し、また、コネクタ11のハウジング12のX方向の長さよりもわずかに長い間隔で互いにX方向に隔てられている。
【0054】
このような衣服31の2本のスリット32の+Z方向側にコネクタ11を位置合わせした後、ハウジング12よりも+X方向側に位置する部分とハウジング12よりも-X方向側に位置する部分のシート状導電部材15が、それぞれ、対応するスリット32に通されることにより、衣服31の表面側から裏面側に引き出される。
図17に示されるように、衣服31の-Z方向を向いた裏面には、2本のスリット32に対して直交する+X方向および-X方向にそれぞれ伸びる、複数の導電性の配線部33が形成されている。これらの配線部33の一端は、対応するスリット32の近傍において、シート状導電部材15の複数の第1端部20Aと同じ配列ピッチでY方向に配列され、また、第1端部20Aとほぼ同じY方向の幅を有している。
【0055】
複数の配線部33は、例えば、衣服31に縫い込まれた導電糸により形成され、少なくとも-Z方向を向いた面が導電性を有している。また、複数の配線部33の他端は、衣服31の裏面に沿って、衣服31に取り付けられている図示しない電極まで延びているものとする。
衣服31の2本のスリット32を通して衣服31の-Z方向を向いた裏面側に引き出されたシート状導電部材15の+X方向側部分および-X方向側部分は、複数の配線部33の一端の上に重なるように配置される。
【0056】
配線部33の一端は、シート状導電部材15の複数の第1端部20Aと同じ配列ピッチでY方向に配列されているので、このとき、
図18に示されるように、シート状導電部材15の複数の第1端部20Aが、それぞれ、衣服31の対応する配線部33の-Z方向側に重なる状態となる。
そこで、縫合糸41を用いて衣服31とシート状導電部材15を縫い合わせることで、シート状導電部材15の複数の第1端部20Aを衣服31の複数の配線部33にそれぞれ電気的に接続することができる。
【0057】
図12に示されるように、シート状導電部材15の第1端部20AのY方向の幅W1は、第2端部20BのY方向の幅W2よりも大きく設定され、衣服31の配線部33は、第1端部20Aとほぼ同じY方向の幅を有している。
さらに、上述したように、フレキシブル導体20の第1端部20Aにおける導電糸の刺繍の密度は、連結部20Cにおける導電糸の刺繍の密度よりも高く、第1端部20Aにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A1は、連結部20Cにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A2よりも広くなっている。
このため、衣服31の配線部33とフレキシブル導体20の第1端部20Aとの間の実質的な接触面積が大きくなり、高い信頼性をもって第1端部20Aを衣服31の配線部33に電気的に接続することが可能となる。
【0058】
なお、
図18では、衣服31とシート状導電部材15とが、縫合糸41を用いて、いわゆる「なみ縫い」または「走り縫い」により縫い合わされているが、これに限るものではない。
【0059】
また、シート状導電部材15の第1端部20AのY方向の幅W1は、第2端部20BのY方向の幅W2よりも大きく、衣服31の配線部33は、第1端部20Aとほぼ同じY方向の幅を有しているため、シート状導電部材15および衣服31の配線部33の製造公差等により、シート状導電部材15の第1端部20Aと衣服31の配線部33の間に、Y方向のわずかな位置ずれが発生している場合であっても、第1端部20Aと配線部33の接触面積を確保して、確実に電気的に接続することができる。
また、コネクタ11のタブシート14も、縫合糸41を用いて、衣服31に縫合することで、コネクタ11を衣服31に固定することができる。
【0060】
図18に示されるように、シート状導電部材15の第1端部20Aと衣服31の配線部33とがZ方向に重なって、互いに直接接触しているため、縫合に使用される縫合糸41は、絶縁性の糸でもよく、導電性の糸でもよい。
ただし、絶縁性の糸を縫合糸41として用いれば、縫合糸41により、シート状導電部材15の複数の第1端部20Aを衣服31の複数の配線部33をまとめて縫合することもできる。
【0061】
上記の実施の形態においては、ハウジング12よりも+X方向側に位置する部分とハウジング12よりも-X方向側に位置する部分のシート状導電部材15が、それぞれ、衣服31の対応するスリット32に通されることにより、衣服31の表面側から裏面側に引き出されているが、これに限るものではない。例えば、
図16に示されるコネクタ11を、そのまま衣服31の+Z方向を向いた表面上に配置して、シート状導電部材15の一部を衣服31の裏面側に引き出すことなく、コネクタ11を衣服31に実装することもできる。
【0062】
このとき、衣服31の裏面上に配置されている配線部33の真上に、シート状導電部材15の対応する第1端部20Aを位置させれば、
図19に示されるように、第1端部20Aは、シート状導電部材15のシート本体18と衣服31を介して配線部33の+Z方向側に位置することになる。
そこで、導電性を有する縫合糸42を用いて、第1端部20Aからシート本体18および衣服31を通して配線部33まで縫合することで、縫合糸42を介して第1端部20Aと配線部33を電気的に接続することができる。
【0063】
この場合も、フレキシブル導体20の第1端部20Aにおける導電糸の刺繍の密度は、連結部20Cにおける導電糸の刺繍の密度よりも高く、第1端部20Aにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A1は、連結部20Cにおける単位面積当たりの導電糸21の露出面積A2よりも広くなっているので、第1端部20Aと導電性を有する縫合糸42との接触面積が大きくなる。このため、第1端部20Aと配線部33の電気的接続の信頼性が向上する。
【0064】
なお、導電性を有する縫合糸42を用いる場合には、複数の第1端部20Aの短絡を防止するために、複数の第1端部20Aに対し、それぞれ独立した縫合糸42を用いて対応する配線部33に縫合する必要がある。
【0065】
図20に、実施の形態に係るコネクタ11に嵌合される相手側コネクタ51を示す。相手側コネクタ51は、絶縁性材料からなるハウジング52を有し、ハウジング52に、複数のコンタクト53が保持されている。
複数のコンタクト53は、コネクタ11の複数のコンタクト13に対応し、複数のコンタクト13と同じ配列ピッチで、互いに平行な2列に配列されている。それぞれのコンタクト53は、-Z方向に向けられており、コネクタ11のプラグ型のコンタクト13に対応するレセプタクル型のコンタクトである。
【0066】
ハウジング52には、複数のコンタクト53の周囲を囲むように、-Z方向を向いた周回溝52Aが形成されている。周回溝52Aは、コネクタ11の第1インシュレータ16の周壁部16Bに対応している。
図21に示されるように、相手側コネクタ51は、第1インシュレータ54および第2インシュレータ55を有しており、これら第1インシュレータ54および第2インシュレータ55によりハウジング52が構成されている。
複数のコンタクト53は、第2インシュレータ55に保持され、周回溝52Aも、第2インシュレータ55に形成されている。
【0067】
相手側コネクタ51は、さらに、回路基板56と、回路基板56を第1インシュレータ54に固定するための複数の固定ネジ57を有している。第2インシュレータ55に保持されている複数のコンタクト53が、回路基板56の複数の接続パッド56Aに半田付け等により接続され、回路基板56が複数の固定ネジ57により第1インシュレータ54に固定されることで、相手側コネクタ51が組み立てられる。
ハウジング52とは反対側の+Z方向を向いた回路基板56の表面上には、複数のコンタクト53に接続された、図示しない無線送信回路等が搭載されている。
【0068】
このような相手側コネクタ51を、複数のコンタクト53が-Z方向に向けられた姿勢で、衣服31に実装されているコネクタ11に嵌合すると、コネクタ11の複数のプラグ型のコンタクト13が、相手側コネクタ51の複数のレセプタクル型のコンタクト53に挿入されて電気的に接続される。また、コネクタ11の第1インシュレータ16の周壁部16Bが、相手側コネクタ51のハウジング52の周回溝52Aに挿入され、コネクタ11に対して相手側コネクタ51が保持された状態となる。
【0069】
これにより、衣服31に取り付けられている電極を用いて取得された心拍数、体温等のユーザの生体情報が、衣服31の配線部33、コネクタ11のシート状導電部材15のフレキシブル導体20およびコンタクト13、並びに、相手側コネクタ51のコンタクト53を介して、回路基板56に搭載された無線送信回路に入力され、無線送信回路から、タブレット端末または据え置き型の計測装置等に無線送信することが可能となる。
【0070】
なお、上述した実施の形態に係るコネクタ11では、複数のコンタクト13が、互いに平行な2列に配列されているが、これに限るものではなく、1列に配列されていてもよい。また、この発明は、必ずしも複数のコンタクト13を必要とするものではなく、少なくとも1つのコンタクト13を有していればよい。
【0071】
なお、上記の実施の形態では、
図15に示されるように、シート状導電部材15のフレキシブル導体20が、シート本体18の+Z方向側の表面に露出しており、コンタクト13の平板部13Fが、第1インシュレータ16の凹部16Eの内壁面16Hに接触し、シート状導電部材15の突出片18Bが、コンタクト13の平板部13Fと第2インシュレータ17の凸部17Bの外側面17Eとの間に挟み込まれ、突出片18Bの表面に露出しているフレキシブル導体20の第2端部20Bがコンタクト13に電気的に接続されているが、これに限るものではない。
【0072】
シート状導電部材15のフレキシブル導体20は、シート本体18の-Z方向側の表面に露出していてもよく、この場合、コンタクト13の平板部13Fが、第2インシュレータ17の凸部17Bの外側面17Eに接触するように配置され、シート状導電部材15の突出片18Bが、コンタクト13の平板部13Fと第1インシュレータ16の凹部16Eの内壁面16Hとの間に挟み込まれ、突出片18Bの表面に露出しているフレキシブル導体20の第2端部20Bがコンタクト13の平板部13Fに電気的に接続される。
【0073】
また、コネクタ11のシート状導電部材15として、シート本体18の+Z方向側の表面に露出する部分も-Z方向側の表面に露出する部分も導電糸を用いた刺繍により形成して、シート本体18の両面にフレキシブル導体20を露出させることもできる。
さらに、上記の実施の形態では、シート状導電部材15のフレキシブル導体20が、シート本体18に刺繍された導電糸より形成されているが、これに限るものではなく、絶縁性の布地または編地からなるシート本体18に導電糸を編み込むことにより、フレキシブル導体20を形成することもできる。
【0074】
上記の実施の形態に係るコネクタ11では、ハウジング12とシート状導電部材15の間にタブシート14が配置されているが、特にコネクタ11を衣服31に実装する際に実装箇所を補強する必要がない場合には、タブシート14を省略してもよい。
また、上記の実施の形態では、コネクタ11が実装対象物としての衣服31に実装されているが、実装対象物は、衣服31に限るものではなく、例えば、ユーザが携帯または身に着けるバッグ類、ユーザの体を預けるシート、ベッド、寝具等にコネクタ11を実装することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 コネクタ、2 第1インシュレータ、3 コンタクト、4 第2インシュレータ、5 タブシート、6 シート状導電部材、6A 切り込み、6B フレキシブル導体、7 サポートシート、8 衣服、11 コネクタ、12,52 ハウジング、13,53 コンタクト、13A U形状部、13B,13C 伸長部、13D 頂部、13E 被保持部、13F 平板部、14 タブシート、14A,18A 開口部、14B,16F,17D,18C 貫通孔、15 シート状導電部材、16,54 第1インシュレータ、16A,17A 基部、16B 周壁部、16C 突部、16D 空隙、16E 凹部、16G 保持面、16H 内壁面、16J 固定ポスト、17,55 第2インシュレータ、17B 凸部、17C 柱状部材、17E 外側面、18 シート本体、18B 突出片、19 刺繍パターン、20 フレキシブル導体、20A 第1端部、20B 第2端部、20C 連結部、21 導電糸、31 衣服、32 スリット、33 配線部、41,42 縫合糸、51 相手側コネクタ、52A 周回溝、56 回路基板、56A 接続パッド、57 固定ネジ、D1 組み込み方向、S1 接触部、S2 接続部、P1 第1配列ピッチ、P2 第2配列ピッチ、W1,W2 幅、L1 長さ、U 領域。