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特開2024-133910ブレーキ制御システム、鉄道車両、及びブレーキ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133910
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ブレーキ制御システム、鉄道車両、及びブレーキ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20240926BHJP
   B60T 15/18 20060101ALI20240926BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T15/18 A
B60T8/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043930
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】染谷 貴司
(72)【発明者】
【氏名】樽本 直樹
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049AA04
3D049BB05
3D049BB32
3D049BB33
3D049BB36
3D049CC06
3D049HH03
3D049HH20
3D049HH48
3D049HH51
3D049QQ04
3D049RR04
3D049RR13
3D246AA17
3D246BA03
3D246DA01
3D246GA01
3D246GA14
3D246GA15
3D246HA03A
3D246HA42A
3D246LA28Z
3D246LA32Z
3D246MA07
3D246MA19
(57)【要約】
【課題】複数のブレーキ制御装置を繋ぐ配線の数を削減し、コスト及び配線の手間を抑える。
【解決手段】ブレーキ制御器、電磁弁、中継弁、中継弁に入力される空気の圧力を検出する圧力センサをそれぞれ備える複数のブレーキ制御装置を有している。ブレーキ制御器は、前記圧力センサから前記圧力の検出値を取得する圧力検出値取得部と、他の前記ブレーキ制御装置の異常が有る場合に異常信号を出力する異常信号出力部と、前記電磁弁の開度を制御する電磁弁開閉制御部と、を備える。第一ブレーキ制御装置の異常信号出力部で第二ブレーキ制御装置に異常が有ると判定して異常信号を出力した場合に、前記第一ブレーキ制御装置の圧力検出値取得部での圧力の検出値に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁と前記第二ブレーキ制御装置の前記電磁弁との開状態及び閉状態の切り替えを同期して制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両のブレーキ制御を行うブレーキ制御システムであって、
ブレーキシリンダと、
前記ブレーキシリンダの圧力制御を行うブレーキ制御装置とを複数備え、
それぞれの前記ブレーキ制御装置は、
ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器と、
前記ブレーキ制御器によるブレーキ制御に従って開状態及び閉状態が切り替わる電磁弁と、
パイロット式の弁であって、前記電磁弁を介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の前記空気を前記ブレーキシリンダに送出する中継弁と、
前記中継弁に入力される前記空気の前記圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記ブレーキ制御器は、
前記圧力センサから前記圧力の検出値を取得する圧力検出値取得部と、
他の前記ブレーキ制御装置の異常の有無を判定し、異常が有る場合に異常信号を出力する異常信号出力部と、
前記ブレーキ指令及び前記圧力検出値取得部で取得された前記圧力の検出値に基づいて、前記電磁弁の開度を制御するとともに、前記異常信号出力部から出力された前記異常信号が入力される電磁弁開閉制御部と、を備え、
複数の前記ブレーキ制御装置は、第一ブレーキ制御装置と、第二ブレーキ制御装置とを少なくとも含み、
前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁開閉制御部は、
前記ブレーキ指令に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁の開状態及び閉状態の切り替えを制御し、
前記第一ブレーキ制御装置の前記異常信号出力部で前記第二ブレーキ制御装置に異常が有ると判定して前記異常信号を出力した場合に、前記第一ブレーキ制御装置の前記圧力検出値取得部での前記圧力の検出値に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁と前記第二ブレーキ制御装置の前記電磁弁との開状態及び閉状態の切り替えを同期して制御するブレーキ制御システム。
【請求項2】
前記ブレーキ制御装置は、前記電磁弁と前記中継弁とを接続し、前記圧力センサで前記圧力が検出される前記空気が流通する流路を形成する管路を有し、
前記第一ブレーキ制御装置の前記管路である第一管路と、前記第二ブレーキ制御装置の前記管路である第二管路とは、前記流路の容積が同一とされている請求項1に記載のブレーキ制御システム。
【請求項3】
前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁と、前記第二ブレーキ制御装置の前記電磁弁とが、同一機種である請求項1又は2に記載のブレーキ制御システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のブレーキ制御システムを備え、
前記ブレーキシリンダと前記ブレーキ制御装置を有する車両を複数備える鉄道車両。
【請求項5】
ブレーキシリンダと、前記ブレーキシリンダの圧力制御を行うブレーキ制御装置とを複数備え、
それぞれの前記ブレーキ制御装置は、
ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器と、
前記ブレーキ制御器によるブレーキ制御に従って開状態及び閉状態が切り替わる電磁弁と、
パイロット式の弁であって、前記電磁弁を介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の前記空気を前記ブレーキシリンダに送出する中継弁と、
前記中継弁に入力される前記空気の前記圧力を検出する圧力センサと、を備え、
複数の前記ブレーキ制御装置は、第一ブレーキ制御装置と、第二ブレーキ制御装置とを含む鉄道車両のブレーキ制御を行うブレーキ制御方法であって、
前記第一ブレーキ制御装置及び前記第二ブレーキ制御装置の異常の有無を判定するステップと、
前記第一ブレーキ制御装置及び前記第二ブレーキ制御装置のいずれか一方に異常が有ると判定した場合に、異常が無いと判定された前記第一ブレーキ制御装置及び前記第二ブレーキ制御装置の前記圧力センサでの前記圧力の検出値を取得するステップと、
取得された前記圧力の検出値に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁と前記第二ブレーキ制御装置の前記電磁弁との開状態及び閉状態の切り替えを同期して行うステップと、を含むブレーキ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレーキ制御システム、鉄道車両、及びブレーキ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体によって作動する複数の機械ブレーキをそれぞれ制御する複数のブレーキ制御装置を有する鉄道車両用のブレーキシステムが開示されている。このブレーキシステムでは、ブレーキ制御装置における異常を検知した場合、異常が発生したブレーキ制御装置の制御対象である機械ブレーキの制御を、異常が発生していない他のブレーキ制御装置が行う。
【0003】
このような構成において、それぞれのブレーキ制御装置は、電磁弁を開閉することで、ブレーキシリンダで発生する圧力を調節している。電磁弁によって調節される圧力は、圧力センサで検出されている。ブレーキ制御装置は、圧力センサで検出された圧力値に基づき、電磁弁の開閉を制御している。特許文献1に開示された構成では、異常が発生していない他のブレーキ制御装置は、異常が発生したブレーキ制御装置に設けられた圧力センサで検出された圧力値を取得することで、異常が発生したブレーキ制御装置の電磁弁の開閉制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6305633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ブレーキ制御装置の圧力センサの検出値を、異常発生時に他のブレーキ制御装置で取得する必要がある。このため、複数のブレーキ制御装置の間には、一方のブレーキ制御装置の圧力センサと他方のブレーキ制御装置とを接続する配線が必要となる。その結果、配線が増加してしまい、コストの増加や設置やメンテナンス等の作業の増加となる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数のブレーキ制御装置間に架け渡される配線の数を削減し、コスト及び配線の手間を抑えることができるブレーキ制御システム、鉄道車両、ブレーキ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るブレーキ制御システムは、鉄道車両のブレーキ制御を行うブレーキ制御システムであって、ブレーキシリンダと、前記ブレーキシリンダの圧力制御を行うブレーキ制御装置とを複数備え、それぞれの前記ブレーキ制御装置は、ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器と、前記ブレーキ制御器によるブレーキ制御に従って開状態及び閉状態が切り替わる電磁弁と、パイロット式の弁であって、前記電磁弁を介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の前記空気を前記ブレーキシリンダに送出する中継弁と、前記中継弁に入力される前記空気の前記圧力を検出する圧力センサと、を備え、前記ブレーキ制御器は、前記圧力センサから前記圧力の検出値を取得する圧力検出値取得部と、他の前記ブレーキ制御装置の異常の有無を判定し、異常が有る場合に異常信号を出力する異常信号出力部と、前記ブレーキ指令、前記圧力検出値取得部で取得された前記圧力の検出値、及び、前記異常信号出力部から出力された前記異常信号の少なくとも一つに基づいて、前記電磁弁の開度を制御する電磁弁開閉制御部と、を備え、複数の前記ブレーキ制御装置は、第一ブレーキ制御装置と、第二ブレーキ制御装置とを少なくとも含み、前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁開閉制御部は、前記ブレーキ指令に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁の開状態及び閉状態の切り替えを制御し、前記第一ブレーキ制御装置の前記異常信号出力部で前記第二ブレーキ制御装置に異常が有ると判定して前記異常信号を出力した場合に、前記第一ブレーキ制御装置の前記圧力検出値取得部での前記圧力の検出値に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁と前記第二ブレーキ制御装置の前記電磁弁との開状態及び閉状態の切り替えを同期して制御する。
【0008】
本開示に係る鉄道車両は、上記したようなブレーキ制御システムを備え、前記ブレーキシリンダと前記ブレーキ制御装置を有する車両を複数備える。
【0009】
本開示に係るブレーキ制御方法は、ブレーキシリンダと、前記ブレーキシリンダの圧力制御を行うブレーキ制御装置とを複数備え、それぞれの前記ブレーキ制御装置は、ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器と、前記ブレーキ制御器によるブレーキ制御に従って開状態及び閉状態が切り替わる電磁弁と、パイロット式の弁であって、前記電磁弁を介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の前記空気を前記ブレーキシリンダに送出する中継弁と、前記中継弁に入力される前記空気の前記圧力を検出する圧力センサと、を備え、複数の前記ブレーキ制御装置は、第一ブレーキ制御装置と、第二ブレーキ制御装置とを含む鉄道車両のブレーキ制御を行うブレーキ制御方法であって、前記第一ブレーキ制御装置及び前記第二ブレーキ制御装置の異常の有無を判定するステップと、前記第一ブレーキ制御装置及び前記第二ブレーキ制御装置のいずれか一方に異常が有ると判定した場合に、異常が無いと判定された前記第一ブレーキ制御装置及び前記第二ブレーキ制御装置のいずれか一方の前記圧力センサでの前記圧力の検出値を取得するステップと、取得された前記圧力の検出値に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置の前記電磁弁と前記第二ブレーキ制御装置の前記電磁弁との開状態及び閉状態の切り替えを同期して行うステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示のブレーキ制御システム、鉄道車両、及びブレーキ制御方法によれば、複数のブレーキ制御装置を繋ぐ配線の数を削減し、コストの増加や設置やメンテナンス等の作業の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係るブレーキ制御システムを備えた鉄道車両の概略構成を示す図である。
図2】上記ブレーキ制御システムを構成する制御器の機能構成を示すブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係るブレーキ制御方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示によるブレーキ制御システム、鉄道車両、及びブレーキ制御方法を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0013】
(全体構成)
図1に示すように、鉄道車両100は、互いに連結された複数の車両1を有している。ここで、複数の車両1は、全て同一の構成であってもよく、一部が別の構成であってよい。鉄道車両100は、鉄道車両100のブレーキ制御を行うブレーキ制御システムSを備えている。ブレーキ制御システムSは、複数の車両1にそれぞれ配置されたブレーキシリンダ3及びブレーキ制御装置2を備えている。つまり、一つの鉄道車両100は、車両1の数に対応するように、複数のブレーキシリンダ3及び複数のブレーキ制御装置2を備えている。また、鉄道車両100の運転室100aには、運転士が操作するブレーキ設定器5(マスターコントローラ)が設置されている。
【0014】
(ブレーキ制御装置の構成)
本実施形態に係る車両1には、車両筐体の前段及び後段のそれぞれにおいて、ブレーキ制御装置2、ブレーキシリンダ3、及び空気供給タンク8が1つずつ設置される。ここで、本実施形態では、互いに隣接する第一の車両1Aと第二の車両1Bとを例に挙げて、ブレーキ制御装置2、ブレーキシリンダ3、及び空気供給タンク8の一つの組について説明する。
【0015】
なお、他の実施形態によっては、鉄道車両100は、第一の車両1A及び第二の車両1B以外に更なる車両1を有していてもよい。つまり、鉄道車両100は、車両1が二つであることに限定されるものではない。また、一つの車両1は、ブレーキ制御装置2、ブレーキシリンダ3及び空気供給タンク8のセットを複数搭載していてもよく、一組のみ搭載していてもよい。
【0016】
ブレーキ制御装置2は、ブレーキシリンダ3の圧力制御を行う。ブレーキ制御装置2は、電気信号(後述する「ブレーキ指令」)に基づいて、車両1のブレーキ制御を行う。具体的には、ブレーキ制御装置2は、ブレーキ設定器5から、運転士のハンドル操作に対応する電気信号を受け付けて、当該電気信号に応じた圧力の空気(圧縮空気)をブレーキシリンダ3に送出する。
【0017】
なお、ブレーキ制御装置2は、空気供給タンク8を備えている。空気供給タンク8には、予め用意された圧縮空気が封入されている。ブレーキ制御装置2は、この空気供給タンク8に封入された圧縮空気を、運転士の操作に対応する所望の圧力に調整しながらブレーキシリンダ3に向けて送出する。なお、空気供給タンク8は、ブレーキ制御装置2の外側にあっても良い。
【0018】
ブレーキシリンダ3は、ブレーキ制御装置2から送出された圧縮空気の圧力を受けて、当該圧力に応じた摩擦負荷を車両1の車輪(図示せず)に加える機構を有する。即ち、ブレーキシリンダ3は、ブレーキ制御装置2から受け付けた圧縮空気の圧力に応じたブレーキ力を発生させる。
【0019】
ブレーキ設定器5は、鉄道車両100の加減速を制御するためのマスターコントローラである。本実施形態に係るブレーキ設定器5は、運転士のハンドル操作に従ってブレーキ指令をブレーキ制御装置2に向けて出力する。ブレーキ設定器5と、各ブレーキ制御装置2とは、それぞれ独立したブレーキ弁制御信号線301によって接続されている。
【0020】
運転士は、鉄道車両100に対し所望するブレーキ力を発生させるべくブレーキ設定器5のハンドル操作を行う。ハンドル操作が行われた場合、ブレーキ設定器5は、ブレーキ弁制御信号線301を通じて、ブレーキ制御装置2に向けてブレーキ指令を送出する。なお、ブレーキ設定器5は、ブレーキ設定器5のハンドル位置ごとに対応する複数のブレーキ力を指定可能な多段式とされていてもよい。
【0021】
(ブレーキ制御装置の構成)
ブレーキ制御装置2は、ブレーキ制御器20(BCU;Brake Control Unit)と、供給電磁弁(AV、電磁弁)21と、排気電磁弁(RV、電磁弁)22と、非常用電磁弁(EMV)23と、応荷重弁24と、中継弁25と、圧力センサ26と、を備えている。
【0022】
ブレーキ制御器20は、ブレーキ制御装置2の動作全体を司る制御ユニットであって、例えば、マイコン等のプロセッサによって実現される。ブレーキ制御器20は、ブレーキ設定器5を通じて、運転士によるブレーキ操作に応じた電気信号であるブレーキ指令を受け付ける。ブレーキ制御器20は、当該ブレーキ指令に応じて、ブレーキ制御を行う。具体的には、ブレーキ制御器20は、ブレーキ指令に応じて、供給電磁弁21及び排気電磁弁22の開閉制御(開状態及び閉状態の切り替え制御)を行う。
【0023】
供給電磁弁21及び排気電磁弁22は、ブレーキ制御器20からの制御信号に従って開閉動作する。供給電磁弁21及び排気電磁弁22は、ブレーキシリンダ3に送出する圧縮空気の圧力を調整するため、後述する中継弁25に入力する圧縮空気の圧力を調整する。なお、供給電磁弁21及び排気電磁弁22は、主に、車両1の走行に何ら支障の生じていない通常運転時に開閉制御される。
【0024】
供給電磁弁21は、空気供給タンク8と中継弁25とを接続する第一空気回路(配管)501上に配置されている。供給電磁弁21は、供給電磁弁制御信号線302を通じてブレーキ制御器20に電気的に接続されている。ブレーキ制御器20は、供給電磁弁21を開状態又は閉状態とさせるための弁制御信号を、供給電磁弁制御信号線302を通じて供給電磁弁21に送信する。供給電磁弁21は、ブレーキ制御器20からの弁制御信号に基づいて開状態となることで、空気供給タンク8の圧縮空気を中継弁25に供給し、所定の圧力を印加させる。
【0025】
排気電磁弁22は、第一空気回路501と外気とを繋ぐ第四空気回路(配管)504上に配置されている。第四空気回路504は、供給電磁弁21と中継弁25との間で第一空気回路501に接続されている。排気電磁弁22は、排気電磁弁制御信号線303を通じてブレーキ制御器20に電気的に接続されている。ブレーキ制御器20は、排気電磁弁22を開状態又は閉状態とさせるための弁制御信号を、排気電磁弁制御信号線303を通じて排気電磁弁22に送信する。排気電磁弁22は、ブレーキ制御器20からの弁制御信号に基づいて開状態となることで、中継弁25に供給された圧縮空気を外気に開放し、中継弁25の圧力を大気圧まで減少させる。
【0026】
非常用電磁弁23及び応荷重弁24は、空気供給タンク8と中継弁25とを接続する第二空気回路(配管)502上において直列に接続されている。第二空気回路502は、空気供給タンク8と供給電磁弁21との間で第一空気回路501に接続されている。なお、非常用電磁弁23及び応荷重弁24は、主に、車両1の走行に何らかの支障の生じた緊急運転時に開閉制御されるものである。また、応荷重弁24には、増圧用の電磁弁が設置される場合もある。
【0027】
非常用電磁弁23は、緊急時に確実に鉄道車両100を停止させる必要が生じた場合等に用いられる。非常用電磁弁23は、運転士によるブレーキ設定器5のハンドル操作の他、ATS(Automatic Train Stop)を通じて出力される非常用ブレーキ指令に従って、直接的に(ブレーキ制御器20を介さずに)開閉動作する。非常用電磁弁23は、非常用ブレーキ指令が入力された場合には、当該非常用ブレーキ指令に基づいて直ちに消磁され、開状態となる。
【0028】
応荷重弁24は、非常用電磁弁23に対して空気供給タンク8に近い位置に接続され、車両1の荷重に応じた開度となる弁である。例えば、多くの乗客が車両1に乗車している場合、その荷重に従い応荷重弁24がより大きい開度となるため、非常用ブレーキ指令が出力された際には、より強いブレーキ力が働く。これにより、非常用ブレーキ作動時における車両1の制動特性を、乗車率によらず一定にすることができる。
【0029】
中継弁25は、第三空気回路(配管)503の途中に配置され、空気供給タンク8に直接接続されている。中継弁25には、空気供給タンク8から第三空気回路503を通して圧縮空気が導入されている。中継弁25は、第一空気回路501によって供給電磁弁21と接続されている。中継弁25は、第一空気回路501及び第四空気回路504によって排気電磁弁22と接続されている。中継弁25は、パイロット式で、供給電磁弁21及び排気電磁弁22によって圧力が調整された圧縮空気が第一空気回路501を通じて導入される。中継弁25は、第一空気回路501を通じて導入される圧縮空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の圧縮空気を、空気供給タンク8からブレーキシリンダ3に向けて送出する。
【0030】
圧力センサ26は、排気電磁弁22と中継弁25との間で第四空気回路504に接続されている。圧力センサ26は、第四空気回路504を介して、供給電磁弁21と中継弁25との間の第一空気回路501を流通する空気の圧力を検出する。これより、圧力センサ26は、指令圧力(中継弁25に入力される圧縮空気の圧力)を検出可能とされている。圧力センサ26は、圧力検出信号線304を介してブレーキ制御器20に接続されている。圧力センサ26によって取得された圧力の検出値は、圧力検出信号線304を介し、電気信号としてブレーキ制御器20に出力される。ブレーキ制御器20は、圧力センサ26によって取得された圧力の検出値に基づいて、車両1に何ら異常が生じていない場合に常用ブレーキ時の制御を行う。
【0031】
(ブレーキ制御装置のバックアップ回路の構成)
上記したようなブレーキ制御システムSは、ブレーキ制御装置2内のブレーキ制御器20等のように一部が故障するような異常が生じた場合に、他のブレーキ制御装置2によって、供給電磁弁21及び排気電磁弁22の開閉制御を行うためのバックアップ回路を備えている。
【0032】
具体的には、鉄道車両100において、第一の車両1Aと第二の車両1Bのように、互いに隣り合う車両1の二組のブレーキ制御装置2同士は、バックアップ回路400によって電気的に接続されている。この実施形態では、第一の車両1Aに備えられたブレーキ制御装置2である第一ブレーキ制御装置2Aと、第二の車両1Bに備えられたブレーキ制御装置2である第二ブレーキ制御装置2Bとが、バックアップ回路400によって電気的に接続されている。
【0033】
バックアップ回路400は、異常検知信号線401と、異常発生時用供給電磁弁制御信号線402と、異常発生時用排気電磁弁制御信号線403と、を備えている。
【0034】
異常検知信号線401は、一のブレーキ制御装置2に備えられたブレーキ制御器20と、他のブレーキ制御装置2に備えられたブレーキ制御器20とに接続されている。異常検知信号線401は、互いのブレーキ制御装置2に異常が発生していないかを監視するための信号を互いのブレーキ制御装置2の間で送りあっている。
【0035】
本実施形態では、異常検知信号線401は、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられたブレーキ制御器20である第一ブレーキ制御器20Aと、第二ブレーキ制御装置2Bに備えられたブレーキ制御器20である第二ブレーキ制御器20Bとに接続されている。異常検知信号線401は、第一ブレーキ制御器20Aと第二ブレーキ制御器20Bとの間で信号を送りあっている。したがって、第一ブレーキ制御器20A及び第二ブレーキ制御器20Bの何れか一方で異常が発生して信号が途切れると、異常の発生していない第一ブレーキ制御器20A及び第二ブレーキ制御器20Bの他方に、異常が発生したことを通知可能となっている。
【0036】
異常発生時用供給電磁弁制御信号線402は、一のブレーキ制御器20と、他のブレーキ制御装置2に備えられた供給電磁弁21とに接続されている。異常発生時用供給電磁弁制御信号線402は、ブレーキ制御器20から他のブレーキ制御装置2の供給電磁弁21に、弁開閉のための弁制御信号を送る。
【0037】
本実施形態のバックアップ回路400は、異常発生時用供給電磁弁制御信号線402として、第一異常発生時用供給電磁弁制御信号線402Aと、第二異常発生時用供給電磁弁制御信号線402Bとを有している。
【0038】
第一異常発生時用供給電磁弁制御信号線402Aは、第二ブレーキ制御装置2Bに備えられた供給電磁弁制御信号線302である第二供給電磁弁制御信号線302Bを介して、第一ブレーキ制御器20Aと、第二ブレーキ制御装置2Bに備えられた供給電磁弁21である第二供給電磁弁21Bとに接続されている。第一異常発生時用供給電磁弁制御信号線402Aは、第一ブレーキ制御器20Aから第二供給電磁弁21Bに、弁開閉のための弁制御信号を送る。
【0039】
第二異常発生時用供給電磁弁制御信号線402Bは、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられた供給電磁弁制御信号線302である第一供給電磁弁制御信号線302Aを介して、第二ブレーキ制御器20Bと、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられた供給電磁弁21である第一供給電磁弁21Aとに接続されている。第二異常発生時用供給電磁弁制御信号線402Bは、第二ブレーキ制御器20Bから第一供給電磁弁21Aに、弁開閉のための弁制御信号を送る。
【0040】
異常発生時用排気電磁弁制御信号線403は、一のブレーキ制御器20と、他のブレーキ制御装置2に備えられた排気電磁弁22とに接続されている。異常発生時用排気電磁弁制御信号線403は、一のブレーキ制御器20からのブレーキ制御装置2に備えられた排気電磁弁22に、弁開閉のための弁制御信号を送る。
【0041】
本実施形態のバックアップ回路400は、異常発生時用排気電磁弁制御信号線403として、第一異常発生時用排気電磁弁制御信号線403Aと、第二異常発生時用排気電磁弁制御信号線403Bとを有している。
【0042】
第一異常発生時用排気電磁弁制御信号線403Aは、第二ブレーキ制御装置2Bに備えられた排気電磁弁制御信号線303である第二排気電磁弁制御信号線303Bを介して、第一ブレーキ制御器20Aと、第二ブレーキ制御装置2Bに備えられた排気電磁弁22である第二排気電磁弁22Bとに接続されている。第一異常発生時用排気電磁弁制御信号線403Aは、第一ブレーキ制御器20Aから第二排気電磁弁22Bに、弁開閉のための弁制御信号を送る。
【0043】
第二異常発生時用排気電磁弁制御信号線403Bは、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられた排気電磁弁制御信号線303である第一排気電磁弁制御信号線303Aを介して、第二ブレーキ制御器20Bと、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられた排気電磁弁22である第一排気電磁弁22Aに接続されている。第二異常発生時用排気電磁弁制御信号線403Bは、第二ブレーキ制御器20Bから第一排気電磁弁22Aに、弁開閉のための弁制御信号を送る。
【0044】
バックアップ回路400を介して相互接続された第一ブレーキ制御装置2Aと、第二ブレーキ制御装置2Bとにおいて、管路Cの容積とが同一とされているのが好ましい。管路Cは、供給電磁弁21と、排気電磁弁22と、中継弁25とを繋ぐ流路である。圧力センサ26は、この管路Cに配置され、管路C内を流通する空気の圧力を検出する。本実施形態では、管路Cは、第一空気回路501における供給電磁弁21と中継弁25との間の配管と、第四空気回路504における排気電磁弁22と中継弁25との間の配管とを合わせた領域である。したがって、第一管路CAは、第一ブレーキ制御装置2Aにおける管路Cである。第二管路CBは、第二ブレーキ制御装置2Bにおける管路Cである。つまり、本実施形態では、第一管路CAと第二管路CBとが同一形状とされ、第一管路CAにおける空気の流通する流路の容積と、管路Cである第二管路CBにおける流路の容積とが同一とされている。
【0045】
また、バックアップ回路400を介して相互接続された第一ブレーキ制御装置2Aと、第二ブレーキ制御装置2Bとにおいて、供給電磁弁21及び排気電磁弁22は、容量等の各種諸元が同じとなるように同一機種であることが好ましい。
【0046】
(ブレーキ制御器の構成)
図2に示すように、本実施形態に係るブレーキ制御器20は、予め用意されたプログラムに従って動作することで、ブレーキ指令検知部201と、異常信号出力部202と、圧力検出値取得部204と、電磁弁開閉制御部205と、を機能的に備えている。
【0047】
ブレーキ指令検知部201は、ブレーキ弁制御信号線301を介して、ブレーキ設定器5(図1)からのブレーキ指令の入力を検知する。ブレーキ指令検知部201は、検知したブレーキ指令の情報を電磁弁開閉制御部205に出力する。
【0048】
異常信号出力部202は、他のブレーキ制御装置2の異常の有無を判定し、異常が有る場合に異常信号を電磁弁開閉制御部205に出力する。本実施形態の異常信号出力部202は、通常動作している場合には、他のブレーキ制御装置2が備える異常信号出力部202に向かって、異常検知信号線401を介して、所定の信号を出力している。また、異常信号出力部202は、異常検知信号線401を介して、他のブレーキ制御装置2が備える異常信号出力部202からの信号を受け付けている。異常信号出力部202は、相互接続された他のブレーキ制御装置2の異常信号出力部202から送信されている所定の信号を検知できなくなった場合に、他のブレーキ制御装置2(より具体的には、ブレーキ制御器20)に異常が有ると判定する。異常信号出力部202は、他のブレーキ制御装置2に異常が有ると判定した場合には、電磁弁開閉制御部205に異常信号を出力する。
【0049】
なお、異常信号出力部202は、他のブレーキ制御装置2に異常の有無の判定を、異常が生じた場合に入力される何らかの信号に基づいて行うことで、他のブレーキ制御装置2の異常を検知してもよい。何らかの信号とは、例えば、他のブレーキ制御装置2が備える異常信号出力部202から送られる異常を知らせる信号でもよく、他のブレーキ制御装置2が備える圧力センサ26の圧力の情報でもよい。
【0050】
圧力検出値取得部204は、圧力検出信号線304を通じて、自らのブレーキ制御装置2に備えられた圧力センサ26で検出された空気の圧力の検出値を取得する。圧力検出値取得部204は、取得した圧力の検出値の情報(指令圧力の情報)を電磁弁開閉制御部205に出力する。
【0051】
電磁弁開閉制御部205は、供給電磁弁21及び排気電磁弁22の複数の電磁弁の開度を制御する。電磁弁開閉制御部205は、ブレーキ指令及び圧力検出値取得部204で取得された圧力の検出値に基づいて、供給電磁弁21及び排気電磁弁22の開状態及び閉状態の切り替えを制御する。加えて、電磁弁開閉制御部205には、異常信号出力部202から出力された異常信号が入力される。電磁弁開閉制御部205は、異常信号が入力されると、自らのブレーキ制御装置2の供給電磁弁21及び排気電磁弁22と、他のブレーキ制御装置2の供給電磁弁21及び排気電磁弁22の弁開閉を制御する。
【0052】
具体的には、通常時には、電磁弁開閉制御部205は、ブレーキ指令検知部201からのブレーキ指令の情報に基づいて、弁開閉を制御するための弁制御信号を出力する。その際、電磁弁開閉制御部205は、圧力検出値取得部204で取得した圧力の検出値を参照しながら、ブレーキ指令に応じた圧力目標値に基づいて、供給電磁弁21及び排気電磁弁22へ弁制御信号を出力する。電磁弁開閉制御部205は、供給電磁弁制御信号線302を介して、供給電磁弁21に弁制御信号を出力する。また、電磁弁開閉制御部205は、排気電磁弁制御信号線303を介して、排気電磁弁22に弁制御信号を出力する。
【0053】
より具体的に、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bを例に挙げて説明する。第一ブレーキ制御装置2Aの電磁弁開閉制御部205は、通常時、すなわちバックアップ回路400を介して相互接続されている第二ブレーキ制御装置2Bの異常を検知していない場合、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aのみに対し、弁開閉のための弁制御信号を出力する。同様に、第二ブレーキ制御装置2Bの電磁弁開閉制御部205は、第一ブレーキ制御装置2Aの異常を検知していない場合、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bのみに対し、弁開閉のための弁制御信号を出力する。
【0054】
また、電磁弁開閉制御部205は、異常信号出力部202から出力された異常信号が入力された場合には、ブレーキ指令検知部201からのブレーキ指令の情報に基づいて、自らのブレーキ制御装置2の供給電磁弁21及び排気電磁弁22と、他のブレーキ制御装置2の供給電磁弁21及び排気電磁弁22の弁開閉を制御するための弁制御信号を出力する。その際、電磁弁開閉制御部205は、圧力検出値取得部204で取得した圧力の検出値を参照しながら、ブレーキ指令に応じた圧力目標値に基づいて、弁制御信号を出力する。電磁弁開閉制御部205は、供給電磁弁制御信号線302を介して、自らのブレーキ制御装置2の供給電磁弁21に弁制御信号を出力する。また、電磁弁開閉制御部205は、排気電磁弁制御信号線303を介して、自らのブレーキ制御装置2の排気電磁弁22に弁制御信号を出力する。さらに、電磁弁開閉制御部205は、異常発生時用供給電磁弁制御信号線402を介して、他のブレーキ制御装置2の供給電磁弁21に弁制御信号を出力する。また、電磁弁開閉制御部205は、異常発生時用排気電磁弁制御信号線403を介して、他のブレーキ制御装置2の排気電磁弁22に弁制御信号を出力する。加えて、電磁弁開閉制御部205は、自らのブレーキ制御装置2の供給電磁弁21及び排気電磁弁22と、他のブレーキ制御装置2の供給電磁弁21及び排気電磁弁22との弁開閉を同期して制御するように、それぞれの電磁弁に弁制御信号を出力する。
【0055】
より具体的に、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bを例に挙げて説明する。第一ブレーキ制御装置2Aの電磁弁開閉制御部205は、異常信号が入力された場合、すなわちバックアップ回路400を介して相互接続されている第二ブレーキ制御装置2Bの異常を検知した異常発生時には、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとに対し、同期して動くように弁開閉のための弁制御信号を出力する。同様に、第二ブレーキ制御装置2Bの電磁弁開閉制御部205は、第一ブレーキ制御装置2Aの異常を検知した異常発生時には、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bと、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aとに対し、同期して動くように弁開閉のための弁制御信号を出力する。
【0056】
(ブレーキ制御方法の処理の手順)
以下、本実施形態におけるブレーキ制御システムSにおけるブレーキ制御方法S1の処理の手順について、図3を参照しつつ説明する。図3に示すブレーキ制御方法S1の処理は、ブレーキ制御システムSに備えられた複数のブレーキ制御装置2において、それぞれ独立して実行される。ここでは、例えば、図1に図示された第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bにおけるブレーキ制御方法S1の処理の流れについて説明する。
【0057】
図3に示すように、ブレーキ制御方法S1は、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bのそれぞれでブレーキ指令を検知。具体的には、第一ブレーキ制御装置2Aでは、ブレーキ指令を検知するステップS2と、異常の有無を判定するステップS4と、通常時の弁制御を行うステップS6と、異常発生時の弁制御を行うステップS8と、を備える。
【0058】
ブレーキ指令を検知するステップS2では、第一ブレーキ制御器20Aのブレーキ指令検知部201が、ブレーキ設定器5からのブレーキ指令の入力が検知されたか否かを判定する。ここでブレーキ指令の入力を検知していない場合、運転士の操作においてブレーキ指令がなされていないので、ステップS2に戻り、処理を繰り返す。ステップS2において、ブレーキ指令の入力を検知していた場合、ステップS4に進む。
【0059】
異常の有無を判定するステップS4では、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bの異常の有無を判定する。具体的には、第一ブレーキ制御装置2Aでは、第一ブレーキ制御器20Aの異常信号検知部203において、異常検知信号線401を介して相互接続された第二ブレーキ制御器20Bの異常が検知されたか否かを判定する。ここで、異常が無いと判定した場合、通常時の弁制御を行うステップS6に進む。ステップS4において、異常が有ると判定した場合、異常発生時の弁制御を行うステップS8に進む。以下では、第二ブレーキ制御装置2Bに異常が有る場合を例に挙げて、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bにおける処理の流れについて説明する。
【0060】
通常の弁制御を行うステップS6では、第一ブレーキ制御器20A及び第二ブレーキ制御器20Bの電磁弁開閉制御部205が、ステップS2で検知したブレーキ指令の情報を取得する(ステップS62)。ここで、電磁弁開閉制御部205は、取得したブレーキ指令の情報に応じた圧力目標値(ブレーキシリンダ3A(図1)に印加すべき圧力)を設定する。
【0061】
次に、圧力検出値取得部204が、圧力検出信号線304を通じて、各ブレーキ制御装置2の圧力センサ26で検出された圧力の検出値を取得する(ステップS64)。具体的には、第一ブレーキ制御器20Aの圧力検出値取得部204が、圧力検出信号線304を通じて、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられた圧力センサ26である第一圧力センサ26Aで検出された圧力の検出値を取得する。同様に、及び第二ブレーキ制御器20Bの圧力検出値取得部204が、圧力検出信号線304を通じて、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられた圧力センサ26である第二圧力センサ26Bで検出された圧力の検出値を取得する。
【0062】
続いて、電磁弁開閉制御部205は、ステップS64で取得した圧力の検出値が、ステップS62で設定した圧力目標値となっているか否かを判定する(ステップS66)。ステップS66は、第一ブレーキ制御器20A及び第二ブレーキ制御器20Bの電磁弁開閉制御部205でそれぞれ実行される。
【0063】
ステップS66において、圧力検出値が圧力目標値となっていないと判定された場合、電磁弁開閉制御部205は、供給電磁弁制御信号線302を通じて、中継弁25に入力される圧縮空気の圧力が圧力目標値に近づくように供給電磁弁21及び排気電磁弁22の弁開閉を制御する(ステップS68)。
【0064】
例えば、圧力検出値が圧力目標値に到達していない場合、電磁弁開閉制御部205は、供給電磁弁21を開制御(及び排気電磁弁22を閉制御)し、中継弁25に圧力を印加させる。これにより、そのブレーキ制御装置2によって圧力制御されるブレーキシリンダ3に高い圧力が印加され、運転士のハンドル操作に応じたブレーキ力が発生する。
【0065】
また、例えば、ブレーキ解除時などにおいて、ステップS64で取得した圧力の検出値が、ステップS62で設定した圧力目標値を上回っている場合、電磁弁開閉制御部205は、排気電磁弁22を開制御(及び供給電磁弁21を閉制御)することで、中継弁25に入力される圧縮空気を減圧し、圧力の検出値を圧力目標値と一致させるようにする。
【0066】
具体的には、第一ブレーキ制御器20Aの電磁弁開閉制御部205は、第一供給電磁弁制御信号線302A及び第一排気電磁弁制御信号線303Aを通じて、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられた中継弁25である第一中継弁25Aに入力される圧縮空気の圧力が圧力目標値に近づくように第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aの弁開閉を制御する。同様に、第二ブレーキ制御器20Bの電磁弁開閉制御部205は、第二供給電磁弁制御信号線302B及び第二排気電磁弁制御信号線303Bを通じて、第二ブレーキ制御装置2Bに備えられた中継弁25である第二中継弁25Bに入力される圧縮空気の圧力が圧力目標値に近づくように第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bの弁開閉を制御する。
【0067】
その後、第一ブレーキ制御器20A及び第二ブレーキ制御器20Bの電磁弁開閉制御部205は、ステップS64~S68の処理を繰り返し、圧力の検出値が圧力目標値と一致した時点(ステップS68でYES)で「通常時の弁制御」を完了する。
【0068】
異常発生時の弁制御を行うステップS8は、異常の有無を判定するステップS4において、何れかのブレーキ制御器20の異常を検知していた場合に実行される。本実施形態では、第二ブレーキ制御器20Bの異常を検知していた場合に実行される。異常発生時の弁制御を行うステップS8でも、通常の弁制御を行うステップS6と同様に、まず、ステップS62が実行される。
【0069】
次に、異常が無いと判定されたブレーキ制御装置2の圧力検出値取得部204が、圧力検出信号線304を通じて、異常が無いと判定されたブレーキ制御装置2の圧力センサ26で検出された圧力の検出値を取得する(ステップS84)。つまり、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bのいずれか一方に異常が有ると判定した場合に、異常が無いと判定された第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bの圧力センサ26での圧力の検出値が取得される。本実施形態では、第二ブレーキ制御装置2Bに異常が有ると判定した場合に、第一ブレーキ制御器20Aの圧力検出値取得部204のみが、圧力検出信号線304を通じて、第一圧力センサ26Aで検出された圧力の検出値を取得する。つまり、異常が有る第二ブレーキ制御装置2Bの圧力検出値取得部204は、第二圧力センサ26Bの圧力の値を検出しない。
【0070】
続いて、第一ブレーキ制御器20Aの電磁弁開閉制御部205は、ステップS84で取得した圧力の検出値が、ステップS62で設定した圧力目標値となっているか否かを判定する(ステップS86)。ステップS86は、第一ブレーキ制御器20Aの電磁弁開閉制御部205のみで実行される。
【0071】
その後、ステップS86において、圧力の検出値が圧力目標値となっていないと判定された場合、第一ブレーキ制御器20Aの電磁弁開閉制御部205は、第一ブレーキ制御装置2Aに備えられた第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二ブレーキ制御装置2Bに備えられた第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとの開状態及び閉状態の切り替えを、同期して制御する(ステップS88)。
【0072】
具体的には、第一ブレーキ制御器20Aの電磁弁開閉制御部205は、第一供給電磁弁制御信号線302A及び第一排気電磁弁制御信号線303Aを通じて、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aに、第一異常発生時用供給電磁弁制御信号線402A及び第一異常発生時用排気電磁弁制御信号線403Aを通じて、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bに、弁開閉のための弁制御信号をそれぞれ同時に送信する。これにより、第一中継弁25Aと、第二ブレーキ制御装置2Bに備えられた中継弁25である第二中継弁25Bとの双方において入力される圧縮空気の圧力が圧力目標値に近づくように、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bの弁開閉が同じ条件で制御される。つまり、第二圧力センサ26Bは使用されることなく、第一圧力センサ26Aで検出した圧力の検出値のみに基づいて、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bが開閉制御される。
【0073】
例えば、圧力の検出値が圧力目標値に到達していない場合、第一ブレーキ制御器20Aの電磁弁開閉制御部205は、第一供給電磁弁21A及び第二供給電磁弁21Bを開制御(及び、第一排気電磁弁22A及び第二排気電磁弁22Bを閉制御)し、第一中継弁25A及び第二中継弁25Bに圧力を印加させる。これにより、第一ブレーキ制御装置2Aによって圧力制御されるブレーキシリンダ3Aと、第二ブレーキ制御装置2Bによって圧力制御される他の車両1のブレーキシリンダ3Bとの双方に対し、高い圧力が印加され、運転士のハンドル操作に応じたブレーキ力が発生する。
【0074】
また、例えば、ブレーキ解除時などにおいて、ステップS84で取得した圧力の検出値が、ステップS62で設定した圧力目標値を上回っている場合、第一ブレーキ制御器20Aの電磁弁開閉制御部205は、第一排気電磁弁22A及び第二排気電磁弁22Bを開制御(及び、第一供給電磁弁21A及び第二供給電磁弁21Bを閉制御)する。これにより、第一中継弁25A及び第二中継弁25Bに入力される圧縮空気を減圧し、圧力の検出値を圧力目標値と一致させるようにする。
【0075】
その後、第一ブレーキ制御器20Aの電磁弁開閉制御部205は、ステップS84~S88の処理を繰り返し、圧力の検出値が圧力目標値と一致した時点(ステップS88でYES)で「異常発生時の弁制御」を完了する。
【0076】
(作用効果)
上記構成のブレーキ制御システムS、鉄道車両100、及びブレーキ制御方法S1では、第二ブレーキ制御装置2Bで異常が発生した場合、第一ブレーキ制御装置2Aにより、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとの開閉が同期して制御される。その際、第一ブレーキ制御器20Aは、第一圧力センサ26Aの検出値に基づいて、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bの開閉を制御させる。つまり、異常が発生していない第一ブレーキ制御装置2Aで、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bの開閉を制御できるうえに、第二圧力センサ26Bの検出値を用いる必要が無い。したがって、第一ブレーキ制御装置2Aと第二ブレーキ制御装置2Bとの間で、第一圧力センサ26A及び第二圧力センサ26Bの検出信号を相互に転送するための配線を備える必要が無い。その結果、複数のブレーキ制御装置2同士の間を繋ぐ配線の数を削減できる。これにより、コストの増加や艤装配線の削減やメンテナンス等の作業の増加を抑えることができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、供給電磁弁21や排気電磁弁22のような電磁弁の開閉制御によって、ブレーキ制御が行われている。そのため、電空変換弁(EP弁)でブレーキ制御を行う場合に比べて、ブレーキ制御装置2の小型化を図ることができる。加えて、異常が生じていないブレーキ制御装置2の圧力センサ26を、異常が発生しているブレーキ制御装置2のブレーキ制御に利用できるため、ブレーキ制御装置2にバックアップ用の圧力センサを設置する必要がない。これによっても、ブレーキ制御装置2の小型化を図ることができる。
【0078】
また、本実施形態では、異常信号出力部202は、通常動作している場合には、所定の信号を出力し続けている。そのため、ブレーキ制御器20自体に異常が生じて信号を出力できない状態を検出することができる。そのため、ブレーキ制御装置2の中でも、ブレーキ制御器20の異常を正確に検出することができる。
【0079】
また、第一ブレーキ制御装置2Aにおける第一管路CAの流路の容積と、第二ブレーキ制御装置2Bにおける第二管路CBの流路の容積とが同一である。これにより、第一ブレーキ制御装置2Aで圧力制御されるブレーキシリンダ3Aと、第二ブレーキ制御装置2Bで圧力制御されるブレーキシリンダ3Bとで生じる圧力変化を一致させることができる。そのため、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとの開閉を同期して制御する場合に、第一ブレーキ制御器20Aと第二ブレーキ制御器20Bとで同じ条件でブレーキ制御することが可能となる。つまり、異常が生じていないブレーキ制御装置2の供給電磁弁21及び排気電磁弁22への弁制御信号と同じ信号を、異常が生じているブレーキ制御装置2の供給電磁弁21及び排気電磁弁22への送るだけで、異常が生じているブレーキ制御装置2のブレーキシリンダ3を適切に制御できる。したがって、異常が生じていないブレーキ制御装置2のブレーキシリンダと同等に、異常が生じているブレーキ制御装置2のブレーキシリンダ3を制御できる。
【0080】
また、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとが、同一機種とされている。これにより、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとを制御する際の条件を一致させることができる。これによっても、複雑な制御を実行することなく、異常が生じていないブレーキ制御装置2のブレーキシリンダ3と同等に、異常が生じているブレーキ制御装置2のブレーキシリンダ3を適切に制御できる。
【0081】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0082】
例えば、上記実施形態においては、第一管路CAの流路の容積と、第二管路CBの流路の容積とを同一とし、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとを、同一機種とするようにした。しかしながら、ブレーキ制御システムSは、このような構成に限定されるものではない。バックアップ回路400を介して相互接続された第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bで、例えば、第一管路CAと第二管路CBとの配管レイアウトが互いに異なる等して、流路の容積が同一ではなくてもよい。また、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとは、同一機種でなくてもよく、メンテナンス等を経ることで容量等が異なっていてもよい。
【0083】
このような場合、例えば、第一管路CAの容積と、第二管路CBの容積との比を、設計値等から算出しておき、算出した容積比を用いた補正を行うようにしてもよい。この場合、算出した容積比に基づく補正値は、第一ブレーキ制御器20Aや第二ブレーキ制御器20Bに備えた記憶部に記憶させておく。
【0084】
第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとの開閉を同期して制御する際には、記憶部から取得した補正値により電磁弁開閉制御部205で補正処理を行う。これにより、電磁弁開閉制御部205で開閉制御を行う際に、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aの弁開閉量(又は開閉時間)と、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bの弁開閉量(又は開閉時間)とを、異なるように条件を変えてもよい。これにより、第一ブレーキ制御装置2Aで圧力制御されるブレーキシリンダ3Aと、第二ブレーキ制御装置2Bで圧力制御されるブレーキシリンダ3Bとで生じる圧力変化を少なくし、結果的に、同じブレーキ力を発生させることができる。
【0085】
また、通常時に、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bのそれぞれにおいて、供給電磁弁21及び排気電磁弁22を開閉したときの圧力変動量を、それぞれに対応する圧力センサ26でモニタリングし、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bとの圧力変動量の比を算出しておき、補正に用いるようにしてもよい。この場合も、算出した圧力変動量の比に基づく補正値は、第一ブレーキ制御器20Aや第二ブレーキ制御器20Bに備えた記憶部に記憶させておく。
【0086】
さらに、上記実施形態では、第二ブレーキ制御装置2Bで異常が発生した場合に、第一ブレーキ制御装置2Aにより、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bの開閉を第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aと同期させて制御する場合について説明した。これに対し、第一ブレーキ制御装置2Aで異常が発生した場合には、第二ブレーキ制御装置2Bにより、第一供給電磁弁21A及び第一排気電磁弁22Aの開閉を、第二供給電磁弁21B及び第二排気電磁弁22Bと同期させて制御することができる。
【0087】
また、例えば、上記実施形態では、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bを例に挙げて説明したが、ブレーキ制御システムSは、二つのブレーキシリンダ3及びブレーキ制御装置2(つまり、二つの車両1)に適用されることに限定されるものではない。ブレーキ制御システムSは、ブレーキシリンダ3及びブレーキ制御装置2を備える車両1が三つ以上ある場合にも適用可能とされている。
【0088】
<付記>
実施形態に記載のブレーキ制御システムS、鉄道車両100、及びブレーキ制御方法S1は、例えば以下のように把握される。
【0089】
(1)第1の態様に係るブレーキ制御システムSは、鉄道車両100のブレーキ制御を行うブレーキ制御システムSであって、ブレーキシリンダ3と、前記ブレーキシリンダ3の圧力制御を行うブレーキ制御装置2とを複数備え、それぞれの前記ブレーキ制御装置2は、ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器20と、前記ブレーキ制御器20によるブレーキ制御に従って開状態及び閉状態が切り替わる電磁弁21、22と、パイロット式の弁であって、前記電磁弁21、22介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の前記空気を前記ブレーキシリンダに送出する中継弁25と、前記中継弁25に入力される前記空気の前記圧力を検出する圧力センサ26と、を備え、前記ブレーキ制御器20は、前記圧力センサ26から前記圧力の検出値を取得する圧力検出値取得部204と、他の前記ブレーキ制御装置2の異常の有無を判定し、異常が有る場合に異常信号を出力する異常信号出力部202と、前記ブレーキ指令及び前記圧力検出値取得部204で取得された前記圧力の検出値に基づいて、前記電磁弁21、22の開度を制御するとともに、前記異常信号出力部202から出力された前記異常信号が入力される電磁弁開閉制御部205と、を備え、複数の前記ブレーキ制御装置2は、第一ブレーキ制御装置2Aと、第二ブレーキ制御装置2Bとを少なくとも含み、前記第一ブレーキ制御装置2Aの前記電磁弁開閉制御部205は、前記ブレーキ指令に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置の2Aの前記電磁弁21,22の開状態及び閉状態の切り替えを制御し、前記第一ブレーキ制御装置2Aの前記異常信号出力部202で前記第二ブレーキ制御装置2Bに異常が有ると判定して前記異常信号を出力した場合に、前記第一ブレーキ制御装置2Aの前記圧力検出値取得部204での前記圧力の検出値に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置2Aの前記電磁弁21、22と前記第二ブレーキ制御装置2Bの前記電磁弁21、22との開状態及び閉状態の切り替えを同期して制御する。
【0090】
このブレーキ制御システムSでは、第二ブレーキ制御装置2Bで異常が発生した場合、第一ブレーキ制御器20Aは、第一ブレーキ制御装置2Aの圧力センサ26の検出値に基づいて、第二ブレーキ制御装置2Bの電磁弁21及び22の開閉を制御させる。つまり、異常が発生していないブレーキ制御装置2で、異常が発生しているブレーキ制御装置2の電磁弁21及び22の開閉を制御できるうえに、異常が発生しているブレーキ制御装置2の圧力センサ26の検出値を用いる必要が無い。したがって、第一ブレーキ制御装置2Aと第二ブレーキ制御装置2Bとの間で、圧力センサ26の検出信号を相互に転送するための配線を備える必要が無い。その結果、複数のブレーキ制御装置2同士の間を繋ぐ配線の数を削減できる。これにより、コストの増加や設置やメンテナンス等の作業の増加を抑えることができる。
【0091】
(2)第2の態様に係るブレーキ制御システムSは、(1)のブレーキ制御システムSであって、前記ブレーキ制御装置2は、前記電磁弁21、22と前記中継弁25とを接続し、前記圧力センサ26で前記圧力が検出される前記空気が流通する流路を形成する管路Cを有し、前記第一ブレーキ制御装置2Aの前記管路Cである第一管路CAと、前記第二ブレーキ制御装置2Bの前記管路Cである第二管路CBとは、前記流路の容積が同一とされている。
【0092】
これにより、第一ブレーキ制御装置2Aで圧力制御されるブレーキシリンダ3Aと、第二ブレーキ制御装置2Bで圧力制御されるブレーキシリンダ3Bとで生じる圧力変化を一致させることができる。そのため、第一ブレーキ制御装置2Aの電磁弁21及び22と、第二ブレーキ制御装置2Bの電磁弁21及び22との開閉を同期して制御する場合に、第一ブレーキ制御装置2A及び第二ブレーキ制御装置2Bのブレーキ制御器20で同じ条件でブレーキ制御することが可能となる。つまり、異常が生じていないブレーキ制御装置2の電磁弁21及び22への弁制御信号と同じ信号を、異常が生じているブレーキ制御装置2の電磁弁21及び22へ送るだけで、異常が生じているブレーキ制御装置2のブレーキシリンダ3を適切に制御できる。したがって、異常が生じていないブレーキ制御装置2のブレーキシリンダと同等に、異常が生じているブレーキ制御装置2のブレーキシリンダ3を制御できる。
【0093】
(3)第3の態様に係るブレーキ制御システムSは、(1)又は(2)のブレーキ制御システムSであって、前記第一ブレーキ制御装置2Aの前記電磁弁21A、21Bと、前記第二ブレーキ制御装置2Bの前記電磁弁21B、22Bとが、同一機種である。
【0094】
これにより、第一ブレーキ制御装置2Aの電磁弁21及び22と、第二ブレーキ制御装置2Bの電磁弁21及び22とを制御する際の条件を一致させることができる。これによって、複雑な制御を実行することなく、異常が生じていないブレーキ制御装置2のブレーキシリンダ3と同等に、異常が生じているブレーキ制御装置2のブレーキシリンダ3を適切に制御できる。
【0095】
(4)第4の態様に係る鉄道車両100は、(1)から(3)の何れか一つのブレーキ制御システムSを備え、前記ブレーキシリンダ3と前記ブレーキ制御装置2を有する車両1を複数備える。
【0096】
(5)第5の態様に係るブレーキ制御方法は、ブレーキシリンダ3と、前記ブレーキシリンダ3の圧力制御を行うブレーキ制御装置2とを複数備え、それぞれの前記ブレーキ制御装置2は、ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器20と、前記ブレーキ制御器20によるブレーキ制御に従って開状態及び閉状態が切り替わる電磁弁21、22と、パイロット式の弁であって、前記電磁弁21、22を介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の前記空気を前記ブレーキシリンダに送出する中継弁25と、前記中継弁25に入力される前記空気の前記圧力を検出する圧力センサ26と、を備え、複数の前記ブレーキ制御装置2は、第一ブレーキ制御装置2Aと、第二ブレーキ制御装置2Bとを含む鉄道車両100のブレーキ制御を行うブレーキ制御方法S1であって、前記第一ブレーキ制御装置2A及び前記第二ブレーキ制御装置2Bの異常の有無を判定するステップS4と、前記第一ブレーキ制御装置2A及び前記第二ブレーキ制御装置2Bのいずれか一方に異常が有ると判定した場合に、異常が無いと判定された前記第一ブレーキ制御装置2A及び前記第二ブレーキ制御装置2Bのいずれか一方の前記圧力センサ26での前記圧力の検出値を取得するステップS64と、取得された前記圧力の検出値に基づいて、前記第一ブレーキ制御装置2Aの前記電磁弁21A、22Aと前記第二ブレーキ制御装置2Bの前記電磁弁21B、22Bとの開状態及び閉状態の切り替えを同期して行うステップS88と、を含む。
【0097】
これにより、複数のブレーキ制御装置を繋ぐ配線の数を削減し、コスト及び配線の手間を抑えることができる。
【符号の説明】
【0098】
1…車両
1A…第一の車両
1B…第二の車両
2…ブレーキ制御装置
2A…第一ブレーキ制御装置
2B…第二ブレーキ制御装置
3、3A、3B…ブレーキシリンダ
5…ブレーキ設定器
8…空気供給タンク
20…ブレーキ制御器
20A…第一ブレーキ制御器
20B…第二ブレーキ制御器
21…供給電磁弁(電磁弁)
21A…第一供給電磁弁
21B…第二供給電磁弁
22…排気電磁弁(電磁弁)
22A…第一排気電磁弁
22B…第二排気電磁弁
23…非常用電磁弁
24…応荷重弁
25…中継弁
25A…第一中継弁
25B…第二中継弁
26…圧力センサ
26A…第一圧力センサ
26B…第二圧力センサ
100…鉄道車両
100a…運転室
201…ブレーキ指令検知部
202…異常信号出力部
204…圧力検出値取得部
205…電磁弁開閉制御部
301…ブレーキ弁制御信号線
302…供給電磁弁制御信号線
302A…第一供給電磁弁制御信号線
302B…第二供給電磁弁制御信号線
303…排気電磁弁制御信号線
303A…第一排気電磁弁制御信号線
303B…第二排気電磁弁制御信号線
304…圧力検出信号線
400…バックアップ回路
401…異常検知信号線
402…異常発生時用供給電磁弁制御信号線
402A…第一異常発生時用供給電磁弁制御信号線
402B…第二異常発生時用供給電磁弁制御信号線
403…異常発生時用排気電磁弁制御信号線
403A…第一異常発生時用排気電磁弁制御信号線
403B…第二異常発生時用排気電磁弁制御信号線
501…第一空気回路
502…第二空気回路
503…第三空気回路
504…第四空気回路
C…管路
CA…第一管路
CB…第二管路
S…ブレーキ制御システム
S1…ブレーキ制御方法
S2…ブレーキ指令を検知するステップ
S4…異常の有無を判定するステップ
S6…通常時の弁制御を行うステップ
S8…異常発生時の弁制御を行うステップ
図1
図2
図3