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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133928
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/463 20210101AFI20240926BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240926BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240926BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20240926BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240926BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20240926BHJP
   H01G 11/18 20130101ALI20240926BHJP
【FI】
H01M50/463 B
H01M10/0566
H01M10/04 Z
H01M6/02 Z
H01M10/058
H01G11/52
H01G11/18
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043955
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 恵美
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H024
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB02
5E078CA03
5E078CA11
5E078DA17
5H021CC05
5H021HH10
5H024DD09
5H024HH15
5H028AA08
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ12
5H029DJ04
5H029DJ12
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】電極体において生じた局部的な発熱に対して、早期に吸熱して、熱暴走を未然に防止し得る蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス10は、正極の活物質層311を有する正極体31と負極の活物質層321を有する負極体32とが、多孔性のセパレータ33を介して積層された電極体3と、電解液4と、をケース1内に備えている。セパレータは、両活物質層のうち、幅広に形成された活物質層321の幅方向端部321HTよりも外方へ突出して、互いに近接する方向へ屈曲した屈曲部33Kを備えている。屈曲部同士の隙間W3に、電解液を貯留している。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極の活物質層を有する正極体と負極の活物質層を有する負極体とが、多孔性のセパレータを介して積層された電極体と、電解液と、をケース内に備え、
前記セパレータは、
前記両活物質層のうち、幅広に形成された活物質層の幅方向端部よりも外方へ突出して、互いに近接する方向へ屈曲した屈曲部を備え、
前記屈曲部同士の隙間に、前記電解液を貯留してなる
蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
前記屈曲部は、
前記幅方向端部よりも外方へ突出した突出部と、
前記突出部の先端部から内方へ折り返した折返し部と、を備え、
前記突出部と前記折返し部との隙間に、前記電解液を貯留してなる
蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電デバイスであって、
前記折返し部の幅寸法は、前記突出部の幅寸法の50%以上、90%以下である
蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、
前記屈曲部は、前記電解液が前記電極体の長手方向へ移動可能に形成された電解液流路を備えた
蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)等の普及に伴い、リチウムイオン電池等を含む高出力な蓄電デバイスが増加し、この蓄電デバイスにおける熱暴走を抑制する技術の必要性が高まっている。例えば、正極体、負極体、セパレータ、及び非水電解液を含むリチウムイオン電池において、電池が異常発熱すると、セパレータが収縮して正極体及び負極体間の電流を遮断し、熱暴走を抑制する技術が知られている。また、例えば、特許文献1には、上記リチウムイオン電池において、105~130℃の間で熱変形を起こす樹脂成形体からなる電流遮断素子を、正極体又は負極体の集電体と出力端子との接続部に用いた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-288397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記セパレータによる電流遮断技術では、電池の発熱量が急に過大になると、セパレータ自身が溶融等によって破損し、もはや熱暴走を止められないという問題があった。また、電極体において金属異物が混入し、局所的な短絡が生じて、局部的に発熱が生じた場合には、セパレータの電流遮断効果が十分発揮せず、熱暴走に発展してしまうという問題があった。さらに、特許文献1のような電流遮断素子を、正極体又は負極体の集電体と出力端子との接続部に用いた技術でも、電流遮断素子が出力端子の近傍に配置されるため、出力端子から離間した位置で金属異物等が混入し、局部的な発熱から熱暴走に発展する場合に対して、有効に機能できないという問題があった。
【0005】
本開示技術は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、電極体において生じた局部的な発熱に対して、早期に吸熱して、熱暴走を未然に防止し得る蓄電デバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本開示技術の一態様は、正極の活物質層を有する正極体と負極の活物質層を有する負極体とが、多孔性のセパレータを介して積層された電極体と、電解液と、をケース内に備え、前記セパレータは、前記両活物質層のうち、幅広に形成された活物質層の幅方向端部よりも外方へ突出して、互いに近接する方向へ屈曲した屈曲部を備え、前記屈曲部同士の隙間に、前記電解液を貯留してなる蓄電デバイスである。
【0007】
この蓄電デバイスでは、セパレータは、正極の活物質層及び負極の活物質層のうち、幅広に形成された活物質層の幅方向端部よりも外方へ突出して、互いに近接する方向へ屈曲した屈曲部を備えている。また、屈曲部同士の隙間に、電解液を貯留している。そのため、電極体において局部的な発熱が生じた場合に、セパレータの屈曲部同士の隙間に貯留した電解液によって早期に吸熱して、電極体の温度上昇を緩和できる。その結果、電極体における温度上昇部の急速な拡大を抑制でき、蓄電デバイスの熱暴走を未然に防止できる。
【0008】
(2)(1)に記載の蓄電デバイスであって、前記屈曲部は、前記幅方向端部よりも外方へ突出した突出部と、前記突出部の先端部から内方へ折り返した折返し部と、を備え、前記突出部と前記折返し部との隙間に、前記電解液を貯留してなる蓄電デバイスが良い。
【0009】
この蓄電デバイスでは、屈曲部は、幅広に形成された活物質層の幅方向端部よりも外方へ突出した突出部と、突出部の先端部から内方へ折り返した折返し部と、を備えているので、屈曲部を偏平に形成でき、活物質層の厚みに対応した狭い空間で、電解液を効率的に貯留することができる。そのため、電極体において局部的な発熱が生じた場合に、スペース効率を犠牲にすることなく貯留した電解液によって早期に吸熱して、電極体の温度上昇を緩和できる。その結果、電極体における温度上昇部の急速な拡大を、より効率的に抑制でき、蓄電デバイスの熱暴走を未然に防止できる。
【0010】
(3)(2)に記載の蓄電デバイスであって、前記折返し部の幅寸法は、前記突出部の幅寸法の50%以上、90%以下である蓄電デバイスが良い。
【0011】
この蓄電デバイスでは、折返し部の幅寸法は、突出部の幅寸法の50%以上であるので、突出部と折返し部との間に、電解液をより多く貯留できる。そのため、電極体の温度上昇を抑制する効果を、より一層向上させることができる。また、折返し部の幅寸法は、突出部の幅寸法の90%以下であるので、電極体の製作誤差や組付け誤差等を考慮しても、折返し部と活物質層との干渉を回避できる。そのため、上記製作誤差等を考慮しつつ、セパレータの幅方向端部における吸熱効果を高めて、より一層熱暴走を未然に防止できる。
【0012】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の蓄電デバイスであって、前記屈曲部は、前記電解液が前記電極体の長手方向へ移動可能に形成された電解液流路を備えた蓄電デバイスが良い。
【0013】
この蓄電デバイスでは、屈曲部は、電解液が電極体の長手方向へ移動可能に形成された電解液流路を備えているので、屈曲部同士の隙間に貯留した電解液が、電解液流路を介して電極体の長手方向へ迅速に移動することができる。そのため、電極体において任意の箇所に局部的な発熱が生じた場合、発熱箇所近傍へ電解液流路を介して電解液を他から早急に補給でき、電極体における局部的な温度上昇を、より一層迅速に抑制することができる。その結果、電極体における任意の箇所で発生した局部的な発熱に対しても、迅速に吸熱して、熱暴走を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る蓄電デバイスの一態様の斜視図である。
図2図1に示す蓄電デバイスにおける電極体の捲回前の状態の平面図である。
図3図2に示すB-B断面図である。
図4図1に示すA-A部分断面図である。
図5図1に示す蓄電デバイスにおける電極体の温度とセパレータのシャットダウン動作との相関関係を表すグラフ図である。
図6図1に示す蓄電デバイスにおける変形例1のA-A部分断面図である。
図7図1に示す蓄電デバイスにおける変形例2のA-A部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、上記開示技術の実施形態に係る蓄電デバイス10の一態様について、図1図5を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態に係る蓄電デバイスの一態様の斜視図を示す。図2に、図1に示す蓄電デバイスにおける電極体の捲回前の状態の平面図を示す。図3に、図2に示すB-B断面図を示す。図4に、図1に示すA-A部分断面図を示す。図5に、図1に示す蓄電デバイスにおける電極体の温度とセパレータのシャットダウン動作との相関関係を表すグラフ図を示す。
【0016】
以下の説明では、説明の便宜上、図1図2に示す矢印の方向によって本蓄電デバイス及び電極体の方向を説明することがある。具体的には、矢印Uは蓄電デバイスの上方を示し、矢印Dは蓄電デバイスの下方を示し、矢印Rは蓄電デバイスの右方を示し、矢印Lは蓄電デバイスの左方を示し、矢印Fは蓄電デバイスの前方を示し、矢印Rrは蓄電デバイスの後方を示す。また、矢印Xは、電極体の幅方向を示し、矢印Yは、電極体の長手方向を示す。ただし、上記矢印の方向は、蓄電デバイスの設置態様等を限定するものではない。
【0017】
本開示技術の実施形態に係る蓄電デバイス10の一態様は、図1図4に示すように、正極の活物質層311を有する正極体31と負極の活物質層321を有する負極体32とが、多孔性のセパレータ33を介して積層された電極体3と、電解液4と、をケース1内に備えている。なお、蓄電デバイス10は、密閉されたケース1内に、電極体3と電解液4とが収容され、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を意味し、例えば、一次電池、二次電池、電気二重層キャパシタ等を含むものである。
【0018】
ここでは、蓄電デバイス10は、正極体31と負極体32とセパレータ33とからなる電極体3、及び非水電解液4H(以下、「電解液4」とも言う)を含む箱型のリチウムイオン二次電池10Lの例で説明するが、当然ながら、本開示技術をこれに限定する意図ではない。なお、電解液4は、基本的には、非水溶媒と支持塩とを含有する。非水溶媒は、各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類等の有機溶媒を用いることができる。また、支持塩は、例えば、LiPF、LiBF等のリチウム塩を用いることができる。この電解液4は、所要の熱容量を有しており、吸熱作用を備えている。
【0019】
また、図1に示すケース1は、上端に開口部111が形成された有底筒状体のケース本体11と、開口部111を封口する蓋体12と、を備えている。ケース本体11は、例えば、アルミニウム製又はアルミニウム合金製で偏平な直方体状の容器として形成されている。また、蓋体12は、例えば、アルミニウム製又はアルミニウム合金製で平板状の蓋体として形成されている。蓋体12には、公知の安全弁72と、電解液4を注入する注液孔71と、が形成されている。注液孔71は、栓部材によって封止されている。安全弁43は、ケース1内のガス圧が所定値以上に上昇した場合に開弁して、熱暴走等に対する安全機構として機能する。
【0020】
なお、注液孔71から注入した電解液4は、主に、電極体3の活物質層311、321及び多孔性のセパレータ33に含浸され、その一部がケース本体11の底付近に貯留されている。活物質層311、321及びセパレータ33に含浸された電解液4は、ケース1の温度変化による膨張収縮に伴って、底付近に貯留された電解液4との間で出入りする。
【0021】
また、蓋体12は、電極体3に電気的に接続された外部接続端子5と、外部接続端子5を介して電極体3と、を保持している。外部接続端子5と蓋体12との間には、絶縁部材61、62が介在している。外部接続端子5は、正極集電体312における正極の活物質層311が塗工されていない未塗工部312Hと接続された正極外部接続端子5Aと、負極集電体322における負極の活物質層321が塗工されていない未塗工部322Hと接続された負極外部接続端子5Bと、から構成されている。
【0022】
正極外部接続端子5A及び負極外部接続端子5Bには、それぞれケース本体11内で電極体3と接続される内部端子52と、上端部が蓋体12の外部へ突出した外部端子51とを備えている。外部端子51の下端部は、内部端子52の上端部と結合されている。外部端子51と内部端子52との結合構造は、特に限定されるものではなく、例えば、ネジ締結の他、超音波接合や摩擦圧接等による結合構造でも良い。
【0023】
また、図2図3に示すように、正極の活物質層311は、例えば、長尺状のアルミニウム箔からなる正極集電体312の一方の幅方向端部に未塗工部312Hを残して、両面に塗工されている。正極の活物質層311は、活物質として、例えば、リチウム遷移金属酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO等)や、リチウム遷移金属リン酸化合物(LiFePO等)等が用いられ、活物質以外の成分として、例えば、導電材やバインダ等を含み得る。
【0024】
また、正極集電体312の他方の幅方向端部31Tは、未塗工部312Hが存在しない。これは、長尺状の幅広なアルミニウム箔に対して、両方の幅方向端部に未塗工部312Hを残して、両面に正極の活物質層311を塗工した後、塗工されたアルミニウム箔を幅方向中央部で切断して2等分することによって、正極体31を作製しているからである。この切断に伴って、正極集電体312の他方の幅方向端部31Tに、バリ等の金属異物BRが発生する可能性がある。そのため、電極体3の幅方向端部3Tにおいて、金属異物BRに起因する短絡が生じ、局部的な発熱を生じる場合がある。
【0025】
また、負極の活物質層321は、例えば、長尺状の銅箔からなる負極集電体322の一方の幅方向端部に未塗工部322Hを残して、両面に塗工されている。負極の活物質層321は、活物質として、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料が用いられ、活物質以外の成分として、例えば、バインダや増粘剤等を含み得る。なお、負極の活物質層321は、正極の活物質層311に比べて、幅広く形成されている。正極の活物質層311からのリチウムイオンを受容しやすいからである。
【0026】
また、負極集電体322の他方の幅方向端部32Tは、未塗工部322Hが存在しない。これは、正極集電体312の場合と同様に、長尺状の幅広な銅箔の両方の幅方向端部に未塗工部322Hを残して、両面に負極の活物質層321を塗工した後、塗工された銅箔を幅方向中央部で切断して2等分することによって、負極体32を作製しているからである。この場合も、切断に伴って、負極集電体322の他方の幅方向端部32Tに、バリ等の金属異物が発生する可能性がある。そのため、電極体3の幅方向端部3Tにおいて、金属異物に起因する短絡が生じ、局部的な発熱を生じる場合がある。
【0027】
この蓄電デバイス10では、図3図4に示すように、電極体3において局部的な発熱が生じた場合、早期にその熱を吸収して、電極体3の温度上昇を緩和させる吸熱手段3Qを、セパレータ33の幅方向端部33Tに備えている。すなわち、セパレータ33は、正極の活物質層311及び負極の活物質層321のうち、幅広に形成された活物質層321の幅方向端部321HTよりも外方へ突出して、互いに近接する方向へ屈曲した屈曲部33Kを備えている。そして、屈曲部33K同士の隙間W3に、電解液4を貯留している。電解液4は、ケース1の底付近に貯留されているので、毛細管現象で吸い上げられ、主に表面張力の作用で、屈曲部33K同士の隙間W3に保持されている。また、電解液4は、多孔性のセパレータ33内及び活物質層311、321内にも含浸されている。屈曲部33K同士の隙間W3に貯留された電解液4は、多孔性のセパレータ33内及び活物質層311、321内に含浸された電解液4と連通している。
【0028】
そのため、電極体3の幅方向端部3Tにおいて、前述のように、バリ等の金属異物BRに起因する短絡が生じ、局部的な発熱を生じた場合には、発熱部の近くに位置するセパレータ33内及び活物質層311、321内に含浸された電解液4を介して、屈曲部33K同士の隙間W3に貯留された電解液4へ、熱が速やかに伝達される。したがって、屈曲部33K同士の隙間W3に貯留した電解液4によって早期に吸熱して、電極体3の温度上昇を緩和又は抑制できる。その結果、電極体3における温度上昇部の拡大を阻止でき、蓄電デバイス10全体の温度上昇を伴う熱暴走を未然に防止できる。
【0029】
なお、多孔性のセパレータ33は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂の多孔性シートを用いることができる。この多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造であってもよい。セパレータ33の表面には、耐熱層(HRL)を設けてもよい。この多孔性シートからなるセパレータ33は、その温度が所定の温度以上になったときに、細孔を閉じることによって、電流を遮断するシャットダウン機能を備えている。このシャットダウン機能によって、例えば、過充電等に起因する温度上昇による熱暴走を阻止できる。
【0030】
ただし、前述した吸熱手段3Qを、セパレータの幅方向端部に有さない従来構造の電極体では、電極体において生じた短絡等に起因する局部的な発熱が、短時間で電極体全体に拡大し、図5に示す温度曲線P2のように、電極体の温度が急速に上昇することがある。この場合には、セパレータは、シャットダウン機能を発揮する以前に、溶け落ちて破損し、熱暴走に発展することがある。
【0031】
これに対して、本蓄電デバイス10では、セパレータ33の幅方向端部33Tに備えた屈曲部33K同士の隙間W3に貯留された電解液4が、電極体3の幅方向端部3T全体にて吸熱することができる。そのため、電極体3の任意の箇所において短絡が生じても、図5に示す温度曲線P1のように、電極体3の温度の上昇速度を緩和させることができる。したがって、電極体3の温度が、正常温度T0から徐々に増加して、セパレータ33のシャットダウン機能が開始する所定温度T1に到達する時間(電解液4による吸熱期間)を確保せることができる。その結果、セパレータ33が、破損することなくシャットダウン機能を確実に発揮し、電流を遮断して温度を正常範囲に低下させることができ、熱暴走を未然に防止し得る。
【0032】
よって、本実施形態の蓄電デバイス10によれば、電極体3において生じた局部的な発熱に対して、早期に吸熱して、熱暴走を未然に防止し得る蓄電デバイス10を提供することができる。
【0033】
また、本蓄電デバイス10においては、セパレータ33の屈曲部33Kは、正極の活物質層311及び負極の活物質層321のうち、幅広に形成された活物質層(ここでは、負極の活物質層321)の幅方向端部321HTよりも外方へ突出した突出部331と、突出部331の先端部331Sから内方へ折り返した折返し部332と、を備え、突出部331と折返し部332との隙間W3に、電解液4を貯留してなる蓄電デバイス10が良い。
【0034】
この蓄電デバイス10では、屈曲部33Kを偏平に形成でき、活物質層311、321の厚みに対応した狭い空間で、電解液4を効率的に貯留することができる。そのため、電極体3において局部的な発熱が生じた場合に、スペース効率を犠牲にすることなく貯留した電解液4によって早期に吸熱して、電極体3の温度上昇を緩和又は抑制できる。その結果、電極体3における温度上昇部の急速な拡大を、より効率的に抑制でき、蓄電デバイス10の熱暴走を未然に防止できる。
【0035】
なお、図3図4では、突出部331及び折返し部332は、幅方向へ直線状に延設されているが、必ずしもこれに限らず、例えば、突出部331及び折返し部332を幅方向へ湾曲状又は波状に形成して、折返し部332と突出部331とが電解液4を貯留する幅方向距離を拡大しても良い。この場合、突出部331と折返し部332との間に、より多くの電解液4を貯留でき、吸熱効果を高めることができる。
【0036】
また、本蓄電デバイス10においては、図4に示すように、折返し部332の幅寸法W2は、突出部331の幅寸法W1の50%以上、90%以下であることが好ましい。
【0037】
この蓄電デバイス10では、折返し部332の幅寸法W2は、突出部331の幅寸法W1の50%以上であるので、突出部331と折返し部332との隙間W3に、電解液4をより多く貯留できる。そのため、電極体3の温度上昇を抑制する効果を、より一層向上させることができる。また、折返し部332の幅寸法W2は、突出部331の幅寸法W1の90%以下であるので、電極体3の製作誤差や組付け誤差等を考慮しても、折返し部332と活物質層321、311との干渉を回避できる。そのため、上記製作誤差等を考慮しつつ、セパレータ33の幅方向端部33Tにおける吸熱効果を高めて、より一層熱暴走を未然に防止できる。
【0038】
また、蓄電デバイス10においては、図4に示すように、屈曲部33K(例えば、折返し部332と突出部331との間に)は、電解液4が電極体3の長手方向(図2に示す矢印Yの方向)へ移動可能に形成された電解液流路333を備えたことが好ましい。この電解液流路333は、例えば、折返し部332と突出部331との隙間W3を、電極体3の長手方向(図2に示す矢印Yの方向)で連続状に確保することによって形成されている。ただし、電解液流路333は、これに限らず、折返し部332及び突出部331のいずれか、又は双方の対向面に、電極体3の長手方向(図2に示す矢印Yの方向)へ連続する凹溝(図示しない)を設けることによって形成しても良い。
【0039】
この蓄電デバイス10では、折返し部332と突出部331との間には、電解液4が電極体3の長手方向(図2に示す矢印Yの方向)へ移動可能に形成された電解液流路333を備えているので、折返し部332と突出部331との間に貯留した電解液4が、電解液流路333を介して電極体3の長手方向へ迅速に移動することができる。そのため、電極体3において局部的な発熱が生じた場合、発熱箇所近傍へ電解液流路333を介して電解液4を他から早急に補給でき、電極体3の局部的な温度上昇を、より一層迅速に抑制することができる。その結果、電極体3の局部的な発熱に起因する熱暴走を、より一層未然に防止できる。
【0040】
以上、詳細に説明した本実施形態は、単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって、本開示技術は、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。その変形例について、図6図7を参照しつつ説明する。図6に、図1に示す蓄電デバイスにおける変形例1のA-A部分断面図を示す。図7に、図1に示す蓄電デバイスにおける変形例2のA-A部分断面図を示す。
【0041】
例えば、図6に示すように、変形例1の蓄電デバイス10Bにおいては、セパレータ33の幅方向端部33Tに備えた吸熱手段3Qである屈曲部33KBは、正極の活物質層311及び負極の活物質層321のうち、幅広に形成された活物質層321の幅方向端部321HTよりも外方へ突出した突出部331Bが、所定の隙間W4を有して渦巻き状に折り曲げられている。そして、渦巻き状に折り曲げられた突出部331B同士の隙間W4に、電解液4を貯留している。この場合、突出部331B同士の隙間W4が狭くなるが、隙間W4が狭い分だけ、ケース1の底付近に貯留する電解液4を吸い上げる吸引力が高まり、ケース1内の上方に位置する電極体3への吸熱効果を、より一層向上させることができる。
【0042】
また、例えば、図7に示すように、変形例2の蓄電デバイス10Cにおいては、セパレータ33の幅方向端部33Tに備えた吸熱手段3Qである屈曲部33KCは、正極の活物質層311及び負極の活物質層321のうち、幅広に形成された活物質層321の幅方向端部321HTよりも外方へ突出した突出部331Cが所定の隙間W5を有して電極体3の幅方向(矢印Xの方向)と直交する方向へジグザグ状に折り曲げられている。そして、ジグザグ状に折り曲げられた突出部331C同士の隙間W5に、電解液4を貯留している。この場合、突出部331Cが、電極体3の幅方向(矢印Xの方向)と直交する方向へジグザグ状に折り曲げられているので、積層した電極体3を捲回して偏平に屈曲しても、突出部331C同士の隙間W5が一定に保持される。そのため、突出部331C同士の隙間W5に貯留した電解液4による吸熱効果を、電極体3においてバラツキが少なく、均一に高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ケース
3 電極体
4 電解液
10、10B、10C 蓄電デバイス
31 正極体
32 負極体
33 セパレータ
33K 屈曲部
311、321 活物質層
321HT 幅方向端部
331、331B、331C 突出部
331S 先端部
332 折返し部
333 電解液流路
W3、W4、W5 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7