(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133936
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 46/52 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B01D46/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043967
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金 鎭▲チョル▼
(72)【発明者】
【氏名】森山 修
(72)【発明者】
【氏名】柳田 竜二
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA13
4D058JB22
4D058KA01
4D058KA08
4D058SA06
(57)【要約】
【課題】空気が濾材を通過する際の圧力損失が大きくなることを抑制できるフィルタを提供する。
【解決手段】フィルタにおいては、シート状の濾材12を厚さ方向の両側から挟む外枠11と支持枠13とにより、濾材12が外枠11と支持枠13との間に保持される。外枠11と支持枠13とはそれぞれ四角枠状に形成される。濾材12は、外枠11の一辺の延びる方向に沿って山12aと谷12bとが交互に連なるよう折られる。支持枠13は、濾材12の形状を保持するための保持バー16を備える。保持バー16は、濾材12を折ることによって形成された山12aの裏側で、外枠11の上記一辺と交差する別の一辺と同じ方向に延びるようにされる。このため、空気が濾材12を通過する際、濾材12の山12a同士が接触することは保持バー16によって抑制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の濾材を厚さ方向の両側から挟む外枠と支持枠とにより、前記濾材が前記外枠と前記支持枠との間に保持されるフィルタにおいて、
前記外枠と前記支持枠とはそれぞれ四角枠状に形成され、
前記濾材は、前記外枠の一辺の延びる方向に沿って山と谷とが交互に連なるよう折られており、
前記支持枠は、前記濾材の形状を保持するための保持バーを備え、
前記保持バーは、前記濾材を折ることによって形成された山の裏側で、前記外枠の前記一辺と交差する別の一辺と同じ方向に延びているフィルタ。
【請求項2】
前記外枠の高さ方向の第1端であって前記外枠の平行となる二辺には、対向するように突出するとともに前記二辺の長手方向に延びるフランジが形成され、
前記支持枠は、前記外枠の高さ方向の第2端に取り付けられることにより、前記外枠の前記フランジとの間に前記濾材を挟むものであり、
前記保持バーは、前記支持枠が前記外枠の前記第2端に取り付けられるとき、前記濾材の前記山の裏側に挿入されるものである請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記支持枠は、前記外枠の前記第2端に取り付けられる本体を備えており、
前記保持バーは、前記外枠の前記第2端に取り付けられた前記本体から、前記外枠の前記第1端側に向けて突出するものであり、
前記保持バーの前記本体に対する突出高さは、前記外枠の高さよりも小さくされており、
前記保持バーの前記本体に対する突出高さと前記外枠の高さとの差は、前記濾材の厚さ以上の値とされている請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記保持バーは、前記濾材における前記山の頂点と同じ方向に直線状に延びる直線部と、その直線部における長手方向の両端部をそれぞれ前記本体に繋ぐ脚部と、を備えている請求項3に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記直線部の厚さは、前記保持バーにおける前記本体に対する突出方向の先端に向かうほど薄くされている請求項4に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、車両の空調装置等に用いられるフィルタは、外枠と支持枠と濾材とを備えている。濾材はシート状に形成されている。シート状の濾材には、山と谷とがひだ折り加工によって一方向において交互に連なるよう形成されている。濾材は、その厚さ方向の両側から外枠と支持枠とで挟まれることにより、外枠と支持枠との間に保持される。そして、フィルタの濾材を空気が通過するとき、その空気に含まれる異物が濾材によって空気から分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記濾材におけるひだ折りの回数を多くすれば、空気が濾材を通過するときの濾材と空気との接触面を大きくとることができ、フィルタによる空気からの異物の分離を効果的に行うことが可能である。しかし、濾材におけるひだ折りの回数を多くすると、ひだ折り加工に伴って濾材に形成された山同士の間隔が短くなるため、空気が濾材を通過する際に山同士が接触する。このように濾材の山同士が接触すると、空気が濾材を通過する際の圧力損失が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するフィルタにおいては、シート状の濾材を厚さ方向の両側から挟む外枠と支持枠とにより、濾材が外枠と支持枠との間に保持される。外枠と支持枠とはそれぞれ四角枠状に形成される。濾材は、外枠の一辺の延びる方向に沿って山と谷とが交互に連なるよう折られる。支持枠は、濾材の形状を保持するための保持バーを備える。保持バーは、濾材を折ることによって形成された山の裏側で、外枠の上記一辺と交差する別の一辺と同じ方向に延びるようにされる。
【0006】
上記構成によれば、シート状の濾材が外枠の一辺の延びる方向に沿って山と谷とが交互に連なるよう折られているため、空気がフィルタの濾材を通過するときに空気と濾材との接触面積を大きくとることができる。濾材における山の裏側には濾材の形状を保持するための保持バーが通っているため、空気が濾材を通過する際に山同士が接触することは上記保持バーによって抑制される。従って、濾材の山同士が接触することによって空気が濾材を通過する際の圧力損失大がきくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図1のフィルタを分解した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1のフィルタを矢印III-III方向から見た状態を示す断面図である。
【
図4】
図3のフィルタにおける二点鎖線で示す箇所を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図1のフィルタを矢印V-V方向から見た状態を示す断面図である。
【
図6】濾材を外枠内に配置した状態を示す斜視図である。
【
図7】保持バーにおける直線部の他の例を示す断面図である。
【
図8】保持バーにおける脚部の他の例を示す断面図である。
【
図9】保持バーにおける脚部の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、フィルタの一実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、フィルタは、外枠11と濾材12と支持枠13とを備えている。外枠11と支持枠13とはそれぞれ四角枠状に形成されている。濾材12は、シート状に形成されている。外枠11と支持枠13とは、濾材12を厚さ方向の両側から挟んでいる。これにより、濾材12が外枠11と支持枠13との間に保持されている。そして、空気がフィルタの外枠11と支持枠13との間の濾材12を通過すると、その空気に含まれる異物が濾材12によって空気から分離される。
【0009】
<外枠11>
外枠11における高さ方向の両端、すなわち
図2の上下方向の両端のうち、下端は第1端となり、上端は第2端となっている。
図2に示すように、外枠11の第1端であって外枠11の平行となる二辺には、対向するように突出するとともに上記二辺の長手方向に延びるフランジ14が形成されている。フランジ14は、外枠11の内側に濾材12を支持するためのものである。
【0010】
<濾材12>
濾材12は、外枠11の一辺の延びる方向、すなわち
図2の矢印Y1方向に沿って山12aと谷12bとが交互に連なるよう折られている。濾材12としては、通過する空気から異物を分離することに特化したものや、空気からの異物の分離に加えて脱臭機能等を備えたものなどがある。このように濾材12としては複数の種類があり、各種類毎に濾材12の厚さが異なっている。
【0011】
<支持枠13>
支持枠13は、外枠11の第2端に取り付けられる本体15と、濾材12の形状を保持するための保持バー16と、を備えている。支持枠13は、本体15を外枠11の第2端に取り付けることにより、外枠11のフランジ14との間に濾材12を挟むものとなっている。保持バー16は、本体15から外枠11の第1端側に向けて突出している。
【0012】
図3及び
図4に示すように、保持バー16は、支持枠13の本体15が外枠11の第2端に取り付けられるとき、濾材12の山12aの裏側に挿入される。保持バー16の本体15に対する突出高さは、外枠11の高さよりも小さくされている。保持バー16の本体15に対する突出高さと外枠11の高さとの差は、濾材12の厚さ以上の値とされている。
【0013】
図5に示すように、保持バー16は、直線部16aと脚部16bとを備えている。保持バー16の直線部16aは、
図2に示す濾材12の山12aの裏側で、外枠11の上記一辺と交差する別の一辺と同じ方向に延びている。言い換えれば、直線部16aは、濾材12における山12aの頂点と同じ方向に直線状に延びている。脚部16bは、直線部16aにおける長手方向の両端部をそれぞれ本体15に繋いでいる。
図4に示すように、直線部16aの幅方向断面の形状は、直線部16aの本体15に対する突出方向、すなわち
図4の下方向の先端で、円弧状に突出する形状となっている。
【0014】
次に、フィルタの組み立て、及び、フィルタにおける濾材12の交換について説明する。
フィルタを組み立てる際、作業者は、濾材12の山12a及び谷12bをそれらが連なる方向に互いに接近するよう、濾材12の持つ弾力に抗して同濾材12を縮める。そのように縮められた濾材12は、
図6に実線で示すように外枠11の内側に配置される。このとき、濾材12は、外枠11の第1端に形成されたフランジ14によって支持される。そして、縮められた濾材12を作業者が開放すると、上記弾力によって濾材12が山12a及び谷12bを開く方向に延びる。その結果、上記弾力によって濾材12が
図6に二点鎖線で示すように外枠11の内側に押し付けられる。その後、支持枠13の保持バー16が濾材12における山12aの裏側に挿入されるよう、支持枠13の本体15が外枠11の第2端に取り付けられる。このように外枠11の第2端に支持枠13の本体15を取り付けることにより、支持枠13の保持バー16が山12aの裏側に挿入される。
【0015】
フィルタの濾材12を交換する際には、支持枠13の本体15が外枠11の第2端から取り外される。このとき、濾材12における山12aの裏側から、支持枠13の保持バー16が抜き出される。濾材12は外枠11の内側に押し付けられている。この濾材12が外枠11の内側から取り外された後、フィルタを組み立てるときと同じ手順で、新しい濾材12が外枠11の内側に配置される。更に、フィルタを組み立てるときと同じ手順で、支持枠13が上記濾材12を外枠11との間に挟むよう、外枠11に対して取り付けられる。
【0016】
次に、本実施形態におけるフィルタの作用効果について説明する。
(1)フィルタの外枠11と支持枠13との間に保持されたシート状の濾材12は、外枠11の一辺の延びる方向に沿って山12aと谷12bとが交互に連なるよう折られている。このため、空気がフィルタの濾材12を通過するとき、空気と濾材12との接触面積を大きくとることができ、フィルタによる空気からの異物の分離を効果的に行うことができる。
【0017】
(2)支持枠13の保持バー16は、濾材12の形状を保持するためのものであり、濾材12における山12aの裏側を通っている。このため、空気が濾材12を通過する際、濾材12の山12a同士が接触することを上記保持バー16によって抑制することができる。従って、濾材12の山12a同士が接触することによって空気が濾材12を通過する際の圧力損失が大きくなることを抑制できる。
【0018】
(3)フィルタの組み立てや濾材12の交換の際には、外枠11の内側に濾材12が配置される。このとき、濾材12は、山12a及び谷12bを開く方向に延びた状態で、外枠11の内側に押し付けられる。この状態のもと、支持枠13の保持バー16が濾材12における山12aの裏側に挿入されるよう、支持枠13の本体15が外枠11の第2端に取り付けられる。このように外枠11の第2端に支持枠13の本体15を取り付けることにより、支持枠13の保持バー16を簡単に濾材12における山12aの裏側に挿入することができる。
【0019】
(4)濾材12が外枠11の内側に押し付けられた後、支持枠13の保持バー16が濾材12における山12aの裏側に挿入されるよう、支持枠13の本体15が外枠11の第2端に取り付けられることにより、濾材12が外枠11と支持枠13との間に挟まれる。保持バー16における本体15に対する突出高さは、外枠11の高さよりも小さくされている。更に、保持バー16における本体15に対する突出高さと外枠11の高さとの差は、濾材12の厚さ以上の値とされている。このため、濾材12を厚さの異なるもの、例えば脱臭機能等を備えたより厚いものに交換しても、その濾材12を外枠11と支持枠13との間に挟みつつ、支持枠13の本体15を外枠11の第2端に対し適正に取り付けることができる。
【0020】
(5)保持バー16の直線部16aは、濾材12の山12aの裏側で山12aの頂点と同じ方向に直線状に延びるようになる。このため、濾材12の山12aの形状を保持バー16によって安定して保持することができる。従って、空気が濾材12を通過するとき、濾材12の山12a同士が接触することをより効果的に抑制できる。
【0021】
(6)直線部16aの幅方向断面の形状は、直線部16aの本体15に対する突出方向、すなわち
図4の下方向の先端で、円弧状に突出する形状となっている。これにより、濾材12の山12aの裏面が直線部16aに押し付けられたとき、直線部16aと山12aの裏面とが面接触しやすくなる。このように直線部16aと山12aの裏面とを面接触させることにより、山12aが直線部16aとの接触によって破れることを抑制できる。
【0022】
(7)濾材12は、山12aと谷12bとが交互に連らなるように折られている。このため、それら山12a及び谷12bをそれらが連なる方向に互いに接近するよう、濾材12の持つ弾力に抗して同濾材12を縮めることができる。このように山12a及び谷12bが連なる方向に濾材12を縮めることにより、濾材12の容積を小さく抑えることができる。そして、濾材12の容積を小さく抑えれることで、一度に多くの大量の濾材12を運搬できるようになるため、効率良く濾材12を運搬することができる。
【0023】
(8)フィルタの濾材12を
図3及び
図4の上から下に空気が通過するよう上記フィルタを配置すれば、濾材12を空気が通過する際の圧力損失を小さく抑えることができる。これは、上記空気の流れが保持バー16の直線部16aに当たることにより、濾材12における山12aの頂点を避けるように空気が濾材12を通過することが関係している。すなわち、山12aの頂点は、材料密度が高いため、空気を通過させにくくなる。濾材12を通過する空気は、直線部16aに当たることによって直線部16aの幅方向に分岐させられるため、山12aの頂点から離れた箇所を通過しやすくなる。その結果、濾材12を空気が通過する際の圧力損失を小さく抑えることができる。
【0024】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・保持バー16における直線部16aの幅方向断面の形状については適宜変更することが可能である。例えば、
図7に示すように、直線部16aの厚さが、保持バー16における本体15に対する突出方向、すなわち
図7の下方向の先端に向かうほど薄くされるものであってもよい。この場合、支持枠13の本体15を外枠11の第2端に取り付ける際、保持バー16の直線部16aを濾材12における山12aの裏側に挿入しやすくなる。
【0025】
・
図8に示すように、保持バー16の脚部16bの厚さは、保持バー16における本体15に対する突出方向の先端に向かうほど薄くなるものであってもよい。
・
図9に示すように、保持バー16の脚部16bは、直線部16aを複数本で支えるものであってもよい。
【0026】
・保持バー16は、必ずしも濾材12における全ての山12aの裏側にそれぞれ挿入されている必要はない。この場合、支持枠13における保持バー16の数が少なくなる分、支持枠13を形成する材料を少なく抑えることができるため、支持枠13の製造コストを低く抑えることができる。一方、上記実施形態のように、濾材12における全ての山12aの裏側にそれぞれ保持バー16を挿入すれば、濾材12を空気が通過するとき、濾材12における山12aの形状を保持バー16によって安定して保持することができる。
【0027】
・保持バー16は、直線部16aにおける長手方向の一端部のみを脚部16bによって本体15に繋ぐ片持ち支持式のものであってでもよい。
・保持バー16を上述した片持ち支持式のものとした場合、濾材12における一つの山12aの裏側に二つ一組の保持バー16が挿入されるようにしてもよい。上記一組の保持バー16を脚部16bによって支持枠13における本体15に繋ぐものとされる。更に、上記一組の保持バー16における直線部はそれぞれ、脚部16bから対向するように突出する。
【符号の説明】
【0028】
11…外枠
12…濾材
12a…山
12b…谷
13…支持枠
14…フランジ
15…本体
16…保持バー
16a…直線部
16b…脚部