(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133952
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】高栄養冷菓
(51)【国際特許分類】
A23G 9/00 20060101AFI20240926BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20240926BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240926BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240926BHJP
【FI】
A23G9/00 101
A23J3/16 502
A23L5/00 M
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043990
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黄 苡慈
(72)【発明者】
【氏名】木村 友和
【テーマコード(参考)】
4B014
4B020
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GG06
4B014GG13
4B014GG14
4B014GK05
4B014GK07
4B014GL01
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
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4B035LE16
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4B035LG15
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4B035LG33
4B035LK02
4B035LK12
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP43
(57)【要約】
【課題】
植物性のたん白素材を用い、蛋白質を8質量%以上、カルシウムを30mg/100ml以上含むものであって、一般的な流通販売経路の中で長期間の保管流通が可能な飲食品を得ることとした。
【解決手段】
8質量%以上の豆類たん白素材と30mg/100ml以上のカルシウムを含む生地を用いて、これを冷菓の形態とする。これにより、常温流通の飲料では必須な強い殺菌工程が避けられ、沈殿や粘度上昇を抑止できる。得られた冷菓は一般的な流通販売経路の中で、長期間の保管流通が可能であり、デザートとして摂取もし易い栄養強化食となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状豆類たん白素材を蛋白質として8質量%以上、カルシウムを30mg/100ml以上含有する冷菓。
【請求項2】
油脂を2質量%以上含有する水中油型乳化物である、請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
蛋白質が15質量%以下、カルシウムが200mg/100ml以下である、請求項1に記載の冷菓。
【請求項4】
粉末状豆類たん白素材が大豆たん白素材である、請求項1に記載の冷菓。
【請求項5】
大豆たん白素材のNSIが 40%以上、TCAが10%以上である、請求項4に記載の冷菓。
【請求項6】
粉末状豆類たん白素材を蛋白質として8質量%以上、カルシウムを30mg/100ml以上含有する水混合物を凍結凝固させて冷菓とする、該水混合物の増粘沈殿の抑止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質およびカルシウムを高濃度に含有する冷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の栄養成分を強化した食品は古くからあり、各種の蛋白質,脂質,ミネラル,ビタミン類等々が対象となっている。特に蛋白質とカルシウムは強化の対象として高頻度で選択される一方、両者間の高い反応性により、増粘や沈殿を引き起こすことがあった。近年は健康や環境の理由から植物性蛋白質が乳蛋白質より選択される機会も多いが、カルシウムとの反応性は乳蛋白質よりも更に高い場合が多い。
【0003】
栄養成分を強化した食品の典型は流動食であるが、これら飲食品は常温で流通する必要があり、レトルト殺菌やそれに準じた高温長時間の殺菌が行われる。そして高温長時間殺菌はカルシウム存在下の大豆蛋白質に増粘や凝集を引き起こす。これを回避する技術も複数存在する。特許文献1は、流動食に於いて、大豆蛋白質の製造法の改良により増粘と沈殿を回避した技術である。特許文献2は、同様な課題に対して、グリシニンの含量が少ない特殊な大豆蛋白質を用いる技術である。また、増粘や沈殿を防ぐ機構は明らかにされていないが、カルシウム72mg/100mlを含む、大豆蛋白質として6.4質量%を含む製品も存在している。(非特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2009/057554号
【特許文献2】国際公開WO2009/116636号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「製品情報 リカバリーミニオメガスリー」インターネット<URL:https://www.nutri.co.jp/products/recovery_mini/index.html>、検索日2023年3月14日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上に挙げた従来技術は、何れも蛋白質が7質量%に満たない濃度である。本発明の目的は、汎用性の高い植物性のたん白素材を用い、蛋白質として8質量%以上、カルシウムを30mg/100ml以上含むものであって、一般的な流通販売経路の中で、長期間の保管流通が可能な飲食品を得ることとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、8質量%以上の豆類たん白素材と30mg/100ml以上のカルシウムを含む水混合物について、これを冷菓とすることで完成に至った。すなわち、冷菓であれば流通経路が氷点下に限定されるために、常温流通の飲食品では必須な強い殺菌工程の必要がなくなる。高濃度の蛋白質やカルシウムが共存していても、沈殿や粘度上昇を抑止できる。
【0008】
即ち、本発明は
(1)豆類たん白素材を蛋白質として8質量%以上、カルシウムを30mg/100ml以上含有する冷菓。
(2)油脂を2質量%以上含有する水中油型乳化物である、(1)に記載の冷菓。
(3)蛋白質が15質量%以下、カルシウムが200mg/100ml以下である、(1)に記載の冷菓。
(4)粉末状豆類たん白素材が大豆たん白素材である、(1)に記載の冷菓。
(5)大豆たん白素材のNSIが 40%以上、TCAが10%以上である、(4)に記載の冷菓。
(6)粉末状豆類たん白素材を蛋白質として8質量%以上、カルシウムを30mg/100ml以上含有する水混合物を凍結凝固させて冷菓とする、該水混合物の増粘沈殿の抑止方法。
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一般的な流通販売経路の中で長期間の保管流通が可能であって、粉末状豆類たん白素材を蛋白質として8質量%以上、カルシウムを30mg/100ml以上含んでいても沈殿や増粘が避けられ、また多少の沈殿や増粘があっても摂取の障害になり難い形態の、栄養強化食品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
(粉末状豆類たん白素材)
本発明の「粉末状豆類たん白素材」とは、豆類を原料とした蛋白質を主体とする食品素材であって粉末状のものである。豆類とは、小豆,緑豆,ササゲ,金時豆,花豆,インゲンマメ,バタービーン,ソラマメ,エンドウ,ヒヨコマメ,イナゴマメ,ナタマメ,ルパン豆,レンズマメ,大豆,落花生等が例示できる。好ましくは大豆またはエンドウであり、最も好ましくは大豆である。
典型的な例として大豆の場合の、粉末状大豆たん白素材を説明する。大豆原料として脱脂大豆フレークを用い、これを適量の水中に分散させて水抽出を行い、繊維質を主体とする不溶性画分いわゆるオカラを除去して、抽出大豆たん白(脱脂豆乳)を得る。
該抽出大豆たん白を塩酸等の酸によりpH4.5前後に調整し、蛋白質を等電点沈澱させて酸不溶性画分(カード)を回収し、これを再度適量の水に分散させてカードスラリーを得、水酸化ナトリウム等のアルカリにより中和することで中和スラリーである分離大豆たん白を得る。これらの抽出大豆たん白や分離大豆たん白の溶液を高温加熱処理装置によって加熱殺菌した後、該殺菌液をスプレードライヤー等により噴霧乾燥することによって、粉末状大豆たん白素材を得ることができる。
【0012】
ただし、上記の製造法に限定されるものではなく、大豆蛋白質の純度が大豆原料から高められる方法であればよい。また脱脂大豆からエタノールや酸によりホエーを除去して得られる濃縮大豆たん白も粉末状大豆たん白素材に含まれる。これらのうち、分離大豆たん白は、蛋白質含量が通常固形分中90質量%程度と高い点において、抽出大豆たん白よりもよく利用されており、本発明への使用にも好ましい。
【0013】
(蛋白質量)
蛋白質量は、粗蛋白質含量(CP)としてケルダール法により測定する。具体的には、蛋白素材重量に対して、ケルダール法により測定した窒素の質量を、乾物中の粗蛋白質含量として「質量%」で表す。なお、窒素換算係数は6.25とする。基本的に、小数点以下第2桁の数値を四捨五入して求められる。
本粉末状豆類たん白素材は、固形分中の粗蛋白質含量が80質量%以上が好ましい。85質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。該粗蛋白質含量が高いほど、冷菓の配合を設計する際に、余裕を持って他原料を配合することができる。
【0014】
(TCA可溶化率)
本粉末状豆類たん白素材、特に分離大豆たん白素材は、TCA可溶化率により、適切なものを選択できる。尚、TCA可溶率とは、各試料を蛋白質含量として1.0質量%となるように水に分散させ十分撹拌した分散液について、全蛋白質に対する0.22Mトリクロロ酢酸に溶解する蛋白質の割合をケルダール法により測定し、質量%として算出したものである。
本発明に使用する豆類たん白素材の場合、TCAは10%以上が好ましく15%以上が更に好ましい。また、30%以下が好ましく、20%以下が更に好ましい。TCA値が低すぎないことで粘度上昇を抑止し、冷菓の食感低下を抑える。また、TCA値が高すぎないことで、苦味の発生を抑える。
【0015】
(NSI:窒素溶解指数)
本粉末状豆類たん白素材、特に分離大豆たん白素材は、NSI(Nitrogen Solubility Index:窒素溶解指数)により、適切なものを選択できる。NSIは所定の方法に基づき、全窒素量に占める水溶性窒素(粗蛋白)の比率(質量%)で表すものとし、本発明においては後述の方法に準じて測定された値とする。
本発明に使用する豆類たん白素材の場合、NSIは40%以上が好ましく、50%以上が更に好ましい。また、90%以下好ましく、80%以下が更に好ましい。また、好ましくは40~90%であり、更に好ましくは50~80%である。NSIが高すぎないことで粘度上昇を抑え、またNSI値が低すぎないことで沈殿の発生を抑える。
【0016】
(たん白素材濃度)
上記の粉末状豆類たん白素材等、本発明で用いる粉末状豆類たん白素材は、後述する冷菓生地中に蛋白質として8質量%以上必要である。これ以下の濃度では、本発明による解決課題がそもそも存在しない。また、9質量%以上が好ましく、10質量%以上が更に好ましい。また15質量%以下が好ましく、12質量%以下が更に好ましい。蛋白質が少ないと栄養強化食として機能が低下し、蛋白質が過剰だと粘度が上昇し、あるいは沈殿が増加することで、冷菓の形態でも摂取が困難となる場合がある。
【0017】
(カルシウム)
本発明で用いるカルシウムは、カルシウムを含んでいて食品に使用できる塩や化合物であれば良い。塩化カルシウム,炭酸カルシウム,硫酸カルシウム,酸化カルシウム,乳酸カルシウム,グルコン酸カルシウム,第三リン酸カルシウム,第二リン酸カルシウム,クエン酸カルシウム,リンゴ酸カルシウム等が挙げられる。塩や化合物等の中に占めるカルシウムが5質量%以上が好ましく、15質量%以上が更に好ましく、30質量%以上が最も好ましい。尚、ドロマイト,卵殻,乳清カルシウム等、カルシウムを多く含む天然物を用いることもできる。
カルシウムの塩や化合物等は、冷菓生地100ml中にカルシウムとして30mg以上必要である。これ以下の濃度では、本発明による解決課題がそもそも存在しない。よりカルシウムが摂取し易い40mg以上が好ましい。また、200mg以下が好ましく、150mg以下が更に好ましい。また、好ましくは30~200mgであり、更に好ましくは40~150mgである。カルシウムが少ないと栄養強化食として機能が低下し、カルシウムが過剰だと粘度が上昇し、あるいは沈殿が増加することで、冷菓の形態でも摂取が困難となる場合がある。尚、冷菓生地100mlは、オーバーラン0%のものとして計算する。
【0018】
(油脂)
本発明には、各種の油脂を使用することができる。具体的には、大豆油,菜種油,米油,コーン油,パーム油,牛脂,豚脂,及びこれらの分別油,硬化油,エステル交換油をあげることができ、これらを適宜選択し、使用できる。好ましくは常温で液体の油脂である。
油脂は、冷菓生地中に2質量%以上が好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が最も好ましい。また、2~20質量%が好ましく、5~15質量%が更に好ましい。油脂を使用することで、冷菓を水中油型乳化物とすることができる。これにより、コク味が増強され、異風味がマスキングされる。また含気させることができる為、アイスクリーム様の軽さを持った食感を付与できる。
【0019】
本発明には、必要により糖質を使用することができる。具体的には、ショ糖,麦芽糖,果糖,ブドウ糖,転化糖,混合液糖,水飴類,デキストリン類,各種のでん粉類,糖アルコールの他、アスパルテーム、ステビアといった甘味付与だけを目的とした高甘味度甘味料も使用できる。
【0020】
(他の添加物)
本発明には、上記以外の甘味料,香辛料,塩,風味付与材,調味料,色素など、本発明の効果を妨げない範囲で他の成分を添加することもできる。
【0021】
(冷菓)
本発明の冷菓とは、粉末状豆類たん白素材、カルシウムおよび必要な他の素材を含んだ水混合物を凍結凝固させて調製した食品である。凍結前の水混合物が冷菓生地であり、これを凍結したものが冷菓である。好ましくは、更に油脂を含んだ水中油型乳化物の冷菓生地に対し、含気をさせながら凍結凝固させて調製した食品である。
具体的には油脂を含まないものとして、各種のシャーベット類、油脂を含むものとして、オーバーランを有したアイスクリーム様やラクトアイス様の食品が例示される。
本発明に乳脂肪や乳固形分の配合は必須ではなく、また乳由来原料を一切使用しないこともできるため、狭義のアイスクリーム類には留まらない場合があり、広義の冷菓に含まれるものとする。好ましくは含気の水中油型乳化物冷菓であり、その際に乳固形分が15%未満のものが好ましく、10%未満、3%未満が更に好ましい。最も好ましくは、乳原料を使用しない含気の水中油型乳化物冷菓である。オーバーランは、好ましくは5~500%、更に好ましくは10~150%、最も好ましくは20~100%が例示できる。
【0022】
(製造方法)
本発明に係る冷菓の一形態である、アイスクリーム様食品の製造法を、一例をもって説明する。水または温水に分離大豆たん白および各種の水溶性原料を加え、ミキサー等で撹拌し溶解させる。次に油脂を加え分散させ、最後に、水または温水にて水分調整を行う。この調合液を高圧ホモジナイザー等で均質化し、低温でエージングした水中油型乳化物を冷菓生地とする。その後に冷菓生地を、アイスクリーマー(SIMAC社製)等で所定のオーバーランになるまで撹拌下で凍結し、カップ等に充填して、必要により-30~-80℃,1時間等の急冷を行ったのち、通常の保存温度である-18℃で保存を行う。
【0023】
(用途)
本発明の冷菓は、高栄養な食品を摂取したい用途に広く使用することができる。アイスクリーム様の形態を持たせることで、食事としても間食としても摂取可能であり、蛋白質とカルシウムを積極的に投与したい子供や高齢者等に、特に適している。
具体的には、咀嚼しやすい形状を利用した、高齢者や病気の人に向けた栄養補給食品として、病院や介護施設などの医療機関で利用可能である。また、スポーツ栄養食品として、スポーツパーソンの蛋白質とカルシウムの栄養素が小容量で摂取可能となる。更に、一般消費者向けに、栄養価の高い菓子や間食として、手間をかけずに栄養補給が可能となり、栄養管理、栄養補給、ダイエットの置き換え食等に利用できる。
【実施例0024】
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。文中の数値は特に断りのない限りは、全て質量部または質量%を表す。
【0025】
○蛋白質濃度およびたん白素材の差の影響(実施例1~実施例7,比較例1)
(冷菓生地の調製)
各種の原料を表1の配合にて温水と共にステンレス容器に入れ、温浴を用いて65℃に昇温した。予め計量し混合しておいた粉体原料を加え、卓上ホモミキサー(T.K. HOMOMIXER MARK II)を用いて、60℃の品温にて攪拌溶解し、次いでヤシ油を加え、7,000rpmで10分間撹拌し溶解させ、最後に温水にて水分調整した。この調合液を20MPaで均質化し、5℃で一晩エージングを行うことで、冷菓生地を調製した。
尚、大豆たん白素材Aは、NSI 64%,TCA 18%,CP 90%の粉末状大豆たん白素材、大豆たん白素材BはNSI 99%,TCA 15%,CP 88%の粉末状大豆たん白素材、大豆たん白素材CはNSI 95%,TCA3%,CP 90%の粉末状大豆たん白素材を用いた。何れも出願人である不二製油社製であり、同社より供給可能である。エンドウたん白素材は、Empro E86(NSI 37%,TCA 3%,CP 88%)(Emsland社製)を用いた。また、乳酸カルシウム(食添,富士フィルム和光純薬社製・Ca含量13%),ヤシ油(不二製油社製),グラニュー糖(和田製糖社製),難消化性デキストリン(ファイバーソル2,松谷化学製),乳化剤(シュガーエステルS-1670,三菱ケミカル社製)を用いた。
【0026】
○表1 蛋白質濃度およびたん白素材の差の検討の為の配合
【0027】
○カルシウム濃度および油脂量の影響(実施例8~11,比較例2~3)
実施例1と同様な操作で、表2に従ってカルシウム添加量および油脂量を変えた冷菓生地を調製した。尚、実施例8は油脂を添加せずに調製を行った。
【0028】
○表2 カルシウム濃度および油脂量の検討の為の配合
【0029】
(アイスクリーム様冷菓の調製)
実施例1~12,比較例1~2で調製した冷菓生地について、アイスクリーマー(SIMAC社製)を用いてオーバーランが30%になるまで撹拌し、カップに充填して、ディープフリーザーで-30℃で1時間急冷した後、-18℃で冷凍保存を行うことで、アイスクリーム様の冷菓を調製した。以上の工程は
図1に示している。但し、実施例8については油脂添加を行わず、オーバーランが30%に満たない状態で攪拌凍結を行った。
【0030】
(官能評価)
熟練したパネラー5名にて官能評価を行った。アイスクリーム様の食感の有無を基に食感を総合的に評価し、合議により判定した。以下の様に評価を行い、A評価およびB評価を合格と判定した。
A:口溶けが良好、かつ、滑らか感と濃厚感が感じられたため、食べやすい。
B:やや濃厚感が足りない、あるいは、少しモッタリとした食感を感じたが、アイスクリームとして食感が許容範囲。
C:濃厚感がない、あるいは、モッタリし過ぎて好ましくない食感があるため、アイスクリームとして食べにくく不適。
【0031】
【0032】
表3に示す様にC評価の試料はなく、全てのケースでA評価またはB評価のアイスクリーム様食品が調製できた。特にNSIが64%の大豆たん白Aを用いた場合は(実施例1~3,比較例1)、高蛋白質濃度でも品質の高いアイスクリーム様食品となった。NSIが99%と高い大豆たん白素材B(実施例4,5)は、大豆たん白素材Aより風味食感が多少劣るがA評価であった。TCAが3%と低い大豆たん白素材C(実施例6)については、問題点はあるものの許容範囲内に留まるB評価だった。エンドウたん白(実施例7)は濃厚感がやや不足し、ザラツキも有する為に、B評価のアイスクリーム様食品が得られた。
【0033】
油脂を添加しない実施例8は、シャーベット様のものとなり濃厚感も不足気味ではあったが、許容範囲の評価Bであった。また、油脂を20質量%添加した実施例10は、やや重く感じられたが、B評価の許容範囲内だった。カルシウム濃度を0~150mg/100mlまで振った比較(比較例2,実施例1,11,12)では、高濃度にすることで濃厚感を増していた。
尚、蛋白質濃度が6%に留まる比較例1及びカルシウムを添加していない比較例2は、どちらも、蛋白質またはカルシウムの補給の課題を解決できない為に、本件発明ではなく比較例の扱いであるが、アイスクリーム様食品としては十分に良い品質のものが得られていた。
【0034】
○比較実験例 高蛋白質、高Ca飲料のレトルト耐性(比較例3~5)
各種の原料を表4の配合にて温水と共にステンレス容器に入れ、温浴を用いて65℃に昇温した。予め計量し混合しておいた粉体原料を加え、卓上ホモミキサー(T.K. HOMOMIXER MARK II)を用いて、60℃の品温にて攪拌溶解し、次いでヤシ油を加え、7,000rpmで10分間撹拌し溶解させ、最後に温水にて水分調整した。この調合液を20MPaで均質化し、5℃で一晩エージングを行うことで、濃厚蛋白質飲料を調製した。
濃厚蛋白質飲料は、更に121℃,30分間のレトルト処理(高圧調理殺菌装置・三協製造所社製)を行い、冷却後に粘度と沈殿状態を確認した。
【0035】
粘度の測定は、B型粘度計(東機産業社製、タイプBM)を用いて以下の様に行った。測定容器に充填した各試料にロータをセットし、20℃にて、任意の回転数で測定し、指針値を読み取り、ロータNo.と回転数に対応した換算乗数を掛けて、粘度を算出した。(単位:Pa・s)読み取りは1分後の測定値とし、基本的に回転数は60rpmとした。高粘度のサンプルはロータNo.を1→4とし、6rpmまで回転数を低下させた。
【0036】
結果を表4下段に示した。大豆たん白A~Cの何れも、蛋白質8質量%、Ca濃度30mg/100mlでは、レトルト加熱により増粘し一部は沈殿し、レトルト加熱耐性を有していなかった。長期間の保管流通に供する飲料は、常温での保存安定性が要求される。ここで用いた大豆たん白素材を使った場合、蛋白質8質量%、Ca濃度30mg/100mlの栄養成分を有して常温流通が可能な飲料は、得ることができないことが確認できた。
【0037】