(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133953
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】フィルタバンク回路、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びフィルタバンク回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/00 20150101AFI20240926BHJP
G01R 23/165 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H04B17/00 Z
G01R23/165 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043991
(22)【出願日】2023-03-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 裕司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健一
(57)【要約】
【課題】電子的に切り替え可能なスイッチと複数のフィルタ群を用い、それぞれのフィルタ群内でガードバンドを確保しつつ簡単な切替制御でフィルタ群を切り替えることでフィルタ群全体ではオーバーラップを確保することで全ての帯域の測定または試験に対応可能なフィルタバンク回路、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びフィルタバンク回路の制御方法を提供する。
【解決手段】フィルタバンク回路10は、例えば、1極2投型の切替スイッチ20とフィルタ群G1、G2と、を有し、フィルタ群G1、G2は、それぞれ、m個のフィルタ21、22を有し、フィルタ21、22は、それぞれ、グループ内では他のフィルタ21、22の通過帯域とはオーバーラップせず、グループ間では互いに他のグループのそれぞれのフィルタ21、22の通過帯域に対してオーバーラップする通過帯域に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの入力部(20a)とn個(nは2以上の整数)の出力部(20b、20c、20d)間の切り替えを行う1極n投型の切替スイッチ(20、20-1)と、
n個の前記出力部にそれぞれ接続されるnグループのフィルタ群(G1~Gn)と、を有し、
前記フィルタ群は、それぞれ、m個(mは2以上の整数)フィルタ回路(21、22、23)を有し、
前記フィルタ回路は、それぞれ、前記グループ内では他の前記フィルタ回路の通過帯域とはオーバーラップせず、前記グループ間では互いに他のグループのそれぞれの前記フィルタ回路の通過帯域に対して所定帯域幅(ol1~ol7)でオーバーラップする通過帯域に設定されており、
前記所定帯域幅は、被測定信号または試験用信号が欠落することのないよう、前記被測定信号または前記試験用信号が占有する帯域よりも広い帯域に設定されていることを特徴とするフィルタバンク回路。
【請求項2】
所定の周波数成分を入力し、前記nグループごとにm個ずつの前記フィルタ回路によって、n×m個の互いにオーバーラップした前記通過帯域に分けて前記所定の周波数成分を抽出することを特徴とする請求項1に記載のフィルタバンク回路。
【請求項3】
前記フィルタ回路は、当該フィルタ回路に対応して設定された前記通過帯域の周波数成分を通過させるブランチライン・カプラ(BLC)を用いたフィルタバンクで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタバンク回路。
【請求項4】
前記フィルタ回路は、当該フィルタ回路に対応して設定された前記通過帯域の周波数成分を通過させる帯域通過フィルタ(BPF)で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタバンク回路。
【請求項5】
前記フィルタ回路(41a、41b、41c、42a、42b、42c)は、入力ポート、出力ポート、転送ポートを有し、前記入力ポートから入力する周波数成分が当該フィルタの周波数通過域に対応する周波数成分であるときには当該周波数成分を前記出力ポートへ出力し、前記周波数通過域外の周波数成分であるときに前記転送ポートより次段の前記入力ポートへ入力するサーキュレータ(45a~45f)と、
前記出力ポートに接続され、当該フィルタの周波数通過域に応じた前記通過帯域が設定される帯域通過フィルタ(46a~46f)と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタバンク回路。
【請求項6】
前記フィルタ回路は、高域通過フィルタ(HPF)と低域通過フィルタ(LPF)との組み合わせにより構成され、当該フィルタ回路に対応して設定された前記通過帯域の周波数成分を通過させることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタバンク回路。
【請求項7】
所定の周波数成分の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113)とを有する周波数変換部(100)と、前記中間周波数帯の信号を検波する検波器(120)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号のスペクトラム特性を求めるスペクトラムアナライザ(1)において、
前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載のフィルタバンク回路(10)を設けるとともに、
前記入力部に前記被測定信号が入力される前記切替スイッチを、前記解析対象周波数に応じて、複数の前記フィルタ群がグループ単位に順番に繰り返し選択されるように切替制御する切替制御手段(151)を有し、
順番に繰り返し選択される前記フィルタ群ごとに、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域を有する前記フィルタ回路を通過する周波数成分を、順次、抽出することを特徴とするスペクトラムアナライザ。
【請求項8】
複数の前記フィルタ群にそれぞれ対応して設けられる複数のローカル信号発生器(112-1、112-2)と、
複数の前記フィルタ群を構成する各々の前記フィルタ回路にそれぞれ対応して設けられるミキサ(111-1、111-2、111‐3、111-4、111-5、111-6、111-7、111-8、)と、
選択中の前記フィルタ群における前記一周波数帯に対応する前記通過帯域を有する前記フィルタ回路による前記スペクトラム特性の測定時に、次に選択する前記フィルタ群における前記一周波数帯に対応する前記通過帯域を有する前記フィルタ回路に対応する前記ミキサに対するローカル周波数を設定するローカル周波数設定手段(152)と、
をさらに有することを特徴とする請求項7に記載のスペクトラムアナライザ。
【請求項9】
所定の周波数成分の被測定信号を、ローカル信号発生器(112F)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111F)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113F)を有する周波数変換部(100F)と、前記中間周波数帯の信号をADC(125)でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部(153F)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号の波形を解析するシグナルアナライザ(2)において、
前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載のフィルタバンク回路(10)を設けるとともに、
前記入力部に前記被測定信号が入力される前記切替スイッチを、前記解析対象周波数に応じて、複数の前記フィルタ群がグループ単位に選択されるように切替制御する切替制御手段(151F)を有し、
選択される前記フィルタ群ごとに、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域を有する前記フィルタ回路を通過する周波数成分を抽出し、アナログ信号からデジタル信号に変換した後に当該周波数成分の信号の波形を解析することを特徴とするシグナルアナライザ。
【請求項10】
信号発生部(130)から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器(112E)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111E)に与え、ミリ波帯の信号に変換する周波数変換部(100E)を有し、被測定対象(DUT)を試験するための試験対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記周波数変換部による周波数変換後の信号を前記被測定対象の試験用信号として送出する信号発生装置(3)において、
前記周波数変換部の後段に、前記周波数変換後の信号が入力される前記請求項1に記載のフィルタバンク回路(10E)を設けるとともに、
前記切替スイッチは、前記出力部が入力部(20b1、20c1)として機能し、前記入力部が出力部(20a1)として機能する構成を有し、
前記試験対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通信帯域を有する前記フィルタ回路を有する前記フィルタ群が選択されるように前記入力部に前記周波数変換後の信号が入力される前記切替スイッチを切替制御する切替制御手段(151E)を有し、
選択される前記フィルタ群から、前記試験用信号として送出することを特徴とする信号発生装置。
【請求項11】
請求項1に記載のフィルタバンク回路(10)を用いるスペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置におけるフィルタバンク回路の制御方法であって、
解析対象周波数、または試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1、S11)と、
設定された前記解析対象周波数、または試験対象周波数に基づき、前記フィルタ群のうちの選択されるべき前記フィルタ回路を算出するステップ(S2、S12)と、
選択される前記フィルタ回路に対応した前記切替スイッチの経路設定を行い、前記選択される前記フィルタ回路が属する前記フィルタ群を選択するように前記切替スイッチを切替制御するステップ(S5、S13)と、
前記切替制御するステップにより切り替えられた前記フィルタ群のうちの、前記算出するステップで算出された前記フィルタ回路を通過する周波数成分を測定、または解析、若しくは試験用信号送出のために抽出するステップ(S5、S7、S9、S14)と、
を含むことを特徴とするフィルタバンク回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ群をグループ単位で切り替えてフィルタ帯域間のオーバーラップを維持するフィルタバンク回路、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びフィルタバンク回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定用機器においては、複数の周波数チャネルに束ねられた信号から、それぞれのチャネルを分離する分波器の機能、或いは逆に複数の周波数チャネルを合成する合波器の機能を必要とするものがある。
【0003】
この種の測定用機器として、例えば、所定周波数領域を複数の帯域に分割し、該分割した各帯域の信号成分を抽出して並列的に出力する信号分波部を有する周波数変換装置が従来から知られている(例えば、特許文献1等)。
【0004】
また、測定用機器のフロントエンドに設けられ、第1のアンテナに接続される第1のスイッチとRFIC間に、3個のサーキュレータと、3個の送信用フィルタバンク、及び3個の受信用フィルタバンクを備え、複数(3種類)の周波数の送受信に対応するフロントエンド回路が知られている(例えば、特許文献2の
図4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-246956号公報
【特許文献2】特開2014-120842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載される送信用フィルタバンク、受信用フィルタバンクなどのフィルタ機能を備えたフロントエンド回路を有する測定用機器として、スペクトラムアナライザや、試験用信号発生装置などが挙げられる。
【0007】
従来のスペクトラムアナライザは、フロンエンド回路を構成する周波数変換部(
図4の周波数変換部100に相当)の前段に、例えば、
図17に示す構造を有するフィルタバンク200を備えていた。このフィルタバンク200は、例えば、ミリ波帯のそれぞれ異なる通過帯域を有する複数の帯域通過フィルタ(Band-Pass Filter:BPF)1、BPF2、...BPFnが収容された可動部201を、図の矢印方向(上下方向)に移動できるように取付部202内に保持した構成を有している。取付部202の両側端には入力側(In)の電波ガイド(導波路)203aと出力側(Out)の電波ガイド203bが設けられ、電波ガイド203aと電波ガイド203bとは直線上に配置されている。この従来のフィルタバンク200では、取付部202内で両側の電波ガイド203a、203b間に所望の周波数に対応するBPF(この例では、BPF3)がくるように可動部201を移動させることによって、入力側(In)から入力する被測定信号のうち、BPF3の通過帯域に対応する周波数成分の信号を抽出するようになっていた。
【0008】
上述したフィルタバンク200を採用するスペクトラムアナライザでは、測定できない帯域があってはならないため、BPF1~BPFnは、隣り合うフィルタ帯域がオーバーラップしている必要がある。また、このオーバーラップする帯域は、被測定信号または試験用信号が欠落することのないよう、被測定信号または試験用信号が占有する帯域よりも広い帯域である必要がある。
【0009】
上記従来のフィルタバンク200の構成によれば、複数のBPFを機械式に切り替えるようになっているため、切り替え時間が長く、切替のための機械的な寿命が限られることとなる。一方で、今日、例えば、5G、ミリ波帯等のより高速な信号の測定への要望がより高まるなか、スイッチで機械的に切り替える方式のフィルタバンク200では、通過帯域の高速かつ高精度の切り替えに対応するのは困難であった。
【0010】
スイッチの切り替え時間や寿命の問題を生じさせないフィルタ技術の一つとして、例えば、可動部を有しないハイブリッド回路等の組み合わせによる分波器の構成でフィルタ群を構成するものが知られている。
【0011】
しかしながら、この分波器の構成によるフィルタ群によれば、フィルタ群内の隣り合うフィルタ帯域がオーバーラップしないように適宜なガードバンド(帯域の重ならない領域)を設ける必要があった。このため、可動部のない分波器の構成によるフィルタ群は、隣り合うフィルタ帯域がオーバーラップしている必要があるスペクトラムアナライザ用のフィルタバンクとしてそのままでは応用できなかった。つまり、従来の可動部のない分波器の構成によるフィルタ群は、スペクトラムアナライザのフロントエンド回路にそのまま適用しても分波器にはガードバンドが必要なため、隣り合うフィルタ帯域のオーバーラップを確保できず、測定できない帯域が発生することになった。
【0012】
そこでスペクトラムアナライザや試験用信号発生装置のフロントエンド回路については、従来から、可動部のない分波器、或いは、合波器の構成によるフィルタ群を用い、機械式フィルタバンクのように長い切り替え時間や寿命の問題を抱えることなく、全ての帯域の円滑かつ高精度の測定に対応可能な構成が切望されていた。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、電子的に切り替え可能なスイッチと複数のフィルタ群を用い、それぞれのフィルタ群内でガードバンドを確保しつつ簡単な切替制御でフィルタ群を切り替えることでフィルタ群全体ではオーバーラップを確保することで全ての帯域の測定または試験に対応可能なフィルタバンク回路、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びフィルタバンク回路の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るフィルタバンク回路は、1つの入力部(20a)とn個(nは2以上の整数)の出力部(20b、20c、20d)間の切り替えを行う1極n投型の切替スイッチ(20、20-1)と、n個の前記出力部にそれぞれ接続されるnグループのフィルタ群(G1~Gn)と、を有し、前記フィルタ群は、それぞれ、m個(mは2以上の整数)フィルタ回路(21、22、23)を有し、前記フィルタ回路は、それぞれ、前記グループ内では他の前記フィルタ回路の通過帯域とはオーバーラップせず、前記グループ間では互いに他のグループのそれぞれの前記フィルタ回路の通過帯域に対して所定帯域幅(ol1~ol7)でオーバーラップする通過帯域に設定されており、前記所定帯域幅は、被測定信号または試験用信号が欠落することのないよう、前記被測定信号または前記試験用信号が占有する帯域よりも広い帯域に設定されていることを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明の請求項1に係るフィルタバンク回路は、複数のフィルタ群をグループごとに切り替えて用いることにより、フィルタ群内の各フィルタの通過帯域間のガードバンドを保ちつつ、異なるグループのフィルタ群の各フィルタの通過帯域間のオーバーラップを維持することができる。これにより、可動部を有しないフィルタ群を用い、機械式で切り替えるフィルタバンクのように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、適切なオーバーラップ帯域をもって全ての帯域を対象とする被測定信号の測定、または被試験対象の試験への対応が可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係るフィルタバンク回路は、所定の周波数成分を入力し、前記nグループごとにm個ずつの前記フィルタ回路によって、n×m個の互いにオーバーラップした前記通過帯域に分けて前記所定の周波数成分を抽出する構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明の請求項2に係るフィルタバンク回路は、所定の周波数成分の被測定信号、または試験用信号を対象とする測定または試験できない帯域がなく、不要な電波が抑制された周波数成分を抽出するに際して、切替スイッチの極めて容易かつ短時間の切替制御により対応可能となる。
【0018】
また、本発明の請求項3に係るフィルタバンク回路において、前記フィルタ回路は、当該フィルタ回路に対応して設定された前記通過帯域の周波数成分を通過させるブランチライン・カプラ(BLC)を用いたフィルタバンクで構成されていてもよい。
【0019】
この構成により、本発明の請求項3に係るフィルタバンク回路は、BLCと帯域通過フィルタ(BPF)を用いたフィルタバンクを採用することで、切替スイッチの採用と相俟って、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0020】
また、本発明の請求項4に係るフィルタバンク回路において、前記フィルタ回路は、当該フィルタ回路に対応して設定された前記通過帯域の周波数成分を通過させる帯域通過フィルタ(BPF)で構成されていてもよい。
【0021】
この構成により、本発明の請求項4に係るフィルタバンク回路は、フィルタ群内の各フィルタ回路を、汎用の帯域通過フィルタを用いて容易に実現でき、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0022】
また、本発明の請求項5に係るフィルタバンク回路において、前記フィルタ回路(41a、41b、41c、42a、42b、42c)は、入力ポート、出力ポート、転送ポートを有し、前記入力ポートから入力する周波数成分が当該フィルタの周波数通過域に対応する周波数成分であるときには当該周波数成分を前記出力ポートへ出力し、前記周波数通過域外の周波数成分であるときに前記転送ポートより次段の前記入力ポートへ入力するサーキュレータ(45a~45f)と、前記出力ポートに接続され、当該フィルタの周波数通過域に応じた前記通過帯域が設定される帯域通過フィルタ(46a~46f)と、を有する構成としてもよい。
【0023】
この構成により、本発明の請求項5に係るフィルタバンク回路は、フィルタ群内の各フィルタ回路を、汎用のサーキュレータ、及び低域通過フィルタ等を用いて容易に実現でき、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0024】
また、本発明の請求項6に係るフィルタバンク回路において、前記フィルタ回路は、高域通過フィルタ(HPF)と低域通過フィルタ(LPF)との組み合わせにより構成され、当該フィルタ回路に対応して設定された前記通過帯域の周波数成分を通過させる構成であってもよい。
【0025】
この構成により、本発明の請求項6に係るフィルタバンク回路は、フィルタ群内の各フィルタ回路を、汎用の高域通過フィルタ、及び低域通過フィルタを用いて容易に実現でき、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の請求項7に係るスペクトラムアナライザは、所定の周波数成分の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113)とを有する周波数変換部(100)と、前記中間周波数帯の信号を検波する検波器(120)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号のスペクトラム特性を求めるスペクトラムアナライザ(1)において、前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載のフィルタバンク回路(10)を設けるとともに、前記入力部に前記被測定信号が入力される前記切替スイッチを、前記解析対象周波数に応じて、複数の前記フィルタ群がグループ単位に順番に繰り返し選択されるように切替制御する切替制御手段(151)を有し、順番に繰り返し選択される前記フィルタ群ごとに、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域を有する前記フィルタ回路を通過する周波数成分を、順次、抽出することを特徴とする。
【0027】
この構成により、本発明の請求項7に係るスペクトラムアナライザは、フィルタバンク回路に入力する被測定信号から、互いにオーバーラップする複数(n×m)個の通過帯域に対応する周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出して検波器へ出力することができ、可動部を有しないフィルタ群を用い、機械式で切り替えるフィルタバンクのように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、全ての帯域の信号を対象とするスペクトラム特性の円滑な測定が実現できる。
【0028】
また、本発明の請求項8に係るスペクトラムアナライザは、複数の前記フィルタ群にそれぞれ対応して設けられる複数のローカル信号発生器(112-1、112-2)と、複数の前記フィルタ群を構成する各々の前記フィルタ回路にそれぞれ対応して設けられるミキサ(111-1、111-2、111‐3、111-4、111-5、111-6、111-7、111-8)と、選択中の前記フィルタ群における前記一周波数帯に対応する前記通過帯域を有する前記フィルタ回路による前記スペクトラム特性の測定時に、次に選択する前記フィルタ群における前記一周波数帯に対応する前記通過帯域を有する前記フィルタ回路に対応する前記ミキサに対するローカル周波数を設定するローカル周波数設定手段(152)と、をさらに有する構成であってもよい。
【0029】
この構成により、本発明の請求項8に係るスペクトラムアナライザは、選択中のフィルタ群を構成する各フィルタ回路による測定時と、次のフィルタ群を構成する各フィルタ回路による測定時との間におけるローカル周波数を設定するための無駄な待ち時間をなくすことができ、円滑な測定が実施できる。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の請求項9に係るシグナルアナライザ2は、所定の周波数成分の被測定信号を、ローカル信号発生器(112F)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111F)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113F)を有する周波数変換部(100F)と、前記中間周波数帯の信号をADC(125)でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部(153F)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号の波形を解析するシグナルアナライザ(2)において、前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載のフィルタバンク回路(10)を設けるとともに、前記入力部に前記被測定信号が入力される前記切替スイッチを、前記解析対象周波数に応じて、複数の前記フィルタ群がグループ単位に選択されるように切替制御する切替制御手段(151F)を有し、選択される前記フィルタ群ごとに、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域を有する前記フィルタ回路を通過する周波数成分を抽出し、アナログ信号からデジタル信号に変換した後に当該周波数成分の信号の波形を解析することを特徴とする。
【0031】
この構成により、本発明の請求項9に係るシグナルアナライザは、フィルタバンク回路に入力する被測定信号から、被測定信号が欠損しないようにオーバーラップ帯域が確保された、互いにオーバーラップする複数(n×m)個の通過帯域に対応する周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出してADCへ出力することができ、可動部を有しないフィルタ群を用い、機械式で切り替えるフィルタバンクのように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、全ての帯域の信号を対象とする信号解析を円滑かつ精度よく実現できる。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の請求項10に係る信号発生装置3は、信号発生部(130)から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器(112E)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111E)に与え、ミリ波帯の信号に変換する周波数変換部(100E)を有し、被測定対象(DUT)を試験するための試験対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記周波数変換部による周波数変換後の信号を前記被測定対象の試験用信号として送出する信号発生装置(3)において、前記周波数変換部の後段に、前記周波数変換後の信号が入力される前記請求項1に記載のフィルタバンク回路(10E)を設けるとともに、前記切替スイッチは、前記n個の出力部が入力部(20b1、20c1)として機能し、前記1個の入力部が出力部(20a1)として機能する構成を有し、前記試験対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通信帯域を有する前記フィルタ回路を有する前記フィルタ群が選択されるように前記入力部に前記周波数変換後の信号が入力される前記切替スイッチを切替制御する切替制御手段(151E)を有し、選択される前記フィルタ群から、前記試験用信号として送出することを特徴とする。
【0033】
この構成により、本発明の請求項10に係る信号発生装置は、フィルタバンク回路に入力する周波数変換後の信号から、試験用信号が欠損しないようにオーバーラップ帯域が確保された、互いにオーバーラップする複数(n×m)個の通過帯域に対応する周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出して試験用信号として送出することができ、可動部を有しないフィルタ群を用い、機械式で切り替えるフィルタバンクのように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、全ての帯域の信号を対象とする被試験対象の試験を円滑に実行できる。
【0034】
上記課題を解決するために、本発明の請求項11に係るフィルタバンク回路の制御方法は、請求項1に記載のフィルタバンク回路(10)を用いるスペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置におけるフィルタバンク回路の制御方法であって、解析対象周波数、または試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1、S11)と、設定された前記解析対象周波数、または試験対象周波数に基づき、前記フィルタ群のうちの選択されるべき前記フィルタ回路を算出するステップ(S2、S12)と、選択される前記フィルタ回路に対応した前記切替スイッチの経路設定を行い、前記選択される前記フィルタ回路が属する前記フィルタ群を選択するように前記切替スイッチを切替制御するステップ(S5、S13)と、前記切替制御するステップにより切り替えられた前記フィルタ群のうちの、前記算出するステップで算出された前記フィルタ回路を通過する周波数成分を測定、または解析、若しくは試験用信号送出のために抽出するステップ(S5、S7、S9、S14)と、を含むことを特徴とする。
【0035】
この構成により、本発明の請求項11に係るフィルタバンク回路の制御方法は、スペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置にフィルタバンク回路を搭載した状態で、解析対象周波数範囲、または試験対象周波数を互いにオーバーラップする複数(n×m個)の通過帯域に分けて、被測定信号または試験用信号から各通過帯域の周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出することができ、切替スイッチの簡単な切替制御によって信号の測定、または信号解析、若しくは試験できない帯域をなくすことができるうえに、切替スイッチの切替時間も短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、電子的に切り替え可能なスイッチと複数のフィルタ群を用い、それぞれのフィルタ群内でガードバンドを確保しつつ簡単な切替制御でフィルタ群を切り替えることでフィルタ群全体ではオーバーラップを確保することで全ての帯域の測定または試験に対応可能なフィルタバンク回路、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びフィルタバンク回路の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路の構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路のフィルタ群を構成する各フィルタの通過帯域を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路のフィルタ群を構成する各フィルタの周波数特性を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路を用いるスペクトラムアナライザの一般的構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路を用いるスペクトラムアナライザにおけるローカル信号供給経路を含むフィルタバンク回路の要部構成を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路を用いるスペクトラムアナライザの信号測定時の動作タイミングを示す図であり、(a)は切替スイッチの切替動作を示し、(b)は1つのローカル信号発生器に対するローカル信号設定動作を示している。
【
図7】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路を用いるスペクトラムアナライザにおける信号測定制御動作を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の変形例1に係るフィルタバンク回路のローカル信号供給経路要部を含む構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の変形例1に係るフィルタバンク回路を用いるスペクトラムアナライザの信号測定時の動作タイミングを示す図であり、(a)は切替スイッチの切替動作を示し、(b)は2つのローカル信号発生器それぞれに対するローカル信号の設定動作を示している。
【
図10】本発明の変形例1に係るフィルタバンク回路を用いるスペクトラムアナライザにおける信号測定制御動作を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の変形例2に係るフィルタバンク回路の構成を示す図である。
【
図12】本発明の変形例3に係るフィルタバンク回路の構成を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路を用いるシグナルアナライザの構成を示す図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路を用いる信号発生装置の構成を示す図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路を用いる信号発生装置のフィルタバンク回路の構成図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路を用いる信号発生装置における信号送信制御動作を示すフローチャートである。
【
図17】従来のスペクトラムアナライザのフロントエンド回路に設けられるフィルタバンクの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係るフィルタバンク回路、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びフィルタバンク回路の制御方法について説明する。
【0039】
(概要)
本発明に係るフィルタバンク回路10は、後述の各実施形態及び変形例に係るフィルタバンク回路10A、10B、10C、10D、10Eに相当し、所定の周波数成分の信号を入力し、その入力信号に含まれる不要な電波、すなわち、スプリアス(Spurious)波を抑制しつつ所望の周波数帯(band:バンド)の周波数成分の信号のみを抽出して出力するものである。フィルタバンク回路10は、高周波信号に含まれる周波数成分の分布(スペクトラム)を測定するスペクトラムアナライザ(
図4参照)や、高周波信号に含まれる周波数成分の波形等の解析を行うシグナルアナライザ(
図13参照)、被試験対象(Device Under Test:DUT)の受信感度試験の試験用信号を発生する信号発生装置(
図14参照)のフロントエンド回路101内に設けられる。本発明に係るフィルタバンク回路10が対応可能な上述した所定の周波数成分は、例えば、100GHz以上1THz未満のサブテラヘルツ領域である。
【0040】
本発明に係るフィルタバンク回路10は、それぞれが複数(例えば、m個)のフィルタ(下記実施形態でのフィルタ21a、21b、21c、22a、22b、22c、23a、23b、23cに相当)を有する複数(例えば、n個)のグループのフィルタ群G1~Gnを有し、入力信号(被測定信号)を入力する1つの入力部20aと、フィルタ群G1~Gnがそれぞれ接続されるn個の出力部20b、20c、20d、...との間の接続を切り替える単極n投型の切替スイッチ20(
図1参照)をさらに有している。入力部20aがn個の出力部20b、20c、20d、...に順次接続されるように切替スイッチ20を切替制御することにより、被測定信号を、各出力部20b、20c、20d、...を通してそれぞれのフィルタ群G1~Gnへと選択的に供給できるようになっている。
【0041】
フィルタ群G1~Gnは、それぞれのグループ内では、m個のフィルタのフィルタ帯域(通過帯域)がガードバンドを確保し得る周波数帯域(オーバーラップしない周波数帯域)に設定されている。一方、グループ間については、各グループの同じ順番のフィルタ同士が互いにオーバーラップする通過帯域に設定されている。
【0042】
上記構成を有する本発明に係るフィルタバンク回路10によれば、例えば、入力信号に対してフィルタ群G1からフィルタ群G2、G3、G4、...を順番に切り替えていくものとしたとき、フィルタ群G1、G2、G3、G4、...の間で、当該各フィルタ群G1、G2、G3、G4、...内における1~n番までの並び順のフィルタのうちの交互の順番のフィルタ同士間の通過帯域のオーバーラップが維持できるうえに、フィルタ群G1、G2、G3、G4、...個々の隣り合うフィルタ間のガードバンドを確保することができる。このため、本発明に係るフィルタバンク回路10をスペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置のフロントエンド回路101に設けた構成によれば、機械式で切り替えるフィルタバンク(
図17参照)を用いていた従来装置に比べて、フィルタ群G2、G3、G4、...の切替制御が容易で、切り替え時間も短縮できるうえに、スプリアス波の抑制が効いた高周波数成分の迅速かつ高精度の測定または試験が実現できる。
【0043】
以下においては、本発明に係るフィルタバンク回路10(10A)の一実施形態(
図1~
図3参照)、フィルタバンク回路10(10A)を用いるスペクトラムアナライザ1の実施形態(
図4~
図7参照)、変形例1に係るフィルタバンク回路10Bを用いるスペクトラムアナライザ1の実施形態(
図8~
図10参照)、変形例2に係るフィルタバンク回路10Cの実施形態(
図11参照)、変形例3に係るフィルタバンク回路10Dの実施形態(
図12参照)、フィルタバンク回路10Aを用いるシグナルアナライザ2の実施形態(
図13参照)、フィルタバンク回路10A、10B、10C、10Dをフィルタバンク回路10Eとして用いる信号発生装置3の実施形態(
図14-
図16参照)について順に説明していくものとする。
【0044】
下記実施形態では、便宜上、フィルタ群については3つ(フィルタ群G1、G2、G3)まで、フィルタ群G1、G2、G3内のフィルタについてはそれぞれ3つまで、周波数帯についてはf1~f12までの範囲内で開示しているが、これらフィルタ群、フィルタ群内のフィルタ、周波数帯の数は、前述したように、任意のn個、m個、(n×(m+1))とし得るものである。
【0045】
(一実施形態に係るフィルタバンク回路10A)
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルタバンク回路10Aの構成を示している。本実施形態に係るフィルタバンク回路10Aは、
図1に示すように、切替スイッチ20と、第1のフィルタ群G1と、第2のフィルタ群G2とを有している。
【0046】
切替スイッチ20は、1つの入力部20aと2つの出力部20b、20cを有し、入力部20aと2つの出力部20b、20cのいずれかとの接続を電子的に切り替える単極双投型スイッチ(Single-Pole/Double-Throw Switch:SPDT SW)で構成される。切替スイッチ20は、入力部20aに対しては上述した被測定信号が入力するようになっている。出力部20b、20cは、それぞれ、第1のフィルタ群G1、第2のフィルタ群G2に接続されている。これにより、切替スイッチ20は、入力部20aと出力部20b間が接続されるように切替制御することにより被測定信号を第1のフィルタ群G1に出力し、入力部20aと出力部20c間が接続されるように切替制御することにより被測定信号を第2のフィルタ群G2に出力するようになっている。
【0047】
切替スイッチ20において、第1のフィルタ群G1は、互いにオーバーラップしない、つまり、互いにガードバンドを確保し得る周波数帯(以下、バンド)f1、f3、f5、f7をそれぞれ通過帯域とする複数のフィルタ21a、21b、21cを有している。以下の説明において、フィルタ21a、21b、21cは、まとめてフィルタ21と呼称する場合もある。
【0048】
他方、第2のフィルタ群G2は、互いにオーバーラップしない、互いにガードバンドを確保し得るバンドf2、f4、f6、f8をそれぞれ通過帯域とする複数のフィルタ22a、22b、22cを有している。以下の説明において、フィルタ22a、22b、22cは、まとめてフィルタ22と呼称する場合もある。フィルタ21a、21b、21c、及びフィルタ22a、22b、22cは、後述するフィルタ23a、23b、23c(
図11参照)、フィルタ41a、41b、41c、42a、42b、42c(
図12参照)とともに、本発明のフィルタ回路を構成する。
【0049】
第1のフィルタ群G1において、フィルタ21a、21b、21cは、フィルタ特性が互いに異なるものの回路構造が同じであり、それぞれ、入力側のハイブリッド25a1、25b1、25c1と、出力側のハイブリッド26a1、26b1、26c1と、ハイブリッド25a1、25b1、25c1とハイブリッド26a1、26b1、26c1間に並列に接続されるそれぞれ2つずつのBPF27a1、27b1、27c1とを有している。すなわち、フィルタ21a、21b、21c(後述するフィルタ22a、22b、22cも同様)は、ブランチライン・カプラ(BLC)(=ハイブリッド25a1、25b1、25c1、26a1、26b1、26c1)を用いたフィルタバンクで構成される。ここで、フィルタ21aのBPF27a1はバンドf1の通過帯域が設定され、フィルタ21bのBPF27b1はバンドf3の通過帯域が設定され、フィルタ21cのBPF27c1はバンドf5の通過帯域が設定されている。
【0050】
フィルタ21aは、入力側のハイブリッド25a1から入力する被測定信号をBPF27a1に入力し、該BPF27a1が、バンドf1の周波数成分を通過させて出力側のハイブリッド26a1から周波数変換部(
図4の周波数変換部100参照)へと出力する一方で、それ以外の周波数成分を入力側のハイブリッド25a1を経由して次段のフィルタ21bの入力側のハイブリッド25b1へ入力させるようになっている。
【0051】
フィルタ21bは、入力側のハイブリッド25b1から入力する周波数成分をBPF27b1に入力し、該BPF27b1が、バンドf3の周波数成分を通過させて出力側のハイブリッド26b1から周波数変換部へと出力する一方で、それ以外の周波数成分を入力側のハイブリッド25b1を経由して次段のフィルタ21cの入力側のハイブリッド25c1へと入力させるようになっている。
【0052】
フィルタ21cは、入力側のハイブリッド25c1から入力する周波数成分をBPF27c1に入力し、該BPF27c1が、バンドf5の周波数成分を通過させて出力側のハイブリッド26c1から周波数変換部へと出力する一方で、バンドf7の周波数成分を入力側のハイブリッド25c1を経由したうえで周波数変換部へと出力させるようになっている。
【0053】
第2のフィルタ群G2についても、フィルタ22a、22b、22cは、それぞれ、入力側のハイブリッド25a2、25b2、25c2と、出力側のハイブリッド26a2、26b2、26c2と、ハイブリッド25a2、25b2、25c2とハイブリッド26a2、26b2、26c2間に並列に接続されるそれぞれ2つずつのBPF27a2、27b2、27c2とを有している。フィルタ22a、22b、22cもBLCを用いたフィルタバンクで構成されている。ここで、フィルタ22aのBPF27a2はバンドf2の通過帯域が設定され、フィルタ22bのBPF27b2はバンドf4の通過帯域が設定され、フィルタ22cのBPF27c2バンドf6の通過帯域が与えられている。
【0054】
フィルタ22aは、入力側のハイブリッド25a2から入力する被測定信号をBPF27a2に入力し、該BPF27a2が、バンドf2の周波数成分を通過させて出力側のハイブリッド26a2から周波数変換部へと出力する一方で、それ以外の周波数成分を入力側のハイブリッド25a2を経由して次段のフィルタ22bの入力側のハイブリッド25b2へ入力させるようになっている。
【0055】
フィルタ22bは、入力側のハイブリッド25b2から入力する周波数成分をBPF27b2に入力し、該BPF27b2が、バンドf4の周波数成分を通過させて出力側のハイブリッド26b2から周波数変換部へと出力する一方で、それ以外の周波数成分を入力側のハイブリッド25c2を経由して次段のフィルタ22cの入力側のハイブリッド25c2へと入力させるようになっている。
【0056】
フィルタ22cは、入力側のハイブリッド25c2から入力する周波数成分をBPF27c2に入力し、該BPF27c2が、バンドf6の周波数成分を通過させて出力側のハイブリッド26c2から周波数変換部へと出力する一方で、バンドf8の周波数成分を入力側のハイブリッド25c2を経由したうえで周波数変換部へと出力させるようになっている。
【0057】
このように、フィルタバンク回路10Aは、第1のフィルタ群G1を構成するフィルタ21a、21b、21cと、第2のフィルタ群G2を構成するフィルタ22a、22b、22cが、切替スイッチ20の切替制御によって、切替スイッチ20の入力部20aに入力する被測定信号からバンドf1、f3、f5、f7の各周波数成分と、バンドf2、f4、f6、f8の各周波数成分を、それぞれのグループごとに抽出して周波数変換部(
図4の周波数変換部100参照)向けに出力できるようになっている。
【0058】
次に、第1のフィルタ群G1を構成するフィルタ21a、21b、21c、及び第2のフィルタ群G2を構成するフィルタ22a、22b、22cのフィルタ特性について説明する。
図2は、本実施形態に係るフィルタバンク回路10Aにおける2グループ(フィルタ群G1、G2)に分けられたフィルタ21a、21b、21c、及びフィルタ22a、22b、22cの通過帯域を示す図であり、(a)は、第1のフィルタ群G1を構成する各フィルタ21a、21b、21cの通過帯域、(b)は、第2のフィルタ群G2を構成する各フィルタ22a、22b、22cの通過帯域、(c)は第1のフィルタ群G1と第2のフィルタ群G2の双方によってカバーされる通過帯域をそれぞれ示している。
【0059】
図2(a)に示すように、第1のフィルタ群G1を構成するフィルタ21a、21b、21c、21c+1は、互いにオーバーラップしない隣り合う周波数帯(バンド)f1、f3、f5、f7を通過させるフィルタ特性(通過帯域)を有している。第2のフィルタ群G2を構成するフィルタ22a、22b、22c、22c+1は、
図2(b)に示すように、互いにオーバーラップしない隣り合う周波数帯f2、f4、f6、f8を通過させる通過帯域を有している。ここで、フィルタ21c+1は、便宜的に、それぞれ、
図1におけるフィルタ21cのバンドf7の成分を通過させるフィルタ部分を指し、同じく、フィルタ22c+1は、フィルタ22cのバンドf8の成分を通過させるフィルタ部分を指すものとする。
【0060】
図2(a)、(b)において、上記各フィルタ21a、21b、21c、21c+1、及び上記各フィルタ22a、22b、22c、22c+1が通過させ得る周波数帯域(バンド)f1、f3、f5、f7、及びf2、f4、f6、f8は、例えば、それぞれのバンドの中心周波数を挟んで周波数が高い側と低い側の両方にそれぞれ均等な帯域幅を有するものである。
【0061】
また、第1のフィルタ群G1を構成するフィルタ21a、21b、21c、21c+1の通過帯域、及び第2のフィルタ群G2を構成するフィルタ22a、22b、22c、22c+1の通過帯域を並べて示すと
図2(c)のようになる。
【0062】
図2(c)に示すように、本実施形態に係るフィルタバンク回路10Aでは、第1のフィルタ群G1の各フィルタ21a、21b、21cと、第2のフィルタ群G2の各フィルタ22a、22b、22cとの間において、フィルタ21aとフィルタ22a、フィルタ22aとフィルタ21b、フィルタ21bとフィルタ22b、フィルタ22bとフィルタ21c、フィルタ21cとフィルタ22c、フィルタ22cとフィルタ21c+1、フィルタ21c+1とフィルタ22c+1とは、それぞれが互いにオーバーラップし合った通過帯域(オーバーラップ域)ol1、ol2、ol3、ol4、ol5、ol6、ol7、...を持つように通過帯域が設定されている。
【0063】
ここで、フィルタ群G1、G2を1段目グループ、2段目グループとし、フィルタ群G1、G2内でのフィルタ21、22の並び順を、
図3の左側から順番に1番目~4番目とすると、1段目グループの1番目のフィルタ21aと2段目グループの1番目のフィルタ22a、2段目グループの1番目のフィルタ22aと1段目グループの2番目のフィルタ21b、1段目グループの2番目のフィルタ21bと2段目グループの2番目のフィルタ22b、2段目グループの2番目のフィルタ22bと1段目グループの3番目のフィルタ21c、1段目グループの3番目のフィルタ21cと2段目グループの3番目のフィルタ22c、2段目グループの3番目のフィルタ22cと1段目グループの4番目のフィルタ21c+1、1段目グループの4番目のフィルタ21c+1と2段目グループの4番目のフィルタ22c+1とは、それぞれの通過帯域ol1、ol2、ol3、ol4、ol5、ol6、ol7が互いにオーバーラップしている構成を有している。
【0064】
下記の表1には、
図2(a)、(b)について説明したフィルタ21a、21b、21c、21c+1、及びフィルタ22a、22b、22c、22c+1の通過帯域を含む仕様の一例を示している。また、
図2(c)について説明した各フィルタ21a、22a、21b、22b、21c、22c、21c+1、22c+1の間のオーバーラップする帯域に関する仕様の例を下記の表2に示している。
【表1】
【表2】
【0065】
図2に示す第1のフィルタ群G1、第2のフィルタ群G2を構成する各フィルタ21a、21b、21c、21c+1、22a、22b、22c、22c+1の周波数特性の具体的な例を
図3に示している。
図3においては、255GHzから325GHzまでを8つの帯域に分割し、これら8の帯域を、順に、第1のフィルタ群G1のフィルタ21a、第2のフィルタ群G2のフィルタ22a、第1のフィルタ群G1のフィルタ21b、第2のフィルタ群G2のフィルタ22b、第1のフィルタ群G1のフィルタ21c、第2のフィルタ群G2のフィルタ22c、第1のフィルタ群G1のフィルタ21c+1、第2のフィルタ群G2のフィルタ22c+1に割り当てたときの通過特性を例示している。
【0066】
図3に示すように、フィルタ21aは、例えば、253-264GHzの通過帯域を有し、中心周波数が258GHzであり、フィルタ22aとは、例えば、260―264GHzの周波数帯でオーバーラップしている。フィルタ22aは、例えば、260-272GHzの通過帯域を有し、中心周波数が267GHzであり、フィルタ21aとは上述した条件でオーバーラップし、フィルタ21bとは、例えば、268―272GHzの周波数帯でオーバーラップしている。フィルタ21bは、例えば、268-281GHzの通過帯域を有し、中心周波数が274GHzであり、フィルタ22aとは上述した条件でオーバーラップし、フィルタ22bとは、例えば、276―281GHzの周波数帯でオーバーラップしている。フィルタ22bは、例えば、276-288GHzの通過帯域を有し、中心周波数が282GHzであり、フィルタ21bとは上述した条件でオーバーラップし、フィルタ21cとは、例えば、285―288GHzの周波数帯でオーバーラップしている。
【0067】
また、フィルタ21cは、例えば、285-295GHzの通過帯域を有し、中心周波数が290GHzであり、フィルタ22bとは上述した条件でオーバーラップし、フィルタ22cとは、例えば、292―295GHzの周波数帯でオーバーラップしている。フィルタ22cは、292-305GHzの通過帯域を有し、中心周波数が298GHzであり、フィルタ21cとは上述した条件でオーバーラップし、フィルタ21c+1とは、例えば、300―305GHzの周波数帯でオーバーラップしている。フィルタ21c+1は、例えば、300-312GHzの通過帯域を有し、中心周波数が306GHzであり、フィルタ22cとは上述した条件でオーバーラップし、フィルタ22c+1とは、例えば、308―313GHzの周波数帯でオーバーラップしている。フィルタ22c+1は、308を超える通過帯域を有し、中心周波数が320GHzであり、フィルタ21c+1とは上述した条件でオーバーラップしている。
【0068】
図3に示す通過帯域特性を有する第1のフィルタ群G1を構成するフィルタ21a、21b、21c、21c+1と、第2のフィルタ群G2を構成するフィルタ22a、22b、22c、22c+1を備えるフィルタバンク回路10Aの構成によれば、切替スイッチ20を切替制御することによって、
図2(c)に示すように、第1のフィルタ群G1を構成するフィルタ21aの通過帯域から第2のフィルタ群G2を構成するフィルタ22c+1の通過帯域までの間の周波数帯域を隣り合うバンドf1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8を互いにオーバーラップさせながらこれら全周波数帯を対象とする測定をカバーすることが可能であり、例えば、ミリ波帯を対象にスペクトラム特性を測定できない周波数帯域をなくすことができる。
【0069】
(フィルタバンク回路10Aを用いるスペクトラムアナライザ1)
図4は、上述したフィルタバンク回路10Aを用いるスペクトラムアナライザ1の一般的構成を示す図である。スペクトラムアナライザ1としては、ミリ波帯の信号解析機能を有するものを想定している。
【0070】
このスペクトラムアナライザ1は、周波数変換部100、検波器120、制御部150、操作部160、表示部161を有するとともに、周波数変換部100の前段に上述したフィルタバンク回路10Aを備えている。
【0071】
周波数変換部100は、ミキサ111、ローカル信号発生器112、フィルタ113を具備して構成される。
【0072】
ミキサ111は、フィルタバンク回路10Aから出力されるスプリアス波が抑制された各周波数成分の信号(RF周波数)と、ローカル信号発生器112から入力されるローカル信号とを混合することにより、被測定信号をRF周波数から中間周波数の信号(IF周波数)に変換して出力する周波数変換手段としての機能部である。
【0073】
ローカル信号発生器112は、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ミキサ111に送出するためのローカル信号を発生する。
【0074】
フィルタ113は、ミキサ111によって周波数変換されたIF信号を入力し、入力されたIF信号の予め設定されたある帯域の周波数成分の信号のみを通過させ、検波器120へと入力させるフィルタ機能部である。
【0075】
検波器120は、フィルタ113を通過して入力するぞれぞれの帯域の信号(IF)の強度を検波する処理回路である。
【0076】
制御部150は、フィルタバンク回路10Aを含むスペクトラムアナライザ1全体を統括的に制御する制御機能に加え、フィルタ切替制御部151、周波数掃引制御部152、スペクトラムデータ取得部153を有している。
【0077】
フィルタ切替制御部151は、フィルタバンク回路10Aに設けられている、例えば、1極双投型の切替スイッチ20(
図1参照)を、1つの極(入力部)と2つの投(出力部)間の接続を電子的に切替制御するものである。フィルタ切替制御部151は、本発明の切替制御手段を構成する。
【0078】
周波数掃引制御部152は、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ローカル信号発生器112がミキサ111に出力するローカル信号の周波数を指定された周波数範囲内で変化させる周波数掃引制御を実行する機能部である。周波数掃引制御部152は、本発明のローカル周波数設定手段を構成する。
【0079】
スペクトラムデータ取得部153は、検波器120で検波された解析対象周波数範囲内の所望の周波数帯の信号成分の強度を含むスペクトラムデータを取得し、表示部161に対する表示制御等を行う部分である。
【0080】
操作部160は、各種キー、スイッチ、ボタン等の入力手段を有し、被測定信号の測定等に関する各種設定を行う際にユーザにより操作される。表示部161は、例えば液晶表示器などで構成され、被測定信号の測定に関わる設定画面や測定結果などを表示する機能部である。
【0081】
図4に示すスペクトラムアナライザ1において、ミリ波帯の被測定信号(入力信号)は、フィルタバンク回路10Aを介して周波数変換部100のミキサ111に与えられ、ローカル信号発生器112から出力されるローカル信号とミキシングされ、そのミキシング出力からフィルタ113により所定の中間(IF)周波数帯の信号が抽出される。ローカル信号の周波数は、制御部150の周波数掃引制御部152により所望の解析対象周波数範囲に対応して掃引可変され、その所望の解析対象周波数範囲の信号成分が時間経過にともなって中間周波数帯の信号として抽出されてその強度が検波器120で検出される。なお、ここでは説明を容易にするために、周波数変換部100の周波数変換処理(ヘテロダイン変換)を1回だけ行なう例を示しているが、ミリ波帯のような高い周波数の信号を正確に解析する場合には、周波数変換処理を複数回行なってデジタル処理が可能な中間周波数帯に変換することになる。
【0082】
制御部150において、スペクトラムデータ取得部153は、例えば、操作部160によって設定される解析対象周波数に応じて、検波器120により解析対象周波数毎に検出される信号強度をスペクトラムデータとして記憶し、これを表示部161に表示させる。
【0083】
このとき、フィルタ切替制御部151は、解析対象周波数に応じて、フィルタバンク回路10A内の切替スイッチ20を切替制御し、フィルタ群G1、G2を、解析対象周波数が含まれる通過帯域を有するフィルタ21、またはフィルタ22が属するグループ側に切り替える切替制御を行う。
【0084】
また、周波数掃引制御部152は、フィルタ切替制御部151によるフィルタ群G1、G1の切替制御に合わせて、そのときに解析対象周波数に応じて選択されるフィルタ21、またはフィルタ22の通過帯域に対応する周波数の掃引制御を実施する。
【0085】
図4に示すスペクトラムアナライザ1の構成において、フロントエンド回路101の入力信号としての被測定信号(RF Input)は、例えば、255~315GHzの周波数範囲の信号(f
RF)であり、出力信号としての被測定信号(IF Output)は、例えば、23~31GHzの周波数範囲の信号(f
IF)である。すなわち、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、例えば、携帯電話(5G、LTE、XG-PHS、W-CDMA、CDMA2000、GSMなど)や各種無線通信(WLAN、Bluetooth、GPS、ISDBTなど)から受信した受信信号を入力信号(RF Input)として取り込み、フロントエンド回路101内のフィルタバンク回路10によりスプリアス波を抑制したうえで所望の各周波数成分のスペクトラム特性を測定することができるようになっている。
【0086】
図4において、制御部150は、スペクトラムアナライザ1本体の制御部であってもよく、或いは、PC(パーソナル・コンピュータ)等の機器を別付けにした構成としてもよい。
【0087】
このように構成されたスペクトラムアナライザ1では、フィルタ群G1とフィルタ群G2を、切替スイッチ20を制御して電子的に切り替えるため、機械式に切り替える構成に対して、切り替え時間が短く、切替デバイスとしての寿命も長い。その際、フィルタ群G1、G2を構成する複数のフィルタ21、22が、グループ内では通過帯域のオーバーラップはなく、グループ間でオーバーラップの関係にある通過帯域を有しているため、帯域間のガードバンドを保ちつつ、複数のグループのフィルタ群(Gと略称する)を切り替えて用いることにより、異なるグループのフィルタ群Gの各フィルタの通過帯域間のオーバーラップを維持することができる。これにより、可動部を有しない複数のフィルタ群Gを用い、機械式で切り替えるフィルタバンクのように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、全ての帯域の円滑なスペクトラム測定に対応可能となる。
【0088】
スペクトラムアナライザ1の構成についてさらに詳しく説明する。
図5は、
図4に示したフィルタバンク回路10Aを用いるスペクトラムアナライザ1の構成のうち、特に、ローカル信号供給経路を加味したフィルタバンク回路10Aの要部構成を示している。
【0089】
フロントエンド回路101内にフィルタバンク回路10Aを備えるスペクトラムアナライザ1(
図4参照)では、前述した通り、フィルタバンク回路10Aにて第1のフィルタ群G1の各フィルタ21a、21b、21c、または第2のフィルタ群G2の各フィルタ22a、22b、22cを通過した周波数成分は、その後、ミキサ111に入力されてIF周波数へと周波数変換される。
【0090】
この周波数変換に対応するため、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1では、例えば、
図5に示すように、フィルタバンク回路10Aに付随して設けられる、1個のローカル信号発生器112と、フィルタバンク回路10Aを通過するバンドf1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8にそれぞれ対応するミキサ111-1、111-2、111‐3、111-4、111-5、111-6、111-7、111-8を備えている。スペクトラムアナライザ1では、信号測定時、フィルタバンク回路10Aにおいて、第1のフィルタ群G1、または第2のフィルタ群G2を通過した周波数成分と、その通過した周波数成分に応じてローカル信号発生器112で生成したローカル信号を、それぞれ、ミキサ111-1、111-2、111‐3、111-4、111-5、111-6、111-7、111-8で混合し、中間周波数に変換した被測定信号として後段の検波器120へと送出する。
【0091】
その際、フィルタ切替制御部151は、フィルタバンク回路10Aの切替スイッチ20の切替制御を行い、周波数掃引制御部152は、第1のフィルタ群G1、または第2のフィルタ群G2を通過した周波数成分に対応するローカル周波数をローカル信号発生器112から発生させるため周波数掃引制御を実施する。
【0092】
図6は、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1の信号測定時におけるフィルタバンク回路10Aの動作を示すタイミングチャートであり、(a)は切替スイッチ20の切替動作(「SPDT SW制御」)を示し、(b)はローカル信号発生器112に対するローカル信号の設定動作(「LO周波数設定」)を示している。
図6(a)に示すように、切替スイッチ20の切替制御について、フィルタ切替制御部150は、点線の縦線で示すタイミングで第1のフィルタ群G1(f1、f3、f5、f7ルート)から第2のフィルタ群G2(f2、f4、f6、f8ルート)への切り替えと、第2のフィルタ群G2から第1のフィルタ群G1への切り替えとを交互に実施する。制御部150は、第1のフィルタ群G1と第2のフィルタ群G2とが交互に切り替わるのに合わせて、周波数掃引制御部152が信号発生器112に対してローカル信号を設定(「LO設定」)し、次いでその設定に基づく周波数の測定(「f1測定」等)を実施するというパターンを、例えば、バンドf1、f2、f3、...の順番に繰り返し実施するように制御する。
【0093】
図6(a)に示す動作タイミングに基づく測定動作制御をローカル信号発生器112に対するローカル信号の設定動作の観点から見ると、
図6(b)に示すようになる。この場合、ローカル信号発生器112が一つであるため、ローカル周波数を設定(「LO設定」)し、引き続きバンドf1を測定(「f1測定」)し、次いでローカル周波数を設定(「LO設定」)し、引き続きバンドf2を測定(「f2測定」)する動作を所望の周波数について順番(例えば、f1、f2、f3、f4、...の順)に実施する動作タイミングとなる。
【0094】
図6に示す「SPDT SW制御」、及び「LO周波数設定」の制御により、LO設定後に対応する周波数に関する測定を行うという動作の繰り返しにはなるが、f1、f3、f5、f7ルート、及びf2、f4、f6、f8ルートの各ルート内では通過帯域のオーバーラップは起こらず、f1、f3、f5、f7ルートとf2、f4、f6、f8ルート間で通過帯域のオーバーラップを維持した測定が可能となる。
【0095】
以上に述べた、切替スイッチ20の切替制御(
図6(a)参照)、及びLO周波数設定制御(
図6(b)参照)の流れを踏まえ、次に、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1における信号測定制御動作を
図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0096】
この例において、スペクトラムアナライザ1は、例えば、ミリ波帯(255から315GHz帯)の被測定信号を入力し、その被測定信号から、フィルタバンク回路10Aにて、予め設定した所望の周波数帯、例えば、バンドf1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8の信号をフィルタ21a、21b、21c、22a、22b、22cにより抽出し、その抽出した周波数成分をIF周波数に変換した後に検波器120に入力し、周波数スペクトラムを測定し、その測定結果を表示部161に表示する測定動作を行うものとする。
【0097】
上記測定動作を行うために、ユーザは、例えば、操作部160において、スペクトラムアナライザ1の掃引周波数範囲(解析対象周波数範囲)を設定する操作を行う(ステップS1)。ここで設定するパラメータとしては、例えば、中心周波数と掃引周波数スパン、スタート周波数とストップ周波数、スタート周波数と掃引周波数スパンなどが挙げられる。
【0098】
次いで、制御部150は、ステップS1で設定された掃引周波数範囲から、選択されるべきフィルタ(この例においては、フィルタ21a、21b、21c(以下、フィルタ21という)、22a、22b、22c:以下、フィルタ22という)とLO設定(ローカル周波数の設定条件)を算出する(ステップS2)。ここで、選択されるフィルタが複数の場合、それぞれのフィルタ21、22に応じたLO設定を算出する。
【0099】
引き続き、制御部150は、選択されるフィルタ21、またはフィルタ22が単数であるか、或いは複数であるか判定する(ステップS3)。
【0100】
ここで、選択されるフィルタ21、またはフィルタ22が単数であると判定された場合(ステップS3で「単数」)、制御部150は、そのフィルタ21、またはフィルタ22の経路に対応した切替スイッチ20の経路を設定するとともに、ローカル周波数(LO周波数)の設定を行う(ステップS41)。
【0101】
次いで、制御部150では、フィルタ切替制御部150がステップS41での経路設定に基づいて切替スイッチ20を第1のフィルタ群G1と第2のフィルタ群G2との間での切替制御を実施し、それに合わせて周波数掃引制御部152がステップS41でのLO設定に基づいてローカル信号発生器112に対する周波数掃引の制御を行いながら、当該フィルタ21、またはフィルタ22での測定を実施する(ステップS42)。選択されるフィルタ21、またはフィルタ22が単数である場合、以上の測定動作を終了し、ステップS10の連続測定か否かの判断を行い、連続測定でなければ終了する。
【0102】
これに対し、選択されるフィルタ21、22が複数であると判定された場合(ステップS3で「複数」)、制御部150ではステップS4以降の処理を行う。まず、制御部150は、最初に選択されるフィルタ(例えば、フィルタ21)に対応したLO周波数の設定をローカル信号発生器112に対して行う(ステップS4)。
【0103】
次いで、制御部150は、最初に選択されるフィルタ21に対応した切替スイッチ20の経路設定を行い、最初に選択されるフィルタ21での測定を行う(ステップS5)。
【0104】
その後、制御部150は、ステップS5で測定が終了するのを待って、2番目に選択されるフィルタ22に対応したLO周波数の設定をローカル信号発生器112に対して行う(ステップS6)。
【0105】
引き続き、制御部150は、2番目に選択されるフィルタ22に対応した切替スイッチ20の経路設定を行い、2番目に選択されるフィルタ22での測定を行う(ステップS7)。
【0106】
ステップS7での測定が終わると、制御部150は、次に選択されるフィルタ21があるか否かをチェックする(ステップS8)。
【0107】
ここで、次に選択されるフィルタ21、22がないと判定された場合(ステップS8でNO)、制御部150は、ステップS10へと処理を進める。
【0108】
これに対し、次に選択されるフィルタ21、22、...があると判定された場合(ステップS8でYES)、制御部150は、次に選択されるフィルタ21、22、...がなくなるまで上記ステップS6、S7に相当する処理(2番目をn番目と読み替えて実施する処理)を次に選択されるフィルタ21、22、...に対応して繰り返し実施する(ステップS9)。そして、この繰り返し実施する処理の間に次に選択されるフィルタ21、22、...がないと判定された場合(ステップS8でNO)、制御部150は、ステップS10へと処理を進める。
【0109】
ステップS10において、制御部150は、連続測定が設定されているかどうかをチェックする。ここで、連続測定が設定されている場合(ステップS10でYES)には、ステップS3に戻って、当該ステップS3以降の処理を続行する。一方、連続測定が設定されていない場合(ステップS10でNO)には、制御部150は、上述した一連の測定動作制御を終了する。
【0110】
図7に示す一連の測定動作において、最初に選択されるフィルタ21(ステップS5)、2番目に選択されるフィルタ22(ステップS7)、次に選択されるフィルタ21並びにその後に順次選択されるフィルタ22、21(ステップS97)は、例えば、
図2(c)に示すように、それぞれ、1段目グループの1番目のフィルタ21a、2段目グループの1番目のフィルタ22a、1段目グループの2番目のフィルタ21b、2段目グループの2番目のフィルタ22b、1段目グループの3番目のフィルタ21c、2段目グループの3番目のフィルタ22c、1段目グループの4番目のフィルタ21c+1、2段目グループの4番目のフィルタ22c+1、...となる。
【0111】
このように、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、機械式で切り替えるフィルタバンク(
図17参照)を用いることなく、切替スイッチ20を電子的に切替制御することにより、オーバーラップしない帯域を生じさせない信号測定を短時間かつ高精度で実現でき、ミリ波帯の測定等、広帯域化に対応できるようになる。
【0112】
(変形例1)
本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1の変形例1に係るフィルタバンク回路10Bのローカル信号供給経路要部を含む構成を
図8に示している。
図8において、
図5に示すフィルタバンク回路10Aの各部と同様の部分には同一の符号を付している。
図8に示すように、変形例1に係るフィルタバンク回路10Bは、第1のフィルタ群G1に対応するローカル信号発生器(LO1)112-1と、第2のフィルタ群G2に対応するローカル信号発生器(LO2)112-2の2つが設けられている。それ以外の構成は、前述した第1の実施形態に係るフィルタバンク回路10Aと同等である。変形例1に係るフィルタバンク回路10Bを駆動制御するために、制御部150(
図4参照)における周波数掃引制御部152は、フィルタバンク回路10B内に設けられるローカル信号発生器112―1、及びローカル信号発生器112―2に対する周波数掃引制御を個別に実施できる機能構成を有している。
【0113】
図9は、変形例1に係るフィルタバンク回路10Bを採用したスペクトラムアナライザ1の信号測定時におけるフィルタバンク回路10Bの動作を示すタイミングチャートである。ここで、
図9(a)は切替スイッチ20の切替動作(「SPDT SW制御」)を示し、
図9(b)はローカル信号発生器112―1、112-2に対するローカル信号の設定動作(「LO1、LO2周波数設定」)を示している。
【0114】
図9(a)に示すように、切替スイッチ20の切替制御について、周波数掃引制御部152は、2点鎖線の縦線で示すタイミングで第1のフィルタ群G1(f1、f3、f5、f7ルート)から第2のフィルタ群G2(f2、f4、f6、f8ルート)への切り替えを行い、点線の縦線で示すタイミングで第2のフィルタ群G2(f2、f4、f6、f8ルート)から第1のフィルタ群G1(f1、f3、f5、f7ルート)への切り替えを実施する。制御部150では、第1のフィルタ群G1と第2のフィルタ群G2とが交互に切り替わるのに合わせて、第1のフィルタ群G1内の所望のフィルタ21を通過する周波数成分と、第2のフィルタ群G1内の所望のフィルタ22を通過する周波数成分とを交互(例えば、バンドf1、f2、f3、...の順番)に測定するように制御する。
【0115】
図9(a)に示す動作タイミングに基づく測定動作制御をローカル信号発生器112―1、112-2に対するローカル周波数LO1、LO2の設定動作の観点から見ると、
図9(b)に示すようになる。この場合、2つのローカル信号発生器112―1、112-2が存在するため、第1のフィルタ群G1内のf1、f3、f5、f7ルートに対応する各周波数成分の測定中に、第2のフィルタ群G2内のf2、f4、f6、f8ルートに対応するLO2をローカル信号発生器112-2で設定し、第2のフィルタ群G2内のf2、f4、f6、f8ルートに対応する各周波数成分の測定中に、第1のフィルタ群G1内のf1、f3、f5、f7ルートに対応するLO1をローカル信号発生器112―1で設定する制御が行われる。
【0116】
図9に示す「SPDT SW制御」、及び「LO1、LO2周波数設定」の制御により、第1のフィルタ群G1内の例えばバンドf1の測定と第2のフィルタ群G2内の例えばバンドf2の測定との間には、LO1若しくはLO2の設定が介在せず、
図6に示した1つのローカル信号発生器112を用いる場合に比べて、ルートが異なる周波数測定の間にLO1またはLO2を設定するための時間が介在しない。これにより、変形例2に係るフィルタバンク回路10Bを用いるスペクトラムアナライザ1の構成にあっては、測定に寄与しないLO設定に関する無駄な待ち時間をなくし、
図6に示した構成例に比べてより短時間で、f1、f3、f5、f7ルート、及びf2、f4、f6、f8ルートの個々のルート内では通過帯域のオーバーラップがなく、f1、f3、f5、f7ルートとf2、f4、f6、f8ルートの間の隣り合うもの同士の通過帯域をオーバーラップせしめた測定が実現できる。
【0117】
図9を参照して述べた「SPDT SW制御」、及び「LO1、LO2周波数設定」制御の流れを踏まえ、変形例1に係るフィルタバンク回路10Bを採用するスペクトラムアナライザ1における信号測定制御動作を
図10に示すフローチャートを参照して説明する。
図10において、
図7に示すフィルタバンク回路10Aを採用するスペクトラムアナライザ1における信号測定制御動作と同様の処理ステップには同様の符号を付している。
【0118】
図10においては、
図7に示す処理ステップと異なる処理ステップS4A、S6A、S41Aを主体に説明する。このスペクトラムアナライザ1では、ステップS3で選択されるフィルタ21、またはフィルタ22が単数であると判定された場合(ステップS3で「単数」)、制御部150は、そのフィルタの経路に対応した切替スイッチ20の経路を設定するとともに、ローカル周波数(LO1またはLO2)の設定を行う(ステップS41A)。
【0119】
次いで、制御部150では、フィルタ切替制御部151がステップS41Aでの経路設定に基づいて切替スイッチ20を第1のフィルタ群G1と第2のフィルタ群G2との間での切替制御を実施し、それに合わせて周波数掃引制御部152がステップS41AでのLO(LO1またはLO2)設定に基づいてローカル信号発生器112―1、またはローカル信号発生器112―2に対する周波数掃引の制御を行いながら、当該フィルタ21、またはフィルタ22での測定を実施する(ステップS42)。
【0120】
これに対して、ステップS3で選択されるフィルタ21、22が複数であると判定された場合(ステップS3で「複数」)、制御部150は、ステップS4A~S7の処理を行う。まず、制御部150は、最初に選択されるフィルタ21、またはフィルタ22に対応したLO(LO1、またはLO2)周波数の設定を、そのフィルタ21、またはフィルタ22に対応するローカル信号発生器112―1、またはローカル信号発生器112―2に対して実施する(ステップS4A)。
【0121】
次いで、制御部150は、最初に選択されるフィルタ(例えば、フィルタ21)に対応した切替スイッチ20の経路設定を行い、最初に選択されるフィルタ21での測定を行う(ステップS5)。
【0122】
制御部150は、ステップS5での測定の実行中、2番目に選択されるフィルタ22に対応したLO(LO2)周波数の設定を、ステップS4Aと同様、そのフィルタ22に対応するローカル信号発生器112-2に対して行う(ステップS6A)。
【0123】
引き続き、制御部150は、2番目に選択されるフィルタ22に対応した切替スイッチ20の経路設定を行い、2番目に選択されるフィルタ22での測定を行う(ステップS7)。
【0124】
その後、ステップS8で次に選択されるフィルタ21、22、...があると判定されると(ステップS8でYES)、制御部150は、2番目をn番目と読み替えて、次に選択されるフィルタ21、22、...がなくなるまで上記ステップS6A、S7を繰り返し実施する(ステップS9)。2番目からn番目までのフィルタによる測定期間においても、制御部150は、次に選択されるフィルタ21、22、...に対応するローカル信号発生器112―1またはローカル信号発生器112―2に対するLO(LO1、LO2、...)周波数の設定と、当該選択されるフィルタ21、22、...での測定と、当該フィルタ21、22、...での測定中に、さらに次に選択されるフィルタ22、21...に対応したLO(LO2、LO1、...)周波数の設定を継続して実施する。
【0125】
図10に示す信号測定動作により、スペクトラムアナライザ1では、第1のフィルタ群G1と第2のフィルタ群G2のどちらか一方が測定している間にもう一方のLO周波数設定を行い、次の通過帯域の測定が始まる時には既にLO周波数設定が完了している(
図9参照)ため、LO周波数設定完了までの待ち時間が無く、すぐに測定を開始できる。この信号測定動作によれば、切替スイッチ20の切替制御に際し、LO周波数設定完了待ちを考慮する必要もない。
【0126】
(変形例2)
本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1の変形例2に係るフィルタバンク回路10Cの構成を
図11に示している。
図11に示すように、変形例2に係るフィルタバンク回路10Cは、単極三投型の切替スイッチ20-1を備え、この切替スイッチ20-1を、入力部20aを出力部20b、20c、20dのいずれかに切り替えるように切替制御することにより、入力部20aからの入力信号を、第1のフィルタ群G1、または第2のフィルタ群G2、若しくは第3のフィルタ群G3のいずれかへと選択的に供給可能な構成を有している。
【0127】
変形例2に係るフィルタバンク回路10Cにおいて、第1のフィルタ群G1、第2のフィルタ群G2、第3のフィルタ群G3のうち、第1のフィルタ群G1は、互いにオーバーラップしないバンドf1、f4、f7、f10をそれぞれ通過帯域とするフィルタ21a、21b、21cを有している。第2のフィルタ群G2は、互いにオーバーラップしないバンドf2、f5、f8、f11をそれぞれ通過帯域とするフィルタ22a、22b、22cを有し、第3のフィルタ群G3は、互いにオーバーラップしないバンドf3、f6、f9、f12をそれぞれ通過帯域とするフィルタ23a、23b、23cを有している。
【0128】
第1のフィルタ群G1を構成するフィルタ21a、21b、21c、第2のフィルタ群G2を構成するフィルタ22a、22b、22c、第3のフィルタ群G3を構成するフィルタ23a、23b、23c(以下、フィルタ23ということもある)は、上述した実施形態のもの(
図1、
図5参照)と同様、それぞれ、入力側の各ハイブリッド25a1、25b1、25c1と出力側の各ハイブリッド26a1、26b1、26c1との間にそれぞれ2つずつのBPF27a1、27b1、27c1を配置したBLCフィルタバンク、入力側の各ハイブリッド25a2、25b2、25c2と出力側の各ハイブリッド26a2、26b2、26c2との間にそれぞれ2つずつのBPF27a2、27b2、27c2を配置したBLCフィルタバンク、入力側の各ハイブリッド25a3、25b3、25c3と出力側の各ハイブリッド26a3、26b3、26c3との間にそれぞれ2つずつのBPF27a3、27b3、27c3を配置したBLCフィルタバンクにより構成されている。ここで、各フィルタ群G1、G2、G3を構成するフィルタ21、22、23は任意の数とすることができる。
【0129】
第1のフィルタ群G1を構成するフィルタ21a、21b、21c、第2のフィルタ群G2を構成するフィルタ22a、22b、22c、第3のフィルタ群G3を構成するフィルタ23a、23b、23cのそれぞれの通過帯域(バンドf1、f4、f7、f10、バンドf2、f5、f8、f11、及びバンドf3、f6、f9、f12)については、
図11の切替スイッチ20-1の入力側に示すように、バンドf1からバンドf12の順番で、隣り合う通過帯域(バンド)がオーバーラップする設定となっている。
【0130】
ここで、フィルタ群Gのグループ分けについて説明する。上述した実施形態、変形例1に係るフィルタバンク回路10A、10Bについて言及すると、フィルタ群Gのグループ分けについては、フィルタ21間、フィルタ22間のオーバーラップが大きい場合、2つのフィルタ群G1、G2とするグループ分け(2分割)では十分にガードバンドが得られないことがある。ガードバンドを増やす要求に対しては、2分割よりも変形例2のように3つのフィルタ群G1、G2、G3とする3分割の方がより優位であるといえる。特に、シグナルアナライザに本発明を適用した場合、解析する信号が広帯域になるとこのオーバーラップ帯域も大きくなる。そのためガードバンドが得られなくなる場合は分割数を増やして対応することとなる。
【0131】
但し、本発明においてフィルタ群Gのグループ分けは、2分割、3分割に限られるものではなく、上述したように、分割数をさらに大きなn(nは3以上の整数)分割まで増やすと同時に、切り替える切替スイッチ20として単極n投型のスイッチ(SPnT SW)を採用した構成としてもよい。SPnT SWでn分割のフィルタ群G1~Gnに切り分けた構成によれば、各グループでの十分なガードバンドを得ることが可能になる。
【0132】
図11に示す分割されたフィルタ群G1、G2、G3を有する変形例2に係るフィルタバンク回路10Cにおいては、切替経路が2経路から3経路になる以外は、例えば、
図1に示すフィルタバンク回路10Aと同様、
図7に示すフローチャートに沿った測定動作制御によって運用することができる。変形例2に係るフィルタバンク回路10Cの構成によれば、
図1に示すフィルタバンク回路10Aに比べて、フィルタ群G1、G2、G3内のフィルタ21、22、23間のガードバンドを確保し易いというメリットがある。
【0133】
(変形例3)
本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1において、フィルタ群G1~Gnを構成する各フィルタ21、22、...は、例えば、
図1に示すフィルタ21a、21b、21c、及びフィルタ22a、22b、22c等のように、ハイブリッドとしてブランチライン・カプラを用いたBLCフィルタバンク構成に限定されるものではない。
【0134】
図12は、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1の変形例3に係るフィルタバンク回路10Dの構成を示している。変形例3に係るフィルタバンク回路10Dにおいて、切替スイッチ20、ローカル信号発生器112―1、112-2、ミキサ111-1、111-2、111‐3、111-4、111-5、111-6、111-7、111-8は、それぞれ、変形例1に係るフィルタバンク回路10B(
図8参照)と同等のものである。
【0135】
変形例3に係るフィルタバンク回路10Dにおいて、第1のフィルタ群G1は、フィルタ41a、41b、41cを有し、第2のフィルタ群G2は、フィルタ42a、42b、42cを有している。フィルタ41a、41b、41cは、それぞれ、サーキュレータ45a、45b、45cと、BPF46a、46b、46cを有している。また、フィルタ42a、42b、42cは、それぞれ、サーキュレータ45d、45e、45fと、BPF46d、46e、46fを有している。サーキュレータ45a、45b、45c、及びサーキュレータ45d、45e、45fは、それぞれ、被測定信号を入力する入力ポート(第1のポート)、被測定信号のうちの設定された通過帯域の信号を出力する出力ポート(第2のポート)、被測定信号のうちの設定された通過帯域以外の信号を次段へと転送する転送ポート(第3のポート)を有している。
【0136】
第1のフィルタ群G1を構成するBPF46a、46b、46cは、互いにオーバーラップしない隣り合うバンドf1、f3、f5、f7を通過帯域とする組み合わせで設けられ、第2のフィルタ群G2を構成するBPF46d、46e、46fは、互いにオーバーラップしない隣り合うバンドf2、f4、f6、f8を通過帯域とする組み合わせで設けられている。また、第1のフィルタ群G1と第2のフィルタ群G2間において、バンドf1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8は、隣り合うバンド同士がオーバーラップした領域を有する設定となっている。
【0137】
変形例3に係るフィルタバンク回路10Dを備えるスペクトラムアナライザ1によれば、切替スイッチ20を入力部20aが出力部20bに接続されるように切り替えると、入力信号が第1のフィルタ群G1側に供給される。このとき、入力信号であるバンドf1、f3、f5、f7の信号成分のうち、バンドf1の信号成分はサーキュレータ45a、BPF46aを通ってミキサ111-1に供給される。バンドf3の信号成分はサーキュレータ45aからサーキュレータ45bに入力し、その後、BPF46bを通ってミキサ111-2に供給される。バンドf5の信号成分はサーキュレータ45a、45bを経てサーキュレータ45cに入力し、その後、BPF46cを通ってミキサ111-3に供給される。バンドf7の信号成分はサーキュレータ45a、45bを経てサーキュレータ45cに入力し、その後、BPF46cを通ることなくミキサ111-4に供給される。
【0138】
また、切替スイッチ20を入力部20aが出力部20cに接続されるように切り替えると、入力信号が第2のフィルタ群G2側に供給される。このとき、入力信号であるバンドf2、f4、f6、f8の信号成分のうち、バンドf2の信号成分はサーキュレータ45d、BPF46dを通ってミキサ111-5に供給される。バンドf4の信号成分はサーキュレータ45dからサーキュレータ45eに入力し、その後、BPF46eを通ってミキサ111-6に供給される。バンドf6の信号成分はサーキュレータ45d、45eを経てサーキュレータ45fに入力し、その後、BPF46fを通ってミキサ111-7に供給される。バンドf8の信号成分はサーキュレータ45d、45eを経てサーキュレータ45fに入力し、その後、BPF46fを通ることなくミキサ111-8に供給される。
【0139】
このとき、スペクトラムアナライザ1は、制御部150によって、例えば、
図10に示すフローチャートに沿った切替スイッチ20の切替制御と、ローカル信号発生器112‐1、112-2に対するLO(LO1、LO2)周波数設定の制御を実施することにより、変形例1に係るフィルタバンク回路10Bを備えているときと同様、第1のフィルタ群G1と第2のフィルタ群G2のどちらか一方が測定している間にもう一方のLO周波数設定を実施し、LO周波数設定完了までの待ち時間のない信号測定動作が可能となる。
【0140】
(他の変形例)
本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1に用いるフィルタバンク回路10Aの他の変形例としては、フィルタ群G1~Gnを構成する各フィルタ21、22、...を、上述したBLCフィルタバンクや、サーキュレータを用いる以外に、例えば、BPF、低域通過フィルタ(Low-Pass Filter:LPF)、高域通過フィルタ(High-Pass Filter:HPF)、帯域阻止フィルタ(Band-Elimination Filter:BEF)を単独、若しくは組み合わせて用いた構成としてもよい。
【0141】
具体例を挙げると、他の変形例に係るフィルタバンク回路10は、フィルタ21、22、...が、当該フィルタ21、22、...に対応して設定された通過帯域の周波数成分を通過させるBPFのみで構成されていてもよい。この構成によれば、フィルタ群G内の各フィルタ21、22、...を汎用のBPFを用いて容易に実現でき、構造の単純化、低コスト化が期待できる。
【0142】
また、さらに別の変形例に係るフィルタバンク回路10Aは、フィルタ21、22、...が、当該フィルタ21、22、...に対応して設定された通過帯域より上の周波数帯の周波数成分を通過させるHPFと、上記通過帯域より下の周波数帯の周波数成分を通過させるLPFと、により構成されるものであってもよい。この構成によれば、フィルタ群G内の各フィルタ21、22、...を、汎用のHPF、LPFを用いて容易に実現でき、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0143】
その他、本実施形態においては、フィルタ群G1~Gn内では各フィルタ間のガードバンドが確保され、フィルタ群G1~Gnの間で各フィルタの通過帯域のオーバーラップが維持されるという主旨を逸脱しない範囲内でのフィルタバンク回路10の構成に関する種々の変形、或いは応用が可能である。
【0144】
上述したように、本実施形態に係るフィルタバンク回路10(10A、10B、10C、10D)は、1つの入力部20aとn個(nは2以上の整数)の出力部20b、20c、20d、...間の切り替えを行う1極n投型の切替スイッチ20と、n個の出力部20b、20c、20d、...にそれぞれ接続されるnグループのフィルタ群G1、G2、...、Gnと、を有し、フィルタ群G1、G2、...、Gnは、それぞれ、m個(mは2以上の整数)フィルタ21、22、...を有し、フィルタ21、22、...は、それぞれ、グループ内では他のフィルタ21、22、...の通過帯域とはオーバーラップせず、グループ間では互いに他のグループのそれぞれのフィルタ21、22、...の通過帯域に対して所定帯域幅(ol1、ol2、...)でオーバーラップする通過帯域に設定されており、所定帯域幅は、被測定信号または試験用信号が欠落することのないよう、被測定信号または試験用信号が占有する帯域よりも広い帯域に設定された構成を有している。ここで、n、mの数は任意に選べるものである。
【0145】
この構成により、本実施形態に係るフィルタバンク回路10は、複数のフィルタ群G(G1、G2、...)をグループごとに切り替えて用いることにより、フィルタ群G内の各フィルタ21、22の通過帯域間のガードバンドを保ちつつ、異なるグループのフィルタ群Gの各フィルタ21、22の通過帯域間のオーバーラップを維持することができる。これにより、可動部を有しないフィルタ群Gを用い、機械式で切り替えるフィルタバンク(
図17参照)のように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、適切なオーバーラップ帯域をもって全ての帯域を対象とする被測定信号の測定、またはDUTの試験への対応が可能となる。
【0146】
また、本実施形態に係るフィルタバンク回路10は、255~315GHzのミリ波帯の周波数成分を入力し、nグループごとにm個ずつのフィルタ21、22、...によって、n×m個の互いにオーバーラップした通過帯域に分けてミリ波帯の周波数成分を抽出する構成である。
【0147】
この構成により、本実施形態に係るフィルタバンク回路10は、ミリ波帯の被測定信号、または試験用信号を対象とする測定または試験できない帯域がなく、不要な電波が抑制された周波数成分を抽出するに際して、切替スイッチ20の極めて容易かつ短時間の切替制御により対応可能となる。
【0148】
また、本実施形態に係るフィルタバンク回路10Aにおいて、フィルタ群G1、G2を構成するフィルタ21、22は、当該フィルタ21、22に対応して設定された通過帯域の周波数成分を通過させるBLCを用いたフィルタバンクで構成されている。
【0149】
これにより、本実施形態に係るフィルタバンク回路10Aは、BLCとBPFを用いたフィルタバンクを採用することで、切替スイッチ20の採用と相俟って、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0150】
また、本実施形態に係るフィルタバンク回路10において、フィルタ21、22は、当該フィルタ21、22に対応して設定された通過帯域の周波数成分を通過させるBPFで構成されていてもよい。これにより、フィルタバンク回路10では、フィルタ群G1、G2内の各フィルタ21、22を、汎用のBPFを用いて容易に実現でき、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0151】
また、本実施形態に係るフィルタバンク回路10Dにおいて、フィルタ41a、41b、41c、42a、42b、42cは、入力ポート、出力ポート、転送ポートを有し、入力ポートから入力する周波数成分が当該段数に対応する周波数成分であるときには当該周波数成分を出力ポートへ出力し、周波数成分外の周波数成分であるときに転送ポートより次段の入力ポートへ入力するサーキュレータサーキュレータ45a~45fと、出力ポートに接続され、当該段数に応じた通過帯域が設定されるBPF46a~46fと、を有する構成である。これにより、フィルタバンク回路10Dでは、フィルタ群G1、G2内の各フィルタ21、22を、汎用のサーキュレータ、及びBPFを用いて容易に実現でき、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0152】
また、本実施形態に係るフィルタバンク回路10において、フィルタ21、22は、HPFとLPFとの組み合わせにより構成され、当該フィルタ21、22に対応して設定された通過帯域の周波数成分を通過させる構成としてもよい。これにより、フィルタバンク回路10は、フィルタ群G1、G2内の各フィルタ21、22を、汎用のHPF、及びLPFを用いて容易に実現でき、構造の単純化、低コスト化が図れる。
【0153】
また、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、ミリ波帯の被測定信号を、ローカル信号発生器112から出力されるローカル信号とともにミキサ111に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ113とを有する周波数変換部100と、中間周波数帯の信号を検波する検波器120とを有し、解析対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、被測定信号のスペクトラム特性を求めるものであって、周波数変換部100の前段に、上述したフィルタバンク回路10(10A、10B、10C、10D)を設けられている。
【0154】
このスペクトラムアナライザ1は、入力部20aに被測定信号が入力される切替スイッチ20を、解析対象周波数に応じて、複数のフィルタ群G1、G2がグループ単位に順番に繰り返し選択されるように切替制御するフィルタ切替制御部151を有し、順番に選択されるフィルタ群G1、G2ごとに、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する通過帯域を有するフィルタ21、22を通過する周波数成分を、順次、抽出する構成を有している。
【0155】
この構成により、スペクトラムアナライザ1は、フィルタバンク回路10に入力する被測定信号から、互いにオーバーラップする複数(最大(n×m)個)の通過帯域に対応する周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出して検波器120へ出力することができ、可動部を有しないフィルタ群G1、G2を用い、機械式で切り替えるフィルタバンク(
図17参照)のように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、全ての帯域の信号を対象とするスペクトラム特性の円滑な測定が実現できる。
【0156】
また、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、複数のフィルタ群G1、G2にそれぞれ対応して設けられる複数のローカル信号発生器112―1、112-2と、複数のフィルタ群G1、G2を構成する各々のフィルタ21、22にそれぞれ対応して設けられるミキサ111-1、111-2、111‐3、111-4、111-5、111-6、111-7、111-8と、選択中のフィルタ群G1、G2における一周波数帯に対応する通過帯域を有するフィルタ21、22によるスペクトラム特性の測定時に、次に選択するフィルタ群G1、G2における一周波数帯に対応する通過帯域を有するフィルタ21、22に対応するミキサ111-1、111-2、111‐3、111-4、111-5、111-6、111-7、111-8に対するローカル周波数を設定する周波数掃引制御部152と、をさらに有している。
【0157】
この構成により、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、選択中のフィルタ群G1、G2を構成する各フィルタ21、22による測定時と、次のフィルタ群G1、G2を構成する各フィルタ21、22による測定時との間におけるローカル周波数を設定するための無駄な待ち時間をなくすことができ、円滑な測定が実施できる。
【0158】
また、本実施形態に係るフィルタバンク回路10を用いるスペクトラムアナライザ1におけるフィルタバンク回路10の制御方法は、解析対象周波数を設定する設定ステップ(S1)と、設定された解析対象周波数に基づき、フィルタ群G1、G2のうちの選択されるべきフィルタ21、22を算出するステップ(S2)と、選択されるフィルタ21、22に対応した切替スイッチ20の経路設定を行い、選択されるフィルタ21、22が属するフィルタ群G1、G2を選択するように切替スイッチ20を切替制御するステップ(S5)と、切替制御するステップにより切り替えられたフィルタ群G1、G2のうちの、算出するステップで算出されたフィルタ21、22を通過する周波数成分を抽出するステップ(S5、S7、S9)と、を含む構成を有している。
【0159】
この構成により、フィルタバンク回路10の制御方法によれば、解析対象周波数を互いにオーバーラップする複数(n×m個)の通過帯域に分けて、被測定信号から各通過帯域の周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出することができ、切替スイッチ20の簡単な切替制御によって測定または試験できない帯域をなくすことができるうえに、切替スイッチ20の切替時間も短縮することが可能となる。
【0160】
(フィルタバンク回路10を用いるシグナルアナライザ2)
上記実施形態に係るフィルタバンク回路10Aは、
図4に示したスペクトラムアナライザ1に限らず、例えば、所定の周波数帯の信号の解析処理を行うシグナルアナライザ2にも適用可能である。
【0161】
図13は、フィルタバンク回路10Aを用いるシグナルアナライザ2の一般的構成を示す図である。このシグナルアナライザ2は、周波数変換部100F、アナログデジタル変換器(Analog to Digital Converter:ADC)125、制御部150F、操作部160、表示部161を有するとともに、周波数変換部100Fの前段に上述した構成を有するフィルタバンク回路10A(
図1参照)を備えている。
【0162】
周波数変換部100Fは、ミキサ111F、ローカル信号発生器112F、フィルタ113Fを具備して構成される。
【0163】
ミキサ111Fは、フィルタバンク回路10Aから出力されるスプリアス波が抑制された各周波数成分の信号(RF周波数)と、ローカル信号発生器112Fから入力されるローカル信号とを混合することにより、被測定信号をRF周波数から中間周波数の信号(IF周波数)に変換して出力する。
【0164】
ローカル信号発生器112Fは、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ミキサ111Fに送出するためのローカル信号を発生する。
【0165】
フィルタ113Fは、ミキサ111Fによって周波数変換されたIF信号を入力し、入力されたIF信号の予め設定されたある帯域の周波数成分の信号のみを通過させ、ADC125へと入力させるフィルタ機能部である。ここで、IF信号の予め設定されたある帯域の周波数成分の信号(被測定信号)がフィルタバンク回路10Aで欠落しないようにオーバーラップ帯域が設定される。つまり、オーバーラップ帯域は、このIF帯域信号よりも広い帯域を通過させる必要がある。
【0166】
ADC125は、フィルタバンク回路10Aを通過し、周波数変換部100Fで周波数変換された信号(被測定信号)をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0167】
制御部150Fは、フィルタ切替制御部151F、周波数制御部152F、信号解析部153Fを有している。フィルタ切替制御部151Fは、スペクトラムアナライザ1(
図7参照)の制御部150に設けられるものと同等のものである。
【0168】
周波数制御部152Fは、周波数変換部100Fでの被測定信号の周波数変換に際して指定された解析対象周波数範囲の信号を受信できるようにローカル周波数を設定する制御を行う。周波数変換部100Fを構成するローカル信号発生器112Fは、受信するRF周波数に応じてローカル周波数を可変することができる構成を有している。このため、周波数制御部152Fは、ローカル信号発生器112Fを制御し、ローカル周波数を掃引制御する構成であってもよい。
【0169】
信号解析部153Fは、ADC125によりデジタル信号の変換された信号(被測定信号)の波形を解析する処理、具体的には、上記デジタル信号をスペクトラム等の波形表示を行うための波形解析データや変調信号の解析を行い、変調解析結果を生成する処理を実行する。
【0170】
上記構成を有するシグナルアナライザ2において、信号の解析処理を行うためには、例えば、操作部160での所定の設定操作により、解析対象周波数を設定する。この処理は、スペクトラムアナライザ1におけるステップS1(
図7参照)の処理に対応するものである。
【0171】
次に、制御部150Fは、設定された解析対象周波数に基づき、フィルタバンク回路10A内のフィルタ群G1、G2のうちの選択されるべきフィルタ21、22を算出する処理を行う。この処理は、スペクトラムアナライザ1におけるステップS2(
図7参照)の処理に対応するものである。
【0172】
引き続き、制御部150Fは、上記算出する処理で算出された、選択されるべきフィルタ21、22に対応した切替スイッチ20の経路設定を行い、次いでフィルタ切替制御部151Fが、選択されるべきフィルタ21、22が属するフィルタ群G1、G2のいずれかを選択するように切替スイッチ20を切替制御する。この処理は、スペクトラムアナライザ1におけるステップS5(
図7参照)の処理に対応するものである。
【0173】
これにより、フィルタバンク回路10Aにおいては、切替スイッチ20の入力部20aから入力する被測定信号が、上記切替制御によって切り替えられたフィルタ群G1、G2のうちの、上記算出する処理によって算出されたフィルタ21、22を通過して出力され、その通過した周波数成分が解析対象として周波数変換部100Fに入力する。
【0174】
周波数変換部100Fでは、フィルタバンク回路10Aから入力する周波数成分(被測定信号)とローカル信号発生器112Fから入力されるローカル信号をミキサ111Fでミキシングして中間周波数帯に変換し、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号をフィルタ113Fで抽出し、ADC125へ送出する。
【0175】
ADC125は、周波数変換後の信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して信号解析部153Fに入力する。信号解析部153Fは、ADC125から入力するデジタル信号から、当該デジタル信号をスペクトラム等の波形表示を行うための波形解析データや変調信号の解析を行い、変調解析結果を生成する処理を実行する。さらに制御部150Fは、信号解析部153Fにより生成された波形解析データを表示部161に表示する等の信号解析のための制御を行う。
【0176】
ここでは、フィルタバンク回路10Aを用いたシグナルアナライザ2について例示しているが、フィルタバンク回路10Aにおいては、その他例えば、上述の変形例1に係るフィルタバンク回路10B、変形例2に係るフィルタバンク回路10C、変形例3に係るフィルタバンク回路10D等のフィルタバンク回路10も用い得るものである。
【0177】
このように、本実施形態に係るシグナルアナライザ2は、所定の周波数成分の被測定信号を、ローカル信号発生器112Fから出力されるローカル信号とともにミキサ111Fに与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ113Fを有する周波数変換部100Fと、中間周波数帯の信号をADC125でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部153Fとを有し、解析対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、被測定信号の波形を解析するものである。
【0178】
本実施形態に係るシグナルアナライザ2は、周波数変換部100Fの前段に、上述した構成を有するフィルタバンク回路10を設けるとともに、入力部20aに被測定信号が入力される切替スイッチ20を、解析対象周波数に応じて、複数のフィルタ群G1、G2がグループ単位に選択されるように切替制御するフィルタ切替制御部151Fを有し、選択されるフィルタ群G1、G2ごとに、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する通過帯域を有するフィルタ21、22を通過する周波数成分を抽出し、アナログ信号からデジタル信号に変換した後に当該周波数成分の信号の波形を解析するようになっている。
【0179】
この構成により、本実施形態に係るシグナルアナライザ2は、フィルタバンク回路10Aに入力する被測定信号から、被測定信号が欠損しないようにオーバーラップ帯域が確保された、互いにオーバーラップする複数(n×m)個の通過帯域に対応する周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出してADC125へ出力することができ、可動部を有しないフィルタ群を用い、機械式で切り替えるフィルタバンクのように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、全ての帯域の信号を対象とする信号解析を円滑かつ精度よく実現できる。
【0180】
また、本実施形態に係るフィルタバンク回路10Aを用いるシグナルアナライザ2におけるフィルタバンク回路10Aの制御方法は、試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1)と、設定された試験対象周波数に基づき、フィルタ群G1、G2のうちの選択されるべきフィルタ21、22を算出するステップ(S2、S12)と、選択されるフィルタ21、22に対応した切替スイッチ20の経路設定を行い、選択されるフィルタ21、22が属するフィルタ群G1、G2を選択するように切替スイッチ20Eを切替制御するステップ(S5、S13)と、切替制御するステップにより切り替えられたフィルタ群G1、G2のうちの、算出するステップで算出されたフィルタ21、22を通過する周波数成分を抽出するステップと、を含んでいる。
【0181】
このフィルタバンク回路10Aの制御方法によれば、シグナルアナライザ2に搭載した状態で、試験対象周波数を互いにオーバーラップする複数の通過帯域に分けて、切替スイッチの簡単な切替制御によってDUTを試験できない帯域をなくすことができるうえに、切替スイッチの切替時間も短縮することが可能となる。
【0182】
(フィルタバンク回路10Eを用いる信号発生装置3)
上記実施形態に係るフィルタバンク回路10A、変形例1に係るフィルタバンク回路10B、変形例2に係るフィルタバンク回路10C、変形例3に係るフィルタバンク回路10D等のフィルタバンク回路10は、
図4に示したスペクトラムアナライザ1に限らず、例えば、DUTの受信感度試験を行う信号発生装置3においても実装可能である。
【0183】
図14は、上述したフィルタバンク回路10を用いる信号発生装置3の一般的構成を示す図である。信号発生装置3としては、DUTに対するミリ波帯の信号の受信感度試験を行う試験用信号を発生する試験用信号発生装置を想定している。
【0184】
この信号発生装置3は、周波数変換部100E、信号発生部130、制御部150E、操作部160、表示部161の他、周波数変換部100Eの後段に設けられるフィルタバンク回路10Eを備えている。周波数変換部100Eは、ミキサ111E、ローカル信号発生器112E、フィルタ113Eにより構成され、制御部150Eは、フィルタ切替制御部151E、周波数制御部152E、信号発生制御部153Eを備えて構成される。
【0185】
信号発生装置3において、周波数変換部100Eでは、信号発生制御部153Eの制御下で信号発生部130から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器112Eから出力されるローカル信号とともにミキサ111Eに与え、ミリ波帯の信号に変換する処理を行う。その際、周波数変換部100Eは、DUTを試験するために例えば操作部160にて設定される試験対象周波数に応じてローカル信号の周波数を周波数制御部152Eにより変化させつつ、周波数変換後の信号をDUTの試験用信号として後段へと送出する。
【0186】
後段に設けられるフィルタバンク回路10Eとしては、上述したフィルタバンク回路10A、10B、10C、10D等が適用可能であるが、ここでは特に、フィルタバンク回路10A(
図1参照)を用いる構成を前提に説明する。
【0187】
信号発生装置3におけるフィルタバンク回路10Eは、例えば、
図15に示すように、
図1に示すフィルタバンク回路10Aが、IF信号(信号発生部130から周波数変換部100Eに入力する試験用信号)が周波数変換部100Eに入力されRF周波数(f1、f2、f3、...)に変換された信号が、フィルタ群G1、またはフィルタ群G2を経由して切替スイッチ20Eの入力部20b1または20c1に入力され、切替信号により選択されて切替スイッチ20Eの出力部20a1にRF Outputたる試験用信号として送出可能な形態で実装された構成を有している。すなわち、信号発生装置3に用いられるフィルタバンク回路10Eにおいて、切替スイッチ20Eは、フィルタバンク回路10Aの切替スイッチ20の出力部20b、20cが、それぞれ、入力部20b1、20c1として機能し、同じく入力部20aが出力部20a1として機能する構成を有している。
【0188】
信号発生装置3を用いたDUTの試験においては、操作部160での試験対象周波数の設定の後、信号発生制御部153Eの制御下で信号発生部130から発生する設定条件を満足する試験用信号が周波数変換部100EでRF信号に周波数変換された後、フィルタバンク回路10Eにおける切替スイッチ20Eの入力部20b1、20c1に入力する。
【0189】
その際、制御部150Eでは、フィルタ切替制御部151Eが、周波数変換後の信号(f1、f2、f3、...)が入力される切替スイッチ20を、設定された試験対象周波数に応じて、フィルタ群G1、G2がグループ単位に選択されるように切替制御する。この切替制御により、選択されるフィルタ群G1、またはフィルタ群G2においては、それぞれ、バンドf1、f3、f5、...の信号と、バンドf2、f4、f6、...の信号が、対応する通過帯域を有する各フィルタ21と、各フィルタ22を通過し、試験用信号として抽出される。抽出された試験用信号は、図示しないRF送出部からDUTに向けて送出されるようになっている。
【0190】
上述したDUTの試験に関する信号発生装置3での信号送信制御動作は、
図16に示すフローチャートに沿って行われる。DUTの試験に関する信号発生装置3での信号送信制御を行うためには、例えば、操作部160での所定の設定操作により、周波数、すなわち、試験対象周波数を設定する(ステップS11)。
【0191】
次に、制御部150Eは、設定された試験対象周波数に基づき、フィルタバンク回路10A内のフィルタ群G1、G2のうちの選択されるべきフィルタ21、22と、ローカル周波数の設定条件(LO設定)を算出する(ステップS12)。
【0192】
引き続き、制御部150Eは、ステップS12で算出された、選択されるべきフィルタ21、22に対応した切替スイッチ20Eの経路設定を行い、次いでフィルタ切替制御部151Eが、選択されるべきフィルタ21、22が属するフィルタ群G1、G2のいずれかを選択するように切替スイッチ20Eを切替制御する(ステップS13)。
【0193】
これにより、フィルタバンク回路10Eでは、切替スイッチ20Eの入力部20b1、20c1から入力する試験用信号が、上記切替制御によって切り替えられたフィルタ群G1、G2のうちの、上記算出する処理によって算出されたフィルタ21、22を通過して切替スイッチ20Eの出力部20a1から出力される。制御部150Eは、切替スイッチ20Eの出力部20a1から出力される周波数成分の信号を試験用信号として送出するように制御する(ステップS14)。
【0194】
このように、本実施形態に係る信号発生装置3は、信号発生部130から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器112Eから出力されるローカル信号とともにミキサ111Eに与え、ミリ波帯の信号に変換する周波数変換部100Eを有し、DUTを試験するための試験対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、周波数変換部100Eによる周波数変換後の信号をDUTの試験用信号として送出するものであって、周波数変換部100Eの後段に、フィルタバンク回路10Eを設けた構成を有している。フィルタバンク回路10Eは、信号の流れが逆になることを考慮して、上述したフィルタバンク回路10A、10B、10C、10D等によって構成することができる。
【0195】
この信号発生装置3では、切替スイッチ20Eを切替制御するフィルタ切替制御部151Eを有し、試験対象周波数に応じて試験対象周波数に対応する通過帯域を有するフィルタ群G1またはG2を選択して、試験用信号として送出するようになっている。
【0196】
この構成により、本実施形態に係る信号発生装置3は、フィルタバンク回路10Eに入力する周波数変換後の信号から、試験用信号が欠損しないようにオーバーラップ帯域が確保された、互いにオーバーラップする複数(n×m)個(
図15に示す例においては、(2×4)=8個)の通過帯域に対応する周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出して試験用信号として送出することができ、可動部を有しないフィルタ群G1、G2を用い、機械式で切り替えるフィルタバンク(
図17参照)のように長い切り替え時間や煩雑な切替制御を必要とすることなく、全ての帯域の信号を対象とするDUTの試験を円滑に実行することができる。
【0197】
また、本実施形態に係るフィルタバンク回路10Eを用いる信号発生装置3におけるフィルタバンク回路10Eの制御方法は、試験対象周波数を設定する設定ステップ(
図16のステップS11参照)と、設定された試験対象周波数に基づき、フィルタ群G1、G2のうちの選択されるべきフィルタ21、22を算出するステップ(同、ステップS12参照)と、選択されるフィルタ21、22に対応した切替スイッチ20の経路設定を行い、選択されるフィルタ21、22が属するフィルタ群G1、G2を選択するように切替スイッチ20を切替制御するステップ(同、ステップS13参照)と、切替制御するステップにより切り替えられたフィルタ群G1、G2のうちの、算出するステップで算出されたフィルタ21、22を通過する周波数成分を試験信号送出のために抽出するステップ(同、ステップ14参照)とを含むものである。
【0198】
このフィルタバンク回路10Eの制御方法によれば、試験対象周波数を互いにオーバーラップする複数(n×m個)の通過帯域に分けて、試験用信号から各通過帯域の周波数成分を不要な電波が抑制された状態で抽出することができ、切替スイッチ20の簡単な切替制御によって試験できない帯域をなくすことができるうえに、切替スイッチ20の切替時間も短縮することが可能となる。
【0199】
図15においては、フィルタバンク回路10Eについて、フィルタ群を2つ(フィルタ群G1、G2)、フィルタ群G1、G2内のフィルタをそれぞれ3つ、周波数はf1~f8とする例を挙げているが、上述した実施形態と同様、フィルタ群、フィルタ群内フィルタ、周波数の数は、任意のn個、m個、(n×(m+1))とし得るものである。フィルタ群をn個設ける場合、切替スイッチ20は、1極n投型のもの(SPnTスイッチ)が採用される。
【0200】
また、本実施形態に係る信号発生装置3においても、フィルタバンク回路10E内の各要素について、上述したスペクトラムアナライザ1に用いるフィルタバンク回路10A、10B、10C、10Dと同様、種々の変形、或いは応用が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0201】
以上のように、本発明は、電子的に切り替え可能なスイッチと複数のフィルタ群を用い、それぞれのフィルタ群内でガードバンドを確保しつつ簡単な切替制御でフィルタ群を切り替えることでフィルタ群全体ではオーバーラップを確保することで全ての帯域の測定または試験に対応可能であるという効果を奏し、フィルタバンク回路、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びフィルタバンク回路の制御方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0202】
1 スペクトラムアナライザ
2 シグナルアナライザ
3 信号発生装置
9 局部発振信号源
10、10A、10B、10C、10D、10E フィルタバンク回路
20、20-1、20E 切替スイッチ
20a 入力部
20a1 出力部
20b、20c、20d 出力部
20b1、20c1 入力部
21、21a、21b、21c フィルタ(フィルタ回路)
22、22a、22b、22c フィルタ(フィルタ回路)
23a、23b、23c フィルタ(フィルタ回路)
25、26 ハイブリッド
27 帯域通過フィルタ(BPF)
41a、41b、41c、42a、42b、42c フィルタ(フィルタ回路)
45a、45b、45c、45d、45e、45f サーキュレータ
46a、46b、46c、46d、46e、46f BPF
100、100E、100F 周波数変換部
101 フロントエンド回路
111、111-1、111-2、111‐3、111-4、111-5、111-6、111-7、111-8、111E、111F ミキサ
112、112-1、112-2、112E、112F ローカル信号発生器
113、113E、113F フィルタ
120 検波器
125 ADC
130 信号発生部
150、150E、150F 制御部
151、151E、151F フィルタ切替制御部(切替制御手段)
152 周波数掃引制御部(ローカル周波数設定手段)
152E、152F 周波数制御部(ローカル周波数設定手段)
153 スペクトラムデータ取得部
153E 信号発生制御部
153F 信号解析部
160 操作部
161 表示部
G1、G2、G3 フィルタ群
ol1、ol2、...、ol7 オーバーラップする帯域