(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133958
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
A47K10/16 A
A47K10/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043996
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA02
2D135AA04
2D135AA10
2D135AA12
2D135AA20
2D135AB02
2D135AB13
2D135AC04
2D135AC08
2D135AC11
2D135AD03
2D135CA02
2D135DA02
2D135DA05
2D135DA06
2D135DA13
2D135DA14
(57)【要約】
【課題】風合いが優れると共に、プライ剥がれを抑制しつつ、1ロール当りの巻長を長くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れたトイレットロールを提供する。
【解決手段】第1シート10Sと第2シート10Tとが2プライに重ねられたトイレットペーパー10xをロール状に巻き取ったトイレットロール10であって、第1シート及び第2シートの坪量がそれぞれ11.0~18.0g/m
2、トイレットペーパーの巻長が50~90m、巻径が110~130mmであり、第1シートは、第2シートに向かって突出する複数の凸部10rと、凸部の間で凸部よりも第1シートの外面側に位置する凹部10pとを有する第1エンボス10E1を有し、凸部にはさらに凹凸10cが形成され、凹凸と第2シートとの間に介在する接着剤6により、第1シートと第2シートとが接着されてなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シートと第2シートとが2プライに重ねられたトイレットペーパーをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、
前記第1シート及び前記第2シートの坪量がそれぞれ11.0~18.0g/m2、
前記トイレットペーパーの巻長が50~90m、巻径が110~130mmであり、
前記第1シートは、前記第2シートに向かって突出する複数の凸部と、前記凸部の間で前記凸部よりも前記第1シートの外面側に位置する凹部とを有する第1エンボスを有し、
前記凸部にはさらに凹凸が形成され、
前記凹凸と前記第2シートとの間に介在する接着剤により、前記第1シートと前記第2シートとが接着されてなるトイレットロール。
【請求項2】
前記第2シートには第2エンボスが形成され、
前記第2エンボスのエンボス高さが10~90μmである請求項1記載のトイレットロール。
【請求項3】
前記トイレットペーパーは幅方向に沿ってミシン目を有し、
前記ミシン目の2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さM-DMDTが50~100cN/114mm、
かつ、前記トイレットペーパーの2プライのプライ剥離強度PSをcN/114mmで表したとき、
PS/(M-DMDT)×100≧1(%)を満たす請求項1又は2記載のトイレットロール。
【請求項4】
前記トイレットペーパーの2プライのプライ剥離強度PSが1~30cN/114mmである請求項1又は2記載のトイレットロール。
【請求項5】
前記トイレットペーパーの2プライのJIS-P4501に基づくほぐれやすさが、20~70秒である請求項1又は2記載のトイレットロール。
【請求項6】
前記ミシン目を含まない前記トイレットペーパーの2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さB-DMDTが2.5~7.5cN/25mmである請求項1記載のトイレットロール。
【請求項7】
前記ミシン目を含まない前記トイレットペーパーの2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の横方向の引張強さB-DCDTが0.7~2.3cN/25mmである請求項6記載のトイレットロール。
【請求項8】
前記トイレットペーパーのロール裏面及びロール表面のTSAによるHF値の平均が65以上である請求項1又は2記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2プライに重ねられたトイレットペーパーを巻き取ったトイレットロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンボスを付して風合いを改善するとともに、コンパクトに巻き取って交換頻度を低減した長尺のトイレットロールが知られている。このような長尺トイレットロールは、保管場所、ロールの取り換え回数を減らすことができることから、各種開発されている。
ここで長尺トイレットロールをコンパクトにするには、巻密度を高く、紙厚を低くする必要があり、そのため、比容積が低くなるシングルエンボス方式が広く用いられている(特許文献1)。
【0003】
ところが、シングルエンボスはエンボスによってプライを接着させるため、エンボス深さが小さいとプライ剥がれが発生する場合がある。特に長尺トイレットロールの場合、巻径が過大とならないよう、エンボス深さを大きくできないので、この傾向が顕著となる。さらに長尺トイレットロールはロール重量が大きいためミシン目強度を高くすることが多いが、ミシン目でシートを裁断した際の反動が大きくなってプライが剥がれてしまうことがある。
そして、プライが剥がれると、プライ同士の重ね合わせたシートの裏面(ざらざらな面)が表出したり、清拭時に破れやすくなるといった問題がある。
【0004】
そこで、ダブルエンボスにすると、シングルエンボスよりもプライ剥がれを抑制することができる。ダブルエンボスでプライを接着する方法としてはエッジエンボスと接着剤を用いるものがある。
このうち、エッジエンボスは、エッジエンボスを施した箇所の紙厚が高くなってしまい、特に固巻きとした長尺ロールで、エッジエンボス部の巻径が非エッジエンボス部よりも大きくなってしまい、商品としての美粧性が損なわれてしまう。
【0005】
一方、接着剤を用いる方法として、一枚の薄葉紙のエンボスの凸部の頂部に接着剤を塗布して隣接する薄葉紙に接着する方法が知られている(特許文献2)。この技術では、シートのエンボスの凸面同士が対面するように配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-188342号公報
【特許文献2】特開2009-178454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、接着剤でダブルエンボスを形成する場合、シートが嵩高となるので、長尺トイレットロールを実現し難い。一方、エンボスの面積率を増やして接着する箇所を増やせば嵩高さが低下するが、接着部位が増えるために紙が固くなって風合いが低下したり、トイレに流す際のほぐれやすさが低下してしまう。逆に、接着部位を減らすとプライ剥がれが起きやすくなる。
従って本発明は、風合いが優れると共に、プライ剥がれを抑制しつつ、1ロール当りの巻長を長くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れたトイレットロールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、接着剤でダブルエンボスを形成する際、エンボス凸部に凹凸を設けることで、凸部における接着部位の面積を低減しつつも、各シートをしっかりと接着してプライ剥がれを抑制できることを見出した。そして、接着面積が低減するために紙が固くならず風合いも改善した。
【0009】
すなわち、本発明のトイレットロールは、第1シートと第2シートとが2プライに重ねられたトイレットペーパーをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、前記第1シート及び前記第2シートの坪量がそれぞれ11.0~18.0g/m2、前記トイレットペーパーの巻長が50~90m、巻径が110~130mmであり、前記第1シートは、前記第2シートに向かって突出する複数の凸部と、前記凸部の間で前記凸部よりも前記第1シートの外面側に位置する凹部とを有する第1エンボスを有し、前記凸部にはさらに凹凸が形成され、前記凹凸と前記第2シートとの間に介在する接着剤により、前記第1シートと前記第2シートとが接着されてなる。
【0010】
このトイレットロールによれば、凹凸により第1シートと第2シートとを接着させる接着剤の量を低減して接着部位を減らすことができ、紙が固くなって風合いが低下したり、トイレに流す際のほぐれやすさが低下することを抑制できる。
また、凹凸を介して凸部の全面に接着剤を配置できるので、例えば凸部自体の面積や幅を低減して接着剤の量を低減する場合に比べ、エンボスで表現できるデザインの制約が少なく、接着剤の量を低減しながら、様々なデザインを表現することが可能となる。
【0011】
本発明のトイレットロールにおいて、前記第2シートには第2エンボスが形成され、前記第2エンボスのエンボス高さが10~90μmであってもよい。
【0012】
本発明のトイレットロールにおいて、前記トイレットペーパーは幅方向に沿ってミシン目を有し、前記ミシン目の2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さM-DMDTが50~100cN/114mm、かつ、前記トイレットペーパーの2プライのプライ剥離強度PSをcN/114mmで表したとき、PS/(M-DMDT)×100≧1(%)を満たしてもよい。
【0013】
本発明のトイレットロールにおいて、前記トイレットペーパーの2プライのプライ剥離強度PSが1~30cN/114mmであってもよい。
【0014】
本発明のトイレットロールにおいて、前記トイレットペーパーの2プライのJIS-P4501に基づくほぐれやすさが、20~70秒であってもよい。
【0015】
本発明のトイレットロールにおいて、前記ミシン目を含まない前記トイレットペーパーの2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さB-DMDTが2.5~7.5cN/25mmであってもよい。
【0016】
本発明のトイレットロールにおいて、前記ミシン目を含まない前記トイレットペーパーの2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の横方向の引張強さB-DCDTが0.7~2.3cN/25mmであってもよい。
【0017】
本発明のトイレットロールにおいて、本発明のトイレットロールにおいて、前記トイレットペーパーのロール裏面及びロール表面のTSAによるHF値の平均が65以上であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、風合いが優れると共に、プライ剥がれを抑制しつつ、1ロール当りの巻長を長くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れたトイレットロールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るトイレットロールの外観を示す斜視図である。
【
図2】トイレットペーパーに設けられたエンボスを示す断面図である。
【
図3】第1シートのエンボスパターンのマイクロスコープ画像及び高さプロファイルを示す図である。
【
図5】第2エンボスの「輪郭曲線」Uの例を示す図である。
【
図7】第1シートのエンボスロールのロール形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の好ましい実施形態につき説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るトイレットロール10は、第1シート10Sと第2シート10T(
図2参照)とが2プライに重ねられたトイレットペーパー10xをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、第1シート10S及び第2シート10Tの坪量がそれぞれ11.0~18.0g/m
2、トイレットペーパーの巻長が50~90m、巻径が110~130mmであり、後述するエンボスを有する。
トイレットペーパー10xのロール外側の表面をロール表面(又はトイレットペーパーの表面)10aとし、ロール内側の表面をロール裏面(又はトイレットペーパーの裏面)10bとする。通常、ロール表面10a側のシートを第1シートとするのが好ましいが、これに限定されるわけではない。
【0021】
トイレットペーパー10xの第1シート10S及び第2シート10Tのそれぞれ(シート1枚当り)の坪量が11.0g/m2未満であると、風合いが劣る。坪量が18.0g/m2を超えると、嵩高になりすぎて長尺に巻いたときに巻径が130mを超えてトイレットペーパーホルダーに収まり難くなる。
1プライの坪量が11.5~17.5g/m2であると好ましく、12.0~16.5g/m2であるとさらに好ましい。
トイレットペーパー10xの坪量を上記範囲に調整する方法としては、原紙ウェブのカレンダー条件(カレンダー処理後の紙厚及び比容積、カレンダー処理前後の紙厚差)及びエンボス条件を規定する。
【0022】
トイレットロール10の巻長が50m未満であると、1ロール当りの巻長が短くなり、保管するロール数が増えるため省スペースが図れなかったり、交換頻度が増大する。ロールの巻長が90mを超えるものは、巻径が130mmを超えてしまい、トイレットペーパーホルダー等に収まり難くなる。また、巻径130mm以下に維持しようとすると、エンボス深さを小さくする必要が生じてプライ剥がれが生じる。
巻長が60~85mであると好ましく、70~80mであるとさらに好ましい。
【0023】
巻径DRが110mm未満であるものは、ロール製造時に固巻きとするためにエンボスを潰しながら巻き取る結果、シートに荷重が掛かってエンボスの接着部位が剥離し、プライ剥がれが発生し、巻長も50m未満に短くなる。巻径DRが130mmを超えると、トイレットペーパーホルダー等に収まり難くなり、コンパクトでなくなる。
巻径DRは、好ましくは114~125mm、より好ましくは116~122mmである。
【0024】
<エンボス>
図2に示すように、トイレットペーパー10xを構成する第1シート10Sは、第2シート10Tに向かって突出する複数の凸部10rと、凸部10rの間で前記凸部よりも前記第1シートの外面側に位置する凹部10pとを有する第1エンボス10E1を有する。
なお、本発明のトイレットペーパー10xは、ダブルエンボスであり、重ね合わせた各シートの内側同士のエンボスが凸となり、両外側は凹になる。これにより、表面性が悪い凸部が内側となることで、肌に触れる外側は柔らかさが向上する。
従って、
図2において、第1シート10Sのうち、第2シート10Tに対向する側のエンボス突出部位を凸部10rとし、その間にあって第1シート10Sの外面側に位置する部位を凹部10pとする。
【0025】
凸部10rにはさらに凹凸10cが形成され、凹凸10cと第2シート10Tとの間に介在する接着剤(糊)6により、第1シート10Sと第2シート10Tとが接着されている。
接着剤6としては、例えば水溶性の高分子が使用でき、具体的にはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、澱粉、PVAなどであるが、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0026】
なお、本例では、第2シート10Tは第2エンボス10E2を有すると共に、第1シート10Sの凹部10pにも凹凸状の第3エンボス10E3が形成されているが、これらは必須ではない。
但し、第2エンボス10E2や第3エンボス10E3を設けると、風合いがさらに向上するので好ましい。
【0027】
ここで、第1シート10Sのうち、第2シート10Tの対向面から見て凸状となる凸部10rに接着剤6を付着させ、第2シート10Tと積層することで、2プライのトイレットペーパー10xを形成することができるが、接着剤6の付着面である凸部10rに凹凸10cが形成されているため、接着剤6が凸部10rの全面でなく一部にのみ付着する。
これにより、第1シート10Sと第2シート10Tとを接着させる接着剤6の量を低減して接着部位を減らすことができ、紙が固くなって風合いが低下したり、トイレに流す際のほぐれやすさが低下することを抑制できる。
また、凹凸10cを介して凸部10rの全面に接着剤6を配置できるので、例えば凸部10r自体の面積や幅を低減して接着剤6の量を低減する場合に比べ、エンボスで表現できるデザインの制約が少なく、接着剤の量を低減しながら、様々なデザインを表現することが可能となる。
【0028】
凸部10rの平面形状は、例えば線状、又は当該線の両端が閉じて閉空間を構成する形状、中実の形状が挙げられる。
ここで、線の両端が閉じて閉空間を構成する形状とは、例えば円や多角形の輪郭が挙げられる。
中実の形状とは、円、多角形、不定形が挙げられる。
【0029】
ここで、エンボスの凹部10の識別は、マイクロスコープを用いてエンボスパターンの高さが低い部分の領域として区別できる。
【0030】
マイクロスコープとしては、株式会社KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。なお、測定倍率と視野面積は、求めるエンボスパターンの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0031】
まず、
図3に示すようにして、第1シート10Sのエンボスパターンの高さプロファイルを求める。
図3(a)は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、トイレットペーパー10x表面の高さが濃淡で表されることがわかる。
図3(a)の濃色部位が第1シート10Sの表側から見て深い(高さの低い)部位を示し、周囲よりも濃色部位を凸部10rとみなせばよい。
図3(a)では、画面中央に上下に延びる線状の凸部10rと、右下には円の輪郭の一部をなす凸部10rがある。
【0032】
また、第1シート10Sのうち、凸部10rの間の部位に凹部10pが形成されている。
さらに、凸部10rの内部には、さらに濃色の点状の部位が存在し、これが凹凸10cを形成する。また、凹部10pの内部には、淡色の点状の部位が存在し、これがシート外面から見て凹状の第3エンボス10E3を形成する。
【0033】
さらに、以下のように凸部10rの領域をさらに詳細に決定することもできる。
図3(a)から深い部分を横切る線分A-Bを引くと、
図3(b)に示すようにエンボスパターンの高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。ここで、X-Y平面画像の色の濃淡で、エンボスパターンの凸部と凹部がわかるので、凹部を横切るように線分A-Bを決めればよい。
【0034】
ここで、
図3(b)の高さプロファイルは、実際のトイレットペーパー10xの第1シート10S表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Tであるが、ノイズ(トイレットペーパー10xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出にあたっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。そこで、高さプロファイルの断面曲線Tから「輪郭曲線」Uを計算する。
なお、
図3(b)は、実際には高さプロファイルを輪郭曲線Uに変換したものである。
【0035】
なお、「輪郭曲線」Uは、断面曲線Tからλc:800μm(ただし、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。なお、λcを、エンボスパターンの幅(
図3(b)の下に凸の曲率極大点R3とR5の間隔:これを、エンボスピッチという)以上に設定すると、ピークをノイズと認識してしまう可能性があるので、λcをエンボスピッチ未満とする。例えば、エンボス幅が800μm以下の場合、例えばλc:250μmに設定する。
【0036】
そして、線分A-Bにおける「輪郭曲線」Uのうち、高さの高い淡色部分(凹部10p)からエンボス内側の深い部分に向かって上に凸となる2つの曲率極大点P1,P2を求める。そして、曲率極大点P1,P2にそれぞれ隣接し、下に凸の曲率極大点であるR3とR5を取得する。
そして、マイクロスコープの視野中で、線分A-Bをスキャンしてゆき、R3とR5を複数個取得する。これらR3とR5を繋ぐと、凸部10rの輪郭を正確に求めることができる。
【0037】
凹凸10cも「輪郭曲線」Uからさらに正確に求めることができる。
凹凸の有無は、線分A-Bに沿って曲率極大点R3とR5の間に、曲率極大点が1つ以上あるか否かで識別できる。例えば、
図3(b)では、R3とR5の間に、R3及びR5よりも深さが小さく(深さがプラス側に近く、)上に凸の曲率極大点R4が存在するので、凹凸であるとみなす。凹凸10cを構成する曲率極大点は下に凸でもよく、下に凸と上に凸の曲率極大点が共に存在してもよい。
また、「輪郭曲線」Uにて、曲率極大点P1,P2よりも高さの高い淡色部分で下に凸の曲率極大点R1,R2、R6が見られるが、これらは第3エンボス10E3とみなすことができる。
【0038】
なお、第2シート10Tに第2エンボス10E2を設けた場合、第2エンボス10E2の大きさが凹凸10cに比べて大き過ぎると、凹凸10cが第2シート10Tに接し難くなるおそれがある。
そこで、凸部10rの幅Wよりも第2エンボス10E2のエンボス径D2が小さいと好ましい。
凸部10rの幅Wは、
図3(a)のような線状や、線の両端が閉じて閉空間である場合は、
図3(a)の視野中で上述のように線分A-BをスキャンしてR3とR5の組を10個取得し、その平均値とすればよい。
また、凸部10rが中実の形状の場合は、円相当径をWとすればよい。
【0039】
エンボス径D2は、第2シート10Tの表面を画像解析し、所定の閾値以下の暗い部分をエンボスの凹部とみなし、その面積を測定して得られる。具体的には、トイレットロールの最外巻のトイレットペーパー10xの端縁から、トイレットロールの巻長20%に相当する所定の位置にある、第2シート10Tの表面を市販のイメージスキャナ(例えば、セイコーエプソン株式会社製GT-X770)で、画像データとして取り込み、所定の画像解析装置(例えば、日本製紙ユニテック株式会社製の「きょう雑物測定装置(EasyScan)」)により分解能800dpi、スキャン面積4cm×4cmの条件で、所定の閾値以下の暗部の面積及び総面積率を求める。
ここで、上記閾値を、黒を0ビット、白を255ビットとしたときの白側に近い98%に設定して画像処理し、得られたそれぞれの暗部(陰部)を粒子(きょう雑物)とみなし、その粒径(円相当径)(μm)を計測しD2とする。
【0040】
測定は、サンプルにシワやミシン目、折り目等が入らないようにしてスキャナ光が進む方向の一辺に、トイレットペーパー10xの抄紙方向の一辺を沿わせて設置し、画像データを取り込み、画像解析で二値化し、第2エンボス10E2に相当する明度の部位の面積を算出する。そして、視野中の各第2エンボス10E2の面積を平均し円相当径をD2とする。
なお、トイレットペーパー10xのサンプルにミシン目や折り目が入っている等、4cm×4cmのスキャン面積(0.0016m2)を確保できない場合は、一度で測定する測定面積を小さくしてもよいが、この場合は測定面積が最低0.0016m2となるように、測定箇所を増やす。例えば、2cm×4cm(0.0008m2)を2箇所測定すれば、測定面積は0.0016m2となる。
【0041】
幅Wは0.7~2.0mmであると好ましく、0.8~1.8mmであるとさらに好ましく、0.9~1.6mmであると最も好ましい。
エンボス径D2は0.3~1.0mmであると好ましく、0.4~0.9mmであるとさらに好ましく、0.5~0.8mmであると最も好ましい。
第2エンボス10E2の形状は、例えば中実の円、楕円、ひし形が挙げられる。
【0042】
第2エンボス10E2のエンボス高さが10~90μmであると好ましい。
エンボス高さが10μm未満であると風合いが劣る場合があり、90μmを超えるとトイレットペーパー10xが嵩高になって巻径が130mmを超えてしまい、コンパクトになり難い場合がある。
エンボス高さが15~80μmであるとより好ましく、20~70μmであると最も好ましい。
【0043】
エンボス高さは、上述したマイクロスコープを用いて第2エンボス10E2の「輪郭曲線」Uを算出して求める。
まず、
図4に示すように、第2エンボス10E2のエンボスパターンの周縁frの最長部aを求める。そして、
図3(a)のようなマイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイル上で、最長部aを横切る線分A-Bを引き、
図3(b)と同様な高さ(測定断面曲線)プロファイルを得て、「輪郭曲線」Uに変換する。
【0044】
図5は、第2エンボス10E2の「輪郭曲線」Uの例を示す。この「輪郭曲線」Uのうち、エンボス内側に向かって上に凸となる2つの曲率極大点P1,P2と、曲率極大点P1,P2で挟まれる領域の最小値を求め、最小値Minとする。さらに、曲率極大点P1,P2の値の平均値を最大値Maxとする。
このようにして、エンボスパターンの深さ(エンボス高さ)=最大値Max-最小値Minとする。
【0045】
同様にして、最長部aに垂直な方向での最長部b(
図4参照)についてもエンボスパターンの深さを測定し、最長部aとbの各エンボスパターンの深さのうち、大きい方の値をエンボスパターンの深さとして採用する。以上の測定を、任意の10個のエンボスパターンについて行い、その平均値を採用する。最長部aと最長部bは、上記したトイレットペーパー10xの10個のエンボスパターンについての個々のa、bの値を平均した値を用いる。
【0046】
第2エンボス10E2の個数は21個/cm2以上90個/cm2以下であることが好ましく、36個/cm2以上75個/cm2以下であることがより好ましく、51個/cm2以上65個/cm2以下であることが更に好ましい。
上記範囲である場合、巻長と巻径やTSAの上記各数値を調整しやすい。
個数の測定は、上記した径D2の測定に供した画像データからカウントする。
【0047】
第1シート10S側の表面の、単位面積当たりの第1エンボス10E1の総面積率は、2~15%が好ましく、3~12%がより好ましく、4~10%がさらに好ましい。
総面積率が2%未満の場合、接着剤による接着面積が小さくなり、プライ剥がれが生じることがある。総面積率が15%を超えると、風合いが悪くなることがある。
【0048】
総面積率は、上記したエンボス径D2の測定と同様、上記イメージスキャナ及び画像解析装置にて第1シート10Sの表面を画像解析し、所定の閾値以下の暗い部分をエンボスの凹部とみなし、その面積を測定して得られる。
ここで、第1エンボス10E1の各エンボスの面積を積算し、画像面積1m2当たりの暗部(凹部)の総面積率に換算した(例えば、測定面積が0.0016m2、エンボスを表す粒子の積算面積が200mm2の場合、総面積率(%)は200mm2÷0.0016m2×100=12.5%となる)。
【0049】
本発明のトイレットロールにおいて、トイレットペーパーは幅方向に沿ってミシン目を有し、ミシン目の2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さM-DMDT(Dry Machine Direction Tensile Strength)が50~100cN/114mm、かつ、トイレットペーパーの2プライのプライ剥離強度PSをcN/114mmで表したとき、PS/(M-DMDT)×100≧1(%)を満たすことが好ましい。
PS/(M-DMDT)×100が1%未満であると、プライ剥離強度PSがミシン目強度に比べて小さくなりすぎ、ミシン目からトイレットペーパーを切断して使用時にプライが剥がれてしまう場合がある。
また、M-DMDTが50cN/114mm未満であると、ミシン目強度が小さすぎ、ロール製造時にミシン目で断紙してしまい固巻きにできない場合がある。一方、M-DMDTが100cN/114mmを超えると、ミシン目強度が高すぎ、ミシン目からトイレットペーパーを切断した際の反動でプライが剥がれやすくなる。
【0050】
なお、トイレットペーパーの抄紙の流れ方向を「縦方向」とし、流れ方向に直角な方向を「横方向」とする。
また、プライ剥離強度の測定方法は、JIS P 8113の引張試験方法に準じて行う。その中でJIS P 8111に規定された標準条件下で、縦方向に幅114mmに裁断するものとする。裁断した後、試料を縦方向に剥離し、剥離試験用ロードセル(STB-1255S、株式会社エー・アンド・デイ社製)に対して、剥離した一方を上側のつかみ具に、他方を下側のつかみ具にそれぞれ固定し、その間隔を8cmとする。次に、垂直方向に100mm/分の速度で引張り、さらに5cm剥離(30秒間)させて、その時の強度を測定する。プライ剥離強度は0.01秒ごとに測定し、プライ剥離時間30秒の内、6秒から24秒までの18秒間(合計1800点)の測定値の平均値をプライ剥離強度と定義する。
トイレットロールのロール幅が114mmに満たない場合、PS、M-DMDT、及び以下のB-DMDT、B-DCDTのいずれについても、測定幅から比例計算で114mmに換算する。
【0051】
M-DMDTが60~90cN/114m、かつPS/(M-DMDT)×100≧1.3(%)であるとより好ましく、M-DMDTが70~80cN/114m、かつPS/(M-DMDT)×100≧1.5(%)であるとさらに好ましい。
【0052】
トイレットペーパーの2プライのプライ剥離強度PSが1~30cN/114mmであると好ましい。
PSが1cN/114mm未満であると、使用時にプライが剥がれてしまう場合がある。PSが30cN/114mmを超えるものは、プライを接着する際の接着剤の付着量が多くなった結果であるため、風合いが低下する場合がある。
PSが1~25cN/114mmであるとより好ましく、3~20cN/114mmであるとさらに好ましい。
【0053】
トイレットペーパーの2プライのJIS-P4501に基づくほぐれやすさが、20~70秒であることが好ましい。
ほぐれやすさが20秒未満であると、水にぬれた際にプライが剥がれて皮膚に張り付きやすく、70秒を超えるとシートがほぐれ難い(水解性に劣る)傾向にある。
ほぐれやすさが25~65秒であるとより好ましく、30~60秒であるとさらに好ましい。
【0054】
ミシン目を含まないトイレットペーパーの2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さB-DMDTが2.5~7.5cN/25mmであることが好ましい。
B-DMDTが2.5cN/25mm未満であると、ロール製造の巻き取り時に紙が切れて、固く巻くことが困難な場合がある。B-DMDTが7.5cN/25mmを超えると、風合いが劣る場合がある。
B-DMDTが3.0~6.0cN/25mmであるとより好ましく、3.5~4.5cN/25mmであるとさらに好ましい。
【0055】
ミシン目を含まないトイレットペーパーの2プライのJIS-P8113に基づく乾燥時の横方向の引張強さB-DCDT(Dry Cross Direction Tensile Strength)が0.7~2.3cN/25mmであることが好ましい。
B-DCDTが0.7cN/25mm未満であると、ロール製造の巻き取り時に紙が切れて、固く巻くことが困難な場合がある。B-DCDTが2.3cN/25mmを超えると、風合いが劣る場合がある。
B-DCDTが0.8~1.8cN/25mmであるとより好ましく、1.0~1.5cN/25mmであるとさらに好ましい。
【0056】
トイレットペーパーのロール裏面及び反対面であるロール表面のTSAによるHF値の平均が65以上であることが好ましい。
HF値の平均が65未満であると、風合いが劣ることがある。
HF値の平均が68以上であるとより好ましく、70以上であるとさらに好ましい。
【0057】
HF(ハンドフィール)値)は、TSA(ティッシュソフトネス測定装置:emtec社製;Tissue Softness Analyzer)により測定する。
ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したHF値は、装置のアルゴリズムをTPIIに設定し、直径が約113mmの円形に加工したサンプルを用いて測定する。これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報に詳細に記載されている。ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用した測定方法については、上記の特許文献を参照することができる。
なお、シートの寸法(幅)が113mm未満の場合、113mmの円形に加工できないので、その代わりに長さ113mm×幅106mmの長方形に切り出して測定してもよい。
【0058】
なお、HF値が算出される際、TSA上のソフトウェアにて、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)、及び6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)が自動的に取得される。
第1シート10S側の表面のTS7が8~20dBV2rmsであると好ましく、9~18dBV2rmsであるとより好ましく、10~17dBV2rmsでさらに好ましい。
第1シート10S側の表面のTS750が15~45dBV2rmsであると好ましく、18~40BV2rmsであるとより好ましく、20~35dBV2rmsでさらに好ましい。
第2シート10T側の表面のTS7が10~30dBV2rmsであると好ましく、11~28dBV2rmsであるとより好ましく、12~26dBV2rmsでさらに好ましい。
第2シート10T側の表面のTS750が15~45dBV2rmsであると好ましく、18~40BV2rmsであるとより好ましく、20~35dBV2rmsでさらに好ましい。
TS750、TS7を上記の範囲にすることで、触感を良好にでき、生産時に断紙しにくくなる。
【0059】
[吸水度]
トイレットペーパーの(2枚重ねのシート)の旧JIS S3104に基づく吸水度は、7.0秒以下が好ましく、5.0秒以下がより好ましく、3.0秒以下が更に好ましい。
吸水度は、短時間であることが好ましく、上記時間の範囲であることにより、吸水性が良好に維持される。なお、水を滴下する際は、トイレットペーパーの表面側に滴下する。
【0060】
本発明のトイレットロールの巻密度が1.1~1.8m/cm
2であることが好ましく、1.2~1.7m/cm
2がより好ましく、1.3~1.6m/cm
2が更に好ましい。
巻密度が1.1m/cm
2未満であると、巻径が130mmを超えてしまい、トイレットペーパーホルダー等に収まり難くコンパクトでない傾向にある。巻密度が1.8m/cm
2を超えるものは、エンボスが潰れて風合いが劣る傾向にある。
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻径DR)部分の断面積}-(コア外径部分の断面積)で表される。コア外径DI(
図1参照)は、ロールの中心孔の直径である。
トイレットロールの巻密度を上記範囲に調整する方法としては、坪量及び紙厚を所定範囲に調整しつつ、ロールワインダー(特にサーフェイス式)でロールを巻く強さを調整する方法がある。
【0061】
[コア外径]
本発明のトイレットロールの芯の外径である、コア外径DIは、35~45mmであることが好ましく、37~43mmであることがより好ましく、38~40mmであることが更に好ましい。コア外径DIが上記の範囲のものであることにより、トイレットロールがホルダーにおさまりつつ、巻径と巻長を適正に調整しやすい。
【0062】
<トイレットペーパー>
トイレットペーパー10xは木材パルプ100質量%からなるものであってもよく、古紙パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプ、液体飲料用紙パック古紙等を含んでよいが、品質の観点から50%以下とすることが好ましい。目標とする品質を得るためには、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上45質量%以下であることが更に好ましい。また、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が40質量%以上90質量%以下であることが好ましく、50質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0063】
なお、上記のLBKPとしては、ユーカリ属グランディス及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属の材種から形成されるパルプが好ましい。
【0064】
なお、トイレットペーパー10xに適正な強度を確保するために、通常の手段で原料配合し、パルプ繊維の叩解処理を行うことにより強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解としては、市販のバージンパルプに対して、JIS P 8121で測定されるカナダ標準ろ水度で、叩解前後におけるろ水度の差を0ml以上150ml以下、より好ましくは10ml以上100ml以下、更に好ましくは20ml以上70ml以下に低減させる叩解処理を挙げることができる。
【0065】
トイレットペーパー10xは、紙料にバージン系原料を使用する場合は、一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹晒クラフトパルプと広葉樹晒クラフトパルプを特定の範囲で配合して抄紙することができる。紙料への添加剤としては最終製品の要求品質に応じ、デボンダー柔軟剤を含めた柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、乾燥紙力増強剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、吸水性向上剤等を用いることができる。湿潤紙力増強剤は使用しないことが好ましい。トイレットペーパー10xの紙料に古紙原料を使用する場合も、上記バージン系の場合と同様の処理を行う。
【0066】
[トイレットペーパーの製造方法]
トイレットペーパー10xは、例えば(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理(
図6参照)、(3)ロール巻取り加工の順で製造することができる。なお、プライアップの際には、少なくとも第1シート10Sをエンボス処理した後、
図2に示すように、第1シート10Sの凸部10rを第2シート10Tに向けて積層して2プライにする。また、2プライ積層する際には、プライボンドグルー6(接着剤、糊)を凸部10rに塗布して行う。
【0067】
図7は、
図6における第1シート10Sのエンボスロール3のロール形状を示す。
エンボスロール3の外面には、
図7に示す円の輪郭状の凸パターン3p1が多数分散して設けられ、凸パターン3p1で囲まれる内部には細かい凹凸パターン3p2が設けられている。
そして、このエンボスロール3と、対向するゴムロール4との間に第1シート10Sを挟み込んでエンボス処理することで、第1シート10Sのうち凸パターン3p1に対応する部位が凸部10rとなり、凹凸パターン3p2に対応する部位が凹部10pとなる。
さらに、凸パターン3p1は細かい丸の突起から構成されているため、第1シート10Sのうち凸部10rの内部には細かい凹凸10cが形成されることとなる。
【0068】
エンボスパターンの深さは、
図6に示すようにエンボス加工を施す工程において、エンボスロール3と対向するゴムロール4(又はロール31、41)のニップ幅を適宜調整して制御することができる。ニップ幅は、ロールの特性によっても異なるが、20mm以上50mm以下であることが好ましく、25mm以上45mm以下であることがより好ましく、30mm以上40mm以下であることが更に好ましい。ニップ幅を上記範囲に調整することにより、エンボスパターンの表裏差が適切に維持されるとともに、紙厚とシートの柔らかさが好適に維持される。ニップ幅は、カーボン紙を用いて測定することができる。測定方法としては、まず、エンボスロール3のニップを逃がし、カーボン紙と一般的なコピー用紙を重ねてセットする。次に、エンボスロール3にニップをかける。その後、ニップを逃がし、カーボン紙とコピー用紙を取り外す。エンボスロール3でニップがかかっていた部分のカーボン紙の色がコピー用紙に転写されるので、ニップ幅を測定することができる。なお、エンボスロール3の材質は、金属であることが好ましい。エンボスロール3の凹凸が深ければニップ幅を狭くし、エンボスロール3の凹凸が浅ければニップ幅を広くすることで、エンボスパターンの深さを調整できる。
【0069】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例0070】
NBKP及びLBKPの含有率が、20:80(質量比)となるように配合し、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理(
図6参照)、(3)ロール巻取り加工の工程を経て、各実施例及び比較例のトイレットペーパー及びトイレットロールを製造した。
【0071】
以下の評価を行った。
【0072】
坪量:JIS P8124に基づいて測定し、シート1枚当たりに換算した。
【0073】
乾燥時の縦方向引張強さDMDTと乾燥時の横方向引張強さDCDT:JIS P 8113に基づいて、2プライに積層したトイレットペーパーにつき、破断までの最大荷重をgf/25mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。
【0074】
ロールの巻直径DR、コア外径DI:ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
【0075】
巻密度、プライ剥離強度、エンボスパターンの深さ(エンボス高さ)、個数および総面積率、柔らかさTS7、滑らかさTS750、HFは上述の方法で測定した。
【0076】
巻長:トイレットロールのミシン目とミシン目の間のシートについて、10シート分の長さを実測した。その後、ロールのシート数を実測し、巻長は10シート分の長さとシート数から比例計算で求めた。例えば、10シート分の長さが1.14m、シート数が316シートの場合、1.14m×(316/10)=36mとなる。
【0077】
官能評価は、モニター20人によって行った。評価基準は5点満点で行った。評価基準が3点以上(◎、〇、△)であれば良好である。
なお、上記の測定は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0078】
得られた結果を表1~表3に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
表1~表3から明らかなように、坪量、トイレットロールの巻長、巻径、第1シートのエンボスが所定の範囲である各実施例の場合、風合いが優れると共に、プライ剥がれを抑制しつつ、1ロール当りの巻長を長くすることができた。
【0083】
一方、1プライの坪量が11.0g/m2未満とした比較例1の場合、風合いが劣った。
1プライの坪量が18.0g/m2を超えた分、巻長を50m未満とした比較例2の場合、長巻でないためにロールの交換頻度が増大した。
巻径が110m未満の比較例3の場合、プライ剥がれが生じた。
巻径が130mを超えた比較例4、5、9の場合、トイレットペーパーホルダーに収まり難くなり、コンパクト性に劣った。
巻長が50m未満の比較例6~8、10の場合、長巻でないためにロールの交換頻度が増大した。