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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133963
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】切断装置および切断方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20240926BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044006
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】志賀 弘明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健治
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕明
(72)【発明者】
【氏名】土肥 かおり
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】主桁上に接合されたコンクリート床版の下面における水平面の有無やハンチ部の高さに関わらず、当該コンクリート床版の下面側から、当該コンクリート床版を前記主桁から切断することができる切断装置および切断方法を提供する。
【解決手段】主桁80から、該主桁80上に接合されたコンクリート床版82を切断するための切断装置10であって、動力により回転するソーブレード22を備える切断部20と、切断部20を支持する架台12と、を有し、架台12は主桁80に取り付けられ、切断部20のソーブレード22は、コンクリート床版82の下面側から、水平面に対して所定角度でコンクリート床版82と交差して、該コンクリート床版82を切断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主桁から、該主桁上に接合されたコンクリート床版を切断するための切断装置であって、
動力により回転するソーブレードを備える切断部と、
前記切断部を支持する架台と、
を有し、
前記架台は前記主桁に取り付けられ、前記切断部の前記ソーブレードは、前記コンクリート床版の下面側から、水平面に対して所定角度で前記コンクリート床版と交差して、該コンクリート床版を切断することを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記ソーブレードの水平面に対する前記所定角度を調整する角度調整機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記ソーブレードの水平面に対する前記所定角度を一定に保った状態で、該ソーブレードを切断対象物に対して近づく方向および遠ざかる方向に移動させることができる移動機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項4】
マグネットを備えており、
前記架台は、前記マグネットにより前記主桁に着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項5】
前記マグネットは前記架台に組み込まれていることを特徴とする請求項4に記載の切断装置。
【請求項6】
前記切断装置は、前記主桁の長手方向に沿うように前記主桁に取り付けられるギヤレールを備え、
前記架台は、前記ギヤレールに噛み合って前記ギヤレール上を移動するギヤを備え、
前記架台は、前記ギヤレールに沿って移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項7】
前記架台は複数段に分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項8】
前記主桁の上フランジには、前記主桁と前記コンクリート床版とを接合させるずれ止めが設けられており、
前記ソーブレードが面部材として広がる延長方向が前記ずれ止めと交差して、前記ソーブレードが前記ずれ止めを前記コンクリート床版と共に切断することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の切断装置。
【請求項9】
主桁から、該主桁上に接合されたコンクリート床版を切断するための切断方法であって、
前記コンクリート床版の下面側から、ソーブレードが、水平面に対して所定角度で前記コンクリート床版と交差して、該コンクリート床版を切断する切断工程を有することを特徴とする切断方法。
【請求項10】
前記切断工程では、第1の時間帯に前記主桁の一方の側から切断し、前記第1の時間帯とは重ならない第2の時間帯に前記主桁の他方の側から切断することを特徴とする請求項9に記載の切断方法。
【請求項11】
前記切断工程では、前記主桁の長手方向における位置が重なる所定の位置において、前記ソーブレードが重ならないように前記主桁の両方の側から同時に切断することを特徴とする請求項9に記載の切断方法。
【請求項12】
前記切断工程では、前記主桁の両方の側から、同時に切断するが、前記主桁の長手方向における位置が重ならないように当該切断を行うことを特徴とする請求項9に記載の切断方法。
【請求項13】
前記切断工程では、前記主桁の上フランジに設けられたずれ止めを、前記コンクリート床版と共に切断することを特徴とする請求項9~12のいずれかに記載の切断方法。
【請求項14】
前記主桁の上フランジには、その幅方向に、前記主桁と前記コンクリート床版とを接合させるずれ止めが複数本設けられており、
前記切断工程では、前記上フランジの幅方向に複数本設けられた前記ずれ止めのうち、一部のずれ止めを前記コンクリート床版と共に切断することを特徴とする請求項9に記載の切断方法。
【請求項15】
前記主桁の上フランジには、その幅方向に、前記主桁と前記コンクリート床版とを接合させるずれ止めが3本以上設けられており、
前記切断工程では、前記上フランジの幅方向に3本以上設けられた前記ずれ止めのうち、前記上フランジの幅方向の端部以外の1本を残して前記コンクリート床版と共に切断することを特徴とする請求項9に記載の切断方法。
【請求項16】
前記主桁の上フランジには、その幅方向に、前記主桁と前記コンクリート床版とを接合させるずれ止めが複数本設けられており、
前記切断工程では、前記上フランジの幅方向に複数本設けられた前記ずれ止めの全てを、前記主桁の一方の側のみから、前記コンクリート床版と共に切断することを特徴とする請求項9に記載の切断方法。
【請求項17】
前記切断工程後、前記コンクリート床版を上昇させて該コンクリート床版と前記主桁とを引き離す引き離し工程を有することを特徴とする請求項9~12、14~16のいずれかに記載の切断方法。
【請求項18】
請求項6に記載された切断装置を用いて、主桁から、該主桁上に接合されたコンクリート床版を切断するための切断方法であって、
前記主桁の長手方向における所定の位置で、前記コンクリート床版の下面側から、前記切断装置の前記ソーブレードが、水平面に対して所定角度で前記コンクリート床版と交差して、該コンクリート床版を切断する切断工程と、
前記切断工程の後、前記主桁の長手方向における次の切断位置まで、前記ギヤレールに沿って前記切断装置を移動させる移動工程と、
を有することを特徴とする切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置および切断方法に関し、詳細には、主桁と該主桁上のコンクリート床版との接合を切断する切断装置および切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設コンクリート床版を新設の床版に取り替える事例が増加しているが、既設コンクリート床版を新設の床版に取り替える際には、まず既設コンクリート床版を撤去することが必要である。
【0003】
主桁の上フランジ上に多くのずれ止めが配置されている合成桁の既設床版を撤去する場合、一般的には、主桁間の床版を切断撤去した後に、主桁の上フランジ上に残った床版コンクリートをハンドブレーカー等により撤去し、ずれ止めを切断撤去している(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、この工法では全工程にわたって橋面での作業を伴うため、通行止め等の交通規制をする期間が長くなる。また、主桁上に残った床版コンクリートをハンドブレーカー等で撤去する際に主桁に損傷を与えるおそれがあり、コンクリート殻も多く発生する。また、主桁上のコンクリートを撤去した後にずれ止めを切断撤去するため、手間がかかり、この点からも交通規制をする期間が長くなる。
【0005】
これに対して、特許文献1には、切断対象のコンクリート床版の下でワイヤーソーを使用して、橋梁の主桁上に設置されたコンクリート床版における前記主桁との接合部を略水平切断する切断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-21227号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】泉谷智之、庄谷英男、草島秀幸、栗山浩、「新打尾橋床版補修工事の施工報告」、川田技報、vol.34、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている切断装置200では、図10に示されるように、コンクリート床版210の水平な床版下面210Aに切断装置200の吊り架台202を取り付け、ハンチ部212に設けた挿通孔212Aにワイヤーソー204を挿通させ、複数のプーリー206にワイヤーソー204を掛け回す。そして、駆動部208Aを介して駆動プーリー208を駆動させて、ワイヤーソー204を高速回転させ、ワイヤーソー204が掛け回された複数のプーリー206を水平回転させ、コンクリート床版210における主桁214との接合部であるハンチ部212を、橋軸方向に沿って床版下面210Aと平行な方向にワイヤーソー204で水平切断する。このため、例えば次のa、bのような場合には、特許文献1に開示されている切断装置200によって、コンクリート床版を主桁から切り離すことは困難である。
【0009】
a)例えば図11に示すような、下面が傾斜面であって水平面(切断装置200を取り付けることができるような水平面)のない張出片持ち部220のような床版部位を主桁222から切り離す場合。
【0010】
b)主桁との接合部であるハンチ部の高さhがワイヤーソーの径φと同程度以下(h≦φ)に低い床版の場合(ハンチ部の高さhがワイヤーソーの径φと同程度の場合には、ワイヤーソー204による切断時に、主桁214の上フランジが損傷を受ける可能性があるので、ハンチ部の高さhはワイヤーソーの径φよりもある程度以上大きいことが必要と考えられる。なお、ハンチ部がない場合はh=0でありh≦φとなる。)。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、主桁上に接合されたコンクリート床版の下面における水平面の有無やハンチ部の高さに関わらず、当該コンクリート床版の下面側から、当該コンクリート床版を前記主桁から切断することができる切断装置および切断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記課題を解決する発明であり、以下のような切断装置および切断方法である。
【0013】
即ち、本発明に係る切断装置の第1の態様は、主桁から、該主桁上に接合されたコンクリート床版を切断するための切断装置であって、動力により回転するソーブレードを備える切断部と、前記切断部を支持する架台と、を有し、前記架台は前記主桁に取り付けられ、前記切断部の前記ソーブレードは、前記コンクリート床版の下面側から、水平面に対して所定角度で前記コンクリート床版と交差して、該コンクリート床版を切断することを特徴とする切断装置である。
【0014】
ここで、本願において、「コンクリート床版を切断する」とは、当該コンクリート床版を貫通して切断する場合だけでなく、当該コンクリート床版を貫通せずに切断する場合(当該コンクリート床版の一部のみを分離させて完全には分離させない場合)も含むものとする。
【0015】
また、コンクリート床版の下面とは、当該コンクリート床版において下方を向いている面のことであり、水平面および傾斜面のどちらも含み、また、ハンチ部における、下方を向いた傾斜面も含むものとする。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0016】
また、本願において、ソーブレードとは、回転して対象物を切断する円盤状の切断刃のことである。
【0017】
また、本願において、前記ソーブレードが「水平面に対して所定角度で前記コンクリート床版と交差」における「水平面に対して所定角度」には、前記ソーブレードが前記コンクリート床版と交差するのであれば、水平面に対して平行な場合も含まれ、その場合には「水平面に対して所定角度」は0°となる。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0018】
本発明に係る切断装置の第2の態様は、前記第1の態様の切断装置において、前記ソーブレードの水平面に対する前記所定角度を調整する角度調整機構を備えている、ように構成されている態様である。
【0019】
本発明に係る切断装置の第3の態様は、前記第1または前記第2の態様のいずれかの態様の切断装置において、前記ソーブレードの水平面に対する前記所定角度を一定に保った状態で、該ソーブレードを切断対象物に対して近づく方向および遠ざかる方向に移動させることができる移動機構を備えている、ように構成されている態様である。
【0020】
本発明に係る切断装置の第4の態様は、前記第1~前記第3の態様のいずれかの態様の切断装置において、マグネットを備えており、前記架台は、前記マグネットにより前記主桁に対して着脱可能に取り付けられる、ように構成されている態様である。
【0021】
本発明に係る切断装置の第5の態様は、前記第4の態様の切断装置において、前記マグネットは前記架台に組み込まれている、ように構成されている態様である。
【0022】
本発明に係る切断装置の第6の態様は、前記第1~前記第5の態様のいずれかの態様の切断装置において、前記切断装置は、前記主桁の長手方向に沿うように前記主桁に取り付けられるギヤレールを備え、前記架台は、前記ギヤレールに噛み合って前記ギヤレール上を移動するギヤを備え、前記架台は、前記ギヤレールに沿って移動可能である、ように構成されている態様である。
【0023】
ここで、前記ギヤレールが「前記主桁に取り付けられる」とは、前記ギヤレールが直接的に前記主桁に取り付けられる場合だけでなく、他の部材を介して前記ギヤレールが間接的に前記主桁に取り付けられる場合も含むものとする。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0024】
本発明に係る切断装置の第7の態様は、前記第1~前記第6の態様のいずれかの態様の切断装置において、前記架台は複数段に分割可能に構成されている、ように構成されている態様である。
【0025】
本発明に係る切断装置の第8の態様は、前記第1~前記第7の態様のいずれかの態様の切断装置において、前記主桁の上フランジには、前記主桁と前記コンクリート床版とを接合させるずれ止めが設けられており、前記ソーブレードが面部材として広がる延長方向が前記ずれ止めと交差して、前記ソーブレードが前記ずれ止めを前記コンクリート床版と共に切断する、ように構成されている態様である。
【0026】
本発明に係る切断方法の第1の態様は、主桁から、該主桁上に接合されたコンクリート床版を切断するための切断方法であって、前記コンクリート床版の下面側から、ソーブレードが、水平面に対して所定角度で前記コンクリート床版と交差して、該コンクリート床版を切断する切断工程を有することを特徴とする切断方法である。
【0027】
本発明に係る切断方法の第2の態様は、前記第1の態様の切断方法において、前記切断工程では、第1の時間帯に前記主桁の一方の側から切断し、前記第1の時間帯とは重ならない第2の時間帯に前記主桁の他方の側から切断する、ように構成されている態様である。
【0028】
本発明に係る切断方法の第3の態様は、前記第1の態様の切断方法において、前記切断工程では、前記主桁の長手方向における位置が重なる所定の位置において、前記ソーブレードが重ならないように前記主桁の両方の側から同時に切断する、ように構成されている態様である。
【0029】
本発明に係る切断方法の第4の態様は、前記第1の態様の切断方法において、前記切断工程では、前記主桁の両方の側から、同時に切断するが、前記主桁の長手方向における位置が重ならないように当該切断を行う、ように構成されている態様である。
【0030】
本発明に係る切断方法の第5の態様は、前記第1~前記第4の態様のいずれかの態様の切断方法において、前記切断工程では、前記主桁の上フランジに設けられたずれ止めを、前記コンクリート床版と共に切断する、ように構成されている態様である。
【0031】
本発明に係る切断方法の第6の態様は、前記第1~前記第4の態様のいずれかの態様の切断方法において、前記主桁の上フランジには、その幅方向に、前記主桁と前記コンクリート床版とを接合させるずれ止めが複数本設けられており、前記切断工程では、前記上フランジの幅方向に複数本設けられた前記ずれ止めのうち、一部のずれ止めを前記コンクリート床版と共に切断する、ように構成されている態様である。
【0032】
本発明に係る切断方法の第7の態様は、前記第1~前記第4の態様のいずれかの態様の切断方法において、前記主桁の上フランジには、その幅方向に、前記主桁と前記コンクリート床版とを接合させるずれ止めが3本以上設けられており、前記切断工程では、前記上フランジの幅方向に3本以上設けられた前記ずれ止めのうち、前記上フランジの幅方向の端部以外の1本を残して前記コンクリート床版と共に切断する、ように構成されている態様である。
【0033】
本発明に係る切断方法の第8の態様は、前記第1の態様の切断方法において、前記主桁の上フランジには、その幅方向に、前記主桁と前記コンクリート床版とを接合させるずれ止めが複数本設けられており、前記切断工程では、前記上フランジの幅方向に複数本設けられた前記ずれ止めの全てを、前記主桁の一方の側のみから、前記コンクリート床版と共に切断する、ように構成されている態様である。
【0034】
本発明に係る切断方法の第9の態様は、前記第1~前記第8の態様のいずれかの態様の切断方法において、前記切断工程後、前記コンクリート床版を上昇させて該コンクリート床版と前記主桁とを引き離す引き離し工程を有する、ように構成されている態様である。
【0035】
本発明に係る切断方法の第10の態様は、前記第6の態様の切断装置を用いて、主桁から、該主桁上に接合されたコンクリート床版を切断するための切断方法であって、前記主桁の長手方向における所定の位置で、前記コンクリート床版の下面側から、前記切断装置の前記ソーブレードが、水平面に対して所定角度で前記コンクリート床版と交差して、該コンクリート床版を切断する切断工程と、前記切断工程の後、前記主桁の長手方向における次の切断位置まで、前記ギヤレールに沿って前記切断装置を移動させる移動工程と、を有することを特徴とする切断方法である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、主桁上に接合されたコンクリート床版の下面における水平面の有無やハンチ部の高さに関わらず、当該コンクリート床版の下面側から、当該コンクリート床版を前記主桁から切断することができる切断装置および切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1実施形態に係る切断装置10を橋軸方向から見た鉛直断面図(図2のI-I線断面図)
図2】本発明の第1実施形態に係る切断装置10を橋軸直角方向から見た正面図(図1において矢視II方向から見た正面図)
図3】本発明の第1実施形態に係る切断装置10を上方から見た平面図(図1において矢視III方向から見た平面図)
図4】本発明の第1実施形態に係る切断装置10を橋軸方向から見た拡大鉛直断面図(図1において切断装置10の部位を拡大して示す拡大鉛直断面図)
図5】本発明の第1実施形態に係る切断装置10による切断後に撤去コンクリート床版82Xを撤去している状況を模式的に示す図(橋軸直角方向から見た図)
図6】本発明の第1実施形態に係る切断装置10による切断(ずれ止め84は全て切断)後に撤去コンクリート床版82Xを撤去している状況を模式的に示す図(橋軸方向から見た図)であり、(A)は撤去コンクリート床版82Xを吊り上げる準備を完了した状態を示す図であり、(B)は撤去コンクリート床版82Xの吊り上げを開始して縁切りがなされた後の状態を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る切断装置10による切断(ずれ止め84を1本残して切断)後に撤去コンクリート床版82Xを撤去している状況を模式的に示す図(橋軸方向から見た図)であり、(A)は撤去コンクリート床版82Xを吊り上げる準備を完了した状態を示す図であり、(B)は撤去コンクリート床版82Xの吊り上げを開始して縁切りがなされた後の状態を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る切断装置11を橋軸方向から見た鉛直断面図
図9】主桁80の下フランジ80Bへの支持鋼材56の固定ボルト58による取り付け態様を模式的に示す鉛直断面図(橋軸方向から見た鉛直断面図)
図10】特許文献1に開示されている切断装置200を橋軸方向から見た図
図11】下面が傾斜面であって水平面(切断装置200を取り付けることができるような水平面)のない張出片持ち部220を模式的に示す鉛直断面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0039】
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る切断装置10を橋軸方向から見た鉛直断面図(図2のI-I線断面図)であり、図2は本発明の第1実施形態に係る切断装置10を橋軸直角方向から見た正面図(図1において矢視II方向から見た正面図)であり、図3は本発明の第1実施形態に係る切断装置10を上方から見た平面図(図1において矢視III方向から見た平面図)であり、図4は本発明の第1実施形態に係る切断装置10を橋軸方向から見た拡大鉛直断面図(図1において切断装置10の部位を拡大して示す拡大鉛直断面図)である。なお、図3では、コンクリート床版82の記載は省略している。
【0040】
本発明の第1実施形態に係る切断装置10は、図1に示すように、架台12と、切断部20と、を有してなり、コンクリート床版82を、コンクリート床版82の下面側から、主桁80の直上に位置する直上部位86を少なくとも含むように切断して、コンクリート床版82を主桁80から切断する切断装置である。直上部位86は、具体的には、コンクリート床版82の部位のうち、主桁80の上フランジ80Aの鉛直方向上方に位置する部位である。
【0041】
主桁80は断面I形の鋼材からなる鋼I桁であり、上フランジ80A、下フランジ80Bおよびウェブ80Cを有してなり、主桁80の上フランジ80Aの上面には、その幅方向に、主桁80とコンクリート床版82とを接合させるずれ止め84が複数本(ここでは上フランジ80Aの幅方向に3本)設けられていて、主桁80とコンクリート床版82とは一体化されていて合成桁を構成しているが、本第1実施形態に係る切断装置10を用いて、ずれ止め84も含めて直上部位86を切断することにより、主桁80とコンクリート床版82との一体化の程度を減少させることができる。その結果、図6および図7に示すように、撤去コンクリート床版82Xをセンターホールジャッキ60で上方に引っ張り上げて、撤去コンクリート床版82Xと主桁80とを切り離すことが可能になる。
【0042】
架台12は、図1図2および図4等に示すように、切断装置10全体を主桁80に取り付けるとともに、切断部20を支持して切断部20による切断をサポートする役割を有する。
【0043】
架台12は、上段架台12Aと、中段架台12Bと、下段架台12Cと、を有してなり、上段架台12A、中段架台12B、および下段架台12Cはお互いに着脱可能に構成されている。図2に示すように、上段架台12Aは、2本の上段架台フレーム12A1と、それらの下端に取り付けられた連結フランジ12A2と、を有してなり、中段架台12Bは、2本の中段架台フレーム12B1と、それらの上端および下端にそれぞれ取り付けられた連結フランジ12B2と、を有してなり、下段架台12Cは、2本の下段架台フレーム12C1と、それらの上端に取り付けられた連結フランジ12C2と、下端部に配置されたギヤ30及びギヤ等連結鋼材32と、を有してなる。
【0044】
上段架台12Aの連結フランジ12A2の下面と、中段架台12Bの上部の連結フランジ12B2の上面とを、お互いの面を合わせるように配置して、それらの面と貫通するようにボルト40を配置して固定することにより、上段架台12Aと中段架台12Bとを連結している。また、中段架台12Bの下部の連結フランジ12B2の下面と、下段架台12Cの連結フランジ12C2の上面とを、お互いの面を合わせるように配置して、それらの面と貫通するようにボルト40を配置して固定することにより、中段架台12Bと下段架台12Cとを連結している。したがって、架台12は、上段架台12A、中段架台12Bおよび下段架台12Cに分解可能であり、分解することにより人力で持ち運びできるサイズ・重さにすることができ、また、上段架台12A、中段架台12Bおよび下段架台12Cを連結して架台12を組み立てることも容易である。
【0045】
架台12は、図1図2および図4に示すように、マグネット工具14を介して主桁80のウェブ80Cに取り付けられている。上段架台12Aの2本の上段架台フレーム12A1にはそれぞれ上部および下部にマグネット工具14が取り付けられており、下段架台12Cの2本の下段架台フレーム12C1にはその中ほどにそれぞれマグネット工具14が取り付けられており、架台12は、合計で6個のマグネット工具14で主桁80のウェブ80Cに取り付けられている。本第1実施形態に係る切断装置10では、マグネット工具14は架台12に組み込んでいるが、架台12に対してマグネット工具14が着脱可能となるように構成してもよい。マグネット工具14は、複数の磁石を有して構成されており、レバー14Aの位置を変えることにより、複数の磁石の磁性の方向が揃って磁力が大きくなる配置と、複数の磁石の磁性の方向がお互いに打ち消し合う方向になって磁力が小さくなる配置とを、取ることができるように構成されており、磁力の強弱を変更でき、主桁80への着脱が可能なものである。このようなマグネット工具14は、市販されている。また、このようなマグネット工具14に代えて、電磁石を用いて主桁80のウェブ80Cへの架台12の取り付けを行うように構成することも可能である。
【0046】
また、図1図2および図4に示すように、主桁80の下フランジ80Bにはシャコ万力52を介して溝形鋼である支持鋼材50が、主桁80の長手方向と直交するように所定の間隔で取り付けられていて、その支持鋼材50を架け渡すように、かつ主桁80の長手方向に沿うように、ギヤレール54が配置されている。下段架台12Cの下端部には、ギヤ等連結鋼材32を介してギヤ30が設けられており、ギヤ30はギヤレール54に噛み合ってギヤレール54上をその長手方向に前進および後進でき、これにより、架台12はギヤレール54上を主桁80の長手方向に前進および後進できるように構成されている。ギヤレール54の長さは、対傾構や横桁の間隔の長さに合わせて設定することが標準的であり、具体的にはギヤレール54の長さは5~6m程度にすることが標準的である。架台12をギヤレール54に沿って前進および後進させる際には、前述したマグネット工具14の磁力による取り付けを解除した状態で行う。本第1実施形態に係る切断装置10においては、ギヤレール54上を架台12が手動で前進および後進できるように構成しており、1つの切断位置での切断作業が終了したら、次の切断位置まで、手動で、ギヤレール54に沿って切断装置10を移動させる。ギヤ30を駆動させる駆動源を設けていないため、切断装置10は全体としてコンパクトな構成になっている。したがって、切断装置10の主桁80への取り付けおよび取り外しならびに運搬が容易な構成になっている。このため、対傾構や横桁を隔てて隣り合う次の切断作業空間への切断装置10の移動も容易に行うことができる。ただし、ギヤ30を駆動させる駆動源を設けて、ギヤレール54上を架台12が動力により移動できるように構成してもよい。前述したように、架台12は、上段架台12A、中段架台12Bおよび下段架台12Cに分解可能であり、分解することにより人力で持ち運びできるサイズ・重さにすることができるので、ギヤ30を駆動させる駆動源を設けた場合でも、対傾構や横桁を隔てて隣り合う次の切断作業空間へ切断装置10を移動させることを容易に行うことができる。
【0047】
また、図4に示すように、上段架台12Aの上端には上端支持部16Aが設けられており、この上端支持部16Aには、内面がねじ切りされた貫通孔が設けられていて、該貫通孔には突っ張りボルト16が螺合して取り付けられており、突っ張りボルト16を周方向に回動させることにより、突っ張りボルト16の上端支持部16Aからの突出長さを調整できるように構成されている。架台12がマグネット工具14で主桁80のウェブ80Cに取り付けられた状態で、突っ張りボルト16の上端支持部16Aからの突出長さを長くして、突っ張りボルト16の先端を主桁80の上フランジ80Aの下面に突き当てることにより、マグネット工具14による固定と協働して、架台12の取り付け状態をより安定させることができる。このような突っ張りボルト16に代えて、上端支持部16A上に例えばパンタグラフジャッキを配置して、該パンタグラフジャッキを伸長させて主桁80の上フランジ80Aの下面に突き当てるようにしてもよい。
【0048】
また、上段架台12Aには、図1図2および図4等に示すように、切断部20が固定ピン24Cおよび固定ピン24Eを介して取り付けられている。
【0049】
切断部20は、ソーブレード22、角度調整機構24、およびハンドル26等を有して構成されており、本第1実施形態に係る切断装置10において実際に切断を行う部位である。
【0050】
ソーブレード22は、切断対象物に押し当てられて、当該切断対象物を切断する円盤状の切断刃であり、具体的には例えば、ウォールソーに用いられる切断刃を用いることができる。ソーブレード22の中心部が軸機構等22Aによって固定されており、軸機構等22Aは、駆動部22Bから動力を受けて、備える軸が当該軸の中心周りに高速回転するように構成されている。ソーブレード22は、軸機構等22Aの軸が高速回転することにより高速回転する。つまり、ソーブレード22は、駆動部22Bからの動力により高速回転する。軸機構等22Aは、角度調整機構24の第1リンク部材24Aの長手方向に沿って移動可能なように第1リンク部材24Aに取り付けられていて、ハンドル26を手動で回動させることにより、前進および後進が可能なように構成されており、ソーブレード22は、ハンドル26を手動で回動させることにより、水平面に対する角度を一定に保った状態で前進および後進する。本第1実施形態に係る切断装置10を主桁80に取り付けた状態で、ハンドル26を手動で回動させて、高速回転するソーブレード22を切断対象のコンクリート床版82の下面に交差するように押し当てることにより、コンクリート床版82の切断対象部位を切断することができる。後述する角度調整機構24により、ソーブレード22の水平面に対する角度は調整することができ、当該角度を適切に調整することにより、ソーブレード22が面部材として広がる延長方向が、主桁80の上フランジ80Aに設けられたずれ止め84と交差するようにすることができ、ソーブレード22により、ずれ止め84をコンクリート床版82と共に切断することができる。切断する深さは、ハンドル26を回動させる量を調整して、ソーブレード22を前進させる距離を調整することによって調整することができる。ソーブレード22の前進および後進は、手動ではなく、電力等の動力で行うように構成してもよい。
【0051】
切断部20の角度調整機構24は、第1リンク部材24Aと、第2リンク部材24Bと、固定ピン24Cと、関節ピン24Dと、固定ピン24Eと、を有して構成されている。第1リンク部材24Aは、上端が上段架台12Aの上段架台フレーム12A1の上端に固定ピン24Cによって回動可能に取り付けられており、下端が第2リンク部材24Bの上端に関節ピン24Dによって回動可能に連結されている。第2リンク部材24Bは、上端が第1リンク部材24Aの下端に関節ピン24Dによって回動可能に取り付けられており、下端が上段架台12Aの上段架台フレーム12A1に固定ピン24Eによって回動可能に連結されている。第2リンク部材24Bの上端には長孔24B1(図4参照)が設けられていて、関節ピン24Dはこの長孔24B1を挿通しており、関節ピン24Dは長孔24B1に沿ってスライド移動できるようになっている。
【0052】
したがって、第1リンク部材24Aと第2リンク部材24Bとは、関節ピン24Dの位置でなす角の大きさを調整することができ、第1リンク部材24Aの水平面に対する傾きを調整することができるようになっており、ソーブレード22の水平面に対する傾きを調整することができるようになっている。このため、本第1実施形態に係る切断装置10においては、コンクリート床版82の下面(ハンチ部82Aの下面および張出片持ち部82Bの下面を含む)に対して所望の角度を以てソーブレード22を交差させることができる。ソーブレード22の水平面に対する傾きを適切に調整した後に、固定ピン24C、24Eをねじ締付けで回動不可に固定するとともに、関節ピン24Dをねじ締付けで回動不可およびスライド移動不可に固定して、第1リンク部材24Aと第2リンク部材24Bを固定する。
【0053】
なお、第1リンク部材24Aと第2リンク部材24Bとのなす角を調整する機構は、前記した機構に限定されるわけではなく、例えば、上段架台フレーム12A1に長手方向(上下方向)に溝を設け、固定ピン24Eに代えて可動ピンをスライド移動可能に前記溝に係合させて構成することもできる(第2リンク部材24Bの上端の長孔24B1は円形の孔に変更し、関節ピン24Dはスライド移動不可(回動は可)にする。)。
【0054】
以上説明したように、架台12の上段架台12Aには切断部20を適切に保持する役割があり、架台12の下段架台12Cには切断装置10の全体を主桁80に沿って移動させる役割がある。一方、架台12の中段架台12Bは、切断機能や移動機能について特段の役割を担っていないが、主桁80の高さに応じて切断装置10の全体の高さを調整する役割を担っており、主桁80の高さに合わせた適切な高さの中段架台12Bを、主桁80の高さに合わせて作製する。
【0055】
次に、本第1実施形態に係る切断装置10を用いてコンクリート床版82の直上部位86の切断を行った後に行うコンクリート床版82の撤去について説明する。
【0056】
図5は本発明の第1実施形態に係る切断装置10による切断後に撤去コンクリート床版82Xを撤去している状況を模式的に示す図(橋軸直角方向から見た図)である。図6は本発明の第1実施形態に係る切断装置10による切断(ずれ止め84は全て切断)後に撤去コンクリート床版82Xを撤去している状況を模式的に示す図(橋軸方向から見た図)であり、(A)は撤去コンクリート床版82Xを吊り上げる準備を完了した状態を示す図であり、(B)は撤去コンクリート床版82Xの吊り上げを開始して縁切りがなされた後の状態を示す図である。図7は本発明の第1実施形態に係る切断装置10による切断(ずれ止め84を1本残して切断)後に撤去コンクリート床版82Xを撤去している状況を模式的に示す図(橋軸方向から見た図)であり、(A)は撤去コンクリート床版82Xを吊り上げる準備を完了した状態を示す図であり、(B)は撤去コンクリート床版82Xの吊り上げを開始して縁切りがなされた後の状態を示す図である。
【0057】
本第1実施形態に係る切断装置10を用いてコンクリート床版82の直上部位86の切断を行った後、撤去する撤去コンクリート床版82Xの橋軸方向の長さが所定の長さ(具体的には例えば2m程度)となるようにコンクリート床版82を橋軸直角方向に切断する。この切断は、橋面上から例えばウォールソーを用いて行うことができる。
【0058】
そして、図5に示すように、撤去コンクリート床版82Xを橋軸方向に挟むように2つの枕梁72を配置する。具体的には、2つの枕梁72のうち一方の枕梁72はコンクリート床版82上に配置し、もう一方の枕梁72は、主桁80の上フランジ上に配置した調整材74(コンクリート床版82の厚さに相当する高さを有する)の上に配置する。そして、配置した2つの枕梁72を架け渡すように主梁70を配置する。枕梁72および調整材74には、鋼板が所定間隔で溶接されて補強されたH形鋼(サンドル材)を用いることができ、主梁70には、図6および図7に示すように、鋼板(図示せず)が所定間隔で溶接されて補強された2つの溝形鋼70Aを、それぞれのフランジが対向するように所定の間隔(ゲビンデスターブ62が挿通できる間隔)を空けて配置して用いることができる。
【0059】
この配置状態において、図5図7に示すように、主梁70上にセンターホールジャッキ60を配置する。そして、センターホールジャッキ60の内部、2つの溝形鋼70Aの対向するフランジ間の空間、および撤去コンクリート床版82Xに設けた貫通孔82X1を挿通するようにゲビンデスターブ62を配置するとともに、センターホールジャッキ60の上面および撤去コンクリート床版82Xの下面に支圧板66を配置し、ゲビンデスターブ62の上端および下端を支圧板66を介してナット64で締め込み、撤去コンクリート床版82Xを吊り上げて撤去するための準備を完了した状態にする(図6(A)および図7(A)参照)。図6は、主桁80の上フランジ80A上に配置されたずれ止め84を上フランジ80Aの幅方向に全て切断した場合であり、図7は、主桁80の上フランジ80A上に配置されたずれ止め84を上フランジ80Aの幅方向の中央部の1本のみを残して他を切断した場合である。
【0060】
そして、センターホールジャッキ60で吊り上げを開始して、図6(B)および図7(B)に示すように、撤去コンクリート床版82Xと主桁80との縁切りをする。図6に示す場合のように、主桁80の上フランジ80A上に配置されたずれ止め84を上フランジ80Aの幅方向に全て切断した場合には、センターホールジャッキ60による吊り上げで、撤去コンクリート床版82Xと主桁80との縁切りを問題なく行えることは明らかであるが、図7に示す場合のように、主桁80の上フランジ80A上に配置されたずれ止め84を上フランジ80Aの幅方向に1本のみを残して他を切断した場合も、撤去コンクリート床版82Xと主桁80との一体化の程度が大幅に低下しており、センターホールジャッキ60による吊り上げで、撤去コンクリート床版82Xと主桁80との縁切りを行うことができる。図7に示す場合のように、主桁80の上フランジ80A上に配置されたずれ止め84を上フランジ80Aの幅方向に1本のみを残して他を切断する場合は、撤去コンクリート床版82Xの吊り上げによる縁切り時の応力のバランス上、上フランジ80Aの幅方向中央部の1本のみを残すようにすることが好ましい。
【0061】
また、図1および図4では、主桁80の上フランジ80A上にその幅方向に配置された3本のずれ止め84のうち、左側の2本のみを切断し、右側の1本を残す態様を描いているが、ソーブレード22の大きさやソーブレード22の水平面に対する角度を調整することにより、主桁80の片側のみから切断装置10で直上部位86を切断する場合でも、主桁80の上フランジ80A上にその幅方向に配置された3本のずれ止め84の全てを切断することも可能である。
【0062】
また、図7の場合のように、主桁80の上フランジ80A上に配置されたずれ止め84を上フランジ80Aの幅方向の中央部の1本のみを残して他を切断した場合、撤去コンクリート床版82Xと主桁80との一体化の程度は大幅に低下しているが、図6の場合のように、主桁80の上フランジ80A上に配置されたずれ止め84を上フランジ80Aの幅方向に全て切断した場合と比べて、一体化の程度はある程度保持されており、短期間の供用であれば、安全性を照査した上で、当該橋梁の供用を続けることが可能である。
【0063】
(2)第2実施形態
図8は本発明の第2実施形態に係る切断装置11を橋軸方向から見た鉛直断面図である。
【0064】
本発明の第2実施形態に係る切断装置11は、図8に示すように、本発明の第1実施形態に係る切断装置10を、主桁80の両側に配置してなる切断装置である。第2実施形態に係る切断装置11の構成要素である切断装置10についての説明は、第1実施形態に係る切断装置10についての説明で代えることとする。
【0065】
本発明の第2実施形態に係る切断装置11は、切断装置10を主桁80の両側に配置してなる切断装置であるので、切断装置10を主桁80の片側に配置して、コンクリート床版82の直上部位86を切断する場合(第1の時間帯に主桁80の一方の側から直上部位86を切断し、第1の時間帯とは重ならない第2の時間帯に主桁80の他方の側から直上部位86を切断する場合(この場合は、切断工事に用いる切断装置10の数を少なくすることができる。))よりも切断作業を速く進めることができる。ただし、主桁80の長手方向における所定の位置において、主桁80の両方の側から、直上部位86を同時に切断する場合には、主桁80の両側に配置する切断装置10のソーブレード22同士が接触しないように、ソーブレード22の切込み深さや水平面に対する角度の調整に十分に留意して切断作業を進めるようにする。また、主桁80の両側に配置した切断装置10による直上部位86の切断を同時に行う場合、主桁80の長手方向における位置が重ならないようにタイミングをずらして行うようにしてもよい。
【0066】
(3)補足
上述した実施形態に係る切断装置においては、ソーブレード22を水平面に対して所定角度で傾けてコンクリート床版82を切断しているが、コンクリート床版82の形状や、主桁80に取り付ける部位の寸法を工夫するなどして、ソーブレード22を水平面に対して平行な角度にしてコンクリート床版82を切断するように構成してもよい。
【0067】
また、第1および第2実施形態に係る切断装置10、11の説明においては、ソーブレード22がずれ止め84をコンクリート床版82と共に切断することを念頭に置いて説明したが、第1および第2実施形態に係る切断装置10、11を直上部位86の切断に用いる場合において、コンクリート床版82のコンクリート部分のみの切断に止める使い方も可能である。また、第1および第2実施形態に係る切断装置10、11を、非合成桁における直上部位の切断に用いることも可能である。
【0068】
なお、第1および第2実施形態に係る切断装置10、11では、主桁80の下フランジ80Bへの支持鋼材50の取り付けは、シャコ万力52を用いて行ったが、シャコ万力52を用いることに代えて磁石を用いて行ってもよい。また、図9に示すように、断面形状がコの字状で下フランジ80Bを嵌め込むことができる空間を備えた支持鋼材56と固定ボルト58とを用いた構成にしてもよい。この支持鋼材56の上部突出部56Aには、内面がねじ切りされた貫通孔が設けられていて、該貫通孔には固定ボルト58の軸部が螺合して取り付けられており、固定ボルト58を周方向に回動させることにより上部突出部56Aの下面からの固定ボルト58の軸部の突出量を変えることができるように構成されており、支持鋼材56の前記空間に下フランジ80Bを嵌め込んだ状態で、固定ボルト58の軸部の上部突出部56Aの下面からの突出量を大きくして、固定ボルト58の軸部の先端を主桁80の下フランジ80Bの上面に突き当てて、支持鋼材56を主桁80の下フランジ80Bへ固定することができるように構成されている。
【符号の説明】
【0069】
10、11…切断装置
12…架台
12A…上段架台
12B…中段架台
12C…下段架台
12A1…上段架台フレーム
12B1…中段架台フレーム
12C1…下段架台フレーム
12A2、12B2、12C2…連結フランジ
14…マグネット工具
14A…レバー
16…突っ張りボルト
16A…上端支持部
20…切断部
22…ソーブレード
22A…軸機構等
22B…駆動部
24…角度調整機構
24A…第1リンク部材
24B…第2リンク部材
24B1…長孔
24C、24E…固定ピン
24D…関節ピン
26…ハンドル
30…ギヤ
32…ギヤ等連結鋼材
40…ボルト
50…支持鋼材
52…シャコ万力
54…ギヤレール
56…支持鋼材
56A…上部突出部
58…固定ボルト
60…センターホールジャッキ
62…ゲビンデスターブ
64…ナット
66…支圧板
70…主梁
70A…溝形鋼
72…枕梁
74…調整材
80…主桁
80A…上フランジ
80B…下フランジ
80C…ウェブ
82…コンクリート床版
82A…ハンチ部
82B…張出片持ち部
82X…撤去コンクリート床版
82X1…貫通孔
84…ずれ止め
86…直上部位
200…切断装置
202…吊り架台
204…ワイヤーソー
206…プーリー
208…駆動プーリー
208A…駆動部
210…コンクリート床版
210A…床版下面
212…ハンチ部
212A…挿通孔
214…主桁
220…張出片持ち部
222…主桁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11