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  • 特開-建材パネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133965
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】建材パネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20240926BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E04B1/80 100Q
E04B2/74 551E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044009
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】596066482
【氏名又は名称】明正工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】永上 修一
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DE01
2E001FA03
2E001FA04
2E001FA07
2E001FA16
2E001GA12
2E001GA29
2E001GA42
2E001GA48
2E001HA32
2E001HB01
(57)【要約】
【課題】ロックウール製の芯材を備えたサンドイッチ構造の建材パネルにおいて、強度および断熱性の両立が図られる建材パネルを提供する。
【解決手段】互いに対向配置される一対の面材21、22と、一対の面材21、22の間に挟まれて配置される芯材30と、を有する建材パネルであって、芯材30はロックウールにより構成され、当該ロックウールの繊維は、少なくとも芯材30の厚さ方向を含む断面で見た場合においてアトランダムな方向に延びている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置される一対の面材と、前記一対の面材の間に挟まれて配置される芯材と、を有する建材パネルであって、
前記芯材はロックウールにより構成され、当該ロックウールの繊維は、少なくとも当該芯材の厚さ方向を含む断面で見た場合においてアトランダムな方向に延びていることを特徴とする建材パネル。
【請求項2】
前記ロックウールの前記繊維は、曲がりながら延びる領域が前記断面の中で90%~100%を占めることを特徴とする請求項1に記載の建材パネル。
【請求項3】
前記断面は、前記ロックウールの繊維によりマーブル状の模様を呈していることを特徴とする請求項1または2に記載の建材パネル。
【請求項4】
前記芯材の密度が100~200[kg/m]であることを特徴とする請求項1または2に記載の建材パネル。
【請求項5】
前記芯材の熱伝導率が0.030~0.045[W/(m・K]であることを特徴とする請求項1または2に記載の建材パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等の屋根や外壁等を、複数の建材パネルを接合することによって簡易に施工する場合がある。例えば、一対の金属板からなる面材の間に耐火性あるいは断熱性を有する芯材を挟んだ金属サンドイッチパネルは、密閉性や断熱機能に優れるとともに、施工性が良好である(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-7874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記芯材として、耐火性を有するロックウールが用いられる場合がある。ロックウールは、製鉄プロセスで得られるガラス状の鉄炉スラグに石灰等を混合して高温で溶解し生成される無機系の人造鉱物繊維であり、溶解状態のものを糸状に吹いて固化させ得られる。このロックウールは、通常、繊維の延びる方向が長尺方向とされた帯状のものが原反とされ、この原反を、長尺方向を分断する状態で所定長さの長方形のパネル状に切断して芯材とされていた。 このようにして得られる芯材の両側の面に面材を接着させてパネルが得られるが、このようなパネルにあっては、芯材の繊維の連結強度が長手方向に比べて厚さ方向が格段に低く、芯材が厚さ方向に伸びて剥離が生じるなど、パネル自体の強度が低いといった問題を有している。
【0005】
そこで、ロックウールの原反を、繊維の延びる方向に対して直交する方向に切断して複数の芯材ブロックに切断し、これら芯材ブロックを90°横転させて繊維の延びる方向がパネルの厚さ方向に沿った状態で並列させ、この並列状態の複数の芯材の両面に面材を固着して、芯材の繊維の延びる方向が厚さ方向に沿ったパネルが提供されている。このようなパネルは、ロックウールの繊維の方向がパネルの厚さ方向に沿っているため強度が高いが、反面、厚さ方向に熱が通過しやすく、断熱性が低くなるといった弊害が生じる。
【0006】
そこで本発明は、ロックウール製の芯材を備えたサンドイッチ構造の建材パネルにおいて、強度および断熱性の両立が図られる建材パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の建材パネルは、互いに対向配置される一対の面材と、前記一対の面材の間に挟まれて配置される芯材と、を有する建材パネルであって、前記芯材はロックウールにより構成され、当該ロックウールの繊維は、少なくとも当該芯材の厚さ方向を含む断面で見た場合においてアトランダムな方向に延びていることを特徴とする。
【0008】
(2)本発明の建材パネルにおいては、前記ロックウールの前記繊維は、曲がりながら延びる領域が前記断面の中で90%~100%を占めることを含む。
【0009】
(3)本発明の建材パネルにおいては、前記芯材の厚さ方向を含む断面は、前記ロックウールの繊維によりマーブル状の模様を呈していることを含む。
【0010】
(4)本発明の建材パネルにおいては、前記芯材の密度が100~200[kg/m]であることを含む。
【0011】
(5)本発明の建材パネルにおいては、前記芯材の熱伝導率が0.030~0.048[W/(m・K]であることを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロックウール製の芯材を備えたサンドイッチ構造の建材パネルにおいて、強度および断熱性の両立が図られる建材パネルを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る建材パネルを接合して構築される外壁の一部を概略的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る建材パネルの横断面図である。
図3】実施形態の建材パネルの芯材の断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態の複数のパネル(建材パネル)10を横方向に接合して構築される外壁1の一部を示している。パネル10は長手方向を有する長方形の形状を有し、長手方向を上下方向に沿った状態で外壁1として組み込まれる。図2は、幅方向(短手方向)に沿ったパネル10の横断面を示している。
【0015】
図2に示すように、パネル10は、互いに対向配置される一対の金属製の面材21,22と、一対の面材21、22の間に挟まれて配置される芯材30と、を有する。すなわちパネル10は、2枚の面材21、22の間に芯材30が挟まれた金属サンドイッチパネルである。
【0016】
金属製の面材21、22は、例えば、カラー鋼板、フッ素鋼板、塩ビ鋼板、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板:登録商標)、SUS等のステンレス板等の弾性を有する薄板材であるが、これらに限定されない。一方の面材21と他方の面材22は、材質が同じでもよく、異なっていてもよいが、同じである方が好ましい。面材21、22の厚さは、例えば0.35~1.2mm程度であるが、この範囲に限定されない。
【0017】
芯材30は、繊維を含むロックウールで構成される。ロックウールは、製鉄プロセスで得られるガラス状の鉄炉スラグに石灰等を混合して高温で溶解し生成されるもので、耐火性および断熱性に優れる。また、ロックウールは、溶解することによりリサイクルできるというメリットも有する。芯材30は、そのロックウールにフェノール樹脂等のバインダ樹脂を例えば3.5~5質量%程度の割合で含侵し、120~220kg/m程度の高密度に圧縮されて使用される。
【0018】
芯材30の両面に各面材21、22が接着剤によって接着されてパネル10が構成される。その接着剤としては、面材21、22および芯材30の材質等に応じて選択され、例えば、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等の樹脂系接着剤が用いられる。
【0019】
パネル10の全体寸法は任意であって、施工する外壁1に対応したものとされるが、例えば、長手方向(外壁1での上下方向)の寸法が900~13000mm程度、幅方向の寸法が400~1200mm程度、厚さが100~300mm程度である。
【0020】
図2および図3に示すように、パネル10は、幅方向の一端側(図2で右端側)および他端側(図2で左端側)のそれぞれに、第1の接合端部40および第2の接合端部50を有する。第1の接合端部40および第2の接合端部50のそれぞれは、互いに篏合する形状を有する。1枚のパネル10の第1の接合端部40に、そのパネル10に隣接させた他のパネル10の第2の接合端部50を篏合させて、パネル10どうしが接合される。
【0021】
第1の接合端部40には、パネル10の長手方向(図2で紙面表裏方向)に沿って延びる溝状の凹部41が形成され、さらに凹部41の底部41aに、長手方向に沿って延びる断面台形状の内側凸部42が形成されている。凹部41は、各芯材30の幅方向側端面から幅方向にそれぞれ突出する面材21、22の各突片部21a、22aにより形成されている。凹部41内の底部41aおよび内側凸部42は、芯材30を加工することにより形成されている。各突片部21a、22aは、面材21、22のそれぞれの幅方向の端部が内側に折り返し加工されることにより形成されている。内側凸部42は、パネル10の厚さ方向の中央に配置されている。底部41aから接合方向である幅方向外側に突出する内側凸部42の高さは、各突片部21a、22aの突出長さよりも小さく、凹部41から幅方向外側に突出してはいない。
【0022】
第2の接合端部50には、パネル10の長手方向に沿って延びる凸部51が形成され、さらに凸部51には、長手方向に沿って延びる断面逆台形状の内側凹部52が形成されている。凸部51は、パネル10の厚さを、厚さ方向の両側から減じることで形成されている。内側凹部52は、パネル10の厚さ方向の中央に配置されている。凸部51の、内側凹部52を除く部分は各面材21、22で覆われている。内側凹部52は、芯材30を加工することにより形成されている。
【0023】
パネル10どうしの接合は、一方のパネル10の第1の接合端部40に、当該一方のパネル10に隣接させた他方のパネル10の第2の接合端部50を篏合させる。詳しくは、第1の接合端部40の凹部41に第2の接合端部50の凸部51を嵌合させるとともに、第2の接合端部50の内側凹部52に第1の接合端部40の内側凸部42を嵌合させる。これにより、パネル10どうしが幅方向に接合される。この接合を幅方向に連続させて所定枚数のパネル10を接合し、外壁1が構築される。
【0024】
本実施形態のパネル10の芯材30は、上述したように、繊維を含むロックウールから構成される。図3は、実施形態の芯材30の、厚さ方向および長手方向を含む断面を示す写真である。この図3に示すように、芯材30のロックウールの繊維は、厚さ方向および長手方向を含む断面で見た場合において、アトランダムな方向に延びている。繊維は、厚さ方向および長手方向を含む断面に沿って延びるものもあるが、厚さ方向、長手方向および幅方向に対して傾斜する方向に延びるものもある。
【0025】
すなわちロックウールの繊維の延びる方向は、例えば芯材30の長さ方向や幅方向を含む面方向や、芯材30の厚さ方向に沿って一定方向に延びておらず、あらゆる方向に立体的に延びている。また、ロックウールの繊維は、直線状の部分が少なく、曲がりながら延びる領域が多い。その曲がりながら延びる領域としては、当該断面の中で、例えば90%~100%を占めることが好ましい。このようなロックウールの繊維により、当該断面は、図3に示すようにマーブル状の模様を呈している。
【0026】
実施形態の芯材30は、その密度が100~200[kg/m]であることが好ましく、この範囲では160[kg/m]以上あればより好ましい。また、実施形態の芯材30は、その熱伝導率が0.030~0.045[W/(m・K]であることが好ましく、この範囲では0.030~0.040[W/(m・K]であればより好ましい。
【0027】
このような芯材30は、上述した繊維の延びる方向が長尺方向とされた帯状のロックウールの原反を、長手方向に圧縮して繊維を波型状に形成し、その後厚さ方向にプレスすることにより得ることができるが、製法はこれに限られない。
【0028】
実施形態のパネル10によれば、芯材30のロックウールの繊維が、少なくとも芯材30の厚さ方向および長手方向を含む断面で見た場合において、アトランダムな方向に延びている。これにより、芯材30の厚さ方向および長手方向、さらには幅方向の連結強度が向上したものとなり、これら方向に対する剛性が高まる。例えば、芯材30が厚さ方向に伸びて剥離するといった事態も起こりにくい。したがって、ある方向で偏って弱いということが抑えられ。パネル10としての全体的な強度が従来と比較して大幅に向上する。また、ロックウールの繊維に方向性がなく、厚さ方向に横断する要素も多いため、厚さ方向への熱が通過しにくい。これにより、断熱性が確保される。したがって実施形態のパネル10は、ロックウール製の芯材を備えたサンドイッチ構造の建材パネルにおいて、強度および断熱性の両立が図られる。このような効果は、ロックウールの繊維における曲がりながら延びる領域が、少なくとも芯材30の厚さ方向および長手方向を含む断面の中で90%~100%を占めると得やすい。また、当該断面が、図3に示すようにロックウールの繊維によりマーブル状の模様を呈していると得やすい。
【0029】
[実施例]
上記実施形態と同様の構成を有する芯材、すなわちロックウール製であって繊維が図3に示したようにアトランダムに延びる芯材の実施例1と、繊維の方向が実施形態と異なるロックウール製の比較例1、2の芯材をそれぞれ作製し、これらの密度および厚さ方向の熱伝導率について、「JIS A 1412-1」の測定方法にしたがって測定した。なお、比較例1の芯材は、ロックウールの繊維の方向が面方向に沿って一定方向に延びる横繊維型の芯材であり、比較例2の芯材は、ロックウール製であって繊維の方向が厚さ方向に沿って一定方向に延びる縦繊維型の芯材である。また、実施例1および比較例1、2の芯材の強度についても調べた。強度の測定方法は、それぞれの芯材を用いてサンドイッチパネルを作製し、そのパネルを、「JIS A 1414-2」に準じて等分布荷重を載荷する方法で行った。これらの結果を、表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、横繊維型の比較例1は、厚さ方向の熱伝導率が低く断熱性が高いが、強度が低い。一方、横繊維型の比較例2は、強度が高いものの、厚さ方向の熱伝導率が高く断熱性が低い。これに対し実施例1は、熱伝導率が比較例1と同等であって、なおかつ強度も十分で実用上問題ないレベルにある。
【符号の説明】
【0032】
10 建材パネル
21、22 面材
30 芯材
図1
図2
図3