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特開2024-133970騒音管理装置、騒音管理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133970
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】騒音管理装置、騒音管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/00 20060101AFI20240926BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G10K15/00 L
H04R3/00 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044014
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522237542
【氏名又は名称】NTTソノリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】門脇 正天
(72)【発明者】
【氏名】小林 和則
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 拓斗
(72)【発明者】
【氏名】柿山 陽一郎
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220BA30
(57)【要約】
【課題】外耳道内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行う。
【解決手段】騒音管理装置は、利用者の外耳道または外耳道の近傍に装着されたマイクロホンで観測された外耳道内の音響信号に基づいて推定された、複数の時間区間または離散時間それぞれにおける耳内騒音レベルを蓄積し、蓄積された前記耳内騒音レベルを用い、この利用者が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の外耳道または前記外耳道の近傍に装着されたマイクロホンで観測された前記外耳道内の音響信号に基づいて推定された、複数の時間区間または離散時間それぞれにおける耳内騒音レベルを蓄積する騒音レベル保存部と、
蓄積された前記耳内騒音レベルを用い、前記利用者が騒音許容基準を超えているか否かを判定する判定部と、
を有する騒音管理装置。
【請求項2】
請求項1の騒音管理装置であって、
前記判定部は、前記利用者の発話区間に属する前記耳内騒音レベルを用いることなく、前記利用者の無発話区間に属する前記耳内騒音レベルを用い、前記利用者が騒音許容基準を超えているか否かを判定する、騒音管理装置。
【請求項3】
請求項1の騒音管理装置であって、
前記騒音許容基準は、前記外耳道の外部における騒音の許容基準であり、
前記判定部は、参照音響信号を前記外耳道の外部で観測して得られる第1周波数特性と前記参照音響信号を前記外耳道の内部で観測して得られる第2周波数特性との関係を表す情報、および、前記耳内騒音レベルを用い、前記利用者が前記騒音許容基準を超えているか否かを判定する、騒音管理装置。
【請求項4】
請求項1の騒音管理装置であって、
前記騒音レベル保存部は、複数の周波数区間それぞれの前記耳内騒音レベルを蓄積し、
前記騒音許容基準は、前記周波数区間ごとに定められており、
前記判定部は、前記周波数区間それぞれの前記耳内騒音レベルに基づき、前記利用者が前記騒音許容基準を超えているか否かを判定する、騒音管理装置。
【請求項5】
請求項4の騒音管理装置であって、
前記判定部は、前記周波数区間それぞれの前記耳内騒音レベルを前記周波数区間ごとに複数個のレベル範囲に区分し、前記周波数区間ごとの前記レベル範囲それぞれの聴取時間に、前記騒音許容基準に基づく前記周波数区間ごとの重み、を付して加算して得られる重み付け加算結果に基づき、前記利用者が前記騒音許容基準を超えているか否かを判定する、騒音管理装置。
【請求項6】
請求項4の騒音管理装置であって、
前記判定部は、前記周波数区間それぞれの前記耳内騒音レベルを用い、前記周波数区間ごとに前記騒音許容基準を超えているか否かを判定する、騒音管理装置。
【請求項7】
請求項4の騒音管理装置であって、
前記騒音レベル保存部は、さらに、前記外耳道の外部の音響信号に基づいて推定された複数の周波数区間それぞれの耳外騒音レベルを格納し、
前記判定部は、前記耳内騒音レベルおよび前記耳外騒音レベルを用い、前記周波数区間それぞれの前記外耳道の内部と外部との間の遮音性を判定する、騒音管理装置。
【請求項8】
請求項7の騒音管理装置であって、
前記判定部は、前記利用者が前記騒音許容基準を超えている前記周波数区間における前記遮音性を判定する、騒音管理装置。
【請求項9】
騒音管理装置の騒音管理方法であって、
利用者の外耳道または前記外耳道の近傍に装着されたマイクロホンで観測された前記外耳道内の音響信号に基づいて推定された、複数の時間区間または離散時間それぞれにおける耳内騒音レベルを蓄積する騒音レベル保存ステップと、
蓄積された前記耳内騒音レベルを用い、前記利用者が騒音許容基準を超えているか否かを判定する判定ステップと、
を有する騒音管理方法。
【請求項10】
請求項9の騒音管理方法であって、
前記判定ステップは、前記利用者の発話区間に属する前記耳内騒音レベルを用いることなく、前記利用者の無発話区間に属する前記耳内騒音レベルを用い、前記利用者が騒音許容基準を超えているか否かを判定するステップである、騒音管理方法。
【請求項11】
請求項9の騒音管理方法であって、
前記騒音許容基準は、前記外耳道の外部における騒音の許容基準であり、
前記判定ステップは、参照音響信号を前記外耳道の外部で観測して得られる第1周波数特性と前記参照音響信号を前記外耳道の内部で観測して得られる第2周波数特性との関係を表す情報、および、前記耳内騒音レベルを用い、前記利用者が前記騒音許容基準を超えているか否かを判定するステップである、騒音管理方法。
【請求項12】
請求項9の騒音管理方法であって、
前記騒音レベル保存ステップは、複数の周波数区間それぞれの前記耳内騒音レベルを蓄積するステップであり、
前記騒音許容基準は、前記周波数区間ごとに定められており、
前記判定ステップは、前記周波数区間それぞれの前記耳内騒音レベルに基づき、前記利用者が前記騒音許容基準を超えているか否かを判定するステップである、騒音管理方法。
【請求項13】
請求項1から8の何れかの騒音管理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を計測する技術に関し、特に、利用者が聴取する騒音を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音環境下で作業を行う場合、聴覚へのダメージを防ぐために、耳栓やイヤマフなどで外耳道の内部に入る騒音を低減させ、聴覚を保護することが重要である(例えば、非特許文献1等参照)。非特許文献1には、WHOが示した騒音許容基準が記載されている。ここでは、各音圧レベルについて1日あたりの許容時間が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“「難聴」のリスクを生む、危険な音量とは”、[online]、2018年6月20日、一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、[2023年1月31日検索]、インターネット<http://www.jibika.or.jp/owned/hwel/news/004/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、耳栓やイヤマフを装着した場合、通常のマイクロホンでは外耳道の内部に到達する騒音のレベルを計測することができない。そのため、外耳道の外部の騒音レベルと耳栓やイヤマフの遮音性を考慮し、外耳道内に到達する騒音を推定して管理するほかない。
【0005】
しかしながら、耳栓やイヤマフの装着が不適切であったり、スペックが不十分であったりすると、期待した遮音性が得られず、聴覚の許容量を超えた騒音が外耳道内に到達してしまうことがある。しかしながら、そのような事実は騒音の測定結果に現れず、実際に外耳道内に到達している騒音のレベルを管理することはできない。そのため、作業者の聴覚の健康管理を行うことも難しい。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、外耳道内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
騒音管理装置は、利用者の外耳道または外耳道の近傍に装着されたマイクロホンで観測された外耳道内の音響信号に基づいて推定された、複数の時間区間または離散時間それぞれにおける耳内騒音レベルを蓄積し、蓄積された前記耳内騒音レベルを用い、この利用者が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。
【発明の効果】
【0008】
これにより、外耳道内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の騒音管理システムを例示するための図である。
図2図2は、実施形態の騒音管理システムを例示するための図である。
図3図3は、実施形態の騒音管理装置を例示するためのブロック図である。
図4図4は、実施形態の騒音管理システムを例示するための図である。
図5図5は、実施形態の騒音管理システムを例示するための図である。
図6図6は、実施形態の騒音管理装置を例示するためのブロック図である。
図7図7は、実施形態の騒音管理装置を例示するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。
以下で説明する各実施形態の騒音管理装置は、利用者の外耳道または外耳道の近傍に装着されたマイクロホンで観測された外耳道内の音響信号に基づいて推定された、複数の時間区間または離散時間それぞれにおける耳内騒音レベルを蓄積し、蓄積された前記耳内騒音レベルを用い、利用者が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。これにより、外耳道内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。なお、耳内騒音レベルとは、外耳道内の騒音の大きさを表す指標である。耳内騒音レベルは、例えば、外耳道内の音響信号の大きさ(例えば、音響信号の振幅の絶対値やパワー)の平均値であってもよいし、音圧レベルであってもよい。耳内騒音レベルは、外耳道の入り口付近の騒音の大きさを表していてもよいし、外耳道の奥(例えば、鼓膜付近)の騒音の大きさを表していてもよい。また、耳内騒音レベルの推定と、耳内騒音レベルの蓄積や利用者が騒音許容基準を超えているか否かの判定とは、同じ装置で行われてもよいし、互いに異なる装置で行われてもよい。以下、図面を用いて各実施形態を説明する。
【0011】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態を説明する。
<構成>
図1に例示するように、本実施形態では、騒音環境下で利用者1000が騒音管理システム1を装着する。騒音管理システム1は、利用者1000の耳内での騒音レベル(耳内騒音レベル)を推定して蓄積し、蓄積された耳内騒音レベルを用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。例えば、騒音管理システム1は、騒音管理を専用に行うシステムであってもよいし、能動騒音制御技術(例えば、参考文献1等参照)を用いて騒音制御を行うシステムに組み込まれていてもよいし、騒音環境化で他者との音声通話を行う通話システムに組み込まれていてもよいし、利用者1000の音声を集音するシステムに組み込まれていてもよい。
参考文献1:西村正治,梶川嘉延,“アクティブノイズコントロール”,[online],2011年11月,電子情報通信学会,知識の森 2群-6編-6章,[2023年2月1日検索],インターネット<http://www.ieice-hbkb.org/files/02/02gun_06hen_06.pdf>
【0012】
図2に例示するように、本実施形態の騒音管理システム1は、騒音管理装置11、スピーカ12、マイクロホン13(耳内マイクロホン)、筐体14、およびイヤーチップ15(イヤーピース、イヤーパッド)を有する。この例の筐体14は、中空の中空部141,142および先端部143を有している。先端部143の径は中空部142の径よりも小さく、中空部142の先端部143側の領域はテーパー状に形成され、中空部142につながっている。先端部143の端部は開放端143aとなっており、この開放端143aを通じて中空部142および先端部143の内部が開放端143aの外方に開放されている。先端部143の外側には、先端部143を囲むイヤーチップ15が取り付けられている。中空部141と中空部142の間にはスピーカ12が取り付けられている。スピーカ12は中空部142側に擬似騒音信号を放出するように配置されている。先端部143の内部にはマイクロホン13が取り付けられている。図2の例では、先端部143内部の中空部142側の位置にマイクロホン13が取り付けられている。しかし、これは本発明を限定するものではない。中空部141の内部には騒音管理装置11が取り付けられ、騒音管理装置11はスピーカ12およびマイクロホン13と電気的に接続されている。本実施形態の騒音管理システム1は、利用者1000の耳1010に装着される。すなわち、開放端143aを利用者1000の鼓膜1012側に向けた状態で、イヤーチップ15が取り付けられた先端部143が耳1010の外耳道1011に挿入される。これにより、先端部143の内部に取り付けられたマイクロホン13が、外耳道1011または外耳道1011の近傍に装着される。
【0013】
筐体14の外部で発せられた雑音信号nout(t)および利用者1000が発した音声信号sout(t)は、空気中を伝搬して筐体14の外部に到達する。ここで、tは離散時間を表すインデックスである。これらの雑音信号nout(t)および音声信号sout(t)は、筐体14の音孔15aを通じてマイクロホン13の受音位置に到達する。この過程で雑音信号nout(t)および音声信号sout(t)は大きく減衰する。そのため、雑音信号nin(t)の音圧レベルは雑音信号nout(t)の音圧レベルよりも低い。このようにマイクロホン13に到達した雑音信号nout(t)をnin(t)と表現する。また、マイクロホン13に到達する音声信号sout(t)は十分小さいとみなして無視することにする。また、利用者1000から発せられた音声信号は、さらに利用者1000の身体を伝達してマイクロホン13に到達する。このように利用者1000の身体を伝搬された音声信号をsin(t)と表現する。マイクロホン13で観測された雑音信号nin(t)および音声信号sin(t)の混合信号を入力音響信号a(t)=sin(t)+nin(t)と表現する。
【0014】
図3に例示するように、本実施形態の騒音管理装置11は、騒音レベル推定部111、騒音レベル保存部112、および判定部113を有する。騒音レベル推定部111は、マイクロホン13で観測された入力音響信号a(t)の入力が可能なように構成されている。
【0015】
<騒音管理処理>
入力音響信号a(t)は、騒音管理装置11(図3)の騒音レベル推定部111に入力される。前述のように、この入力音響信号a(t)は、外耳道1011または外耳道1011の近傍に装着されたマイクロホン13で観測された外耳道1011内の音響信号を表す。騒音レベル推定部111は、この入力音響信号a(t)に基づいて、複数の時間区間Bまたは離散時間tそれぞれにおける耳内騒音レベルE(t)を推定する。耳内騒音レベルE(t)は、入力音響信号a(t)の大きさに基づく値である。例えば、入力音響信号a(t)の大きさは、a(t)の振幅の絶対値であってもよいし、a(t)のパワーであってもよいし、その他のa(t)の振幅の単調増加関数値であってもよい。時間区間Bは離散時間tに対応する時間区間を表す。時間区間Bは離散時間tを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。時間区間Bの時間長(フレーム長)は、予め定められていてもよいし(固定長)、動的に定められてもよい(可変長)。時間区間Bそれぞれにおける耳内騒音レベルE(t)は、例えば、各時間区間Bにおける入力音響信号a(t)の大きさ(レベル)の平均値(短時間平均レベル)である。例えば、時間区間Bの時間長がNであり、B=[t-1,t-N](t-1以上t-N以下の閉区間)である場合、騒音レベル推定部111は、以下の式(1)のようにE(t)を算出する。
【数1】

ここで、Nは正整数である。また、離散時間tそれぞれにおける耳内騒音レベルE(t)は、各離散時間tの大きさ(レベル)である。例えば、騒音レベル推定部111は、以下の式(2)のようにE(t)を算出してもよい。
E(t)=|a(t)| (2)
ここで、|・|は・の絶対値を表す。(1)(2)の例の場合、耳内騒音レベルE(t)に対応する音圧レベルP(t)[dBSPL]は以下の式(3)のようになる。
P(t)=20×log10(αE(t)) (3)
ここで、αは予め定められた実数係数(固定値)であり、例えば、0dBSPLの音圧の時のレベルE0(t)の逆数1/E(t)をαとして設定する。なお、これは一例であって本発明を限定するものではない。例えば、音圧レベルを耳内騒音レベルE(t)としてもよい。このように得られた耳内騒音レベルE(t)は、騒音レベル保存部112に蓄積される。すなわち、時間区間Bまたは離散時間tそれぞれの耳内騒音レベルE(t)が騒音レベル保存部112に格納される。これにより、利用者1000が晒された耳内騒音レベルE(t)とその時間区間Bまたは離散時間tを知ることができる(ステップS111)。
【0016】
その後、所定の契機で、判定部113が、騒音レベル保存部112に蓄積された耳内騒音レベルE(t)の集合Eを読み込み、これを用いて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。例えば、判定部113は、利用者1000が騒音環境下にいる際に、所定の周期で(例えば、15分ごと、1時間ごと等)この判定を行ってもよいし、利用者1000が騒音環境下から出たときにこの判定を行ってもよいし、毎日決まった時間にこの判定を行ってもよいし、毎週決まった曜日にこの判定を行ってもよい。この判定を行う場合、例えば、判定部113は、集合Eに含まれる騒音レベルE(t)をM個(Mは正整数)の音圧レベルP,…,PM-1(レベル範囲)(例えば、P=85~90[dBSPL],…,PM-1=130[dBSPL]以上等)に振り分け、それぞれの音圧レベルP(ただし、m=0,…,M-1)ごとに騒音の聴取時間LTを集計する。例えば、判定部113は、聴取時間LTについての音圧レベルP,…,PM-1のヒストグラムを生成する。なお、聴取時間LTは、一定期間(例えば、15分、1日、1週間等)に、利用者1000が音圧レベルPの騒音を聴取した累積時間(合計時間)である。なお、大きなmに対応する音圧レベルPほど音圧レベルが高い(音圧が大きい)ことを表す。
【表1】

次に判定部113は、例えば、それぞれの音圧レベルPについて得た聴取時間LTが予め定められた許容聴取時間ALT(ただし、m=0,…,M-1)(例えば、非特許文献1等参照)を超えているか否かを判定し、これに基づいて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。例えば、判定部113は、いずれかの音圧レベルPの騒音の聴取時間LTがその音圧レベルPの許容聴取時間ALT(例えば、P=85~90[dBSPL]であればALTは1日あたり8時間)を超えているときに、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでなければ騒音許容基準を超えていないと判定する。あるいは、例えば、判定部113は、予め定められた音圧レベルPの騒音の聴取時間LTがそれらの音圧レベルPの許容聴取時間ALTを超えているときに、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでなければ騒音許容基準を超えていないと判定してもよい。また、例えば、判定部113は、予め定められた音圧レベルP以上の聴取時間LTの加算聴取時間SLTが、所定の容聴取時間ALTを超えているときに、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでなければ騒音許容基準を超えていないと判定してもよい。加算聴取時間SLTは、例えば次式で計算される。
【数2】

また、容聴取時間ALTは、例えば次式を満たす。
【数3】

しかし、これは本発明を限定されるものではなく、その他の容聴取時間ALTが用いられてもよい。この判定を終えた判定部113は、その騒音許容基準を超えているか否かを表す判定結果Rを出力する。判定結果Rは、例えば、管理者の装置に送信され、利用者1000の聴覚の健康管理に利用される(ステップS113)。
【0017】
<本実施形態の特徴>
本実施形態では、外耳道1011または外耳道1011の近傍に装着されたマイクロホン13を用いて観測された入力音響信号a(t)に基づいて耳内騒音レベルE(t)を得、蓄積された耳内騒音レベルE(t)に基づいて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。そのため、外耳道1011内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【0018】
[第1実施形態の変形例1]
第1実施形態では、騒音管理装置11が判定部113を有し、この判定部113で利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。しかしながら、騒音管理装置11が判定部113を有していなくてもよい。この場合、他の装置が騒音レベル保存部112に蓄積された耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0019】
[第1実施形態の変形例2]
騒音管理システム1が装着センサを有していてもよい。この装着センサは、騒音管理システム1が利用者1000に装着されているか否かを検知するものである。この場合、騒音管理システム1が利用者1000に装着されていると検知された期間でのみ、ステップS111において、時間区間Bまたは離散時間tそれぞれの耳内騒音レベルE(t)が騒音レベル保存部112に格納されてもよい。
【0020】
[第1実施形態の変形例3]
図4に例示するように、利用者1000の耳に騒音管理システム1を装着し、その上からさらにイヤマフ16を装着してもよい。この場合であっても、外耳道1011内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【0021】
[第2実施形態]
第1実施形態では、騒音管理装置11が蓄積されたすべての時間区間Bまたは離散時間tの耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。しかしながら、利用者1000の発話区間(利用者1000が発話している時間区間)では、入力音響信号a(t)=sin(t)+nin(t)に、マイクロホン13に到達した雑音信号nin(t)のみならず、利用者1000の身体を伝搬された音声信号sin(t)も含まれる。そのため、発話区間の入力音響信号a(t)から推定された耳内騒音レベルE(t)を用いたのでは、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを正確に判定できないこともある。そのため、利用者1000の発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用いることなく、利用者1000の無発話区間(利用者1000が発話していない時間区間)に属する耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。以降、これまで説明した事項と共通する部分については同じ参照番号を用いて説明を簡略化する。
【0022】
<構成>
図1に例示するように、本実施形態では、騒音環境下で利用者1000が騒音管理システム2を装着する。図2に例示するように、本実施形態の騒音管理システム2は、騒音管理装置21、スピーカ12、マイクロホン13、筐体14、およびイヤーチップ15を有する。図3に例示するように、本実施形態の騒音管理装置21は、騒音レベル推定部211、区間推定部214、騒音レベル保存部112、および判定部213を有する。騒音レベル推定部211および区間推定部214は、マイクロホン13で観測された入力音響信号a(t)の入力が可能なように構成されている。
【0023】
<騒音管理処理>
入力音響信号a(t)は、騒音レベル推定部211および区間推定部214に入力される。区間推定部214は、入力音響信号a(t)を用い、その発話区間および無発話区間の少なくとも一方を推定し、その推定結果を表す区間情報V(t)を出力する。この推定には、例えば、特開2008-158035(参考文献2)等に記載された公知の方法を用いることができる。区間情報V(t)は、時間区間Bまたは離散時間tそれぞれの入力音響信号a(t)が、発話区間であるか否かを表す情報であってもよいし、無発話区間であるか否かを表す情報であってもよいし、発話区間であるか無発話区間であるかを表す情報であってもよい。区間情報V(t)は騒音レベル推定部211に入力される(ステップS214)。
【0024】
騒音レベル推定部211は、入力音響信号a(t)に基づいて、複数の時間区間Bまたは離散時間tそれぞれにおける耳内騒音レベルE(t)を推定する。騒音レベル推定部211は、耳内騒音レベルE(t)と区間情報V(t)とを対応付けて騒音レベル保存部112に蓄積する(ステップS211)。
【0025】
その後、所定の契機で、判定部213が、騒音レベル保存部112に蓄積された耳内騒音レベルE(t)および区間情報V(t)を含む集合Eを読み込み、これを用いて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。ただし、判定部213は、区間情報V(t)を参照し、利用者1000の無発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)のみを用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。すなわち、判定部213は、利用者1000の発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用いることなく、利用者1000の無発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。この判定を終えた判定部213は、その騒音許容基準を超えているか否かを表す判定結果Rを出力する(ステップS213)。
【0026】
<本実施形態の特徴>
本実施形態でも、外耳道1011または外耳道1011の近傍に装着されたマイクロホン13を用いて観測された入力音響信号a(t)に基づいて耳内騒音レベルE(t)を得、蓄積された耳内騒音レベルE(t)に基づいて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。ただし、この際、発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用いることなく、無発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。これにより、外耳道1011内に到達する騒音のレベルをより正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【0027】
[第2実施形態の変形例1]
第2実施形態では、すべての時間区間Bまたは離散時間tの耳内騒音レベルE(t)および区間情報V(t)が蓄積され、判定部213が利用者1000の発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用いることなく、利用者1000の無発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。しかしながら、騒音レベル推定部211が、区間情報V(t)を参照し、利用者1000の無発話区間に属する時間区間Bまたは離散時間tの耳内騒音レベルE(t)のみを推定して騒音レベル保存部112に蓄積し、判定部213が蓄積された無発話区間での耳内騒音レベルE(t)を用いて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0028】
[第2実施形態の変形例2]
第2実施形態では、騒音管理装置21が判定部213を有し、この判定部213で利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。しかしながら、騒音管理装置21が判定部213を有していなくてもよい。この場合、他の装置が騒音レベル保存部112に蓄積された区間情報V(t)を参照し、蓄積された耳内騒音レベルE(t)のうち、利用者1000の無発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)のみを用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0029】
同様に、第2実施形態の変形例1において、騒音管理装置21が判定部213を有していなくてもよい。この場合、他の装置が騒音レベル保存部112に蓄積された無発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)のみを用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0030】
[第2実施形態の変形例3]
騒音管理システム2が装着センサを有していてもよい。この場合、騒音管理システム2が利用者1000に装着されていると検知された期間でのみ、耳内騒音レベルE(t)と区間情報V(t)が騒音レベル保存部112に格納されてもよい。
【0031】
[第2実施形態の変形例4]
図4に例示するように、利用者1000の耳に騒音管理システム2を装着し、その上からさらにイヤマフ16を装着してもよい。この場合であっても、外耳道1011内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【0032】
[第3実施形態]
WHO等によって定められる騒音許容基準(例えば、非特許文献1)は、外耳道の内部に到達する騒音の許容基準を示したものではなく、その外部空間での騒音の許容基準を示したものである。ここで、外耳道での共振等の影響により、外耳道の内部での音響信号の周波数特性は、その外部空間での音響信号の周波数特性と相違することが知られている(参考文献3)。そのため、前述のように推定された耳内騒音レベルを用い、外部空間における騒騒音許容基準を満たしているか否かを判定しても、聴覚へのダメージを正しく評価した結果とならない場合がある。
参考文献3:稲永潔文、“ダミーヘッド(HATS)とバイノーラルとサラウンドヘッドホン”、JAS Journal 2013 Vol.53 No.3(5 月号)、インターネット<https://www.jas-audio.or.jp/journal-pdf/2013/05/201305_017-023.pdf>
【0033】
このような点を考慮し、騒音許容基準が外耳道の外部における騒音の許容基準である場合に、参照音響信号を外耳道の外部で観測して得られる周波数特性Cout(ω)(第1周波数特性)とこの参照音響信号を外耳道の内部で観測して得られる周波数特性Cin(ω)(第2周波数特性)との関係を表す情報H(ω)、および、耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。これにより、聴覚へのダメージをより正しく評価し、適切な健康管理を行うことができる。なお、「参照音響信号」はどのようなものであってもよい。ωは離散周波数を表すインデックスであり、周波数特性Cout(ω),Cin(ω)は、例えば、周波数スペクトル(例えば、パワースペクトル)である。周波数特性Cout(ω),Cin(ω)は、実際に参照音響信号を観測して得られたものであってもよいし、標準的な音響信号を用いたシミュレーションによって得られたものであってもよい。周波数特性Cout(ω)と周波数特性Cin(ω)との関係を表す情報H(ω)は、例えば、Cin(ω)に対するCout(ω)の比率Cout(ω)/Cin(ω)であってもよいし、すべての離散周波数ωについてのCin(ω)の総和Cin(例えば、オーバオール値)に対するすべての離散周波数ωについてのCout(ω)の総和Coutの比率Cout/Cinであってもよい。この場合、例えば、何れかの離散周波数ωについての比率Cout(ω)/Cin(ω)をE(t)に乗じた値に基づいて、騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよいし、E(t)に比率Cout/Cinを乗じた値に基づいて、騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0034】
<構成>
図1に例示するように、本実施形態では、騒音環境下で利用者1000が騒音管理システム3を装着する。図2に例示するように、本実施形態の騒音管理システム3は、騒音管理装置31、スピーカ12、マイクロホン13、筐体14、およびイヤーチップ15を有する。図3に例示するように、本実施形態の騒音管理装置31は、区間推定部214、騒音レベル保存部112、および判定部313を有する。騒音レベル推定部211および区間推定部214は、マイクロホン13で観測された入力音響信号a(t)の入力が可能なように構成されている。判定部313には、上述した周波数特性Cout(ω)(第1周波数特性)と周波数特性Cin(ω)(第2周波数特性)との関係を表す情報Hが設定されている。
【0035】
<騒音管理処理>
騒音レベル推定部111は、入力音響信号a(t)に基づいて、複数の時間区間Bまたは離散時間tそれぞれにおける耳内騒音レベルE(t)を推定し、騒音レベル保存部112に格納する(ステップS111)。
【0036】
その後、所定の契機で、判定部313が、騒音レベル保存部112に蓄積された耳内騒音レベルE(t)の集合Eを読み込み、これと周波数特性Cout(ω)と周波数特性Cin(ω)との関係を表す情報Hとを用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。本実施形態の騒音許容基準は、外耳道1011の外部空間での騒音の許容基準を示してものである(例えば、非特許文献1)。例えば、情報Hが比率Cout/Cinである場合、判定部313は、(Cout/Cin)E(t)に基づいて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。例えば、判定部313は、集合Eに含まれる騒音レベルE(t)について、(Cout/Cin)E(t)をM個の音圧レベルP,…,PM-1に振り分け、それぞれの音圧レベルP(ただし、m=0,…,M-1)ごとに騒音の聴取時間LTを集計する。次に判定部313は、例えば、それぞれの音圧レベルPについて得た聴取時間LTが予め定められた許容聴取時間ALTを超えているか否かを判定し、これに基づいて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。ここで、Cout/Cinに代えて何れかの離散周波数ωについての比率Cout(ω)/Cin(ω)が用いられてもよいし、Cout/CinまたはCout(ω)/Cin(ω)の単調増加関数値が用いられてもよい。この判定を終えた判定部313は、その騒音許容基準を超えているか否かを表す判定結果Rを出力する(ステップS313)。
【0037】
<本実施形態の特徴>
本実施形態では、騒音許容基準が外耳道の外部における騒音の許容基準である場合に、判定部313が、参照音響信号を外耳道の外部で観測して得られる周波数特性Cout(ω)(第1周波数特性)とこの参照音響信号を外耳道の内部で観測して得られる周波数特性Cin(ω)(第2周波数特性)との関係を表す情報H、および、耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。これにより、聴覚へのダメージをより正しく評価し、適切な健康管理を行うことができる。
【0038】
[第3実施形態の変形例1]
第3実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。すなわち、ステップS111に代えて第2実施形態で説明したステップS214およびステップS211を実行し、判定部313が、参照音響信号を外耳道の外部で観測して得られる周波数特性Cout(ω)(第1周波数特性)とこの参照音響信号を外耳道の内部で観測して得られる周波数特性Cin(ω)(第2周波数特性)との関係を表す情報H、および、耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。ただし、この際、発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用いることなく、無発話区間に属する耳内騒音レベルE(t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。これにより、外耳道1011内に到達する騒音のレベルをより正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【0039】
[第3実施形態の変形例2]
第3実施形態と第2実施形態の変形例1とを組み合わせてもよい。すなわち、騒音レベル推定部111に代えて騒音レベル推定部211が、区間情報V(t)を参照し、利用者1000の無発話区間に属する時間区間Bまたは離散時間tの耳内騒音レベルE(t)のみを推定して騒音レベル保存部112に蓄積し、判定部313が蓄積された耳内騒音レベルE(t)と、情報Hとを用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0040】
[第3実施形態の変形例3]
第3実施形態では、騒音管理装置31が判定部313を有し、この判定部313で利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。しかしながら、騒音管理装置31が判定部313を有していなくてもよい。この場合、他の装置が、上述のように利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0041】
[第3実施形態の変形例4]
騒音管理システム3が装着センサを有していてもよい。この場合、騒音管理システム3が利用者1000に装着されていると検知された期間でのみ、耳内騒音レベルE(t)(または耳内騒音レベルE(t)と区間情報V(t))が騒音レベル保存部112に格納されてもよい。
【0042】
[第3実施形態の変形例5]
図4に例示するように、利用者1000の耳に騒音管理システム3を装着し、その上からさらにイヤマフ16を装着してもよい。この場合であっても、外耳道1011内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【0043】
[第4実施形態]
第1実施形態から第3実施形態およびそれらの変形例において、オーバーオールの耳内騒音レベルに代え、複数の周波数区間それぞれの耳内騒音レベルを推定し、周波数区間それぞれの耳内騒音レベルに基づき、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0044】
<構成>
図1に例示するように、本実施形態では、騒音環境下で利用者1000が騒音管理システム4を装着する。図2に例示するように、本実施形態の騒音管理システム4は、騒音管理装置41、スピーカ12、マイクロホン13、筐体14、およびイヤーチップ15を有する。図3に例示するように、本実施形態の騒音管理装置41は、騒音レベル推定部411、騒音レベル保存部112、および判定部413を有する。騒音レベル推定部411は、マイクロホン13で観測された入力音響信号a(t)の入力が可能なように構成されている。
【0045】
<騒音管理処理>
入力音響信号a(t)は、騒音レベル推定部411に入力される。騒音レベル推定部111は、入力音響信号a(t)を用い、複数の周波数区間fそれぞれについて、複数の時間区間Bまたは離散時間tそれぞれにおける耳内騒音レベルE(f,t)を推定する。ここでfは周波数区間を表すインデックスである。例えば、騒音レベル推定部111は、周波数分析によって、入力音響信号a(t)を周波数区間fごとに分解してA(f,t)を得、周波数区間fそれぞれについて、複数の時間区間Bまたは離散時間tそれぞれにおける耳内騒音レベルE(f,t)を推定する。耳内騒音レベルE(f,t)は、A(f,t)の大きさに基づく値である。例えば、A(f,t)の大きさは、A(f,t)の振幅の絶対値であってもよいし、A(f,t)のパワーであってもよいし、その他のA(f,t)の振幅の単調増加関数値であってもよい。この処理は、例えば、第1実施形態のE(t)を算出する処理(例えば、式(1)や式(2)の右辺)のa(t)をA(f,t)に置き換えたものである。このように得られた耳内騒音レベルE(f,t)は、騒音レベル保存部112に蓄積される。すなわち、騒音レベル保存部112は、周波数区間fそれぞれの耳内騒音レベルE(f,t)を蓄積する(ステップS411)。
【0046】
その後、所定の契機で、判定部413が、騒音レベル保存部112に蓄積された耳内騒音レベルE(f,t)の集合Eを読み込み、これを用いて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。ただし、本実施形態では、騒音許容基準が周波数区間fごとに定められており、判定部413は、周波数区間fそれぞれの耳内騒音レベルE(f,t)に基づき、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。以下にこの具体例を示す。
【0047】
<具体例4-1>
具体例4-1では、判定部413は、周波数区間fそれぞれの耳内騒音レベルE(f,t)を周波数区間fごとに複数個の音圧レベルP(f),…,PM-1(f)(レベル範囲)に区分し、周波数区間fごとの音圧レベルP(f),…,PM-1(f)(レベル範囲)それぞれの聴取時間LT(f)に、騒音許容基準に基づく周波数区間fごとの重みW(f)、を付して加算して得られる重み付け加算結果に基づき、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。ここで、f=0,…,F-1であり、Fは正整数である。また、重みW(f)は、予め定められた0以上の実数であり、聴覚への影響が小さい周波数ほど小さい値を設定する。例えば、人間の聴覚を考慮した周波数重みづけ特性であるA特性を重みW(f)として用いる。騒音許容基準で許容されている許容聴取時間ALT(f)が長いほど小さく設定しても良い。例えば、騒音許容基準において、音圧レベルP(f)(ただし、m=0,…,M-1)および周波数区間f(ただし、f=0,…,F-1)ごとに、許容聴取時間ALT(f)が以下の式(4)のように定義または近似できるとする。
ALT(f)=ALT/W(f) (4)
ここで、ALTはオーバーオールの音圧レベルPの許容聴取時間を表す。この場合、例えば、判定部413は、集合Eに含まれる騒音レベルE(f,t)を周波数区間fごとにM個の音圧レベルP(f),…,PM-1(f)(レベル範囲)に振り分け(区分し)、それぞれの音圧レベルP(f)(ただし、m=0,…,M-1)ごとに騒音の聴取時間LT(f)を集計する。例えば、判定部413は、聴取時間LT(f)についての音圧レベルP(f),…,PM-1(f)のヒストグラムを生成する。なお、聴取時間LT(f)は、一定期間(例えば、15分、1日、1週間等)に、利用者1000が周波数区間fの音圧レベルP(f)の騒音を聴取した累積時間(合計時間)である。
【表2】
【0048】
判定部413は、例えば、それぞれの音圧レベルP(f)について得た聴取時間LT(f)に重みW(f)を付して加算して得られる以下の式(6)の重み付け加算結果WAが閾値TH4を超えているか否かによって、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。ここで閾値TH4は正の実数である。
【数4】

例えば、判定部413は、何れかの音圧レベルP(f)についての重み付け加算結果WAが閾値TH4を超えている場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでない場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていないと判定する。あるいは、例えば、判定部413は、予め定められた音圧レベルPについての重み付け加算結果WAが閾値TH4を超えている場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでない場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていないと判定してもよい。また、例えば、判定部413は、音圧レベルP以上の重み付け加算結果WAを累積加算したの加算聴取時間SWAが閾値TH4を超えている場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでない場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていないと判定してもよい。加算聴取時間SWAは、例えば次式で計算される。
【数5】
【0049】
その他、判定部413が、音圧レベルに代え、騒音レベルE(f,t)をその他のレベル範囲P(f),…,PM-1(f)に区分し、重み付け加算結果WAが閾値を超えているか否かによって、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。レベル範囲P(f)(ただし、m=0,…,M-1)は、騒音レベルEの大きさに対して単調増加する範囲であればどのようなものであってもよい。
【0050】
<具体例4-2>
具体例4-2では、判定部413は、周波数区間fそれぞれの耳内騒音レベルE(f,t)を用い、周波数区間fごとに騒音許容基準を超えているか否かを判定する。例えば、判定部413は、耳内騒音レベルE(f,t)を周波数区間fごとに複数個の音圧レベルP(f),…,PM-1(f)(レベル範囲)に振り分け(区分し)、それぞれの音圧レベルP(f)(ただし、m=0,…,M-1)ごとに騒音の聴取時間LT(f)を集計する。次に判定部413は、聴取時間LT(f)のそれぞれが閾値TH4(f)を超えているか否かによって、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。例えば、判定部413は、何れかの聴取時間LT(f)が閾値TH4(f)を超えている場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでない場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていないと判定する。あるいは、例えば、判定部413は、予め定められた音圧レベルPの騒音の聴取時間LT(f)が閾値TH4(f)を超えている場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでない場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていないと判定してもよい。また、例えば、判定部413は、音圧レベルP(f)以上の聴取時間LT(f)を累積加算した加算聴取時間SLT(f)が閾値TH4(f)を超えている場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定し、そうでない場合に、利用者1000が騒音許容基準を超えていないと判定してもよい。加算聴取時間SLT(f)は、例えば次式で計算される。
【数6】
【0051】
その他、判定部413が、音圧レベルに代え、騒音レベルE(f,t)をその他のレベル範囲P(f),…,PM-1(f)に区分し、それぞれのレベル範囲P(f)(ただし、m=0,…,M-1)ごとに騒音の聴取時間LT(f)を集計し、聴取時間LT(f)のそれぞれが閾値TH4(f)を超えているか否かによって、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0052】
上述の判定を終えた判定部413は、その騒音許容基準を超えているか否かを表す判定結果Rを出力する(ステップS413)。
【0053】
[第4実施形態の変形例1]
第4実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。すなわち、第2実施形態で説明したステップS214を実行し、区間情報V(t)が騒音レベル推定部411に入力される。騒音レベル推定部411は、入力音響信号a(t)を用い、複数の周波数区間fそれぞれについて、複数の時間区間Bまたは離散時間tそれぞれにおける耳内騒音レベルE(f,t)を推定する。騒音レベル推定部411は、耳内騒音レベルE(f,t)と区間情報V(t)とを対応付けて騒音レベル保存部112に蓄積する。
【0054】
その後、所定の契機で、判定部413が、騒音レベル保存部112に蓄積された耳内騒音レベルE(f,t)および区間情報V(t)の集合Eを読み込み、これを用いて利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。ただし、判定部413は、区間情報V(t)を参照し、利用者1000の無発話区間に属する耳内騒音レベルE(f,t)のみを用い、第4実施形態で説明したように、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。すなわち、判定部413は、利用者1000の発話区間に属する耳内騒音レベルE(f,t)を用いることなく、利用者1000の無発話区間に属する耳内騒音レベルE(f,t)を用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定する。これにより、外耳道1011内に到達する騒音のレベルをより正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【0055】
[第4実施形態の変形例2]
第4実施形態と第2実施形態の変形例1とを組み合わせてもよい。すなわち、騒音レベル推定部411が、区間情報V(t)を参照し、利用者1000の無発話区間に属する時間区間Bまたは離散時間tの耳内騒音レベルE(f,t)のみを推定して騒音レベル保存部112に蓄積し、判定部413が蓄積された耳内騒音レベルE(f,t)を用い、第4実施形態で説明したように、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0056】
[第4実施形態の変形例3]
第4実施形態では、騒音管理装置41が判定部413を有し、この判定部413で利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定した。しかしながら、騒音管理装置31が判定部413を有していなくてもよい。この場合、他の装置が、上述のように利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0057】
[第4実施形態の変形例4]
騒音管理システム4が装着センサを有していてもよい。この場合、騒音管理システム4が利用者1000に装着されていると検知された期間でのみ、耳内騒音レベルE(f,t)(または耳内騒音レベルE(f,t)と区間情報V(t))が騒音レベル保存部112に格納されてもよい。
【0058】
[第4実施形態の変形例5]
図4に例示するように、利用者1000の耳に騒音管理システム4を装着し、その上からさらにイヤマフ16を装着してもよい。この場合であっても、外耳道1011内に到達する騒音のレベルを正確に管理し、聴覚の健康管理を適切に行うことができる。
【0059】
[第4実施形態の変形例6]
第4実施形態またはその変形例と第3実施形態とを組み合わせてもよい。すなわち、第4実施形態またはその変形例において、周波数特性Cout(ω)と周波数特性Cin(ω)との関係を表す情報Hと、耳内騒音レベルE(f,t)とを用い、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。例えば、第4実施形態またはその変形例において、E(f,t)に代えてE(f,t)(Cout(ω)/Cin(ω))(ただし、f∈ω)の音圧レベルP(f)(レベル範囲)の騒音の聴取時間LT(f)を得、前述のように、利用者1000が騒音許容基準を超えているか否かを判定してもよい。
【0060】
[第4実施形態の変形例7]
耳内騒音レベルE(f,t)を流用し、外耳道1011の内部と外部との間の遮音性を判定してもよい。すなわち、騒音レベル保存部112が、さらに、外耳道1011の外部の音響信号に基づいて推定された複数の周波数区間fそれぞれの耳外騒音レベルD(f,t)を格納し、判定部413が、耳内騒音レベルE(f,t)および耳外騒音レベルD(f,t)を用い、周波数区間fそれぞれの外耳道1011の内部と外部との間の遮音性を判定してもよい。例えば、図2に例示するように、騒音管理システム4の筐体14およびイヤーチップ15は、外耳道1011の内部をその外部(筐体14およびイヤーチップ15の外部)から遮音している。しかし、騒音管理システム4の装着方法が不適切であったり、イヤーチップ15が劣化していたりすると、その遮音性が低下することがある。この変形例では、耳内騒音レベルE(f,t)と耳外騒音レベルD(f,t)との相違や比率等に基づき、この遮音性を判定する。
【0061】
[構成]
図5に例示するように、この変形例の騒音管理システム4は、騒音管理装置41、スピーカ12、マイクロホン13(耳内マイクロホン)、マイクロホン43(外部マイクロホン)、筐体44、およびイヤーチップ15を有する。この例の筐体44は、中空の中空部141,142および先端部143を有している。中空部141には音孔44aが設けられている。音孔44aは筐体44の壁よりも音を透過しやすい孔であり、例えば、貫通孔等である。マイクロホン43は、筐体44の中空部141の内側に取り付けられている。マイクロホン43の受音位置は、音孔44aの近傍であり、マイクロホン43はこの音孔44aを通じて筐体44の外部の音を集音できるように構成されている。中空部141の内部には騒音管理装置41が取り付けられ、騒音管理装置41はマイクロホン13,43と電気的に接続されている。筐体44の外部で発せられた雑音信号nout(t)および利用者1000が発した音声信号sout(t)は、空気中を伝搬して筐体44の外部に到達する。これらの雑音信号nout(t)および音声信号sout(t)は、筐体44の音孔44aを通じてマイクロホン43の受音位置に到達する。ここで、マイクロホン43で観測された雑音信号nout(t)および音声信号sout(t)の混合信号を入力音声信号y(t)=sout(t)+nout(t)と表現する。
【0062】
<騒音管理処理>
入力音声信号y(t)は、騒音管理装置41(図3)の騒音レベル推定部411に入力される。この変形例の騒音レベル推定部411は、入力音声信号y(t)(外耳道の外部の音響信号)に基づいて、複数の周波数区間fそれぞれにおける耳外騒音レベルD(f,t)を推定する。例えば、騒音レベル推定部411は、周波数分析によって、入力音響信号y(t)を周波数区間fごとに分解してY(f,t)を得、周波数区間fそれぞれについて、複数の時間区間Bまたは離散時間tそれぞれにおける耳外騒音レベルD(f,t)を推定する。耳外騒音レベルD(f,t)は、Y(f,t)の大きさに基づく値である。例えば、Y(f,t)の大きさは、Y(f,t)の振幅の絶対値であってもよいし、Y(f,t)のパワーであってもよいし、その他のY(f,t)の振幅の単調増加関数値であってもよい。この処理は、例えば、第1実施形態のE(t)を算出する処理(例えば、式(1)や式(2)の右辺)のa(t)をY(f,t))に置き換えたものである。このように得られた耳外騒音レベルD(f,t)は、前述の耳内騒音レベルE(f,t)とともに騒音レベル保存部112に蓄積される。
【0063】
その後、所定の契機で、判定部413が、騒音レベル保存部112に蓄積された耳内騒音レベルE(f,t)および耳外騒音レベルD(f,t)を読み込み、これらを用いて周波数区間fそれぞれの外耳道1011の内部と外部との間の遮音性を判定する。以下にこの具体例を示す。
【0064】
<具体例47-1>
具体例47-1では、判定部413は、以下の式(7)を満たすときに外耳道1011の内部と外部との間の遮音性に異常がある(例えば、騒音管理システム4の装着方法が不適切またはイヤーチップ15が劣化している)と判定し、そうでない場合に当該遮音性に異常がないと判定する。
E(f,t)>β(f)γ(f)D(f,t) (7)
ここで、β(f)は、周波数区間fに正常な騒音管理システム4が利用者1000に正常に装着された場合の外耳道1011の内部と外部との間の遮音性を表す。β(f)は周波数区間fごとに定められた正の実数であり、β(f)が小さいほど遮音性が高い。γ(f)は、周波数区間fごとに定められた正の実数係数であり、あらかじめ設定される定数である。γ(f)は、遮音性の劣化をどのくらいまで許容するかの係数であり、1.0以上の数字が設定される。γ(f)の値が大きいほど劣化の許容量が大きくなる。
【0065】
<具体例47-2>
具体例47-2では、判定部413は、以下の式(8)を満たすときに外耳道1011の内部と外部との間の遮音性に異常があると判定し、そうでない場合に当該遮音性に異常がないと判定する。
E(f,t)/D(f,t)>δ(f) (8)
ここで、δ(f)は周波数区間fごとに定められた正の実数定数であり、0<δ(f)<1を満たす。δ(f)は許容できる最低限の遮音性を設定し、大きい値になるほど劣化の許容量が大きくなる。
【0066】
<具体例47-3>
具体例47-3では、利用者1000が騒音許容基準を超えている周波数区間fについて、遮音性を判定する。この具体例では、まず、前述したように、判定部413が周波数区間fそれぞれの耳内騒音レベルE(f,t)を用い、周波数区間fごとに騒音許容基準を超えているか否かを判定する(具体例4-2)。ここで、何れかの聴取時間LT(f)が閾値TH4(f)を超えている場合、判定部413は、この聴取時間LT(f)に対応する周波数区間fにおける遮音性を判定する。この判定は、当該周波数区間fに対応する耳内騒音レベルE(f,t)および耳外騒音レベルD(f,t)を用いて行われる(例えば、具体例47-1,具体例47-2等)。
【0067】
この判定を終えた判定部413は、その判定結果R(外耳道1011の内部と外部との間の遮音性に異常があるか否かを表す判定結果)を出力する。
【0068】
[第4実施形態の変形例8]
第4実施形態の変形例7では、騒音レベル保存部112が、周波数区間fそれぞれの耳内騒音レベルE(f,t)および外騒音レベルD(f,t)を蓄積し、判定部413が、これらを用い、周波数区間fそれぞれの外耳道1011の内部と外部との間の遮音性を判定した。しかし、判定部413が、オーバーオールの耳内騒音レベルE(t)および外騒音レベルD(t)を用い、オーバーオールの外耳道1011の内部と外部との間の遮音性を判定してもよい。なお、外騒音レベルD(t)は、入力音響信号y(t)の大きさに基づく値である。例えば、入力音響信号y(t)の大きさは、y(t)の振幅の絶対値であってもよいし、y(t)のパワーであってもよいし、その他のy(t)の振幅の単調増加関数値であってもよい。耳内騒音レベルE(t)および外騒音レベルD(t)を用い、オーバーオールの外耳道1011の内部と外部との間の遮音性を判定する処理は、第4実施形態の変形例7のE(f,t)およびD(f,t)をE(t)およびD(t)に置き換えたものである。
【0069】
[第5実施形態]
判定部113,213,313,413で利用者1000が騒音許容基準を超えていると判定された場合や、外耳道1011の内部と外部との間の遮音性に異常があると判定された場合に、警告が発せられてもよい。
【0070】
図1に例示するように、本実施形態では、騒音環境下で利用者1000が騒音管理システム5を装着する。本実施形態の騒音管理システム5は、図2および図4に例示するように、騒音管理装置51、スピーカ12、マイクロホン13、筐体14、およびイヤーチップ15を有していてもよいし、図5に例示するように、騒音管理装置51、スピーカ12、マイクロホン13、マイクロホン43、筐体44、およびイヤーチップ15を有していてもよい。図3に例示するように、本実施形態の騒音管理装置51は、第1実施形態から第4実施形態またはそれらの変形例の騒音管理装置11,21,31,41に警告情報生成部513を追加したものである。
【0071】
警告情報生成部513には、第1実施形態から第4実施形態またはそれらの変形例の判定部113,213,313,413から出力された判定結果Rが入力される。警告情報生成部513は、利用者1000が騒音許容基準を超えていることを表す判定結果Rが入力された場合、または、外耳道1011の内部と外部との間の遮音性に異常があることを表す判定結果Rが入力された場合に、警告情報Zを生成して出力する。本実施形態の警告情報Zは、警告音を表す情報である。警告情報Zはスピーカ12に入力され、スピーカ12は警告情報Zに基づく警告音を発する。これにより、利用者1000は、騒音許容基準を超えていることや遮音性に異常があることをリアルタイムに知ることができる。
【0072】
なお、騒音許容基準を超えている場合と、遮音性に異常がある場合とで、警告音が異なっていてもよい。これにより、利用者1000は、騒音許容基準を超えているのか、遮音性に異常があるのかを区別することができる。その他、騒音許容基準を超える程度(例えば、聴取時間LTから許容聴取時間ALTを減じた値、重み付け加算結果WAから閾値TH4を減じた値、重み付け加算結果WAから閾値TH4を減じた値、聴取時間LT(f)から閾値TH4(f)を減じた値等)に応じて警告音が異なっていてもよいし、遮音性の異常の程度(例えば、式(7)の左辺から右辺を減じた値、式(7)の左辺から右辺を減じた値、式(8)の左辺から右辺を減じた値、式(8)の左辺から右辺を減じた値等)に応じて警告音が異なっていてもよい。また、警告情報Zが警告表示を表す情報であり、警告音に代えて、ディスプレイやLED等に警告情報Zに基づく警告表示が行われてもよい。その他、警告音に代えて振動等の触覚呈示が行われてもよい。
【0073】
[第6実施形態]
第1実施形態から第5実施形態またはそれらの変形例において、騒音管理装置11,21,31,41,51の要素が複数の装置に分散して配置されてもよい。
【0074】
図1に例示するように、本実施形態では、騒音環境下で利用者1000が騒音管理システム6を装着する。本実施形態の騒音管理システム6は、図2および図4に例示するように、騒音管理装置61,67、スピーカ12、マイクロホン13、筐体14、およびイヤーチップ15を有していてもよいし、図5に例示するように、騒音管理装置61,67、スピーカ12、マイクロホン13、マイクロホン43、筐体44、およびイヤーチップ15を有していてもよい。図6に例示するように、本実施形態の騒音管理装置61は、第1実施形態から第5実施形態またはそれらの変形例の騒音管理装置11,21,31,41,51から、騒音レベル保存部112、判定部113,213,313,413、警告情報生成部513を取り除き、通信部614を追加したものである。図7に例示するように、本実施形態の騒音管理装置67は、第1実施形態から第5実施形態またはそれらの変形例の騒音管理装置11,21,31,41,51から騒音レベル推定部111,211,411および区間推定部214を取り除き、通信部671を追加したものである。通信部614,671はBluetooth(登録商標)等の公知の無線通信手段である。騒音管理装置67は、例えば、スマートフォン等の端末装置の一部に含まれていてもよい。
【0075】
騒音管理装置61(図6)は、第1実施形態から第5実施形態またはそれらの変形例で説明したように騒音レベル推定部111,211,411から出力された情報(例えば、E(t)等)を通信部614から送信する。この情報は騒音管理装置67(図7)の通信部671で受信され、騒音レベル保存部112に蓄積される。判定部113,213,313,413は、騒音レベル保存部112に蓄積された情報を用い、第1実施形態から第5実施形態またはそれらの変形例で説明したように判定を行って、その判定結果Rを出力する。第5実施形態で説明したように、この判定結果Rがさらに警告情報生成部513に入力され、警告情報生成部513が警告情報Zを生成して出力してもよい。この場合、警告情報Zが通信部671から送信されてもよい。送信された警告情報Zは騒音管理装置61(図6)の通信部614で受信され、スピーカ12に入力される。スピーカ12は警告情報Zに基づく警告音を発する。あるいは、騒音管理装置67(図7)のディスプレイやLED等に警告情報Zに基づく警告表示が行われてもよい。
【0076】
<本実施形態の特徴>
本実施形態により、利用者1000の耳1010に装着される騒音管理装置61側の処理やストレージの負担を軽減し、騒音管理装置61を軽量で小型にすることができる。
【0077】
[ハードウェア構成]
各実施形態における騒音管理装置11,21,31,41,51,61は、例えば、CPU(central processing unit)等のプロセッサ(ハードウェア・プロセッサ)やRAM(random-access memory)・ROM(read-only memory)等のメモリ等を備える汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される装置である。すなわち、各実施形態における騒音管理装置11,21,31,41,51,61は、例えば、それぞれが有する各部を実装するように構成された処理回路(processing circuitry)を有する。このコンピュータは1個のプロセッサやメモリを備えていてもよいし、複数個のプロセッサやメモリを備えていてもよい。このプログラムはコンピュータにインストールされてもよいし、予めROM等に記録されていてもよい。また、CPUのようにプログラムが読み込まれることで機能構成を実現する電子回路(circuitry)ではなく、単独で処理機能を実現する電子回路を用いて一部またはすべての処理部が構成されてもよい。また、1個の装置を構成する電子回路が複数のCPUを含んでいてもよい。
【0078】
上述のプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例は非一時的な(non-transitory)記録媒体である。このような記録媒体の例は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等である。
【0079】
このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。上述のように、このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0080】
各実施形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
【0081】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、請求項に記載された発明の内容を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0082】
1~6 騒音管理システム
11~61 騒音管理装置
111,211,411 騒音レベル推定部
112 騒音レベル保存部
113,213,313,413 判定部
214 区間推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7