(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133972
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】シリカ熱反射板
(51)【国際特許分類】
H01L 21/22 20060101AFI20240926BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240926BHJP
C03C 27/06 20060101ALI20240926BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20240926BHJP
C03C 17/40 20060101ALI20240926BHJP
C04B 35/14 20060101ALI20240926BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/22 501F
C23C14/06 N
C03C27/06
C03C17/36
C03C17/40
C04B35/14
H01L21/324 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044016
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】丸子 智弘
(72)【発明者】
【氏名】石黒 好裕
(72)【発明者】
【氏名】松村 尊信
(72)【発明者】
【氏名】板橋 淳
【テーマコード(参考)】
4G059
4G061
4K029
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC06
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4K029CA05
4K029CA06
4K029DC16
4K029EA01
4K029GA01
(57)【要約】
【課題】本開示は、従来と比べて、シリカ熱反射板の低熱容量化を実現しつつ、反射体を囲い込むためにシリカ板同士を表面活性化接合にて接合したとしても、反射体である第1反射層と接合剤層との反応を抑制することで、反射率の経時低下が少ない長寿命のシリカ熱反射板を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係るシリカ熱反射板は、第1シリカ板1aと、第1シリカ板の一方の表面のうち、第1周縁環状表面7aに囲まれた第1内側表面8aに設けられたIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群から選ばれた1種からなるか、又は、この群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金からなる第1反射層4aと、第1反射層を覆う第1バリア層5aと、第2シリカ板1bと、接合剤層3と、第1周縁環状表面と第2周縁環状表面7bとが接合剤層を介して接合された表面活性化接合部2と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリカ板と、
前記第1シリカ板の一方の表面のうち、第1周縁環状表面に囲まれた第1内側表面に設けられたIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群から選ばれた1種からなるか、又は、この群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金からなる第1反射層と、
該第1反射層の表面に設けられ、該第1反射層を覆う第1バリア層と、
前記第1シリカ板の前記第1バリア層が設けられた面側と向かい合わせに配置された第2シリカ板と、
前記第1周縁環状表面及び前記第1バリア層と前記第2シリカ板との間に配置された接合剤層と、
前記第1周縁環状表面と前記第2シリカ板の表面のうち前記第1周縁環状表面と向かい合う第2周縁環状表面とが前記接合剤層を介して接合された表面活性化接合部と、
を有することを特徴とするシリカ熱反射板。
【請求項2】
前記第1バリア層は、酸化ケイ素膜、酸化クロム膜、酸化クロムが前記接合剤層の側に配置されるクロム/酸化クロム積層膜、窒化チタン膜、タンタル膜、クロム膜、イリジウム膜又はルテニウム膜であることを特徴とする請求項1に記載のシリカ熱反射板。
【請求項3】
前記第1バリア層の膜厚が、5nm以上であることを特徴とする請求項1に記載のシリカ熱反射板。
【請求項4】
前記第1シリカ板は前記第1内側表面が凹部となる第1凹部を有し、該第1凹部の底面に前記第1反射層が設けられ、該第1反射層の表面に前記第1バリア層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシリカ熱反射板。
【請求項5】
前記第2シリカ板は前記第2内側表面が凹部となる第2凹部を有し、前記第1反射層及び前記第1バリア層が前記第2凹部の中に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシリカ熱反射板。
【請求項6】
前記第1シリカ板は前記第1内側表面が凹部となる第1凹部を有し、該第1凹部の底面に前記第1反射層が設けられ、該第1反射層の表面に前記第1バリア層が設けられており、前記第2シリカ板は前記第2内側表面が凹部となる第2凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載のシリカ熱反射板。
【請求項7】
前記第2シリカ板は、
前記第2周縁環状表面に囲まれた第2内側表面にIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群から選ばれた1種からなるか、又は、この群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金からなる第2反射層と、
該第2反射層の表面に設けられ、該第2反射層を覆う第2バリア層と、をさらに有し、
前記接合剤層は、前記第1周縁環状表面及び前記第1バリア層と前記第2周縁環状表面及び前記第2バリア層との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシリカ熱反射板。
【請求項8】
前記第2バリア層は、酸化ケイ素膜、酸化クロム膜、酸化クロムが前記接合剤層の側に配置されるクロム/酸化クロム積層膜、窒化チタン膜、タンタル膜、クロム膜、イリジウム膜又はルテニウム膜であることを特徴とする請求項7に記載のシリカ熱反射板。
【請求項9】
前記第2バリア層の膜厚が、5nm以上であることを特徴とする請求項7に記載のシリカ熱反射板。
【請求項10】
前記第1シリカ板は前記第1内側表面が凹部となる第1凹部を有し、該第1凹部の底面に前記第1反射層が設けられ、該第1反射層の表面に前記第1バリア層が設けられおり、前記第2反射層及び前記第2バリア層が前記第1凹部の中に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のシリカ熱反射板。
【請求項11】
前記第1シリカ板は前記第1内側表面が凹部となる第1凹部を有し、該第1凹部の底面に前記第1反射層が設けられ、該第1反射層の表面に前記第1バリア層が設けられおり、
前記第2シリカ板は前記第2内側表面が凹部となる第2凹部を有し、該第2凹部の底面に前記第2反射層が設けられ、該第2反射層の表面に前記第2バリア層が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のシリカ熱反射板。
【請求項12】
前記第1シリカ板及び前記第2シリカ板は平板であることを特徴とする請求項1又は7に記載のシリカ熱反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、半導体・電子部品の分野で、ウエハ、基板等を高温で熱処理する種々の熱処理装置の熱反射板として利用でき、高反射率を有することから熱処理装置の省エネルギー化が可能であり、また、汚染を抑制することが可能なシリカ熱反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの製造または処理工程においては、半導体ウエハに各種の性質を付与するため熱処理作業が行われている。例えば、半導体ウエハを高純度石英製の炉芯管に収納し、炉芯管内の雰囲気を制御して、熱処理作業が行われる。この熱処理工程に使用される熱処理装置では、炉内の高温維持と炉床部への熱放散を防止するため、炉内と炉床との間に炉開口部を塞ぐように保温体(蓋体)が設けられている。
【0003】
本出願人は、蓋体として、金属膜を内包したシリカ熱反射板を提案している(例えば、特許文献1又は特許文献2を参照。)。
【0004】
特許文献1のシリカ熱反射板は、シリカ板と、シリカ板の内部に配置されてシリカ板によって外周囲が完全に覆われてなり、かつ、シリカ板の一方の表面に入射した赤外線を反射する反射体と、を有するシリカ熱反射板であって、反射体は、薄膜、板又は箔であり、反射体の少なくとも反射面を含む表面層は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf又はMoからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoから選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなる。
【0005】
特許文献2のシリカ熱反射板は、シリカ板とシリカ板の内部に配置された赤外線を反射する反射体とを有する。シリカ板は、第1シリカ板と第2シリカ板とが対向して配置されて周縁部同士が周縁に沿って環状に連続して接合された合わせ板の構造をする。合わせ板の構造は、密閉されているキャビティとキャビティ内に収容された第3シリカ板とを有する。反射体は、薄膜、板又は箔であり、反射体の少なくとも反射面を含む表面層は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf又はMoからなるか又はIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoから選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許7096409号公報
【特許文献2】特許7029567号公報
【特許文献3】特開2019‐217530号公報
【特許文献4】特許4172806号公報
【特許文献5】特許6032667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1又は特許文献2では2枚のシリカ板で反射膜を隙間なく覆うことで、炉内汚染を防止し、反射膜の耐久性が向上する。さらに特許文献2では、反射体を対向する第1シリカ板、第2シリカ板又は第3シリカ板に密着させることができ、反射膜とシリカ板が部分的に接触することで発生する干渉縞をより抑制することができる。また、昇降温に伴う反射膜の剥離を物理的に抑制することができ、熱反射板を長持ちさせることができる。
【0008】
しかし、熱反射板の外側に位置する第1シリカ板と第2シリカ板とを表面活性化接合にて接合する場合、熱処理後に反射率の低下が生じる場合があった。表面活性化接合ではシリコン層等の接合剤層を第1シリカ板と第2シリカ板との接合部分に形成する必要がある。所望の接合部分以外の箇所、例えば反射膜にも接合剤層が形成された場合、反射膜と接合剤層とが反応してしまい、上記の反射率の低下が起こりうることが分かった。また、反射膜の反射面の反対面において反射膜と接合剤層を接合させた場合、干渉縞が生じる場合があり、干渉縞は熱反射板の商品価値を低下させうる。
【0009】
本開示は、従来と比べて、シリカ熱反射板の低熱容量化を実現しつつ、反射体を囲い込むためにシリカ板同士を表面活性化接合にて接合したとしても、反射体である反射層と接合剤層との反応を抑制することで、反射率の経時低下が少ない長寿命のシリカ熱反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、反射膜の表面のうち、接合剤層が形成されうる面に接合剤層の構成元素の拡散を防止するバリア層を設けることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るシリカ熱反射板は、第1シリカ板と、前記第1シリカ板の一方の表面のうち、第1周縁環状表面に囲まれた第1内側表面に設けられたIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群から選ばれた1種からなるか、又は、この群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金からなる第1反射層と、該第1反射層の表面に設けられ、該第1反射層を覆う第1バリア層と、前記第1シリカ板の前記第1バリア層が設けられた面側と向かい合わせに配置された第2シリカ板と、前記第1周縁環状表面及び前記第1バリア層と前記第2シリカ板との間に配置された接合剤層と、前記第1周縁環状表面と前記第2シリカ板の表面のうち前記第1周縁環状表面と向かい合う第2周縁環状表面とが前記接合剤層を介して接合された表面活性化接合部と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第1バリア層は、酸化ケイ素膜、酸化クロム膜、酸化クロムが前記接合剤層の側に配置されるクロム/酸化クロム積層膜、窒化チタン膜、タンタル膜、クロム膜、イリジウム膜又はルテニウム膜であることが好ましい。第1反射層と接合剤層との反応をより抑制することができる。
【0012】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第1バリア層の膜厚が、5nm以上であることが好ましい。第1反射層と接合剤層との反応を抑制することができる。
【0013】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第1シリカ板は前記第1内側表面が凹部となる第1凹部を有し、該第1凹部の底面に前記第1反射層が設けられ、該第1反射層の表面に前記第1バリア層が設けられていることが好ましい。第1反射層が密閉空間であるキャビティ内にあるため、第1シリカ板と第2シリカ板の周縁部同士の表面活性化接合部に、第1反射層に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、第1反射層の破損による炉内の汚染を抑制することができる。また、第1バリア層と第2シリカ板の部分接触により生じる干渉縞をより抑制することができる。また、第1シリカ板と第2シリカ板の周縁部同士を、変形をさせることなく接合することができるので接合率が高い。
【0014】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第2シリカ板は前記第2内側表面が凹部となる第2凹部を有し、前記第1反射層及び前記第1バリア層が前記第2凹部の中に配置されていることが好ましい。第1反射層が密閉空間であるキャビティ内にあるため、第1シリカ板と第2シリカ板の周縁部同士の表面活性化接合部に、第1反射層に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、第1反射層の破損による炉内の汚染を抑制することができる。また、接合剤層と第2シリカ板の部分接触により生じる干渉縞をより抑制することができる。また、第1シリカ板と第2シリカ板の周縁部同士を、変形をさせることなく接合することができるので接合率が高い。
【0015】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第1シリカ板は前記第1内側表面が凹部となる第1凹部を有し、該第1凹部の底面に前記第1反射層が設けられ、該第1反射層の表面に前記第1バリア層が設けられており、前記第2シリカ板は前記第2内側表面が凹部となる第2凹部を有していることが好ましい。第1反射層が密閉空間であるキャビティ内にあるため、第1シリカ板と第2シリカ板の周縁部同士の表面活性化接合部に、第1反射層に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、第1反射層の破損による炉内の汚染を抑制することができる。また、接合剤層と第2シリカ板との部分接触が抑制されるため、部分接触により生じる干渉縞が生じにくい。また、第1シリカ板と第2シリカ板の周縁部同士を、変形をさせることなく接合することができるので接合率が高い。
【0016】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第2シリカ板は、前記第2周縁環状表面に囲まれた第2内側表面にIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群から選ばれた1種からなるか、又は、この群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金からなる第2反射層と、該第2反射層の表面に設けられ、該第2反射層を覆う第2バリア層と、をさらに有し、前記接合剤層は、前記第1周縁環状表面及び前記第1バリア層と前記第2周縁環状表面及び前記第2バリア層との間に配置されていることが好ましい。シリカ熱反射板のどちらの面も熱反射板として機能させることができる。また、第1反射層のみを設けた場合、接合剤層が付着した側の面には接合剤層に起因する干渉縞が生じやすい。一方、第1反射層と第2反射層とがそれぞれ反射面となれば、接合剤層が見えなくなるため、シリカ熱反射板の美観の低下が防止できる。
【0017】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第2バリア層は、酸化ケイ素膜、酸化クロム膜、酸化クロムが前記接合剤層の側に配置されるクロム/酸化クロム積層膜、窒化チタン膜、タンタル膜、クロム膜、イリジウム膜又はルテニウム膜であることが好ましい。第2反射層と接合剤層との反応をより抑制することができる。
【0018】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第2バリア層の膜厚が、5nm以上であることが好ましい。第2反射層と接合剤層との反応を抑制することができる。
【0019】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第1シリカ板は前記第1内側表面が凹部となる第1凹部を有し、該第1凹部の底面に前記第1反射層が設けられ、該第1反射層の表面に前記第1バリア層が設けられおり、前記第2反射層及び前記第2バリア層が前記第1凹部の中に配置されていることが好ましい。第1反射層及び第2反射層が密閉空間であるキャビティ内にあるため、第1シリカ板と第2シリカ板の周縁部同士の表面活性化接合部に、第1反射層及び第2反射層に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、第1反射層及び第2反射層の破損による炉内の汚染を抑制することができる。また、接合剤層は第1バリア層及び第2バリア層に挟まれているため、接合剤層の構成元素の拡散が抑制される。また、接合剤層を隙間なく第1バリア層及び第2バリア層で挟み込んだ場合には、シリカ熱反射板の全体の強度が向上する。
【0020】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第1シリカ板は前記第1内側表面が凹部となる第1凹部を有し、該第1凹部の底面に前記第1反射層が設けられ、該第1反射層の表面に前記第1バリア層が設けられおり、前記第2シリカ板は前記第2内側表面が凹部となる第2凹部を有し、該第2凹部の底面に前記第2反射層が設けられ、該第2反射層の表面に前記第2バリア層が設けられていることが好ましい。第1反射層及び第2反射層が密閉空間であるキャビティ内にあるため、第1シリカ板と第2シリカ板の周縁部同士の表面活性化接合部に、第1反射層及び第2反射層に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、第1反射層及び第2反射層の破損による炉内の汚染を抑制することができる。また、接合剤層は第1バリア層及び第2バリア層に挟まれているため、接合剤層の構成元素の拡散が抑制される。また、接合剤層を隙間なく第1バリア層及び第2バリア層で挟み込んだ場合には、シリカ熱反射板の全体の強度が向上する。第1凹部の底面に第1反射層を形成し、第1反射層が第1バリア層で覆われ、第2凹部の底面に第2反射層を形成し、第2反射層が第2バリア層で覆われるため、各反射層の平面及び側面が覆われた状態で接合剤層を形成して接合するため、反射層と接合剤層が反応することがない。
【0021】
本発明に係るシリカ熱反射板では、前記第1シリカ板及び前記第2シリカ板は平板であることが好ましい。凹部を形成するための掘り込みの加工と反射層が形成される箇所となる底部のポリッシング加工が不要であり、構造がシンプルであるため、作製が容易である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、従来と比べて、シリカ熱反射板の低熱容量化を実現しつつ、反射体を囲い込むためにシリカ板同士を表面活性化接合にて接合したとしても、反射体である第1反射層と接合剤層との反応を抑制することで、反射率の経時低下が少ない長寿命のシリカ熱反射板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係るシリカ熱反射板であってキャビティを有さない例の構造を説明するための概略図である。
【
図2】接合剤層を蒸着する前の状態の第1例を示す概略図である。
【
図4】第1凹部を有する第1シリカ板の構造を説明するための概略図である。
【
図5】接合剤層を蒸着する前の状態の第2例を示す概略図である。
【
図7】接合剤層を蒸着する前の状態の第3例を示す概略図である。
【
図9】接合剤層を蒸着する前の状態の第4例を示す概略図である。
【
図11】接合剤層を蒸着する前の状態の第5例を示す概略図である。
【
図13】接合剤層を蒸着する前の状態の第6例を示す概略図である。
【
図15】接合剤層を蒸着する前の状態の第7例を示す概略図である。
【
図17】実施例1のシリカ熱反射板の反射面の一方の外観画像である。
【
図18】実施例2~6及び比較例1の反射率の熱サイクル後の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以降、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0025】
(第1例:反射層が片面でキャビティなしの形態)
図1~
図3を参照して、第1例のシリカ熱反射板100について説明する。
図1は、第1例のシリカ熱反射板であってキャビティを有さない例の構造を説明するための概略図であり、
図3において下から上に向かってシリカ熱反射板100を見た図に相当、すなわちシリカ熱反射板100の底面図に相当する。そして、
図1ではシリカ熱反射板100の反射面側の構造を説明するために、第1シリカ板1aを透過して見える第1反射層4a及び表面活性化接合部(周縁部同士の接合部)2も図示されている。
図2は、接合剤層3を蒸着する前の状態を断面図で示している。第1例のシリカ熱反射板100は、第1シリカ板1aと、第1シリカ板1aの一方の表面のうち、第1周縁環状表面7aに囲まれた第1内側表面8aに設けられたIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群から選ばれた1種からなるか、又は、この群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金からなる第1反射層4aと、第1反射層4aの表面に設けられ、第1反射層4aを覆う第1バリア層5aと、第1シリカ板1aの第1バリア層5aが設けられた面側と向かい合わせに配置された第2シリカ板1bと、第1周縁環状表面7a及び第1バリア層5aと第2シリカ板1bとの間に配置された接合剤層3と、第1周縁環状表面7aと第2シリカ板1bの表面のうち第1周縁環状表面7aと向かい合う第2周縁環状表面7bとが接合剤層3を介して接合された表面活性化接合部2と、を有する。ここで第2シリカ板1bの表面のうち、第1シリカ板1aと向かい合う側の表面が、第2周縁環状表面7bと第2周縁環状表面7bに囲まれた第2内側表面8bとを有している。そして、シリカ熱反射板100は、表面活性化接合部2における接合だけでなく、第2内側表面8bと第1バリア層5aとの間に介在する接合剤層3による接合によって第1シリカ板1aと第2シリカ板1bとが接合される構造となっていることが好ましい。接合強度をより高めることができる。
【0026】
第1シリカ板1a及び第2シリカ板1bの形状は、例えば、円形、楕円形、長方形又は正方形であり、円形が好ましい。円形の直径は、例えば、5~50cmである。表面活性化接合部2の環状形状の幅は、例えば0.5~25mmである。シリカ熱反射板100の肉厚は0.1~20mmであることが好ましく、0.2~10mmであることがより好ましい。第1シリカ板1a及び第2シリカ板1bの肉厚は、それぞれ0.05~10mmであることが好ましく、0.5~1.5mmであることがより好ましい。
【0027】
第1シリカ板1a及び第2シリカ板1bは、結晶性シリカ板又は非晶質シリカ板である形態を包含する。第1シリカ板1a及び第2シリカ板1bの不純物濃度は、100ppm以下、好ましくは90ppm以下である。
【0028】
第1反射層4aはIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群から選ばれた1種からなるか、又は、この群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金からなる。このような金属又は合金は、融点が高く、かつ、赤外線の反射率が高い。第1反射層4aは、例えば、スパッタ膜、塗布膜、CVD、蒸着等で得られる薄膜であることが好ましい。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金としては、これらの元素のいずれか一種を最多質量にて含む合金であることが好ましく、より好ましくはIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf又はMoを50質量%以上含有する合金、さらに好ましくは60質量%以上含有する合金、最も好ましくは70質量%以上含有する合金である。例えば、Ir‐Pt系合金、Ir‐Rh系合金又はPt‐Ru系合金である。第1反射層4aの膜厚は、5~1000nmであることが好ましく、10~300nmであることがより好ましい。第1反射層4aの膜厚が5nm未満であると、十分な反射が行われない場合がある。また、第1反射層4aの膜厚が1000nmを超えると、熱容量が大きくなりすぎる場合がある。
【0029】
第1バリア層5aは、酸化ケイ素膜、酸化クロム、膜酸化クロムが前記接合剤層の側に配置されるクロム/酸化クロム積層膜、窒化チタン膜、タンタル膜、クロム膜、イリジウム膜又はルテニウム膜であることが好ましい。第1バリア層5aの膜厚は、5nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。第1バリア層5aは、接合剤層3の構成元素の第1反射層4aへの拡散を抑制する。第1バリア層5aの膜厚が5nm未満であると、拡散の抑制効果が得られない場合がある。第1バリア層5aの膜厚は第1反射層と接合剤層との接触が抑制されれば特に制限はないが、膜厚の上限としては、低熱容量の維持、加熱・冷却の繰り返しによる破損のしづらさ、量産性の確保の観点から、5000nm程度までは許容できる。第1バリア層5aは、例えば、PVD膜(真空蒸着膜、イオンプレーティング膜、スパッタ膜)、CVD膜(熱CVD膜、プラズマCVD膜)等で得られる薄膜であることが好ましい。好ましくはスパッタ膜である。膜が緻密で、拡散がしにくい。
【0030】
シリカ熱反射板100では、第1周縁環状表面7aと第2周縁環状表面7bとは、表面活性化接合部2によって接合されている。比較的低温での接合が可能な為、反射膜に熱的、物理的ダメージが無く接合することが可能であり、また、内部を真空に保ったまま接合することで接合部における接合強度が高められており、シリカ熱反射板はより長寿命となり、また耐食性が高まり、炉内の汚染が抑制される。表面活性化接合部とは、接合し合う部位の少なくとも一方を表面活性化状態とした後、接合部位同士を、押圧をかけて合わせることにより原子レベルで表面組織を一体化して接合した部位をいう。接合し合う部位の両方を表面活性化状態とした後、接合部位同士を、押圧をかけて合わせることがより好ましい。シリカ板同士の接合では、接合剤層3としてシリコン皮膜を成膜した後、表面活性化状態とし、その後、接合部位同士を、押圧をかけて結合させることが好ましい。シリコン皮膜の成膜は、例えば、第1シリカ板1aと第2シリカ板1bとを
図2に示すような位置関係に配置し、真空蒸着法によって第1シリカ板1aと第2シリカ板1bとが向かい合う面同士にシリコン皮膜を成膜する。そして成膜後、真空系を保持したまま表面活性化接合を行う。表面活性化接合部には、常温活性化接合部とプラズマ活性化接合部とがある。常温活性化接合部には、例えば、高速原子ビームを用いて表面活性化して接合した接合部、Si等の活性金属を用いてナノ密着層を形成して表面活性化して接合した接合部、イオンビームを用いて表面活性化して接合した接合部がある。プラズマ活性化接合部には、例えば、酸素プラズマを用いて表面活性化して接合した接合部、窒素プラズマを用いて表面活性化して接合した接合部がある。第1周縁環状表面7aと第2周縁環状表面7bとを表面活性化接合部2として接合することで、接合部におけるリークを低減できる。表面活性化接合部2を形成する方法については、例えば、特許文献3~5を参照できる。
【0031】
接合剤層3は、第1周縁環状表面7a及び第2周縁環状表面7b以外の表面、例えば、第1バリア層5aの表面、第2内側表面8bに設けてもよく、この場合、接合剤層3を挟み合う表面同士の結合強度が向上し、シリカ熱反射板100の全体強度も向上する。このとき、第1バリア層5aを設けない場合、第1反射層4aと接合剤層3とが直接接触することとなるが、シリカ熱反射板の使用時における加熱によって、第1反射層4aと接合剤層3との反応が生じてしまうおそれがある。しかし、第1バリア層5aが第1反射層4aと接合剤層3との間に介在することで、この反応が抑制される。
【0032】
(第2例:反射層が片面でキャビティ有りの形態1)
図4~
図6を参照して、シリカ熱反射板100との違いを中心に、第2例のシリカ熱反射板200について説明する。
図4は、第1凹部6aを有する第1シリカ板1aの構造を説明するための概略図である。
図5は、
図2と同様の断面にて、接合剤層を蒸着する前の状態を示している。
図6は、
図3と同様の断面にて、第2例の構造を示す概略図である。シリカ熱反射板200では、第1シリカ板1aは第1内側表面8aが凹部となる第1凹部6aを有し、第1凹部6aの底面に第1反射層4aが設けられ、第1反射層4aの表面に第1バリア層5aが設けられている。第1周縁環状表面7aは、第1凹部6aによって、第1凹部6aの底面よりも高い位置にあるため、第1シリカ板1aの土手部11aの天面となる。第2シリカ板1bによって閉じられた第1凹部6aは密閉空間となるキャビティ12を形成する。第1凹部6aに第1反射層4a及び第1バリア層5aの全体が配置されていることが好ましい。第1バリア層5aの表面には接合剤層3が存在するが、第1バリア層5aの表面上の接合剤層3と第2シリカ板1bとは接触していても、いなくてもよい。接触している場合には、シリカ熱反射板200の全体の強度が向上する。一方、接触していない場合には接合剤層3側の干渉縞の発生を抑制できる。第2シリカ板1bは平板であることが好ましい。第1反射層4a及び第1バリア層5aが密閉空間内にあるため、表面活性化接合部2に、第1反射層4a及び第1バリア層5aに起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、破損による炉内の汚染を抑制することができる。さらに第1シリカ板1a及び第2シリカ板1bと第1反射層4a及び第1バリア層5aとの熱膨張差による破損を回避できる。
【0033】
(第3例:反射層が片面でキャビティ有りの形態2)
図7及び
図8を参照して、シリカ熱反射板200との違いを中心に、第3例のシリカ熱反射板300について説明する。
図7は、
図5と同様の断面にて、接合剤層を蒸着する前の状態を示している。
図8は、
図6と同様の断面にて、第3例の構造を示す概略図である。シリカ熱反射板300では、第2シリカ板1bは第2内側表面8bが凹部となる第2凹部6bを有し、第1反射層4a及び第1バリア層5aが第2凹部6bの中に配置されている。第2周縁環状表面7bは、第2凹部6bによって、第2凹部6bの底面よりも高い位置にあるため、第2シリカ板1bの土手部11bの天面となる。第1シリカ板1aによって閉じられた第2凹部6bは密閉空間となるキャビティ12を形成する。第2凹部6bに第1反射層4a及び第1バリア層5aの全体が配置されていることが好ましい。第1バリア層5aの表面には接合剤層3が存在するが、第1バリア層5aの表面上の接合剤層3と第2凹部6bの底面とは接触していても、いなくてもよい。接触している場合には、シリカ熱反射板300の全体の強度が向上する。一方、接触していない場合には接合剤層3側の干渉縞の発生を抑制できる。第1シリカ板1aは平板であることが好ましい。シリカ熱反射板200と同様にシリカ熱反射板300において破損を回避できる。
【0034】
(第4例:反射層が片面でキャビティ有りの形態3)
図9及び
図10を参照して、シリカ熱反射板200との違いを中心に、第4例のシリカ熱反射板400について説明する。
図9は、
図5と同様の断面にて、接合剤層を蒸着する前の状態を示している。
図10は、
図6と同様の断面にて、第4例の構造を示す概略図である。シリカ熱反射板400では、第1シリカ板1aは第1内側表面8aが凹部となる第1凹部6aを有し、第1凹部6aの底面に第1反射層4aが設けられ、第1反射層4aの表面に第1バリア層5aが設けられており、第2シリカ板1bは第2内側表面8bが凹部となる第2凹部6bを有している。シリカ熱反射板400は、シリカ熱反射板200において、第2シリカ板1bに第2凹部6bをさらに設けた例である。第1凹部6a及び第2凹部6bを設けることで、密閉空間となるキャビティ12の容積が大きくなり、第1反射層4a及び第1バリア層5aの厚さに多少のムラがあっても第1バリア層5aの上にある接合剤層3側の干渉縞の発生をより抑制できる。なお、第2凹部6bには、接合剤層3が形成されていてもよい。
【0035】
(第5例:反射層が両面でキャビティなしの形態)
図11及び
図12を参照して、シリカ熱反射板100との違いを中心に、第5例のシリカ熱反射板500について説明する。
図11は、
図2と同様の断面にて、接合剤層を蒸着する前の状態を示している。
図12は、
図3と同様の断面にて、第5例の構造を示す概略図である。シリカ熱反射板500では、第2シリカ板1bは、第2周縁環状表面7bに囲まれた第2内側表面8bにIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf及びMoの群から選ばれた1種からなるか、又は、この群より選ばれた少なくともいずれか1種を含む合金からなる第2反射層4bと、第2反射層4bの表面に設けられ、第2反射層4bを覆う第2バリア層5bと、をさらに有し、接合剤層3は、第1周縁環状表面7a及び第1バリア層5aと第2周縁環状表面7b及び第2バリア層5bとの間に配置されている。そして、シリカ熱反射板500は、表面活性化接合部2における接合だけでなく、第1バリア層5aと第2バリア層5bとの間に介在する接合剤層3による接合によって第1シリカ板1aと第2シリカ板1bとが接合される構造となっていることが好ましい。接合強度をより高めることができる。シリカ熱反射板500は、第1反射層4aによる反射と第2反射層4bによる反射の両方が可能であるため、シリカ熱反射板500のどちらの面も反射板として機能させることができる。また、第1反射層のみを設けた場合、接合剤層が付着した側の面には接合剤層に起因する干渉縞が生じやすい。一方、第1反射層と第2反射層とがそれぞれ反射面となれば、接合剤層が見えなくなるため、シリカ熱反射板の美観の低下が防止できる。
【0036】
第2反射層4bの合金組成、成膜法及び膜厚と、第2バリア層5bの成膜法及び膜厚は、シリカ熱反射板100の場合と同様である。
【0037】
(第6例:反射層が両面でキャビティ有りの形態1)
図13及び
図14を参照して、シリカ熱反射板200との違いを中心に、第6例のシリカ熱反射板600について説明する。
図13は、
図2と同様の断面にて、接合剤層を蒸着する前の状態を示している。
図14は、
図3と同様の断面にて、第6例の構造を示す概略図である。シリカ熱反射板600では、第1シリカ板1aは第1内側表面8aが凹部となる第1凹部6aを有し、第1凹部6aの底面に第1反射層4aが設けられ、第1反射層4aの表面に第1バリア層5aが設けられおり、第2反射層4b及び第2バリア層5bが第1凹部6aの中に配置されている。シリカ熱反射板600では、第2シリカ板1b、第2反射層4b及び第2バリア層5bの構成がシリカ熱反射板500と同様となっている。第2シリカ板1bによって閉じられた第1凹部6aは密閉空間となるキャビティ12を形成する。第1反射層4a及び第2反射層4bが密閉空間であるキャビティ内にあるため、第1シリカ板1aと第2シリカ板1bの周縁部同士の表面活性化接合部2に、第1反射層4a及び第2反射層4bに起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、第1反射層4a及び第2反射層4bの破損による炉内の汚染を抑制することができる。また、接合剤層3は第1バリア層5a及び第2バリア層5bに挟まれているため、接合剤層3の構成元素の拡散が抑制される。また、接合剤層3を隙間なく第1バリア層5a及び第2バリア層5bで挟み込んだ場合には、シリカ熱反射板600の全体の強度が向上する。また、第1シリカ板1aと第2シリカ板1bの周縁部同士を、変形をさせることなく接合することができるので接合率が高い。第2シリカ板1bは平板であることが好ましい。
【0038】
(第7例:反射層が両面でキャビティ有りの形態2)
図15及び
図16を参照して、シリカ熱反射板400との違いを中心に、第7例のシリカ熱反射板700について説明する。
図15は、
図9と同様の断面にて、接合剤層を蒸着する前の状態を示している。
図16は、
図10と同様の断面にて、第7例の構造を示す概略図である。シリカ熱反射板700では、第1シリカ板1aは第1内側表面8aが凹部となる第1凹部6aを有し、第1凹部6aの底面に第1反射層4aが設けられ、第1反射層4aの表面に第1バリア層5aが設けられおり、第2シリカ板1bは第2内側表面8bが凹部となる第2凹部6bを有し、第2凹部6bの底面に第2反射層4bが設けられ、第2反射層4bの表面に第2バリア層5bが設けられている。シリカ熱反射板700では、第1凹部6a及び第2凹部6bの両方に、反射層とその上にバリア層が設けられている。第1反射層4a及び第2反射層4bが密閉空間であるキャビティ12内にあるため、第6例のシリカ熱反射板600と同様の効果が得られる。
【0039】
第2例、第3例、第4例、第6例及び第7例において、第1反射層4a又は第2反射層4bは、第1凹部6a又は第2凹部6bの底面の全面積に対して50~100%の面積で形成されていることが好ましく、80~100%の面積で形成されていることがより好ましい。
【0040】
本実施形態に係るシリカ熱反射板の赤外線の入射方向は、第1シリカ板1a又は第2シリカ板1bを通して第1反射層4a又は第2反射層4bが見える面に向かって入射させる。シリカ熱反射板の両面とも第1反射層4a又は第2反射層4bが見える場合には、どちらから入射させてもよい。
【0041】
本実施形態に係るシリカ熱反射板では、第1凹部6a又は第2凹部6b、またはそれらの両方を設けて密閉空間を設ける場合には、キャビティ12内の圧力は、大気圧未満の減圧となっていることが好ましい。キャビティ12内の圧力は、10-2Pa以下であることがより好ましい。熱処理時にキャビティ12の内圧が高まることを抑制することができ、炉内の汚染をより抑制することができる。また、高温時の反射膜の劣化を抑制できる。
【0042】
本実施形態では、第1凹部6aまたは第2凹部6b、またはそれらの両方を有するとき、凹部の合計高さから第1反射層4a、第2反射層4b、第1バリア層5a、第2バリア層5b及び接合剤層3の厚さを差し引いた値、すなわちキャビティ内の隙間が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。キャビティ内の隙間が200μmを超えると、大気圧によるシリカ板の変形が大きくなり、その結果、接合部付近に掛かる応力が大きくなり、結合部の割れが生じるおそれがある。
【実施例0043】
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0044】
[シリカ熱反射板の形成]
(実施例1)
(シリカ板が平板同士でMo/Cr
2O
3/Si/Cr
2O
3/Moである形態)
図3に示したシリカ熱反射板を作製する。まず、外周324mm、厚さ1mmのシリカ板2枚を準備し、それぞれ第1シリカ板、第2シリカ板とした。次に、第1シリカ板の外周から幅5mmを第2シリカ板との接合部として残した。次に、第1シリカ板に第1反射層としてMoターゲットを用いてスパッタリング法によって100nm成膜した。次に第1反射層の上に第1バリア層としてCrターゲットを用いてアルゴンに酸素を含ませた雰囲気でCr
2O
3となるようにスパッタリング法によって20nm成膜した。次に、第2シリカ板に第2反射層としてMoターゲットを用いてスパッタリング法によって100nm成膜した。次に第2反射層の上に第2バリア層としてCrターゲットを用いてアルゴンに酸素を含ませた雰囲気でCr
2O
3となるようにスパッタリング法によって20nm成膜した。第1シリカ板の第1バリア層と第2シリカ板の第2バリア層とが向かい合い、かつ、第1バリア層と第2バリア層とを離した状態で、第1シリカ板の接合部及び第1バリア層の上、かつ、第2シリカ板の接合部及び第2バリア層の上に、それぞれ、接合剤層としてSiを堆積させた。次に、前記第1シリカ板と前記第2シリカ板の接合剤層同士を接合し、シリカ熱反射板を形成した。接合後の反射面である両面の外観を目視で確認した結果、干渉縞は見られなかった。
図17に、代表して、シリカ熱反射板の反射面の一方の外観画像を示した。
【0045】
[シリカ板に各層を堆積させた試料の反射率の測定]
(実施例2)
(シリカ板が平板で積層膜がMo/Ta/Si/Ta/Moである形態)
まず、20mm×40mm×0.7mmのシリカ板1枚を準備した。次に、シリカ板に第1反射層としてMoターゲットを用いてスパッタリング法によって100nm成膜した。次に、第1反射層の上に第1バリア層としてTaターゲットを用いてスパッタリング法によって20nm成膜した。次に、第1バリア層の上に接合剤層としてSiターゲットを用いてスパッタリング法によって23nm成膜した。次に、接合剤層の上に第2バリア層としてTaターゲットを用いてスパッタリング法によって20nm成膜した。次に、第2バリア層の上に第2反射層としてMoターゲットを用いてスパッタリング法によって100nm成膜した積層体を形成した。次に前記積層体を真空アニール炉(ULVAC理工社製)に入れて1.0×10
‐4Paに真空引きした後、熱サイクル試験(550℃⇔800℃)を行った。550℃から800℃までの昇温時間を1.5分とし、800℃で10分維持し、800℃から550℃までの降温時間を6.5分とし、550℃で10分維持し、このような昇温-維持-降温-維持を1サイクルとして、100サイクルを赤外線ランプアニール装置にて行った。100サイクルを経た前記積層体に赤外線を入射させ、反射率を測定した。測定した結果を
図18に示す。
【0046】
(実施例3)
(シリカ板が平板で積層膜がMo/Cr/Si/Cr/Moである形態)
第1反射層の上に第1バリア層としてCrターゲットを用いてスパッタリング法によって20nm成膜し、接合剤層の上に第2バリア層としてCrターゲットを用いてスパッタリング法によって20nm成膜した以外は、実施例2と同様にして、積層膜を形成した。反射率を測定した結果を
図18に示す。
【0047】
(実施例4)
(シリカ板が平板で積層膜がMo/TiN/Si/TiN/Moである形態)
第1反射層の上に第1バリア層としてTiターゲットを用いてアルゴンに窒素を含ませた雰囲気でTiNとなるようにスパッタリング法によって20nm成膜し、接合剤層の上に第2バリア層としてTiターゲットを用いてアルゴンに窒素を含ませた雰囲気でTiNとなるようにスパッタリング法によって20nm成膜した以外は、実施例2と同様にして、積層膜を形成した。反射率を測定した結果を
図18に示す。
【0048】
(実施例5)
(シリカ板が平板で積層膜がMo/Ir/Si/Ir/Moである形態)
第1反射層の上に第1バリア層としてIrターゲットを用いてスパッタリング法によって20nm成膜し、接合剤層の上に第2バリア層としてIrターゲットを用いてスパッタリング法によって20nm成膜した以外は、実施例2と同様にして、積層膜を形成した。反射率を測定した結果を
図18に示す。
【0049】
(実施例6)
(シリカ板が平板で積層膜がMo/Ru/Si/Ru/Moである形態)
第1反射層の上に第1バリア層としてRuターゲットを用いてスパッタリング法によって20nm成膜し、接合剤層の上に第2バリア層としてRuターゲットを用いてスパッタリング法によって20nm成膜した以外は、実施例2と同様にして、積層膜を形成した。反射率を測定した結果を
図18に示す。
【0050】
(比較例1)
(シリカ板が平板で積層膜がMo/Si/Moである形態)
第1バリア層及び第2バリア層を成膜しなかった以外は、実施例2と同様にして、積層膜を形成した。反射率を測定した結果を
図18に示す。
【0051】
実施例2~6では、2400nmの波長の赤外線で90%以上の反射率が得られた。すなわち、反射層と接合剤層との間にバリア層を設けたことによって反射層と接合剤層との反応を抑制したことを確認した。一方、比較例1では2400nmの波長の赤外線で85%以下の反射率が見受けられた。これは、反射層と接合剤層との間にバリア層が設けていなかったため、反応層と接合剤層との間で反応が生じたことが原因と考えられる。