(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133981
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ポリ尿素分散ポリオール、及び再生ポリウレタン樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/12 20060101AFI20240926BHJP
C08J 11/28 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08G18/12
C08J11/28 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044030
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 智隆
【テーマコード(参考)】
4F401
4J034
【Fターム(参考)】
4F401AA26
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4J034QA02
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4J034QA05
(57)【要約】
【課題】簡便に、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物を利用する技術を提供する。
【解決手段】ポリ尿素分散ポリオールは、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物と、ポリオールと、イソシアネートと、を含む組成物から得られる。アミン化合物とポリオールの混合物のアミン価は、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である。アミン化合物のアミノ基に対する、イソシアネートのイソシアネート基のモル比[イソシアネート基/アミノ基]が0.8モル以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物と、ポリオールと、イソシアネートと、を含む組成物から得られたポリ尿素分散ポリオールであって、
前記アミン化合物と前記ポリオールの混合物のアミン価は、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、
前記アミン化合物のアミノ基に対する、前記イソシアネートのイソシアネート基のモル比[イソシアネート基/アミノ基]が0.8モル以上である、ポリ尿素分散ポリオール。
【請求項2】
前記組成物は、ポリエーテルポリオールを含む、請求項1に記載のポリ尿素分散ポリオール。
【請求項3】
前記分解物は、前記ポリウレタン樹脂をアミン分解して得られた分解物である、請求項1又は請求項2に記載のポリ尿素分散ポリオール。
【請求項4】
前記組成物は、分子量1000以下のポリオールを含む、請求項1又は請求項2に記載のポリ尿素分散ポリオール。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のポリ尿素分散ポリオールを用いて再生ポリウレタン樹脂を製造する、再生ポリウレタン樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリ尿素分散ポリオール、及び再生ポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、種々の分野で用いられている。ポリウレタンフォームの端材、使用済みのポリウレタンフォーム等を化学的に分解して、再利用する試みがなされている。
【0003】
特許文献1には、ポリウレタンの分解方法が記載されている。このポリウレタンの分解方法は、ポリウレタンをポリアミン化合物の存在下に120℃-250℃に加熱分解し、分解生成したポリオール及び該ポリオールに可溶の尿素体を含有する液状物と、不溶物である尿素体を含有する固形分に分離する。そして、該固形分にポリアミン化合物を加えて溶解し、必要により不溶物を除いた後、200℃-320℃の高温高圧水により加水分解し、生成したポリアミン及び/又はポリオール化合物を回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術は、煩雑な処理を行ってポリアミン化合物を得ており、より簡便に、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物を利用する技術が望まれている。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便に、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物を利用する技術を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物と、ポリオールと、イソシアネートと、を含む組成物から得られたポリ尿素分散ポリオールであって、
前記アミン化合物と前記ポリオールの混合物のアミン価は、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、
前記アミン化合物のアミノ基に対する、前記イソシアネートのイソシアネート基のモル比[イソシアネート基/アミノ基]が0.8モル以上である、ポリ尿素分散ポリオール。
[2]
前記組成物は、ポリエーテルポリオールを含む、[1]に記載のポリ尿素分散ポリオール。
[3]
前記分解物は、前記ポリウレタン樹脂をアミン分解して得られた分解物である、[1]又は[2]に記載のポリ尿素分散ポリオール。
[4]
前記組成物は、分子量1000以下のポリオールを含む、[1]から[3]のいずれか一項に記載のポリ尿素分散ポリオール。
[5]
[1]から[4]のいずれか一項に記載のポリ尿素分散ポリオールを用いて再生ポリウレタン樹脂を製造する、再生ポリウレタン樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、簡便に、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物を利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0010】
1.ポリ尿素分散ポリオール
ポリ尿素分散ポリオールは、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物と、ポリオールと、イソシアネートと、を含む組成物から得られる。アミン化合物とポリオールの混合物のアミン価は、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。アミン化合物のアミノ基に対する、イソシアネートのイソシアネート基のモル比[イソシアネート基/アミノ基]が0.8モル以上であることが好ましい。
【0011】
ポリ尿素分散ポリオールは、ポリオール中にポリ尿素を安定的に分散させたポリオールである。ポリ尿素分散ポリオールは、PHD(Polyharnstoff Dispersion)ポリオールとも称される。ポリ尿素分散ポリオールは、ポリオール中でアミン化合物とイソシアネートとを反応させて得ることができる。
【0012】
(1)ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物
ポリウレタン樹脂は、特に限定されない。ポリウレタン樹脂は、ポリウレタンフォームであることが好ましく、軟質ポリウレタンフォームであることがより好ましい。
【0013】
ポリウレタン樹脂は、廃棄物低減の観点から、例えば、ポリウレタン樹脂の製造過程で排出される端材、又は、破棄される予定の使用済みポリウレタン樹脂の廃材等であるとよい。分解処理されるポリウレタン樹脂の大きさは、特に限定されない。端材、廃材等のポリウレタン樹脂は、そのまま分解処理されてもよく、所定の大きさに加工されてから分解処理されてもよい。例えば、ポリウレタン樹脂は、分解処理のし易さの観点から、粉砕された粉砕物であることが好ましい。ポリウレタン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0014】
ポリウレタン樹脂の分解物を得る手法は、特に限定されない。ポリウレタン樹脂の分解物は、ポリウレタン樹脂をアミン分解して得られた分解物、グリコール分解して得られた分解物、加水分解して得られた分解物のいずれであってもよい。これらの中でも、ポリウレタン樹脂の分解物は、ポリウレタン樹脂をアミン分解して得られた分解物であることが好ましい。グリコール分解して得られた分解物は、分解剤として用いたグリコールが混入すると、ポリウレタン樹脂の分解物から再生ポリオールを得る際にグリコールを除去する作業が煩雑である。他方、アミン分解して得られた分解物は、分解剤として用いたアミン化合物が混入しても、アミン化合物を含んだままポリ尿素分散ポリオールの原料として用いることが可能である。
【0015】
分解剤としては、ウレタン結合を化学的に分解、液状化するものであれば、特に限定されるものではないが、反応性やコストの点から水酸基を有する化合物やアミン化合物が好ましい。
水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの水酸基を有する化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
また、アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロパンジアミン、2-エチルヘキシルアミン、イソプロパノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、エチルアミノエタノール、アミノブタノール、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-アミルアミン、イソブチルアミン、メチルジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ピペラジン、ピペリジン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、クロロアニリン、ピリジン、ピコリン、N-メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、ピラゾール等が挙げられる。これらのアミン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好適である。
【0016】
分解剤の添加量は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、5質量部以上300質量部以下であることが好ましく、10質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。10質量部以上50質量部以下であることが更に好ましい。
【0017】
分解剤を使用する分解反応において、必要に応じて、さらに分解触媒を添加し、反応速度を上げることができる。
添加する触媒としては、ウレタンフォームの製造時に使われるものが好ましい。ウレタンフォームの製造時に使われる触媒であれば、ポリウレタンシート11を分解して得られた再生原料(例えば再生ポリオ―ル等)に当該触媒が残存している場合であっても、好適に再生ポリウレタンフォームを作製できる。すなわち、再生ポリオール等を使用して再生ポリウレタンフォームを発泡させる際に、残存した触媒が悪影響を及ぼし難いと考えられる。また、再生ポリウレタンフォームを作製する際に、新たに添加する触媒量を節約できるという効果を奏し得る。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパン1,3-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン1,6-ジアミン、N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,-メチル,N’-(2-ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N-メチルモルホリン、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)-モルホリン、1,2-ジメチルイミダゾール、ヘキサメチレンテトラミン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル、ジアザビシクロウンデセン、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマーカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルインジマレエート、ジオクチルチンマーカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、オクテン酸鉛、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等を使用することができる。これらの中でも、ジアザビシクロウンデセン、オクチル酸カリウムが好適である。
【0018】
触媒の添加量は、分解剤100質量部に対して、0.01質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上20質量部以下であることが更に好ましい。
【0019】
ポリウレタン樹脂の分解物の状態は、特に限定されない。ポリウレタン樹脂の分解物は、ポリオールを少なくとも含有する上相と、アミン化合物を少なくとも含有する下相とに相分離した状態で得られることが好ましい。ウレタン樹脂の分解物が相分離した状態で得られれば、例えば、上相からポリウレタン樹脂由来の再生ポリオールを得つつ、本開示の技術によって下相を有効活用できる。よって、ウレタン樹脂の分解物が単相の状態で得られる場合に比して、ポリウレタン樹脂の分解物全体としてのリサイクル効率を向上できる。
【0020】
なお、ポリウレタン樹脂の分解物を相分離した状態で得るためには、分解剤の種類や、分解剤の量を適宜調整すればよい。例えば、分解剤としてジエタノールアミンを用いた場合には、ポリウレタン樹脂100質量部に対してジエタノールアミンを好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは10質量部以上20質量部以下添加することによって、好適に、ポリウレタン樹脂の分解物を相分離した状態で得ることができる。
【0021】
リサイクルの簡便性の観点から、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物として、ポリウレタン樹脂の分解物の下相をそのまま用いることが好ましい。すなわち、ポリウレタン樹脂の分解物の下相を、ポリ尿素分散ポリオールの原料として用いるとよい。
従来、ポリウレタン樹脂の分解物の下相の利用には、次のような問題があった。まず、ポリウレタン樹脂の分解物の下相を、そのままポリウレタン樹脂の原料として用いると、反応性が高すぎて、ポリウレタン樹脂の成形が困難となる。他方、ポリウレタン樹脂の分解物の下相から、蒸留等によってアミン化合物を回収して利用する場合には、アミン化合物の回収に煩雑な処理が必要となる。さらに、ポリウレタン樹脂の分解物の下相には、通常、イソシアネート由来のアミン化合物とともに、イソシアネート由来のアミン化合物以外のアミン化合物(例えば、分解剤由来のアミン化合物等)も含まれており、特定のアミン化合物の単離は困難である。本願発明者は、ポリウレタン樹脂の分解物の下相の新規な用途として、ポリ尿素分散ポリオールの原料として利用できることを見出し、本開示の技術を開発した。本実施形態は、ポリウレタン樹脂の分解物の下相を、ポリ尿素分散ポリオールの原料として用いることによって、ポリウレタン樹脂の分解物を簡便に有効活用できる。
【0022】
(2)ポリオール
ポリオールは、特に限定されない。各種のポリオールは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールが例示される。
【0023】
(2.1)ポリエーテルポリオールA
組成物は、ポリエーテルポリオールAを含むことが好ましい。ポリエーテルポリオールAとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、ポリオール中の2級水酸基の含有率を多くする観点から、ポリプロピレングリコールを含むことがより好ましい。2級水酸基は、1級水酸基に比べてイソシアネート基との反応性が低い。よって、例えば、ポリオール中の2級水酸基の比率(モル比)を多くすることによって、ポリオールの水酸基とイソシアネート基との反応よりも、アミン化合物のアミノ基とイソシアネート基との反応を優先させることができる。ポリエーテルポリオールAは、例えばポリエステルポリオール等に比して、ポリオール中の2級水酸基の比率を高くし易く、ポリ尿素分散ポリオールの製造に好適である。
【0024】
ポリエーテルポリオールAの官能基数、及び数平均分子量は特に限定されない。
ポリエーテルポリオールAの官能基数は、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、更に好ましくは3.0である。ポリエーテルポリオールの官能基数は、通常2以上である。
ポリエーテルポリオールAの数平均分子量は、好ましくは1000より大きく15000以下であり、より好ましくは1500以上10000以下であり、更に好ましくは2000以上7000以下である。
本明細書において、ポリオールの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。ポリオールが市販品である場合には、カタログ値をポリエーテルポリオールAの数平均分子量として採用してもよい。
【0025】
ポリエーテルポリオールAの含有量は特に限定されない。ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上であり、更に好ましくは70質量部以上である。上記のポリエーテルポリオールAの含有量の上限値は特に限定されず、100質量部であってもよい。
【0026】
(2.2)分子量1000以下のポリオールB
組成物は、アミン化合物との相溶性向上、及び、組成物の流動性向上の観点から、分子量1000以下のポリオールBを含むことが好ましい。分子量1000以下のポリオールBとしては、プロピレングリコール(分子量76)、ジプロピレングリコール(分子量134)、トリプロピレングリコール(分子量192)、エチレングリコール(分子量62)、ジエチレングリコール(分子量106)、トリエチレングリコール(分子量150)、グリセリン(分子量92)、分子量1000以下のポリエチレングリコール、分子量1000以下のポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0027】
分子量1000以下のポリオールBは、数平均分子量が1000より大きいポリオールと併用されることがより好ましい。数平均分子量が1000より大きいポリオールをベースポリオールとも称する。数平均分子量が1000より大きいポリオールとしては、上記のポリエーテルポリオールAを例示でき、その説明を省略する。
【0028】
分子量1000以下のポリオールBの含有量は特に限定されない。分子量1000以下のポリオールBの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上であり、更に好ましくは5質量部以上である。ベースポリオールの配合量を確保するために、上記の分子量1000以下のポリオールBの含有量は、好ましくは40質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下であり、更に好ましくは20質量部以下である。これらの観点から、上記の分子量1000以下のポリオールBの含有量は、好ましくは2質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上30質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以上20質量部以下である。
【0029】
(3)イソシアネート
イソシアネートは、特に限定されない。イソシアネートとしては、芳香族系イソシアネート、脂環式イソシアネート、及び脂肪族系イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に採用される。脂肪族系イソシアネートの1種類以上と、芳香族系イソシアネートの1種類以上を併用してもよい。
また、イソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネート、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートのいずれであってもよく、単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート等の脂肪族系イソシアネートを挙げることができる。
また、3官能以上のイソシアネートとしては、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4"-トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。
なお、その他ウレタンプレポリマーやカルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性イソシアネート、ビュレット変性イソシアネートも使用することができる。
【0030】
ポリ尿素分散ポリオールを用いて再生ポリウレタン樹脂を製造する場合には、イソシアネートは、再生ポリウレタン樹脂の原料であるイソシアネートと同種であることが好ましい。再生ポリウレタン樹脂の原料であるイソシアネートと同種であれば、イソシアネートが再生ポリウレタン樹脂の諸物性に及ぼす影響を低減できる。
【0031】
(4)アミン化合物とポリオールの混合物のアミン価
アミン化合物とポリオールの混合物のアミン価は、20mgKOH/g以上であり、アミン化合物の利用効率の観点から、好ましくは25mgKOH/g以上であり、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは35mgKOH/g以上である。上記のアミン価は、得られるポリ尿素分散ポリオールのゲル化を抑制する観点から、100mgKOH/g以下であり、得られるポリ尿素分散ポリオールのゲル化を抑制する観点から、好ましくは95mgKOH/g以下であり、より好ましくは90mgKOH/g以下であり、更に好ましくは85mgKOH/g以下である。これらの観点から、上記のアミン価は、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、好ましくは25mgKOH/g以上95mgKOH/g以下であり、より好ましくは30mgKOH/g以上90mgKOH/g以下であり、更に好ましくは35mgKOH/g以上85mgKOH/g以下である。
なお、アミン化合物とポリオールの混合物のアミン価は、JIS K 1557-7に準拠して測定できる。
【0032】
(5)イソシアネート基/アミノ基
アミン化合物のアミノ基に対する、イソシアネートのイソシアネート基のモル比[イソシアネート基/アミノ基]は、0.8モル以上である。上記のモル比は、ポリ尿素分散ポリオールに残存するアミノ基を低減する観点から、0.9モル以上、1.0モル以上、1.2モル以上、1.5モル以上、2.0モル以上であってもよい。ポリ尿素分散ポリオールに残存するアミノ基を低減することによって、例えば、得られたポリ尿素分散ポリオールをポリウレタン樹脂の原料として用いた場合に、ウレタン化等の反応速度を遅くできる。よって、ポリウレタン樹脂の成形性の向上が期待できる。上記のモル比の上限値は特に限定されず、例えば、5.0モル以下、3.0モル以下、1.5モル以下であってもよい。
なお、イソシアネート基/アミノ基は、イソシアネートのNCO%と、アミン化合物のアミン価に基づいて算出できる。イソシアネートのNCO%は、例えば、JIS K 1603-1により測定できる。アミン化合物のアミン価は、例えば、JIS K 1557-7により測定できる。
【0033】
(6)その他の成分
組成物は、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物、ポリオール、及びイソシアネート以外の成分(その他の成分とも称する)を含んでいてもよい。得られたポリ尿素分散ポリオールの再利用の観点から、その他の成分は用いないことが好ましい。その他の成分としては、アジピン酸エステル、モノオール等の可塑剤、触媒、界面活性剤等が挙げられる。その他の成分は、ポリ尿素分散ポリオールを再利用して、再生ポリウレタン樹脂を製造する際にウレタン化反応等の反応に影響を与える懸念がある。本実施形態では、その他の成分を添加せずともポリ尿素分散ポリオールを得られるから、その他の成分の添加量を低減でき、又はその他の成分を添加しなくてもよい。
【0034】
2.ポリ尿素分散ポリオールの製造方法
ポリ尿素分散ポリオールは、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物と、ポリオールと、イソシアネートと、を所定の比率で混合して製造できる。所定の比率は、上記のアミン化合物とポリオールの混合物のアミン価であり、かつ上記のイソシアネート基/アミノ基となるように、適宜設定すればよい。
【0035】
より具体的には、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物と、ポリオールを混合し、混合液を攪拌しながら、イソシアネートを滴下する。イソシアネートを滴下した後に、所定の温度、所定の時間反応させ、ポリ尿素分散ポリオールを得る。
所定の温度としては、例えば、40℃以上100℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下とすることができる。
所定の時間としては、例えば、0.5時間以上10時間以下、好ましくは2時間以上5時間以下とすることができる。
【0036】
3.ポリ尿素分散ポリオールの特性
ポリ尿素分散ポリオールの性状は、特に限定されない。ポリ尿素分散ポリオールは、液体状であることが好ましい。液体状のポリ尿素分散ポリオールは、固形状、ゲル状等のポリ尿素分散ポリオールよりも再利用し易く有利である。なお、ポリ尿素分散ポリオールは、そのまま再生ポリウレタンフォームの原料として利用してもよく、ろ過や、ポリオール類での希釈等の簡便な処理をして、再生ポリウレタンフォームの原料として利用してもよい。
【0037】
ポリ尿素分散ポリオールのアミン価は、特に限定されない。ポリ尿素分散ポリオールのアミン価は、再生ポリウレタンフォームの成形性の観点から、好ましくは45KOHmg/g以下であり、より好ましくは40KOHmg/g以下であり、更に好ましくは35KOHmg/g以下、30KOHmg/g以下である。ポリ尿素分散ポリオールのアミン価の下限値は特に限定されず、例えば、1KOHmg/g以上である。
なお、ポリ尿素分散ポリオールのアミン価は、JIS K 1557-7に準拠して測定できる。
【0038】
4.再生ポリウレタン樹脂の製造方法
再生ポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリ尿素分散ポリオールを用いて再生ポリウレタン樹脂を製造する。
なお、再生ポリウレタン樹脂の製造方法において、「ポリ尿素分散ポリオール」については、「1.ポリ尿素分散ポリオール」の欄における説明をそのまま適用し、その記載は省略する。
【0039】
再生ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリ尿素分散ポリオールと、イソシアネートとを含む再生ポリウレタン樹脂用組成物から得られる。再生ポリウレタン樹脂用組成物は、ポリ尿素分散ポリオール、イソシアネート以外にも、触媒、整泡剤、発泡剤、老化防止剤、顔料等を更に含んでいてもよい。
【0040】
再生ポリウレタン樹脂用組成物は、通常のポリウレタン樹脂用組成物に含まれるポリオール(以下、非再生のポリオールとも称する)の一部又は全部をポリ尿素分散ポリオールに代替した組成物であってもよい。すなわち、再生ポリウレタン樹脂用組成物は、ポリ尿素分散ポリオールとともに、非再生のポリオールを含有してもよい。
【0041】
ポリ尿素分散ポリオールと非再生のポリオールとの比率(質量比)は、特に限定されない。ポリ尿素分散ポリオールと非再生のポリオールとの比率(質量比)は、例えば、10:90-100:0とすることができ、リサイクル効率向上と再生ポリウレタン樹脂の諸物性の観点から、20:80-80:20、30:70-70:30、40:60-60:40とすることができる。
【0042】
再生ポリウレタン樹脂は、公知の方法によって製造することができる。再生ポリウレタンフォームの発泡方法には、スラブ発泡とモールド発泡とがあり、いずれの成形方法でもよい。スラブ発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。他方、モールド発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をモールド(成形型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。
【実施例0043】
1.ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物の製造
(1)アミン化合物1
ポリウレタン樹脂として、表1の「被分解物」に記載のポリウレタンフォーム用組成物(A液及びB液)から得られたポリウレタンフォームを用いた。
各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリオール1:ポリエーテルポリオール、数平均分子量3000、官能基数3、品名:サンニックスGP-3050NS、三洋化成工業社製
・アミン触媒:品名:DABCO 33LSI、EVONIK社製
・整泡剤:シリコーン整泡剤、品名:L-595、モメンティブ社製
・スズ触媒:オクチル酸第一錫、品名:MRH-110、城北化学工業社製
・発泡剤:水
・イソシアネート1:トリレンジイソシアネート、NCO%:48.2%、品名 コロネートT-80、東ソー社製
【表1】
【0044】
上記のポリウレタンフォーム 100質量部に、分解剤としてジエタノールアミン 15質量部、触媒としてジアザビシクロウンデセン(DBU) 1質量部を添加し、210℃に加熱してポリウレタン樹脂の分解物を得た。得られた分解物を比重差によって相分離させ、アミン化合物1を含む下相を回収した。回収した下相を、そのままアミン化合物1とした。
(2)アミン化合物2
分解剤としてジエタノールアミン 100質量部を添加した他は、アミン化合物1と同様にしてアミン化合物2を含む下相を回収した。回収した下相を、そのままアミン化合物2とした。
【0045】
2.ポリ尿素分散ポリオールの製造
ポリオール2、ポリオール3、アミン化合物1、アミン化合物2を表2に記載の配合割合で混合した。表2中「-」は、当該成分を配合していないことを示している。混合物を攪拌しながら表2に記載の配合割合のイソシアネート2を滴下し、滴下後70℃で、3時間反応させた。以上により、各実施例及び各比較例のポリ尿素分散ポリオールを得た。
アミン化合物1及びアミン化合物2以外の各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリオール2:ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール)、数平均分子量3000、官能基数3
・ポリオール3:ジプロピレングリコール、分子量134、官能基数2
・イソシアネート2:トリレンジイソシアネート、NCO%:48.2%、品名 コロネートT-80、東ソー社製
なお、ポリオール2は、実施形態に記載の「ポリエーテルポリオールA」に相当する。ポリオール3は、実施形態に記載の「分子量1000以下のポリオールB」に相当する。
【表2】
【0046】
3.再生ポリウレタンフォームの製造
表1の「再生ポリウレタンフォーム」の配合割合で再生ポリウレタンフォーム用組成物(A液及びB液)を調製し、スラブ発泡により、再生ポリウレタンフォームを製造した。
ポリ尿素分散ポリオールとして、各実施例及び比較例3のポリ尿素分散ポリオールを用いた。なお、比較例1,2は、ポリ尿素分散ポリオールがゲル状であったため、再生ポリウレタンフォームの製造を試みていない。その他の各原料の詳細は、表1の「ポリウレタンフォーム」の原料と同じである。
【0047】
4.評価方法
(1)アミン化合物とポリオールの混合物のアミン価
アミン化合物とポリオールの混合物のアミン価は、JIS K 1557-7に準拠して測定した。
(2)イソシアネート基/アミノ基(モル比)
イソシアネート基/アミノ基は、実施形態に記載の方法で算出した。
【0048】
(3)ポリ尿素分散ポリオールの性状
ポリ尿素分散ポリオールの性状を以下の基準で評価した。なお、評価「B」については、表2に説明を付している。
A:液状である。
B:液状ではない。
(4)ポリ尿素分散ポリオールのアミン価
ポリ尿素分散ポリオールのアミン価は、JIS K 1557-7に準拠して測定した。なお、比較例1,2は、ポリ尿素分散ポリオールがゲル状であったため、アミン価を測定していない。
【0049】
(5)再生ポリウレタンフォームの発泡性
ポリ尿素分散ポリオールの発泡性を、以下の基準に基づき評価した。なお、評価「B」、「C」については、表2に説明を付している。
A:発泡速度が良好である。
B:発泡速度がやや速いかやや遅いかのいずれかであるが、実用可能である。
C:発泡速度が速いか遅いかのいずれかであり、実用不可である。
(6)再生ポリウレタンフォームの外観
再生ポリウレタンフォームの外観を、以下の基準に基づき評価した。なお、評価「B」、「C」については、表2に説明を付している。
A:外観が良好である。
B:わずかに成形不良が確認されるが、実用可能である。
C:成形不良が確認され、実用不可である。
(7)総合判定
各実施例及び各比較例について、以下の基準に基づき評価した。
A:ポリ尿素分散ポリオールの性状が「A」であり、かつ、再生ポリウレタンフォームの発泡性及び外観の評価が「A」である。
B:ポリ尿素分散ポリオールの性状が「A」であり、かつ、再生ポリウレタンフォームの発泡性及び外観のいずれかの評価が「B」である。
C:ポリ尿素分散ポリオールの性状が「B」である、又は、再生ポリウレタンフォームの発泡性及び外観のいずれかの評価が「C」である。
【0050】
5.結果
評価結果を表2に併記する。
実施例1-7は、下記要件(a)-(c)を満たしている。なお、比較例1,2は、要件(b)を満たしていない。比較例3は、要件(c)を満たしていない。
・要件(a):ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物と、ポリオールと、イソシアネートと、を含む組成物から得られたポリ尿素分散ポリオールである。
・要件(b):アミン化合物とポリオールの混合物のアミン価は、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である。
・要件(c):アミン化合物のアミノ基に対する、イソシアネートのイソシアネート基のモル比[イソシアネート基/アミノ基]が0.8モル以上である。
【0051】
要件(a)-(c)を満たす実施例1-7は、総合評価が「A」又は「B」であった。実施例1-7は、比較例1-3に比して、総合評価が高かった。
【0052】
実施例1-7のうち、実施例3及び実施例6は下記要件(d)を満たしている。
・要件(d):組成物は、分子量1000以下のポリオールを含む。
【0053】
要件(d)を満たす実施例3及び実施例6は、アミン化合物との相溶性が良好であり、また、組成物の流動性が良好であった。よって、要件(d)を満たすことで、アミン化合物との相溶性を向上させ、また、組成物の流動性を向上できることが示唆された。
【0054】
6.実施例の効果
本実施例によれば、簡便に、ポリウレタン樹脂の分解物であるアミン化合物を利用できた。
【0055】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。