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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133984
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240926BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20240926BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H02K9/19 A
F16H57/04 N
F16H1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044037
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】北又 大貴
【テーマコード(参考)】
3J009
3J063
5H609
【Fターム(参考)】
3J009EA21
3J009EA32
3J009EA44
3J009EB24
3J009FA04
3J063AA04
3J063AB02
3J063AC01
3J063BA11
3J063CB01
3J063CD41
3J063XD03
3J063XD16
3J063XD32
3J063XD47
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XF12
3J063XF14
3J063XF21
5H609BB16
5H609BB18
5H609PP06
5H609QQ05
5H609QQ09
5H609RR01
5H609RR26
5H609RR53
5H609RR67
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ギヤによる効率的な流体のかき上げを実現できる駆動装置の提供。
【解決手段】本発明の駆動装置の一つの態様は、モータと、前記モータの動力を伝達する動力伝達部と、前記動力伝達部を収容するギヤ室82が設けられたハウジング6と、前記ギヤ室に配置され流体を吸入する吸込部材70と、を備える。前記動力伝達部は、第1軸線J1を中心として回転可能な第1ギヤ42を有する。前記吸込部材は、前記第1軸線の径方向において前記第1ギヤの歯先と対向し前記第1ギヤの歯先に沿って延びる第1ガイド面60fを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの動力を伝達する動力伝達部と、
前記動力伝達部を収容するギヤ室が設けられたハウジングと、
前記ギヤ室に配置され流体を吸入する吸込部材と、を備え、
前記動力伝達部は、第1軸線を中心として回転可能な第1ギヤを有し、
前記吸込部材は、前記第1軸線の径方向において前記第1ギヤの歯先と対向し前記第1ギヤの歯先に沿って延びる第1ガイド面を有する、
駆動装置。
【請求項2】
前記動力伝達部は、前記第1軸線と平行に延びる第2軸線を中心として回転可能な第2ギヤを有し、
前記第1ギヤと前記第2ギヤとは、鉛直方向、および軸方向の両方と交差する第1方向に並んで配置され、
前記第1方向において、前記吸込部材は、前記第1ギヤと前記第2ギヤとの間に位置する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記吸込部材の上端部は、前記第1ギヤの下端部、および前記第2ギヤの下端部よりも上側に位置する、
請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記吸込部材は、前記第2軸線の径方向において前記第2ギヤの歯先と対向し前記第2ギヤの歯先に沿って延びる第2ガイド面を有する、
請求項2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記吸込部材は、吸込口を有し、
前記吸込口は、下方に開口し、鉛直方向から見て前記第1ガイド面、および前記第2ガイド面に重なる、
請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記ギヤ室に配置されるガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記第1軸線の周方向に沿って湾曲するガイド面を有する、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記第1軸線の周方向に沿って、前記吸込部材と並んで配置される、
請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
ポンプを備え、
前記動力伝達部は、前記モータに対し軸方向一方側に位置し、
前記ハウジングは、前記ギヤ室を軸方向他方側から覆う第1壁部を有し、
前記ポンプは、前記第1壁部の軸方向他方側、かつ前記モータの径方向外側に配置され、
前記第1壁部には、前記吸込部材と前記ポンプを繋ぐ貫通孔が設けられる、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記吸込部材と前記ポンプとは、軸方向に並んで配置される、
請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
ポンプを備え、
前記動力伝達部は、前記モータに対し軸方向一方側に位置し、
前記ハウジングは、前記ギヤ室を軸方向一方側から覆う第2壁部を有し、
前記ポンプは、前記第2壁部の軸方向一方側に配置され、
前記第2壁部には、前記吸込部材と前記ポンプを繋ぐ貫通孔が設けられる、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記吸込部材と前記ポンプとは、軸方向に並んで配置される、
請求項10に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記動力伝達部は、前記第1軸線と平行に延びる第2軸線を中心として回転可能な第2ギヤを有し、
前記第1ギヤと前記第2ギヤとは、鉛直方向、および軸方向の両方と交差する第1方向に並んで配置され、
前記第1ギヤは、前記第2ギヤに対し第1方向の一方側に位置し、
前記吸込部材は、前記第1ギヤに対し第1方向の一方側に位置する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記動力伝達部は、鉛直方向、および軸方向の両方と交差する第1方向に並んで配置され、複数の軸線を中心としてそれぞれ回転可能な複数のギヤを有し、
複数のギヤは、第1方向の一方側から他方側に向かって前記モータの動力を伝達し、
前記第1ギヤは、複数の前記ギヤのうち、第1方向の最も他方側に位置し、
前記吸込部材は、前記第1ギヤに対し第1方向の他方側に位置する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記吸込部材は、鉛直方向から見て前記第1軸線と重なる、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記吸込部材はポンプであって、
前記ポンプは、ポンプ本体部と前記ポンプ本体部を収容するポンプハウジングとを有し、
前記第1ガイド面は、前記ポンプハウジングの外側面に設けられる、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記吸込部材はストレーナであって、
前記ストレーナは、フィルタ部材と前記フィルタ部材を収容するケースとを備え、
前記第1ガイド面は、前記ケースの外側面に設けられる、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車およびハイブリッド自動車などの車両に搭載される駆動装置が知られている。このような駆動装置は、ギヤの潤滑性およびモータの冷却等を高めるために、内部にオイルなどの流体が貯留される場合がある。例えば、ケースの底部に溜められたオイルをギヤの回転によってかき上げることでオイルを循環させることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-254197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジング内の流体をモータの冷却に利用する場合、流体はポンプによって吸い込まれる。この場合、ハウジング内には、ストレーナなどの吸込部材が配置される。吸込部材の配置や形状によっては、ギヤによる流体のかき上げを阻害する虞がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記問題点に鑑みて、ギヤによる効率的な流体のかき上げを実現できる駆動装置の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、モータと、前記モータの動力を伝達する動力伝達部と、前記動力伝達部を収容するギヤ室が設けられたハウジングと、前記ギヤ室に配置され流体を吸入する吸込部材と、を備える。前記動力伝達部は、第1軸線を中心として回転可能な第1ギヤを有する。前記吸込部材は、前記第1軸線の径方向において前記第1ギヤの歯先と対向し前記第1ギヤの歯先に沿って延びる第1ガイド面を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、ギヤによる効率的な流体のかき上げを実現できる駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の駆動装置の概念図である。
図2図2は、一実施形態の駆動装置のギヤ室の正面図である。
図3図3は、図2の部分拡大図である。
図4図4は、変形例1の駆動装置の概念図である。
図5図5は、変形例2の駆動装置のギヤ室の正面図である。
図6図6は、変形例3の駆動装置のギヤ室の正面図である。
図7図7は、変形例4の駆動装置のギヤ室の部分拡大図である。
図8図8は、変形例5の駆動装置のギヤ室の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。
以下の説明では、駆動装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両の前後方向を示し、+X方向が車両前方であり、-X方向が車両後方である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示し、+Y方向が車両左方であり、-Y方向が車両右方である。
【0010】
以下の説明において特に断りのない限り、後述する第1軸線J1に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼ぶ。また、車両右方(すなわち、-Y側)を、単に軸方向一方側と呼び、車両左方(すなわち、+Y側)を、単に軸方向他方側と呼ぶ。さらに、第3軸線J3を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、第3軸線J3を中心とする周方向、すなわち、第3軸線J3の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
以下の説明において、X軸と平行な方向である車両前後方向を単に「第1方向」と呼ぶ。また、車両の後方(すなわち、-X側)を単に第1方向の一方側と呼び、車両の前方(すなわち、+X側)を、単に第1方向の他方側と呼ぶ。第1方向は、鉛直方向および軸方向の両方と交差する方向である。
【0012】
図1は、一実施形態の駆動装置1の概念図である。
駆動装置1は、車両を駆動する。駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0013】
図1に示すように、駆動装置1は、モータ2と、動力伝達部3と、ハウジング6と、流体Oと、ストレーナ70と、ポンプ96と、クーラー97を備える。ハウジング6には、モータ2を収容するモータ室81と、動力伝達部3を収容するギヤ室82と、が設けられる。
【0014】
<モータ>
モータ2は、ロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、を備える。ロータ20は、第3軸線J3を中心として回転可能である。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア24と、ロータマグネット(図示略)と、を有する。シャフト21は、第3軸線J3を中心として軸方向に延びる。シャフト21の内部には、軸方向両端に開口する中空部22が設けられる。シャフト21の一方の端部は、ギヤ室82側に突出する。ギヤ室82に突出するシャフト21の端部には、ピニオンギヤ41が固定されている。ロータコア24は、軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア24には、図示略の複数のロータマグネットが固定される。複数のロータマグネットは、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0015】
ステータ30は、ロータ20を径方向外側から囲む。ステータ30は、ステータコア32と、コイル31と、ステータコア32とコイル31との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ30は、ハウジング6に保持される。ステータコア32は、略円環状のヨークの内周面から径方向内方に複数の磁極歯(図示略)を有する。磁極歯の間には、コイル線が装着される。磁極歯に装着されたコイル線は、コイル31を構成する。
【0016】
<動力伝達部>
動力伝達部3は、モータ2に対し軸方向一方側(-Y側)に位置する。動力伝達部3は、シャフト21に接続される。動力伝達部は、モータ2の動力を伝達する。動力伝達部3は、複数のギヤ41、42、43、51を有する。また、動力伝達部3の各ギヤは、減速装置4および差動装置5の一部を構成する。すなわち、動力伝達部3は、減速装置4および差動装置5を有する。減速装置4は、モータ2の動力を減速して差動装置5に伝える。差動装置5は、減速装置4から入力されたモータ2のトルクを車両の車輪に伝達する。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、一対の出力シャフト55に同トルクを伝える機能を有する。
【0017】
動力伝達部3の各ギヤ41、42、43、51は、それぞれ第1軸線J1、第2軸線J2、および第3軸線J3を中心に回転可能である。第1軸線J1、第2軸線J2、および第3軸線J3は、互いに平行である。第3軸線J3、第1軸線J1、および第2軸線J2は、第1方向の一方側(後方、-X側)から他方側(前方、+X側)に向かうに従いこの順で並ぶ。第3軸線J3は、第1軸線J1、および第2軸線J2よりも上側に位置する。第2軸線J2は、第1軸線J1よりも上側に位置する。
【0018】
動力伝達部3の複数のギヤ41、42、43、51は、ピニオンギヤ41、第1ギヤ42、第2ギヤ51、第3ギヤ43を含む。第1ギヤ42と第3ギヤ43とは、軸方向に並んで配置される。第1ギヤ42および第3ギヤ43は、第1軸線J1を中心として回転可能である。第2ギヤ51は、第2軸線J2を中心として回転可能である。ピニオンギヤ41は、第3軸線J3を中心に回転可能である。第1ギヤ42、および第2ギヤ51は、後述するようにギヤ室82内で流体Oをかき上げる。第1ギヤ42と第2ギヤ51とは、第1方向(X軸方向)に並んで配置される。
【0019】
減速装置4は、ピニオンギヤ41と、中間シャフト45と、中間シャフト45に固定された第1ギヤ42および第3ギヤ43と、を有する。ピニオンギヤ41は、シャフト21の外周面に固定される。中間シャフト45は、第1軸線J1に沿って延びる。中間シャフト45は、第1軸線J1を中心として回転可能である。第1ギヤ42および第3ギヤ43は、中間シャフト45の外周面に設けられる。第1ギヤ42と第3ギヤ43とは、中間シャフト45を介して互いに接続されている。第1ギヤ42と第3ギヤ43と中間シャフト45は、一体的に回転する。第1ギヤ42は、ピニオンギヤ41と噛み合う。第3ギヤ43は、第2ギヤ51と噛み合う。
【0020】
差動装置5は、第2ギヤ51と一対の出力シャフト55とを有する。また、差動装置は、その他に、図示を省略するギヤハウジング、一対のピニオンギヤ、ピニオンシャフト、および一対のサイドギヤを有する。第2ギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。一対の出力シャフト55は、軸方向に沿って延びる。一対の出力シャフト55の一端にはそれぞれサイドギヤが接続され、他端にはそれぞれ車輪が接続される。一対の出力シャフト55は、モータ2のトルクを、車輪を介して路面に伝える。
【0021】
<ハウジング>
ハウジング6は、モータ周壁部83と、ギヤ周壁部84と、第1壁部86と、第2壁部87と、第3壁部88と、を有する。モータ周壁部83は、モータ室81を第3軸線J3の径方向外側から囲む筒状である。一方で、ギヤ周壁部84は、ギヤ室82を第1軸線J1、第2軸線J2、および第3軸線J3の径方向外側から囲む筒状である。
【0022】
第1壁部86、第2壁部87、および第3壁部88は、軸方向と直交する平面に沿って延びる。第1壁部86は、第3壁部88の軸方向一方側(-Y側)に位置する。第2壁部87は、第1壁部86の軸方向一方側(-Y側)に位置する。
【0023】
第1壁部86は、モータ周壁部83の軸方向一方側(-Y側)の開口、およびギヤ周壁部84の軸方向他方側(+Y側)の開口を覆う。すなわち、第1壁部86は、ギヤ室82を軸方向他方側(+Y側)から覆う。第1壁部86は、モータ室81を軸方向一方側(-Y側)から覆う。
【0024】
第1壁部86は、隔壁領域86aと張り出し領域86bとを有する。隔壁領域86aは、モータ室81とギヤ室82とを区画する。張り出し領域86bは、第3軸線J3の径方向においてモータ周壁部83よりも外側に配置される。
【0025】
第1壁部86の隔壁領域86aには、シャフト通過孔86fと隔壁開口86gとが設けられる。シャフト通過孔86fおよび隔壁開口86gは、モータ室81とギヤ室82とを連通させる。シャフト通過孔86fには、シャフト21が通される。隔壁開口86gは、シャフト通過孔86fの下側に位置する。隔壁開口86gは、モータ室81の底部の近傍に設けられる。
【0026】
第1壁部86の張り出し領域86bには、第1壁部86を軸方向に貫通する貫通孔86hが設けられる。貫通孔86hの軸方向他方側(+Y側)の開口には、ポンプ96が接続される。一方で、貫通孔86hの軸方向一方側(-Y側)の開口には、ストレーナ70が接続される。すなわち、第1壁部86には、ストレーナ70とポンプ96を繋ぐ貫通孔86hが設けられる。
【0027】
本実施形態によれば、ストレーナ70とポンプ96とは、軸方向に並んで配置される。このため、ストレーナ70とポンプ96とが、軸方向から見て異なる位置に配置される場合と比較してストレーナ70とポンプ96とを繋ぐ流体Oの経路を短くすることができる。特に、本実施形態のストレーナ70とポンプ96とは、第1壁部86の軸方向一方側および他方側にそれぞれ配置される。また、ストレーナ70とポンプ96とを繋ぐ流体Oの経路は、第1壁部86を厚さ方向に貫通する貫通孔86hによって構成される。本実施形態によれば、ストレーナ70とポンプ96とを繋ぐ流体Oの経路の長さを、壁部86の厚さ寸法とすることができ、流体Oの経路を短くすることができる。これにより、ストレーナ70からポンプ96に至る経路の流体Oの圧力損失を抑制することができ、ポンプ96の消費電力を低減できる。
【0028】
第2壁部87は、軸方向において第1壁部86と対向する。第2壁部87は、ギヤ周壁部84の軸方向一方側(-Y側)の開口を覆う。第2壁部87は、ギヤ室82を軸方向一方側(-Y側)から覆う。第3壁部88は、軸方向において第1壁部86と対向する。第3壁部88は、モータ周壁部83の軸方向他方側(+Y側)の開口を覆う。第3壁部88は、モータ室81を軸方向他方側(+Y側)から覆う。
【0029】
図2は、本実施形態のギヤ室82の正面図である。
図2に示すように、ギヤ室82内の下部領域には、流体Oが溜る貯留部Pが設けられる。第1ギヤ42の下端部、および第2ギヤ51の下端部は、貯留部Pの流体Oに浸かる。貯留部Pに溜る流体Oは、減速装置4および差動装置5の動作によってかき上げられて、一部が第1の流路91(図1参照)に供給され、一部がギヤ室82内に飛散する。なお、減速装置4および差動装置5の動作によってかき上げられた流体Oは、必ずしも第1の流路91に供給されなくてもよく、ギヤ室82内のみに飛散してもよい。
【0030】
ギヤ室82に飛散する流体Oは、ギヤ室82内の減速装置4および差動装置5の各ギヤに供給されて、ギヤの歯面に行き渡る。これにより、各ギヤの歯面を潤滑することができる。減速装置4および差動装置5に供給され潤滑に使用された流体Oは、滴下してギヤ室82の下側に位置する貯留部Pに溜まる。また、ギヤ室82内の流体Oの容量は、流体Oが後述する流路90に供給されることで貯留部Pの液面が最下位置となった場合でも、例えば、第1ギヤ42が貯留部Pの流体Oに浸かる程度に設定されるのが望ましい。また、ギヤ室82内の流体Oの容量は、駆動装置1の停止時であって貯留部Pの液面が最高位置となった場合に、例えば、中間シャフト45を支持するベアリング3bの一部が流体Oに浸かる程度に設定されるのが望ましい。
【0031】
ギヤ室82には、キャッチタンク93と、ガイド部60と、ストレーナ70と、が配置される。本実施形態において、キャッチタンク93は、ハウジング6の壁部から軸方向に突出するリブである。すなわち、本実施形態のキャッチタンク93は、ハウジング6の一部である。しかしながら、キャッチタンク93は、ハウジング6とは別部材であってもよい。一方で、本実施形態のガイド部60は、ハウジング6とは別部材であるが、ガイド部60は、ハウジング6の壁部から軸方向に突出するリブであってもよい。
【0032】
キャッチタンク93は、第1ギヤ42の直上に配置される。本実施形態では、キャッチタンク93は、軸方向から見て、下側に凸となる略C字状のリブである。キャッチタンク93は、上側に開口する。キャッチタンク93は、一時的に流体Oを貯留するリザーバとして機能する。キャッチタンク93には、第1ギヤ42または第2ギヤ51によってかき上げられた流体Oが溜る。
【0033】
本実施形態において、車両が前方(+X側)に進行するとき、第1ギヤ42は、第2軸線J2と対向する側において第1軸線J1を基準として反時計回りに回転する方向(以下、第1回転方向T1)に回転する。したがって、流体Oは、第1ギヤ42にかき上げられて第1軸線J1と第2軸線J2との間を通過し、キャッチタンク93に入る。すなわち、車両が前方に進行するとき、貯留部Pの流体Oは主に第1ギヤ42のかき上げによってキャッチタンク93に導かれる。
【0034】
また、本実施形態において、車両が後方(-X側)に進行するとき、貯留部Pの流体Oは主に第2ギヤ51のかき上げによってキャッチタンク93に導かれる。車両が後方に進行することで、第1ギヤ42は、第1回転方向T1の反対方向に回転する。これに伴い第2ギヤ51は、第1方向一方側(+X側)において第2軸線J2を基準として反時計回りに回転し、流体Oをかき上げる。これにより、流体Oは、第2ギヤ51の歯先と第2ギヤ51に対し第1方向一方側(+X側)の内壁面との間の隙間を通って、キャッチタンク93に導かれる。
【0035】
<流体>
流体Oは、例えば、動力伝達部3の潤滑のために使用される。また、流体Oは、例えば、モータ2の冷却のために使用される。流体Oは、潤滑油および冷却油の機能を奏するため、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のものを用いることが好ましい。
【0036】
図1に示すように、流体Oは、駆動装置1内で、流路90内を循環する。流路90は、流体Oが流れる経路であって、貯留部Pからモータ2まで繋がる。
【0037】
なお、本明細書において、「流路」とは、ハウジング6の内部を循環する流体Oの経路を意味する。したがって、「流路」とは、定常的に一方向に向かう定常的な流体Oの流動を形成する「流路」のみならず、流体Oを一時的に滞留させる経路(例えばキャッチタンクのようなリザーバとして機能するもの)および流体Oが滴り落ちる経路をも含む概念である。
【0038】
流路90は、流体Oが流れる経路であって、流体Oを貯留部Pからモータ2を経て、再び貯留部Pに導く。流路90は、第1の流路91と、第2の流路92と、を有する。第1の流路91および第2の流路92は、ともに流体Oが流れる経路であって、貯留部Pからモータ2まで繋がり、再び貯留部Pに戻る。第1の流路91および第2の流路92において、流体Oは、モータ2から滴下して、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜った流体Oは、隔壁開口86gを介して、ギヤ室82内の下部領域(すなわち、貯留部P)に移動する。
【0039】
第1の流路91において、流体Oは、貯留部Pから第1ギヤ42、又は第2ギヤ51によりかき上げられてキャッチタンク93に導かれる。また、第1ギヤ42、又は第2ギヤ51にかき上げられた流体Oの一部は、ギヤ室82内の各ギヤに上側から各ギヤの歯面に供給される。キャッチタンク93に溜まった流体Oの一部は、第1壁部86および第2壁部87に保持されるベアリング3a、3b、3c、3d、3e、3fに供給される。また、キャッチタンク93に溜まった流体Oの一部は、シャフト21の中空部22に供給される。シャフト21の中空部22に供給された流体Oは、ロータ20の内部に設けられた流路内へと流れる。ロータ20の流路内の流体Oは、ロータ20の回転に伴う遠心力によって、ロータ20に設けられた孔から第3軸線J3の径方向外側に飛散して、ステータ30に到達する。ステータ30に到達した流体Oは、ステータ30から熱を奪ってステータ30を冷却しつつ、下側に滴下し、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜った流体Oは、隔壁領域86aに設けられた隔壁開口86gを介してギヤ室82に移動する。
【0040】
第2の流路92の経路中には、ストレーナ70と、ポンプ96と、クーラー97と、が設けられる。第2の流路92において流体Oは、ポンプ96によって吸い上げられるとともにストレーナ70によって異物が除去される。吸い上げられた流体Oは、さらにクーラー97によって冷却された後に、モータ2の上側からモータ2に供給される。モータ2に供給された流体Oは、ステータ30の外周面を伝いながら、ステータ30から熱を奪い、モータ2を冷却する。ステータ30の外周面を伝った流体Oは、下方に滴下してモータ室81内の下部領域に溜る。第2の流路92の流体Oは、第1の流路91の流体Oとモータ室81内の下部領域で合流する。モータ室81内の下部領域に溜った流体Oは、隔壁開口86gを介して、ギヤ室82内の下部領域(すなわち、貯留部P)に移動する。
【0041】
<ポンプ>
ポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。ポンプ96によるモータ2への流体Oの供給量は、モータ2の駆動状態に応じて適宜制御される。例えば、長時間の駆動や高い出力が必要な場合などモータ2の温度が上昇すると、ポンプ96の駆動出力が高まり、モータ2への流体Oの供給量が増加する。
【0042】
ポンプ96は、第1壁部86に固定される。ポンプ96は、第1壁部86の軸方向他方側(+Y側)、かつモータ2の径方向外側に配置される。したがって、ポンプ96は、少なくとも一部が第1壁部86の軸方向への投影面積の内側に配置される。また、ポンプ96の軸方向の位置は、モータ2の軸方向の位置に重ねて配置される。本実施形態によれば、ポンプ96をハウジング6の外側面のデッドスペースに配置することで、駆動装置1の小型化を図ることができる。なお、ポンプ96の少なくとも一部は、ギヤ室82内に配置されていてもよい。
【0043】
<クーラー>
クーラー97は、第2の流路92を通過する流体Oを冷却する。クーラー97の内部には、ラジエータ(図示省略)から供給された冷却水が通過する冷却水用配管(図示略)が設けられる。クーラー97の内部を通過する流体Oは、冷却水との間で熱交換される。本実施形態のクーラー97は、モータ周壁部83に固定される。
【0044】
<ストレーナ>
図2に示すように、ストレーナ70は、ギヤ室82に配置される。ストレーナ70は、貯留部Pからポンプ96の駆動に伴って流体Oを吸入する。すなわち、本実施形態の吸込部材は、ストレーナ70である。
【0045】
ストレーナ70は、前後方向(第1方向、X軸方向)において、第1ギヤ42と第2ギヤ51との間に位置する。第1ギヤ42、および第2ギヤ51は、それぞれ貯留部Pの流体Oをかき上げるために、少なくとも一部が貯留部P内に配置される。また、ストレーナ70に貯留部Pの流体Oが流れるように、ストレーナ70の少なくとも一部が貯留部Pに配置される。このため、貯留部Pには、複数の部材が配置されており、効率的に配置しなければギヤ室82が大型化してしまう虞がある。本実施形態によれば、ストレーナ70を、前後方向において第1ギヤ42と第2ギヤ51の間に設けられる領域に配置することで、ギヤ室82内で第1ギヤ42、第2ギヤ51、およびストレーナ70を効率的に配置することができ、ギヤ室82を有効的に利用することができる。結果的に、ギヤ室82が大型化することを抑制でき、駆動装置1の小型化を図ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態のストレーナ70の上端部は、第1ギヤ42の下端部、および第2ギヤ51の下端部よりも上側に位置する。本実施形態によれば、鉛直方向において第1ギヤ42、および第2ギヤ51とストレーナ70とを重ねて配置することができる。結果的に、ギヤ室82が鉛直方向に大型化することを抑制でき、鉛直方向における駆動装置1の小型化を図ることができる。
【0047】
図3は、図2の部分拡大図である。
図3に示すように、ストレーナ70は、フィルタ部材75と、フィルタ部材75を収容するケース76と、を備える。ケース76は、固定ボルト77によって第1壁部86に固定される。これにより、ストレーナ70は、ハウジング6に固定される。
【0048】
ケース76の内部には、フィルタ収容空間79が設けられる。フィルタ収容空間79の内部には、流体Oが入り込む。また、ケース76には、吸込口70hと吐出口70jとが設けられる。すなわち、ストレーナ70は、吸込口70hと吐出口70jとを有する。吸込口70hおよび吐出口70jは、それぞれケース76の外部空間と内部空間(すなわち、フィルタ収容空間79)とを繋ぐ。
【0049】
本実施形態の吸込口70hは、下方に開口する。吐出口70jは、貯留部Pの流体Oに浸かっている。また、本実施形態の吐出口70jは、軸方向他方側(+Y側)に開口する。吐出口70jは、第1壁部86の貫通孔86hに繋がる。貫通孔86hには、ポンプ96(図1参照)の吸入口が接続される。したがって、ストレーナ70は、ポンプ96が貯留部Pから流体Oを吸い込む経路の途中に配置される。ポンプ96が駆動し、ポンプ96が貯留部Pから流体Oを吸い込むことで、ストレーナ70では、流体Oが、吸込口70hから吸い込まれ、吐出口70jからポンプ96に向けて吐出される。また、ストレーナ70の内部では、吸込口70hから吐出口70jに向かって流体Oが流れる。
【0050】
フィルタ部材75は、網目状に微細な無数の孔が設けられるシート状の部材である。フィルタ部材75は、液体の通過を許容し、一定以上の大きさの異物の通過を許容しない。フィルタ部材75は、通過する流体Oをろ過し、流体Oから異物を除去する。
【0051】
フィルタ部材75は、フィルタ収容空間79においてケース76に固定される。フィルタ部材75は、鉛直方向と直交する平面に沿って配置される。フィルタ部材75は、吸込口70hと上下方向に対向する。フィルタ部材75は、フィルタ収容空間79を吸込口70hが開口する空間と、吐出口70jが開口する空間と区画する。このため、流体Oは、吸込口70hからケース76の内部に吸い込まれ、フィルタ部材75を通過して、吐出口70jから吐出される。
【0052】
ケース76の外側面には、第1ガイド面71および第2ガイド面72が設けられる。すなわち、ストレーナ70は、第1ガイド面71および第2ガイド面72を有する。第1ガイド面71は、上側(+Z側)、および後方(-X側)を向く面である。第2ガイド面72は、上側(+Z側)、および前方(+X側)を向く面である。
【0053】
第1ガイド面71は、軸方向位置が第1ギヤ42に重なる。第1ガイド面71は、第1軸線J1の径方向において第1ギヤ42の歯先42tと対向する。第1軸線J1の径方向において、第1ガイド面71と第1ギヤ42の歯先42tとの間には、他部材が配置されていない。本実施形態の第1ガイド面71は、第1軸線J1の径方向と直交する方向に延びる平坦面である。第1ガイド面71は、少なくとも貯留部Pの液位が最も高くなる際に液面より下側に配置される。第1ガイド面71は、第1ギヤ42の歯先42tに沿って延びる。このため、第1ガイド面71は、第1ギヤ42の第1軸線J1周りの回転に伴う第1ギヤ42の周囲の流体Oの流れを整え、流体Oが第1軸線J1の周方向に向かって流れるように、流体Oを導くことができる。これにより、第1ガイド面71は、第1ギヤ42による流体Oのかき上げを促進することができる。
【0054】
なお、本明細書において、「ギヤの歯先」とはギヤの歯形を構成する各面のうち歯の先端に位置する径方向外側を向く面を意味する。また、「歯先に沿う」とは、ギヤの歯先の回転軌跡である仮想円に沿うことを意味する。
【0055】
本実施形態の第1ガイド面71は、第1軸線J1の周方向のうち第1回転方向T1に向かうに従い上側に向かう方向に傾斜する。このため、第1ガイド面71は、本実施形態の駆動装置1が搭載される車両が前方に進行する際の第1ギヤ42による流体Oのかき上げを、促進することができる。
【0056】
第2ガイド面72は、軸方向位置が第2ギヤ51に重なる。第2ガイド面72は、第2軸線J2の径方向において第2ギヤ51の歯先51tと対向する。第2軸線J2の径方向において、第2ガイド面72と第2ギヤ51の歯先51tとの間には、他部材が配置されていない。本実施形態の第2ガイド面72は、第2軸線J2の径方向と直交する方向に延びる平坦面である。第2ガイド面72は、少なくとも貯留部Pの液位が最も高くなる際に液面より下側に配置される。第2ガイド面72は、第2ギヤ51の第2軸線J2周りの回転に伴う第2ギヤ51の周囲の流体Oの流れを整え、流体Oが第2軸線J2の周方向に向かって流れるように流体Oを導くことができる。これにより、第2ガイド面72は、第2ギヤ51による流体Oのかき上げを促進することができる。
【0057】
本実施形態のストレーナ70において、吸込口70hは、下方に開口し、鉛直方向から見て第1ガイド面71、および第2ガイド面72に重なる。本実施形態によれば、第1ギヤ42と第2ギヤ51とが並ぶ第1方向(X軸方向)において、吸込口70hを、第1ギヤ42と第2ギヤ51との間の略中央に寄せて配置できる。本実施形態によれば、第1ギヤ42の回転に伴う流体Oの気泡、および第2ギヤ51の回転に伴う流体Oの気泡が、吸込口70hからストレーナ70の内部に吸い込まれ難くすることができる。これにより、ポンプ96の空気の吸い込みを抑制でき、ポンプ96の圧送効率を高めることができる。
【0058】
<ガイド部>
図2に示すように、ガイド部60は、ギヤ室82に配置される。ガイド部60は、ストレーナ70の直上に配置される。ガイド部60は、前後方向(第1方向、X軸方向)において、第1ギヤ42と第2ギヤ51との間に位置する。ガイド部60は、固定ボルト67によって第1壁部86に固定される。これにより、ガイド部60は、ハウジング6に固定される。
【0059】
ガイド部60は、第1軸線J1の周方向に沿って湾曲するガイド面60fを有する。ガイド面60fは、軸方向において第1ギヤ42に重なる。ガイド面60fは、第1軸線J1の径方向において第1ギヤ42の歯先42tと対向する。第1軸線J1の径方向において、ガイド面60fと第1ギヤ42の歯先42tとの間には、他部材が配置されていない。ガイド部60は、ガイド面60fにおいて、第1ギヤ42が貯留部Pからかき上げた流体Oをキャッチタンク93に向かって誘導する。すなわち、本実施形態によれば、ギヤ室82のガイド部60が配置されることで、第1ギヤ42によってかき上げられる流体Oを所望の方向(例えばキャッチタンク93)に導くことが可能となる。特に、本実施形態のガイド部60は、第1軸線J1の周方向に沿って、ストレーナ70と並んで配置される。本実施形態によれば、ストレーナ70の第1ガイド面71にガイドされて上側にかき上げらえた流体Oを、ガイド部60のガイド面60fによってキャッチタンク93に導くことができる。
【0060】
<変形例>
次に上述の実施形態に採用可能な変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例の説明において、既に説明した実施形態又は変形例と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
(変形例1)
図4は、変形例1の駆動装置101の概念図である。本変形例の駆動装置101は、上述の実施形態と比較して、ストレーナ170およびポンプ196の配置が主に異なる。なお、図4において、第2の流路192の経路中に配置されるクーラーの図示を省略する。
【0062】
上述の実施形態と同様に、ハウジング6は、ギヤ室82を軸方向一方側(-Y側)から覆う第2壁部187を有する。本変形例において、ストレーナ170は、第2壁部187に固定される。また、ポンプ196は、第2壁部187の軸方向一方側(-Y側)に配置され、第2壁部187に固定される。第2壁部187には、第2壁部187を軸方向に貫通する貫通孔187hが設けられる。貫通孔187hの軸方向他方側(+Y側)の開口には、ストレーナ170が接続される。一方で、貫通孔187hの軸方向一方側(-Y側)の開口には、ポンプ196が接続される。すなわち、第2壁部187には、ストレーナ170とポンプ196を繋ぐ貫通孔187hが設けられる。
【0063】
ストレーナ170とポンプ196とは、軸方向に並んで配置される。このため、ストレーナ170とポンプ196とが、軸方向から見て異なる位置に配置される場合と比較してストレーナ170とポンプ196とを繋ぐ流体Oの経路を短くすることができる。特に、本実施形態のストレーナ170とポンプ196とは、第2壁部187の軸方向一方側および他方側にそれぞれ配置される。また、ストレーナ170とポンプ196とを繋ぐ流体Oの経路は、第2壁部187を厚さ方向に貫通する貫通孔187hによって構成される。本変形例によれば、ストレーナ170とポンプ196とを繋ぐ流体Oの経路の長さを、第2壁部187の厚さ寸法とすることができ、流体Oの経路を短くすることができる。これにより、ストレーナ170からポンプ196に至る経路の流体Oの圧力損失を抑制することができ、ポンプ196の消費電力を低減できる。
【0064】
本変形例の第2の流路192の一部は、第2壁部187に沿って設けられる。第2の流路192の一部は、第2壁部187の壁内部に設けられていてもよい。第2の流路192において流体Oは、ストレーナ170を介してポンプ196に吸い上げられモータ2に供給される。本変形例によれば、ポンプ196が第2壁部187の軸方向一方側(-Y側)に配置されるため、第2壁部187に沿って配置される第2の流路192を採用することができる。
【0065】
なお、本変形例に示すように、ストレーナ170を第2壁部187の壁面に沿って配置する場合であっても、ストレーナ170が、上述の実施形態と同様の第1ガイド面71および第2ガイド面72有していれば、ストレーナ170は、第1ギヤ42および第2ギヤ51による流体Oのかき上げを促進できる。
【0066】
(変形例2)
図5は、変形例2の駆動装置201のギヤ室82の正面図である。本変形例の駆動装置201は、上述の実施形態と比較して、ストレーナ270の配置が主に異なる。
【0067】
上述の実施形態と同様に、動力伝達部3は、第1軸線J1を中心として回転可能な第1ギヤ42と、第2軸線J2を中心として回転可能な第2ギヤ51と、を有する。第1ギヤ42と第2ギヤ51とは、第1方向(X軸方向)に並んで配置される。また、第1ギヤ42は、第2ギヤ51に対し第1方向の一方側(-X側)に位置する。
【0068】
本変形例のストレーナ270は、第1ギヤ42に対し第1方向の一方側(-X側)に位置する。ストレーナ270は、第1軸線J1の径方向において第1ギヤ42の歯先42tと対向し第1ギヤ42の歯先42tに沿って延びる第1ガイド面271を有する。第1ガイド面271は、流体Oが第1軸線J1の周方向に向かって流れように流体Oを導くことで第1ギヤ42による流体Oのかき上げを促進することができる。
【0069】
本変形例の第1ガイド面271は、第1軸線J1の周方向のうち第1回転方向T1の反対側に向かうに従い上側に向かう方向に傾斜する。このため、第1ガイド面271は、本変形例の駆動装置201が搭載される車両が後方に進行する際の第1ギヤ42による流体Oのかき上げを促進することができる。
【0070】
また、本変形例のギヤ室82には、上述の実施形態と同様に、第1ギヤ42に対し第2方向の他方側(+X側)に位置するガイド部60が配置される。すなわち、本変形例において、ストレーナ270とガイド部60とは、第1ギヤ42に対し第1方向(X軸方向)の反対側に位置する。ガイド部60は、車両が前方に進行する際に第1ギヤ42にかき上げられた流体Oをキャッチタンク293に導く。一方で、ストレーナ270は、第1ガイド面271において、車両が後方に進行する際の第1ギヤ42による流体Oのかき上げを促進し、キャッチタンク293への流体Oの供給を補助する。本変形例によれば、車両が前後の何れに進行する場合においてもキャッチタンク293に流体Oを導きやすくなる。キャッチタンク293は、上述の実施形態と同様に、下側に向かって凸となる略C字状のリブである。キャッチタンク293は上側に向かって開口する。キャッチタンク293は、一時的に流体Oを貯留するリザーバとして機能する。キャッチタンク293は、ハウジング6と一体に形成されてもよく、別体の部材であってもよい。
【0071】
(変形例3)
図6は、変形例3の駆動装置301のギヤ室82の正面図である。本変形例の駆動装置301は、上述の実施形態と比較して、ストレーナ370の配置が主に異なる。
【0072】
本変形例の動力伝達部3は、上述の実施形態と同様の構成を有するが、上述の実施形態と比較して名称が異なる点に注意されたい。本変形例の第1ギヤ351は、上述の実施形態の第2ギヤ51に対応する。また、第1ギヤ351は、第1軸線J32を中心として回転可能である。本変形例の第2ギヤ342は、上述の実施形態の第1ギヤ42に対応する。第2ギヤ342は、第2軸線J31を中心として回転可能である。
【0073】
動力伝達部3は、第1方向(X軸方向)に並んで配置される複数の軸線(第3軸線J3、第2軸線J31、第1軸線J32)を中心としてそれぞれ回転可能な複数のギヤ41、342、43、351を有する。複数のギヤ41、342、43、351は、第1方向の一方側(-X側)から他方側(+X側)に向かってモータ2の動力を伝達する。第1ギヤ351は、複数のギヤ41、342、43、351のうち、第1方向の最も他方側(+X側)に位置する。
【0074】
本変形例のストレーナ370は、第1ギヤ351に対し第1方向の他方側(+X側)に位置する。ストレーナ370は、第1軸線J32の径方向において第1ギヤ351の歯先51tと対向し第1ギヤ351の歯先51tに沿って延びる第1ガイド面371を有する。第1ガイド面371は、流体Oが第1軸線J32の周方向に向かって流れように流体Oを導くことで第1ギヤ351による流体Oのかき上げを促進することができる。
【0075】
本変形例の第1ガイド面371は、車両が後方に進行する際の第1ギヤ351によるかき上げを促進することができる。また、本変形例のギヤ室82には、上述の実施形態と同様に第2ギヤ342に対し第2方向の他方側(+X側)に位置するガイド部60が配置される。ガイド部60は、車両が前方に進行する際に第2ギヤ342にかき上げられた流体Oをキャッチタンク93に導く。すなわち、本変形例によれば、車両が前後の何れに進行する場合においてもキャッチタンク93に流体Oを導きやすくなる。
【0076】
(変形例4)
図7は、変形例4の駆動装置401のギヤ室82の部分拡大図である。本変形例の駆動装置401は、上述の実施形態と比較して、ストレーナ470の配置が主に異なる。
【0077】
本変形例のストレーナ470は、第1軸線J1の直下に配置される。すなわち、ストレーナ470は、第1軸線J1の下側に配置され鉛直方向から見て第1軸線J1と重なる。ストレーナ470は、第1軸線J1の径方向において第2ギヤ51の歯先42tと対向し第1ギヤ42の歯先42tに沿って延びる第1ガイド面471を有する。本変形例の第1ガイド面471は、第1軸線J1の直下に配置されており、第1軸線J1の周方向に沿って湾曲する。本変形例の第1ガイド面471によれば、第1ギヤ42が何れの方向に回転する場合であっても第1ギヤ42による流体Oのかき上げを促進することができる。
【0078】
(変形例5)
図8は、変形例5の駆動装置501のギヤ室82の正面図である。本変形例の駆動装置501は、上述の実施形態と比較して、ポンプ96Aが上述のストレーナに代わる吸込部材として機能する点が主に異なる。
【0079】
本変形例のポンプ96Aは、ギヤ室82に配置され流体Oを吸入する。ポンプ96Aは、ポンプ本体部96bとポンプ本体部96bを収容するポンプハウジング96cとを有する。ポンプ本体部96bは、流体Oを圧送する機構部分を有する。機構部分としては、トロコイドポンプ機構が例示される。また、ポンプハウジング96cの外側面には、第1ガイド面96dが設けられる。第1ガイド面96dは、第1軸線J1の径方向において第1ギヤ42の歯先42tと対向し第1ギヤ42の歯先42tに沿って延びる。本変形例の第1ガイド面96dによれば、第1ギヤ42が何れの方向に回転する場合であっても第1ギヤ42による流体Oのかき上げを促進することができる。
【0080】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0081】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) モータと、前記モータの動力を伝達する動力伝達部と、前記動力伝達部を収容するギヤ室が設けられたハウジングと、前記ギヤ室に配置され流体を吸入する吸込部材と、を備え、前記動力伝達部は、第1軸線を中心として回転可能な第1ギヤを有し、前記吸込部材は、前記第1軸線の径方向において前記第1ギヤの歯先と対向し前記第1ギヤの歯先に沿って延びる第1ガイド面を有する、駆動装置。
(2) 前記動力伝達部は、前記第1軸線と平行に延びる第2軸線を中心として回転可能な第2ギヤを有し、前記第1ギヤと前記第2ギヤとは、鉛直方向、および軸方向の両方と交差する第1方向に並んで配置され、前記第1方向において、前記吸込部材は、前記第1ギヤと前記第2ギヤとの間に位置する、(1)に記載の駆動装置。
(3) 前記吸込部材の上端部は、前記第1ギヤの下端部、および前記第2ギヤの下端部よりも上側に位置する、(2)に記載の駆動装置。
(4) 前記吸込部材は、前記第2軸線の径方向において前記第2ギヤの歯先と対向し前記第2ギヤの歯先に沿って延びる第2ガイド面を有する、(2)又は(3)に記載の駆動装置。
(5) 前記吸込部材は、吸込口を有し、前記吸込口は、下方に開口し、鉛直方向から見て前記第1ガイド面、および前記第2ガイド面に重なる、(4)に記載の駆動装置。
(6) 前記ギヤ室に配置されるガイド部を備え、前記ガイド部は、前記第1軸線の周方向に沿って湾曲するガイド面を有する、(1)~(5)の何れか一項に記載の駆動装置。
(7) 前記ガイド部は、前記第1軸線の周方向に沿って、前記吸込部材と並んで配置される、(6)に記載の駆動装置。
(8) ポンプを備え、前記動力伝達部は、前記モータに対し軸方向一方側に位置し、前記ハウジングは、前記ギヤ室を軸方向他方側から覆う第1壁部を有し、前記ポンプは、前記第1壁部の軸方向他方側、かつ前記モータの径方向外側に配置され、前記第1壁部には、前記吸込部材と前記ポンプを繋ぐ貫通孔が設けられる、(1)~(7)の何れか一項に記載の駆動装置。
(9) 前記吸込部材と前記ポンプとは、軸方向に並んで配置される、(8)に記載の駆動装置。
(10) ポンプを備え、前記動力伝達部は、前記モータに対し軸方向一方側に位置し、前記ハウジングは、前記ギヤ室を軸方向一方側から覆う第2壁部を有し、前記ポンプは、前記第2壁部の軸方向一方側に配置され、前記第2壁部には、前記吸込部材と前記ポンプを繋ぐ貫通孔が設けられる、(1)~(7)の何れか一項に記載の駆動装置。
(11) 前記吸込部材と前記ポンプとは、軸方向に並んで配置される、(10)に記載の駆動装置。
(12) 前記動力伝達部は、前記第1軸線と平行に延びる第2軸線を中心として回転可能な第2ギヤを有し、前記第1ギヤと前記第2ギヤとは、鉛直方向、および軸方向の両方と交差する第1方向に並んで配置され、前記第1ギヤは、前記第2ギヤに対し第1方向の一方側に位置し、前記吸込部材は、前記第1ギヤに対し第1方向の一方側に位置する、(1)に記載の駆動装置。
(13) 前記動力伝達部は、鉛直方向、および軸方向の両方と交差する第1方向に並んで配置され、複数の軸線を中心としてそれぞれ回転可能な複数のギヤを有し、複数のギヤは、第1方向の一方側から他方側に向かって前記モータの動力を伝達し、前記第1ギヤは、複数の前記ギヤのうち、第1方向の最も他方側に位置し、前記吸込部材は、前記第1ギヤに対し第1方向の他方側に位置する、(1)に記載の駆動装置。
(14) 前記吸込部材は、鉛直方向から見て前記第1軸線と重なる、(1)に記載の駆動装置。
(15) 前記吸込部材はポンプであって、前記ポンプは、ポンプ本体部と前記ポンプ本体部を収容するポンプハウジングとを有し、前記第1ガイド面は、前記ポンプハウジングの外側面に設けられる、(1)~(14)の何れか一項に記載の駆動装置。
(16) 前記吸込部材はストレーナであって、前記ストレーナは、フィルタ部材と前記フィルタ部材を収容するケースとを備え、前記第1ガイド面は、前記ケースの外側面に設けられる、(1)~(14)の何れか一項に記載の駆動装置。
【符号の説明】
【0082】
1,101,201,301,401…駆動装置、2…モータ、3…動力伝達部、6…ハウジング、41…ギヤ、42,351…第1ギヤ、42t,51t…歯先、51,342…第2ギヤ、60…ガイド部、60f…ガイド面、70…ストレーナ(吸込部材)、70h…吸込口、71,96d,271,371,471…第1ガイド面、72…第2ガイド面、75…フィルタ部材、76…ケース、82…ギヤ室、86…第1壁部、86h,187h…貫通孔、87,187…第2壁部、96,196…ポンプ、96A…ポンプ(吸込部材),96b…ポンプ本体部、96c…ポンプハウジング、170,270,370,470…ストレーナ、J1,J32…第1軸線、J2,J31…第2軸線、O…流体
図1
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図5
図6
図7
図8