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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133989
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法、及び積層鉄心
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240926BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20240926BHJP
   H02K 1/30 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H02K15/02 F
H02K1/18 B
H02K1/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044045
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】三井 康誠
(72)【発明者】
【氏名】蓮尾 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小野 慎一郎
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601DD01
5H601DD11
5H601EE15
5H601EE17
5H601EE19
5H601GA23
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC04
5H601GC12
5H601GC25
5H601GC37
5H601KK02
5H601KK08
5H601KK12
5H601KK21
5H601KK22
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS06
5H615SS10
5H615SS16
5H615SS18
5H615SS20
(57)【要約】
【課題】板厚偏差及び形状変更に伴う影響を低減する。
【解決手段】本開示の一側面に係る積層鉄心の製造方法は、金属板を打ち抜いて、第1形状を有する第1打抜部材と、前記第1形状とは異なる第2形状を有する第2打抜部材とを含む複数の打抜部材を形成する打抜工程と、1以上の打抜部材が積み重ねられる度に、周方向における打抜部材の角度を表す転積角度を異ならせつつ前記複数の打抜部材を積層することで、積層体を形成する積層工程と、を含む。前記積層工程では、連続して重ねられる2以上の前記第1打抜部材と、連続して重ねられる2以上の前記第2打抜部材との境界部分において互いに隣り合う前記第1打抜部材と前記第2打抜部材との間で前記転積角度が同じとなるように、前記複数の打抜部材が積層される。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を打ち抜いて、第1形状を有する第1打抜部材と、前記第1形状とは異なる第2形状を有する第2打抜部材とを含む複数の打抜部材を形成する打抜工程と、
1以上の打抜部材が積み重ねられる度に、周方向における打抜部材の角度を表す転積角度を異ならせつつ前記複数の打抜部材を積層することで、積層体を形成する積層工程と、を含み、
前記積層工程では、連続して重ねられる2以上の前記第1打抜部材と、連続して重ねられる2以上の前記第2打抜部材との境界部分において互いに隣り合う前記第1打抜部材と前記第2打抜部材との間で前記転積角度が同じとなるように、前記複数の打抜部材が積層される、積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
前記積層工程で形成される前記積層体には、前記転積角度が互いに異なる複数の部材群が含まれており、
前記複数の部材群それぞれは、前記転積角度が互いに同一である2以上の打抜部材からなり、
前記積層工程では、前記複数の部材群の間で積厚の合計が略一致するように前記複数の打抜部材が積層される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記積層鉄心は、ステータ用のコアであり、
前記第1形状及び前記第2形状の間では、打抜部材の外縁の形状が異なる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記積層鉄心は、ロータ用のコアであり、
前記第1形状及び前記第2形状の間では、打抜部材に形成され、前記積層鉄心の中心軸を囲む開口の形状、及び、打抜部材の外縁の形状の少なくとも一方が異なる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
第1形状を有する第1打抜部材と、前記第1形状とは異なる第2形状を有する第2打抜部材とを含む複数の打抜部材が積層されることで形成された積層体を備え、
前記積層体は、積層方向に並び、それぞれが1以上の打抜部材からなる複数のブロックを含み、
前記積層体では、
前記複数のブロックのうちの互いに隣り合うブロック同士の間で、周方向における打抜部材の角度を表す転積角度が異なっており、
連続して重ねられる2以上の前記第1打抜部材と、連続して重ねられる2以上の前記第2打抜部材との境界部分において互いに隣り合う前記第1打抜部材と前記第2打抜部材との間で、前記転積角度が同じである、積層鉄心。
【請求項6】
前記積層体には、前記転積角度が互いに異なる複数の部材群が含まれており、
前記複数の部材群それぞれは、前記転積角度が互いに同一である2以上の打抜部材からなり、
前記複数の部材群の間で積厚の合計が略一致する、請求項5に記載の積層鉄心。
【請求項7】
前記積層鉄心は、ステータ用のコアであり、
前記第1形状及び前記第2形状の間では、打抜部材の外縁の形状が異なる、請求項5又は6に記載の積層鉄心。
【請求項8】
前記積層鉄心は、ロータ用のコアであり、
前記第1形状及び前記第2形状の間では、打抜部材に形成され、前記積層鉄心の中心軸を囲む開口の形状、及び、打抜部材の外縁の形状の少なくとも一方が異なる、請求項5又は6に記載の積層鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心の製造方法、及び積層鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、径方向に張り出し、固定子を回転電機のケースに取り付けるための締結用耳金を備える第1積層コアと、第1積層コアを上下から積層して固定される、締結用耳金を備えない一対の第2積層コアと、を備える回転電機の固定子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-78188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層鉄心の製造では、帯状の金属板から鉄心片が連続的に打ち抜かれて、複数の鉄心片が積み重ねられることで積層体が形成される。積層体は、その積厚が製造すべき積層鉄心の厚さに応じた公差内に収まっていることが求められる。しかしながら、帯状の金属板では、必ずしも板厚が均一ではないため、つまり板厚偏差があるため、単に鉄心片を積層させたのでは板厚偏差の影響によって積層体の積厚が公差内に収まらない場合がある。また、積層鉄心(積層体)では、その積層方向において形状が異なる箇所が存在する場合がある。
【0005】
本開示は、板厚偏差及び形状変更に伴う影響を低減するのに有用な積層鉄心の製造方法、及び積層鉄心を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る積層鉄心の製造方法は、金属板を打ち抜いて、第1形状を有する第1打抜部材と、前記第1形状とは異なる第2形状を有する第2打抜部材とを含む複数の打抜部材を形成する打抜工程と、1以上の打抜部材が積み重ねられる度に、周方向における打抜部材の角度を表す転積角度を異ならせつつ前記複数の打抜部材を積層することで、積層体を形成する積層工程と、を含む。前記積層工程では、連続して重ねられる2以上の前記第1打抜部材と、連続して重ねられる2以上の前記第2打抜部材との境界部分において互いに隣り合う前記第1打抜部材と前記第2打抜部材との間で前記転積角度が同じとなるように、前記複数の打抜部材が積層される。
【0007】
本開示の一側面に係る積層鉄心は、第1形状を有する第1打抜部材と、前記第1形状とは異なる第2形状を有する第2打抜部材とを含む複数の打抜部材が積層されることで形成された積層体を備える。前記積層体は、積層方向に並び、それぞれが1以上の打抜部材からなる複数のブロックを含む。前記積層体では、前記複数のブロックのうちの互いに隣り合うブロック同士の間で、周方向における打抜部材の角度を表す転積角度が異なっており、連続して重ねられる2以上の前記第1打抜部材と、連続して重ねられる2以上の前記第2打抜部材との境界部分において互いに隣り合う前記第1打抜部材と前記第2打抜部材との間で、前記転積角度が同じである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、板厚偏差及び形状変更に伴う影響を低減するのに有用な積層鉄心の製造方法、及び積層鉄心が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、積層鉄心の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、打抜部材の一例を示す上面図である。
図3図3(a)は、比較例に係る転積方法を説明するための模式図である。図3(b)は、本開示に係る転積方法を説明するための模式図である。
図4図4は、積層鉄心の製造装置の一例を示す模式図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、打抜き加工のレイアウトの一例を示す図である。
図6図6は、製造装置において打抜部材を積層させる部分を模式的に示す断面図である。
図7図7(a)は、積層体の形成方法の一例を示すフローチャートである。図7(b)は、コントローラが保持する情報の一例を示す表である。
図8図8(a)は、積層鉄心の一例を示す斜視図である。図8(b)は、積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
[積層鉄心の構成]
最初に、図1図2(a)、及び図2(b)を参照しながら、一実施形態に係る積層鉄心の構成について説明する。積層鉄心1は、モータ用の積層鉄心、又は、その製造過程における中間生成物である。積層鉄心1は、例えば、図1に示されるように、ステータ用のコア(固定子積層鉄心)である。図1に示される積層鉄心1に巻線が取り付けられることにより、ステータが形成される。ステータとロータ(回転子)とが組み合わせられることにより、モータ(電動機)が形成される。以下、積層鉄心1の中心軸Axが上下方向に沿うように積層鉄心1が配置された状態を基準にして、積層鉄心1の構成について説明する。
【0012】
図1に示される積層鉄心1は、積層体2を含む。積層体2は、複数の打抜部材Wが積層されることで形成される。積層体2は、円筒状に形成されている。積層体2の中央部分には、積層鉄心1の中心軸Axに沿って延びる貫通孔2aが設けられている。貫通孔2aは、積層体2の高さ方向に延びている。積層体2の高さ方向は、複数の打抜部材Wが並ぶ積層方向(積層体2の積層方向:以下、単に「積層方向」という。)に相当する。貫通孔2a内には、ロータ用のコア(回転子積層鉄心)が配置可能である。
【0013】
積層体2(積層鉄心1)は、ヨーク部4と、複数のティース部5と、複数の耳金部9とを有する。ヨーク部4は、環状に形成されている部分である。ヨーク部4は、円環状に形成されてもよい。ヨーク部4は、中心軸Axまわりの円周に沿って延びている。中心軸Axを中心とした円の径方向(以下、単に「径方向」という。)におけるヨーク部4の幅、ヨーク部4の内径、及びヨーク部4の外径は、モータの用途及び性能に応じて設定される。
【0014】
複数のティース部5それぞれは、ヨーク部4の内周縁から中心軸Axに向かって延びるように形成されている部分である。各ティース部5は、径方向に沿って延びている。図1に示される積層鉄心1では、複数のティース部5は、ヨーク部4と一体的に形成されている。複数のティース部5は、中心軸Axまわりの周方向(ヨーク部4の延在方向:以下、単に「周方向」という。)において、略等間隔で並んでいる。周方向において、互いに隣り合うティース部5の間には、巻線を配置するためのスロット7(空間)が形成されている。複数のティース部5の数、周方向におけるティース部5の幅、及び径方向におけるティース部5の長さは、モータの用途及び性能に応じて設定される。
【0015】
複数の耳金部9それぞれは、中心軸Axから離れるように、ヨーク部4の外縁から径方向の外側に向けて突出している部分である。複数の耳金部9は、周方向において略等間隔で並んでいる。図1に示される積層鉄心1では、3個の耳金部9が設けられている(図2(b)も参照)。この場合、周方向において、1つの耳金部9の中央の位置と、他の1つの耳金部9の中央の位置とは、120°だけ異なっている。各耳金部9には、耳金部9を積層方向に貫通する貫通孔9aが形成されている。複数の耳金部9それぞれの貫通孔9aは、積層鉄心1をモータのハウジングに固定するためのボルトを挿入する孔として機能する。
【0016】
複数の耳金部9は、上記積層方向において、積層体2のうちの一部の領域に設けられている。複数の耳金部9それぞれの積層方向における大きさは、互いに略一致する。例えば、複数の耳金部9は、上記積層方向において、積層体2のうちの中央部分(1/3程度の領域)に設けられている。この場合、積層体2のうちの複数の耳金部9が設けられている部分が、耳金部9が設けられていない2つの部分によって上下から挟まれている。
【0017】
積層体2を構成する複数の打抜部材Wそれぞれは、後述する金属板MSを所定形状に沿って打ち抜くことで形成された板状体である。上述のように、積層体2では、積層方向における位置によって耳金部9の有無が異なる。そのため、複数の打抜部材Wは、互いに形状が異なる2つの打抜部材Wが含まれる。以下では、耳金部9が設けられていない部分を構成する打抜部材Wを「打抜部材Wa」と称し、耳金部9が設けられている部分を構成する打抜部材Wを「打抜部材Wb」と称する。
【0018】
積層方向において、積層体2を上部分UP、中央部分MP、及び下部分LPの3つの領域に区画した場合に、積層体2の上部分UPが、打抜部材Wbを含まずに複数の打抜部材Waのみによって構成されてもよい。また、積層体2の中央部分MPが、打抜部材Waを含まずに複数の打抜部材Wbのみによって構成されてもよく、積層体2の下部分LPが、打抜部材Wbを含まずに複数の打抜部材Waのみによって構成されてもよい。積層体2の上部分UP、中央部分MP、及び下部分LPの間で、積層方向における大きさが同じであってもよい。
【0019】
図2(a)に示されるように、打抜部材Waは、積層体2のうちの耳金部9が設けられていない部分(積層体2の上部分UP及び下部分LP)に対応する形状を有する。打抜部材Waは、ヨーク部4に対応する部分と、複数のティース部5に対応する部分とを有し、耳金部9に対応する部分を有しない。図2(a)に示される打抜部材Waでは、ヨーク部4に対応する部分、及びティース部5に対応する部分についても、ヨーク部4及びティース部5それぞれと同じ符号が付されている。
【0020】
図2(b)に示されるように、打抜部材Wbは、積層体2のうちの耳金部9が設けられている部分(積層体2の中央部分MP)に対応する形状を有する。打抜部材Wbは、ヨーク部4に対応する部分と、複数のティース部5に対応する部分と、複数の耳金部9に対応する部分とを有する。図2(b)に示される打抜部材Wbでは、ヨーク部4に対応する部分、ティース部5に対応する部分、及び耳金部9に対応する部分についても、ヨーク部4、ティース部5、及び耳金部9それぞれと同じ符号が付されている。
【0021】
打抜部材Wb(第2打抜部材)が有する形状(第2形状)は、打抜部材Wa(第1打抜部材)が有する形状(第1形状)と異なっている。この場合、積層体2において、中心軸Axから見て、打抜部材Wa及び打抜部材Wbの間で互いに重ならない部分が生じる。打抜部材W同士の形状が異なる場合の一例として、打抜部材Wの外縁の形状、及び/又は、打抜部材Wの中央に形成され、中心軸Axを囲む開口(開口部分の縁)の形状が、互いに異なる場合がある。図1図2(a)及び図2(b)に示される例では、打抜部材Wbの外縁の形状が、打抜部材Waの外縁の形状と異なっている。
【0022】
打抜部材Wa及び打抜部材Wbを含む積層体2では、積層方向において下から又は上から順に観察した場合に、形状が変更される箇所(以下、「デザイン変更部」という。)が存在する。具体的には、積層体2のうちの連続して重ねられる2以上の打抜部材Waと連続して重ねられる2以上の打抜部材Wbとの境界部分において、形状が変更されている(デザイン変更部が形成されている)。デザイン変更部では、互いに形状が異なる打抜部材Wa及び打抜部材Wbが積層方向において隣り合っている。図1に示される例では、積層体2の下部分LPと中央部分MPとの境界部分、及び積層体2の中央部分MPと上部分UPとの境界部分が、デザイン変更部に相当する。
【0023】
複数の打抜部材Wを積み重ねる際に、いわゆる転積が行われることによって、積層体2が形成される。「転積」とは、複数の打抜部材Wを積層させて積層体2を得る際に、複数の打抜部材W同士の角度を相対的に異ならせることをいう。転積の主な目的は、積層体2を構成する複数の打抜部材Wの間の板厚偏差を低減することである。転積が行われて形成された積層体2では、周方向における打抜部材Wの角度(以下、「転積角度」という。)が同じ2枚以上の打抜部材Wが連続して重ねられていてもよい。転積角度は、例えば、打抜部材Wの基準位置の周方向における位置によって規定される。
【0024】
一例では、ブロック単位で、転積角度を異ならせつつ、複数の打抜部材Wが積層される。上記ブロックは、1以上の打抜部材W、又は2以上の所定数の打抜部材Wからなる。すなわち、積層体2は、積層方向に並び、それぞれが1以上の打抜部材Wからなる複数のブロックを含む。積層方向に並ぶ複数のブロックのうちの互いに隣り合うブロック同士の間で、転積角度が異なっている。複数のブロックそれぞれでの上記所定数(打抜部材Wの枚数)は、ブロックごとに定められている。すなわち、1つのブロックに含まれる打抜部材Wの枚数と、他の1つのブロックに含まれる打抜部材Wの枚数とが、同じである場合もあれば、異なる場合もある。
【0025】
積層体2において互いに隣り合うブロック同士の転積角度が、一定角度ずつ異なるように、複数の打抜部材Wが順に積層されてもよい。上記一定角度は、360°/M(Mは、2以上の自然数)であってもよい。一例では、上記一定角度は、180°、120°、90°、又は72°である。なお、本開示における「ブロック」は、必ずしも、複数のブロックそれぞれが形成された後に、複数のブロック同士を積層して積層体2を得ることを意味しない。転積角度が同じであり、連続して重ねられる複数の打抜部材Wの集合を「ブロック」と称している。1つのブロック内には、1種類の打抜部材Wのみが含まれる場合もあり、2種類の打抜部材Wが含まれる場合もある。
【0026】
続いて、図3(a)及び図3(b)を参照しながら、本開示の転積方法について説明する。図3(a)及び図3(b)では、複数の打抜部材Wで構成される積層体の側面図が模式的に示されている。また、紙面上の横幅の大きさによって、打抜部材Wの形状の違いが示されており、転積角度が同じブロック(複数の打抜部材Wの集合)には、同じ模様が付されている。数値で示される角度は、転積角度を表しており、転積角度がブロック単位で120°ずつ異なっている。
【0027】
図3(a)には、本開示の転積方法の理解を容易にするために、参考例に係る積層体2Rが示されている。積層体2Rは、積層体2と同様に、複数の打抜部材Waと複数の打抜部材Wbとを含む複数の打抜部材Wによって構成されている。積層体2Rでは、本開示の転積方法が用いられずに複数の打抜部材Wが積層されている。積層体2Rでは、積層体2と同様に、下部分LP及び上部分UPが複数の打抜部材Waで構成され、中央部分MPが複数の打抜部材Wbで構成されている。積層体2Rの下部分LP、中央部分MP、及び上部分UPのそれぞれでは、転積角度が0°のブロックと、転積角度が120°のブロックと、転積角度が240°のブロックとが、この順で重なっている。
【0028】
上述のように構成された積層体2Rでは、「dc1」及び「dc2」で示される2箇所のデザイン変更部が存在している。そして、デザイン変更部dc1及びデザイン変更部dc2のそれぞれにおいて、転積角度が異なっている。すなわち、デザイン変更部dc1,dc2それぞれを形成する、積層方向において互いに隣り合う打抜部材Wa及び打抜部材Wbの間で、転積角度が異なっている。デザイン変更部において転積角度が異なっていると、下記のような問題が生じる可能性があるとの知見が得られた。
・デザイン変更部で割れが発生する。
・デザイン変更部での隙間が大きくなる。
・積層方向、打抜部材の主面に沿った方向、又は周方向での積層鉄心の機械強度が不足する。
・デザイン変更部で中心軸Axに対する磁極の傾きが発生する。
【0029】
転積角度が互いに異なり、積層方向で互いに隣り合う一対の打抜部材からなる転積部では、上の打抜部材と下の打抜部材との間で金属板自体の板厚偏差及びうねりが異なる。この板厚偏差等が異なることに起因して、打抜部材同士の間で、打抜部材の主面に沿った方向、周方向、又は積層方向でのずれが生じ易くなり、その結果、打抜部材同士の間に隙間が生じ易くなる。一方、デザイン変更部では、金属板自体が存在する部位と、金属板が存在しない部位とが隣り合うことで、積層方向での他の部位とは異なる状態となる。また、デザイン変更部では、打抜工程が異なる打抜部材同士を組み合わせることになり、打抜部材自体が有するうねり方が互いに異なる。以上のような転積部及びデザイン変更部の2つの変化点が積層方向で同じ部位に存在することで、上記のような問題が発生し得る。
【0030】
本開示の転積方法では、少なくとも一部のデザイン変更部において、互いに形状が異なる一対の打抜部材の転積角度が互いに同じとなるように、複数の打抜部材Wの積層(転積)が行われる。例えば、全てのデザイン変更部において、互いに隣り合う打抜部材Waと打抜部材Wbとの間で、転積角度が同じである。図3(b)に示される積層体2では、積層体2Rと同様に、2箇所のデザイン変更部(「dc1」及び「dc2」で示される部分)があるが、積層体2Rと異なり、それぞれのデザイン変更部において、転積角度が同じである。一例では、積層体2の下部分LPと中央部分MPとの間でのデザイン変更部dc1では、下の打抜部材Waの転積角度が0°であり、上の打抜部材Wbの転積角度も0°である。また、積層体2の中央部分MPと上部分UPとの間でのデザイン変更部dc2では、下の打抜部材Wbの転積角度が240°であり、上の打抜部材Waの転積角度も240°である。
【0031】
図3に示される例では、積層体2を、積層方向の下方から順に並ぶブロックb1~b9に分けることができる。ブロックb1では、転積角度が0°の複数の打抜部材Waのみが連続して重ねられており、ブロックb2では、転積角度が120°の複数の打抜部材Waのみが連続して重ねられている。ブロックb3では、転積角度が240°の複数の打抜部材Waのみが連続して重ねられている。ブロックb4では、転積角度が0°の1以上の打抜部材Waが連続して重ねられた後に、転積角度が0°の複数の打抜部材Wbが連続して重ねられている。すなわち、積層体2Rでは2つのブロックの境界にデザイン変更部が位置しているところ、積層体2では、1つのブロック(ブロックb4)の途中にデザイン変更部dc1が位置している。
【0032】
ブロックb5では、転積角度が120°の複数の打抜部材Wbのみが連続して重ねられている。ブロック6bでは、転積角度が240°の複数の打抜部材Wbが連続して重ねられた後に、転積角度が240°の1以上の打抜部材Waが重ねられている。すなわち、積層体2では、1つのブロック(ブロックb6)の途中にデザイン変更部dc2が位置している。ブロックb7では、転積角度が0°の複数の打抜部材Waのみが連続して重ねられており、ブロックb8では、転積角度が120°の複数の打抜部材Waのみが連続して重ねられている。ブロックb9では、転積角度が240°の複数の打抜部材Waのみが連続して重ねられている。
【0033】
ここで、積層体2のうちの、転積角度が同一である2以上の打抜部材W(転積角度が同じ全ての打抜部材W)の集合を「部材群」と称すると、積層体2には、転積角度が互いに異なる複数の部材群が含まれる。複数の部材群それぞれは(各部材群)は、転積角度が互いに同一である2以上の打抜部材Wからなる。上述した「ブロック」と異なり、部材群は、連続して重なっていない打抜部材Wも含めて、同一の転積角度を有する複数の打抜部材Wの集合を意味する。
【0034】
積層体2において、複数の部材群の間で、積厚の合計が略一致していてもよい。すなわち、1つの部材群の積厚の合計は、他の1つの部材群の積厚の合計と略一致する。本開示において、部材群同士の積厚の合計が略一致するとは、1つの部材群の積厚の合計が、他の1つの部材群の積厚の合計の0.95倍~1.05倍であることを意味する。積層体2において、複数の部材群の間で、部材群を構成する複数の打抜部材Wの枚数が同じであってもよい。すなわち、複数の部材群の間で、打抜部材Wの枚数を一致させることで、積厚の合計を実質的に一致させてもよい。
【0035】
図3(b)に示される積層体2は、3つの部材群からなる。第1の部材群(b1,b4,b7)は、ブロックb1、ブロックb4、及びブロックb7からなり、第2の部材群(b2,b5,b8)は、ブロックb2、ブロックb5、及びブロックb8からなる。また、第3の部材群(b3,b6,b9)は、ブロックb3、ブロックb6、及びブロックb9からなる。第1の部材群(b1,b4,b7)、第2の部材群(b2,b5,b8)、及び、第3の部材群(b3,b6,b9)のそれぞれを構成する複数の打抜部材Wの枚数は、互いに一致していてもよい。
【0036】
例えば、積層体2R,2の下部分LPに含まれる全ての打抜部材Waの枚数、積層体2R,2の中央部分MPに含まれる全ての打抜部材Wbの枚数、及び、積層体2R,2の上部分UPに含まれる全ての打抜部材Waの枚数が、互いに一致する場合を考える。この場合、積層体2Rでは、全てのブロックにおいて、打抜部材Wの枚数を一致させることで、複数の部材群の間での打抜部材Wの枚数を一致させることができる。一方、積層体2では、デザイン変更部dc1で転積角度が同じとなるように、ブロックb3での打抜部材Wの枚数を、1つのブロックでの打抜部材Wの枚数の平均値よりも少なくし、ブロックb4での打抜部材Wの枚数を、上記平均値よりも多くしている。デザイン変更部dc2では、デザイン変更部dc1での打抜部材Wの枚数の差を打ち消すように、ブロックb6での打抜部材Wの枚数を上記平均値よりも多くし、ブロックb7での打抜部材Wの枚数を上記平均値よりも少なくしている。
【0037】
積層体2では、互いに隣り合う打抜部材W同士が種々の接続手段によって接続(固定)されている。接続手段は特に限定されないが、例えば、互いに隣り合う打抜部材W同士が、カシメ部、溶接、接着剤の塗布、接着鋼板を利用する方法、又は、樹脂部を形成する方法によって接続されてもよい。これらの接続手段のうちの2種類以上の手段が組み合わされて、積層体2に含まれる打抜部材W同士が接続されてもよい。
【0038】
[積層鉄心の製造装置]
続いて、図4図5(a)、図5(b)、及び図6を参照しながら、積層鉄心を製造する装置の一例について説明する。製造装置50は、積層鉄心1を製造する工程の少なくとも一部を実行する装置である。製造装置50は、帯状の金属板MSから、積層鉄心1の積層体2を形成するように構成されている。製造装置50は、例えば、アンコイラー60と、送出装置70と、プレス加工装置80と、コントローラ100と、を備える。
【0039】
アンコイラー60は、コイル材61を回転自在に保持するように構成されている。コイル材61は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻かれたものである。送出装置70は、金属板MSを上下から挟み込むローラ71,72を含む。一対のローラであるローラ71,72は、コントローラ100からの動作指示に基づいて回転及び停止し、金属板MSをプレス加工装置80に向けて間欠的に送り出すように構成されている。
【0040】
プレス加工装置80は、コントローラ100からの動作指示に基づいて動作し、金属板MSを所定の形状に沿って打ち抜くことで、複数の打抜部材Wを形成するように構成されている。プレス加工装置80は、打抜部材Wa及び打抜部材Wbのそれぞれを形成することが可能である。プレス加工装置80は、例えば、送出装置70によって送り出される金属板MSを複数のパンチにより順次、打ち抜き加工又は切り曲げ加工して、複数の打抜部材Wを形成するように構成されている。プレス加工装置80は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを転積することで、積層体2を形成するように構成されていてもよい。すなわち、金属板MSを打ち抜いて打抜部材Wを形成するプレス加工装置80内において、転積が行われてもよい。
【0041】
プレス加工装置80は、例えば、ベース81と、下型82と、ダイプレート83と、ストリッパ84と、上型85と、天板86と、プレス機87と、を有する。ベース81は、ベース81に載置された下型82を支持する。下型82は、下型82に載置されたダイプレート83を支持する。下型82には、金属板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、又は廃材等)が排出される複数の排出孔が設けられている。複数の排出孔は、プレス加工装置80に設けられる複数のパンチに対応する位置に配置されている。
【0042】
ダイプレート83は、複数のパンチと共に、打抜部材Wを成形する機能を有する。下型82には、複数のパンチに対応する位置に複数のダイが設けられている。ストリッパ84は、複数のパンチで金属板MSを打ち抜く際に複数のパンチに密着した金属板MSを、複数のパンチから離す機能を有する。また、ストリッパ84は、複数のパンチで金属板MSを打ち抜く際に、金属板MSをダイプレート83に押さえつける機能を有する。上型85は、ストリッパ84の上方に配置されており、上型85には、複数のパンチが取り付けられている。
【0043】
天板86は、上型85の上方に配置されており、上型85を支持する。プレス機87は、天板86に接続されており、コントローラ100からの動作指示に基づいて、ストリッパ84、上型85、天板86、及び複数のパンチを上下方向に駆動する。プレス加工装置80に設けられる複数のパンチは、金属板MSを所定形状に打ち抜くように形成されている。複数のパンチは、金属板MSが送り出される方向(以下、「送出方向D1」という。)に沿って並んで配置されている。
【0044】
図5(a)及び図5(b)には、プレス加工装置80での打ち抜き加工の様子が例示されている。紙面の大きさの都合上、図5(a)及び図5(b)において、金属板MSが2列に並んでいるが、図5(a)に示される金属板MSの右端は、図5(b)に示される金属板MSの左端に接続されている。図5(a)及び図5(b)において、「S0」、「S1」、「S2」、・・・、及び「S6」は、プレス加工装置80において複数のパンチがそれぞれ加工する位置を表す。位置S0~S6は、送出方向D1の上流から、この順に並んでいる。
【0045】
位置S0では、対応するパンチが、打抜き形状P0に沿って金属板MSを打ち抜くことで、金属板MSの幅方向の両側縁近傍に一対の貫通孔を形成する。この一対の貫通孔には、位置S0よりも下流において、位置決め用のパイロットピンが挿入される。位置S1では、対応するパンチが、打抜き形状P1に沿って金属板MSを打ち抜くことで、貫通孔を形成する。打抜き形状P1は、円形であり、積層体2の貫通孔2aの径より小さい。
【0046】
位置S2では、対応するパンチが、打抜き形状P2に沿って金属板MSを打ち抜くことで、複数の打抜き部を形成する。打抜き形状P2は、耳金部9(耳金部9の外縁)に対応する形状を有する。プレス加工装置80は、コントローラ100からの動作指示に従って、金属板MSの位置S2に配置された部位において耳金部9を有しない打抜部材Waを形成する場合には、対応するパンチにより打抜き形状P2に沿って金属板MSを打ち抜く。プレス加工装置80は、コントローラ100からの動作指示に従って、金属板MSの位置S2に配置された部位において耳金部9を有する打抜部材Wbを形成する場合には、対応するパンチにより金属板MSを打ち抜かない(上記複数の打抜き部を形成しない)。
【0047】
位置S3では、対応するパンチが、打抜き形状P3に沿って金属板MSを打ち抜くことで、複数の貫通孔を形成する。打抜き形状P3に沿って形成された複数の貫通孔のそれぞれは、耳金部9の貫通孔9aに対応する。位置S3では、位置S2での加工の有無に関係なく、対応するパンチの打抜き動作が行われる。位置S2において打抜き形状P2に沿った複数の打抜き部が形成されている場合(打抜部材Waを形成する場合)には、打抜き形状P3に沿った複数の貫通孔は形成されない。位置S2において打抜き形状P2に沿った複数の打抜き部が形成されていない場合(打抜部材Wbを形成する場合)には、打抜き形状P3に沿った複数の貫通孔が形成される。
【0048】
位置S4では、対応するパンチが、打抜き形状P4に沿った金属板MSを打ち抜くことで、複数の打抜き部を形成する。打抜き形状P4に沿った複数の打抜き部それぞれは、隣り合うティース部5の間に形成されるスロット7に対応する。打抜き形状P4に沿った複数の打抜き部が形成されることで、先端部分同士が接続された状態の複数のティース部5が形成される。位置S5では、対応するパンチが、打抜き形状P5に沿って金属板MSを打ち抜くことで、複数のティース部5の先端部分が打ち抜かれる。これにより、複数のティース部5が分離する。
【0049】
位置S6では、対応するパンチが、打抜部材Wbの外縁に対応する打抜き形状P6に沿って金属板MSを打ち抜くことで、打抜部材Wが形成される。位置S2において打抜き形状P2に沿って複数の打抜き部が形成されている場合には、耳金部9に相当する箇所が既に打ち抜かれているので、打抜部材Waが形成される。位置S2において打抜き形状P2に沿って複数の打抜き部が形成されていない場合には、耳金部9に相当する箇所が残っているので、打抜部材Wbが形成される。プレス加工装置80は、コントローラ100からの動作指示に従って、複数の打抜部材Waを連続して形成することと、複数の打抜部材Wbを連続して形成することと、を交互に繰り返してもよい。互いに隣り合う打抜部材W同士を接着剤の塗布により接続する場合、位置S6での打ち抜き前のいずれかの工程で、打抜部材Wの主面に対応する位置に、接着剤が塗布されてもよい。
【0050】
図6には、位置S6において、打抜部材Wが排出される排出孔と、その周囲の部材が模式的に示されている。図6では、位置S6に対応するパンチが「A6」で示されおり、対応するダイが「D6」で示されている。ダイD6は、ダイプレート83に設けられている。ダイプレート83は、ダイホルダ83a上に設置されている。ダイD6の下方には、ダイホルダ83aに設けられたスクイズリングSQが配置されており、ダイD6は、スクイズリングSQ上に設置されてもよい。
【0051】
パンチA6及びダイD6によって打ち抜かれた打抜部材Wは、ダイD6を通過してスクイズリングSQに到達する。スクイズリングSQは、筒状に形成されており、打抜部材Wの外周側から内側に向かう側圧を打抜部材Wに対して加えるように構成されている。そのため、打抜部材WがスクイズリングSQに到達すると、その打抜部材WがスクイズリングSQに保持される。スクイズリングSQには、モータ及びベルト等を含む駆動部83bが接続されており、駆動部83bは、コントローラ100からの動作指示に基づいて、スクイズリングSQを周方向に回転させる。スクイズリングSQの回転に伴って、打抜部材Wが周方向に回転する。1以上の打抜部材Wが打ち抜かれる度に、駆動部83bによりスクイズリングSQの回転が行われることで、上記転積が行われる。
【0052】
下型82は、例えば、支持部材82aと、駆動部82bと、ステージ82cと、プッシャ82dと、を含む。支持部材82aは、パンチA6によって金属板MSから打ち抜かれ、スクイズリングSQの下方から露出した打抜部材W(打抜部材Wa及び打抜部材Wb)が下方に落下するのを防止するため、打抜部材Wを支持する。駆動部82bは、支持部材82aを上下方向に駆動する。駆動部82bは、コントローラ100からの動作指示に基づいて、支持部材82a上に打抜部材Wが積み重ねられるごとに間欠的に支持部材82aを下方に移動させる。
【0053】
支持部材82a上において打抜部材Wが所定枚数まで積層され、積層体2が形成されると、支持部材82aの上面がステージ82cの上面と同一高さとなる位置に支持部材82aが移動する。プッシャ82dは、コントローラ100からの動作指示に基づいて動作し、水平方向に移動可能に構成されている。支持部材82aの上面がステージ82cの上面と同一高さとなる位置に支持部材82aが移動した状態で、プッシャ82dは、積層体2を支持部材82aからステージ82cに押し出す。ステージ82cに押し出された積層体2は、製造装置50の外に排出される。
【0054】
上述した打ち抜き加工の例では、ステータ用のコアに対応する打抜部材Wのみが打ち抜かれるが、打抜部材Wを打ち抜く前に、ロータ用のコアに対応する打抜部材が打ち抜かれてもよい(所謂共取りが行われてもよい)。この場合、打抜き形状P1で打ち抜く位置S1よりも上流において、打抜き形状P1の外縁の内側の領域での加工及び打抜きが行われ、ロータ用のコアに対応する打抜部材が形成される。共取りが行われる場合、ロータ用の打抜き工程内の最も上流において、パイロットピンが挿入されるパイロット孔が形成され、そのパイロット孔がステータ用の打抜き工程でも用いられてもよい。なお、ステータ用の打抜き工程内での上流の位置において、ロータ用の打抜き工程で形成されたパイロット孔と異なるパイロット孔が新たに形成されてもよい(パイロット孔が打ち抜き直されてもよい)。
【0055】
コントローラ100は、製造装置50に含まれる各装置を制御するコンピュータである。コントローラ100は、例えば、記録媒体に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置70及びプレス加工装置80を動作させるための信号を生成するように構成されている。コントローラ100は、送出装置70及びプレス加工装置80に上記信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0056】
[積層鉄心の製造方法]
続いて、積層鉄心の製造方法の一例として、製造装置50において実行される積層鉄心1の製造過程を説明する。積層鉄心1の製造過程は、少なくとも、打抜工程と、積層工程とを含む。打抜工程は、金属板MSを打ち抜いて、打抜部材Waと打抜部材Wbとを含む複数の打抜部材Wを形成する工程である。打抜工程は、プレス加工装置80において実行される。積層工程は、1以上の打抜部材Wが積み重ねられる度に、周方向における打抜部材Wの角度を表す転積角度を異ならせつつ複数の打抜部材Wを積層することで、積層体2を形成する工程である。積層工程において、転積角度を異ならせつつ複数の打抜部材Wを積層することは、プレス加工装置80内(プレス加工装置80の内部)で実行されてもよい。
【0057】
積層工程では、連続して重ねられる2以上の打抜部材Waと連続して重ねられる2以上の打抜部材Wbとの境界部分において、互いに隣り合う打抜部材Waと打抜部材Wbとの間で転積角度が同じとなるように、複数の打抜部材Wが積層される。例えば、積層体2に存在するデザイン変更部dc1,dc2のそれぞれにおいて、打抜部材Waの転積角度と打抜部材Wbの転積角度とが同じ角度に設定されて、複数の打抜部材Wが積み重ねられる。なお、打抜部材W同士の転積角度が同じであるとは、積み重ねられる際の転積角度の設定値が同じであればよく、実質的に転積角度が同じであることを意味する。積層工程では、上記複数の部材群の間で、積厚の合計が略一致するように複数の打抜部材Wが積層されてもよい。一例では、上記複数の部材群の間で、各部材群に含まれる全ての打抜部材Wの枚数(打抜部材Wの総数)が一致するように、複数の打抜部材Wが積層される。
【0058】
図7(a)及び図7(b)を参照しながら、プレス加工装置80の内部において転積を含む上記積層工程が実行される場合について、積層工程の一例を説明する。上記積層工程は、上記打抜工程と並行して実行されてもよい。図7(a)は、1つの積層体2を形成する際に実行される積層工程の一例を示すフローチャートである。以下では、図3(b)に示される積層体2(ブロックb1~b9から成る積層体2)を形成する場合を例に説明する。また、積層体2の下部分LPに含まれる全ての打抜部材Waの枚数は300枚であり、積層体2の中央部分MPに含まれる全ての打抜部材Wbの枚数は300枚であり、積層体2の上部分UPに含まれる全ての打抜部材Waの枚数は300枚に設定されている。この場合、コントローラ100は、300枚の打抜部材Waの形成、300枚の打抜部材Wbの形成、及び300枚の打抜部材Waの形成が、この順で実行されるようにプレス加工装置80を制御する。
【0059】
図7(b)に示される表は、積層工程を実行するためにコントローラ100が保持する情報の一例である。図7(b)に示される情報では、下方から順に並ぶブロックb1~b9に含まれるブロックごとに、転積角度と打抜部材Wの枚数とが定められている。コントローラ100は、最初に、ステップS11を実行する。ステップS11では、コントローラ100が、kを1に設定する。
【0060】
次に、コントローラ100は、ステップS12を実行する。ステップS12では、例えば、コントローラ100が、図7(b)に示される積層に関する情報を参照して、現在のkの設定値に対して定められた転積角度に応じて、駆動部83bによりスクイズリングSQを回転させる。一例では、転積角度が0°である場合には、コントローラ100は、スクイズリングSQが基準位置(初期位置)に位置するように、駆動部83bによりスクイズリングSQを回転させる。
【0061】
次に、コントローラ100は、ステップS13を実行する。ステップS13では、例えば、コントローラ100が、現在のkの設定値に対して定められた設定枚数が、積層されるまで待機する。コントローラ100は、ステップS13で待機している間、駆動部82bにより支持部材82aを間欠的に下方に移動させる。ステップS13が実行されることで、同じ転積角度に設定された状態で、設定枚数の打抜部材Wが積層される。
【0062】
次に、コントローラ100は、ステップS14,S15を実行する。ステップS14では、例えば、コントローラ100が、現在のkの値に対して1を加算する。ステップS15では、例えば、コントローラ100が、kの設定値が所定値以上であるか否かを判定する。図7(b)に示される情報が用いられる場合には、上記所定値は10に設定されている。
【0063】
ステップS15において、kが所定値よりも小さいと判断された場合(ステップS15:NO)には、コントローラ100が実行する処理は、ステップS12に戻り、コントローラ100は、ステップS12~S15の一連の処理を繰り返す。kに対して1が加算された後のステップS12が実行される度に、スクイズリングSQが同じ回転方向に120°だけ回転する。これにより、連続する2つのブロック間において、転積角度が120°ずつ変化する。
【0064】
ステップS15において、kが所定値以上であると判断された場合(ステップS15:YES)には、1つの積層体2を積層する工程は終了する。そして、コントローラ100は、プッシャ82dにより積層体2をステージ82cに押し出した後に、積層体2をプレス加工装置80の外に排出するようにプレス加工装置80を制御する。その後、製造装置50において、積層体2に対して後工程(例えば、樹脂部の形成等)が実行されることで、積層鉄心1が製造される。
【0065】
以上の一連の処理が実行される際には、積層体2の下部分LPを構成する複数の打抜部材Waが連続して積み重ねられている途中に、コントローラ100は、kの設定値を3から4に変更する。すなわち、積層体2の下部分LPを構成する複数の打抜部材Waが連続して積み重ねられている途中に、転積角度の設定値が変更されて、スクイズリングSQの回転位置が変化する。また、積層体2の上部分UPを構成する複数の打抜部材Waが連続して積み重ねられている途中に、コントローラ100は、kの設定値を6から7に変更する。すなわち、積層体2の上部分UPを構成する複数の打抜部材Waが連続して積み重ねられている途中に、転積角度の設定値が変更されて、スクイズリングSQの回転位置が変化する。以上のように、デザイン変更部dc1,dc2のそれぞれにおいて、転積角度が変化しないように、積層体2が形成される。
【0066】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、又は変更などが行われてもよい。
【0067】
図3(b)に示される例では、デザイン変更部dc1の下方と、デザイン変更部dc2の上方とのそれぞれに、転積角度が変化する転積部が位置するが、デザイン変更部dc1の上方と、デザイン変更部dc2の下方とのそれぞれに、転積部が位置してもよい。この場合、ブロックb3での打抜部材Wの総数が、1つのブロックでの打抜部材Wの枚数の平均値より多くなるが、ブロックb6での打抜部材Wの総数が、上記平均値よりも少なくなる。また、ブロックb4での打抜部材Wの総数が、上記平均値よりも少なくなるが、ブロックb7での打抜部材Wの総数が、上記平均値よりも多くなる。
【0068】
上述の例では、積層体2において、打抜部材Wa及び打抜部材Wbが混在することで、3つの領域(下部分LP、中央部分MP、及び上部分UP)に区画されるが、区画される領域の数は、3に限られず、2であってもよく、4以上であってもよい。例えば、積層体2が、複数の打抜部材Waが連続して重ねられる領域と、複数の打抜部材Wbが連続して重ねられる領域との2つの領域に区画されてもよい。
【0069】
耳金部9の有無以外の外縁の形状の違いによって、デザイン変更部が形成されてもよい。例えば、中心軸Axまわりの周方向の少なくとも一部において、ヨーク部4の外径が異なることで、デザイン変更部が形成されてもよい。
【0070】
上述の例では、積層工程における転積が、プレス加工装置80の内部で行われるが、積層工程における転積が、プレス加工装置80の外で行われてもよい。例えば、図4に示されるように、製造装置50は、積層装置90を備えてもよい。積層装置90は、コントローラ100の動作指示に基づいて動作し、積層工程における転積を実行することが可能な装置である。
【0071】
一例では、プレス加工装置80は、積層体2を構成する複数の打抜部材Wを順に打ち抜いた後に、転積を行うことなく、複数の打抜部材Wを積み重ねて仮積層体を形成する。仮積層体では、仮カシメ等によって、一時的に打抜部材W同士が固定されてもよい。プレス加工装置80により排出された仮積層体は、コンベアCvによって、積層装置90まで搬送される。積層装置90は、仮積層体から1枚の打抜部材Wを取り出すことと、取り出した打抜部材Wに接着剤を塗布することと、積み重ね順に設定された転積角度に応じて打抜部材Wを回転させて積み重ねることと、を含む一連の工程を繰り返す。積層装置90は、コントローラ100の動作指示に基づいて、デザイン変更部において転積角度が変化しないように、上記一連の工程を繰り返す。
【0072】
別の例では、プレス加工装置80は、積層体2を形成することが可能な複数のブロック体を順に形成して、複数のブロック体を、個別にプレス加工装置80の外に排出する。複数のブロック体それぞれは、複数の打抜部材Wが転積されることなく積層されて形成された積層体であり、1つのブロック体において、複数の打抜部材W同士は、カシメ部又は樹脂部等によって接続されている。プレス加工装置80から排出された複数のブロック体は、コンベアCvによって、積層装置90まで搬送される。積層装置90は、ブロック体ごとに転積角度を異ならせつつ積層し、例えば、溶接によってブロック体同士を接合する。
【0073】
プレス加工装置80は、コントローラ100の動作指示に基づいて、各ブロック体の端面が、デザイン変更部となる打抜部材Wa及び打抜部材Wbのいずれか一方によって構成されないように、複数のブロック体を形成する。すなわち、複数のブロック体のうちのあるブロック体は、打抜部材Wa及び打抜部材Wbの両方を含んで形成され、そのブロック体が形成された状態で、デザイン変更部が既に形成されている。
【0074】
図8(a)及び図8(b)には、積層鉄心の一例として、積層鉄心1Aが示されている。積層鉄心1Aは、ロータ用のコア(回転子積層鉄心)である。例えば、積層鉄心1Aにシャフトが取り付けられることで、回転子が形成される。積層鉄心1Aは、埋込磁石型(IPM)モータに用いられてもよい。積層鉄心1Aは、積層体2Aを含む。積層体2Aには、モータの用途又は要求される性能に応じた複数の磁石が取り付けられてもよい。
【0075】
積層体2Aは、複数の打抜部材WAが積層されていることで形成される。積層体2A(積層鉄心1A)は、円筒状に形成されている。積層体2Aの中央部には、積層鉄心1Aの中心軸Axに沿って延びるように、積層体2Aを貫通する軸孔3が設けられている。軸孔3は、積層方向に延びている。図8(b)には、図8(a)に示されるB-B線に沿った断面が示されおり、積層体2Aでは、積層方向の位置によって、軸孔3の内径が異なっている。図8(b)に示される例では、積層体2Aの中央部分MPにおいて、貫通部3bが形成され、上記中央部分MPを挟む上部分UP及び下部分LPのそれぞれにおいて、貫通部3bに比べて内径が大きい貫通部3aが形成されている。軸孔3は、2つの貫通部3aと、貫通部3bとによって構成される。
【0076】
打抜部材WAは、打抜部材Wと同様に、金属板MSを所定形状に沿って打ち抜くことで形成された板状体である。上述のように、積層体2Aでは、積層方向における位置によって、軸孔3の内径が異なる。そのため、複数の打抜部材WAは、互いに形状が異なる2つの打抜部材WAが含まれる。以下、貫通部3aを構成する打抜部材WAを「打抜部材WAa」と称し、貫通部3bを構成する打抜部材WAを「打抜部材WAb」と称する。図8(b)に示される例では、積層体2Aの上部分UP及び下部分LPのそれぞれが、打抜部材WAbを含まずに複数の打抜部材WAaのみによって構成される。また、積層体2Aの中央部分MPが、打抜部材WAaを含まずに複数の打抜部材WAbのみによって構成される。
【0077】
打抜部材WAb(第2打抜部材)が有する形状(第2形状)は、打抜部材WAa(第1打抜部材)が有する形状(第1形状)と異なっている。図8(b)に示される例では、打抜部材WAの軸孔3に対応する孔の形状が異なっている。すなわち、打抜部材WAに形成され、中心軸Axを囲む開口(開口部分の縁)の形状が異なる。なお、図8(b)に示される例とは異なり、打抜部材WAa及び打抜部材WAbとの間で、打抜部材WAの外縁の形状が異なってもよく、打抜部材Waの外縁及び中心軸Axを囲む上記開口の形状の双方が異なってもよい。
【0078】
積層体2Aにおいても、図1等に示される積層体2と同様に、2つのデザイン変更部が存在する。2つのデザイン変更部のそれぞれにおいて、打抜部材WAa及び打抜部材WAbの間で、転積角度が同じとなるように、複数の打抜部材WAの転積が行われてもよい。上述した製造装置50によって、積層体2Aを含む積層鉄心1Aが製造されてもよい。上述した打抜工程及び積層工程を含む製造方法によって、積層体2Aを含む積層鉄心1Aが製造されてもよい。
【0079】
一例では、転積角度が0°に設定された状態で、複数の打抜部材WAaが積層されることで、積層体2Aの下部分LPが形成される。次に、転積角度がそのまま0°に設定された状態で、1以上の打抜部材Wbが、上記下部分LPに重ねられる。そして、転積角度が180°に設定された状態で、複数の打抜部材Wbが重ねられた後に、転積角度が0°に設定された状態で、複数の打抜部材Wbが重ねられる。この段階で、積層体2Aの中央部分MPは完成していない。次に、転積角度が180°に設定された状態で、1以上の打抜部材Wbが重ねられることで、積層体2Aの中央部分MPが形成される。その後、転積角度がそのまま180°に設定された状態で、複数の打抜部材WAaが重ねられることで、積層体2Aの上部分UPが形成される。
【0080】
上述した例では、2種類の打抜部材Wによって、積層体2が形成されるが、打抜部材Wa及び打抜部材Wbと、打抜部材Wa及び打抜部材Wbの双方と形状が異なる1種類以上の別の打抜部材Wとによって、積層体2が形成されてもよい。この場合、打抜部材Wa及び打抜部材Wbの少なくとも一方と、上記1種類の打抜部材Wとによって、他のデザイン変更部が形成される。当該他のデザイン変更部においても、一対の打抜部材Wの間で、転積角度が同じであってもよい。
【0081】
デザイン変更部か否かを判定する際に、打抜部材Wの外縁の形状、及び、打抜部材Wの中央に形成され、中心軸Axを囲む開口(開口部分の縁)の形状の2つの形状のみによって、打抜部材Wの形状が規定されてもよい。この場合、上記2つの形状の少なくとも一部が異なっていれば、デザイン変更部が形成され、上記2つの形状が同じであれば、他の内部(例えば、貫通孔)の形状が異なっていてもデザイン変更部が形成されない。少なくとも一部のデザイン変更部において、一対の打抜部材Wの間で、転積角度が同じとなるように転積が行われる限り、転積(積層体2,2Aの形成)はどのように行われてもよい。以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例で説明した事項の少なくとも一部が組み合わせられてもよい。
【0082】
[本開示のまとめ]
[1]金属板MSを打ち抜いて、第1形状を有する打抜部材Wa,WAaと、第1形状とは異なる第2形状を有する打抜部材Wb,WAbとを含む複数の打抜部材Wを形成する打抜工程と、1以上の打抜部材Wが積み重ねられる度に、周方向における打抜部材Wの角度を表す転積角度を異ならせつつ複数の打抜部材Wを積層することで、積層体2,2Aを形成する積層工程と、を含み、積層工程では、連続して重ねられる2以上の打抜部材Wa,WAaと、連続して重ねられる2以上の打抜部材Wb,WAbとの境界部分において互いに隣り合う打抜部材Wa,WAaと打抜部材Wb,WAbとの間で転積角度が同じとなるように、複数の打抜部材Wが積層される、積層鉄心1,1Aの製造方法。
上述したように、互いに隣り合う形状違いの一対の打抜部材Wからなるデザイン変更部において転積角度が異なると、デザイン変更部と転積角度の変更との2つの要因に起因して、割れの発生、又は隙間の拡大等の種々の問題が生じ得る。これに対して、上記積層鉄心1,1Aの製造方法では、上記境界部分において互いに隣り合う打抜部材Wa,WAaと打抜部材Wb,WAbとの間で転積角度が同じであり、それらの一対の打抜部材Wからなるデザイン変更部において、転積角度の変更が行われない。そのため、形成された積層体2,2Aにおいて、上述した種々の問題が発生し難い。従って、板厚偏差及び形状変更に伴う影響を低減するのに有用である。
【0083】
[2]積層工程で形成される積層体2,2Aには、転積角度が互いに異なる複数の部材群が含まれており、複数の部材群それぞれは、転積角度が互いに同一である2以上の打抜部材Wからなり、積層工程では、複数の部材群の間で積厚の合計が略一致するように複数の打抜部材Wが積層される、上記[1]に記載の製造方法。
この場合、転積角度ごとの積厚の合計が略一致する。そのため、デザイン変更部での転積角度の変化を避けつつ、板厚偏差の影響を更に低減させることができる。
【0084】
[3]積層鉄心1,1Aは、ステータ用のコアであり、上記第1形状及び上記第2形状の間では、打抜部材Wの外縁の形状が異なる、上記[1]又は[2]に記載の製造方法。 ステータ用のコアが用いられるモータの仕様によっては、コアの積層方向の位置によって、上記外縁の形状が異なる場合がある。上記製造方法では、積層方向の位置によって打抜部材Wの外縁の形状が異なっても、その影響を低減させることができる。
【0085】
[4]積層鉄心1,1Aは、ロータ用のコアであり、上記第1形状及び上記第2形状の間では、打抜部材Wに形成され、積層鉄心1,1Aの中心軸Axを囲む開口(軸孔3)の形状、及び、打抜部材Wの外縁の形状の少なくとも一方が異なる、上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
ロータ用のコアが用いられるモータの仕様によっては、コアの積層方向の位置によって、上記開口及び上記外縁の少なくとも一方の形状が異なる場合がある。上記製造方法では、積層方向の位置によって打抜部材Wの開口又は外縁の形状が異なっても、その影響を低減させることができる。
【0086】
[5]積層工程において、転積角度を異ならせつつ複数の打抜部材Wを積層することは、金属板MSを打ち抜いて複数の打抜部材Wを形成するプレス加工装置80内で実行される、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
この場合、プレス加工装置80の外において、転積を行うための装置を設ける必要がない。そのため、積層鉄心1,1Aを製造するための装置の簡素化を図ることができる。
【0087】
[6]積層工程において、転積角度を異ならせつつ複数の打抜部材Wを積層することは、金属板MSを打ち抜いて複数の打抜部材Wを形成する装置の外で実行される、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
この場合、1つの積層体2を形成するための複数の打抜部材Wをプレス加工装置80において打ち抜いて形成することと、他の1つの積層体2を得るために転積を行うことと、を並行して実行することができる。そのため、製造効率の向上を図ることができる。
【0088】
[7]第1形状を有する打抜部材Wa,WAaと、上記第1形状とは異なる第2形状を有する打抜部材Wb,WAbとを含む複数の打抜部材W,WAが積層されることで形成された積層体2,2Aを備え、積層体2,2Aは、積層方向に並び、それぞれが1以上の打抜部材Wからなる複数のブロック(ブロックb1~b9)を含み、積層体2,2Aでは、複数のブロック(ブロックb1~b9)のうちの互いに隣り合うブロック同士の間で、周方向における打抜部材の角度を表す転積角度が異なっており、連続して重ねられる2以上の打抜部材Wa,WAaと、連続して重ねられる2以上の打抜部材Wb,WAbとの境界部分において互いに隣り合う打抜部材Wa,WAaと打抜部材Wb,WAbとの間で、転積角度が同じである、積層鉄心1,1A。
この積層鉄心1,1Aでは、上記積層鉄心1,1Aの製造方法と同様に、板厚偏差及び形状変更に伴う影響を低減するのに有用である。
【0089】
ここで、互いに隣り合う打抜部材W同士を接着剤の塗布によって接続する場合について検討する。圧延によって形成された金属板MSの上面及び下面には、金属板MSの延在方向に沿って延びる複数本のロール目が形成される。この場合、延在方向に直交する面での金属板MSの断面を観察すると、金属板MSの上面及び下面のそれぞれでは、複数本のロール目によって、凸部と凹部とが交互に並んで形成される。転積しない場合には、一の打抜部材Wの下面に形成された凸部が、他の打抜部材Wの上面に形成された凹部に嵌まり、他の打抜部材Wの上面に形成された凸部が、一の打抜部材Wの下面に形成された凹部に嵌まるように、2つの打抜部材Wが重ねられる。
【0090】
一方、転積を行う場合には、複数本のロール目に起因して形成される凹凸形状が、2つの打抜部材Wの間で合わずに、転積しない場合に比べて、2つの打抜部材Wの間の隙間が大きくなる。同じ量の接着剤を塗布すると仮定した場合、2つの打抜部材Wの間の隙間が大きくなると、打抜部材Wの主面に沿って接着剤が広がる範囲が狭くなり、打抜部材W同士の締結力が弱くなる。以上のように、接着剤の塗布が採用される場合、デザイン変更部において転積角度を異ならせると、デザイン変更に伴う加工ひずみの差、及び、転積に伴う板厚偏差の傾向の差に加えて、ロール目の向きに起因して、隙間が大きくなり接着剤の締結力が低下する。その結果、デザイン変更部での割れがより発生しやすい。従って、接着剤の塗布が採用される場合に、上述した製造方法を用いて積層鉄心を製造することが更に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1,1A…積層鉄心、Ax…中心軸、2,2A…積層体、W,Wa,Wb,WAa,WAb…打抜部材、b1~b9…ブロック、80…プレス加工装置、MS…金属板。
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