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特開2024-133996落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具
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  • 特開-落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具 図1
  • 特開-落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具 図2
  • 特開-落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具 図3
  • 特開-落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133996
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/18 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B66F9/18 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044055
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】509235545
【氏名又は名称】株式会社SEET
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 信明
(72)【発明者】
【氏名】古賀 翔平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】秋山 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 由徳
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE25
3F333FA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロールクランプ装置に把持された円筒体の落下を防止することである。
【解決手段】一対のクランプアーム12に把持された円筒体30の落下を防止する落下防止構造100であって、円筒体30の外側に、該円筒体の一方の端部とクランプアーム12とを連結する軸方向固定具40が設けられており、該軸方向固定具40は、円筒体30の一端側に係止される落下防止治具と、該落下防止治具とクランプアーム12との間に配される連結部材とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のクランプアームに把持された円筒体の落下を防止する落下防止構造であって、
前記円筒体の外側に、該円筒体の一方の端部と前記クランプアームとを連結する軸方向固定具が設けられており、
該軸方向固定具は、
前記円筒体の一端側に係止される落下防止治具と、
該落下防止治具と前記クランプアームとの間に配される連結部材と、
を備えることを特徴とする落下防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の落下防止構造において、
前記軸方向固定具が、前記円筒体の一方の端部側であって周方向に、複数設けられていることを特徴とする落下防止構造。
【請求項3】
請求項1に記載の落下防止構造において、
前記円筒体の外側に、該円筒体と前記クランプアームの先端に設置されるクランプパッドとを束ねて拘束する周方向固定具が設けられていることを特徴とする落下防止構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の落下防止構造を用いた円筒体の落下防止方法であって、
前記円筒体の外側に、該円筒体の一方の端部と前記クランプアームとを連結する軸方向固定具を設けることを特徴とする円筒体の落下防止方法。
【請求項5】
請求項4に記載の円筒体の落下防止方法において、
前記円筒体が、鋼管であることを特徴とする円筒体の落下防止方法。
【請求項6】
一対のクランプアームに把持された円筒体に係止される落下防止治具であって、
治具本体と、
該治具本体に形成され、前記円筒体の肉厚より幅が大きい切欠き部と、
前記治具本体に形成され、前記クランプアームとの間に配される連結部材が接続する接続部と、
を備えることを特徴とする落下防止治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールクランプ装置に把持された円筒体の落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フォークリフトに使用可能なアタッチメントの一つに、例えば特許文献1で示すような、ロールクランプ装置がある。
【0003】
ロールクランプ装置は、一対のクランプアームを備えた荷役装置であり、円柱形状の荷物を把持することができる。主に、製紙工場などで生産されたロール紙の荷役作業に採用されており、ロール紙を傷つけることなく掴みとることができ、また、ロール紙を起立姿勢や横臥姿勢など、様々な姿勢に変換して荷役作業を行うこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-64760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のロールクランプ装置は、把持する荷物に応じてクランプ力を自動で制御する自動制御手段を設けるなどして、荷物を安定して把持するための対策が講じられている。
【0006】
しかし、作業員の誤操作や不慮の事態などが生じると、一対のクランプアームが解放されて、荷物が落下するおそれがある。また、荷物の表面が平滑面に形成されている場合、クランプアームから滑り落ちるおそれがある。荷役作業を行っている際にこのような事態が生じると、荷物に損傷を生じるだけでなく、作業事故にも発展しかねない。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、ロールクランプ装置に把持された円筒体の落下やずり落ちを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の落下防止構造は、一対のクランプアームに把持された円筒体の落下を防止する落下防止構造であって、前記円筒体の外側に、該円筒体の一方の端部と前記クランプアームとを連結する軸方向固定具が設けられており、該軸方向固定具は、前記円筒体の一端側に係止される落下防止治具と、該落下防止治具と前記クランプアームとの間に配される連結部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の落下防止構造は、前記軸方向固定具が、前記円筒体の一方の端部側であって周方向に、複数設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の落下防止構造は、前記円筒体の外側に、該円筒体と前記クランプアームの先端に設置されるクランプパッドとを束ねて拘束する周方向固定具が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の円筒体の落下防止方法は、本発明の落下防止構造を用いた円筒体の落下防止方法であって、前記円筒体の外側に、該円筒体の一方の端部と前記クランプアームとを連結する軸方向固定具を設けることを特徴とする。
【0012】
本発明の円筒体の落下防止方法は、前記円筒体が、鋼管であることを特徴とする。
【0013】
本発明の落下防止治具は、一対のクランプアームに把持された円筒体に係止される落下防止治具であって、治具本体と、該治具本体に形成され、前記円筒体の肉厚より幅が大きい切欠き部と、前記治具本体に形成され、前記クランプアームとの間に配される連結部材が接続する接続部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具によれば、円筒体の一方の端部側に軸方向固定具を設ける。これにより、円筒体を起立姿勢で荷役したい場合に、軸方向固定具を設けた側を下方に向けることで、円筒体の落下を防止できる。また、横臥姿勢の円筒体を建て起こす際に、クランプアームからずり落ちる事象を防止できる。
【0015】
さらに、軸方向固定具を円筒体の一端側であって周方向に複数設ける、もしくは周方向固定具を追加して用いるなどすれば、より確実に、円筒体の落下やずり落ちを防止できる。
【0016】
また、軸方向固定具を構成する落下防止治具は、切欠き部に円筒体の一部を差し込むのみで円筒体に係止できるため、着脱作業が容易で迅速に落下防止構造を設けることができる。
【0017】
このような落下防止構造を採用すれば、平滑な外周面を有する鋼管の荷役作業にロールクランプ装置を採用しても、クランプアームから滑り落ちるような事態を防止できる。
【0018】
したがって、例えば、狭隘かつ低空頭な環境にある工事現場において、横臥姿勢の鋼管をヤードから現場に搬入し、任意の位置に起立姿勢で建て込むまでの一連の作業を、ロールクランプをアタッチメントとして取り付けたフォークリフトを利用して実施でき、工事全体の作業性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ロールクランプ装置を利用して円筒体の荷役作業を行う際、円筒体の外側に、円筒体の一方の端部とクランプアームとを連結する軸方向固定具を設ける簡略な構成で、円筒体が落下もしくはずり落ちる事態を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態におけるロールクランプ装置で把持した鋼管に落下防止構造を設けた様子を示す図である。
図2】本実施の形態における落下防止構造の詳細を示す図(平面図)である。
図3】本実施の形態における落下防止構造の詳細を示す図(側面図)である。
図4】本実施の形態における落下防止治具の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ロールクランプ装置を利用した円筒体の荷役作業に適用するものであり、いずれの円筒体にも採用可能である。本実施の形態では、円筒体として鋼管を採用する場合を事例に挙げ、図1図4を参照しつつ、その詳細を説明する。
【0022】
≪ロールクランプ装置≫
図1で示すように、ロールクランプ装置10は、フォークリフト20の車両本体前側に立設されたマスト21に装着されるアタッチメントであり、取付部11と、一対のクランプアーム12と、クランプパッド13を備えている。
【0023】
取付部11は、図1及び図2で示すように、背面側が、マスト21に沿って上下移動自在に設けられたホルダ22に、鉛直回転機構14を介して接続されている。また、前方側には、一対のクランプアーム12が設けられている。
【0024】
一対のクランプアーム12は、図2で示すように、鋼管30の外周面を囲うことの可能な円を半割形状に形成したものであり、各々の基端側が回動機構15を介して取付部11に接続されている。これにより、一対のクランプアーム12は基端側を支点にして、先端側を開状態もしくは閉状態とすることができる。そして、一対のクランプアーム12の先端側各々にクランプパッド13が設けられている。
【0025】
一対のクランプパッド13は、内面が、鋼管30の外周面に沿う円弧状に形成され、外面には、クランプアーム12の先端が接続部16を介して揺動自在に接続されている。鋼管30を把持する際には、これらクランプパッド13各々の内面が鋼管30の外周面に当接する。
【0026】
上記の構成を有するロールクランプ装置10は、フォークリフト20に搭載されている制御装置(図示せず)により回動機構15が制御され、一対のクランプアーム12の開閉動作を行う。また、制御装置(図示せず)により鉛直回転機構14が制御され、一対のクランプアーム12の鉛直回転動作を行う。
【0027】
これにより、鋼管30を一対のクランプアーム12で把持できるとともに、横臥姿勢もしくは立設姿勢で荷役することができる。このようなロールクランプ装置10を用いて鋼管30の荷役作業を実施する際には、次のような落下防止構造100を設ける。
【0028】
≪≪≪落下防止構造≫≫≫
落下防止構造100は、図1で示すように、軸方向固定具40と、周方向固定具50とを設けることにより構成されている。
【0029】
≪≪軸方向固定具≫≫
軸方向固定具40は、鋼管30の外側に配置されて鋼管30の一方の端部とクランプアーム12とを連結するものであり、図3で示すように、落下防止治具41と、連結部材42と、アーム側接続部43とにより構成されている。
【0030】
≪落下防止治具≫
落下防止治具41は、鋼管30の一端側に係止される部材であり、図4(a)で示すように、板状の治具本体411、この治具本体411に設けられた切欠き部412、及び接続孔413により構成されている。
【0031】
治具本体411は、所定の部材厚を有する鋼板よりなる。切欠き部412は、治具本体411を鋼管30の端部に対して交差するように配置した際、この端部が差し込まれる。このような切欠き部412は、幅wが少なくとも鋼管30の板厚より大きく形成されている。
【0032】
接続孔413は、治具本体411に設けた貫通孔よりなり、切欠き部412に並んで形成されている。接続孔413の大きさや形状は、連結部材42を装着できればいずれでもよく、本実施の形態では円形に形成している。
【0033】
上記の落下防止治具41は、図3及び図4(a)で示すように治具本体411の外形状を、切欠き部412に鋼管30を係止させた際の内側に位置する部分と外側に位置する部分とで変えている。鋼管30の外側に位置する部分は、その上側隅部を面取り加工して曲面状に形成している。
【0034】
また、鋼管30の内側に位置する部分は、その上側隅部に突出部414を設けている。この上方に突き出た突出部414を設けることで、切欠き部412に差し込まれた鋼管30の端部を支点にして、治具本体411がいずれの方向に回転しても、係止状態が維持できる構造となっている。
【0035】
≪連結部材≫
連結部材42は、図3で示すように、チェーン421とチェーンブロック422とにより構成している。チェーン421は、落下防止治具411に設けた接続孔413と、後述するアーム側接続部43に接続される。チェーンブロック422は、チェーン421の長さを調整する。
【0036】
なお、連結部材42は、落下防止治具41に設けた接続孔413と、後述するアーム側接続部43とに装着可能で、長さを調整できる部材であれば、棒材や索状材などいずれをも採用できる。
【0037】
≪アーム側接続部≫
アーム側接続部43は、クランプアーム12に設けられており、連結部材42を接続できる部材であればいずれでもよい。本実施の形態では、図1で示すように、クランプアーム12に形成されている既存の貫通孔を、アーム側接続部43として採用しているが、これに限定するものではなく、クランプアーム12に新設してもよい。
【0038】
上記の構成を有する軸方向固定具40を用いた落下防止法は、例えば、鋼管30の一端側に落下防止治具41の切欠き部412を係止させる。この状態で、クランプアーム12に設けたアーム側接続部43と落下防止治具41の接続孔413に、連結部材42のチェーン421を装着する。
【0039】
この状態で、チェーン421に所定の張力が生じるよう、チェーンブロック422を利用してチェーン421の長さを調整する。これにより、鋼管30の一端側とクランプアーム12が連結された態様となる。
【0040】
上記の軸方向固定具40は、1組のみでもよいし複数組設けてもよい。図3では、一対のクランプアーム12にそれぞれ1組ずつ、合計2組設ける場合を例示している。また、落下防止構造100は、上記の軸方向固定具40のみで構成してもよいが、周方向固定具50を追加してもよい。
【0041】
≪周方向固定具≫
周方向固定具50は、図1で示すように、鋼管30の外側に配置されて、鋼管30とクランプパッド13とを束ねて拘束するものであり、帯状部材51と締付け部材52とにより構成されている。
【0042】
帯状部材51は、図2で示すように、鋼管30の周方向に巻き回される長尺部材であり、鋼管30の外周面に損傷を与えることのない部材であれば、いずれをも採用することができる。また、締付け部材52は、帯状部材51の両端を連結するように設けられており、鋼管30とクランプパッド13とを束ねた状態の帯状部材51を、締付けることのできる部材であれば、いずれを採用してもよい。
【0043】
例えば、図2では、締付け部材52をチェーン521とチェーンブロック522とにより構成している。チェーン521は、帯状部材51の両端部を連結すようにして、装着されている。チェーンブロック522は、チェーン521の長さを調整する。
【0044】
上記の構成を有する周方向固定具50を追加した落下防止方法は、例えば、鋼管30と一対のクランプパッド13をひとまとめに束ねるようにして、鋼管30の周方向に帯状部材51を巻き回す。この帯状部材51の両端部を連結するようにして、締付け部材52のチェーン521を装着する。こののち、締付け部材52のチェーンブロック522でチェーン421の長さを調整し、締付け量を調整する。
【0045】
上記の円筒体の落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具によれば、鋼管30を起立姿勢で荷役したい場合、軸方向固定具40を設けた一方の端部側を下方に向けることで、鋼管30の落下を防止できる。また、鉛直回転機構14を介してクランプアーム12を鉛直方向に回転し、荷役作業中の鋼管30を横臥姿勢から起立姿勢など様々に変化させても、鋼管30がクランプアーム12からずり落ちる事象を防止できる。
【0046】
落下防止構造100として軸方向固定具40を複数設ける、もしくは追加して周方向固定具50を用いることで、より確実に鋼管30の落下やずり落ちる現象を防止できる。
【0047】
そして、軸方向固定具40を構成する落下防止治具41は、切欠き部412に鋼管30の一部分を差し込む簡略な構造であるため、着脱が容易で迅速に落下防止構造100を設けることができる。
【0048】
このように、落下防止構造100を採用すれば、平滑な外周面を有する鋼管30の荷役作業にロールクランプ装置10を採用しても、クランプアーム12から滑り落ちるような事態を防止できる。
【0049】
したがって、例えば、狭隘かつ低空頭な環境にある工事現場において、横臥姿勢の鋼管30をヤードから現場に搬入し、任意の位置に起立姿勢で建て込むまでの一連の作業を、ロールクランプ装置10をアタッチメントとして取り付けたフォークリフト20を利用して実施でき、工事全体の作業性を向上することが可能となる。
【0050】
本発明の落下防止構造、円筒体の落下防止方法及び落下防止治具は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0051】
例えば、落下防止治具41について、図4(a)及び(b)で示すように、切欠き部412の幅Wを変化させたものを、複数準備しておいても良い。こうすると、施工現場で部材厚や端部形状の異なる鋼管30を複数扱う場合などに、これに対応する切欠き部412を備えた落下防止治具41に交換して軸方向固定具40を構成し、落下防止構造を設けることができる。
【符号の説明】
【0052】
100 落下防止構造
10 ロールクランプ装置
11 取付部
12 クランプアーム
13 クランプパッド
14 鉛直回転機構
15 回動機構
16 接続部
20 フォークリフト
21 マスト
22 ホルダ
30 鋼管
40 軸方向固定具
41 落下防止治具
411 治具本体
412 切欠き部
413 接続孔
42 連結部材
421 チェーン
422 チェーンブロック
43 アーム側接続部
50 周方向固定具
51 帯状部材
52 締付け部材
521 チェーン
522 チェーンブロック
図1
図2
図3
図4