(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134004
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】区画貫通処理構造、区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240926BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20240926BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20240926BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20240926BHJP
A62C 3/16 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E04B1/94 F
F16L5/04
F16L5/00 W
H02G3/22
A62C3/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044068
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 秀康
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【テーマコード(参考)】
2E001
5G363
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA34
2E001GA07
2E001GA24
2E001GA26
2E001GA76
2E001HA01
2E001HA32
2E001HA33
2E001HB04
5G363AA05
5G363BA01
5G363BA07
5G363CA05
5G363CB11
(57)【要約】
【課題】本発明は、耐火性能のバラつきを低減し、かつ作業効率を良好とする区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供する。
【解決手段】建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部15を耐火構造とする区画貫通処理構造10であって、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材3を備え、シート状部材3には、内部から外縁まで到達し、互いが平行である2以上のスリットが設けられ、スリットにより分割された領域は、一端が固定端で、他端が自由端である帯状片を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を耐火構造とする区画貫通処理構造であって、
前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材を備え、
前記シート状部材には、内部から外縁まで到達し、互いが平行である2以上のスリットが設けられ、前記スリットにより分割された領域は、一端が固定端で、他端が自由端である帯状片を形成する、区画貫通処理構造。
【請求項2】
前記帯状片が複数設けられ、前記帯状片の間を前記挿通体が通る、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
【請求項3】
前記シート状部材は、前記帯状片が設けられている箇所のいずれかに前記挿通体を挿通させることで、前記帯状片の前記固定端から前記自由端へ延伸する方向が前記挿通体により曲げられることで、前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐ、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
【請求項4】
前記シート状部材は、2つ以上重ねて配置される、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
【請求項5】
2つ以上の前記シート状部材は、前記帯状片の前記固定端から前記自由端へ延伸する方向が互いに違えるように、重ねて配置される、請求項4に記載の区画貫通処理構造。
【請求項6】
前記区画貫通部の開口を覆うカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記シート状部材の少なくとも一部を覆うように固定されている、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記シート状部材との間に空隙を形成するように設置され、
前記空隙に、耐火材及び不燃材の少なくともいずれかが配置される、請求項6に記載の区画貫通処理構造。
【請求項8】
前記シート状部材に発泡層が積層される、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
【請求項9】
前記シート状部材の表面の少なくとも一部に粘着剤層が配置され、前記シート状部材が前記粘着剤層によって前記カバー材及び前記仕切り部の少なくとも一部に固定される、請求項6に記載の区画貫通処理構造。
【請求項10】
前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間に、耐火材及び不燃材の少なくともいずれかが配置される、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
【請求項11】
前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間に、不燃材で形成された板状不燃材及びブロック状不燃材が配置される、請求項10に記載の区画貫通処理構造。
【請求項12】
建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を耐火構造とするために用いる区画貫通処理材であって、
前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材を備え、
前記シート状部材には、内部から外縁まで到達し、互いが平行である2以上のスリットが設けられ、前記スリットにより分割された領域は、一端が固定端で、他端が自由端である帯状片を形成する、区画貫通処理材。
【請求項13】
建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を耐火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、
前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐように、シート状部材を設置する工程を含み、
前記シート状部材には、内部から外縁まで到達し、互いが平行である2以上のスリットが設けられ、前記スリットにより分割された領域は、一端が固定端で、他端が自由端である帯状片を形成する、区画貫通処理構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物などの仕切り部において形成される区画貫通処理構造、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、オフィスビル、学校等の建築物において、壁等の仕切り部には、ケーブル類、配管類などの長尺の挿通体を通すために、区画貫通部が設けられることがある。区画貫通部は、いずれかの区画で火災が発生した際に、他の区画への延焼を防止するために、防火措置を施した構造(耐火構造)にすることが求められている。仕切り部は、2枚の壁部からなり、壁部間が中空部となっている中空壁が一般的である。
【0003】
区画貫通部を耐火構造とする方法は、例えば、長尺の挿通体と開口との間隙に、耐火パテなどの不定形充填材を充填する方法が知られている。不定形充填材を使用する場合、各壁部の開口内部と、挿通体の間には、耐火材よりなる筒状部材などが合わせて配設されることもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、区画貫通部の防火処理に不定形充填材を使用した場合、作業者によるバラつきがあり、十分な耐火性能が得られないことがある。また、躯体内に耐火材及びその付属品等を設置する場合、それらがどの程度(量や厚み、長さ等)設置されているか明確でなかったり、規定通りに設置されているか判断できなかったりすることがある。そのため、規定通りに耐火材などが設置されているか否かを確認するためには、区画貫通処理構造を破壊して、内部構造を確認する必要がある。
【0006】
また、作業者によるバラつきを低減するため、あらかじめ決められた量、及び大きさの部材が一体化されたキットがあったが、部材点数が多い傾向があり、部材紛失や設置し忘れが生じやすく、また、キットごとの梱包のため、発生するゴミが多いという問題もある。
【0007】
また、内部にケーブル類及び配管類等の長尺の挿通体が挿通される区画貫通構造においては、区画貫通処理構造を施した後に挿通体を動かした場合には、内部に設置された耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことがある。また、地震等の外力によっても、耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことがある。また、耐火材が均一に膨張せずに偏って膨張すると設置されていた適切な位置からずれたり、脱落したりすることがある。また、膨張性を有する耐火材を使用した場合、火災等により加熱されることで膨張し、耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことがある。
また、挿通体が挿通される区画貫通部における開口が大きい場合、区画貫通部の開口と挿通体との間の間隙も大きくなり、耐火パテなどの不定形充填材で充填することは困難であり、充填が不十分であると耐火性能が悪化してしまう。
このように、耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことや、筒状部材に変形するためにシート状の部材の周方向の端部同士を重複させることで隙間が生じることによって、区画貫通部の耐火構造として望まれる耐火性能を発揮することが困難となる。
【0008】
そこで、本発明は、耐火性能のバラつきを低減し、かつ耐火性能を向上させることができる区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を耐火構造とする区画貫通処理構造であって、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材を備え、前記シート状部材には、内部から外縁まで到達し、互いが平行である2以上のスリットが設けられ、前記スリットにより分割された領域は、一端が固定端で、他端が自由端である帯状片を形成する、区画貫通処理構造。
[2]前記帯状片が複数設けられ、前記帯状片の間を前記挿通体が通る、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[3]前記シート状部材は、前記帯状片が設けられている箇所のいずれかに前記挿通体を挿通させることで、前記帯状片の前記固定端から前記自由端へ延伸する方向が前記挿通体により曲げられることで、前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐ、[1]又は[2]に記載の区画貫通処理構造。
[4]前記シート状部材は、2つ以上重ねて配置される、[1]~[3]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[5]2つ以上の前記シート状部材は、前記帯状片の前記固定端から前記自由端へ延伸する方向が互いに違えるように、重ねて配置される、[4]に記載の区画貫通処理構造。
[6]前記区画貫通部の開口を覆うカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記シート状部材の少なくとも一部を覆うように固定されている、[1]~[5]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[7]前記カバー部材は、前記シート状部材との間に空隙を形成するように設置され、前記空隙に、耐火材及び不燃材の少なくともいずれかが配置される、[6]に記載の区画貫通処理構造。
[8]前記シート状部材に発泡層が積層される、[1]~[7]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[9]前記シート状部材の表面の少なくとも一部に粘着剤層が配置され、前記シート状部材が前記粘着剤層によって前記カバー材及び前記仕切り部の少なくとも一部に固定される、[6]に記載の区画貫通処理構造。
[10]前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間に、耐火材及び不燃材の少なくともいずれかが配置される、[1]~[9]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[11]前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間に、不燃材で形成された板状不燃材及びブロック状不燃材が配置される、[10]に記載の区画貫通処理構造。
[12]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を耐火構造とするために用いる区画貫通処理材であって、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材を備え、前記シート状部材には、内部から外縁まで到達し、互いが平行である2以上のスリットが設けられ、前記スリットにより分割された領域は、一端が固定端で、他端が自由端である帯状片を形成する、区画貫通処理材。
[13]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を耐火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐように、シート状部材を設置する工程を含み、前記シート状部材には、内部から外縁まで到達し、互いが平行である2以上のスリットが設けられ、前記スリットにより分割された領域は、一端が固定端で、他端が自由端である帯状片を形成する、区画貫通処理構造の施工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本発明は、耐火性能のバラつきを低減し、かつ作業効率を良好とする区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材のスリット及び帯状片を示す模式的平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材が挿通体及び開口を覆うように配置されることを示す模式的平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材を挿通体及び開口を覆うように配置した状態を示す模式的平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の別形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の変形例1に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の変形例2に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の変形例3に係る区画貫通処理構造のシート状部材を挿通体及び開口を覆うように配置した状態を示す模式的平面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材を重ねて配置する態様を示す模式的平面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材が挿通体及び開口を覆うように配置した状態を示す模式的平面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材を挿通体及び開口を覆うように配置した状態であり、さらに充填材を配置した態様を示す模式的平面図である。
【
図12】本発明のその他の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材を挿通体及び開口を覆うように配置した状態を示す模式的平面図である。
【
図13】本発明のその他の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材を挿通体及び開口を覆うように配置した状態であり、さらに充填材を配置した態様を示す模式的平面図である。
【
図14】本発明のその他の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材を重ねて配置する態様を示す模式的平面図である。
【
図15】本発明のその他の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材が挿通体及び開口を覆うように配置した状態を示す模式的平面図である。
【
図16】本発明のその他の実施形態に係る区画貫通処理構造のシート状部材を挿通体及び開口を覆うように配置した状態であり、さらに充填材を配置した態様を示す模式的平面図である。
【
図17】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造の別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造は、
図1に示すように、建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を耐火構造とする区画貫通処理構造である。
【0014】
本発明の区画貫通処理構造における仕切り部11は、建築物の壁面において区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を仕切る部材であり、仕切り部11の一方の外面11A側から他方の外面11B側に貫通する区画貫通部15を有する。
図1で示す仕切り部11は、中空壁であり、間隔(中空部13)を介して配置される2枚の壁材(仕切り材)12A,12Bから構成される。そのため、区画貫通部15は、一方の壁材12Aに形成された貫通孔13Aと、他方の壁材12Bに形成された貫通孔13Bと、これらの間にある中空部13によって構成される。そして、一方の壁材12Aの外面が仕切り部11の外面11Aを構成し、他方の壁材12Bの外面が仕切り部11の外面11Bを構成する。貫通孔13A,13Bは、例えば、円形、楕円形、又は、これらに近似する形状を有すればよい。なお、外面11A、11Bそれぞれにおいて貫通孔13A,13Bは、仕切り部11に設けられた区画貫通部15の開口13C,13Dを構成する。
【0015】
なお、本明細書において、区画貫通部15に施工され、区画貫通処理構造10を形成するための部材(本実施形態では、シート状部材3、及びこれらを固定するための固定部材など)を纏めて区画貫通処理材ということがある。
また、以下では、仕切り部11の一方の開口13C側における区画貫通処理構造の構成について説明するが、本実施形態では、他方の開口13D側における区画貫通処理構造の構成も同様であるのでその説明は省略する。
【0016】
第1の実施形態に係る区画貫通処理構造10は、区画貫通処理材として、後述するシート状部材3を備え、シート状部材3が少なくとも耐火材及び不燃材の少なくともいずれかを有する。
【0017】
〔シート状部材〕
シート状部材3には、
図2に示すように、内部から外縁3Aまで到達し、互いが平行である2以上のスリット30が設けられるここで、各スリット30は、内部から同一方向に延伸して外縁3Aまで到達しており、スリット30により分割された領域は、一端が固定端31Aで、他端が自由端31Bである帯状片31を形成する。なお、各スリット30が到達する外縁3Aは、
図2ではシート状部材31の共通する直線状の一辺であるが、辺の形状等は特に限定されない。
シート状部材3は、帯状片31が曲げ可能に設けられていることで、帯状片31の間を挿通体21が通るように、挿通させることができる。そして、シート状部材3は、帯状片31が設けられていることで、区画貫通部15における開口13Cが大きく、複数の挿通体21を挿通させる状況に使用する場合でも、挿通体21を内部に挿通させることができる。スリット30は、単なる切込みであってもよいが、所定の幅を有する長孔状のものであってもよい。
【0018】
本実施形態に係るシート状部材3は、互いが平行であるスリット30が多数設けられ、複数の帯状片31が設けられている。具体的に、本実施形態に係るシート状部材3は、
図2に示すように、互いが平行であるスリット30を20本有し、21個の帯状片31が設けられ、櫛形状を形成している。帯状片31の自由端31Bは、変位又は変形可能であり、帯状片31に挿通体21を挿通させることで、固定端31Aから自由端31Bへ延伸する方向Dが挿通体21により曲げられる。帯状片31は、挿通体21と接触した場合、挿通体21を避けるように、固定端31Aから自由端31Bへ延伸する方向Dが同一平面(XY平面)内で曲げられる。曲げられた帯状片31は、他の帯状片31と重ねて配置することができる。この様に、帯状片31は、同一平面(XY平面)内で曲げられて重ねて配置されるので、
図1に示すように、仕切り部11の外面11Aに沿うように配置されることになる。
よって、本実施形態に係るシート状部材3は、
図3に示すように、挿通体21及び開口13Cを覆うように配置することで、スリット30が設けられ、帯状片31が形成されている箇所のいずれかに挿通体21を挿通させることができる。そして、シート状部材3に挿通体21を挿通させることで、
図4に示すように、帯状片31が挿通体21を避けるように曲げられて、挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐ。帯状片31が挿通体21を避けるように曲げられて、挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐことで、仕切り部11の開口13Cの一部を塞ぐことができ、耐火性能を向上させることができる。なお、
図4に示すように、挿通体21が、配管及びケーブル等の単体の挿通部材21Aと配管及びケーブル等の複数がまとめられた複合挿通部材21Bの両方が挿通される態様で、区画貫通部15における開口13Cが大きい場合でも、挿通体21をシート状部材3の内部に挿通させ、シート状部材3の挿通箇所3Aが挿通体21に追従して挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐことができる。複合挿通部材21Bとしては、複数のケーブルをまとめるカプラー及びケーブルラック等が挙げられる。
【0019】
スリット30が設けられ、帯状片31が形成されていることによって挿通体21が挿入されたシート状部材3は、
図1に示すように、仕切り部11の外側から、開口13Cと挿通体21の間の間隙13Eを覆うように、外面11Aに沿って配置され、それにより、開口13Cと挿通体21の間の間隙13Eの少なくとも一部がシート状部材3により塞がれる。シート状部材3は、仕切り部11の外面11A及び挿通体21の外周の両方に接するように配置されることが好ましい。シート状部材3が、挿通体21及び仕切り部11に接するように設置されることで、仕切り部11の開口13Cを塞ぐ程度を向上させることができ、耐火性能を向上させることができる。
【0020】
シート状部材3は、耐火材層(耐火材)及び不燃材料層(不燃材)の少なくともいずれかを有する。
シート状部材3に使用される耐火材層は、加熱により膨張する熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。熱膨張性部材は、後述するように熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、耐火材層は、粘着性を有してもよい。
なお、耐火材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。耐火材層がこれら上限値以下の厚みを有することで、シート状部材3に柔軟性が付与される。また、下限値以上の厚みを有することで、耐火性能を確保しやすくなる。
【0021】
シート状部材3は、耐火材層単層からなってもよいし、不燃材料層単層からなってもよいし、耐火材層及び不燃材料層の両方を有してもよい。また、シート状部材3は、耐火材層及び不燃材料層以外の層を有してもよく、そのような層としては、例えば、基材層、粘着剤層などが挙げられる。
【0022】
シート状部材3は、例えば、粘着性を有する耐火材層を有するか、又は粘着剤層を有してもよい。粘着性を有する耐火材層、及び粘着剤層は、シート状部材3において最外面を構成するとよい。すなわち、シート状部材3は、内側(すなわち、仕切り部11側)に粘着性を有する耐火材層、及び粘着剤層の少なくともいずれかを有するとよい。
以上の構成により、シート状部材3とは別部材としての固定部材を使用しなくても、シート状部材3を仕切り部11に固定させることができる。また、耐火材層自体に粘着性を持たせることで、粘着剤層を設けなくてもよいので、シート状部材3の構成をより簡素化できる。耐火材層は、ブチルゴム等により形成することで粘着性を付与することができる。なお、シート状部材3は、その最外面に粘着性を有する耐火材層、又は粘着剤層が設けられる場合、その最外面に剥離シートが貼付されてもよい。剥離シートは、使用時に最外面から剥離されるとよい。
また、シート状部材3は、タッカー、ビスなどのシート状部材3とは別部材である固定部材によって仕切り部11に固定させることができる。これら固定部材は、シート状部材3の外側(すなわち、仕切り部11とは反対側)に設置されるとよい。
もちろん、これらの2以上の組み合わせにより、シート状部材3は、仕切り部11に固定されてもよい。
【0023】
シート状部材3に使用される不燃材料層は、不燃材料で構成される。不燃材料とは、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。不燃材料層としては、具体的には、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体等の金属箔複合体が挙げられる。これらのなかでは、防火性の観点からアルミガラスクロスが好ましい。
不燃材料層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。不燃材料層がこれら上限値以下の厚みを有することで、シート状部材3に柔軟性が付与される。また、下限値以上の厚みを有することで、耐火性能を確保しやすくなる。
【0024】
基材層を構成する基材としては、紙、布、樹脂フィルムなどが挙げられる。基材の厚みは、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
粘着剤層は、粘着剤により形成されるとよく、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。粘着剤層は、不燃性、準不燃性、又は難燃性であってもよく、使用する粘着剤に難燃剤などを配合してもよい。粘着剤層の厚みは、例えば5~400μm、好ましくは10~150μmである。
【0025】
シート状部材3の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。
【0026】
シート状部材3は、多層構造の場合、2層構造を有してもよいし、3層又はそれ以上の構造を有してもよい。2層構造としては、例えば、不燃材料層/耐火材層、不燃材料層/粘着剤層、耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層、基材/不燃材料層などの構造を有するものが挙げられる。
また、3層構造は、粘着剤層を有するものとして、不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。また、3層構造としては、不燃材料層/基材/耐火材層、基材/不燃材料層/耐火材層、基材/耐火材層/不燃材料層などの粘着剤層が設けられないものも挙げられる。
また、4層以上の構造としては、上記粘着剤層が設けられない3層構造の最外層としてさらに粘着剤層が設けられたものなどが挙げられる。代表的には、粘着剤層/不燃材料層/基材/耐火材層、不燃材料層/基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。
また、以上の多層構造においては、互いに隣接する、不燃材料層と耐火材層、不燃材料層と基材、耐火材層と基材は、公知の接着剤により接着されてもよく、したがって、上記各積層構造において、上記各層の間には接着剤層が設けられてもよい。
なお、多層構造において、シート状部材3は、その全体において同じ層構成を有していてもよいが、部分的に異なる構造を有してもよい。例えば、粘着剤層が、シート状部材3の一部に設けられ、一部が単層構造で、一部が多層構造でもよい。
【0027】
シート状部材3は、発泡層が積層される構造としてもよい。発泡層は、内層に積層されてもよく、最外層に積層されてもよい。発泡層は、シート状部材3に柔軟性を付与し、シート状部材3を設置された箇所に維持されるための追従性を向上させることができる。
発泡層の材質は、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン及び発泡ポリウレタン等が挙げられる。発泡層の材質は、難燃剤などを含有させて、難燃性発泡層としてもよい。
【0028】
〔カバー部材〕
本実施形態に係る区画貫通処理材は、
図5に示すように、区画貫通部15の開口13Cを覆うカバー部材5を備える構成とすることができる。カバー部材5は、シート状部材3の少なくとも一部を覆うように固定されている。カバー部材5は、シート状であり、かつ、変形できることで、シート状部材3を容易に覆うことが可能である。
【0029】
カバー部材5は、シート状部材3と挿通体21の間に生じる間隙を覆うように設置し、シート状部材3の少なくとも一部を覆うように固定するとよい。カバー部材5がシート状部材3と挿通体21の間に生じる間隙を覆うように設置されることで、仕切り部11の開口13Cを塞ぐことができ、耐火性能を向上させることができる。
【0030】
カバー部材5は、一端側が挿通体21を接するように包囲し、かつ外側(すなわち、挿通体21とは反対側)から巻かれた紐状部材22によって挿通体21に固定される。紐状部材22は、曲げることができる部材であればよく、ワイヤを含むワイヤ部材であることが好ましい。ワイヤ部材は、金属製のワイヤ単独でもよいし、ねじりっこ(登録商標)などの金属製のワイヤを樹脂で被覆した樹脂被覆ワイヤ、モールなどと呼ばれるワイヤと繊維を絡ませたものなどでもよい。ワイヤ部材を使用すると、ひねったり、ねじったりするだけで、カバー部材5を挿通体21に固定できる。
また、カバー部材5は、一端側が挿通体21を接するように包囲し、かつ外側(すなわち、挿通体21とは反対側)から巻かれた粘着テープによって挿通体21に固定される。粘着テープは、基材と基材の一方の面に設けられた粘着剤層を有するとよい。基材としては、紙、樹脂フィルム、布などが使用できるし、上記した不燃材料を使用してもよい。また、粘着剤層としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。また、粘着剤には、公知の難燃剤などを配合してもよい。
また、カバー部材5は、一端側が挿通体21を接するように包囲し、かつ外側(すなわち、挿通体21とは反対側)から設置されたタッカー、ビスなどの固定部材によって挿通体21に固定されてもよい。
【0031】
カバー部材5は、他端側がシート状部材3の少なくとも一部を覆うように配置され、かつ外側(すなわち、シート状部材3とは反対側)から設置されたタッカー、ビスなどの固定部材によって仕切り部11又はシート状部材3に固定される。
また、カバー部材5は、他端側がシート状部材3の少なくとも一部を覆うように配置され、シート状部材3の表面の少なくとも一部に配置された粘着剤層によって、シート状部材3に固定されてもよい。
【0032】
カバー部材5は、シート状部材3の一部を覆い、シート状部材3の一部を外部から視認不可能とするとよい。具体的には、シート状部材3の挿通体21が挿通される部分を覆うとよく、それにより、区画貫通部15のデザイン性を良好とすることができ、かつ、区画貫通部15の耐火性能を向上させることができる。カバー部材5は、シート状部材3の全体を覆い、シート状部材3の全体を外部から視認できないようにしてもよい。
【0033】
カバー部材5は、
図5に示すように、シート状部材3との間に空隙40を形成するように設置する。シート状部材3とカバー部材5との間に空隙40があることで、カバー部材5は、挿通体21の軸方向の動きに対する裕度を持って固定される。カバー部材5が裕度を持って挿通体21に固定されることで、シート状部材3及びカバー部材5の設置後に、シート状部材3及びカバー部材5の内側に配置された挿通体21を軸方向に動かした場合であっても、カバー部材5の裕度によってシート状部材3及びカバー部材5が挿通体21と一緒に動いてしまうことを緩衝する。シート状部材3及びカバー部材5が挿通体21と一緒に動いてしまうことを緩衝することで、シート状部材3及びカバー部材5が区画貫通部15からずれることを抑制することができる。つまり、このような構成とすることで、シート状部材3及びカバー部材5を区画貫通部15における適切な位置に維持して配置し続けることができ、区画貫通部15の耐火性を維持することができる。
シート状部材3とカバー部材5との間に空隙40があり、カバー部材5が挿通体21の軸方向の動きに対して裕度を持って固定される構成としては種々の形態を取り得る。例えば、カバー部材5の少なくとも一部が屈曲ないし湾曲できるような柔軟性や伸縮性を有する材料による構成、及び、カバー部材5の少なくとも一部が挿通体21に対してたるみを有するように固定する構成等が挙げられる。
【0034】
カバー部材5は、耐火材層単層からなってもよいし、不燃材料層単層からなってもよいし、耐火材層及び不燃材料層の両方を有してもよいが、不燃材料層を有することが好ましく、不燃材料層からなることがより好ましい。また、耐火材層及び不燃材料層以外の層を有してもよく、そのような層としては、例えば、不燃材料以外の材料より構成される材料層、粘着剤層などが挙げられる。
カバー部材5としては、好ましくは、アルミニウム箔などの金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体である金属箔複合体などが挙げられる。これらは不燃材料層を構成する。これらのなかでは、耐火性の観点からアルミガラスクロスがより好ましい。
不燃材料層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。不燃材料層がこれら上限値以下の厚みを有することで、カバー部材5に柔軟性が付与される。したがって、カバー部材5は、例えば、不燃材料層を有していても、挿通体21の外周に密着させながら巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、耐火性能を確保しやすくなる。
【0035】
カバー部材5は、上記のとおり、シート状部材3を覆うように変形可能なシートであるとよいが、柔軟性が付与され、変形が容易なようにシート状部材3よりも厚みが小さいことが好ましい。カバー部材5の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
【0036】
カバー部材5に使用される耐火材層は、加熱により膨張する熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。熱膨張性部材は、後述するように熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、耐火材層は、粘着性を有してもよい。
なお、耐火材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。耐火材層がこれら上限値以下の厚みを有することで、カバー部材5に柔軟性が付与される。したがって、カバー部材5が耐火材層を有していても、挿通体21の外周に巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、耐火性能を確保しやすくなる。
【0037】
カバー部材5は、粘着性を有する耐火材層を有するか、又は粘着剤層を有してもよい。粘着性を有する耐火材層、及び粘着剤層は、カバー部材5において最外面を構成するとよい。
以上の構成により、カバー部材5とは別部材としての固定部材を使用しなくても、カバー部材5をシート状部材3又は挿通体21に固定させることができる。また、耐火材層自体に粘着性を持たせることで、粘着剤層を設けなくてもよいので、カバー部材5の構成をより簡素化できる。
なお、カバー部材5は、その最外面に粘着性を有する耐火材層、又は粘着剤層が設けられる場合、その最外面に剥離シートが貼付されてもよい。剥離シートは、使用時に最外面から剥離されるとよい。
【0038】
(熱膨張性樹脂組成物)
以下、耐火材層などの耐火材に使用される熱膨張性樹脂組成物についてより詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と、熱膨張性材料を含有する。熱膨張性部材が、樹脂成分を含有する熱膨張性樹脂組成物により形成されることで、シート状部材3及びカバー部材5の湾曲や変形が容易となる。
熱膨張性材料としては、加熱することにより発泡する発泡剤、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性層状無機物が挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性黒鉛を使用することで、火災の加熱により適切に膨張され、また、膨張後の膨張残渣の機械強度が優れ、耐火性を良好にしやすくなる。なお、ここでいう熱膨張性材料とは、後述する成形などによって実質的に膨張せず、熱膨張性樹脂組成物は、耐火材において熱膨張性が維持される。
【0039】
熱膨張性材料の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以下とすることで、火災以外の加熱により、熱膨張性材料が誤って膨張することを防止する。また、上限値以下とすることで、火災の加熱により確実に熱膨張性材料を膨張させやすくなる。
また、熱膨張性材料の膨張開始温度は、所定量(例えば、100mg)の熱膨張性材料を一定の昇温速度(例えば、10℃/分)で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、かつ法線方向の応力を測定できるものであればよく、例えばレオメーターを使用すればよい。
熱膨張性部材の膨張倍率は3倍以上であることが好ましく、10倍以上が好ましい。膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば70倍、好ましくは50倍である。シート状部材に膨張倍率が異なる複数の耐火材層が積層されている場合、膨張倍率は上記範囲内で選択するとよい。なお、膨張倍率は、熱膨張性部材を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)により算出するとよい。
【0040】
以下、熱膨張性材料が、熱膨張性黒鉛である場合の熱膨張性樹脂組成物について詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0041】
エラストマーの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等のゴムが挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、および塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
また、熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分としてエラストマーを使用することで粘着性を有しやすくなる。また、粘着性を発現しやすくする観点から、エラストマーは液状エラストマーを含有することが好ましい。なお、液状エラストマーとは、常温、常圧で液体となるエラストマーである。
【0043】
熱膨張性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂である場合に好ましく使用される。可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
熱膨張性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲である。
可塑剤は、これら下限値以上とすると、成形性が良好になりやすく、上限値以下となると、成形体に適度な強度が付与される。
【0044】
樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、熱膨張性部材の成形性などを良好にできる。また、柔軟性を確保して、湾曲や変形が容易となる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填材などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
【0045】
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものなども使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0046】
熱膨張性黒鉛の粒度は、特に限定されないが、20~200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度は、下限値以上となると黒鉛の膨張度が大きくなりやすく、発泡性が良好になる。また、上限値以下とすることで、樹脂と混練する際の分散性が良好となり、成形性が向上する。
【0047】
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば3質量部以上300質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量は、3質量部以上となることで、熱膨張性が良好となる。また、300質量部以下となることで、成形性が良好となり、シール部材の表面性、機械的物性、柔軟性なども良好となる。また、熱膨張性黒鉛の含有量を上記範囲内で選択することで、膨張倍率を所望の範囲内に調整しやすくなる。これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは10質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは15質量部以上100質量部以下の範囲である。
【0048】
熱膨張性樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、一般に熱膨張性樹脂組成物に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填材を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における無機充填材の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましく3質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは10質量部以上150質量部以下の範囲である。
【0049】
熱膨張性樹脂組成物は、公知の粘着付与剤を含有してもよい。粘着付与剤を含有することで、熱膨張性部材に粘着性を付与しやすくなる。
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等の熱膨張性樹脂組成物に一般的に使用される添加剤が添加されてもよい。これらの中では加工助剤を使用することが好ましい。
【0050】
熱膨張性部材は、例えば下記のようにして製造することができる。まず、所定量の樹脂成分、熱膨張性材料、及びその他の必要に応じて配合される添加剤を、混練ロールなどの混合機で混合して、熱膨張性樹脂組成物を得る。熱膨張性樹脂組成物は、適宜溶剤が添加されて、希釈されてもよい。
必要に応じて希釈された熱膨張性樹脂組成物は、基材、剥離シートなどの支持体に塗布し、適宜乾燥、硬化などされて、支持体の一方の面上に耐火材層(熱膨張性部材)が形成されるとよい。また、押出成形など公知の方法により支持体の一方の面上に耐火材層が形成されてもよい。剥離シート上に形成された耐火材層は、剥離シートから剥離することで、耐火材層単層からなるシート状部材とするとよい。そして、剥離シートから剥離した後に別の層上に積層することで、多層構造のシート状部材を得るとよい。また、剥離シート上、又は他の支持体上に積層された状態のまま、他の層に積層されてもよい。
【0051】
本実施形態における区画貫通処理構造10の施工方法は、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの少なくとも一部を塞ぐように上述したシート状部材3を設置する工程を含む。ここで、設置されるシート状部材3には、上記の通り、内部から外縁3Aまで到達し、互いが平行である2以上のスリット30が設けられ、スリット30により分割された領域は、一端が固定端31Aで、他端が自由端31Bである帯状片31を形成する。したがって、本施工方法によれば、シート状部材3が仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐように設置され、シート状部材3の帯状片31が曲げ可能に設けられていることで、帯状片31の間を挿通体21が通るように、挿通させることができるので、間隙を効率よく塞ぐことができ、耐火性能を向上させることができる。
また、開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの少なくとも一部を塞ぐようにカバー部材5を設置することで、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙をさらに塞ぐことができ、間隙の全て塞ぐことで、挿通体21が挿通される区画貫通部15を耐火構造として施工できる。したがって、その施工が容易である。
【0052】
以上の本実施形態の構成によれば、区画貫通部15の開口13C内部の間隙13Eが、シート状部材3により塞がれ、かつシート状部材3が耐火材を有する。したがって、区画貫通部処理構造10に適切な耐火性能を付与できる。
また、本実施形態では、挿通体21が挿通される区画貫通部15における開口13Cが大きい場合でも、挿通体21をシート状部材3の内部に挿通させ、帯状片31が設けられている箇所のいずれかに挿通体21を挿通させることで、帯状片31が挿通体21により曲げられることで、挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐことができ、耐火性能を向上させることができる。
また、本実施形態では、耐火パテ、ロックウールなどの充填材を区画貫通部15の内部に配置することなく、シート状部材3及びカバー部材5により耐火構造が形成されるので、作業者によるバラつきが生じることもない。
【0053】
さらに、本実施形態では、少なくともシート状部材3及びカバー部材5の少なくとも一部が露出しており、外部から視認可能である。また、シート状部材3やカバー部材5を固定するための固定部材が設けられる場合、固定部材も外部から視認可能な位置に配置するとよい。そのため、区画貫通処理材は、規定通り施工されたことが目視や写真撮影により簡単に点検できる。また、施工忘れなども発生にくくなる。
【0054】
[第1の実施形態の変形例1]
次に、本発明の第1の実施形態の変形例1について詳細に説明する。第1の実施形態の変形例1において、第1の実施形態と相違する点は、
図6に示すように、シート状部材3とカバー部材5との空隙40に、耐火材41が配置される。
【0055】
耐火材41は、耐火性を有する部材であり、仕切り部11の区画貫通部15に耐火性を付与する。耐火材41としては、熱膨張性部材、パテ、グラスウール及びモルタル等が挙げられ、熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、前述した熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、耐火材41は、粘着性を有してもよい。
【0056】
[第1の実施形態の変形例2]
次に、本発明の第1の実施形態の変形例2について詳細に説明する。第1の実施形態の変形例2において、第1の実施形態と相違する点は、
図7に示すように、区画貫通処理材がテープ状部材6を備える構成である。
【0057】
〔テープ状部材〕
テープ状部材6は、
図7に示すように、挿通体21の外周に一周以上巻き付けられた状態で配置される。これにより、テープ状部材6には端面6Aが形成され、端面6Aは、開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの少なくとも一部又は全部を塞ぐことが可能となる。テープ状部材6は、端面6Aがシート状部材3の少なくとも一部を覆うように、挿通体21の外周に一周以上巻き付けられた状態となることで、端面6Aがシート状部材3と協働して、開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの一部又は全部を塞ぐことが可能となる。
【0058】
テープ状部材6は、不燃材料層及び耐火材層の少なくともいずれかを有する。これにより、区画貫通処理構造10は、防火性能を確保でできる。
テープ状部材6に使用される耐火材層は、加熱により膨張する熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。熱膨張性部材は、上述した熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、耐火材層は、粘着性を有してもよい。
なお、テープ状部材6における耐火材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。耐火材層がこれら上限値以下の厚みを有することで、テープ状部材6に柔軟性が付与される。したがって、例えば、テープ状部材6が耐火材層を有していても、挿通体21の外周に密着させながら巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
【0059】
テープ状部材6は、耐火材層単層からなってもよいし、不燃材料層単層からなってもよいし、耐火材層及び不燃材料層の両方を有してもよい。また、耐火材層及び不燃材料層以外の層を有してもよく、そのような層としては、例えば、基材、粘着剤層などが挙げられる。
【0060】
テープ状部材6は、粘着性を有する耐火材層を有するか、又は粘着剤層を有してもよい。粘着性を有する耐火材層、及び粘着剤層は、テープ状部材6において最外面を構成するとよい。
以上の構成により、テープ状部材6とは別部材としての固定部材を使用しなくても、テープ状部材6を挿通体21に固定させることができる。また、耐火材層自体に粘着性を持たせることで、粘着剤層を設けなくてもよいので、テープ状部材6の構成をより簡素化できる。
なお、テープ状部材6は、その最外面に粘着性を有する耐火材層、又は粘着剤層が設けられる場合、その最外面に剥離シートが貼付されてもよい。剥離シートは、使用時に最外面から剥離されるとよい。
【0061】
テープ状部材6に使用される不燃材料層は、不燃材料で構成される。不燃材料とは、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。不燃材料層としては、具体的には、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体である金属箔複合体などが挙げられる。これらのなかでは、防火性の観点からアルミガラスクロスが好ましい。
不燃材料層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。不燃材料層がこれら上限値以下の厚みを有することで、テープ状部材6に柔軟性が付与される。したがって、テープ状部材6は、例えば、不燃材料層を有していても、挿通体21の外周に密着させながら巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
【0062】
基材層として使用される基材は、上記した不燃材料以外であり、紙、布、樹脂フィルムなどが挙げられる。基材の厚みは、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
粘着剤層は、粘着剤により形成されるとよく、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。粘着剤層は、不燃性、準不燃性、又は難燃性であってもよく、使用する粘着剤に難燃剤などを配合してもよい。粘着剤層の厚みは、例えば5~400μm、好ましくは10~150μmである。
【0063】
テープ状部材6の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。
【0064】
テープ状部材6は、多層構造の場合、2層構造を有してもよいし、3層又はそれ以上の構造を有してもよい。2層構造としては、例えば、不燃材料層/耐火材層、不燃材料層/粘着剤層、耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層、基材/不燃材料層などの構造を有するものが挙げられる。
また、3層構造は、粘着剤層を有するものとして、不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。また、3層構造としては、不燃材料層/基材/耐火材層、基材/不燃材料層/耐火材層、基材/耐火材層/不燃材料層などの粘着剤層が設けられないものも挙げられる。
また、4層以上の構造としては、上記粘着剤層が設けられない3層構造の最外層としてさらに粘着剤層が設けられたものなどが挙げられる。代表的には、粘着剤層/不燃材料層/基材/耐火材層、不燃材料層/基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。
また、以上の多層構造においては、互いに隣接する、不燃材料層と耐火材層、不燃材料層と基材、耐火材層と基材は、公知の接着剤により接着されてもよく、したがって、上記各積層構造において、上記各層の間には接着剤層が設けられてもよい。
なお、多層構造において、テープ状部材6は、その全体において同じ層構成を有していてもよいが、部分的に異なる構造を有してもよい。例えば、粘着剤層が、テープ状部材6の一部に設けられ、一部が単層構造で、一部が多層構造でもよい。
【0065】
挿通体21の外周に巻き付けられたテープ状部材6は、挿通体21に密着するとよく、挿通体21の形状に合わせて適宜変形させるとよい。また、テープ状部材6は、挿通体21の外周面に固定される。ここでテープ状部材6は、テープ状部材6の内周側に配置される粘着剤層又は耐火材層などによって挿通体21の外周面に固定されてもよい。また、テープ状部材6は、テープ状部材6とは別に設けられた固定部材により挿通体21に固定されてよい。そのような固定部材としては、例えば、テープ状部材6の外周側から巻かれた紐状部材、又は粘着テープが挙げられる。また、これらの2以上の組み合わせにより、テープ状部材6は、挿通体21に固定されてもよい。
【0066】
[第1の実施形態の変形例3]
次に、本発明の第1の実施形態の変形例3について詳細に説明する。第1の実施形態の変形例2において、第1の実施形態と相違する点は、
図8に示すように、帯状片31が挿通体21を避けるように曲げられて、挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞いでも、帯状片31と挿通体21との間に間隙がある場合、充填材7を間隙に充填する構成である。
【0067】
充填材7を帯状片31と挿通体21との間の間隙に充填する場合には、シート状部材3が支持体として充填材7を支持する。
充填材7は、耐火性を有する部材であり、仕切り部11の区画貫通部15に耐火性を付与する。充填材7としては、熱膨張性部材、パテ、グラスウール及びモルタル等が挙げられ、熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、後述する熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、充填材7は、粘着性を有してもよい。
【0068】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、
図9に示すように、シート状部材3が2つ重ねて配置される構成である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0069】
本実施形態に係る2つのシート状部材3(3
1,3
2)は、
図9に示すように、1つのシート状部材3
1を第1の実施形態で示したように、挿通体21及び開口13Cを覆うように配置し、別のシート状部材3
2も同様に、挿通体21及び開口13Cを覆うように、シート状部材3
1に重ねて配置する。ここで、2つのシート状部材3(3
1,3
2)は、1つのシート状部材3
1の帯状片31の固定端31Aから自由端31Bへ延伸する方向D
1と、別のシート状部材3
2の帯状片31の固定端31Aから自由端31Bへ延伸する方向D
2とが互いに違えるように、重ねて配置される。シート状部材3
1の延伸する方向D
1と、シート状部材3
2の延伸する方向D
2とが違えるように、重ねて配置されることで、
図10に示すように、2つのシート状部材3(3
1,3
2)のそれぞれが塞ぐ挿通体21との間の間隙が異なるので、それぞれが塞ぐ事ができなかった挿通体21との間の間隙を、互いに補完して塞ぐことが可能となる。シート状部材3
1の延伸する方向D
1と、シート状部材3
2の延伸する方向D
2とは、
図9に示すように、対向する関係となるように重ねて配置することで、それぞれが塞ぐことができなかった挿通体21との間の間隙を、効率よく互いに補完して塞ぐことが可能となるので好ましい。なお、延伸する方向D
1と、延伸する方向D
2は、互いに平行で、且つ逆方向であるとよいが、特に限定されない。
【0070】
本実施形態に係るシート状部材3は、2つに限定されず、2つ以上重ねて配置される構成とすることができる。シート状部材3を2つ以上重ねて配置される構成であっても、各シート状部材3の帯状片31の延伸する方向Dが互いに違えるように、重ねて配置される構成とするとよい。例えば、シート状部材3を4つ重ねて配置される構成である場合、シート状部材3の帯状片31の延伸する方向Dがそれぞれ直交する関係となるように重ねて配置するとよい。
【0071】
以上の本実施形態の構成によれば、区画貫通部15の開口13C内部の間隙13Eが、シート状部材3により塞がれ、かつシート状部材3が耐火材を有する。したがって、区画貫通部処理構造10に適切な耐火性能を付与できる。
また、本実施形態では、挿通体21が挿通される区画貫通部15における開口13Cが大きい場合でも、挿通体21をシート状部材3の内部に挿通させ、帯状片31が設けられている箇所のいずれかに挿通体21を挿通させることで、帯状片31が挿通体21により曲げられることで、挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐことができ、耐火性能を向上させることができる。
また、本実施形態では、耐火パテ、ロックウールなどの充填材を区画貫通部15の内部に配置することなく、シート状部材3及びカバー部材5により耐火構造が形成されるので、作業者によるバラつきが生じることもない。
【0072】
[その他の実施形態]
本発明は、以上の第1及び第2の実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない限りいかなる改良、変更を行ってもよい。
【0073】
例えば、上記各実施形態において、挿通体21と接触した場合の帯状片31は、挿通体21を避けるように、固定端31Aから自由端31Bへ延伸する方向Dが同一平面(XY平面)内で曲げられる態様を示したが、挿通体21と接触した場合の帯状片31の曲がり方は、これに限られない。具体的には、固定端31Aから自由端31Bへ延伸する方向Dが同一平面(XY平面)内で曲げられるように、帯状片31の一部が、裏返されるように折り曲げられる形態としてもよい。例えば、
図12に示される挿通体21Bのように、挿通体が延伸方向の垂直方向(x方向)に長い場合には、挿通体21Bを避けるように曲げることが難しくなるが、上記の通りに裏返すように折り曲げることで、帯状片31を容易に外面11Aに沿わすことができる。
この形態においても、
図13に示すように、帯状片31と挿通体21との間に間隙がある場合、充填材7を間隙に充填する構成とすることができる。
また、第2の実施形態で示したように、この形態におけるシート状部材3が2つ重ねて、
図14及び
図15で示すような配置の構成としてもよい。そして、この形態におけるシート状部材3が2つ重ねて配置した構成においても、
図16で示すように、帯状片31と挿通体21との間に間隙がある場合、充填材7を間隙に充填する構成とすることができる。
【0074】
また、上記各実施形態において区画貫通処理材は、区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間に、耐火材及び不燃材の少なくともいずれかの耐火不燃材60が配置される構成とすることができる。その具体例として、第1の実施形態の変形例を
図17に示す。
図17に示す構成では、耐火不燃材60としてブロック状不燃材が使用され、そのブロック状不燃材が、開口13Cと挿通体21との間に配置されるとよい。耐火不燃材60は、タッカー、ビスなどの留付材によって開口13C及び挿通体21のいずれかに固定され、固定された位置に留められるとよい。
耐火不燃材60としては、不燃材で形成された板状不燃材及びブロック状不燃材を使用することができる。耐火不燃材60は、上記の通り、加熱により膨張する熱膨張性部材からなることが好ましく、中でも熱膨張性樹脂組成物より形成されることが好ましい。
【0075】
また、上記各実施形態において、各スリット30は、互いに同じ長さであってもよく、互いに長さが異なってもよい。
【0076】
また、以上の説明では、カバー部材5とテープ状部材6を別々に採用した構成を示したが、カバー部材5及びテープ状部材6を一緒に採用した構成としてもよい。
【0077】
また、以上の説明では、仕切り部11は、内部に中空部13がある中空壁であったが、中空壁に限定されず、中空が設けられない壁であってもよく、例えば1枚の壁材からなるものでもよい。また、仕切り部11は、建築物の壁に限定されず、建築物の天井、床であってもよい。仕切り部は、天井、床の場合でも、2枚の仕切り材の間に中空部を有する構造であってもよいし、中空部がない構造であり、例えば1枚の仕切り材から構成されてもよい。
【0078】
また、以上の各実施形態では、仕切り部11の両方の開口13C,13D(すなわち、仕切り部11の両側)に、いずれも同じ構造の区画貫通処理材が設けられることを前提に説明したが、各開口13C,13Dには、別の構造の区画貫通処理構造が設けられてもよい。例えば、一方の開口13Cに第1の実施形態に係る区画貫通処理構造が設けられ、他方の開口13Dに第2の実施形態に係る区画貫通処理構造が設けられてもよい。また、開口13Dにおける区画貫通処理材が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
3 シート状部材
5 カバー部材
6 テープ状部材
7 充填材
10 区画貫通処理構造
11 仕切り部
12A,12B 壁材
13 中空部
13A,13B 貫通孔
13C,13D 開口
13E 間隙
15 区画貫通部
21 挿通体
22 紐状部材
30 スリット
31 帯状片
31A 固定端
31B 自由端
40 空隙
41 耐火材
60 耐火不燃材