(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134012
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】セラミック部材
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240926BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240926BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044077
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】東出 竜輔
(72)【発明者】
【氏名】澤田 健行
(72)【発明者】
【氏名】岩下 大輝
(72)【発明者】
【氏名】戸部 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 諭史
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038EA011
4J038HA066
4J038HA386
4J038NA27
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】意匠性と抗菌性及び抗ウイルス性とを両立したセラミック部材の提供。
【解決手段】銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子が分散された、熱により硬化してなる塗膜をセラミック基材上に備え、前記塗膜の銀濃度が、前記塗膜の固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下である、セラミック部材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子が分散された、熱により硬化してなる塗膜をセラミック基材上に備え、前記塗膜の銀濃度が、前記塗膜の固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下である、セラミック部材。
【請求項2】
前記塗膜における前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子における前記銀の含有量が、Ag2O換算で、前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子の合計100質量部に対して、3質量部以上20質量部未満である、請求項1に記載のセラミック部材。
【請求項3】
前記塗膜は、前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子及び有機バインダーを含む熱硬化性塗膜形成用有機組成物を熱により硬化してなる塗膜である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項4】
前記塗膜は、前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子及び無機バインダーを含む熱硬化性塗膜形成用無機組成物を熱により硬化してなる塗膜である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項5】
前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子の平均粒子径が0.3μm以上10μm以下である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項6】
前記塗膜の厚さが1μm以上20μm以下である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項7】
前記塗膜による前記セラミック基材の表面の被覆率が5%以上である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項8】
前記セラミック基材上に前記塗膜を形成する前後の色差ΔEが3未満である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項9】
ISO 21702:2019によるインフルエンザウイルス又はネコカリシウイルスのいずれか1種以上の試験ウイルスを含むウイルス液との24時間接触後の抗ウイルス活性値RV≧2.0である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項10】
一般社団法人 抗菌製品技術協議会が定める耐水性試験区分1の耐水性試験後のISO 21702:2019によるインフルエンザウイルス又はネコカリシウイルスのいずれか1種以上の試験ウイルスを含むウイルス液との24時間接触後の抗ウイルス活性値RV≧2.0である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項11】
一般社団法人 抗菌製品技術協議会が定める耐光性試験区分1の耐光性試験後のISO 21702:2019によるインフルエンザウイルス又はネコカリシウイルスのいずれか1種以上の試験ウイルスを含むウイルス液との24時間接触後の抗ウイルス活性値RV≧2.0である、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【請求項12】
タイルである、請求項1又は2に記載のセラミック部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミック部材に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面台やトイレ等に用いられるセラミック部材の表面には、菌による汚れを防止するために、抗菌性を有することが求められている。これまでに、抗菌性を有するために、セラミック部材の表面に抗菌性を付与できる抗菌剤が提案されてきた。
【0003】
特許文献1には、100kg/cm2の加圧状態で測定される体積抵抗率が105Ω・cm以下である導電性の付与された酸化亜鉛微粒子から実質的になることを特徴とする抗菌・防黴剤が開示され、さらに、この抗菌・防黴剤は、天然繊維、合成繊維、天然皮革、合成皮革、紙、フィルム、樹脂、塗料等の各種工業材料や工業製品に対して抗菌性や防黴性を付加する為の添加剤として好適に利用することができることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性酸化亜鉛を基材表面に定着させただけでは、基材表面に導電性酸化亜鉛粒子が分散状に存在するだけであり、抗菌性能が低い。また、導電性酸化亜鉛粒子が基材表面から脱落し易い。導電性酸化亜鉛等の抗菌剤をタイル表面にショットピーニングすることも知られているが、集塵ロスが多いため、抗菌剤の消費量が多く、経済的でない。さらに、導電性酸化亜鉛粒子が基材表面に存在することにより抗菌性付与前後で色差ΔEが大きくなり、意匠性が損なわれるおそれがある。
【0006】
導電性酸化亜鉛を合成樹脂や塗料中に混入させた場合、基材内部に存在する導電性酸化亜鉛は抗菌作用に全く又は殆ど寄与しない。抗菌作用を強くするためには導電性酸化亜鉛を多量に添加する必要があるが、このように導電性酸化亜鉛を多量に添加したのでは、塗膜の形成前後で色差ΔEが大きくなって意匠性が損なわれたり、基材の特性が損なわれたりするおそれがある。
【0007】
また、特許文献1に記載された抗菌・防黴剤は抗菌性を有している一方で、抗ウイルス性は有していない。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたもので、意匠性と抗菌性及び抗ウイルス性とを両立したセラミック部材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のセラミック部材は、銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子が分散された、熱により硬化してなる塗膜をセラミック基材上に備える。前記塗膜の銀濃度は、前記塗膜の固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示についてさらに詳細に説明する。
【0011】
本開示のセラミック部材は、銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子が分散された、熱により硬化してなる塗膜をセラミック基材上に備え、前記塗膜の銀濃度は、前記塗膜の固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下である。このセラミック部材では、前記塗膜中に前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子が分散しており、塗膜の透明性が高く、基材表面に銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子が満遍なく存在するので、優れた意匠性を有するとともに、優れた抗菌性及び抗ウイルス性を有する。
【0012】
本開示のセラミック部材において、意匠性は、CIE1976 L*a*b*色差式で数値化した色差ΔE*abによって評価する。CIE1976(CIELUVともいう)は、国際照明委員会(CIE)が1976年に採択した色空間である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ΔE*abを単にΔEと表記する場合がある。
【0013】
本開示のセラミック部材において、ΔE<3.0である場合に、優れた意匠性を有すると評価する。
【0014】
本開示のセラミック部材において、抗菌性は、SIAA(一般社団法人 抗菌製品技術協議会)が定める耐久性試験法(耐水性試験及び耐光性試験)により処理を行った後のセラミック部材に対して、ISO 22196:2011(対応JIS(日本産業規格) JIS Z 2801:2012)の抗菌性能試験方法を実施して抗菌活性値RBを求めて評価する。抗菌活性値RB≧2.0である場合に、優れた抗菌性を有すると評価する。
【0015】
本開示のセラミック部材において、抗ウイルス性は、SIAAの定める耐久性試験法により処理を行った後又は行う前のセラミック部材に対して、ISO 21702:2019の抗ウイルス性試験方法を実施してウイルス液との24時間接触後の抗ウイルス活性値RVを求めて評価する。抗ウイルス活性値RV≧2.0である場合に、優れた抗ウイルス性を有すると評価する。
【0016】
前記耐水性試験は、区分1(水がかかる程度の製品)の耐水性試験である。具体的には、SIAAの耐久性試験法(2021年度版)の耐水性試験の試験条件(水温:常温、浸漬時間:16時間から18時間)で加速試験を行う。
【0017】
前記耐光性試験は、区分1(光照射の機会が少ない製品(屋内で使用する製品等)の耐光性試験である。具体的には、SIAAの耐久性試験法(2021年度版)の耐光性試験の耐光性試験区分1の試験条件(キセノンランプ(波長300nmから400nmの範囲における放射照度の設定が60W/m2又はこの条件に相当する設定値)で10±0.5時間照射又はサンシャイン(波長300nmから700nmの範囲における放射照度が255W/m2±10.0)で8±0.4時間照射)で加速試験を行う。
【0018】
本開示のセラミック部材において、摩耗後抗ウイルス性は、摩耗試験後のセラミック部材に対して、ISO 21702:2019の抗ウイルス性試験方法を実施してウイルス液との24時間接触後の抗ウイルス活性値RVを求めて評価する。抗ウイルス活性値RV≧2.0である場合に、優れた抗ウイルス性を有すると評価する。
【0019】
本開示のセラミック部材において、前記セラミック基材は、ガラス製品(ガラス板、ガラス工芸品など)、タイル焼成素地(施釉、無釉)又は無釉タイル未焼成素地などのセラミック質の基材であれば特に限定されないが、無釉タイル焼成素地、施釉タイル焼成素地、及び無釉タイル未焼成素地からなる群から選択されるいずれか1種が好ましく、施釉タイル焼成素地がより好ましい。
【0020】
本開示のセラミック部材において、前記塗膜は、銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子が分散された、熱により硬化してなる塗膜である。
【0021】
前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子(以下、単に「銀担持リン酸ジルコニウム粒子」ともいう。)は、水熱合成により得られる結晶リン酸リチウムジルコニウム粒子中のリチウムを酸処理によりプロトンに置換し、さらにプロトンと銀イオンを置換後、乾燥し、高温で焼成し、結晶構造の一員として銀イオンを担持させることにより得られる。前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子は、経口急性毒性が低く、変異原性及び皮膚刺激性がいずれも陰性であることから、本開示のセラミック部材を抗菌抗ウイルス性タイルとして洗面所、浴室、トイレなどの構成材と使用する場合に極めて有利である。
【0022】
本開示のセラミック部材において、前記塗膜の銀濃度は、前記塗膜の固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下であり、0.1質量部以上1.7質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1.4質量部以下であることがより好ましい。前記塗膜における前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の含有量が上記範囲内であると、塗膜の透明性が高く意匠性を損なわないとともに、優れた抗菌性・抗ウイル性を発揮することができる。
【0023】
前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の銀の含有量(「銀担持量」という場合がある。)は、特に限定されないが、Ag2O換算で、前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の合計100質量部に対して、3質量部以上20質量部未満であることが好ましく、5質量部以上18質量部未満であることがより好ましく、7質量部以上16質量部未満であることがさらに好ましい。前記銀担持量が上記範囲内であると、より意匠性を損ないにくく、より優れた抗菌活性及び抗ウイルス活性が発揮される傾向がある。
【0024】
前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上1μm以下であることがさらに好ましい。前記銀担持リン酸ジルコニウムの平均粒子径が上記範囲内であると、より意匠性を損ないにくく、より優れた抗菌活性及び抗ウイルス活性が発揮される傾向がある。
【0025】
前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の平均粒子径は、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定器(NIKKISO マイクロトラックMT3000II)によって測定した平均粒子径である。
【0026】
前記塗膜の厚さは、特に限定されないが、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましく、1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。前記塗膜の厚さが上記範囲内であると、より意匠性を損ないにくく、より優れた抗菌活性及び抗ウイルス活性が発揮される傾向がある。
【0027】
前記塗膜を前記セラミック基材上に形成する方法、すなわち、本開示のセラミック部材の製造方法としては、前記セラミック基材の表面に、前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子及び有機バインダーを含む熱硬化性塗膜形成用有機組成物又は前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子及び無機バインダーを含む熱硬化性塗膜形成用無機組成物を塗布して塗布膜を形成し、前記塗布膜を熱により硬化する方法が挙げられる。
【0028】
前記熱硬化性塗膜形成用有機組成物は、前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子及び有機バインダーを含む。
【0029】
前記有機バインダーとしては、熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物又は熱硬化性ポリエステル樹脂組成物が好ましく、熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物がより好ましい。熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、例えばポリイソシアネート化合物及び/又はウレタンプレポリマーとポリオール化合物を含む混合物である。前記ポリオールとしてはポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオールがより好ましい。
【0030】
前記熱硬化性塗膜形成用有機組成物中の前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の含有量は、熱硬化性塗膜形成用有機組成物の固形分の合計100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下であり、12質量部以上75質量部以下であることが好ましく、15質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。前記前記熱硬化性塗膜形成用有機組成物中の前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の含有量が上記範囲内であると、熱により硬化して得られる塗膜の透明性がより高く意匠性を損なわないとともに、優れた抗菌性・抗ウイル性を発揮することができる。
【0031】
前記塗膜を前記熱硬化性塗膜形成用有機組成物の熱硬化によって形成すると、前記塗膜の耐摩耗性がより優れたものとなる。
【0032】
前記熱硬化性塗膜形成用無機組成物は、前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子及び無機バインダーを含む。
【0033】
前記無機バインダーとしては水ガラスが好ましく、3号又は4号珪酸ナトリウム水ガラスがより好ましい。水ガラスとは、珪酸ナトリウム又は珪酸ソーダと呼ばれており、単一の化合物ではなく、SiO2(二酸化ケイ素)とNa2O(酸化ナトリウム)が様々な比率で混合している液体である。分子式はNa2O・nSiO2で表され、このnはモル比と呼ばれ、Na2Oの1モルに対するSiO2のモル数を表している。
【0034】
前記熱硬化性塗膜形成用無機組成物中の前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の含有量は、熱硬化性塗膜形成用無機組成物の固形分の合計100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下であり、12質量部以上75質量部以下であることが好ましく、15質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。前記前記熱硬化性塗膜形成用無機組成物中の前記銀担持リン酸ジルコニウム粒子の含有量が上記範囲内であると、熱により硬化して得られる塗膜の透明性がより高く意匠性を損なわないとともに、優れた抗菌性及び抗ウイルス性を発揮することができる。
【0035】
前記塗膜を前記熱硬化性塗膜形成用無機組成物の熱硬化によって形成すると、前記塗膜の耐摩耗性がより優れたものとなる。
【0036】
前記塗膜による前記セラミック基材の表面の被覆率は、特に限定されないが、5%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。前記被覆率が高いほど、本開示のセラミック部材が抗菌性及び抗ウイルス性を発揮しやすくなる。
【0037】
[本開示の態様]
本開示の態様は次のとおりである。
【0038】
[1] 銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子が分散された、熱により硬化してなる塗膜をセラミック基材上に備え、前記塗膜の銀濃度が、前記塗膜の固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下である、セラミック部材。
【0039】
[2] 前記塗膜における前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子における前記銀の含有量が、Ag2O換算で、前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子の合計100質量部に対して、3質量部以上20質量部未満である、[1]に記載のセラミック部材。
【0040】
[3] 前記塗膜は、前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子及び有機バインダーを含む熱硬化性塗膜形成用有機組成物を熱により硬化してなる塗膜である、[1]又は[2]に記載のセラミック部材。
【0041】
[4] 前記塗膜は、前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子及び無機バインダーを含む熱硬化性塗膜形成用無機組成物を熱により硬化してなる塗膜である、[1]から[3]のいずれかに記載のセラミック部材。
【0042】
[5] 前記銀を担持したリン酸ジルコニウム粒子の平均粒子径が0.3μm以上10μm以下である、[1]から[4]のいずれかに記載のセラミック部材。
【0043】
[6] 前記塗膜の厚さが1μm以上20μm以下である、[1]から[5]のいずれかに記載のセラミック部材。
【0044】
[7] 前記塗膜による前記セラミック基材の表面の被覆率が5%以上である、[1]から[6]のいずれかに記載のセラミック部材。
【0045】
[8] 前記セラミック基材上に前記塗膜を形成する前後の色差ΔEが3未満である、[1]から[7]のいずれかに記載のセラミック部材。
【0046】
[9] ISO 21702:2019によるインフルエンザウイルス又はネコカリシウイルスのいずれか1種以上の試験ウイルスを含むウイルス液との24時間接触後の抗ウイルス活性値RV≧2.0である、[1]から[8]のいずれかに記載のセラミック部材。
【0047】
[10] 一般社団法人 抗菌製品技術協議会が定める耐水性試験区分1の耐水性試験後のISO 21702:2019によるインフルエンザウイルス又はネコカリシウイルスのいずれか1種以上の試験ウイルスを含むウイルス液との24時間接触後の抗ウイルス活性値RV≧2.0である、[1]から[9]のいずれかに記載のセラミック部材。
【0048】
[11] 一般社団法人 抗菌製品技術協議会が定める耐光性試験区分1の耐光性試験後のISO 21702:2019によるインフルエンザウイルス又はネコカリシウイルスのいずれか1種以上の試験ウイルスを含むウイルス液との24時間接触後の抗ウイルス活性値RV≧2.0である、[1]から[10]のいずれかに記載のセラミック部材。
【0049】
[12] タイルである、[1]から[11]のいずれかに記載のセラミック部材。
【実施例0050】
以下では例を示すことにより本開示をより具体的に説明する。ただし、本開示は実施例に限定されるものではない。
【0051】
[材料]
・銀担持リン酸ジルコニウム粒子(ノバロンAG1100,東亞合成社製,銀含有量(Ag2O換算)14.1質量%,平均粒子径1μm)
・セラミック基材(磁器質タイル:LIXIL社製,フォスキー外床タイプ)
・ウレタン(TKA-260,トクシキ社製)
・水ガラス(3号珪酸ソーダ,富士化学社製)
・シランカップリング剤(KBE-903,信越化学工業社製)
・硬化剤(TKA CURING AGENT,トクシキ社製)
・変色防止剤(ノバロン用変色防止剤,東亞合成社製)
・分散剤(ポリゾールAP-1100,レゾナック社製)
【0052】
[例1から例6]
例1及び例6は比較例であり、例2から例5は実施例である。
【0053】
水、銀担持リン酸ジルコニウム粒子、ウレタン樹脂、硬化剤、及びシランカップリング剤を表1に示す配合量で混合して、塗膜形成用有機組成物を調製した。
【0054】
各セラミック基材の表面に、調製した塗膜形成用有機組成物を33g/m2(固形分1.2%以上3.0%以下(質量基準))でスプレー塗布し、乾燥させて塗膜を形成した。このようにして各試験体を作製した。
【0055】
作製した各試験体を用いて、抗菌性試験、抗ウイルス性試験、摩耗後抗ウイルス性試験、及び色差の測定を行い、抗菌性、抗ウイルス性、摩耗前後抗ウイルス性、及び外観変化を評価した。評価結果を表1に示す。
【0056】
(抗菌性の評価)
ISO 22196:2011の抗菌性試験方法によって抗菌活性値RBを求め、以下の基準により評価した。
【0057】
4.0≦RB ・・・A(特に優れた抗菌性を有する)
2.0≦RB<4.0 ・・・B(優れた抗菌性を有する)
0<RB≦2.0 ・・・C(抗菌性を有する)
RB=0 ・・・D(抗菌性なし)
【0058】
(抗ウイルス性の評価)
ISO 21702:2019の抗ウイルス性試験方法によって抗ウイルス活性値RVを求め、以下の基準により評価した。
【0059】
4.0≦RV ・・・A(特に優れた抗菌性を有する)
2.0≦RV<4.0 ・・・B(優れた抗菌性を有する)
0<RV≦2.0 ・・・C(抗菌性を有する)
RV=0 ・・・D(抗菌性なし)
【0060】
(摩耗後抗ウイルス性の評価)
摩耗試験後の試験片についてISO 21702:2019の抗ウイルス性試験方法によって抗ウイルス活性値RVを求め、以下の基準により評価した。
【0061】
4.0≦RV ・・・A(特に優れた抗菌性を有する)
2.0≦RV<4.0 ・・・B(優れた抗菌性を有する)
0<RV≦2.0 ・・・C(抗菌性を有する)
RV=0 ・・・D(抗菌性なし)
【0062】
(外観変化の評価)
塗膜形成前後のΔEを色彩色差計(KONICA MINOLTA社製CR-400)を用いて、L*a*b*値を測定することにより求め、以下の基準により評価した。
【0063】
ΔE<3.0 ・・・A(優れた意匠性を有する)
ΔE≧3.0 ・・・D(意匠性が劣る)
【0064】
【0065】
[結果の説明]
実施例である例2から例5の試験体は、抗菌性、抗ウイルス性、摩耗後抗ウイルス性、及び外観変化の評価がいずれも優れていた。これに対し、比較例である例1の試験体は、塗膜の銀濃度が塗膜の固形分の合計100質量部に対して0.1質量部未満であり、抗ウイルス性及び摩耗後抗ウイルス性の評価が劣っていた。また、比較例である例6の試験体は、塗膜の銀濃度が塗膜の固形分の合計100質量部に対して2質量部超であり、外観変化の評価が劣っていた。
【0066】
[例7から例12]
例7及び例12は比較例であり、例8から例11は実施例である。
【0067】
水、銀担持リン酸ジルコニウム粒子、水ガラス、変色防止剤、及分散剤を表2に示す配合量で混合して、塗膜形成用無機組成物を調製した。
【0068】
各セラミック基材の表面に、調製した塗膜形成用無機組成物を常温でスプレー塗装し、乾燥させた。乾燥後、520℃で空気雰囲気中で30分加熱して焼き付けを行い、塗膜を形成した。このようにして各試験体を作製した。
【0069】
作製した各試験体を用いて、例1から例6までと同様にして抗菌性試験、抗ウイルス性試験、摩耗後抗ウイルス性試験、及び色差の測定を行い、抗菌性、抗ウイルス性、摩耗前後抗ウイルス性、及び外観変化を評価した。評価結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
[結果の説明]
実施例である例8から例11の試験体は、抗菌性、抗ウイルス性、摩耗後抗ウイルス性、及び外観変化の評価がいずれも優れていた。これに対し、比較例である例7の試験体は、塗膜の銀濃度が塗膜の固形分の合計100質量部に対して0.1質量部未満であり、抗菌性、抗ウイルス性及び摩耗後抗ウイルス性の評価が劣っていた。また、比較例である例12の試験体は、塗膜の銀濃度が塗膜の固形分の合計100質量部に対して2質量部超であり、外観変化の評価が劣っていた。