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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134013
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】払拭装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/08 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B60S1/08 D
B60S1/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044082
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】天笠 俊之
【テーマコード(参考)】
3D225
【Fターム(参考)】
3D225AA01
3D225AC01
3D225AD01
3D225AD09
3D225AE02
3D225AE57
3D225AE78
3D225AG02
3D225AG05
3D225AG23
3D225AG28
3D225AG78
(57)【要約】
【課題】ワイパブレードの反転音が目立たないようにしつつワイパブレードの反転位置の安定化を図ることが可能な払拭装置を提供する。
【解決手段】所定の動力源によってワイパブレードを往復運動させることにより被払拭面上の雨水を払拭する払拭装置であって、ワイパブレードの往運動とワイパブレードの復運動との間におけるワイパブレードの停止期間をワイパブレードの反転音が目立たないように可変設定する動力源駆動部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の動力源によってワイパブレードを往復運動させることにより被払拭面上の雨水を払拭する払拭装置であって、
前記ワイパブレードの往運動と前記ワイパブレードの復運動との間における前記ワイパブレードの停止期間を前記ワイパブレードの反転音が目立たないように可変設定する動力源駆動部を備えることを特徴とする払拭装置。
【請求項2】
前記動力源駆動部は、
車速が所定の車速基準値よりも大きい場合に前記停止期間を比較的短く設定し、
車速が前記車速基準値以下の場合には前記停止期間を比較的長く設定することを特徴とする請求項1記載の払拭装置。
【請求項3】
前記動力源駆動部は、
車速を変数とする演算によって前記停止期間を設定することを特徴とする請求項1記載の払拭装置。
【請求項4】
周囲雑音を検出する雑音検出部をさらに備え、
前記動力源駆動部は、
前記雑音検出部の検出値が所定の雑音基準値よりも大きい場合に前記停止期間を比較的短く設定し、
前記検出値が前記雑音基準値以下の場合には前記停止期間を比較的長く設定することを特徴とする請求項1に記載の払拭装置。
【請求項5】
前記雑音検出部は、車両に備えられた音響装置が発する音を前記周囲雑音として検出することを特徴とする請求項4に記載の払拭装置。
【請求項6】
前記動力源は、1つ又は2つ設けられており、1つの前記動力源で1又は2つの前記ワイパブレードを往復運動させ、2つの前記動力源で2つの前記ワイパブレードを個別に往復運動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の払拭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、払拭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、各種の車両にはフロントガラスやリヤガラスの表面(被払拭面)上の雨水を払拭する払拭装置が搭載されている。この払拭装置は、モータ(動力源)によってワイパブレードを往復運動させることにより被払拭面上の雨水を払拭する。なお、下記特許文献1には、ワイパブレードを往復運動させる払拭装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-274576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、払拭装置には、ワイパブレードの反転音を抑制するために、ワイパブレードの往運動とワイパブレードの復運動との間にワイパブレードの停止期間を設けるものがある。すなわち、このような払拭装置は、ワイパブレードの停止期間を比較的長く設定することにより、反転音が目立たないようにするものである。
【0005】
しかしながら、ワイパブレードの停止期間を比較的長く設定すると、被払拭面に作用する風圧の差等に起因してワイパブレードの反転位置が変動する。このようなワイパブレードにおける反転位置の変動は、ワイパブレードの車両のピラーとの干渉を引き起こす恐れを増大させるものであり、解決すべき重要な技術課題である。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ワイパブレードの反転音が目立たないようにしつつワイパブレードの反転位置の安定化を図ることが可能な払拭装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、払拭装置に係る第1の解決手段として、所定の動力源によってワイパブレードを往復運動させることにより被払拭面上の雨水を払拭する払拭装置であって、前記ワイパブレードの往運動と前記ワイパブレードの復運動との間における前記ワイパブレードの停止期間を前記ワイパブレードの反転音が目立たないように可変設定する動力源駆動部を備える、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、払拭装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記動力源駆動部は、車速が所定の車速基準値よりも大きい場合に前記停止期間を比較的短く設定し、車速が前記車速基準値以下の場合には前記停止期間を比較的長く設定する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、払拭装置に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記ワイパブレード及び前記動力源駆動部が車両に搭載される場合、前記動力源駆動部は、車速を変数とする演算によって前記停止期間を設定する、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、払拭装置に係る第4の解決手段として、上記第1の解決手段において、周囲雑音を検出する雑音検出部をさらに備え、前記動力源駆動部は、前記雑音検出部の検出値が所定の雑音基準値よりも大きい場合に前記停止期間を比較的短く設定し、前記検出値が前記雑音基準値以下の場合には前記停止期間を比較的長く設定する、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、払拭装置に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記ワイパブレード、前記雑音検出部は、前記車両に備えられた音響装置が発する音を前記周囲雑音として検出する、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、払拭装置に係る第6の解決手段として、上記第1~第5のいずれかの解決手段において、前記動力源は、1つ又は2つ設けられており、1つの前記動力源で1又は2つの前記ワイパブレードを往復運動させ、2つの前記動力源で2つの前記ワイパブレードを個別に往復運動させる、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワイパブレードの反転音が目立たないようにしつつワイパブレードの反転位置の安定化を図ることが可能な払拭装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る払拭装置Aの機能構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る払拭装置Aの動作を示す第1のフローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態に係る払拭装置Aの動作を示すタイミングチャートである。
図4】本発明の第1実施形態に係る払拭装置Aの動作を示す第2のフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係る払拭装置Bの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
図1図4を参照して本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る払拭装置Aは、ガソリン自動車、ハイブリッド自動車又は電気自動車等、各種の車両に搭載され、フロントガラスやリヤガラス等の被払拭部材の表面(被払拭面)に付着する雨水を払拭する装置である。
【0016】
この払拭装置Aは、図1に示すように、一対のワイパブレード1a、1bを動力源である一対のモータ7a、7bで個別に駆動する2モータ駆動方式を採用している。すなわち、第1実施形態に係る払拭装置Aは、動力源が2つ設けられており、2つの動力源で一対のワイパブレード1a、1bを個別に往復運動させるものである。
【0017】
この払拭装置Aは、図示するように、一対のワイパブレード1a、1bと単一の駆動装置10とを備える。なお、図1の各符号において、「a」は車両の運転席側に存在又は関連する部材や部分を示している。また、「b」は車両の助手席側に存在又は関連する部材や部分を示している。
【0018】
一対のワイパブレード1a、1bは、図示するようにフロントガラスW上に載置された棒状部材である。一対のワイパブレード1a、1bは、フロントガラスWの表面(被払拭面)に当接しており、被払拭面上を往復運動(揺動運動)することにより被払拭面上に存在する雨水を払拭する。
【0019】
なお、図1において、符号Raは、駆動装置10の動作モードが通常モードに設定されたときの運転席側のワイパブレード1aの払拭範囲である。また、符号Rbは、駆動装置10の動作モードが通常モードに設定されたときの助手席側のワイパブレード1bの払拭範囲である。
【0020】
すなわち、運転席側の払拭範囲Raは、ワイパブレード1aの下反転位置から上反転位置に亘るとともに、運転席側のワイパ軸3aを支点とするワイパブレード1aの移動範囲である。これに対して、助手席側の払拭範囲Rbは、ワイパブレード1bの下反転位置から上反転位置に亘るとともに、助手席側のワイパ軸3bを支点とするワイパブレード1bの移動範囲である。
【0021】
一対のワイパブレード1a、1bは、払拭範囲Ra、Rbにおける往復運動において、下反転位置及び上反転位置において所定期間に亘って停止する。具体的には、一対のワイパブレード1a、1bは、下反転位置から上反転位置に向かって移動すると、上反転位置において所定の停止期間Tに亘って一旦停止し、この停止期間Tの経過後に上反転位置から下反転位置に向かって移動する。
【0022】
また、一対のワイパブレード1a、1bは、下反転位置において所定の停止期間Tに亘って一旦停止し、この停止期間Tの経過後に下反転位置から上反転位置に向かって移動する。すなわち、一対のワイパブレード1a、1bは、駆動装置10によって駆動されることにより、下反転位置及び上反転位置における停止期間Tに亘る一時停止を伴う往復運動を行う。
【0023】
すなわち、払拭範囲Ra、Rbにおける下反転位置及び上反転位置は、一対のワイパブレード1a、1bの往復運動における反転位置である。なお、このような反転位置における停止期間Tの設定方法は、本発明の特徴的な事項である。この設定方法の詳細については、動作説明として後述する。
【0024】
一対のワイパブレード1a、1bは、一対のワイパアーム2a、2bを介して駆動装置10と機械的に接続されている。すなわち、運転席側のワイパブレード1aは、運転席側に設けられたワイパアーム2aを介して駆動装置10に接続されている。助手席側のワイパブレード1bは、助手席側に設けられたワイパアーム2bを介して駆動装置10に接続されている。
【0025】
一対のワイパアーム2a、2bは、図示するように棒状部材であり、一端が一対のワイパブレード1a、1bの途中部位に接続されており、他端が一対のワイパ軸3a、3bに接続されている。すなわち、運転席側のワイパアーム2aは、一端が運転席側のワイパブレード1aの途中部位に接続され、他端が運転席側のワイパ軸3aに接続されている。
【0026】
一方、助手席側のワイパアーム2bは、一端が助手席側のワイパブレード1bの途中部位に接続され、他端が助手席側のワイパ軸3bに接続されている。なお、このような一対のワイパアーム2a、2bは、一対のワイパブレード1a、1bの構成要素に含まれる部材である。
【0027】
一対のワイパアーム2a、2bは、駆動装置10の回動動力を一対のワイパブレード1a、1bに機械的に伝達する動力伝達部品として機能する。また一対のワイパアーム2a、2bは、一対のワイパブレード1a、1bをフロントガラスWの表面(被払拭面)に所定の押圧力で押圧する付勢部材として機能する。
【0028】
駆動装置10は、一対のワイパブレード1a、1bを一対のワイパアーム2a、2bを介して往復運動させる動力発生装置である。この駆動装置10は、一対のワイパ軸3a、3bを所定の角度範囲で回動させることにより、フロントガラスWの表面(被払拭面)に載置された一対のワイパブレード1a、1bを往復運動させる。
【0029】
駆動装置10は、一対のワイパ軸3a、3bに対応する動力源として、一対のモータ7a、7bを備える。一対のモータ7a、7bは、各々にモータ本体8及び減速機構9を備える。また、駆動装置10は、一対のモータ7a、7b(動力源)に対応する一対のワイパ制御部10a、10bを備える。
【0030】
一対のワイパ制御部10a、10bは、動力源である一対のモータ7a、7bを駆動する動力源駆動部である。運転席側のモータ7aは、ワイパ制御部10aによって駆動制御されることにより、運転席側のワイパブレード1aを被払拭面上で往復運動させる。助手席側のモータ7bは、ワイパ制御部10bによって駆動制御されることにより、助手席側のワイパブレード1bを被払拭面上で往復運動させる。
【0031】
運転席側に対応するワイパ制御部10aは、CPU(Central Processing Unit)21a、通信回路22a、ROM(Read Only Memory)23a、RAM(Random Access Memory)24a、角度検出回路31a、駆動回路32a及びロック検出タイマ33aを備える。また、助手席側に対応するワイパ制御部10bは、CPU21b、通信回路22b、ROM23b、RAM24b、角度検出回路31b、駆動回路32b及びロック検出タイマ33bを備える。
【0032】
このような運転席側に対応するワイパ制御部10aと助手席側に対応するワイパ制御部10bとは、一対の通信回路22a、22bによって通信自在に接続されている。また、運転席側のモータ7aを駆動制御するワイパ制御部10aは、車両の上位制御装置であるECUと通信回線を介して接続されている。ワイパ制御部10aには、ECUからワイパスイッチのON/OFF、ミストスイッチのON/OFF、間欠作動(Lo、Hi、INT)等のスイッチ信号に加え、車両の車速Vを示す車速信号が入力される。
【0033】
駆動装置10では、制御上の基準となる絶対位置からの経過時間に基づいて一対のモータ7a、7bがフィードバック制御され、一対のワイパブレード1a、1bの位置が制御される。この位置制御では、絶対位置として下反転位置が使用され、下反転位置からの経過時間tに対応して、その時点における一対のモータ7a、7bの目標回転数TRが予め作動マップによって設定される。
【0034】
一対のワイパ制御部10a、10bは、一対のCPU21a、21bにおいて下反転位置からの経過時間tを計時し、一対のモータ7a、7bの現在の回転数を把握し、また経過時間tにおける現在の回転数を目標回転数TRと比較する。一対のCPU21a、21bは、現在の回転数と目標回転数TRとの差分に応じて一対の駆動回路32a、32bを直接制御することにより、一対のモータ7a、7bを間接的に制御する。
【0035】
一対のモータ7a、7bと一対のCPU21a、21bとの間には、一対のワイパブレード1a、1bの位置を検出する一対の角度検出回路31a、31bが設けられている。一対の角度検出回路31a、31bは、一対のモータ7a、7bのモータ回転角度に比例し、一対のワイパブレード1a、の移動量を示す相対位置信号を出力する。また、一対の角度検出回路31a、31bは、一対のワイパブレード1a、1bのうち、特定のワイパブレードの位置を示す絶対位置信号を出力する。
【0036】
すなわち、運転席側に対応する角度検出回路31aは、運転席側のモータ7aと運転席側に対応するCPU21aとの間に設けられている。この角度検出回路31aは、運転席側のモータ7aのモータ回転角度に比例し、運転席側のワイパブレード1aの移動量を示す相対位置信号と運転席側のワイパブレードの位置を示す絶対位置信号を出力する。
【0037】
助手席側に対応する角度検出回路31bは、助手席側のモータ7bと助手席側に対応するCPU21bとの間に設けられている。この角度検出回路31bは、助手席側のモータ7bのモータ回転角度に比例し、助手席側のワイパブレード1bの移動量を示す相対位置信号と助手席側のワイパブレードの位置を示す絶対位置信号を出力する。
【0038】
相対位置信号は、一対のモータ7a、7bの回転に伴って一対のモータ7a、7bのそれぞれから発生するパルス信号(モータパルス)である。この相対位置信号は、一対のモータ7a、7bの回転角度に比例したパルス数のパルス信号である。絶対位置信号は、一対のワイパブレード1a、1bが制御基準位置(例えば下反転位置)に来たときに一対のモータ7a、7bのそれぞれから発せられる単発信号である。
【0039】
一対のモータ7a、7bの回転数と一対のワイパ軸3a、3bの回転数とは、減速機構9の減速比に基づいて一定関係にある。一対のワイパ軸3a、3bの回転角度は、相対位置信号のパルス数に基づく演算によって取得することができる。また、一対のワイパ軸3a、3bの回転角度と一対のワイパブレード1a、1bの移動角度とは、一定の関係を有している。
【0040】
すなわち、相対位置信号のパルス数を積算することにより、一対のワイパブレード1a、1bの移動角度を検出することが可能である。一対のCPU21a、21bは、上述した相対位置信号のパルス数の積算結果と絶対位置信号との組み合わせに基づいて一対のワイパブレード1a、1bの現在位置を検出する。また、一対のCPU21a、21bは、相対位置信号(モータパルス)をカウントすることにより、一対のモータ7a、7bにおける現在のモータ回転数を検出する。
【0041】
一対のCPU21a、21bは、絶対位置信号の取得時刻からの経過時間tを内蔵するタイマにより計時する。また、一対のCPU21a、21bは、現在の経過時間における一対のワイパブレード1a、1bの目標位置と一対のモータ7a、7bの目標回転数TRとをROM23a、23bから取得する。
【0042】
一対のCPU21a、21bは、一対のワイパブレード1a、1bの現在位置と目標位置を比較し、一対のワイパブレード1a、1bの現在の状況(目標位置に対する遅れや進み具合)を把握する。また、一対のCPU21a、21bは、一対のモータ7a、7bの回転数の状況(目標回転数TRに対する高低)に基づいて一対のモータ7a、7bの回転数を算出し、当該回転数に基づいて一対のモータ7a、7bの回転を制御する。
【0043】
すなわち、一対のROM23a、23bには、絶対位置信号の取得時刻からの経過時間tをパラメータとして、一対のワイパブレード1a、1bの位置と一対のモータ7a、7bのモータ回転数の目標値が作動マップとして予め記憶されている。一対のCPU21a、21bは、このような作動マップにおけるモータ回転数の目標値と現在値とを比較することにより、一対のモータ7a、7bをフィードバック制御する。
【0044】
また、各作動マップには、一対のワイパブレード1a、1bの先行関係が予め設定される。さらに、各作動マップでは、絶対位置信号の取得時刻からの経過時間tと一対のワイパブレード1a、1bの現在位置とに基づいて、目標回転数TRが相手方の位置に応じて決定される。例えば、経過時間tと一対のワイパブレード1a、1bの現在位置が同じでも、相手方の現在位置が自身に近い場合は目標回転数TRが大きく、相手方の現在位置が自身より遠い場合は目標回転数TRが小さくなるように設定される。
【0045】
一対のワイパブレード1a、1bにおける現在位置は、一対の通信回路22a、22bを介して一対のCPU21a、21bの間で情報交換され、一対のRAM24a、24bに書き込まれる。一対のCPU21a、21bは、一対のRAM24a、24bに書き込まれた一対のワイパブレード1a、1bの位置関係に基づいて、一対のモータ7a、7bを同期制御する。
【0046】
次に、第1実施形態に係る払拭装置Aの特徴的な動作について、図2に示すフローチャートに沿って説明する。
【0047】
この払拭装置Aでは、ワイパ制御部10aのCPU21aは、上位制御装置(ECU)との通信によってスイッチ信号及び車速信号を所定のタイミングで取得する(ステップS1)。そして、CPU21aは、車速信号に示される車両の車速Vが所定の車速基準値Rvを超えているか否かを判断する(ステップS2)。
【0048】
CPU21aは、ステップS2の判断が「No」の場合、つまり車速Vが車速基準値Rv以下の場合、一対のワイパブレード1a、1bの往復運動における停止期間Tを図3(a)に示すように比較的長い長停止期間TLに設定する(ステップS3)。この場合、車両の車速Vが比較的遅いので、一対のワイパブレード1a、1bの往復運動における反転音が目立ち易い。
【0049】
すなわち、車速Vが比較的遅い場合、車両の走行音(風切り音やロードノイズ等)が比較的小さいので、一対のワイパブレード1a、1bの往復運動における反転音が目立ち易い。このような事情から、CPU21aは、一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tを比較的長い長停止期間TLに設定することにより、反転音が発生し難い状態又は反転音のレベルが低減される状態をつくりだす。ここで、第1実施形態では、長停止期間TLは、例えば50ms(ミリ秒)~100ms(ミリ秒)の停止時間が設定される。
【0050】
一方、CPU21aは、ステップS2の判断が「Yes」の場合、つまり車速Vが車速基準値Rvを超えている場合には、一対のワイパブレード1a、1bの往復運動における停止期間Tを図3(b)に示すように比較的短い短停止期間TSに設定する(ステップS4)。この場合、車両の車速Vが比較的速いので、一対のワイパブレード1a、1bの往復運動における反転音が目立ち難い。
【0051】
すなわち、車速Vが比較的速い場合には、車両の走行音(風切り音やロードノイズ等)が大きくなるので、反転音が目立ち難い。このような事情から、CPU21aは、一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tを比較的短い短停止期間TSに設定することにより、停止期間Tを短停止期間TSに設定した場合よりも反転音が大きくなる状態を許容する。ここで、第1実施形態では、短停止期間TSは、例えば10ms(ミリ秒)以下の停止時間が設定される。
【0052】
また、車速Vが比較的速い場合、停止期間Tを短停止期間TSに設定することにより一対のワイパブレード1a、1bの反転位置、つまり払拭範囲Ra、Rbにおける下反転位置及び上反転位置の安定化を図ることができる。すなわち、下反転位置及び上反転位置における一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tを比較的短くすることにより、車両の走行における風圧等の影響が軽減されるので、反転位置がばらつきが抑制される。
【0053】
そして、CPU21aは、このような停止期間Tの設定情報、つまり長停止期間TL又は短停止期間TSを一対の通信回路22a、22bを介してワイパ制御部10aのCPU21bに送信することによって共有する。すなわち、ワイパ制御部10aのCPU21bは、一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tをワイパ制御部10aのCPU21aと同様に設定する。
【0054】
そして、一対のCPU21a、21bは、上述したステップS2~S4に処理に基づく停止期間Tの設定処理が完了すると、スイッチ信号に基づいて一対のモータ7a、7bをフィードバック制御する(ステップS5)。すなわち、一対のCPU21a、21bは、スイッチ信号が示す動作指示に基づいて作動マップを参照することにより。一対のモータ7a、7bをフィードバック制御する。
【0055】
このような第1実施形態によれば、ワイパ制御部10a、10b(動力源駆動部)が一対のワイパブレード1a、1bの往運動と一対のワイパブレード1a、1bの復運動との間における一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tを一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないように可変設定する。
【0056】
したがって、第1実施形態によれば、一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないようにしつつ一対のワイパブレード1a、1bの反転位置の安定化を図ることが可能な払拭装置Aを提供することが可能である。
【0057】
ここで、図2に示す停止期間Tの設定方法に代えて、図4に示す停止期間Tの設定方法が考えられる。図2の設定方法は、車速Vと車速基準値Rvとの比較に基づいて停止期間Tを長停止期間TL又は短停止期間TSに択一的に設定するものであるが、図4の設定方法は、車速Vを変数とする演算によって停止期間Tを設定するものである。
【0058】
すなわち、ワイパ制御部10aのCPU21aは、上位制御装置(ECU)との通信によってスイッチ信号及び車速信号を所定のタイミングで取得する(ステップS1a)。そして、CPU21aは、所定の基準値Ktを車速信号が示す車両の車速Vで除算することによって停止期間Tを設定する(ステップS2a)。この場合における車速Vは、停止期間Tを設定する計算式における変数である。
【0059】
そして、CPU21aは、このようして得られた停止期間Tの設定情報を一対の通信回路22a、22bを介してワイパ制御部10aのCPU21bに送信することによって共有する。すなわち、ワイパ制御部10aのCPU21bは、一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tをワイパ制御部10aのCPU21aと同様に設定する。
【0060】
そして、一対のCPU21a、21bは、上述したステップS2aの演算処理に基づく停止期間Tの設定が完了すると、スイッチ信号に基づいて一対のモータ7a、7bをフィードバック制御する(ステップS3a)。すなわち、一対のCPU21a、21bは、スイッチ信号が示す動作指示に基づいて作動マップを参照することにより。一対のモータ7a、7bをフィードバック制御する。
【0061】
このような図4に示す停止期間Tの設定方法によれば、図2に示す停止期間Tの設定方法と同様に、一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tを一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないように可変設定するので、一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないようにしつつ一対のワイパブレード1a、1bの反転位置の安定化を図ることが可能な払拭装置Aを提供することが可能である。
【0062】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図5を参照して説明する。なお、この第2実施形態では、第1実施形態と同一な構成要素には同一符号を付している。
【0063】
第2実施形態に係る払拭装置Bは、図5に示すように、一対のワイパブレード1a、1b、一対のワイパアーム2a、2b、リンク機構4、モータ7、角度検出回路31、駆動回路32、制御部10Aを備えている。また、制御部10Aは、CPU50、ROM51及びRAM52を備える。
【0064】
この払拭装置Bは、一対のワイパアーム2a、2bをリンク機構4で機械的に連結することにより、一対のワイパブレード1a、1bを単独のモータ7(動力源)で駆動する単モータ駆動方式を採用している。すなわち、払拭装置Bは、動力源が1つ設けられており、1つの動力源で一対のワイパブレード1a、1bを往復運動させる。このような払拭装置Bは、第1実施形態に係る払拭装置Aと同様に、車両のフロントガラスやリヤガラスの表面(被払拭面)上の雨水を払拭する。
【0065】
リンク機構4は、一対のワイパアーム2a、2bの他端に機械的に連結されるとともに、モータ7の出力軸にも連結された機械部品である。また、このリンク機構4は、車両に固定された支持軸を備えており、当該支持軸周りに回動自在である。モータ7は、出力軸がリンク機構4に接続されており、リンク機構4の回動角を操作することにより、一対のワイパブレード1a、1bを被払拭面上で往復運動させる。
【0066】
角度検出回路31は、第1実施形態における一対の角度検出回路31a、31bと同様の機能を備えており、モータ7のモータ回転角度に比例し、運転席側のワイパブレード1a又は助手席側のワイパブレード1bの移動量を示す相対位置信号を出力する。また、この角度検出回路31は、一対のワイパブレード1a、1bのうち、特定のワイパブレードの位置を示す絶対位置信号を出力する。
【0067】
駆動回路32は、第1実施形態における駆動回路32a、32bと同様な機能を備えており、駆動制御部51から入力される駆動指令に基づいてモータ7を駆動する。すなわち、駆動回路32は、モータ7における現在の回転数と目標回転数TRとの差分に応じてモータ7を駆動する。
【0068】
制御部10Aは、第1実施形態におけるワイパ制御部10aと同様な機能を備える。また、この制御部10Aは、上位制御装置から入力されるスイッチ信号及び車速信号を参照して駆動回路32を直接制御することにより、モータ7を間接的にフィードバック制御する。この制御部10Aにおいて、CPU50は、第1実施形態におけるCPU21aと同様な機能を備えている。
【0069】
このCPU50は、ROM23aに記憶された作動マップと角度検出回路31から入力される相対位置信号及び絶対位置信号、また上位制御系から入力されるスイッチ信号及び車速信号に基づいて駆動回路32を制御する。また、ROM52は、第1実施形態におけるROM23aと同様な機能を備えており、作動マップ等を記憶する。RAM53は、CPU50の中間生成データを一時的に保持する。
【0070】
このような払拭装置BのCPU50は、第1実施形態における図2の設定方法又は図4の設定方法のいずれかを実行する。CPU50は、第1の停止期間Tの設定方法として、図2に示すように車速Vと車速基準値Rvとの比較に基づいて停止期間Tを長停止期間TL又は短停止期間TSに択一的に設定する。また、CPU50は、第1の停止期間Tの設定方法に代えて、車速Vを変数とする演算によって停止期間Tを設定する。
【0071】
すなわち、第2実施形態のCPU50は、車速Vに基づいて一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないように一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tを設定する。また、このCPU50は、停止期間Tを比較的短く設定することにより、一対のワイパブレード1a、1bの反転位置の安定化を図る。
【0072】
このような第2実施形態によれば、制御部10A(動力源駆動部)が一対のワイパブレード1a、1bの往運動と一対のワイパブレード1a、1bの復運動との間における一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tを一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないように可変設定するので、一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないようにしつつ一対のワイパブレード1a、1bの反転位置の安定化を図ることが可能である。
【0073】
したがって、第2実施形態によれば、一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないようにしつつ一対のワイパブレード1a、1bの反転位置の安定化を図ることが可能な払拭装置Bを提供することが可能である。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、図1及び図5のブロック図はあくまで制御構成の一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0075】
また、上記実施形態では車両の車速に基づいて一対のワイパブレード1a、1bの停止期間を可変設定したが、本発明はこれに限定されない。一対のワイパブレード1a、1bの停止期間Tは、一対のワイパブレード1a、1bの反転音が車両の運転者や同乗者にとって耳障りな状況を改善することを目的とするものであり、上記実施形態の手法は、車速が比較的遅い場合に反転音が目立ち易いことを考慮したものである。
【0076】
このような本願発明の主旨に鑑みるに、車速以外の条件に基づいて一対のワイパブレード1a、1bの停止期間を可変設定してもよい。車速以外の条件としては、例えば車両に備えられたオーディオ装置の音量や車両の周囲雑音レベルが考えられる。
【0077】
例えば、車両の車室内における周囲雑音を検出する収音マイクを雑音検出部として備え、動力源駆動部は、図2の設定方法に基づいて、雑音検出部の検出値が所定の雑音基準値よりも小さい場合に停止期間Tを比較的長く設定し、雑音検出部の検出値が雑音基準値以上の場合には停止期間Tを比較的短く設定する。収音マイク(雑音検出部)は、例えば車両に備えられた音響装置が発する音を周囲雑音として検出する。
【0078】
また、動力源駆動部は、図2の設定方法に代えて、図4の設定方法に基づいて停止期間Tを設定する。すなわち、動力源駆動部は、雑音検出部の検出値を変数と知る演算式に基づいて一対のワイパブレード1a、1bの反転音が目立たないように停止期間Tを可変設定する。
【0079】
動力源駆動部は、例えばオーディオ装置の音量又は車両の周囲雑音レベルが比較的小さい場合、反転音が目立ち易いので一対のワイパブレード1a、1bの停止期間を比較的長く設定する。また、動力源駆動部は、オーディオ装置の音量又は車両の周囲雑音レベルが比較的大きい場合には、反転音が目立ち難いので一対のワイパブレード1a、1bの停止期間を比較的短く設定することが考えられる。
【0080】
また、車両の音響装置が発する音つまり車内雑音を周囲雑音として検出することに代えて、車外雑音を周囲雑音として検出することも考えられる。この場合、雑音検出部としての収音マイクを車両の外側(車外)に設ける必要がある。
【符号の説明】
【0081】
1a、1b…ワイパブレード、2a、2b…ワイパアーム、3a、3b…ワイパ軸、7a、7b…モータ(動力源)、10a、10b…ワイパ制御部(動力源駆動部)、21a、21b…CPU、22a、22b…通信回路、23a、23b…ROM、24a、24b…RAM、31a、31b…角度検出回路、32a、32b…駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5