(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134021
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
F23L 15/00 20060101AFI20240926BHJP
F23J 15/04 20060101ALI20240926BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20240926BHJP
F23G 5/46 20060101ALI20240926BHJP
F23L 5/02 20060101ALI20240926BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20240926BHJP
F22B 1/18 20060101ALI20240926BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20240926BHJP
F28G 1/16 20060101ALI20240926BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20240926BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F23L15/00 B
F23J15/04 ZAB
F23J15/00 B
F23G5/46 A
F23J15/00 Z
F23J15/00 F
F23L5/02
F23G7/00 104A
F22B1/18 G
F28F21/08 G
F28F21/08 Z
F28G1/16 Z
B01D53/50 270
B01D53/68 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044094
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】尾家 俊康
(72)【発明者】
【氏名】島村 育幸
(72)【発明者】
【氏名】中原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉置 将吾
(72)【発明者】
【氏名】松井 朗
(72)【発明者】
【氏名】迫田 健吾
【テーマコード(参考)】
3K023
3K065
3K070
3K161
4D002
【Fターム(参考)】
3K023HA06
3K023QA11
3K023QB01
3K023QC01
3K023QC12
3K065AB01
3K065AC02
3K065BA01
3K065JA05
3K065JA14
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3K070DA04
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3K070DA37
3K070DA48
3K161AA02
3K161AA15
3K161AA18
4D002AA02
4D002AA19
4D002AC04
4D002BA02
4D002BA13
4D002BA14
4D002CA01
4D002DA35
4D002EA01
4D002EA02
4D002HA03
4D002HA07
4D002HA08
(57)【要約】
【課題】ガスと熱交換して得られる熱交換気体の温度を高くしながら、排ガス経路上に配置された熱交換器における腐食の発生を防止するとともに、排ガス経路上における上流側の熱交換器の位置の制限が厳しくなるのを防ぎ、且つ、焼却炉の運転条件が厳しくなるのを防ぐ。
【解決手段】廃棄物処理設備1は、排ガス経路4上において湿式洗煙装置14の上流側に配置され、湿式洗煙処理前の排ガスと熱交換気体としての空気とを熱交換させることによりその空気を加熱する白煙防止予備熱交換器12と、白煙防止予備熱交換器12の上流側に配置され、白煙防止予備熱交換器12において加熱された空気を排ガスとの熱交換によりさらに加熱する白煙防止主熱交換器8と、を備え、白煙防止予備熱交換器12は、予備熱交換器排ガス流路47を画定する部分の腐食を防止する腐食防止機能部15を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を処理する廃棄物処理設備であって、
前記廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス経路と、
前記排ガス経路に配置され、前記排ガスの湿式洗煙処理を行う湿式洗煙装置と、
前記排ガス経路上において前記湿式洗煙装置の上流側に配置され、前記湿式洗煙処理前の前記排ガスと熱交換気体とを熱交換させることにより前記熱交換気体を加熱する予備熱交換器と、
前記排ガス経路上において前記予備熱交換器の上流側に配置され、前記予備熱交換器において加熱された前記熱交換気体が導入されてその導入された熱交換気体を前記排ガスとの熱交換によりさらに加熱する主熱交換器と、を備え、
前記主熱交換器は、前記排ガスが導入されて流れる主熱交換器排ガス流路を有し、
前記予備熱交換器は、前記排ガスが導入されて流れる予備熱交換器排ガス流路を有するとともに、当該予備熱交換器のうち前記予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の腐食を防止する腐食防止機能部を有する、廃棄物処理設備。
【請求項2】
前記腐食防止機能部は、前記主熱交換器及び前記予備熱交換器のうちの前記予備熱交換器にのみ設けられている、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
前記腐食防止機能部は、前記予備熱交換器のうち前記予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の材料によって当該部分の腐食を防止するものであり、当該部分の材料は、前記主熱交換器のうち前記主熱交換器排ガス流路を画定する部分よりも耐食性の高い材料である、請求項2に記載の廃棄物処理設備。
【請求項4】
前記予備熱交換器のうち前記予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の材料は、ニッケルを40質量%以上含むニッケル合金、純チタン、チタンを50質量%以上含むチタン合金、のうちのいずれかである、請求項3に記載の廃棄物処理設備。
【請求項5】
加熱気体経路をさらに備え、
前記加熱気体経路は、前記主熱交換器で加熱されてその主熱交換器を通過した前記熱交換気体を前記排ガス経路の下流側の端部へ導いてその下流側の端部における前記排ガスに当該熱交換気体が添加されるように前記主熱交換器と前記排ガス経路の下流側の端部とを繋いでいる、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項6】
前記主熱交換器で加熱されてその主熱交換器を通過した前記熱交換気体の熱エネルギを利用して発電を行う発電設備をさらに備える、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項7】
前記排ガスに含まれる塵を捕集する集塵装置をさらに備え、
前記集塵装置は、前記排ガス経路上において前記予備熱交換器の上流側に配置されている、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項8】
前記集塵装置は、前記排ガス経路上において前記主熱交換器の下流側に配置されている、請求項6に記載の廃棄物処理設備。
【請求項9】
前記腐食防止機能部は、前記予備熱交換器排ガス流路内の洗浄を行う洗浄装置を有する、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項10】
前記洗浄装置は、前記主熱交換器及び前記予備熱交換器のうちの前記予備熱交換器についてのみ設けられている、請求項9に記載の廃棄物処理設備。
【請求項11】
前記焼却炉において前記廃棄物の燃焼に用いられる燃焼用空気を前記焼却炉へ供給する燃焼用空気供給装置をさらに備え、
前記燃焼用空気供給装置は、前記排ガス経路上において前記主熱交換器の上流側の位置における前記排ガスの熱エネルギを利用して前記燃焼用空気を加熱し、その加熱した前記燃焼用空気を前記焼却炉に供給するように構成されている、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備により廃棄物を処理する方法であって、
前記焼却炉において前記廃棄物を焼却し、その焼却により発生した排ガスが前記排ガス経路を流れて前記湿式洗煙装置により湿式洗煙処理される前に前記予備熱交換器において熱交換気体と熱交換することによりその熱交換気体が加熱され、前記予備熱交換器において加熱された熱交換気体が前記主熱交換器に導入されてその主熱交換器において前記排ガスと熱交換することによりさらに加熱される、廃棄物処理方法。
【請求項13】
前記焼却炉では前記廃棄物としてアンモニア成分を含むものが焼却され、当該廃棄物の焼却によってアンモニア成分を含む排ガスが生成される、請求項12に記載の廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却炉において廃棄物を焼却し、その廃棄物の焼却によって発生する排ガスから熱回収を行うように構成された廃棄物処理設備が知られている。下記特許文献1には、このような廃棄物処理設備の一例が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された廃棄物処理設備は、焼却炉と、燃焼用空気予熱器と、2段の高温熱交換器と、湿式排煙処理装置と、低温熱交換器と、を備えている。焼却炉のガス出口には一連の複数のガスダクトからなる排ガス経路が接続され、焼却炉から排出された排ガスは、この排ガス経路に流れるようになっている。焼却炉、燃焼用空気予熱器、2段の高温熱交換器、湿式排煙処理装置、及び、低温熱交換器は、この順番で排ガス経路上において上流側から下流側に向かって配置されている。
【0004】
低温熱交換器には、湿式排煙処理装置による湿式排煙処理後の排ガスと押込送風機により送り出された空気が導入される。低温熱交換器では、その導入された空気と排ガスとの間で熱交換が行われ、その熱交換によって加熱された空気は、低温熱交換器から排出されて2段の高温熱交換器のうちの上流側の高温熱交換器に導入される。その上流側の高温熱交換器では、導入された空気と排ガスとの間で熱交換が行われ、その熱交換によってさらに加熱された空気は、当該上流側の高温熱交換器から排出されてその下流側のもう1つの高温熱交換器に導入される。下流側の高温熱交換器では、導入された空気と排ガスとの間で熱交換が行われ、その熱交換によってさらに加熱された空気は、当該下流側の高温熱交換器から排出されて、前記低温熱交換器の下流側の位置で排ガス経路に導入される。この排ガス経路に導入された加熱空気は、排ガスの温度を上昇させ、排ガス経路の下流端から大気に放出される排ガスが大気で冷却されてその排ガス中の水蒸気が凝縮して白煙となるのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された設備では、排ガスと熱交換して得られる空気(熱交換気体)の十分な温度上昇の確保と、前記2段の高温熱交換器のそれぞれにおける腐食の発生の防止のために、排ガス経路上における当該上流側の高温熱交換器の位置に著しい制限が生じるか、もしくは、焼却炉から排出される排ガスの温度について設備の運転条件が厳しくなる。
【0007】
具体的に、特許文献1に開示された設備では、湿式排煙処理装置の上流側に位置する2段の高温熱交換器のうちの下流側の高温熱交換器には、上流側の高温熱交換器での熱交換により温度が低下した排ガスが導入されるので、当該下流側の高温熱交換器では、熱交換後に得られる空気の温度は低くならざるを得ない。よって、特許文献1に開示された設備では、排ガスにて熱回収して得られる空気温度が低下する。
【0008】
また、特許文献1に開示された設備では、低温熱交換器において湿式排煙処理装置によ
る湿式排煙処理後の排ガスとの熱交換により加熱された空気が前記上流側の高温熱交換器に導入されるが、排ガスの温度は湿式排煙処理により著しく低下することから、低温熱交換器においてこの湿式排煙処理後の排ガスと熱交換した空気の温度は僅かしか上昇せず、このような温度の空気が低温熱交換器から前記上流側の高温熱交換器に導入されてその上流側の高温熱交換器で排ガスと熱交換すると、当該高温熱交換器の伝熱部の表面温度が低下し、その結果、当該高温熱交換器が腐食する可能性が高くなる。具体的には、熱交換器に腐食が発生する原因として腐食成分を含む排ガスの結露があり、上流側及び下流側の高温熱交換器において腐食の発生を確実に防止するためには、その熱交換器の伝熱面の温度(伝熱部の表面温度)が大きく低下しても排ガスの結露が生じる温度よりも高い温度域に維持される必要がある。排ガス経路上における排ガスの温度は下流側へ向かうにつれて低下することから、前記上流側及び下流側の高温熱交換器の伝熱部の表面温度を排ガスの結露が生じる温度よりも高い温度域に維持しようとすると、排ガス経路上における高温熱交換器の位置の制限が厳しくなる。特に熱回収を行う設備を複数設ける等の場合には、当該設備の設置位置や条件が制限される。もしくは、上流側の高温熱交換器において前記のように排ガスの温度が大きく低下するとしても、伝熱部の表面温度を排ガスの結露が生じる温度よりも高い温度域に維持できるように焼却炉から排出される排ガスの温度を制御する必要があり、焼却炉の運転条件が厳しくなる。
【0009】
本発明の目的は、排ガスと熱交換して得られる熱交換気体の温度を高くしながら、排ガス経路上に配置された高温熱交換器における腐食の発生を防止するとともに、排ガス経路上における上流側の高温熱交換器の位置の制限が厳しくなるのを防ぎ、且つ、焼却炉の運転条件を緩和することが可能な廃棄物処理設備、及び、その廃棄物処理設備を用いた廃棄物処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面により提供されるのは、廃棄物を処理する廃棄物処理設備である。この廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス経路と、前記排ガス経路に配置され、前記排ガスの湿式洗煙処理を行う湿式洗煙装置と、前記排ガス経路上において前記湿式洗煙装置の上流側に配置され、前記湿式洗煙処理前の前記排ガスと熱交換気体とを熱交換させることにより前記熱交換気体を加熱する予備熱交換器と、前記排ガス経路上において前記予備熱交換器の上流側に配置され、前記予備熱交換器において加熱された前記熱交換気体が導入されてその導入された熱交換気体を前記排ガスとの熱交換によりさらに加熱する主熱交換器と、を備える。前記主熱交換器は、前記排ガスが導入されて流れる主熱交換器排ガス流路を有する。前記予備熱交換器は、前記排ガスが導入されて流れる予備熱交換器排ガス流路を有するとともに、当該予備熱交換器のうち前記予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の腐食を防止する腐食防止機能部を有する。
【0011】
この廃棄物処理設備では、主熱交換器と予備熱交換器とのうち排ガス経路上において下流側に位置する予備熱交換器の次に上流側の主熱交換器という順番で熱交換気体を通して排ガスから熱交換気体に熱を回収できるため、主熱交換器における熱交換後の熱交換気体の出口温度を高くすることができ、また、主熱交換器において伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる程度まで低下するのを防止できることから、主熱交換器と予備熱交換器とのうちの予備熱交換器のみが当該予備熱交換器の予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の腐食を防止する腐食防止機能部を有するだけで主熱交換器と予備熱交換器のいずれにおいても腐食の発生を防止できるとともに、主熱交換器における伝熱部の表面温度を排ガスの結露が生じる温度よりも高い温度域に維持するために排ガス経路上における主熱交換器の位置の制限が厳しくなるのを防ぐことができ、また、その主熱交換器の伝熱部の表面温度を排ガスの結露が生じる温度よりも高い温度域に維持するために要求される焼却炉の運転条件を緩和することができる。
【0012】
具体的に、排ガス経路では下流側に向かうにつれて排ガスの温度が低下するため、この廃棄物処理設備のように、まず下流側の予備熱交換器において排ガスと熱交換気体とを熱交換させることによって排ガスから熱交換気体に熱を回収し、その後、その熱を回収した熱交換気体を上流側の主熱交換器に導入してその主熱交換器においてより高温の排ガスとさらに熱交換させることにより排ガスから熱交換気体にさらに熱を回収することで、排ガスとの熱交換により得られる熱交換気体の温度を高くすることができる。
【0013】
また、この廃棄物処理設備では、予備熱交換器において上流側よりは温度が低下しているものの湿式洗煙処理前であるため或る程度高い温度を保った排ガスと熱交換して加熱された熱交換気体が、主熱交換器に導入されてその主熱交換器で排ガスとさらに熱交換するため、この主熱交換器での熱交換によって当該主熱交換器の伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる程度まで低下するのを防止できる。このため、主熱交換器と予備熱交換器とのうち排ガスの結露が生じるとすれば、より下流側に位置していて導入される排ガスの温度が上流側よりも低く且つ導入される熱交換気体の温度も低い予備熱交換器に限定される。このため、主熱交換器と予備熱交換器のうちの予備熱交換器のみがその予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の腐食を防止する腐食防止機能部を有するだけで、主熱交換器と予備熱交換器のいずれにおいても排ガスの結露による腐食の発生を防止できる。
【0014】
また、排ガス経路では下流側へ向かうにつれて排ガスの温度が低下することから、仮に主熱交換器に導入される熱交換気体の温度が低くて主熱交換器の伝熱部の温度が低下したとしてもその伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる温度よりも高い温度域に維持されるような排ガス経路上の位置に主熱交換器の位置を制限する必要があるが、この廃棄物処理設備では、前記のように予備熱交換器において湿式洗煙処理前の或る程度高い温度を保った排ガスとの熱交換により加熱された熱交換気体が主熱交換器に導入されるため、主熱交換器において排ガスの結露が生じる程度まで伝熱部の表面温度が低下しない。そのため、排ガス経路上における主熱交換器の位置の制限が厳しくなるのを防ぐことができる。また、主熱交換器において伝熱部の表面温度を排ガスの結露が生じる温度よりも高い温度域に維持するために焼却炉から排出される排ガスの温度についての当該焼却炉の運転条件を緩和できる。
【0015】
前記腐食防止機能部は、前記主熱交換器及び前記予備熱交換器のうちの前記予備熱交換器にのみ設けられていることが、好ましい。このことは、流れる排ガスの温度が低い前記予備熱交換器には前記腐食防止機能部を付与して確実な腐食防止を図りながら、流れる排ガスの温度が高くて腐食が生じにくい前記主熱交換器では前記腐食防止機能部の装備を省略してコストの低減を図ることを可能にする。
【0016】
前記腐食防止機能部は、前記予備熱交換器のうち前記予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の材料によって当該部分の腐食を防止するものであり、当該部分の材料は、前記主熱交換器のうち前記主熱交換器排ガス流路を画定する部分よりも耐食性の高い材料であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、予備熱交換器のうち予備熱交換器排ガス流路を画定する部分に耐食性の高い材料を用いるという簡単な手段により当該予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の腐食を防止できる。
【0018】
前記予備熱交換器のうち前記予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の材料は、ニッケルを40質量%以上含むニッケル合金、純チタン、チタンを50質量%以上含むチタン合金、のうちのいずれかであることが好ましい。ニッケル合金としては、ハステロイ(登録商標)、ALLOY、インコネル(登録商標)等が挙げられ、これらはニッケル40質量%以上を主成分として含んでいる。なお、ニッケル合金に替えて純チタン、チタンを50質量%以上含有するチタン合金が選択されてもよいし、あるいは、表面に銅やニッケルなどで保護性錆を形成した耐候性鋼(コールテン鋼)が選択されてもよい。
【0019】
前記廃棄物処理設備は、加熱気体経路をさらに備え、前記加熱気体経路は、前記主熱交換器で加熱されてその主熱交換器を通過した前記熱交換気体を前記排ガス経路の下流側の端部へ導いてその下流側の端部における前記排ガスに当該熱交換気体が添加されるように前記主熱交換器と前記排ガス経路の下流側の端部とを繋いでいることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、排ガスが排ガス経路の下流側の端部から大気へ放出されるときに白煙となるのを防止できる。具体的に、排ガスは、排ガス経路の下流側の端部に至るまでに
温度が低下し、その排ガス経路の下流側の端部から大気へ放出されるときには大気でさらに冷却されてその排ガス中の水蒸気が凝縮して白煙となる場合がある。これに対し、本構成では、主熱交換器で加熱された熱交換気体を、加熱気体経路を通じて排ガス経路の下流側の端部に導入して排ガスに添加し、その加熱された熱交換気体によって排ガスを昇温させることができるので、排ガスが排ガス経路の下流側の端部から大気へ放出されるときに大気で冷却されても白煙となるのを防止できる。
【0021】
前記廃棄物処理設備は、前記主熱交換器で加熱されてその主熱交換器を通過した前記熱交換気体の熱エネルギを利用して発電を行う発電設備をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、上記のように排ガスからの熱回収により得られる熱交換気体の温度を高くすることが可能な廃棄物処理設備においてその回収した熱エネルギを有効に活用して発電を行うことができる。さらに、前記発電設備で熱エネルギの一部が回収された後の前記熱交換気体の残りの熱エネルギを白煙防止に利用することも可能である。
【0023】
前記廃棄物処理設備は、前記排ガスに含まれる塵を捕集する集塵装置をさらに備え、前記集塵装置は、前記排ガス経路上において前記予備熱交換器の上流側に配置されていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、予備熱交換器排ガス流路の閉塞及びこれに起因する予備熱交換器での腐食の発生の促進を防止できる。具体的には、仮に排ガスが塵を含んだ状態で予備熱交換器排ガス流路に導入されると、その塵が予備熱交換器排ガス流路内で滞積し、予備熱交換器排ガス流路に閉塞が生じる虞がある。このような閉塞が生じると、予備熱交換器排ガス流路内で排ガスの結露が生じたときに、その腐食成分を含んだ結露が予備熱交換器排ガス流路内から抜けにくくなり、その結果、予備熱交換器において腐食が発生しやすくなる。これに対し、本構成では、予備熱交換器の上流側に位置する集塵装置により排ガスに含まれる塵が捕集されるので、予備熱交換器排ガス流路に導入される排ガスには塵が含まれず、その結果、前記のような予備熱交換器排ガス流路の閉塞が生じるのを防ぐことができる。このため、予備熱交換器排ガス流路の閉塞に起因した予備熱交換器での腐食の発生を防止できる。また、以上のように予備熱交換器排ガス流路の閉塞を防止できることから、当該予備熱交換器排ガス流路を狭くすることが可能であり、その結果、予備熱交換器を小さくすることも可能になる。
【0025】
前記集塵装置は、前記排ガス経路上において前記主熱交換器の下流側に配置されていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、集塵装置には主熱交換器において熱交換気体を加熱して温度が低下した排ガスが流入するため、集塵装置に高い耐熱性が要求されるのを回避できる。
【0027】
前記腐食防止機能部は、前記予備熱交換器排ガス流路内の洗浄を行う洗浄装置を有することが好ましい。
【0028】
この構成によれば、洗浄装置によって予備熱交換器排ガス流路の内壁面に付着した排ガス中の腐食成分を洗い流すことができ、予備熱交換器における腐食の発生を防止できる。
【0029】
前記洗浄装置は、前記主熱交換器及び前記予備熱交換器のうちの前記予備熱交換器についてのみ設けられていることが、好ましい。このことは、流れる排ガスの温度が低い前記予備熱交換器では前記洗浄装置による洗浄によって確実な腐食防止を図りながら、流れる排ガスの温度が高くて腐食が生じにくい前記主熱交換器では前記洗浄装置の付与を省略してコストの低減を図ることを可能にする。
【0030】
前記廃棄物処理設備は、前記焼却炉において前記廃棄物の燃焼に用いられる燃焼用空気を前記焼却炉へ供給する燃焼用空気供給装置をさらに備え、前記燃焼用空気供給装置は、前記排ガス経路上において前記主熱交換器の上流側の位置における前記排ガスの熱エネルギを利用して前記燃焼用空気を加熱し、その加熱した前記燃焼用空気を前記焼却炉に供給するように構成されていることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、燃焼用空気の加熱及び焼却炉への供給のために別途消費されるエネルギを削減しつつ、主熱交換器における排ガスの結露による腐食の発生も防止できる。具体的には、仮に、焼却炉において廃棄物の燃焼に用いられる燃焼用空気を排ガスの熱エネルギとは関係のない別のエネルギで加熱して焼却炉に供給する場合には別途エネルギを消費する。これに対し、本構成では、燃焼用空気供給装置が排ガスの熱エネルギを利用して燃焼用空気を加熱して焼却炉に供給するため、別途消費されるエネルギを削減できる。また、本構成では、燃焼用空気供給装置が排ガス経路上において主熱交換器の上流側の位置における排ガスの熱エネルギを利用して燃焼用空気を加熱するため、当該燃焼用空気供給装置による排ガスの熱エネルギの利用によって温度が低下した排ガスが主熱交換器に導入される。この場合、主熱交換器の伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる温度域まで低下することが心配されるが、上述のように主熱交換器に導入される熱交換気体は予備熱交換器において湿式洗煙処理前の排ガスにより加熱されて比較的高い温度まで昇温しているので、この熱交換気体と熱交換した排ガスの温度によって主熱交換器の伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる温度まで低下するのが回避される。従って、本構成では、主熱交換器における排ガスの結露も防止でき、その排ガスの結露による主熱交換器での腐食の発生も防止できる。
【0032】
本発明の他の局面による廃棄物処理方法は、前記の廃棄物処理設備により廃棄物を処理する方法である。この廃棄物処理方法は、前記焼却炉において前記廃棄物を焼却し、その焼却により発生した排ガスが前記排ガス経路を流れて前記湿式洗煙装置により湿式洗煙処理される前に前記予備熱交換器において熱交換気体と熱交換することによりその熱交換気体が加熱され、前記予備熱交換器において加熱された熱交換気体が前記主熱交換器に導入されてその主熱交換器において前記排ガスと熱交換することによりさらに加熱される。
【0033】
この廃棄物処理方法によれば、前記廃棄物処理設備について説明した理由と同様の理由により、排ガスと熱交換して得られる熱交換気体の温度を高くしながら、排ガス経路上に配置された主熱交換器及び予備熱交換器の両方における腐食の発生を防止するとともに、排ガス経路上における主熱交換器の位置の制限が厳しくなるのを防ぎ、且つ、焼却炉の運転条件を緩和できる。
【0034】
前記焼却炉では前記廃棄物としてアンモニア成分を含むものが焼却され、当該廃棄物の焼却によってアンモニア成分を含む排ガスが生成されることが、好ましい。前記排ガスに含まれるアンモニアは、同じく排ガス中に含まれる酸と中和反応することにより、特に排ガス温度が低くて前記酸が生じやすい前記予備熱交換器における腐食の発生を抑制し、これにより、前記腐食防止機能部の簡素化(例えば予備熱交換器において耐食性の高い材料を使用する部分の節減)を行ってコストの低減を図ることを可能にする。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、排ガスと熱交換して得られる熱交換気体の温度を高くしながら、排ガス経路上に配置された主熱交換器及び予備熱交換器における腐食の発生を防止するとともに、排ガス経路上における上流側の主熱交換器の位置の制限が厳しくなるのを防ぎ、且つ、焼却炉の運転条件を緩和することが可能な廃棄物処理設備、及び、その廃棄物処理設備を用いた廃棄物処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態による廃棄物処理設備を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による廃棄物処理設備の白煙防止予備熱交換器及び洗浄装置の模式図である。
【
図3】
図2に示した白煙防止予備熱交換器の予備熱交換器本体の部分的な断面図である。
【
図4】比較例による廃棄物処理設備を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態による廃棄物処理設備1について詳細に説明する。
【0038】
図1は、本実施形態による廃棄物処理設備1を模式的に示している。この
図1に示すよ
うに、本実施形態による廃棄物処理設備1は、焼却炉2と、排ガス経路4と、燃焼用空気供給装置6と、白煙防止主熱交換器8と、集塵装置10と、白煙防止予備熱交換器12と、湿式洗煙装置14と、発電設備16と、ブロワ18と、白煙防止空気経路20と、を備える。前記白煙防止主熱交換器8は「主熱交換器」の一例であり、前記白煙防止予備熱交換器12は「予備熱交換器」の一例である。焼却炉2、燃焼用空気供給装置6、白煙防止主熱交換器8、集塵装置10、白煙防止予備熱交換器12、及び、湿式洗煙装置14は、排ガス経路4上においてその排ガス経路4における排ガスの流れ方向で上流側からこの順で配置されている。なお、以下、排ガス経路4における排ガスの流れ方向において上流側を単に上流側と称し、同流れ方向において下流側を単に下流側と称する。
【0039】
焼却炉2は、例えば脱水汚泥等の廃棄物を焼却する。本実施形態における焼却炉2は、流動床式の焼却炉であるが、これに限定されない。焼却炉2では、廃棄物の焼却に伴って排ガスが発生する。この排ガス中には、例えば塩化水素等の塩素化合物や硫黄酸化物等の腐食成分が含まれる。焼却炉2は、当該焼却炉2における廃棄物の燃焼に用いられる燃焼用空気が導入される空気入口2aと、当該焼却炉2内で発生した排ガスを排出する排ガス出口2bと、を有する。
【0040】
排ガス経路4は、焼却炉2から排出される排ガスが流れる経路であり、焼却炉2の排ガス出口2bに繋がっている。排ガス経路4は、第1経路部分21と、第2経路部分22と、第3経路部分23と、第4経路部分24と、第5経路部分25と、第6経路部分26と、を有する。
【0041】
第1経路部分21は、焼却炉2の排ガス出口2bから排出される排ガスを燃焼用空気供給装置6の後述の燃焼用空気熱交換器28の排ガス入口28aへ導くようにその排ガス出口2bと排ガス入口28aとを繋いでいる。第2経路部分22は、後述の燃焼用空気熱交換器28の排ガス出口28bから出た排ガスを白煙防止主熱交換器8の排ガス入口8aへ導くようにその排ガス出口28bと排ガス入口8aとを繋いでいる。第3経路部分23は、白煙防止主熱交換器8の排ガス出口8bから出た排ガスを集塵装置10の排ガス入口10aへ導くようにその排ガス出口8bと排ガス入口10aとを繋いでいる。第4経路部分24は、集塵装置10の排ガス出口10bから出た排ガスを白煙防止予備熱交換器12の排ガス入口12aへ導くようにその排ガス出口10bと排ガス入口12aとを繋いでいる。第5経路部分25は、白煙防止予備熱交換器12の排ガス出口12bから出た排ガスを湿式洗煙装置14の排ガス入口14aへ導くようにその排ガス出口12bと排ガス入口14aとを繋いでいる。第6経路部分26は、湿式洗煙装置14の排ガス出口14bに接続され、その排ガス出口14bから排出された排ガスが流れる部分である。この第6経路部分26の下流側の端部、すなわち排ガス経路4の下流側の端部から排ガスが大気へ放出される。この第6経路部分26の下流側の端部は、図示していないが、例えば、排ガスを大気へ放出するための煙突を有する。
【0042】
燃焼用空気供給装置6は、焼却炉2において廃棄物の燃焼に用いられる燃焼用空気を排ガスの熱エネルギを利用して加熱するとともにその加熱された燃焼用空気を焼却炉2へ供給する装置である。燃焼用空気供給装置6は、燃焼用空気熱交換器28と、過給機30と、燃焼用空気経路32と、を有する。
【0043】
燃焼用空気熱交換器28は、焼却炉2の排ガス出口2bから排出される排ガスと燃焼用空気とを熱交換させることにより排ガスの熱で燃焼用空気を加熱するものである。燃焼用空気熱交換器28は、排ガス経路4上において焼却炉2の下流側に配置されている。燃焼用空気熱交換器28は、排ガス入口28aと、排ガス出口28bと、空気入口28cと、空気出口28dと、を有する。
【0044】
排ガス入口28aは、焼却炉2の排ガス出口2bから排出される排ガスが前記第1経路
部分21を通じて導入される箇所であり、その第1経路部分21の下流側の端部に接続されている。排ガス出口28bは、燃焼用空気熱交換器28において燃焼用空気と熱交換した後の排ガスを排出する箇所である。空気入口28cは、過給機30の後述の圧縮機34から吐出される燃焼用空気が導入される箇所である。空気出口28dは、燃焼用空気熱交換器28において排ガスと熱交換して加熱された燃焼用空気を排出する箇所である。
【0045】
過給機30は、燃焼用空気を圧縮し、その圧縮した燃焼用空気を燃焼用空気熱交換器28へ送るものである。過給機30は、圧縮機34と、タービン36と、を有する。
【0046】
圧縮機34は、燃焼用空気を圧縮し、その圧縮した燃焼用空気を燃焼用空気熱交換器28の空気入口28cへ向けて吐出する。圧縮機34は、燃焼用空気の導入口である圧縮機入口34aと、圧縮した燃焼用空気の吐出口である圧縮機出口34bと、を有する。
【0047】
タービン36は、圧縮機34により圧縮されるとともに燃焼用空気熱交換器28において加熱された燃焼用空気が導入されてその燃焼用空気の圧力及び熱エネルギにより駆動される。タービン36は、導入された燃焼用空気の圧力及び熱エネルギにより回転駆される図略の回転体を有し、その回転体は当該回転体の回転運動が圧縮機34に伝達されるようにその圧縮機34と接続されている。圧縮機34は、このタービン36の回転体から伝達される回転運動により駆動されて前記のように燃焼用空気を圧縮する。タービン36は、燃焼用空気の導入口であるタービン入口36aと、当該タービン36を駆動した後の燃焼用空気の排出口であるタービン出口36bと、を有する。
【0048】
燃焼用空気経路32は、焼却炉2へ供給する燃焼用空気が流れる経路であり、燃焼用空気が圧縮機34と燃焼用空気熱交換器28とタービン36とをこの順番で経て焼却炉2へ至るようにその圧縮機34と燃焼用空気熱交換器28とタービン36と焼却炉2とを繋いでいる。燃焼用空気経路32は、導入経路部分37と、第1中間経路部分38と、第2中間経路部分40と、供給経路部分42と、を有する。
【0049】
導入経路部分37は、燃焼用空気を圧縮機34へ導入する部分であり、圧縮機入口34aに接続されている。
図1では、導入経路部分37の上流側の端部は大気に開放されており、圧縮機34の回転に伴って空気が導入経路部分37に吸引される構成となっているが、これに限定されず、例えばブロワ等の送風装置を導入経路部分37の上流側の端部に接続してその送風装置により強制的に空気を供給する構成としてもよい。この場合、導入経路部分37は、その送風装置によって送り出される燃焼用空気を圧縮機入口34aへ導く。
【0050】
第1中間経路部分38は、圧縮機34から吐出される圧縮された燃焼用空気を燃焼用空気熱交換器28へ導く部分であり、圧縮機出口34bと燃焼用空気熱交換器28の空気入口28cとを繋いでいる。
【0051】
第2中間経路部分40は、燃焼用空気熱交換器28において加熱されてその燃焼用空気熱交換器28から排出される燃焼用空気をタービン36へ導く部分であり、燃焼用空気熱交換器28の空気出口28dとタービン入口36aとを繋いでいる。
【0052】
供給経路部分42は、タービン36から排出された燃焼用空気を焼却炉2へ導く部分であり、タービン出口36bと焼却炉2の空気入口2aとを繋いでいる。
【0053】
白煙防止主熱交換器8及び白煙防止予備熱交換器12は、それぞれ、排ガスと白煙防止空気とを熱交換させて白煙防止空気を排ガスの熱により加熱するものである。白煙防止空気は、排ガス経路4の下流側の端部(第6経路部分26の下流側の端部)から大気に放出
される排ガスの温度が低いことによりその排ガスが白煙となるのを防止するために排ガス経路4の下流側の端部において排ガスに添加されて当該排ガスの温度を上昇させるものである。すなわち、排ガス経路4の下流側の端部には、白煙防止予備熱交換器12及び白煙防止主熱交換器8において加熱されることにより当該排ガス経路4の下流側の端部における排ガスの温度よりも高い温度を有する白煙防止空気が後述のように白煙防止空気経路20を通じて導入されるようになっている。白煙防止主熱交換器8は本発明における主熱交換器の一例であり、白煙防止予備熱交換器12は本発明における予備熱交換器の一例である。また、白煙防止空気は、本発明における熱交換気体の一例である。
【0054】
白煙防止主熱交換器8と白煙防止予備熱交換器12のうち白煙防止予備熱交換器12の方が排ガス経路4上においてより下流側に位置し、当該白煙防止予備熱交換器12は、湿式洗煙装置14の上流側に位置する。白煙防止予備熱交換器12には、白煙防止主熱交換器8に導入される排ガスよりも温度が低下した排ガスが導入される。また、後述のように、白煙防止予備熱交換器12は、白煙防止空気経路20における白煙防止空気の流れ方向において白煙防止主熱交換器8よりも上流側に位置する。
【0055】
白煙防止予備熱交換器12は、排ガス入口12aと、排ガス出口12bと、空気入口12cと、空気出口12dと、を有する。排ガス入口12aは、排ガスが導入される箇所であり、排ガス経路4の第4経路部分24の下流側の端部に接続されている。排ガス出口12bは、白煙防止予備熱交換器12において白煙防止空気と熱交換した後の排ガスを排出する箇所であり、排ガス経路4の第5経路部分25の上流側の端部に接続されている。空気入口12cは、白煙防止空気が導入される箇所である。空気出口12dは、白煙防止予備熱交換器12において排ガスと熱交換して加熱された白煙防止空気を排出する箇所である。
【0056】
白煙防止予備熱交換器12は、その内部に複数の予備熱交換器排ガス流路47及び複数の予備熱交換器空気流路48を有する。なお、
図1では、予備熱交換器排ガス流路47及び予備熱交換器空気流路48を模式的に表しており、実際には、白煙防止予備熱交換器12の内部に複数の予備熱交換器排ガス流路47が並列に配置されているとともに複数の予備熱交換器空気流路48が並列に配置されている。予備熱交換器排ガス流路47は排ガスが導入されて流れる流路であり、予備熱交換器空気流路48は白煙防止空気が導入されて流れる流路である。各予備熱交換器排ガス流路47の上流側の端部は排ガス入口12aに繋がっており、各予備熱交換器排ガス流路47の下流側の端部は排ガス出口12bに繋がっている。各予備熱交換器空気流路48の上流側の端部は空気入口12cに繋がっており、各予備熱交換器空気流路48の下流側の端部は空気出口12dに繋がっている。
【0057】
白煙防止主熱交換器8と白煙防止予備熱交換器12は、白煙防止主熱交換器8の回収熱量が白煙防止予備熱交換器12の回収熱量の1~5倍となるように設置することが好ましい。白煙防止主熱交換器8の回収熱量を白煙防止予備熱交換器12の回収熱量以上とすることにより、白煙防止主熱交換器8及び白煙防止予備熱交換器12の合計の回収熱量を最大限確保しつつ、白煙防止予備熱交換器12が大きくなることを抑制できる。
【0058】
白煙防止予備熱交換器12は、
図3に示すように、複数の第1プレート49及び複数の第2プレート50を有するいわゆるプレート熱交換器である予備熱交換器本体13を備える。
図3は、第1プレート49及び第2プレート50の板厚方向に沿う方向における予備熱交換器本体13の断面を部分的に示している。第1プレート49と第2プレート50とは、交互に積層されて互いに接合されている。各第1プレート49の板面には複数の溝が形成され、それらの溝の開口がその板面に接合された第2プレート50によって封止されることにより複数の予備熱交換器排ガス流路47が形成されている。また、各第2プレート50の板面には複数の溝が形成され、それらの溝の開口がその板面に接合された第1プ
レート49によって封止されることにより複数の予備熱交換器空気流路48が形成されている。予備熱交換器排ガス流路47を流れる排ガスと予備熱交換器空気流路48を流れる白煙防止空気とは、その予備熱交換器排ガス流路47と予備熱交換器空気流路48との間の第1プレート49もしくは第2プレート50を介して熱交換するようになっている。
【0059】
白煙防止予備熱交換器12は、予備熱交換器本体13のうち予備熱交換器排ガス流路47を画定する部分である第1プレート49及び第2プレート50の腐食を防止する腐食防止機能部15を有する。本実施形態では、この腐食防止機能部15は、第1プレート49及び第2プレート50の材料によって当該第1プレート49及び第2プレート50の腐食を防止する。換言すれば、第1プレート49及び第2プレート50自体がそれらの腐食を防止する腐食防止機能部15を構成している。具体的に、これらの第1プレート49及び第2プレート50は、白煙防止主熱交換器8において後述の主熱交換器排ガス流路51を画定する部分よりも耐食性の高い材料からなる。より具体的には、第1プレート49及び第2プレート50の材料は、例えば、ニッケルを40質量%以上含むニッケル合金、純チタン、チタンを50質量%以上含むチタン合金、のうちのいずれかである。前記ニッケル合金は、一例として、Ni-Cr-Fe系のニッケル合金であって、Niを30~76質量%、Crを12~23質量%、Feを2~46質量%、それぞれ含むものであってもよい。また、前記ニッケル合金は、他の例として、Ni-Cr-Mo系のニッケルモリブデン合金であって、Niを40~71質量%、Crを1~30質量%、Moを8~30質量%、それぞれ含むものであってもよい。さらに、前記ニッケル合金としては、ハステロイ(登録商標)、ALLOY、インコネル(登録商標)等が挙げられる。ハステロイとしては、例えば、ハステロイC-22(鉄3質量%、ニッケル56質量%、クロム22質量%、モリブデン13質量%、タングステン3質量%)、ハステロイC-276(鉄5質量%、ニッケル57質量%、クロム16質量%、モリブデン16質量%、タングステン4質量%)、その他のハステロイ等が挙げられる。その他のハステロイとしては、ニッケルを43~71質量%含むハステロイであって、例えば、ハステロイC-4(ニッケル65質量%、クロム16質量%、モリブデン16質量%)、ハステロイC-22HS(ニッケル61質量%、クロム21質量%、モリブデン17質量%)、ハステロイC-2000(ニッケル59質量%、クロム23質量%、モリブデン16質量%、銅1.6質量%)、ハステロイHYBRID-BC1(ニッケル62質量%、クロム15質量%、モリブデン22質量%、マンガン0.25質量%)が挙げられる。
【0060】
ALLOYとしては、例えば、ALLOY22(鉄2~6質量%、ニッケル約56質量%、クロム20~22.5質量%、モリブデン12.5~14.5質量%、タングステン2.5~3.5質量%)、ALLOY C-276(鉄4~7質量%、ニッケル約57質量%、クロム14.5~16.5質量%、モリブデン15~17質量%、タングステン3~4.5質量%)等が挙げられる。
【0061】
インコネルとしては、インコネル600(鉄6~10質量%、ニッケル72質量%、クロム14~17質量%)、インコネル625(ニッケル58質量%、クロム20~23質量%、モリブデン8~10質量%、ニオブ3.15~4.15質量%)、インコネル718(鉄少量、ニッケル50~55質量%、クロム17~21質量%、モリブデン2.8~3.3質量%、ニオブ4.75~5.5質量%、チタン0.65~1.15質量%、アルミニウム0.2~0.8質量%)等が挙げられる。
【0062】
なお、ニッケル合金に替えて純チタン、チタンを50質量%以上含有するチタン合金が選択されてもよいし、あるいは、表面に銅やニッケルなどで保護性錆を形成した耐候性鋼(コールテン鋼)が選択されてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、腐食防止機能部15は、洗浄装置19(
図2参照)を有する。洗浄装置19は、予備熱交換器排ガス流路47内の洗浄を行うものであり、予備熱交換器本体13に取り付けられている。洗浄装置19は、各予備熱交換器排ガス流路47に通水することによりその各予備熱交換器排ガス流路47内を洗浄するように構成されている。洗浄装置19は、定期的に自動で各予備熱交換器排ガス流路47内に通水するように構成されていてもよいし、操作者による操作に応じて各予備熱交換器排ガス流路47内に通水するように構成されていてもよい。洗浄装置19による洗浄により、腐食成分が洗い流される。
【0064】
白煙防止主熱交換器8には、白煙防止予備熱交換器12において排ガスとの熱交換により加熱された白煙防止空気が導入される。白煙防止主熱交換器8は、排ガス経路4において白煙防止予備熱交換器12よりも上流側に位置し、白煙防止予備熱交換器12に導入される排ガスよりも高温の排ガスが当該白煙防止主熱交換器8に導入される。
【0065】
白煙防止主熱交換器8は、排ガス入口8aと、排ガス出口8bと、空気入口8cと、空気出口8dと、を有する。排ガス入口8aは、排ガスが導入される箇所であり、排ガス経路4の第2経路部分22の下流側の端部に接続されている。排ガス出口8bは、白煙防止主熱交換器8において白煙防止空気と熱交換した後の排ガスを排出する箇所であり、排ガス経路4の第3経路部分23の上流側の端部に接続されている。空気入口8cは、白煙防止予備熱交換器12で加熱されてその白煙防止予備熱交換器12から排出された白煙防止空気が導入される箇所である。空気出口8dは、白煙防止主熱交換器8において排ガスと熱交換して加熱された白煙防止空気を排出する箇所である。
【0066】
白煙防止主熱交換器8は、その内部に主熱交換器排ガス流路51及び主熱交換器空気流路52を有する。なお、
図1では、白煙防止主熱交換器8の主熱交換器排ガス流路51及び主熱交換器空気流路52を模式的に表しており、白煙防止主熱交換器8の構造、及び、その内部の主熱交換器排ガス流路51及び主熱交換器空気流路52の構造及び配置としては、従来公知の様々な熱交換器及びその内部の流路と同様のものが適用される。白煙防止主熱交換器8としては、多管式熱交換器やプレート熱交換器を利用できる。塵を含む排ガスの熱交換において排ガス流路の閉塞を防ぐ観点では、白煙防止主熱交換器8として多管
式熱交換器が用いられることが望ましい。主熱交換器排ガス流路51は排ガスが導入されて流れる流路であり、主熱交換器空気流路52は白煙防止空気が導入されて流れる流路である。主熱交換器排ガス流路51の上流側の端部は排ガス入口8aに繋がっており、主熱交換器排ガス流路51の下流側の端部は排ガス出口8bに繋がっている。主熱交換器空気流路52の上流側の端部は空気入口8cに繋がっており、主熱交換器空気流路52の下流側の端部は空気出口8dに繋がっている。
【0067】
白煙防止予備熱交換器12及び白煙防止主熱交換器8に供給される白煙防止空気は、ブロワ18により送風されるものである。ブロワ18は、白煙防止空気経路20の上流側の端部に接続されている。
【0068】
白煙防止空気経路20は、白煙防止空気が流れる経路である。この白煙防止空気経路20は、第1空気経路部分53と、第2空気経路部分54と、第3空気経路部分56と、第4空気経路部分58と、を有する。第1空気経路部分53は、ブロワ18から送り出される白煙防止空気を白煙防止予備熱交換器12へ導くようにブロワ18と白煙防止予備熱交換器12の空気入口12cとを繋いでいる。第2空気経路部分54は、白煙防止予備熱交換器12の空気出口12dから排出された白煙防止空気を白煙防止主熱交換器8の空気入口8cへ導くようにその空気出口12dと空気入口8cとを繋いでいる。第3空気経路部分56は、白煙防止主熱交換器8の空気出口8dから排出された白煙防止空気を発電設備16の後述の温水ボイラ62の空気入口62aへ導くようにその空気出口8dと空気入口62aとを繋いでいる。第4空気経路部分58は、発電設備16の後述の温水ボイラ62の空気出口62bから排出された出た白煙防止空気を排ガス経路4の下流側の端部(第6経路部分26の下流側の端部)へ導くようにその空気出口62bと排ガス経路4の下流側の端部とを繋いでいる。第3空気経路部分56及び第4空気経路部分58は、本発明における加熱気体経路の一例であり、白煙防止主熱交換器8で加熱されてその白煙防止主熱交換器8を通過した白煙防止空気を排ガス経路4の下流側に導いてその下流側の端部における排ガスに当該白煙防止空気を添加させるものである。
【0069】
以上のように、ブロワ18から送り出される白煙防止空気が白煙防止空気経路20を通って白煙防止予備熱交換器12、白煙防止主熱交換器8、及び、発電設備16の温水ボイラ62をこの順で経て排ガス経路4の下流側の端部に導入されるようになっている。
【0070】
集塵装置10は、排ガス経路4上において白煙防止予備熱交換器12の上流側に配置されて排ガスに含まれる煤等の塵を捕集することによりその排ガスから塵を除去する装置である。本実施形態では、集塵装置10は、排ガス経路4上において白煙防止予備熱交換器12の上流側で且つ白煙防止主熱交換器8の下流側に位置する。すなわち、集塵装置10は、白煙防止主熱交換器8を通過したその白煙防止主熱交換器8での熱交換後の排ガスであって白煙防止予備熱交換器12に導入される前の排ガスから塵を除去する。従って、白煙防止予備熱交換器12には、集塵装置10により塵が除去された後の排ガスが導入される。
【0071】
集塵装置10は、本実施形態では、いわゆるバグフィルタである。バグフィルタは、ろ布を有し、そのろ布を排ガスが通過する際にその排ガスに含まれる塵を当該ろ布に捕捉させて排ガスから塵を除去する装置である。集塵装置10は、排ガスが導入される箇所である排ガス入口10aと、当該集塵装置10において塵が除去された後の排ガスを排出する箇所である排ガス出口10bと、を有する。排ガス入口10aは、排ガス経路4の第3経路部分23の下流側の端部に接続されている。排ガス出口10bは、排ガス経路4の第4経路部分24の上流側の端部に接続されている。
【0072】
湿式洗煙装置14は、排ガスの湿式洗煙処理を行う装置であり、排ガス経路4上におい
て白煙防止予備熱交換器12の下流側に配置されている。この湿式洗煙装置14は、塔状の筐体を有し、その筐体内に水等の洗浄液を散布してその散布された洗浄液と当該筐体の下部から当該筐体内に導入された排ガスとを接触させることにより、排ガスに含まれる塩化水素等の塩素化合物や硫黄酸化物等の有害成分を洗浄液に溶け込ませて排ガスから有害成分を除去する湿式洗煙処理を行う。洗浄液の温度は湿式洗煙装置14に導入される排ガスの温度よりも低いため、湿式洗煙処理がなされた排ガスの温度は、湿式洗煙装置14に導入される湿式洗煙処理前の排ガスの温度から低下する。
【0073】
湿式洗煙装置14は、排ガスが導入される箇所である排ガス入口14aと、当該湿式洗煙装置14において湿式洗煙処理された後の排ガスを排出する箇所である排ガス出口14bと、を有する。排ガス入口14aは、排ガス経路4の第5経路部分25の下流側の端部に接続されている。排ガス出口14bは、排ガス経路4の第6経路部分26の上流側の端部に接続されている。
【0074】
発電設備16は、白煙防止主熱交換器8で加熱された後の白煙防止空気の熱エネルギを利用して発電を行う装置である。すなわち、発電設備16には、白煙防止主熱交換器8で加熱されてその白煙防止主熱交換器8を通過した白煙防止空気が導入され、発電設備16は、その導入された白煙防止空気の熱エネルギを利用して発電を行うように構成されている。この発電設備16は、温水ボイラ62と、発電装置64と、循環回路66と、を有する。
【0075】
温水ボイラ62は、白煙防止主熱交換器8で加熱されてその白煙防止主熱交換器8を通過した白煙防止空気の熱エネルギを利用して水を加熱し、温水を生成するものである。温水ボイラ62は、白煙防止空気経路20上における白煙防止空気の流れ方向において白煙防止主熱交換器8の下流側に配置されている。温水ボイラ62は、白煙防止空気が導入される箇所である空気入口62aと、当該温水ボイラ62において水を加熱した後の白煙防止空気を排出する箇所である空気出口62bと、を有する。空気入口62aは、第3空気経路部分56の下流側の端部に接続されている。空気出口62bは、第4空気経路部分58の上流側の端部に接続されている。
【0076】
発電装置64は、温水ボイラ62で生成された温水を熱源として発電を行うものである。発電装置64は、循環回路66により温水ボイラ62と接続されている。この循環回路66を通って、温水ボイラ62で生成された温水が発電装置64に導入されるとともに、発電装置64において発電に利用された後、発電装置64から排出された温水が温水ボイラ62に戻るようになっている。
【0077】
本実施形態では、発電装置64は、いわゆるバイナリ発電装置である。具体的には、図示は省略するが、この発電装置64は、低沸点冷媒である作動媒体が循環する循環回路と、当該循環回路に配置された蒸発器、膨張機、凝縮器及び作動媒体ポンプと、膨張機に接続された発電機と、を含む。温水ボイラ62から発電装置64に導入される温水は、前記蒸発器に導入される。作動媒体ポンプは、循環回路において作動媒体を循環させ、蒸発器では、導入された温水と作動媒体との間で熱交換が行われ、その熱交換により作動媒体が蒸発して作動媒体の蒸気が発生する。この作動媒体の蒸気は、膨張機に導入され、膨張機を回転させる。この膨張機の回転運動は、その膨張機に接続された発電機に伝達され、それによって発電機が作動して発電を行う。膨張機から排出される作動媒体の蒸気は、凝縮器に導入され、その凝縮器において凝縮して液体になり、その作動媒体の液体は蒸発器に戻される。なお、バイナリ発電装置の膨張機の形式は限定されず、例えばラジアルタービン式やスクリュータービン式、その他の方式のものが採用されてもよい。
【0078】
次に、本実施形態による廃棄物処理設備1を用いた廃棄物処理方法について説明する。
【0079】
本実施形態による廃棄物処理方法では、焼却炉2において廃棄物を焼却し、その廃棄物の焼却によって発生した排ガスが焼却炉2の排ガス出口2bから排ガス経路4の第1経路部分21へ排出される。この排出された排ガスは、第1経路部分21から燃焼用空気供給装置6の燃焼用空気熱交換器28に導入される。
【0080】
また、燃焼用空気熱交換器28には、燃焼用空気経路32を通って燃焼用空気が導入される。燃焼用空気熱交換器28では、導入された排ガスと燃焼用空気との熱交換が行われ、それによって加熱された燃焼用空気は、燃焼用空気熱交換器28から出てタービン36に導入される。このタービン36に導入された燃焼用空気は、当該タービン36を駆動し、そのタービン36の駆動に伴って圧縮機34が作動する。これにより、圧縮機34は、燃焼用空気を圧縮し、その圧縮した燃焼用空気を圧縮機出口34bから燃焼用空気経路32の第1中間経路部分38を通じて燃焼用空気熱交換器28へ送る。燃焼用空気熱交換器28では、導入された圧縮した燃焼用空気と排ガスとの熱交換が行われ、その圧縮した燃焼用空気が排ガスの熱によって加熱される。この加熱された圧縮した燃焼用空気、すなわち加熱及び加圧された燃焼用空気は、燃焼用空気熱交換器28からタービン36に導入されてタービン36を駆動した後、そのタービン36から燃焼用空気経路32の供給経路部分42を通って焼却炉2に導入される。焼却炉2では、導入された燃焼用空気を用いて廃棄物の燃焼が行われる。
【0081】
燃焼用空気熱交換器28における排ガスと燃焼用空気との間での熱交換により、排ガスの温度は低下し、その熱交換後の排ガスは、燃焼用空気熱交換器28の排ガス出口28bから排ガス経路4の第2経路部分22に排出される。燃焼用空気熱交換器28の排ガス出口28bにおける排ガスの温度は、例えば400℃~650℃である。第2経路部分22に排出された排ガスは、その第2経路部分22を通って白煙防止主熱交換器8の排ガス入口8aに導かれ、その排ガス入口8aから主熱交換器排ガス流路51に導入される。白煙防止主熱交換器8の排ガス入口8aにおける排ガスの温度は、燃焼用空気熱交換器28の排ガス出口28bにおける排ガスの温度と同様の温度であり、例えば400℃~650℃である。
【0082】
白煙防止主熱交換器8では、後述のように主熱交換器空気流路52を流れる白煙防止空気と主熱交換器排ガス流路51を流れる排ガスとの間で熱交換が行われる。この白煙防止主熱交換器8における熱交換によって、排ガスの温度は低下する。白煙防止主熱交換器8において白煙防止空気と熱交換した後の排ガスは、主熱交換器排ガス流路51の下流端から排ガス出口8bを通って排ガス経路4の第3経路部分23に排出される。白煙防止主熱交換器8の排ガス出口8bにおける排ガスの温度は、例えば180℃~300℃、より好ましくは200℃~250℃である。
【0083】
白煙防止主熱交換器8の排ガス出口8bから第3経路部分23に排出された排ガスは、その第3経路部分23を通って集塵装置10に導入される。集塵装置10では、導入された排ガスから塵が除去される。塵が除去された排ガスは、集塵装置10の排ガス出口10bから排ガス経路4の第4経路部分24に排出される。
【0084】
集塵装置10の排ガス出口10bから第4経路部分24に排出された排ガスは、その第4経路部分24を通って白煙防止予備熱交換器12の排ガス入口12aに導かれ、その排ガス入口12aから各予備熱交換器排ガス流路47に導入される。白煙防止予備熱交換器12の排ガス入口12aにおける排ガスの温度、換言すれば各予備熱交換器排ガス流路47の上流端における排ガスの温度は、白煙防止主熱交換器8の排ガス出口8bにおける排ガスの温度と同様の温度であり、例えば180℃~300℃、より好ましくは200℃~250℃である。
【0085】
白煙防止予備熱交換器12では、後述のように各予備熱交換器空気流路48を流れる白煙防止空気と各予備熱交換器排ガス流路47を流れる排ガスとの間で熱交換が行われる。この白煙防止予備熱交換器12における熱交換によって、排ガスの温度は低下する。白煙防止予備熱交換器12において白煙防止空気と熱交換した後の排ガスは、各予備熱交換器排ガス流路47の下流端から排ガス出口12bを通って排ガス経路4の第5経路部分25に排出される。白煙防止予備熱交換器12の排ガス出口12bにおける排ガスの温度は、例えば50℃~150℃、より好ましくは80℃~120℃である。
【0086】
白煙防止予備熱交換器12の排ガス出口12bから第5経路部分25に排出された排ガスは、その第5経路部分25を通って湿式洗煙装置14の排ガス入口14aに導かれ、その排ガス入口14aから湿式洗煙装置14内に導入される。湿式洗煙装置14の排ガス入口14aにおける排ガスの温度は、白煙防止予備熱交換器12の排ガス出口12bにおける排ガスの温度と同様の温度であり、例えば50℃~150℃、より好ましくは80℃~120℃である。
【0087】
湿式洗煙装置14では、排ガスの湿式洗煙処理が行われ、その排ガスに含まれる有害成分が除去される。この湿式洗煙処理により排ガスの温度は低下する。湿式洗煙処理後の排ガスは、湿式洗煙装置14の排ガス出口14bから排ガス経路4の第6経路部分26に排出される。湿式洗煙装置14の排ガス出口14bにおける湿式洗煙処理後の排ガスの温度は、例えば30℃~70℃、より好ましくは30℃~50℃である。第6経路部分26に排出された排ガスは、その第6経路部分26の下流側の端部から大気へ放出される。
【0088】
一方、ブロワ18から送り出される白煙防止空気が第1空気経路部分53を通って白煙防止予備熱交換器12の空気入口12cに導かれ、その空気入口12cから各予備熱交換器空気流路48に導入される。白煙防止予備熱交換器12の空気入口12cにおける白煙防止空気の温度、換言すれば各予備熱交換器空気流路48の上流端における白煙防止空気の温度は、例えば外気温と同じであり20℃~30℃である。
【0089】
白煙防止予備熱交換器12では、各予備熱交換器空気流路48を流れる白煙防止空気と各予備熱交換器排ガス流路47を流れる排ガスとの間で熱交換が行われ、白煙防止空気が排ガスの熱によって加熱される。白煙防止予備熱交換器12において加熱された白煙防止空気は、各予備熱交換器空気流路48の下流端から空気出口12dを通って第2空気経路部分54に排出される。白煙防止予備熱交換器12の空気出口12dにおける白煙防止空気の温度、換言すれば各予備熱交換器空気流路48の下流端における白煙防止空気の温度は、例えば50℃~220℃である。
【0090】
白煙防止予備熱交換器12の空気出口12dから第2空気経路部分54に排出された白煙防止空気は、その第2空気経路部分54を通って白煙防止主熱交換器8の空気入口8cに導かれ、その空気入口8cから主熱交換器空気流路52に導入される。白煙防止主熱交換器8の空気入口8cにおける白煙防止空気の温度、換言すれば主熱交換器空気流路52の上流端における白煙防止空気の温度は、白煙防止予備熱交換器12の空気出口12dにおける白煙防止空気の温度と同様の温度であり、例えば50℃~220℃である。
【0091】
白煙防止主熱交換器8では、主熱交換器空気流路52を流れる白煙防止空気と主熱交換器排ガス流路51を流れる排ガスとの間で熱交換が行われ、白煙防止空気が排ガスの熱によってさらに加熱される。白煙防止主熱交換器8において加熱された白煙防止空気は、主熱交換器空気流路52の下流端から空気出口8dを通って第3空気経路部分56に排出される。白煙防止主熱交換器8の空気出口8dにおける白煙防止空気の温度、換言すれば主熱交換器空気流路52の下流端における白煙防止空気の温度は、例えば300℃~550℃である。
【0092】
白煙防止主熱交換器8の空気出口8dから第3空気経路部分56に排出された白煙防止空気は、その第3空気経路部分56を通って発電設備16の温水ボイラ62に導入される。温水ボイラ62では、導入された白煙防防止空気により水が加熱されて温水が生成される。この温水ボイラ62で生成された温水は、発電装置64に導入される。発電装置64では、導入された温水を熱源として発電を行う。発電装置64において発電に利用された温水は、温水ボイラ62に戻り、その温水ボイラ62において白煙防止空気により再度加熱される。すなわち、温水ボイラ62と発電装置64との間で水が循環する。
【0093】
温水ボイラ62において水を加熱した白煙防止空気は、その温度が低下し、温水ボイラ62の空気出口62bから第4空気経路部分58に排出される。温水ボイラ62の空気出口62bにおける白煙防止空気の温度は、例えば100℃~150℃である。
【0094】
温水ボイラ62の空気出口62bから第4空気経路部分58に排出された白煙防止空気は、その第4空気経路部分58を通って排ガス経路4のうち湿式洗煙装置14よりも下流側の部位、具体的には排ガス経路4の下流側の端部(第6経路部分26の下流側の端部)に導入されて排ガスに添加される。この排ガス経路4に導入される白煙防止空気の温度は、前記温水ボイラ62の空気出口62bにおける白煙防止空気の温度と同様の温度であり、排ガス経路4の下流側の端部における排ガスの温度よりも高い。このため、この白煙防止空気は、排ガスの温度を上昇させ、それによって、排ガス経路4の下流側の端部から大気に放出される排ガスが大気で冷却されたとしてもその排ガス中の水蒸気が凝縮して白煙となるのを防止する。
【0095】
本実施形態による廃棄物処理方法は、以上のような一連のプロセスにより行われる。そして、この廃棄物処理方法では、廃棄物の処理開始後、ある期間ごとに洗浄装置19により予備熱交換器排ガス流路47内の洗浄が行われる。具体的には、洗浄装置19により予備熱交換器排ガス流路47に通水され、それによって予備熱交換器排ガス流路47内が洗浄される。
【0096】
本実施形態では、排ガス経路4上において湿式洗煙装置14の上流側に位置する白煙防止主熱交換器8と白煙防止予備熱交換器12とのうち下流側の白煙防止予備熱交換器12の次に上流側の白煙防止主熱交換器8という順番で白煙防止空気を通して排ガスから白煙防止空気に熱を回収できるため、白煙防止空気の温度を高くすることができる。
【0097】
具体的に、例えば
図4に示す比較例による廃棄物処理設備101では、焼却炉102から排出された排ガスが排ガス経路104を通じて燃焼用空気熱交換器106、白煙防止第1主熱交換器108、白煙防止第2主熱交換器109、湿式洗煙装置110、白煙防止予備熱交換器112の順番で流れ、ブロワ120から送り出された空気がまず湿式洗煙装置110の下流側の白煙防止予備熱交換器112に導入されてその白煙防止予備熱交換器112において排ガスとの熱交換により加熱され、その後、その空気は、白煙防止第1主熱交換器108に導入されて排ガスとの熱交換により加熱された後、その白煙防止第1主熱交換器108の下流側の白煙防止第2主熱交換器109に導入されて排ガスとの熱交換によりさらに加熱されるようになっている。排ガス経路104では下流側へ向かうにつれて排ガスの温度が低下するため、この比較例による廃棄物処理設備101のように、白煙防止第1主熱交換器108と白煙防止第2主熱交換器109とのうち上流側に位置する白煙防止第1主熱交換器108において排ガスと空気とを熱交換させることによって排ガスから空気に熱を回収し、その後、その空気を下流側の白煙防止第2主熱交換器109に導入してその白煙防止第2主熱交換器109において排ガスとさらに熱交換させることによって排ガスから空気に熱を回収する場合には、先に高温の排ガスとの熱交換により熱を回収した空気を次により低温の排ガスと熱交換させて熱を回収することになり、白煙防止空気
の温度が低くなる。
【0098】
これに対し、本実施形態では、まず下流側の白煙防止予備熱交換器12において排ガスと白煙防止空気とを熱交換させることによって排ガスから白煙防止空気に熱を回収し、その後、その熱を回収した白煙防止空気を上流側の白煙防止主熱交換器8に導入してその白煙防止主熱交換器8においてより高温の排ガスとさらに熱交換させることにより排ガスから白煙防止空気にさらに熱を回収するため、排ガスとの熱交換により得られる白煙防止空気の温度を高くすることができる。
【0099】
また、本実施形態では、白煙防止主熱交換器8において伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる程度まで低下するのを防止できることから、白煙防止主熱交換器8と白煙防止予備熱交換器12とのうち白煙防止予備熱交換器12の予備熱交換器排ガス流路47を画定する第1プレート49及び第2プレート50に耐食性の高い材料を用いるだけで白煙防止主熱交換器8と白煙防止予備熱交換器12のいずれにおいても排ガスの結露に起因する腐食の発生を防止できる。
【0100】
具体的に、例えば
図4に示す比較例による廃棄物処理設備101では、白煙防止予備熱交換器112において湿式洗煙装置110による湿式洗煙処理後の排ガスと空気とを熱交換させるため、この湿式洗煙処理により温度が著しく低下した排ガスとの熱交換により加熱される空気の温度の上昇は僅かである。このため、その空気が白煙防止予備熱交換器112から上流側の白煙防止第1主熱交換器108に導入されると、その白煙防止第1主熱交換器108では当該空気と排ガスとの熱交換により排ガスの温度が著しく低下し、その白煙防止第1主熱交換器108に導入される排ガスの温度が元々あまり高くない場合には当該白煙防止第1主熱交換器108での熱交換によって排ガスの温度が排ガスの結露を生じる温度まで低下し、排ガスの結露が発生する可能性がある。また、その白煙防止第1主熱交換器108の下流側に位置する白煙防止第2主熱交換器109では、排ガスの温度がより低下するため、白煙防止第1主熱交換器108で排ガスの結露が発生する場合には、当該白煙防止第2主熱交換器109においても排ガスの結露が発生する。従って、この比較例による廃棄物処理設備101では、湿式洗煙装置110の上流側に位置する白煙防止第1主熱交換器108及び白煙防止第2主熱交換器109のいずれにおいても、排ガスの結露が発生する可能性があり、その排ガスの結露に起因して腐食が発生する虞がある。
【0101】
これに対し、本実施形態では、湿式洗煙装置14の上流側に位置する白煙防止予備熱交換器12において、それよりも上流側よりは温度が低下しているものの湿式洗煙処理前であるため或る程度高い温度を保った排ガスと熱交換して加熱された白煙防止空気を、さらに上流側の白煙防止主熱交換器8に導入してその白煙防止主熱交換器8でより高温の排ガスと熱交換させるため、当該白煙防止主熱交換器8での熱交換によって伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる程度まで低下するのを防止できる。このため、白煙防止主熱交換器8と白煙防止予備熱交換器12とのうち排ガスの結露が生じるとすれば、より下流側に位置していて導入される排ガスの温度が上流側よりも低く且つ導入される白煙防止空気の温度も低い白煙防止予備熱交換器12に限定される。このため、白煙防止予備熱交換器12のうち予備熱交換器排ガス流路47を画定する第1プレート49及び第2プレート50が白煙防止主熱交換器8のうち主熱交換器排ガス流路51を画定する部分よりも耐食性の高い材料からなるだけで、すなわち白煙防止予備熱交換器12と白煙防止主熱交換器8とのうち白煙防止予備熱交換器12の予備熱交換器排ガス流路47を画定する第1プレート49及び第2プレート50に耐食性の高い材料を用いるだけで、白煙防止主熱交換器8と白煙防止予備熱交換器12のいずれにおいても排ガスの結露に起因する腐食の発生を防止できる。
【0102】
また、本実施形態では、白煙防止主熱交換器8において伝熱部の表面温度が排ガスの結
露を生じる程度まで低下するのを防止できることから、その白煙防止主熱交換器8における伝熱部の表面温度を排ガスの結露が生じる温度よりも高い温度域に維持するために排ガス経路4上における白煙防止主熱交換器8の位置の制限が厳しくなるのを防ぐことができるとともに、焼却炉2の運転条件を緩和できる。
【0103】
具体的に、排ガス経路4では下流側へ向かうにつれて排ガスの温度が低下することから、仮に白煙防止主熱交換器8に導入される白煙防止空気の温度が低くて当該白煙防止主熱交換器8の伝熱部の温度が低下したとしてもその伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる温度よりも高い温度域に維持されるような排ガス経路4上の位置に白煙防止主熱交換器8の位置を制限する必要がある。これに対し、本実施形態では、前記のように白煙防止予備熱交換器12において湿式洗煙処理前の或る程度高い温度を保った排ガスとの熱交換により加熱された白煙防止空気が白煙防止主熱交換器8に導入されるため、白煙防止主熱交換器8において排ガスの結露が生じる程度まで伝熱部の表面温度が低下しない。そのため、排ガス経路4上における白煙防止主熱交換器8の位置の制限が厳しくなるのを防ぐことができる。また、白煙防止主熱交換器8において伝熱部の表面温度を排ガスの結露が生じる温度よりも高い温度域に維持するために焼却炉2から排出される排ガスの温度についての当該焼却炉2の運転条件を緩和できる。
【0104】
また、本実施形態では、白煙防止主熱交換器8で加熱されてその白煙防止主熱交換器8を通過した白煙防止空気が白煙防止空気経路20の第3空気経路部分56及び第4空気経路部分58を通って排ガス経路4の下流側の端部に導入される。このため、その排ガス経路4の下流側の端部に導入される白煙防止空気により排ガスを昇温させてその排ガスが当該下流側の端部から大気へ放出されるときに白煙となるのを防止できる。
【0105】
また、本実施形態では、白煙防止主熱交換器8において加熱されてその白煙防止主熱交換器8を通過した白煙防止空気が発電設備16に導入され、発電設備16は、その導入された白煙防止空気の熱エネルギを利用して発電を行う。このため、上記のように排ガスからの熱回収により得られる白煙防止空気の温度を高くすることが可能な廃棄物処理設備1においてその回収した熱エネルギを有効に活用して発電を行うことができる。
【0106】
また、本実施形態では、排ガス経路4上において白煙防止予備熱交換器12の上流側に位置する集塵装置10により排ガスに含まれる塵が除去されることから、白煙防止予備熱交換器12の予備熱交換器排ガス流路47に導入される排ガスには塵が含まれず、その塵による予備熱交換器排ガス流路47の閉塞が生じるのを防ぐことができる。さらに、予備熱交換器排ガス流路47内で排ガスの結露が生じたとしても、腐食成分を含んだ結露が前記閉塞によって予備熱交換器排ガス流路47から抜けにくくなるといった事態が生じるのを回避でき、このようにして、前記閉塞に起因した白煙防止予備熱交換器12における腐食の発生の促進を防ぐことができる。また、以上のように予備熱交換器排ガス流路47の閉塞を防止できることから、当該予備熱交換器排ガス流路47を狭くすることが可能であり、その結果、白煙防止予備熱交換器12を小さくすることも可能になる。
【0107】
また、集塵装置10は、排ガス経路4上において白煙防止主熱交換器8の下流側に位置するため、当該集塵装置10には白煙防止主熱交換器8において白煙防止空気を加熱して温度が低下した排ガスが流入する。このため、集塵装置10に高い耐熱性が要求されるのを回避できる。
【0108】
また、本実施形態では、洗浄装置19により予備熱交換器排ガス流路47内を洗浄することができるので、予備熱交換器排ガス流路47の内壁面に付着した排ガス中の腐食成分を洗い流すことができる。そのため、白煙防止予備熱交換器12における腐食の発生をより確実に防止できる。
【0109】
また、本実施形態では、燃焼用空気供給装置6が排ガスの熱エネルギを利用して燃焼用空気を加熱して焼却炉2に供給するように構成されている。仮に、排ガスの熱エネルギとは関係のない別のエネルギで燃焼用空気を加熱して焼却炉2に供給する場合には別途エネルギを消費するが、本実施形態では、前記のように燃焼用空気供給装置6が排ガスの熱エネルギを利用して燃焼用空気を加熱して焼却炉2に供給するため、別途消費するエネルギを削減できる。
【0110】
また、燃焼用空気供給装置6は排ガス経路4上において白煙防止主熱交換器8の上流側の位置における排ガスの熱エネルギを利用して燃焼用空気の加熱を行うため、その燃焼用空気供給装置6による排ガスの熱エネルギの利用によって温度が低下した排ガスが白煙防止主熱交換器8に導入される。この場合、白煙防止主熱交換器8の伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる温度域まで低下することが心配されるが、上述のように白煙防止主熱交換器8に導入される白煙防止空気は白煙防止予備熱交換器12において湿式洗煙処理前の排ガスにより加熱されて比較的高い温度まで昇温しているので、この白煙防止空気と熱交換した排ガスの温度によって白煙防止主熱交換器8の伝熱部の表面温度が排ガスの結露を生じる温度域まで低下するのが回避される。従って、本実施形態では、燃焼用空気の加熱及び焼却炉2への供給のために別途消費するエネルギを削減しつつ、白煙防止主熱交換器8における排ガスの結露による腐食の発生も防止できる。
【0111】
前記焼却炉2において焼却される廃棄物の種類は特に限定されないが、当該焼却路2では、前記廃棄物としてアンモニア成分を含むものが焼却され、当該廃棄物の焼却によってアンモニア成分を含む排ガスが生成されることが、好ましい。アンモニア成分を含む廃棄物としては、例えば汚泥が挙げられる。汚泥としては、下水や廃水の処理で生じた汚泥を脱水処理した脱水汚泥や乾燥処理した乾燥汚泥などがあるが、これに限定されない。前記排ガスに含まれるアンモニアは、同じく排ガス中に含まれて腐食の要因となる酸と中和反応することにより、特に排ガス温度が低くて前記酸が発生しやすい予備熱交換器における腐食の発生を抑制し、これにより、前記腐食防止機能部の簡素化(例えば予備熱交換器において耐食性の高い材料を使用する部分の節減)を行ってコストの低減を図ることを可能にする。
【0112】
例えば、前記廃棄物の焼却によりSOxまたはHClを含む排ガスが発生すると、そのSOxやHClが比較的低い温度下において硫酸または塩酸となり、腐食の要因となり得るが、前記汚泥を含む廃棄物の焼却は、下記の(化1)及び(化2)のような中和反応をすることが可能なアンモニアの発生を伴い、当該中和反応によって(特に排ガス温度の低い)予備熱交換器での酸による腐食を抑制することができる。
【0113】
H2SO4+2NH3→(NH4)2SO4 (化1)
【0114】
HCl+NH3→NH4Cl (化2)
【0115】
排ガス中にアンモニアが存在しない場合、熱交換器の伝熱部(例えば伝熱板や伝熱管)には高温高濃度の酸(例えば140°C;60wt%の硫酸)が付着して腐食による減肉を加速させるおそれがあるが(例えば20mm/年程度)、汚泥を含む廃棄物の焼却により生成される排ガスに含まれるアンモニアは、前記の腐食による減肉を有効に抑止し、前記伝熱部の寿命を飛躍的に向上させることが可能である。このことは、前記伝熱部での耐腐食性の高い材料の使用量を節減してコストの削減を図ることも可能にする。
【0116】
(変形例)
本発明による廃棄物処理設備及びそれを用いた廃棄物処理方法は、前記のようなものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法に以下のような構成を採用可能である。
【0117】
集塵装置として、バグフィルタの代わりにいわゆるセラミックフィルタやサイクロンが用いられてもよい。セラミックフィルタは、排ガスから塵を捕捉するろ材としてセラミック製のろ材が採用されたものであり、高い耐熱性を有する。また、バグフィルタを利用する場合、バグフィルタの前段にガス冷却器を設けてもよい。
【0118】
集塵装置は、排ガス経路上において主熱交換器の上流側に配置されて主熱交換器に導入される前の排ガスから塵を除去してもよい。この場合、集塵装置に導入される排ガスの温度は、前記実施形態のように白煙防止主熱交換器8の下流側で且つ白煙防止予備熱交換器12の上流側に配置された集塵装置10に導入される排ガスの温度よりも高くなる。このため、このように集塵装置を主熱交換器の上流側に配置する場合には、その集塵装置として耐熱性の高いセラミックフィルタを用いることが好ましい。
【0119】
発電設備は、主熱交換器において加熱されてその主熱交換器を通過した空気が導入されて駆動される蒸気タービンを有していてその蒸気タービンの駆動により発電を行うように構成されたものであってもよい。発電設備に温水ボイラを利用する場合、その温水ボイラによって加熱された温水は100℃以上の加熱水でもよい。また、発電設備は、温水ボイラや蒸気タービンを使用せずに、白煙防止空気を直接熱源として発電装置に供給して発電する構成であってもよい。あるいは、前記発電設備で熱エネルギの一部が回収された後の熱交換気体の残りの熱エネルギを白煙防止に利用することも可能である。
【0120】
本発明において、燃焼用空気供給装置は、タービンが排ガスによって駆動されるように構成されたものであってもよい。具体的には、タービンが排ガス経路上に配置されてその排ガス経路から排ガスが導入されるようになっており、その導入された排ガスによってタービンが駆動され、そのタービンの駆動に伴って圧縮機が作動するようになっていてもよい。また、燃焼用空気供給装置は、過給機を用いたものでなくてもよく、流動ブロワと空気予熱器によって構成されたものであってもよい。
【0121】
本発明における主熱交換器は、排ガス経路上に並んで配置された複数段の熱交換器を含み、その複数段の熱交換器において空気を順次排ガスと熱交換させるように構成されていてもよい。
【0122】
また、本発明における予備熱交換器及び主熱交換器は、白煙防止空気を加熱するためのものに必ずしも限定されない。すなわち、予備熱交換器及び主熱交換器は、排ガス経路の下流側の端部から大気へ放出される排ガスが白煙となるのを防止するためにその下流側の端部において排ガスの温度を上昇させるべくその排ガスに添加する空気と排ガスとを熱交換させるものに限らず、単に排ガスから熱回収するために熱交換気体と排ガスとを熱交換させるものであってもよい。
【0123】
予備熱交換器の内部に設けられる予備熱交換器排ガス流路及び予備熱交換器空気流路は、直線形状のものに限らず、蛇行形状やその他の形状のものであってもよい。また、予備熱交換器排ガス流路及び予備熱交換器空気流路は、その内部を流体が入口から出口へ向かって流れることが可能な空間であればよく、流路幅に対して流路長が著しく大きい細長い形状のものにも限定されない。
【0124】
また、予備熱交換器に用いられるプレート熱交換器において、互いに積層された第1プレートと第2プレートの一方のみに流路を形成するための溝が形成され、他方には溝が形成されていなくてもよい。すなわち、流路を形成するための溝が形成されたプレートと溝が形成されていない平板状のプレートとが交互に積層されて、その積層方向において隣り合う流路同士の間に、溝が形成されていない平板状のプレートが介在するようにしてもよい。
【0125】
また、本発明における腐食防止機能部は、必ずしも予備熱交換器のうち予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の材料によって当該部分の腐食を防止することを必須とするものではない。すなわち、予備熱交換器のうち予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の材料は、主熱交換器のうち主熱交換器排ガス流路を画定する部分と同等以下の耐食性を有する材料であってもよい。この場合、腐食防止機能部は、他の手段、例えば予備熱交換器排ガス流路内の洗浄を行う洗浄装置によって、予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の腐食を防止するものであってもよい。
【0126】
また、逆に、本発明における腐食防止機能部は、予備熱交換器のうち予備熱交換器排ガス流路を画定する部分の材料の高い耐食性のみによって当該部分の腐食を防止するものであってもよい。この場合、腐食防止機能部は、洗浄装置を有していなくてもよい。
【0127】
また、予備熱交換器に送られる熱交換気体は、ブロワ等の送風装置により送風される外気からなる白煙防止空気に必ずしも限定されない。例えば、湿式洗煙装置(排煙処理塔)での湿式洗煙処理後の排ガスを熱交換気体として予備熱交換器に供給してもよい。湿式洗煙装置の後段には一般的に当該湿式洗煙装置から湿式洗煙処理後の排ガスを誘引するための誘引ファンが設けられるため、その誘引ファンを利用して湿式洗煙装置から誘引された湿式洗煙処理後の排ガスの一部又は全部を予備熱交換器に熱交換気体として供給すればよい。この場合、予備熱交換器に熱交換気体を送る送風装置を別途設ける必要がない。そして、予備熱交換器に供給した熱交換気体としての湿式洗煙処理後の排ガスをその予備熱交換器において加熱した後、主熱交換器へ供給し、その主熱交換器でさらに加熱すればよい。湿式洗煙処理後の排ガスの一部が熱交換気体として予備熱交換器を経て主熱交換器に供給される場合には、主熱交換器で加熱された湿式洗煙処理後の排ガスを、排ガス経路の下流側の端部において排ガスに添加してその下流側の端部から排出される排ガスが白煙となるのを防止するために用いてもよい。この場合、主熱交換器で加熱された湿式洗煙処理後の排ガスの保有する熱エネルギを用いて上記実施形態に記載の発電と同様の発電を行ってもよい。また、湿式洗煙処理後の排ガスの全部が熱交換気体として予備熱交換器を経て主熱交換器に供給される場合には、主熱交換器から排出される湿式洗煙処理後の排ガスが白煙を生じない温度になるように予備熱交換器及び主熱交換器で当該湿式洗煙処理後の排ガスを加熱し、そのように加熱された排ガスをそのまま大気へ放出するか、もしくは、その加熱された排ガスを白煙が生じない温度に維持しつつ当該排ガスから熱回収した上で大気へ放出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 廃棄物処理設備
2 焼却炉
4 排ガス経路
6 燃焼用空気供給装置
8 白煙防止主熱交換器(主熱交換器)
10 集塵装置
12 白煙防止予備熱交換器(予備熱交換器)
14 湿式洗煙装置
15 腐食防止機能部
16 発電設備
19 洗浄装置
47 予備熱交換器排ガス流路
51 主熱交換器排ガス流路
56 第3空気経路部分(加熱気体経路)
58 第4空気経路部分(加熱気体経路)