(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134022
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 125
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044096
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 輝
(72)【発明者】
【氏名】石原 正教
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB58
2C056EC37
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA46
(57)【要約】
【課題】ユーザの所望するくぼみを備えた印刷物を印刷するインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタ10は、輪郭部領域11aにインクを吐出させる輪郭部吐出制御部93と、外側部領域11bにインクを吐出させる外側部吐出制御部94とを備えている。輪郭部吐出制御部93によりインクを吐出したあと、外側部吐出制御部94によりインクを吐出することにより、くぼみHLを備えるくぼみ印刷パターンPTが印刷される。輪郭部領域11aに先にインクを吐出することにより、外側部領域11bに吐出されたインクがくぼみHLに広がることが抑制される。
【選択図】
図9D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
くぼみと、前記くぼみを囲む輪郭部と、平面視にて前記輪郭部の外側である外側部と、を備えるくぼみ印刷パターンを印刷するインクジェットプリンタであって、
メディアが載置されるプラテンと、
前記メディアに向けてインクを吐出するインクヘッドと、
前記メディアと前記インクヘッドとを相対移動させる移動機構と、
前記インクヘッドおよび前記移動機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記メディア上における前記輪郭部が形成される領域である輪郭部領域に前記インクを吐出させる輪郭部吐出制御部と、
前記輪郭部領域に前記インクが吐出された後に、前記メディア上における前記外側部が形成される領域である外側部領域に前記インクを吐出させる外側部吐出制御部と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクに光を照射する照射装置を備え、
前記制御装置は、前記照射装置を制御する照射制御部を備え、
前記照射制御部は、前記輪郭部吐出制御部により吐出した前記インクが前記輪郭部領域に着弾してから、前記照射装置により光が照射されるまでの時間である第1照射時間よりも、前記外側部吐出制御部により吐出した前記インクが前記外側部領域に着弾してから、前記照射装置により光が照射されるまでの時間である第2照射時間の方が長くなるように、前記照射装置を制御する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インクに光を照射する照射装置を備え、
前記照射装置は、前記輪郭部吐出制御部により吐出した前記インクが前記輪郭部領域に着弾してから、前記照射装置により光が照射されるまでの時間である第1照射時間よりも、前記外側部吐出制御部により吐出した前記インクが前記外側部領域に着弾してから、前記照射装置により光が照射されるまでの時間である第2照射時間の方が長くなるように配置されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インクに光を照射する照射装置を備え、
前記制御装置は、前記照射装置を制御する照射制御部を備え、
前記照射制御部は、前記輪郭部領域に着弾した前記インクに向けて前記照射装置が照射する光の強度である第1照射強度よりも、前記外側部領域に着弾した前記インクに向けて前記照射装置が照射する光の強度である第2照射強度の方が弱くなるように、前記照射装置を制御する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記インクを乾燥させる乾燥装置を備え、
前記制御装置は、前記乾燥装置を制御する乾燥制御部を備え、
前記乾燥制御部は、前記輪郭部領域に前記インクが着弾してから前記乾燥装置により前記インクが乾燥されるまでの時間である第1乾燥時間よりも、前記外側部領域に前記インクが着弾してから前記乾燥装置により前記インクが乾燥されるまでの時間である第2乾燥時間の方が長くなるように前記乾燥装置を制御する請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インクを乾燥させる乾燥装置を備え、
前記乾燥装置は、前記輪郭部領域に前記インクが着弾してから前記乾燥装置により前記インクが乾燥されるまでの時間である第1乾燥時間よりも、前記外側部領域に前記インクが着弾してから前記乾燥装置により前記インクが乾燥されるまでの時間である第2乾燥時間の方が長くなるように配置されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記インクを乾燥させる乾燥装置を備え、
前記制御装置は、前記乾燥装置を制御する乾燥制御部を備え、
前記乾燥制御部は、前記輪郭部領域に着弾した前記インクを前記乾燥装置により乾燥するときの温度である第1乾燥温度よりも、前記外側部領域に着弾した前記インクを前記乾燥装置により乾燥するときの温度である第2乾燥温度の方が低くなるように、前記乾燥装置を制御する請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記制御装置は、
印刷データに基づく画像層を形成するインクを吐出する画像吐出制御部を備え、
前記輪郭部吐出制御部および前記外側部吐出制御部は、前記画像吐出制御部により吐出されたインクで形成された前記画像層にインクを吐出する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記輪郭部吐出制御部および/または前記外側部吐出制御部は、前記輪郭部吐出制御部により前記インクヘッドがインクを吐出するときの単位面積あたりのインク吐出量である第1吐出量よりも、前記外側部吐出制御部により前記インクヘッドがインクを吐出するときの単位面積当たりのインク吐出量である第2吐出量が多くなるように前記インクヘッドを制御する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
くぼみと、前記くぼみを囲む輪郭部と、平面視にて前記輪郭部の外側である外側部と、を備えるくぼみ印刷パターンをメディアに印刷する印刷方法であって、
前記メディアにおける前記輪郭部が形成される領域である輪郭部領域にインクを吐出させる輪郭部印刷工程と、
前記輪郭部印刷工程の後に、前記メディアにおける前記外側部が形成される領域である外側部領域に前記インクを吐出させる外側部印刷工程と、を含む印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷物において、ユーザの所望する外観を実現するために、メディア上にくぼみを形成する印刷が知られている。例えば、特許文献1には、微小開口(くぼみ)が配列された透明樹脂インクのパターンを転写したインクジェット記録用樹脂メディアが開示されている。係るパターンは、微小開口が多数配列されたものであり、微小開口部には透明樹脂インクが吐出されていない。したがって、微小開口部は、くぼんでいる。インクジェット記録用樹脂メディアは、透明樹脂インクのパターンにより光沢を備え、好ましい外観を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように微小開口が配列されるようにインクを吐出すると、インクが硬化または乾燥する前に、微小開口部にインクが流れ込み、微小開口の形状が所望の通りに形成されない虞がある。
【0005】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザの所望するくぼみを備えた印刷物を印刷するインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットプリンタは、くぼみと、前記くぼみを囲む輪郭部と、平面視にて前記輪郭部の外側である外側部と、を備えるくぼみ印刷パターンを印刷するインクジェットプリンタであって、メディアが載置されるプラテンと、前記メディアに向けてインクを吐出するインクヘッドと、前記メディアと前記インクヘッドとを相対移動させる移動機構と、前記インクヘッドおよび前記移動機構を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記メディア上における前記輪郭部が形成される領域である輪郭部領域に前記インクを吐出させる輪郭部吐出制御部と、前記輪郭部領域に前記インクが吐出された後に、前記メディア上における前記外側部が形成される領域である外側部領域に前記インクを吐出させる外側部吐出制御部と、を備えている。
【0007】
本発明のインクジェットプリンタでは、前記くぼみ印刷パターンの印刷にあたって、前記輪郭部吐出制御部が前記インクヘッドを制御し、前記メディアの前記輪郭部領域にインクが吐出させる。その後、前記外側部吐出制御部が前記インクヘッドを制御し、前記メディアの前記外側部領域にインクが吐出させる。前記輪郭部領域に先に前記インクが吐出されることにより、前記輪郭部領域に吐出されたインクは、前記外側部領域に吐出されたインクよりも先に硬化または乾燥する。したがって、前記外側部領域に吐出されたインクは、前記輪郭部領域に吐出されて先に硬化または乾燥したインクにせき止められる。よって、前記外側部領域に吐出されたインクが前記輪郭部の内側に広がることが抑制される。すなわち、メディア上における前記くぼみが形成される領域に前記インクが流れ込むことが抑制され、前記くぼみの形状が変化することが抑制される。したがって、所望の形状のくぼみを形成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザの所望するくぼみを備えた印刷物を印刷するインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るプリンタの正面図である。
【
図2】第1実施形態に係るキャリッジおよび照射装置の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
【
図4】
図4(a)は、輪郭部領域にインクが吐出されたときのメディアおよびインクの平面図であり、
図4(b)は、輪郭部領域にインクが吐出されたときのメディアの断面図である。
【
図5】
図5(a)は、外側部領域にインクが吐出されたときのメディアおよびインクの平面図であり、
図5(b)は、外側部領域にインクが吐出されたときのメディアの断面図である。
【
図6】
図6(a)は、輪郭部が形成された後、外側部領域にインクが吐出されたときのくぼみの拡大断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)の状態から時間が経過したときの図である。
【
図8】第1実施形態に係るくぼみ印刷パターンを印刷する手順を示すフローチャートである。
【
図9A】画像層の一部が形成されるときのプリンタの動きを表す模式図である。
【
図9B】輪郭部が形成されるときのプリンタの動きを表す模式図である。
【
図9C】外側部領域にインクが吐出されるときのプリンタの動きを表す模式図である。
【
図9D】外側部の一部が形成されるときのプリンタの動きを表す模式図である。
【
図10】第2実施形態に係るプリンタの正面図である。
【
図11】第2実施形態に係るキャリッジおよびヒータの平面図である。
【
図12】第2実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
【
図13】第2実施形態に係るくぼみ印刷パターンを印刷する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。プリンタ10は、所謂、Roll-to-Rollタイプのインクジェット式のプリンタである。プリンタ10は、メディア11に印刷を行う。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは、主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは、副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)する方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0012】
図1に示すように、プリンタ10は、メディア11に印刷を行い、
図5(a)に示すように、くぼみ印刷パターンPTを形成する。ここで、本実施形態では、くぼみ印刷パターンPTとは、メディア11上に、あるいは、印刷データに基づきメディア11上に印刷された画像層PL上に、複数のくぼみHLが規則正しく配列された印刷パターンのことをいう。ただし、くぼみ印刷パターンPTは1つのくぼみHLを形成する印刷パターンであってもよい。本実施形態では、
図5(a)に示すように、平面視にて円形のくぼみHLが主走査方向Yおよび副走査方向Xに正方格子状に並んだくぼみ印刷パターンPTが画像層PL上に印刷される。くぼみHLは、所望の触感や光沢をメディア11あるいは画像層PLに与えるものである。ただし、くぼみHLの形状や配列はこれに限定されない。くぼみHLの径の長さやくぼみHLの上下方向の深さ、くぼみHL同士の間隔、平面視におけるくぼみHLの形状、配列方法等を変更することにより、得られる触感や光沢が変化する。平面視におけるくぼみHLの形状は、
図5(a)に示す円形の他、例えば、三角形や四角形等であってもよい。くぼみHLの配列は、
図5(a)に示す正方格子状の他、例えば、平面視にて三角格子状に配列されていてもよいし、不規則に配列されていてもよい。メディア11は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、メディア11は、ロール状に巻かれたものが所定の長さに切断されたシート状のものであってもよい。メディア11は、例えば、記録紙である。ただし、メディア11は、記録紙に限定されない。例えば、メディア11には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。本実施形態では、プリンタ10の後側から前側に搬送される。したがって、プリンタ10の後側が副走査方向Xの上流側であり、プリンタ10の前側が副走査方向Xの下流側である。ただし、副走査方向Xの上流側および下流側は、インクヘッドの副走査方向Xへの移動に基づいて定義されてもよい。例えば、メディアが搬送されず、インクヘッドが主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動するガントリータイプのプリンタにおいては、インクヘッドの副走査方向Xにおける移動先の方向が副走査方向Xの上流側であり、インクヘッドの副走査方向Xにおける移動元の方向が副走査方向Xの下流側となる。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、プラテン12と、操作パネル13と、キャリッジ移動機構20と、キャリッジ30と、媒体搬送機構50と、インク供給システム60と、照射装置65と、制御装置90と、を備えている。キャリッジ30には、インクヘッド40が備えられている。照射装置65は、キャリッジ30の左方および右方に接続されている。
【0014】
プラテン12は、メディア11への印刷の際、メディア11を支持する部材である。プラテン12は、主走査方向Yに延びている。プラテン12には、メディア11が載置される。プラテン12は、本体ケース70に設けられている。
【0015】
操作パネル13は、本体ケース70に設けられている。操作パネル13には、プリンタの状態を表示する表示部14と、ユーザによって操作される入力キー15が備えられている。操作パネル13は、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置90に接続されている。
【0016】
キャリッジ移動機構20は、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させる機構である。キャリッジ移動機構20は、本発明における移動機構の一例である。キャリッジ移動機構20は、ガイドレール21と、プーリ22と、プーリ23と、ベルト24と、キャリッジモータ25とを備えている。ガイドレール21は、キャリッジ30の主走査方向Yへの移動をガイドする。ガイドレール21は、プラテン12の上方に配置されている。ガイドレール21は、本体ケース70に設けられている。ガイドレール21は、主走査方向Yに延びている。プーリ22は、ガイドレール21の左端より左方に設けられている。プーリ23は、ガイドレール21の右端より右方に設けられている。ベルト24は、プーリ22とプーリ23とに巻き掛けられている。右側のプーリ23には、キャリッジモータ25が接続されている。ただし、キャリッジモータ25は、左側のプーリ22に接続されていてもよい。キャリッジモータ25が駆動して、プーリ23が回転することにより、プーリ22とプーリ23との間においてベルト24が走行する。キャリッジ30は、ベルト24に取り付けられている。キャリッジ30は、ガイドレール21に係合しており、ガイドレール21と摺動自在に設けられている。したがって、キャリッジモータ25の駆動によって、ベルト24が走行し、キャリッジ30は主走査方向Yに移動する。
【0017】
キャリッジ30には、インクヘッド40が備えられている。キャリッジ30が主走査方向Yに移動するときに、光硬化性を有するインク(光硬化性インク)が、インクヘッド40からメディア11に吐出されることにより印刷が行われる。光硬化性インクは、インク供給システム60により、インクヘッド40に供給される。ただし、インクヘッド40から吐出されるインクは、光硬化性インクに限定されない。
【0018】
光硬化性インクは、光が照射されると硬化する性質を有する。光硬化性インクは、顔料等の着色剤と光重合性モノマーと光重合開始剤とを含み、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、捕捉剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、溶剤等を含み得る。光硬化性インクは、例えば、プロセスカラーインクやホワイトインク、クリアインクである。プロセスカラーインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク等が挙げられる。光硬化性インクとしては、例えば、紫外線硬化型のインクが挙げられる。
【0019】
図2に示すように、インクヘッド40の数は5つである。5つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。5つのインクヘッド40は、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。5つのインクヘッド40は、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長くなるように形成されている。5つのインクヘッド40は、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。ここでは、5つのインクヘッド40について、左から順に第1インクヘッド40C、第2インクヘッド40M、第3インクヘッド40Y、第4インクヘッド40K、第5インクヘッド40Lとも称することとする。以下の説明では、第1インクヘッド40C、第2インクヘッド40M、第3インクヘッド40Y、第4インクヘッド40Kおよび第5インクヘッド40Lの全てのインクヘッドに対する共通の説明の場合には、インクヘッド40という文言を適宜使用する。第1インクヘッド40C、第2インクヘッド40M、第3インクヘッド40Y、第4インクヘッド40Kおよび第5インクヘッド40Lは、それぞれノズル列41C、41M、41Y、41Kおよび41Lを備えている。ノズル列41C、41M、41Y、41Kおよび41Lは、微小であるため、
図2では、直線で表されている。キャリッジ30は、5つのインクヘッド40を備えているが、インクヘッド40の数は特に限定されない。なお、5つのインクヘッド40の配置は、1つまたは2つ以上が副走査方向Xに関して互いにずれた位置に配置される、所謂、スタガー配置であってもよい。また、インクヘッド40の有するノズル列の数は、2つ以上であってもよい。本実施形態では、インクヘッド40から吐出されるインクは、第1インクヘッド40Cがシアンインク、第2インクヘッド40Mがマゼンタインク、第3インクヘッド40Yがイエローインク、第4インクヘッド40Kがブラックインク、第5インクヘッド40Lがクリアインク、である。なお、クリアインクとは透明インクのことである。第1インクヘッド40C、第2インクヘッド40M、第3インクヘッド40Yおよび第4インクヘッド40Kは、メディア11に画像層PL(
図5a参照)を印刷するために用いられるノズルである。第5インクヘッド40Lは、くぼみ印刷パターンPT(
図5a参照)を印刷するために用いられるノズルである。なお、キャリッジ30は、プロセスカラーインクを吐出するインクヘッドやクリアインクを吐出するインクヘッドの他に、ホワイトインクを吐出するインクヘッドやプライマーを吐出するインクヘッドを備えていてもよい。
【0020】
ノズル列41C、41M、41Y、41Kおよび41Lは、それぞれインクが貯留される圧力室(図示せず)に連通している。インクヘッド40には、圧力室をそれぞれ膨張/収縮させる複数のアクチュエータ(図示せず)が設けられている。アクチュエータは、例えば圧電素子等である。アクチュエータが駆動して圧力室が膨張/収縮されることによってノズル列41C、41M、41Y、41Kおよび41Lからインクが吐出される。アクチュエータには、アクチュエータを駆動させるための駆動波形が印加される。アクチュエータは、制御装置90に電気的に接続されており、制御装置90により制御される。アクチュエータを駆動する駆動波形を変化させることにより、吐出されるインクの量を変化させることができる。また、アクチュエータを駆動する駆動波形の形状を制御することにより、インクが吐出されるタイミングが制御される。
【0021】
インクヘッド40は、第1ノズル領域42a、第2ノズル領域42bおよび第3ノズル領域42cを備えている。第1ノズル領域42aは、ノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの一部の領域である。第1ノズル領域42aは、インクヘッド40のうち副走査方向Xの上流側に配置されている。本実施形態では、ノズル列41C、41M、41Yおよび41Kを副走査方向Xに3分割したうちの後方の領域である。第2ノズル領域42bは、第1ノズル領域42aよりも副走査方向Xの下流側に配置されている。本実施形態では、第2ノズル領域42bは、ノズル列41Lを副走査方向Xに3分割したうちの真ん中の領域である。第3ノズル領域42cは、第2ノズル領域42bよりも副走査方向Xの下流側に配置されている。本実施形態では、第3ノズル領域42cは、ノズル列41Lを副走査方向Xに3分割したうちの前方の領域である。なお、本実施形態では、第1ノズル領域42a、第2ノズル領域42bおよび第3ノズル領域42cの副走査方向Xの長さは、それぞれノズル列41C、41M、41Y、41Kおよび41Lを副走査方向Xに3等分した長さである。したがって、第1ノズル領域42a、第2ノズル領域42bおよび第3ノズル領域42cの副走査方向Xの長さは、全て等しい。ただし、第1ノズル領域42a、第2ノズル領域42bおよび第3ノズル領域42cの副走査方向Xの長さは、互いに異なる長さであってもよく、いずれか2つが同じ長さであってもよい。
【0022】
図1に示すように、プリンタ10は、媒体搬送機構50を備えている。媒体搬送機構50は、プラテン12に載置されたメディア11を副走査方向Xに移動させる機構である。媒体搬送機構50は、本発明における移動機構の一例である。媒体搬送機構50は、グリットローラ51と、ピンチローラ52と、フィードモータ53と、を備えている。グリットローラ51は、プラテン12に設けられている。ここでは、グリットローラ51の一部は、プラテン12に埋設されている。ピンチローラ52は、グリットローラ51と上下方向に対向するように、グリットローラ51の上方に配置されている。ピンチローラ52は、メディア11を上から押さえ付ける部材である。ピンチローラ52は、メディア11の厚みに応じて、上下方向に移動可能に構成されていてもよい。なお、グリットローラ51およびピンチローラ52のそれぞれの配置位置および数は特に限定されない。フィードモータ53は、グリットローラ51に接続されている。グリットローラ51とピンチローラ52との間にメディア11が挟まれた状態で、フィードモータ53が駆動してグリットローラ51が回転すると、メディア11は副走査方向Xに搬送される。プリンタ10は、キャリッジ30が主走査方向Yにおける単方向への移動(以下、「パス」という。)しながら、インクヘッド40からインクを吐出した後、グリットローラ51を所定の量だけ回転させ、メディア11を前方に向かって搬送する。これを繰り返すことによりメディア11に印刷が行われる。
【0023】
インク供給システム60は、インクカートリッジ61と、インク供給路62と、送液ポンプ(図示せず)と、を備えている。インク供給システム60は、インクヘッド40にインクを供給するシステムである。インクカートリッジ61には、それぞれインクが収容されている。インク供給路62は、インクカートリッジ61とインクヘッド40とを接続している。
【0024】
図2に示すように、キャリッジ30の左方および右方には、照射装置65が接続されている。照射装置65は、メディア11に吐出された光硬化性インクに向けて光(典型的には紫外線)を照射することにより、メディア11上のインクを硬化させるものである。照射装置65は、紫外線照射LED66を備えている。
図2では、複数の紫外線照射LED66は、微小であるため、直線で表されている。複数の紫外線照射LED66は、副走査方向Xに並んで配置されている。ただし、紫外線照射LED66の配置はこれに限定されない。紫外線照射LED66は、主走査方向Yに並んでいてもよいし、1つの紫外線照射LED66のみが配置されていてもよい。照射装置65は、キャリッジ30に接続されているため、キャリッジ30が主走査方向Yに移動するとき、照射装置65も一緒に主走査方向Yに移動する。ただし、照射装置65が照射する光は、紫外線に限定されない。例えば、照射装置65が照射する光は、赤外線などであってもよい。
【0025】
照射装置65には、複数の紫外線照射LED66が1列に並んだ光源列67が形成されている。光源列67は、複数の紫外線照射LED66の一部が副走査方向Xに並ぶ第1光源列67aと、第1光源列67aよりも副走査方向Xの下流側に配置され、かつ複数の紫外線照射LED66の他の一部が副走査方向Xに並ぶ第2光源列67bと、第2光源列67bよりも副走査方向Xの下流側に配置され、かつ複数の紫外線照射LED66の他の一部が副走査方向Xに並ぶ第3光源列67cと、を含む。本実施形態では、第2光源列67bは、第1光源列67aの前方に配置されている。第3光源列67cは、第2光源列67bの前方に配置されている。第1光源列67aは、第1ノズル領域42aおよび第2ノズル領域42bの側方に配置されている。第1光源列67aの後端の位置は、副走査方向Xについて、第1ノズル領域42aの後端の位置と等しい。第1光源列67aの前端の位置は、副走査方向Xについて、第2ノズル領域42bの前端の位置と等しい。第2光源列67bは、主走査方向Yに関して第3ノズル領域42cの側方に位置する。第2光源列67bは、副走査方向Xに関して第3ノズル領域42cと揃った位置に配置されている。第3光源列67cは、副走査方向Xに関して第3ノズル領域42cの前方に位置する。第3光源列67cの前端の位置は、副走査方向Xに関して、第3ノズル領域42cの前端の位置よりも前方に位置している。なお、
図2では、第3光源列67cの後端の位置と、第3ノズル領域42cの前端の位置とが、副走査方向Xにおいて一致しているが、これに限定されない。例えば、第3光源列67cの後端の位置が、第3ノズル領域42cの前端の位置よりも前方に位置していてもよい。また、
図2では、光源列67は1列しかないが、光源列67が主走査方向Yに複数形成されていてもよい。
【0026】
図3に示すように、制御装置90は、メディア11(
図1参照)への印刷を制御する装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。
図1に示すように、制御装置90は、本体ケース70の内部に設けられている。ただし、制御装置90は、本体ケース70の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置90は、本体ケース70の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0027】
図3に示すように、制御装置90は、操作パネル13と、キャリッジモータ25と、フィードモータ53と、インクヘッド40と、照射装置65と、通信可能に接続している。制御装置90がキャリッジモータ25を制御することにより、キャリッジ30の主走査方向Yの移動を制御する。制御装置90がフィードモータ53を制御することにより、メディア11の副走査方向Xの搬送を制御する。制御装置90がインクヘッド40を制御することにより、吐出されるインクの量や吐出のタイミングが制御される。制御装置90が照射装置65を制御することにより、紫外線照射LED66から照射される紫外線の光量が制御される。
【0028】
制御装置90は、移動制御部91と、画像吐出制御部92と、輪郭部吐出制御部93と、外側部吐出制御部94と、照射制御部95と、を備えている。制御装置90の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置90の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0029】
移動制御部91は、インクヘッド40の主走査方向Yの移動と、メディア11の副走査方向Xの搬送を制御する。移動制御部91がキャリッジモータ25を駆動すると、ベルト24が走行し、キャリッジ30が主走査方向Yに移動する。移動制御部91がフィードモータ53を駆動すると、グリットローラ51が回転し、グリットローラ51とピンチローラ52とに挟まれたメディア11が副走査方向Xに搬送される。
【0030】
画像吐出制御部92は、メディア11に対して
図4(b)に示す画像層PLを形成するインクを吐出させる。画像層PLは、上述の通り、プリンタ10に取り込まれた印刷データに基づき印刷される層である。本実施形態では、プロセスカラーインクにて画像層PLが印刷される。画像吐出制御部92は、第1ノズル領域42aを制御する。第1ノズル領域42aには、プロセスカラーインクであるシアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクを吐出するノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの一部が含まれている。画像吐出制御部92は、ノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの一部を制御し、インクを吐出させる。
【0031】
輪郭部吐出制御部93は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、輪郭部領域11aにインクを吐出させる。ここで、輪郭部領域11aとは、メディア11上において輪郭部CAが形成される領域である。輪郭部CAは、くぼみ印刷パターンPTのうち、くぼみHLを囲む部分である。本実施形態では、輪郭部領域11aは、メディア11上の画像層PL上に位置している。なお、メディア11に画像層PLが形成されない場合、輪郭部領域11aは、メディア11の上面に位置していてもよい。本実施形態では、
図4(a)に示すように、輪郭部CAは、平面視にて円環形状である。ただし、輪郭部CAの形状は、これに限定されない。例えば、輪郭部CAは、くぼみHLを囲む矩形形状であってもよい。本実施形態では、輪郭部吐出制御部93は、第2ノズル領域42bに含まれるノズル列41Lの一部を制御し、輪郭部領域11aにクリアインクを吐出させる。すなわち、本実施形態では、輪郭部CAは、クリアインクにより形成される。ただし、輪郭部吐出制御部93は、第2ノズル領域42bに含まれるノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの1つまたは2つ以上のノズル列の一部を制御し、輪郭部領域11aにプロセスカラーインクを吐出させてもよい。また、第2ノズル領域42bに含まれるノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの1つまたは2つ以上のノズル列の一部とともにノズル列41Lの一部を制御し、輪郭部領域11aにプロセスカラーインクとクリアインクとを吐出させてもよい。すなわち、輪郭部CAは、プロセスカラーインクにより形成されてもよいし、プロセスカラーインクとクリアインクとにより形成されてもよい。ここで、くぼみHLの形状は、
図7に示すように、側方から見たときに略U字形状であることが望ましい。
図7は、くぼみHLの形状を示す部分断面図である。輪郭部吐出制御部93は、くぼみHLが
図7に示す形状となるように、クリアインクのインクドットDTを吐出する。例えば、ユーザが比較的柔らかい物体を指で触ったとき、当該物体の表面はユーザの指の形状に沿って凹む。このときの凹みとくぼみHLの略U字形状とが近しい形状である場合、ユーザは、当該物体の柔らかさに近しい触感をくぼみ印刷パターンPTから得ることができる。
【0032】
外側部吐出制御部94は、
図5(a)および
図5(b)に示すように、外側部領域11bにインクを吐出させる。ここで、外側部領域11bは、メディア11上において、外側部OPが形成される領域である。外側部OPは、くぼみ印刷パターンPTのうち、平面視にて輪郭部CAの外側の範囲である。本実施形態では、外側部領域11bは、画像層PL上に位置している。なお、メディア11に画像層PLが形成されない場合、外側部領域11bは、メディア11の上面に位置していてもよい。本実施形態では、外側部吐出制御部94は、第3ノズル領域42cに含まれるノズル列41Lの一部を制御し、外側部領域11bにクリアインクを吐出させる。すなわち、本実施形態では、外側部OPは、クリアインクにより形成される。ただし、外側部吐出制御部94は、第3ノズル領域42cに含まれるノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの1つまたは2つ以上のノズル列の一部を制御し、外側部OPにプロセスカラーインクを吐出させてもよい。また、第3ノズル領域42cに含まれるノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの1つまたは2つ以上のノズル列の一部とともにノズル列41Lの一部を制御し、外側部OPにプロセスカラーインクおよびクリアインクを吐出させてもよい。すなわち、外側部OPは、プロセスカラーインクにより形成されてもよいし、プロセスカラーインクとクリアインクとにより形成されてもよい。
【0033】
ここで、輪郭部吐出制御部93によりインクヘッド40がインクを吐出するときの単位面積当たりのインクの吐出量を第1吐出量D1とし、外側部吐出制御部94によりインクヘッド40がインクを吐出するときの単位面積当たりのインクの吐出量を第2吐出量D2とする。第2吐出量D2は、第1吐出量D1よりも多いことが好ましい。輪郭部吐出制御部93および外側部吐出制御部94は、インクヘッド40に設けられたアクチュエータを制御することにより、ノズル列41C、41M、41Y、41Kおよび41Lから吐出されるインクの量を制御し、第1吐出量D1および第2吐出量D2を制御する。第2吐出量D2が第1吐出量D1よりも多いとき、
図6(a)に示すように、外側部領域11bに吐出されたインクの上端から画像層PLの上端までの高さh1は、輪郭部CAの上端から画像層PLの上端までの高さh2よりも高い。
図6(a)は、輪郭部CAが形成された後、外側部吐出制御部94により、インクヘッド40からインクが吐出された直後のくぼみHLの拡大断面図である。外側部領域11bに吐出されたインクのうち、輪郭部CAよりも高い位置にあるインクの一部は、
図6(b)に示すように、硬化する前に重力の影響により輪郭部領域11aに吐出されたインクの上部に広がる。
【0034】
図3に示す照射制御部95は、紫外線照射LED66から照射される紫外線の光量を制御する。本実施形態では、照射制御部95は、第1光源列67aおよび第3光源列67cを点灯させ、第2光源列67bを消灯させる。ここで、輪郭部吐出制御部93により第2ノズル領域42bから吐出されたインクが輪郭部領域11aに着弾してから、照射装置65によりインクに光が照射されるまでの時間を第1照射時間T1とする。外側部吐出制御部94により第3ノズル領域42cから吐出されたインクが外側部領域11bに着弾してから、照射装置65によりインクに光が照射されるまでの時間を第2照射時間T2とする。このとき、第2照射時間T2は、第1照射時間T1よりも長い。本実施形態では、第1照射時間T1は、パス中に輪郭部吐出制御部93により第2ノズル領域42bからメディア11にインクが吐出されてから、吐出されたインクの真上に第1光源列67aが配置されるまでの時間である。したがって、1回のパス中において、輪郭部領域11aにインクが吐出され、吐出されたインクは、第1光源列67aにより紫外線を照射される。本実施形態では、第2照射時間T2は、外側部吐出制御部94により第3ノズル領域42cからメディア11にインクが吐出されてから、吐出されたインクの真上に第3光源列67cが配置されるまでの時間である。本実施形態では、第2光源列67bを消灯しているため、第3ノズル領域42cから吐出されたインクは、そのパス中に紫外線を照射されない。第3光源列67cは、第3ノズル領域42cよりも前方に配置されているため、第3ノズル領域42cから吐出されたインクは、吐出された後、1回または複数回パスが実行された後に、メディア11が前方に搬送されてから第3光源列67cにより紫外線を照射される。
【0035】
以上、本実施形態に係るプリンタ10の構成について説明した。次にプリンタ10によりくぼみ印刷パターンPTを形成するプロセスについて説明する。
図8は、くぼみ印刷パターンを形成するプロセスを示すフローチャートである。
図9A~
図9Dは、
図8のフローチャートによりくぼみ印刷パターンが形成されるときのメディア11を示す平面図である。
図9A~
図9Dでは、ノズル列41C、41M、41Y、41Kおよび41Lの副走査方向Xの長さLを3等分した長さ(L/3)をメディア11の1回の搬送幅とする。したがって、メディア11の1回の搬送幅は、第1ノズル領域42a、第2ノズル領域42bおよび第3ノズル領域42cの副走査方向Xの長さと等しい。なお、以下の説明において、キャリッジ30の移動方向は左右逆であってもよい。
【0036】
ステップS101において、プリンタ10は、画像層PLを形成するための印刷データを取得する。印刷データは、例えば、USBメモリなどの記憶媒体や他のコンピュータにより作成され、通信によりプリンタ10に取り込まれる。
【0037】
ステップS102において、ユーザは、くぼみ印刷パターンPTを選択する。くぼみ印刷パターンPTは、例えば、ユーザが操作パネル13(
図1参照)を操作することにより決定する。くぼみ印刷パターンPTは、他のコンピュータで選択され、通信によりプリンタ10に取り込まれてもよい。本実施形態では、くぼみ印刷パターンPTは、
図5(a)に示すように、くぼみHLが主走査方向Yおよび副走査方向Xに複数並んだパターンである。
【0038】
ステップS103において、
図9Aに示すように、右方から左方へ1回パスが実行されるとともに、メディア11の領域A1にプロセスカラーインクが吐出される。
図9A~
図9Dは、メディア11にくぼみ印刷パターンPTが形成されるときのプリンタ10の動きを表す模式図である。領域A1は、メディア11の一部の領域である。領域A1~A4の副走査方向Xの長さは、メディア11の搬送幅であるL/3である。後述する領域A2、領域A3および領域A4も同様である。移動制御部91がキャリッジモータ25を制御し、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させるとともに、画像吐出制御部92が第1ノズル領域42aを制御し、領域A1にプロセスカラーインクを吐出させる。キャリッジ30が左方に移動し、第1ノズル領域42aから吐出されたプロセスカラーインクの真上に第1光源列67aが配置されると、プロセスカラーインクは、第1光源列67aから照射される紫外線により硬化する。領域A1において硬化したプロセスカラーインクは、画像層PLの一部を形成する。この動作の後、移動制御部91がフィードモータ53を駆動し、メディア11をL/3の搬送幅にて前方へ搬送する。
【0039】
ステップS104において、
図9Bに示すように、左方から右方へ1回パスが実行されるとともに、メディア11の領域A1のうちの輪郭部領域11aにクリアインクが吐出される。移動制御部91がキャリッジモータ25を制御し、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させるとともに、輪郭部吐出制御部93が第2ノズル領域42bを制御し、領域A1の輪郭部領域11aにクリアインクを吐出させる。クリアインクが着弾してから第1照射時間T1が経過すると、第1ノズル領域42aの左方に配置されている第1光源列67aがクリアインクの真上に配置され、第1光源列67aからクリアインクに向かって紫外線が照射される。これにより領域A1の輪郭部領域11aに吐出されたクリアインクが硬化する。これにより、領域A1に輪郭部CAが形成され、くぼみHLが形成される。なお、パスが実行されたときに輪郭部CAの一部が形成されていてもよい。また、領域A1にくぼみHLが含まれず、メディア11の領域A1以外の領域にくぼみHLが形成されてもよい。すなわち、くぼみ印刷パターンPTがメディア11または画像層PL上の一部の領域にのみ形成されてもよい。この場合、ステップS104においてクリアインクの吐出が行われなくてもよい。領域A1におけるパス以外の場合も同様である。領域A1の後方の領域A2は、第1ノズル領域42aからプロセスカラーインクが吐出され、ステップS103における領域A1と同様の状態となっている。この動作の後、移動制御部91がフィードモータ53を駆動し、メディア11をL/3の搬送幅にて前方へ搬送する。
【0040】
ステップS105において、
図9Cに示すように、右方から左方へ1回パスが実行されるとともに、メディア11の領域A1のうちの外側部領域11bにクリアインクが吐出される。移動制御部91がキャリッジモータ25を制御し、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させるとともに、外側部吐出制御部94が第3ノズル領域42cを制御し、領域A1の外側部領域11bにクリアインクを吐出させる。なお、第3ノズル領域42cの右方に配置されている第2光源列67bは、消灯している。したがって、ステップS105において、外側部領域11bに吐出されたクリアインクには紫外線が照射されない。領域A2は、ステップS104における領域A1と同様の状態となっている。領域A2の後方の領域A3は、ステップS103における領域A1と同様の状態となっている。この動作の後、移動制御部91がフィードモータ53を駆動し、メディア11をL/3の搬送幅にて前方へ搬送する。
【0041】
ステップS106において、
図9Dに示すように、左方から右方へ1回パスが実行されるとともに、メディア11の領域A1に第3光源列67cより紫外線が照射される。したがって、このとき、外側部領域11bに吐出されたクリアインクに紫外線が照射される。外側部領域11bに吐出されたクリアインクは硬化し、外側部OPの一部を形成する。なお、ステップS105にて外側部領域11bにクリアインクが吐出されてから、当該クリアインクに対してステップS106にて紫外線が照射されるまでの時間が第2照射時間T2である。領域A2は、ステップS105における領域A1と同様の状態となっている。領域A3は、ステップS104における領域A1と同様の状態となっている。領域A3の後方の領域A4は、ステップS103における領域A1と同様の状態となっている。この動作の後、移動制御部91がフィードモータ53を駆動し、メディア11をL/3の搬送幅にて前方へ搬送する。これらの動作を繰り返し、領域A1よりも後方の領域についても同様にインクの吐出および硬化が行われることにより、メディア11上に画像層PLおよびくぼみ印刷パターンPTが形成される。
【0042】
以上のように本実施形態のプリンタ10によると、まず、輪郭部吐出制御部93がインクヘッド40を制御し、輪郭部領域11aにインクが吐出される。その後、外側部吐出制御部94がインクヘッド40を制御し、外側部領域11bにインクが吐出される。輪郭部領域11aに先にインクが吐出されるので、輪郭部領域11aに吐出されたインクは、外側部領域11bに吐出されたインクよりも先に硬化する。したがって、外側部領域11bに吐出されたインクは、輪郭部領域11aに吐出されて少なくとも部分的に硬化したインクにより、せき止められる。よって、外側部領域11bに吐出されたインクは、輪郭部領域11aの内側に向かって広がらない。すなわち、くぼみHLにインクが流れ込むことが抑制され、くぼみHLの形状が変化することが抑制される。したがって、所望の形状のくぼみを形成することができるので、ユーザの所望する触感や外観を備えた印刷物を得ることができる。
【0043】
本実施形態のプリンタ10によると、照射制御部95が照射装置65を制御している。照射制御部95は、第1光源列67aおよび第3光源列67cを点灯し、第2光源列67bを消灯させている。これにより、輪郭部吐出制御部93により輪郭部領域11aに吐出されたインクは、着弾してから第1照射時間T1経過後に第1光源列67aにより紫外線を照射される。外側部吐出制御部94により外側部領域11bに吐出されたインクは、着弾してから第2照射時間T2経過後に第3光源列67cにより紫外線を照射される。第2照射時間T2は、第1照射時間T1よりも長い。外側部領域11bに吐出されたインクは、吐出直後、十分に濡れが広がっておらず上面が波立っている。この状態にて紫外線が照射されると、外側部領域11bに吐出されたインクの上面に凹凸が発生する。外側部領域11bに吐出されたインクの上面に凹凸が発生すると、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観が所望の通りに形成されない虞がある。本実施形態における第2照射時間T2は、比較的長い時間であるため、外側部領域11bに吐出されたインクに紫外線を照射するまでの間にインクが平滑化(所謂、レベリング)する。このことにより、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観を、所望の通りにすることができる。
【0044】
本実施形態のプリンタ10によると、制御装置90は、画像吐出制御部92を備えている。画像吐出制御部92は、印刷データに基づく画像層PLをメディア11に形成する。輪郭部吐出制御部93および外側部吐出制御部94は、画像層PL上にインクを吐出させる。したがって、画像層PLにくぼみHLの触感を与えることができる。ユーザは、画像層PLにより、可視化された印刷データを視覚的に取得し、かつ、くぼみ印刷パターンPTに触れることにより、当該可視化された印刷データの触感を取得することができる。例えば、印刷データに表されたある物体をユーザは視覚にて認識する。くぼみ印刷パターンPTが当該物体の触感を与えるものであるとき、ユーザは、当該物体を視覚と触覚とにより認識することができる。
【0045】
本実施形態のプリンタ10によると、輪郭部吐出制御部93および/または外側部吐出制御部94により、第2吐出量D2が第1吐出量D1よりも多くなるように制御されている。このとき、
図6(a)に示すように、外側部領域11bに吐出されたインクの上端から画像層PLの上端までの高さh1が、輪郭部CAの上端から画像層PLの上端までの高さh2よりも高くなる。したがって、外側部領域11bに吐出されたインクの一部は、硬化する前に輪郭部領域11aに吐出されたインクの上部に広がる。ここで、仮に、高さh1が高さh2よりも低いと、外側部領域11bに吐出されたインクが凹部となり、くぼみ印刷パターンPTにくぼみHL以外の凹部が発生する。したがって、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観が所望の通りに形成されない虞がある。そこで、本実施形態のように、第2吐出量D2が第1吐出量D1よりも多くなるように制御されることにより、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観を所望の通りにすることができる。
【0046】
以上、第1実施形態について説明した。しかし、上述の第1実施形態は、例示に過ぎず、本発明は、他の種々の形態にて実施することができる。
【0047】
上述した第1実施形態では、照射制御部95が第1光源列67aおよび第3光源列67cを点灯させ、第2光源列67bを消灯させていたがこれに限定されない。照射装置65が第1光源列67aおよび第3光源列67cを備え、かつ第2光源列67bを備えていなくてもよい。すなわち、照射装置65は、第2光源列67bを形成する紫外線照射LED66を有していなくてもよい。この場合も、第1実施形態と同様に、第2ノズル領域42bから輪郭部領域11aに吐出されたインクは、着弾してから第1照射時間T1経過後に第1光源列67aにより紫外線を照射される。また、第3ノズル領域42cから外側部領域11bに吐出されたインクは、着弾してから第2照射時間T2経過後に第3光源列67cにより紫外線を照射される。したがって、第1実施形態と同様、外側部領域11bに吐出されたインクは、紫外線を照射されるまでの間に平滑化する。このことにより、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観を、所望の通りにすることができる。
【0048】
上述した第1実施形態では、照射制御部95は、第2光源列67bを消灯させていたが、第2光源列67bを第1光源列67aよりも弱い照射強度で点灯させてもよい。第1光源列67aが照射する紫外線の強度を第1照射強度W1とし、第2光源列67bが照射する紫外線の強度を第2照射強度W2とした場合、第2照射強度W2が第1照射強度W1よりも弱くなるように制御されていてもよい。この場合、第3光源列67cは、第2照射強度W2よりも強い照射強度で点灯させることが好ましい。このとき、輪郭部吐出制御部93により第2ノズル領域42bから輪郭部領域11aに吐出されたインクに対して、第1光源列67aより第1照射強度W1にて紫外線が照射される。外側部吐出制御部94により第3ノズル領域42cから外側部領域11bに吐出されたインクに対して、第2光源列67bより第2照射強度W2にて紫外線が照射される。第2照射強度W2は、第1照射強度W1よりも弱い。したがって、第3ノズル領域42cから外側部領域11bに吐出されたインクは、第2照射強度W2にて紫外線を照射されても完全に硬化しない。外側部領域11bに吐出されたインクは、吐出直後、十分に濡れが広がっておらず、上面が波立っている。この状態にてインクが完全に硬化されると、外側部領域11bに吐出されたインクに凹凸が発生する。外側部領域11bに吐出されたインクに凹凸が発生すると、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観が所望の通りに形成されない虞がある。本実施形態では、第2照射強度W2にて紫外線を照射されてもインクが完全に硬化していないため、外側部領域11bに吐出されたインクの上面が徐々に平滑化する。このことにより、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観を所望の通りにすることができる。
【0049】
上述した第1実施形態では、メディア11が搬送されながら、画像層PLおよびくぼみ印刷パターンPTが形成されていたがこれに限定されない。画像層PLを形成したあとにくぼみ印刷パターンPTが形成されてもよい。例えば、まず、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送し、画像層PLを形成する。メディア11が搬送され、ノズル列41C、41M、41Yおよび41Kからプロセスカラーインクが吐出される。吐出されたプロセスカラーインクは、照射装置65により紫外線を照射される。なお、このとき、ノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの全領域からプロセスカラーインクが吐出されてよい。また、照射装置65の備える全ての紫外線照射LED66から紫外線が照射されてよい。ただし、第3光源列67cは、点灯してもよいし、点灯しなくてもよい。画像層PLの形成が完了したら、メディア11を副走査方向Xの下流側から上流側へ向かって搬送する。次に、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送し、輪郭部CAを画像層PL上に形成する。なお、輪郭部CAを形成する方法は、ノズル列41Lよりクリアインクを吐出する点を除いて、上述した画像層PLを形成する方法と同様である。なお、このとき、ノズル列41Lの全領域からクリアインクが吐出されてよい。輪郭部CAの形成が完了したら、メディア11を副走査方向Xの下流側から上流側へ向かって搬送する。次に、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送し、外側部OPを形成する。外側部OPを形成するとき、ノズル列41Lのうちのインクを吐出する領域よりも前方に配置された紫外線照射LED66より紫外線を照射する。例えば、ノズル列41Lの全領域からクリアインクを吐出し、かつ第3光源列67cのみを点灯する。このことにより、第1実施形態と同様に、外側部領域11bに吐出されたインクは、平滑化してから紫外線を照射される。なお、第1光源列67aおよび第2光源列67bは、第3光源列67cよりも弱い照射強度で点灯されていてもよい。以上のようにして、画像層PLおよびくぼみ印刷パターンPTを形成してもよい。なお、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送しながら画像層PLを形成し、メディア11を副走査方向Xの下流側から上流側へ向かって搬送した後に、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送しながら輪郭部CAおよび外側部OPを形成してもよい。
【0050】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るプリンタ10Aについて説明する。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通の機能を奏する部材には第1実施形態と共通の符号を使用し、重複する説明は省略または簡略化する。
図10は、第2実施形態に係るプリンタ10Aの正面図である。
図10に示すように、プリンタ10Aは、ヒータ80を備えている。ヒータ80は、本発明における乾燥装置の一例である。ヒータ80は、プラテン12の下方に設けられている。ヒータ80は、例えば、ニクロム線や鉄クロム線等の電熱線が並べられることにより構成される。ヒータ80は、グリットローラ51より前方に配置されている。ヒータ80は、プラテン12を加熱する。プラテン12が加熱されることによって、プラテン12上に配置されているメディア11およびメディア11上に着弾したインクが加熱され、インクの乾燥が促進される。ヒータ80は、制御装置90Aに電気的に接続され、制御装置90Aにより制御される。ただし、本発明における乾燥装置は、ヒータ80に限定されない。乾燥装置は、例えば、インクに温風を当てることによりインクの乾燥を促進させるものであってもよい。本実施形態で用いられるインクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクである。ただし、インクの種類はこれに限定されない。
【0051】
図11に示すように、ヒータ80は、第1加熱領域80a、第2加熱領域80bおよび第3加熱領域80cを備えている。第1加熱領域80aは、ヒータ80のうち副走査方向Xの上流側に配置されている。第2加熱領域80bは、第1加熱領域80aよりも副走査方向Xの下流側に配置されている。本実施形態では、第2加熱領域80bは、第1加熱領域80aよりも前方に配置されている。第3加熱領域80cは、第2加熱領域80bよりも副走査方向Xの下流側に配置されている。本実施形態では、第3加熱領域80cは、第2加熱領域80bよりも前方に配置されている。第1加熱領域80aの前端の位置は、副走査方向Xについて第2ノズル領域42bの前端の位置と等しい。第2加熱領域80bは、副走査方向Xについて、第3ノズル領域42cと揃った位置に配置されている。第3加熱領域80cは、第3ノズル領域42cよりも前方に配置されている。なお、
図11では、第3加熱領域80cの後端の位置と、第3ノズル領域42cの前端の位置と、が副走査方向Xにおいて一致しているが、これに限定されない。例えば、第3加熱領域80cの後端の位置が、第3ノズル領域42cの前端の位置よりも前方に位置していてもよい。
【0052】
図12に示すように、プリンタ10Aの備える制御装置90Aは、メディア11(
図1参照)への印刷を制御する装置である。制御装置90Aの構成は特に限定されない。制御装置90Aは、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。制御装置90Aは、移動制御部91Aと、画像吐出制御部92Aと、輪郭部吐出制御部93Aと、外側部吐出制御部94Aと、乾燥制御部95Aと、を備えている。移動制御部91A、画像吐出制御部92A、輪郭部吐出制御部93A、外側部吐出制御部94Aは、第1実施形態における移動制御部91、画像吐出制御部92、輪郭部吐出制御部93、外側部吐出制御部94(
図3参照)と同様の構成であるため説明を省略する。
【0053】
乾燥制御部95Aは、ヒータ80の第1加熱領域80a、第2加熱領域80bおよび第3加熱領域80cの加熱を制御する。本実施形態では、乾燥制御部95Aは、第1加熱領域80aおよび第3加熱領域80cを加熱し、第2加熱領域80bを加熱しない状態とする。ここで、輪郭部吐出制御部93Aにより第2ノズル領域42bから吐出されたインクが輪郭部領域11aに着弾してから、ヒータ80によりインクが乾燥されるまでの時間を第1乾燥時間H1とする。外側部吐出制御部94Aにより第3ノズル領域42cから吐出されたインクが外側部領域11bに着弾してから、ヒータ80によりインクが乾燥されるまでの時間を第2乾燥時間H2とする。第2乾燥時間H2は、第1乾燥時間H1よりも長い。本実施形態では、第1乾燥時間H1は、パス中に輪郭部吐出制御部93Aにより第2ノズル領域42bに含まれるノズル列41Lの一部からメディア11に吐出されたインクが着弾してから、第1加熱領域80aによりインクが乾燥されるまでの時間である。第2ノズル領域42bの真下に第1加熱領域80aが配置されているため、第2ノズル領域42bから吐出されたインクは、着弾してすぐに乾燥される。第2乾燥時間H2は、外側部吐出制御部94により第3ノズル領域42cに含まれるノズル列41Lの一部からメディア11に吐出されたインクの下方に第3加熱領域80cが配置され、インクが乾燥されるまで時間である。本実施形態では、第2加熱領域80bが加熱されていないため、第3ノズル領域42cから吐出されたインクは、そのパス中に加熱されない。第3加熱領域80cは、第3ノズル領域42cよりも前方に配置されており、第3ノズル領域42cから吐出されたインクは、吐出された後に1回または複数回パスが実行された後に、メディア11が前方に搬送されてから第3加熱領域80cにより乾燥される。したがって、第3ノズル領域42cから吐出されたインクが着弾してから、1回または複数回パスが実行される分の時間だけ、第2乾燥時間H2は、第1乾燥時間H1よりも長い。
【0054】
以上、プリンタ10Aの構成について説明した。
図13は、くぼみ印刷パターンPTを形成するプロセスを示すフローチャートである。なお、ステップS201~S202は、第1実施形態におけるステップS101~S102(
図8参照)と同様の動作である。ステップS203~S206は、第1実施形態のステップS103~S106において、第1光源列67a、第2光源列67bおよび第3光源列67cがそれぞれ第1加熱領域80a、第2加熱領域80bおよび第3加熱領域80cに代わり、第1照射時間T1および第2照射時間T2がそれぞれ第1乾燥時間H1および第2乾燥時間H2に代わった点を除き、ステップS103~S106と同様である。したがって、ここでは説明を省略する。
【0055】
本実施形態のプリンタ10によると、乾燥制御部95Aがヒータ80を制御している。輪郭部吐出制御部93Aによりインクが吐出されてから第1乾燥時間H1が経過した後に、第1加熱領域80aによりインクが加熱され、乾燥される。外側部吐出制御部94によりインクが吐出されてから第2乾燥時間H2が経過した後に、第3加熱領域80cによりインクが加熱され、乾燥される。乾燥制御部95Aにより、第2乾燥時間H2が第1乾燥時間H1よりも長くなるように制御されている。外側部領域11bに吐出されたインクは、吐出直後、十分に濡れが広がっておらず上面が波立っている。この状態にてインクが加熱され、乾燥すると、外側部領域11bに吐出されたインクに凹凸が発生する。外側部領域11bに吐出されたインクに凹凸が発生すると、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観が所望の通りに形成されない虞がある。本実施形態における第2乾燥時間H2は、比較的長い時間であるため、外側部領域11bに吐出されたインクが加熱され乾燥するまでの間にインクが平滑化する。このことにより、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観を所望の通りにすることができる。
【0056】
上述した第2実施形態では、乾燥制御部95Aが第1加熱領域80aおよび第3加熱領域80cを加熱し、第2加熱領域80bを加熱しない状態としていたが、これに限定されない。ヒータ80が第1加熱領域80aおよび第3加熱領域80cを備え、かつ第2加熱領域80bを備えていなくてもよい。すなわち、ヒータ80は、第2加熱領域80bを形成する電熱線等を有していなくてもよい。この場合も、第2実施形態と同様に、第2ノズル領域42bから輪郭部領域11aに吐出されたインクは、着弾してから第1乾燥時間H1経過後に第1加熱領域80aにより加熱される。また、第3ノズル領域42cから外側部領域11bに吐出されたインクは、着弾してから第2乾燥時間H2経過後に第3加熱領域80cにより加熱される。したがって、第2実施形態と同様、外側部領域11bに吐出されたインクは、加熱されるまでの間に平滑化する。このことにより、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観を、所望の通りにすることができる。
【0057】
上述した第2実施形態では、乾燥制御部95Aは、第2加熱領域80bを加熱しない状態としていたが、第2加熱領域80bを第1加熱領域80aよりも低い温度で加熱させてもよい。第1加熱領域80aがインクを乾燥させるときの温度を第1乾燥温度P1とし、第2加熱領域80bがインクを乾燥させるときの温度を第2乾燥温度P2とした場合、第2乾燥温度P2が第1乾燥温度P1よりも低くなるように制御されていてもよい。なお、本実施形態では、第1乾燥温度P1および第2乾燥温度P2とは、それぞれ第1加熱領域80aおよび第2加熱領域80bの加熱温度のことである。この場合、第3加熱領域80cは、第2乾燥温度P2よりも高い乾燥温度で乾燥させることが好ましい。このとき、輪郭部吐出制御部93Aにより第2ノズル領域42bから輪郭部領域11aに吐出されたインクは、第1乾燥温度P1に加熱された第1加熱領域80aにより乾燥される。外側部吐出制御部94Aにより第3ノズル領域42cから外側部領域11bに吐出されたインクは、第2乾燥温度P2に加熱された第2加熱領域80bにより乾燥される。第2乾燥温度P2は、第1乾燥温度P1よりも低い。したがって、外側部領域11bに吐出されたインクは、第2乾燥温度P2にて乾燥されても完全に乾燥しない。外側部領域11bに吐出されたインクは、吐出直後、十分に濡れが広がっておらず、上面が波立っている。この状態にてインクが完全に乾燥されると、外側部領域11bに吐出されたインクに凹凸が発生する。外側部領域11bに吐出されたインクに凹凸が発生すると、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観が所望の通りに形成されない虞がある。本実施形態では、第2乾燥温度P2にて乾燥されてもインクが完全に乾燥していないため、外側部領域11bに吐出されたインクの上面が徐々に平滑化する。このことにより、くぼみ印刷パターンPTの触感や外観を所望の通りにすることができる。
【0058】
上述した第2実施形態では、メディア11が搬送されながら、画像層PLおよびくぼみ印刷パターンPTが形成されていたがこれに限定されない。画像層PLを形成したあとにくぼみ印刷パターンPTが形成されてもよい。例えば、まず、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送し、画像層PLを形成する。メディア11が搬送されると共に、ノズル列41C、41M、41Yおよび41Kからプロセスカラーインクが吐出される。吐出されたプロセスカラーインクは、ヒータ80により加熱され、乾燥される。なお、このとき、ノズル列41C、41M、41Yおよび41Kの全領域からプロセスカラーインクが吐出されてよい。また、ヒータ80の全ての領域が加熱されてよい。ただし、第3加熱領域80cは、加熱してもよいし、加熱しなくてもよい。画像層PLの形成が完了したら、メディア11を副走査方向Xの下流側から上流側へ向かって搬送する。次に、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送し、輪郭部CAを画像層PL上に形成する。なお、輪郭部CAを形成する方法は、ノズル列41Lよりクリアインクを吐出する点を除いて、上述した画像層PLを形成する方法と同様である。なお、このとき、ノズル列41Lの全領域からクリアインクが吐出されてよい。輪郭部CAの形成が完了したら、メディア11を副走査方向Xの下流側から上流側へ向かって搬送する。次に、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送し、外側部OPを形成する。外側部OPを形成するとき、ヒータ80のうち、ノズル列41Lのインクを吐出する領域よりも前方に配置された領域を加熱する。例えば、ノズル列41Lの全領域からクリアインクを吐出し、かつ第3加熱領域80cのみを加熱する。このことにより、第2実施形態と同様に、外側部領域11bに吐出されたインクは、平滑化してから加熱され、乾燥される。なお、第1加熱領域80aおよび第2加熱領域80bは、第3加熱領域80cよりも低い温度で加熱されていてもよい。以上のようにして、画像層PLおよびくぼみ印刷パターンPTを形成してもよい。なお、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送しながら画像層PLを形成し、メディア11を副走査方向Xの下流側から上流側へ向かって搬送した後に、メディア11を副走査方向Xの上流側から下流側へ搬送しながら輪郭部CAおよび外側部OPを形成してもよい。
【0059】
なお、前記の各実施形態は、単独で実施してもよく、前記実施形態のうち2つ以上を組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 プリンタ
11 メディア
11a 輪郭部領域
11b 外側部領域
12 プラテン
20 キャリッジ移動機構(移動機構)
40 インクヘッド
50 媒体搬送機構(移動機構)
90 制御装置
93 輪郭部吐出制御部
94 外側部吐出制御部
CA 輪郭部
HL くぼみ
OP 外側部
PT くぼみ印刷パターン