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特開2024-134024衛星管制システム、衛星管制方法および衛星管制プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134024
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】衛星管制システム、衛星管制方法および衛星管制プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20230101AFI20240926BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240926BHJP
【FI】
G06Q10/00
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044100
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 健一
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L049AA01
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】観測要求元の迅速な判断に基づいて人工衛星を運用できる衛星管制システムを提供する。
【解決手段】衛星管制システム20は、人工衛星が所定の対象を観測する計画である観測計画を生成する生成部21を含み、生成部21は、観測要求元からの要求を随時受け付け、受け付けられた要求が反映された観測計画を生成する。観測要求元は、外部から取得した情報と人工衛星が観測した結果を観察するプロセスと、観察した内容を基に状況を判断するプロセスと、判断の結果に基づいて意思を表す要求を決定するプロセスとで構成されているOODAループに従って決定された観測要求元の意思を表す要求を生成部21に入力してもよい。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星が所定の対象を観測する計画である観測計画を生成する生成部を含み、
前記生成部は、
観測要求元からの要求を随時受け付け、
受け付けられた要求が反映された前記観測計画を生成する
ことを特徴とする衛星管制システム。
【請求項2】
観測要求元は、OODAループに従って決定された前記観測要求元の意思を表す要求を生成部に入力する
請求項1記載の衛星管制システム。
【請求項3】
OODAループは、外部から取得した情報と人工衛星が観測した結果を観察するプロセスと、観察した内容を基に状況を判断するプロセスと、判断の結果に基づいて意思を表す要求を決定するプロセスとで構成されている
請求項2記載の衛星管制システム。
【請求項4】
生成された観測計画に従って人工衛星が観測した結果を分析する分析部を含む
請求項1記載の衛星管制システム。
【請求項5】
観測要求元は、OODAループに従って決定された前記観測要求元の意思を表す要求を生成部に入力する
請求項4記載の衛星管制システム。
【請求項6】
OODAループは、人工衛星が観測した結果が分析された内容を観察するプロセスと、観察した内容を基に状況を判断するプロセスと、判断の結果に基づいて意思を表す要求を決定するプロセスとで構成されている
請求項5記載の衛星管制システム。
【請求項7】
衛星管制システムにおいて実行される衛星管制方法であって、
前記衛星管制システムが、
人工衛星が所定の対象を観測する計画である観測計画を生成し、
観測要求元からの要求を随時受け付け、
受け付けられた要求が反映された前記観測計画を生成する
ことを特徴とする衛星管制方法。
【請求項8】
観測要求元は、OODAループに従って決定された前記観測要求元の意思を表す要求を衛星管制システムに入力する
請求項7記載の衛星管制方法。
【請求項9】
コンピュータに、
人工衛星が所定の対象を観測する計画である観測計画を生成する生成処理を実行させるための衛星管制プログラムであって、
前記生成処理で、
観測要求元からの要求を随時受け付けさせ、
受け付けられた要求が反映された前記観測計画を生成させる
衛星管制プログラム。
【請求項10】
観測要求元は、OODAループに従って決定された前記観測要求元の意思を表す要求をコンピュータに入力する
請求項9記載の衛星管制プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星管制システム、衛星管制方法および衛星管制プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
低軌道周回衛星に対する衛星運用管制では、地上からの運用管制が可能である可視時間帯が限られている。よって、限られた可視時間帯を基準にした運用管制業務の運用フローが使用されている。なお、本明細書における「衛星」は、人工衛星を意味する。
【0003】
また、静止軌道衛星の主要な業務は、高高度からの地球上の定点観測である。静止軌道衛星の業務は、低軌道周回衛星と同様に定期的な運用管制業務の運用フローでも十分に達成される。
【0004】
上記の衛星運用管制は、インテリジェンス・サイクル(TCPED)に基づいた運用システムと運用フローで実現される。インテリジェンス・サイクルは、観測等の運用要求に対して予め計画を立て(Tasking)、観測を実施し(Collection)、観測結果を評価(Processing)および分析(Exploitation)し、分析結果を要求元に配布(Dissemination)するサイクルである。
【0005】
インテリジェンス・サイクルによる衛星運用管制では、限られた運用タイミングおよび管制タイミングを考慮し、衛星リソースを効率良く使用できる運用管制が実行可能になる。
【0006】
また、特許文献1には、複数の要求者からの観測要求について、リソースの制約を考慮しつつ、要求者の偏りが生じないように観測要求を採用して観測運用計画を自動的に立案する処理方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、人工衛星を使用する複数のミッション要求に対して、より適切なコマンド配置を算出することができる装置が記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、潜在的に価値の高い画像を撮影するための撮影計画を作成する撮影計画立案装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-272427号公報
【特許文献2】特開2017-165402号公報
【特許文献3】特開2020-173604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
宇宙空間の状況把握を目的とする衛星運用管制システムには、常時地上局と通信可能な静止軌道上の衛星を用いて、観測要求元である運用体制の迅速な判断に基づく即時運用を可能とする運用システムと運用フローの構築が求められる。その理由は、宇宙空間において時々刻々と変わる状況に対応するためである。
【0011】
特許文献1~3には、上記の運用体制の迅速な判断に基づく即時運用を可能とする運用システムと運用フローを構築することは記載されていない。
【0012】
そこで、本発明は、観測要求元の迅速な判断に基づいて人工衛星を運用できる衛星管制システム、衛星管制方法および衛星管制プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による衛星管制システムは、人工衛星が所定の対象を観測する計画である観測計画を生成する生成部を含み、生成部は、観測要求元からの要求を随時受け付け、受け付けられた要求が反映された観測計画を生成することを特徴とする。
【0014】
本発明による衛星管制方法は、衛星管制システムにおいて実行される衛星管制方法であって、衛星管制システムが、人工衛星が所定の対象を観測する計画である観測計画を生成し、観測要求元からの要求を随時受け付け、受け付けられた要求が反映された観測計画を生成することを特徴とする。
【0015】
本発明による衛星管制プログラムは、コンピュータに、人工衛星が所定の対象を観測する計画である観測計画を生成する生成処理を実行させるための衛星管制プログラムであって、生成処理で、観測要求元からの要求を随時受け付けさせ、受け付けられた要求が反映された観測計画を生成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、観測要求元の迅速な判断に基づいて人工衛星を運用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】静止軌道衛星を用いた衛星運用管制システムによる衛星運用フローの例を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態の衛星運用管制システムによる衛星運用フローの例を示す説明図である。
図3】本実施形態の衛星管制システム301の構成例を示すブロック図である。
図4】OODAループが採用されたステップP110~P120の各処理を示す説明図である。
図5】OODAループが採用されたステップP130の処理を示す説明図である。
図6】本実施形態の要求元による意思決定の動作を示すフローチャートである。
図7】本実施形態の運用判断者による意思決定の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明による衛星管制システム301のハードウェア構成例を示す説明図である。
図9】本発明による衛星管制システムの概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、静止軌道衛星を用いた衛星運用管制システムにおける運用システムと運用フローによる、運用体制の迅速な判断に基づいた即時運用の例を示す。
【0019】
図1は、静止軌道衛星を用いた衛星運用管制システムによる衛星運用フローの例を示す説明図である。図1に示す衛星運用管制システム1000は、静止軌道衛星100と、地上システム201~202と、衛星管制システム300とを含む。地上システム201~202は、静止軌道衛星100と通信可能なシステムである。
【0020】
また、図1に示すように、衛星運用管制システム1000の運用体制は、情報を要求する要求元と、要求された情報を取得するための運用の実行を判断する運用判断者と、運用を実行する運用者とで構成される。
【0021】
なお、図1の凡例に記載しているように、図1に示す角丸四角形は、運用業務群を表す。また、図1に示す吹き出しは、定常的な運用業務を表す。また、図1に示す太線の角丸四角形は、迅速な意思決定を要する業務を表す。各表記の意味は、図2においてもそれぞれ同様である。
【0022】
図1に示すように、要求元からの要求を受けて、衛星管制システム300は、外部情報ソースからの情報を利用して観測運用の計画立案、観測運用、観測結果の取得、および分析を行う運用フローを実行する。以下、運用フローを具体的に説明する。
【0023】
最初に、衛星管制システム300は、要求元からの要求を受けて、観測対象に関する情報を集約する(ステップS001)。ステップS001において、衛星管制システム300は、監視対象を選定する。また、衛星管制システム300は、外部情報ソースから提供される観測に必要な最新情報も利用する。
【0024】
次いで、衛星管制システム300は、中長期観測計画を生成する(ステップS002)。次いで、衛星管制システム300は、日々の観測計画を生成する。衛星管制システム300は、生成された日々の観測計画を地上システム201~202に送信する(ステップS003)。ステップS002~S003において、衛星管制システム300は、衛星の監視計画も生成している。
【0025】
衛星管制システム300は、地上システム201~202を介して静止軌道衛星100を管制する。例えば、衛星管制システム300は、静止軌道衛星100の機能を維持したり、地上システム201~202を維持したりする(ステップS004)。
【0026】
また、衛星管制システム300は、異常発生時にはリカバリを行う(ステップS005)。すなわち、ステップS004~S005において、衛星管制システム300は、システム管理、機能の維持および復旧を行っている。
【0027】
また、静止軌道衛星100は、送信された日々の観測計画に従って、観測を実行する。
【0028】
次いで、衛星管制システム300は、地上システム201~202を介して静止軌道衛星100から観測結果を受信する。すなわち、衛星管制システム300は、観測結果を取得する(ステップS006)。ステップS006において、衛星管制システム300は、観測結果に対する処理も行う。
【0029】
次いで、衛星管制システム300は、観測情報に対する処理を行い、処理結果を利用する(ステップS007)。例えばステップS007において、衛星管制システム300は、処理結果に分析内容を付加する。また、衛星管制システム300は、分析結果に従って意思決定を行う。
【0030】
要求元は、衛星管制システム300の観測および分析結果を集約し、各結果を蓄積する。また、要求元の各人員は、観測および分析結果を共有する。
【0031】
なお、衛星管制システム300の運用者は、随時静止軌道衛星100等の状況を要求元と共有する。
【0032】
図1に示すステップP010~P030は、迅速な意思決定を要する業務、すなわち各運用業務の変更のトリガとなる業務である。
【0033】
ステップP010「観測結果に基づいて選定方針変更」およびステップP020「最新の要望に基づいて計画の変更」は、主に観測対象の変更と変更に応じた観測計画への反映の業務である。ステップP010~P020に関しては、要求元が意思決定の主体である。すなわち、要求元の要求を受けて運用される。
【0034】
ステップP030「観測内容に基づいて計画の追加変更」は、観測内容から得られる状況の変化に対応した観測計画の変更や地上システム等を維持する運用の追加の業務である。緊急性を要するため、ステップP030に関しては、運用判断者が意思決定の主体である。要求元は、必要に応じてステップP030の業務内容を追認する。
【0035】
迅速な判断に基づく即時運用を可能とする運用システムと運用フローを構築するためには、ステップP010~P030の業務がより迅速に運用されるように改善されることが求められる。本発明では、ステップP010~P030の業務がより迅速に運用されるように改善される。以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0036】
[構成の説明]
本実施形態の衛星運用管制システムは、常時衛星管制が可能な静止軌道衛星が用いられた衛星運用管制におけるインテリジェンス・サイクルに基づいた運用システムと運用フローを基に、OODAループによる意思決定フレームワークを運用フローに導入することを特徴とする。
【0037】
OODAループは、アメリカ空軍の戦闘機パイロットであるジョン・ボイドが考案および提唱した、状況変化に即時対応するための意思決定プロセスである。OODAループは、Observe(観察)、Orient(判断)、Decide(決定)、Act(実行)の4つのプロセスで構成される。
【0038】
OODAループは、「今、どう動くのが最善か」という意思決定を優先する。よって、OODAループは、現状の観察を最初に行い、刻々と変化する状況に対して常に最善な手法を採用することを目的としている。
【0039】
OODAループによる意思決定フレームワークを運用フローに導入する理由は、インテリジェンス・サイクルの各段階において、各段階の運用者による適時、適切な判断に基づいた衛星運用の計画立案、衛星管制、観測運用、および見直しを実行可能にするためである。
【0040】
図2は、本発明の実施形態の衛星運用管制システムによる衛星運用フローの例を示す説明図である。図2に示す衛星運用管制システム1001では、衛星運用において柔軟に意思決定がなされる方式が採用されている。
【0041】
図2に示す衛星運用管制システム1001は、静止軌道衛星100と、地上システム201~202と、衛星管制システム301とを含む。衛星運用管制システム1001は、静止軌道衛星100を用いた衛星運用管制システムである。
【0042】
図2に示す各運用業務群および各定常的な運用業務は、図1に示す各運用業務群および各定常的な運用業務とそれぞれ同様である。また、図2に示すステップS101~S107の各処理は、図1に示すステップS001~S007の各処理とそれぞれ同様である。
【0043】
図3は、本実施形態の衛星管制システム301の構成例を示すブロック図である。図3に示す衛星管制システム301は、情報取得部310と、観測計画生成部320と、送信部330と、受信部340と、観測結果分析部350と、出力部360とを含む。
【0044】
図2に示す運用フローにおいて、最初に、衛星管制システム301の情報取得部310は、要求元からの要求を受けて、観測対象に関する情報を集約する(ステップS101)。
【0045】
次いで、衛星管制システム301の観測計画生成部320は、中長期観測計画を生成する(ステップS102)。次いで、観測計画生成部320は、日々の観測計画を生成する。衛星管制システム301の送信部330は、生成された日々の観測計画を地上システム201~202に送信する(ステップS103)。
【0046】
衛星管制システム301は、静止軌道衛星100の機能を維持したり、地上システム201~202を維持したりする(ステップS104)。また、衛星管制システム301は、異常発生時にはリカバリを行う(ステップS105)。
【0047】
次いで、衛星管制システム301の受信部340は、地上システム201~202を介して静止軌道衛星100から観測結果を受信する。すなわち、受信部340は、観測結果を取得する(ステップS106)。
【0048】
次いで、衛星管制システム301の観測結果分析部350は、観測情報に対する処理を行い、処理結果を利用する(ステップS107)。次いで、出力部360は、観測および分析結果を要求元に出力する。
【0049】
上述したように、本実施形態では、図2に示すステップP110~P130の各処理が、図1に示すステップP010~P030の各処理と異なる。ステップP110~P130の各処理では、上述したOODAループが採用されている。
【0050】
OODAループが採用されていることによって、図2に示す衛星運用管制システム1001による運用フローでは、図1に示す衛星運用管制システム1000による運用フローに比べて、より迅速に意思決定が行われる。
【0051】
図4は、OODAループが採用されたステップP110~P120の各処理を示す説明図である。図4に示す運用フローは、要求元が意思決定の主体となる運用フローである。
【0052】
図4に示す衛星管制システム301は、主要な業務である宇宙状況の観測を、要求元のObserve(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)に基づいて、Act(実行)する。
【0053】
要求元には、衛星管制システム301から提供される日々の観測状況や外部情報ソースからの情報に基づいて迅速に意思決定を行うことが求められる。本実施形態の要求元は、状況判断および意思決定にOODAループを適用する。
【0054】
以下、図4を参照して具体的に説明する。最初に、要求元は、外部情報ソースからの情報をObserve(観察)する。外部情報ソースからの情報は、例えばオープンソース情報、ベンダー情報、各種レポート、外部システムの提供情報、更新情報を含む監視対象の軌道情報、更新情報を含むターゲットリストである。
【0055】
また、要求元は、衛星管制システム301から提供される観測結果もObserve(観察)する。
【0056】
次に、要求元は、入手した情報を基に分析および判断、すなわちOrient(状況判断)する。要求元は、例えば入手情報の関連付け、観測対象の把握および分析、将来予測、対応策の検討を行う。
【0057】
なお、意思決定が不要な場合や要求を追加する場合、要求元は、Orient(状況判断)からObserve(観察)へ復帰する。
【0058】
次に、要求元は、判断結果に基づいてDecide(意思決定)する。要求元は、例えば観測対象、利用サービス、監視時期、対応策を決定する。要求元は、最終的に意思決定の結果に基づいて、観測対象を特定する。
【0059】
なお、意思決定の結果、実行不要と判断した場合、要求元は、Decide(意思決定)からObserve(観察)へ復帰する。
【0060】
以上のように、図4に示す要求元は、観測結果や最新の観測対象の軌道情報等の外部情報ソースから提供される情報を基に、入手した情報の関連付けを行い、観測対象の把握や分析を行う。また、図4に示す要求元は、判断結果に基づいて将来予測や対応策の検討を行い、次の観測の具体的な内容や実行時期を決定する。
【0061】
また、図4に示すように、状況判断の結果、判断に要する情報が不足している場合、要求元は、適宜観察に戻って情報を改めて収集する。また、意思決定の段階で実行不要という結論に至った場合、要求元は、実行に移らず観察からOODAループを再開する。
【0062】
次に、衛星管制システム301は、要求元の意思決定の結果に基づいてAct(実行)する。具体的には、衛星管制システム301の観測計画生成部320は、特定された観測対象の観測計画を生成する。
【0063】
次いで、衛星管制システム301は、静止軌道衛星100を用いて観測運用を行う。衛星管制システム301の受信部340は、観測運用で得られた観測データを取得する。また、観測結果分析部350は、観測データを分析する。また、出力部360は、分析結果を要求元に配布する。
【0064】
図5は、OODAループが採用されたステップP130の処理を示す説明図である。図5に示す運用フローは、運用判断者が意思決定の主体となる運用フローである。
【0065】
運用判断者が意思決定の主体となる運用フローは、主に以下の2つの運用フローで構成される。
【0066】
1つ目の運用フローは、監視運用の補正のフローである。観測運用の結果、観測対象が上手く観測されない場合等には、刻々と状況が変化する観測対象を再度観測することが求められる場合がある。観測対象を再度観測することが求められる場合、運用判断者は、観測結果から求められる再観測の条件を判断して運用計画を再立案し、観測運用を行う。
【0067】
2つ目の運用フローは、HK(House Keeping)運用のフローである。フローでは、静止軌道衛星100の機能維持や観測データの品質維持のために実行されるセンサ較正を含むHK運用が計画され、実行される。HK運用のフローには、不定期に発生する衛星異常に対する復旧や、デブリまたは観測物体に近接した場合の回避等も含まれる。
【0068】
いずれの運用フローにおいても、静止軌道衛星100の運用を維持するために、運用判断者には即座に状況判断および意思決定することが求められる。また、運用判断者は、要求元と認識された状況を共有する。本実施形態では、いずれの運用フローの状況判断、意思決定にも、OODAループが適用される。
【0069】
以下、図5を参照して具体的に説明する。最初に、衛星管制システム301の受信部340は、バス運用情報を受信、すなわちObserve(観察)する。バス運用情報は、例えばテレメトリ監視情報と、外部情報ソース提供情報とを含む。
【0070】
テレメトリ監視情報は、例えばHK運用結果と、衛星異常有無とを含む。また、外部情報ソース提供情報は、例えば観測対象の最新軌道情報と、デブリ等近接通知とを含む。
【0071】
衛星管制システム301の観測結果分析部350は、観察された情報を基に、観測内容を即時更新し、運用判断者に通知する。通知される観測内容は、例えば衛星異常、脅威対象の接近、電波干渉の検知および予測、視野ずれ検出である。
【0072】
次に、運用判断者は、通知された観測内容を基にOrient(状況判断)する。運用判断者は、例えば衛星異常に対する対策案を検討する。
【0073】
次に、運用判断者は、一次判断結果に基づいてDecide(意思決定)する。運用判断者は、要求元と連携して、例えば運用周波数の切替(即時または計画的な)、維持運用計画の追加変更、日々の計画の補正、緊急運用を決定する。すなわち、運用判断者は、発生事象に対する処置方針を決定する。
【0074】
次に、衛星管制システム301は、決定された処置方針に基づいて衛星の維持運用をAct(実行)する。衛星管制システム301の観測計画生成部320は、例えばバス運用計画の立案や、監視運用計画の補正を行う。
【0075】
バス運用計画には、例えばHK運用、衛星異常復旧運用、デブリ回避が含まれる。また、監視運用計画の補正には、相対位置補正、周波数切替、緊急観測、各種機動(接近、停留等)が含まれる。
【0076】
運用者は、観測計画生成部320により立案された計画、または補正された計画に従って衛星の維持運用を行う。
【0077】
本実施形態では、宇宙空間において時々刻々と変わる状況に対応するため、迅速な判断に基づいた即時運用を可能とする衛星運用管制システム1001と運用フローの構築方式が提供される。
【0078】
例えば、上記のように、本実施形態の要求元は、衛星運用で得られた観測情報だけでなく、ニュースやインターネット等の各種の情報ソースから得られた情報も用いて迅速な意思決定を行う。よって、衛星管制システム301は、要求元の迅速な意思決定に基づいて、次の衛星観測運用を計画および実行できる。
【0079】
また、本実施形態の運用判断者は、衛星運用で得られた観測情報を基に観測対象の位置や移動方向を再確認し、迅速な状況判断を行う。よって、衛星管制システム301は、運用判断者の迅速な状況判断に基づいて、新たな衛星観測運用を計画および実行できる。
【0080】
[動作の説明]
以下、本実施形態の衛星管制システム301の衛星を運用する動作を図6~7を参照して説明する。図6は、本実施形態の要求元による意思決定の動作を示すフローチャートである。
【0081】
最初に、要求元は、外部情報ソースからの情報と、衛星管制システム301から提供される観測結果を観察する(ステップP111)。
【0082】
次いで、要求元は、入手した情報を基に状況判断する(ステップP112)。次いで、要求元は、判断結果に基づいて意思決定する(ステップP113)。
【0083】
次いで、衛星管制システム301は、要求元の意思決定の結果に基づいて、特定された観測対象の観測計画の生成等を実行する(ステップP121)。実行を終えた後、要求元は、意思決定の動作を終了する。
【0084】
なお、ステップP111~P113の各処理は、図2に示すステップP110の処理に相当する。また、ステップP121の処理は、図2に示すステップP120の処理に相当する。また、ステップP121の処理が終了した後、要求元は、再度ステップP111から処理を実行してもよい。
【0085】
図7は、本実施形態の運用判断者による意思決定の動作を示すフローチャートである。
【0086】
最初に、衛星管制システム301の受信部340は、バス運用情報を観察する(ステップP131)。
【0087】
次いで、衛星管制システム301の観測結果分析部350は、観察された情報を基に、観測内容を更新する。次いで、観測結果分析部350は、更新された観測内容を運用判断者に通知する(ステップP132)。
【0088】
次いで、運用判断者は、通知された観測内容を基に状況判断する(ステップP133)。次いで、運用判断者は、判断結果に基づいて意思決定する(ステップP134)。具体的には、運用判断者は、発生事象に対する処置方針を決定する。
【0089】
次いで、衛星管制システム301は、決定された処置方針に基づいて衛星の維持運用を実行する(ステップP135)。実行を終えた後、運用判断者は、意思決定の動作を終了する。
【0090】
なお、ステップP131~P135の各処理は、図2に示すステップP130の処理に相当する。また、ステップP135の処理が終了した後、運用判断者は、再度ステップP131から処理を実行してもよい。
【0091】
以上のように、本実施形態の衛星管制システム301は、人工衛星(静止軌道衛星100)の観測計画を生成する観測計画生成部320を備える。観測計画生成部320は、観測要求元からの要求を随時受け付け、受け付けられた要求が反映された観測計画を生成する。
【0092】
また、観測要求元は、OODAループに従って決定された観測要求元の意思を表す要求を観測計画生成部320に入力する。
【0093】
OODAループは、例えば外部から取得した情報と人工衛星が観測した結果を観察するプロセスと、観察した内容を基に状況を判断するプロセスと、判断の結果に基づいて意思を表す要求を決定するプロセスとで構成されている。
【0094】
また、衛星管制システム301は、生成された観測計画に従って人工衛星が観測した結果を分析する観測結果分析部350を備える。
【0095】
OODAループは、例えば人工衛星が観測した結果が分析された内容を観察するプロセスと、観察した内容を基に状況を判断するプロセスと、判断の結果に基づいて意思を表す要求を決定するプロセスとで構成されている。
【0096】
[効果の説明]
多くの一般的な衛星運用管制は、インテリジェンス・サイクル(TCPED)に基づいた運用システムと運用フローで実現されている。
【0097】
インテリジェンス・サイクルは、観測等の運用要求に対して予め計画を立て(Tasking)、観測を実行し(Collection)、観測結果を評価(Processing)および分析(Exploitation)し、分析結果を要求元に配布(Dissemination)するサイクルである。また、インテリジェンス・サイクルが使用される理由は、限られた運用タイミングと管制タイミングを考慮して、衛星リソースが効率良く使用される運用管制が実現可能になるためである。
【0098】
また、宇宙空間において時々刻々と変わる状況に対応するため、宇宙空間の状況把握を目的とする衛星管制システムの構築が進められている。よって、衛星運用管制システムと運用フローには、迅速な判断に基づいた即時運用を可能とする運用システムと運用フローの実現が求められている。
【0099】
本実施形態では、迅速な判断に基づいた即時運用を可能とする衛星運用管制システム1001と運用フローの構築方式が提供される。
【0100】
具体的には、本実施形態の要求元は、衛星運用で得られた観測情報だけでなく、ニュースやインターネット等の各種の情報ソースから得られた情報も用いて迅速な意思決定を行う。よって、衛星管制システム301の観測計画生成部320は、要求元の迅速な意思決定に基づいて、次の衛星観測運用を計画および実行できる。
【0101】
また、本実施形態の運用判断者は、衛星運用で得られた観測情報を基に観測対象の位置や移動方向を再確認し、迅速な状況判断を行う。よって、衛星管制システム301の観測計画生成部320は、運用判断者の迅速な状況判断に基づいて、新たな衛星観測運用を計画および実行できる。
【0102】
なお、低軌道周回衛星による地表面の観測においても、限られた可視時間帯を拡張するために静止軌道帯にデータ中継衛星が配置されれば、地上の管制システムからの常時可視(管制)が可能になる。地上の管制システムからの常時可視が可能な衛星運用管制システムには、OODAループが導入された迅速な意思決定方式が導入可能である。
【0103】
また、低軌道周回衛星を小型化して多量に運用することによって低軌道帯に衛星同士の通信網(衛星コンステレーション)を構築すれば、地上の管制システムからの常時可視(管制)が可能になる。すなわち、上記の意思決定方式が導入可能になる。
【0104】
本実施形態の衛星運用管制システム1001は、宇宙状況把握、地上観測、通信衛星、または情報通信業の分野で利用されることが考えられる。
【0105】
以下、本実施形態の衛星管制システム301のハードウェア構成の具体例を説明する。図8は、本発明による衛星管制システム301のハードウェア構成例を示す説明図である。
【0106】
図8に示す衛星管制システム301は、CPU(Central Processing Unit )11と、主記憶部12と、通信部13と、補助記憶部14とを含む。また、ユーザが操作するための入力部15や、ユーザに処理結果または処理内容の経過を提示するための出力部16を含む。
【0107】
衛星管制システム301は、図8に示すCPU11が各構成要素が有する機能を提供するプログラムを実行することによって、ソフトウェアにより実現される。
【0108】
すなわち、CPU11が補助記憶部14に格納されているプログラムを、主記憶部12にロードして実行し、衛星管制システム301の動作を制御することによって、各機能がソフトウェアにより実現される。
【0109】
なお、図8に示す衛星管制システム301は、CPU11の代わりにDSP(Digital Signal Processor)を含んでもよい。または、図8に示す衛星管制システム301は、CPU11とDSPとを併せて含んでもよい。
【0110】
主記憶部12は、データの作業領域やデータの一時退避領域として用いられる。主記憶部12は、例えばRAM(Random Access Memory)である。
【0111】
通信部13は、有線のネットワークまたは無線のネットワーク(情報通信ネットワーク)を介して、周辺機器との間でデータを入力および出力する機能を有する。
【0112】
補助記憶部14は、一時的でない有形の記憶媒体である。一時的でない有形の記憶媒体として、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory )、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory )、半導体メモリが挙げられる。
【0113】
入力部15は、データや処理命令を入力する機能を有する。入力部15は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスである。
【0114】
出力部16は、データを出力する機能を有する。出力部16は、例えば液晶ディスプレイ装置等の表示装置、タッチパネル、またはプリンタ等の印刷装置である。
【0115】
また、図8に示すように、衛星管制システム301において、各構成要素は、システムバス17に接続されている。
【0116】
衛星管制システム301において、補助記憶部14は、情報取得部310、観測計画生成部320、送信部330、受信部340、観測結果分析部350、および出力部360を実現するためのプログラムを記憶している。
【0117】
なお、衛星管制システム301は、例えば内部に図3に示すような機能を実現するLSI(Large Scale Integration )等のハードウェア部品が含まれる回路が実装されてもよい。
【0118】
また、衛星管制システム301は、CPU等の素子を用いるコンピュータ機能を含まないハードウェアにより実現されてもよい。例えば、各構成要素の一部または全部は、汎用の回路(circuitry )または専用の回路、プロセッサ等やこれらの組み合わせによって実現されてもよい。これらは、単一のチップ(例えば、上記のLSI)によって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各構成要素の一部または全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0119】
また、衛星管制システム301の各構成要素の一部または全部は、演算部と記憶部とを備えた1つまたは複数の情報処理装置で構成されていてもよい。
【0120】
各構成要素の一部または全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0121】
次に、本発明の概要を説明する。図9は、本発明による衛星管制システムの概要を示すブロック図である。本発明による衛星管制システム20は、人工衛星が所定の対象を観測する計画である観測計画を生成する生成部21(例えば、観測計画生成部320)を含み、生成部21は、観測要求元(例えば、要求元や運用判断者)からの要求を随時受け付け、受け付けられた要求が反映された観測計画を生成する。
【0122】
そのような構成により、衛星管制システムは、観測要求元の迅速な判断に基づいて人工衛星を運用できる。
【0123】
また、観測要求元は、OODAループに従って決定された観測要求元の意思を表す要求を生成部21に入力してもよい。
【0124】
また、OODAループは、外部から取得した情報と人工衛星が観測した結果を観察するプロセスと、観察した内容を基に状況を判断するプロセスと、判断の結果に基づいて意思を表す要求を決定するプロセスとで構成されていてもよい。
【0125】
そのような構成により、衛星管制システムは、観測要求元の迅速な判断に基づいて人工衛星の観測計画を生成できる。
【0126】
また、衛星管制システム20は、生成された観測計画に従って人工衛星が観測した結果を分析する分析部(例えば、観測結果分析部350)を含んでもよい。
【0127】
また、OODAループは、人工衛星が観測した結果が分析された内容を観察するプロセスと、観察した内容を基に状況を判断するプロセスと、判断の結果に基づいて意思を表す要求を決定するプロセスとで構成されていてもよい。
【0128】
そのような構成により、衛星管制システムは、人工衛星の観測結果に基づいて人工衛星の観測計画を生成できる。
【符号の説明】
【0129】
11 CPU
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
15 入力部
16、360 出力部
17 システムバス
20、300、301 衛星管制システム
21 生成部
100 静止軌道衛星
201、202 地上システム
310 情報取得部
320 観測計画生成部
330 送信部
340 受信部
350 観測結果分析部
1000、1001 衛星運用管制システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9