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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134028
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/675 20180101AFI20240926BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20240926BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20240926BHJP
   F21S 41/64 20180101ALI20240926BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20240926BHJP
   F21W 102/145 20180101ALN20240926BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240926BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240926BHJP
   F21Y 105/16 20160101ALN20240926BHJP
【FI】
F21S41/675
F21S41/153
F21S41/25
F21S41/64
F21S41/32
F21W102:145
F21W102:155
F21Y115:10
F21Y105:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044104
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河野 圭真
(72)【発明者】
【氏名】下田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】平間 聡
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
(72)【発明者】
【氏名】尾釜 哲平
(57)【要約】
【課題】ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、及びそれ以外の配光パターンのいずれかに切換可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具であって、投影レンズ20と、ロービーム用配光パターンに対応する第1光度分布又はハイビーム用配光パターンに対応する第2光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第1光度分布形成手段40と、前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンに対応する第3光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第2光度分布形成手段30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズと、
ロービーム用配光パターンに対応する第1光度分布又はハイビーム用配光パターンに対応する第2光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第1光度分布形成手段と、
前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンに対応する第3光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第2光度分布形成手段と、を備え、
前記第1光度分布形成手段は、光源と、前記光源が発光した光を前記投影レンズの焦点近傍に集光させる光学素子と、可動ミラーと、前記可動ミラーを、前記光学素子が集光した光の光路上の第1光入射位置又は前記光学素子が集光した光の光路外の第1退避位置に配置する可動ミラー駆動機構と、を備え、
前記第1光度分布は、前記光学素子が集光し前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーで反射された後、前記投影レンズの後方焦点面に到達する反射光、及び前記光学素子が集光し前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーで反射されることなく前記投影レンズの後方焦点面に直接到達する直接光により形成され、
前記第2光度分布は、前記光学素子が集光し前記第1退避位置に配置された前記可動ミラーで反射されることなく前記投影レンズの後方焦点面に直接到達する直接光により形成され、
前記第2光度分布形成手段は、個別に点消灯制御可能な複数領域を含む発光装置と、前記発光装置を、前記光学素子が集光した光の光路中の第2光入射位置又は前記光学素子が集光した光の光路外の第2退避位置に配置する発光装置駆動機構と、を備え、
前記発光装置は、その発光面が前記投影レンズの後方焦点面に沿った状態で前記第2光入射位置に配置され、
前記第3光度分布は、前記第2光入射位置に配置された前記発光装置により形成される車両用灯具。
【請求項2】
前記第1光度分布を形成する場合、
前記可動ミラーは、前記第1光入射位置に配置され、
前記発光装置は、前記第2退避位置に配置され、
前記第2光度分布を形成する場合、
前記可動ミラーは、前記第1退避位置に配置され、
前記発光装置は、前記第2退避位置に配置され、
前記第3光度分布を形成する場合、
前記可動ミラーは、前記第1退避位置に配置され、
前記発光装置は、前記第2光入射位置に配置される請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1光度分布、前記第2光度分布、前記第3光度分布を形成しない場合、
前記可動ミラーは、前記第1光入射位置に配置され、
前記発光装置は、前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーの下方の位置である前記第2退避位置に配置される請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記発光装置は、前記光学素子が集光した光の透過不透過を制御可能な複数領域を含むLCDであり、
前記第3光度分布は、前記光学素子が集光し前記第2光入射位置に配置された前記LCDを透過する光により形成される請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第1光度分布を形成する場合の前記光源の光出力、前記第2光度分布を形成する場合の前記光源の光出力、前記第3光度分布を形成する場合の前記光源の光出力は、この順に大きくなる請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記発光装置は、半導体発光素子群を含むマトリックス光源であり、
前記第3光度分布は、前記第2光入射位置に配置された前記マトリックス光源により形成される請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記半導体発光素子の実装ピッチは50μm以下である請求項6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記投影レンズの後方焦点面は、平面形状である請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記光源及び前記光学素子により構成される光学系は、前記投影レンズの光軸の上方に配置されており、
前記光学系の光軸は、前記投影レンズの光軸に対して前方斜め下方に向かって傾斜している請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンは、マスク対象物を照射しない非照射領域及びマスク対象物以外を照射する照射領域を含むADB用配光パターンである請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンは、路面描画用配光パターンである請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項12】
前記光源は、複数の光源を含み、
前記複数の光源それぞれの明るさは、当該複数の光源全体の光度分布が、前記ロービーム用配光パターン、前記ハイビーム用配光パターン、又は前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンに適した光度分布になるように制御される請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンを切換可能な車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-119184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターン以外の配光パターンを形成する場合、当該配光パターンを形成可能に構成された別の車両用灯具を用意しなければならないという問題がある。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、及びそれ以外の配光パターンのいずれかに切換可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる車両用灯具は、投影レンズと、ロービーム用配光パターンに対応する第1光度分布又はハイビーム用配光パターンに対応する第2光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第1光度分布形成手段と、前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンに対応する第3光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第2光度分布形成手段と、を備え、前記第1光度分布形成手段は、光源と、前記光源が発光した光を前記投影レンズの焦点近傍に集光させる光学素子と、可動ミラーと、前記可動ミラーを、前記光学素子が集光した光の光路上の第1光入射位置又は前記光学素子が集光した光の光路外の第1退避位置に配置する可動ミラー駆動機構と、を備え、前記第1光度分布は、前記光学素子が集光し前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーで反射された後、前記投影レンズの後方焦点面に到達する反射光、及び前記光学素子が集光し前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーで反射されることなく前記投影レンズの後方焦点面に直接到達する直接光により形成され、前記第2光度分布は、前記光学素子が集光し前記第1退避位置に配置された前記可動ミラーで反射されることなく前記投影レンズの後方焦点面に直接到達する直接光により形成され、前記第2光度分布形成手段は、個別に点消灯制御可能な複数領域を含む発光装置と、前記発光装置を、前記光学素子が集光した光の光路中の第2光入射位置又は前記光学素子が集光した光の光路外の第2退避位置に配置する発光装置駆動機構と、を備え、前記発光装置は、その発光面が前記投影レンズの後方焦点面に沿った状態で前記第2光入射位置に配置され、前記第3光度分布は、前記第2光入射位置に配置された前記発光装置により形成される。
【0007】
このような構成により、ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、及びそれ以外の配光パターンのいずれかに切換可能な車両用灯具を提供することができる。
【0008】
これは、第2光度分布形成手段、すなわち、個別に点消灯制御可能な複数領域を含む発光装置と、この発光装置を、光学素子が集光した光の光路中の第2光入射位置又は光学素子が集光した光の光路外の第2退避位置に配置する発光装置駆動機構と、を備えていることによるものである。
【0009】
上記車両用灯具において、前記第1光度分布を形成する場合、前記可動ミラーは、前記第1光入射位置に配置され、前記発光装置は、前記第2退避位置に配置され、前記第2光度分布を形成する場合、前記可動ミラーは、前記第1退避位置に配置され、前記発光装置は、前記第2退避位置に配置され、前記第3光度分布を形成する場合、前記可動ミラーは、前記第1退避位置に配置され、前記発光装置は、前記第2光入射位置に配置されてもよい。
【0010】
また、上記車両用灯具において、前記第1光度分布、前記第2光度分布、前記第3光度分布を形成しない場合、前記可動ミラーは、前記第1光入射位置に配置され、前記発光装置は、前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーの下方の位置である前記第2退避位置に配置されてもよい。
【0011】
また、上記車両用灯具において、前記発光装置は、前記光学素子が集光した光の透過不透過を制御可能な複数領域を含むLCDであり、前記第3光度分布は、前記光学素子が集光し前記第2光入射位置に配置された前記LCDを透過する光により形成されてもよい。
【0012】
また、上記車両用灯具において、前記第1光度分布を形成する場合の前記光源の光出力、前記第2光度分布を形成する場合の前記光源の光出力、前記第3光度分布を形成する場合の前記光源の光出力は、この順に大きくなってもよい。
【0013】
また、上記車両用灯具において、前記発光装置は、半導体発光素子群を含むマトリックス光源であり、前記第3光度分布は、前記第2光入射位置に配置された前記マトリックス光源により形成されてもよい。
【0014】
また、上記車両用灯具において、前記半導体発光素子の実装ピッチは50μm以下であってもよい。
【0015】
また、上記車両用灯具において、前記投影レンズの後方焦点面は、平面形状であってもよい。
【0016】
また、上記車両用灯具において、前記光源及び前記光学素子により構成される光学系は、前記投影レンズの光軸の上方に配置されており、前記光学系の光軸は、前記投影レンズの光軸に対して前方斜め下方に向かって傾斜していてもよい。
【0017】
また、上記車両用灯具において、前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンは、マスク対象物を照射しない非照射領域及びマスク対象物以外を照射する照射領域を含むADB用配光パターンであってもよい。
【0018】
また、上記車両用灯具において、前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンは、路面描画用配光パターンであってもよい。
【0019】
また、上記車両用灯具において、前記光源は、複数の光源を含み、前記複数の光源それぞれの明るさは、当該複数の光源全体の光度分布が、前記ロービーム用配光パターン、前記ハイビーム用配光パターン、又は前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンに適した光度分布になるように制御されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示により、ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、及びそれ以外の配光パターンのいずれかに切換可能な車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両用灯具10の概略構成図である。
図2図1から投影レンズ20、光源31、光学素子32(集光レンズ)、可動ミラー33、発光装置41等を抜き出した概略図である。
図3図1中矢印Ar1方向から見た発光装置41の矢視図である。
図4】車両用灯具システム100の概略構成図である。
図5】(a)ロービーム用配光パターンPLoの一例、(b)ハイビーム用配光パターンPHiの一例、(c)ADB用配光パターンPADBの一例である。
図6】ロービーム用配光パターンPLoを形成するロービーム用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
図7】ハイビーム用配光パターンPHiを形成するハイビーム用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
図8】ADB用配光パターンPADBを形成するADB用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
図9】ADB用配光パターンPADBを形成している様子を表す車両用灯具10の概略斜視図である。
図10】変形例1の車両用灯具10Aの概略構成図である。
図11】変形例1の車両用灯具10Aの概略構成図である。
図12】光学素子32の変形例である。
図13】発光装置41の変形例である。
図14】(a)~(d)光源31の第1変形例である。
図15】(a)~(d)光源31の第2変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態である車両用灯具10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0023】
図1は、車両用灯具10の概略構成図である。
【0024】
図1に示すように、車両用灯具10は、投影レンズ20、ロービーム用配光パターンに対応する第1光度分布又はハイビーム用配光パターンに対応する第2光度分布を投影レンズ20の後方焦点面FP20近傍に形成する第1光度分布形成手段30、ロービーム用配光パターン及びハイビーム用配光パターン以外の配光パターン(例えば、ADB用配光パターン)に対応する第3光度分布を投影レンズ20の後方焦点面FP20近傍に形成する第2光度分布形成手段40を備えている。
【0025】
投影レンズ20は、例えば、後方焦点面FP20(像面)が平面形状の投影レンズである。この後方焦点面FP20(像面)が平面形状の投影レンズは、例えば、複数枚のレンズにより実現することができる。なお、投影レンズ20は、例えば、後方焦点面FP20が二次元又は三次元に湾曲した湾曲形状の投影レンズであってもよい。
【0026】
第1光度分布形成手段30は、光源31、光源31が発光した光を投影レンズ20の焦点F20近傍に集光させる光学素子32、可動ミラー33(シェード兼ミラー)、可動ミラー33を、光学素子32が集光した光の光路上の第1光入射位置p1(図2参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第1退避位置p2(図2参照)に配置する可動ミラー駆動機構34を備えている。なお、図1中符号50は光源31が実装された基板を表し、符号60は基板50が取り付けられたヒートシンクを表し、符号70は筐体を表し、符号80はブラケット取付部を表す。
【0027】
光源31は、LED等の半導体発光素子である。光源31は、発光面を備えている。発光面は、例えば、1mm角の矩形の発光面である。光源31の光軸AX31は、発光面の中央をとおりかつ発光面に直交する方向に延びている。光源31は、投影レンズ20の光軸AX20の上方かつ投影レンズ20の後方に配置されている。その際、光源31の光軸AX31は、光源31(発光面の中央)と投影レンズ20の焦点F20近傍とを通過し、投影レンズ20の光軸AX20に対して前方斜め下方に向かって角度θ傾斜している。
【0028】
光学素子32は、例えば、集光レンズである。この集光レンズは、光源31が発光した光が透過するように、光源31(発光面)の前方に配置されている。この集光レンズは、当該集光レンズを透過する光源31からの光が少なくとも鉛直方向に関し、投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光するレンズとして構成されている。この集光レンズの光軸は、光源31の光軸AX31と一致(又は略一致)している。以上のように、光源31及び光学素子32(集光レンズ)により構成される光学系の光軸(光源31の光軸AX31と同様)は、投影レンズ20の光軸AX20に対して前方斜め下方に向かって角度θ傾斜している。これによりH線及びV線の交点近傍が相対的に明るい、遠方視認性に優れたロービーム用配光パターン(及びハイビーム用配光パターン、ADB用配光パターン)に適した第1光度分布(及び第2光度分布、第3光度分布)を形成することができる。
【0029】
図2は、図1から投影レンズ20、光源31、光学素子32(集光レンズ)、可動ミラー33、発光装置41等を抜き出した概略図である。
【0030】
図2に示すように、可動ミラー33は、投影レンズ20と光源31(光学素子32)との間に配置されている。その際、可動ミラー33は、その後端縁側に設けられた揺動軸33aを中心に揺動可能に支持された状態で配置されている。この揺動軸33aは、車幅方向(図2中紙面に直交する方向)に延びている。
【0031】
可動ミラー33は、揺動軸33aを中心に揺動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第1光入射位置p1(図2参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第1退避位置p2(図2参照)に配置される。
【0032】
可動ミラー33の前端縁33bは、ロービーム用配光パターンの上端縁であるカットオフラインに対応するカットオフ形状(Z型段差部)を含む(図9参照)。可動ミラー33が第1光入射位置p1に配置された状態で、可動ミラー33の前端縁33b(カットオフ形状)は、投影レンズ20の焦点F20近傍に配置される。また、可動ミラー33が第1光入射位置p1に配置された状態で、可動ミラー33は、その前端縁33bから後方(光源31側)に向かって水平に延びる平面形状の反射面33cを含む(図2参照)。
【0033】
可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、その後端縁側に設けられた揺動軸33aを中心に揺動させることにより、第1光入射位置p1又は第1退避位置p2に配置する機構で、例えば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。図示しないが、このモータ等のアクチュエータ(例えば、モータの回転軸)は、可動ミラー33に直接又は減速ギア等を介して連結されている。可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー制御部125により制御される。この点については後述する。
【0034】
図1に示すように、第2光度分布形成手段40は、発光装置41、発光装置41を、光学素子32が集光した光の光路中の第2光入射位置p3(図2参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第2退避位置p4(図2参照)に配置する発光装置駆動機構42を備えている。
【0035】
図3は、図1中矢印Ar1方向から見た発光装置41の矢視図である。
【0036】
図3に示すように、発光装置41は、例えば、光(光学素子32が集光した光)の透過不透過を制御可能な複数領域(ADB領域)42a~42a、及びロービーム領域45を含むLCD(liquid crystal display)である。複数領域42a~42aが本開示の個別に点消灯制御可能な複数領域の一例である。このLCDの外形は、例えば、正面視で、車幅方向に横長の矩形形状である(図3参照)。図示しないが、このLCDは、偏光軸が互いに直交する2枚の偏光板、2枚の偏光板の間に配置されたLCD素子を備えている。
【0037】
各々の領域42a~42aを透過する光の透過量は、2枚の偏光板の偏光方向とLCD素子の各々の領域42a~42aで偏光された光の偏光方向との関係により決まる。各々の領域42a~42aの偏光方向を個別に制御することで、各々の領域42a~42aを、光学素子32が集光した光が透過しない光不透過領域(非照射領域)又は光学素子32が集光した光が透過する光透過領域(照射領域)に設定することができる。各々の領域42a~42aの偏光状態は、発光装置制御部126により制御される。この点については後述する。
【0038】
図2に示すように、発光装置41は、投影レンズ20と光源31(光学素子32)との間に配置されている。その際、発光装置41は、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動可能に支持された状態で配置されている。この揺動軸41aは、投影レンズ20の光軸AX20の上方に配置されており、かつ、車幅方向(図2中紙面に直交する方向)に延びている。
【0039】
発光装置41は、揺動軸41aを中心に揺動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第2光入射位置p3(図2参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第2退避位置p4(図2参照)に配置される。具体的には、発光装置41は、その発光面が投影レンズ20の後方焦点面FP20に沿った状態で第2光入射位置p3(図2参照)に配置される(図2参照)。
【0040】
図3に示すように、複数領域42a~42aは、発光装置41の前端縁41b(図3中下端縁)とADB用配光パターンの下端縁であるカットオフラインに対応するカットオフ形状(左カットオフラインに対応するエッジe1、右カットオフラインに対応するエッジe2、エッジe1、e2を連結する斜めエッジe3)との間に、車幅方向(図3中左右方向)に一列に並んだ状態で配置されている。
【0041】
複数領域42a~42aの幅W(図3参照)は、車幅方向(図3中左右方向)の中央から近い程狭く、逆に車幅方向(図3中左右方向)の中央から遠い程広くなるように設定されている。
【0042】
一方、ロービーム領域45は、LCD素子が設けられていない透明な光透過領域(光が常時透過する領域)である。ロービーム領域45は、発光装置41の後端縁41c(図3中上端縁)とADB用配光パターンの下端縁であるカットオフラインに対応するカットオフ形状(左カットオフラインに対応するエッジe1、右カットオフラインに対応するエッジe2、エッジe1、e2を連結する斜めエッジe3)との間に配置されている。
【0043】
発光装置駆動機構42は、発光装置41を、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動させることにより、第2光入射位置p3又は第2退避位置p4に配置する機構で、例えば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。図示しないが、このモータ等のアクチュエータ(例えば、モータの回転軸)は、発光装置41に直接又は減速ギア等を介して連結されている。発光装置駆動機構42は、発光装置制御部126により制御される。この点については後述する。なお、発光装置41(LCD)が退避した際に投影レンズ20と干渉しないように、光学素子32側に第2退避位置p4を設けている。
【0044】
次に、車両用灯具10を制御する車両用灯具システム100について説明する。
【0045】
図4は、車両用灯具システム100の概略構成図である。
【0046】
図4に示すように、車両用灯具システム100は、車両用灯具10、マスク対象物検出センサ110、制御部120等を備えている。車両用灯具システム100は、自動車等の車両に搭載される。以下、車両用灯具システム100が搭載された車両のことを自車V0という。
【0047】
マスク対象物検出センサ110は、カメラ111、マスク対象物検出部112を備える。
【0048】
図示しないが、マスク対象物検出センサ110は、例えば、自車V0の車室内の車幅方向の中央に設けられている。その際、カメラ111の光軸と自車V0の車両前後方向に延びる中心軸は一致している。
【0049】
カメラ111は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子である。カメラ111は、自車V0の前方を周期的に(例えば、60msごとに)フロントガラス越しに撮像する。
【0050】
マスク対象物検出部112は、カメラ111により撮像された画像(画像データ)に基づいて(所定画像処理を実行することにより)、自車V0の前方に存在するマスク対象物を検出するマスク対象物検出処理を実行する。マスク対象物は、例えば、自車V0の前方の対向車線側を走行している対向車、自車V0の前方の自車線側を走行している先行車である。カメラ111により撮像された画像(画像データ)がマスク対象物を含む場合、マスク対象物検出部112は、当該マスク対象物(例えば、対向車のヘッドランプの位置、先行車のテールランプの位置)を検出する。マスク対象物検出部112は、ソフトウエア又はハードウエアにより実現することができる。
【0051】
以上のようにマスク対象物検出部112によって検出されたマスク対象物(位置等)は、制御部120に送信される。
【0052】
制御部120は、例えば、プロセッサ(図示せず)、記憶部121、メモリ122を備えるECU(Electronic Control Unit)である。ECUは、例えば、灯具制御ECUである。
【0053】
プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。プロセッサは、記憶部121(例えば、ROM)からメモリ122(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラム(図示せず)を実行することにより、マスク対象物取得部123、非照射領域設定部124、可動ミラー制御部125、発光装置制御部126として機能する。これらの一部又は全部は、ハードウエアにより実現してもよい。
【0054】
マスク対象物取得部123は、マスク対象物検出センサ110(マスク対象物検出部112)から送信されるマスク対象物(位置等)を取得(受信)する。
【0055】
非照射領域設定部124は、マスク対象物取得部123により取得されたマスク対象物(位置等)に基づいて、当該マスク対象物を照射しない非照射領域を設定する。非照射領域とは、発光装置41の複数領域42a~42aのうちマスク対象物に対応する領域(光不透過領域に設定される領域)のことである。一方、照射領域とは、発光装置41の複数領域42a~42aのうち非照射領域以外の領域(光透過領域に設定される領域)のことである。
【0056】
可動ミラー制御部125は、可動ミラー33が、揺動軸33aを中心に揺動し、第1光入射位置p1(図2参照)又は第1退避位置p2(図2参照)に配置されるように、可動ミラー駆動機構34を制御する。
【0057】
発光装置制御部126は、発光装置41が、揺動軸41aを中心に揺動し、第2光入射位置p3(図2参照)又は第2退避位置p4(図2参照)に配置されるように、発光装置駆動機構42を制御する。また、発光装置制御部126は、発光装置41の複数領域42a~42aのうち非照射領域設定部124が設定した非照射領域が、光(光学素子32が集光した光)が透過しない光不透過領域となるように、発光装置41(LCD素子。すなわち、各々の領域42a~42aの偏光状態)を制御する。
【0058】
次に、上記構成の車両用灯具10(及び車両用灯具システム100)により形成されるロービーム用配光パターンPLoの一例について説明する。
【0059】
図5(a)は、ロービーム用配光パターンPLoの一例である。なお、図5(a)~図5(c)に示す各配光パターンは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成される。
【0060】
図5(a)に示すロービーム用配光パターンPLoは、次のようにして形成される。
【0061】
図6は、ロービーム用配光パターンPLoを形成するロービーム用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
【0062】
以下の処理は例えばユーザが配光切替スイッチ(図示せず)を操作してロービームを選択した場合に開始する。
【0063】
まず、発光装置41を第2退避位置p4(図2参照)に配置する(ステップS10)。これは、発光装置制御部126により実現される。具体的には、発光装置制御部126は、発光装置41が、揺動軸41aを中心に揺動し、第2退避位置p4(図2参照)に配置されるように、発光装置駆動機構42を制御する。この発光装置制御部126の制御に従い、発光装置駆動機構42は、発光装置41を、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動させることにより、当該発光装置41を第2退避位置p4(図2参照)に配置する。
【0064】
次に、可動ミラー33を第1光入射位置p1(図2参照)に配置する(ステップS11)。これは、可動ミラー制御部125により実現される。具体的には、可動ミラー制御部125は、可動ミラー33が、揺動軸33aを中心に揺動し、第1光入射位置p1(図2参照)に配置されるように、可動ミラー駆動機構34を制御する。この可動ミラー制御部125の制御に従い、可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、その後端縁側に設けられた揺動軸33aを中心に揺動させることにより、当該可動ミラー33を第1光入射位置p1(図2参照)に配置する。
【0065】
以上のようにして、発光装置41及び可動ミラー33は、ロービーム用配光パターン形成可能位置に配置される。
【0066】
次に、光源31を点灯する(ステップS12)。光源31が発光する光は、光学素子32により投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光される。
【0067】
この光学素子32が集光した光の一部は、第1光入射位置p1(図2参照)に配置された可動ミラー33で反射された後(折り返された後)、投影レンズ20の後方焦点面FP20に到達する。また、この光学素子32が集光した光の他の一部は、第1光入射位置p1(図2参照)に配置された可動ミラー33で反射されることなく投影レンズ20の後方焦点面FP20に直接到達する。この投影レンズ20の後方焦点面FP20に到達する光(反射光及び直接光)により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ロービーム用配光パターンPLoに対応する第1光度分布が形成される。
【0068】
この第1光度分布は、その下端縁近傍及び投影レンズ20の光軸AX20近傍の光度が相対的に高いものとなる。
【0069】
また、この第1光度分布の下端縁は、可動ミラー33の前端縁33bにより規定される、ロービーム用配光パターンPLoの上端縁であるカットオフラインCLLoに対応するカットオフ形状(Z型段差部)を含む。
【0070】
この第1光度分布が、投影レンズ20により前方に反転投影されることにより、図5(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLoが形成される。このロービーム用配光パターンPLoは、カットオフラインCLLo近傍及び前照灯の前方投影像の水平線であるH線と前方投影像の鉛直線であるV線との交点近傍(光軸AX20の近傍)の領域が相対的に明るい遠方視認性に優れたものとなる。
【0071】
次に、車両用灯具10(及び車両用灯具システム100)により形成されるハイビーム用配光パターンPHiの一例について説明する。
【0072】
図5(b)は、ハイビーム用配光パターンPHiの一例である。
【0073】
図5(b)に示すハイビーム用配光パターンPHiは、次のようにして形成される。
【0074】
図7は、ハイビーム用配光パターンPHiを形成するハイビーム用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
【0075】
以下、前提として、発光装置41及び可動ミラー33が、上記ロービーム用配光パターン形成可能位置に配置されているものとする。
【0076】
以下の処理は例えばユーザが配光切替スイッチ(図示せず)を操作してハイビームを選択した場合に開始する。
【0077】
まず、可動ミラー33を第1退避位置p2(図2参照)に配置する(ステップS20)。これは、可動ミラー制御部125により実現される。具体的には、可動ミラー制御部125は、可動ミラー33が、揺動軸33aを中心に揺動し、第1退避位置p2(図2参照)に配置されるように、可動ミラー駆動機構34を制御する。この可動ミラー制御部125の制御に従い、可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、その後端縁側に設けられた揺動軸33aを中心に揺動させることにより、当該可動ミラー33を第1退避位置p2(図2参照)に配置する。
【0078】
以上のようにして、発光装置41及び可動ミラー33は、ハイビーム用配光パターン形成可能位置に配置される。
【0079】
次に、光源31を点灯する(ステップS21)。その際、光源31は、ロービーム用配光パターン形成処理時と比べ、光出力が大きくなるように点灯制御される。これは、ロービーム用配光パターンより光度が高いハイビーム用配光パターンを形成するためである。光源31が発光する光は、光学素子32により投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光される。
【0080】
この光学素子32が集光した光は、第1退避位置p2(図2参照)に配置された可動ミラー33で反射されることなく投影レンズ20の後方焦点面FP20に直接到達する。この投影レンズ20の後方焦点面FP20に到達する光(直接光)により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ハイビーム用配光パターンPHiに対応する第2光度分布が形成される。
【0081】
この第2光度分布は、投影レンズ20の光軸AX20近傍の光度が相対的に高いものとなる。
【0082】
この第2光度分布が、投影レンズ20により前方に反転投影されることにより、図5(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHiが形成される。このハイビーム用配光パターンPHiは、H線とV線との交点近傍の領域が相対的に明るい遠方視認性に優れたものとなる。
【0083】
次に、車両用灯具10(及び車両用灯具システム100)により形成されるADB用配光パターンPADBの一例について説明する。
【0084】
図5(c)は、ADB用配光パターンPADBの一例である。図5(c)に示すように、ADB用配光パターンPADBは、マスク対象物を照射しない非照射領域A及びマスク対象物以外を照射する照射領域Bを含む。
【0085】
図8は、ADB用配光パターンPADBを形成するADB用配光パターン形成処理のフローチャート例である。図9は、ADB用配光パターンPADBを形成している様子を表す車両用灯具10の概略斜視図である。
【0086】
以下、前提として、発光装置41及び可動ミラー33が、上記ハイビーム用配光パターン形成可能位置に配置されているものとする。
【0087】
以下の処理は例えばユーザが配光切替スイッチ(図示せず)を操作してADBを選択した場合に開始する。
【0088】
まず、発光装置41を第2光入射位置p3(図2図9参照)に配置する(ステップS30)。これは、発光装置制御部126により実現される。具体的には、発光装置制御部126は、発光装置41が、揺動軸41aを中心に揺動し、第2光入射位置p3(図2参照)に配置されるように、発光装置駆動機構42を制御する。この発光装置制御部126の制御に従い、発光装置駆動機構42は、発光装置41を、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動させることにより、当該発光装置41を第2光入射位置p3(図2参照)に配置する。その際、発光装置41は、その発光面が投影レンズ20の後方焦点面FP20に沿った状態で第2光入射位置p3(図2参照)に配置される(図2参照)。
【0089】
次に、光源31を点灯する(ステップS31)。その際、光源31は、ハイビーム用配光パターン形成処理時と比べ、光出力が大きくなるように点灯制御される。これは、発光装置41を透過する際の光損失を考慮したためである。光源31が発光する光は、光学素子32により投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光される。
【0090】
この光学素子32が集光した光は、第1退避位置p2(図2図9参照)に配置された可動ミラー33で反射されることなく第2光入射位置p3(図2図9参照)に配置された発光装置41(ロービーム領域45及び複数領域42a~42a)に直接入射する。
【0091】
ここで、第2光入射位置p3(図2参照)に配置された発光装置41の複数領域42a~42a全てが、光透過領域(照射領域)に設定されているとする。この場合、発光装置41(複数領域42a~42a)に直接入射する光は、発光装置41(複数領域42a~42a全て)を透過する。この発光装置41(複数領域42a~42a全て)を透過する光により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ADB用配光パターンPADBに対応する第3光度分布が形成される。ここでは、発光装置41の複数領域42a~42a全てが光透過領域(照射領域)に設定されているため、この第3光度分布は、光不透過領域(非照射領域)を含まない。
【0092】
この第3光度分布は、投影レンズ20の光軸AX20近傍の光度が相対的に高いものとなる。
【0093】
また、発光装置41(ロービーム領域45)を透過する光により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ロービーム用配光パターンPLoに対応する第1光度分布が形成される。
【0094】
この第1光度分布及び第3光度分布が、投影レンズ20により前方に反転投影されることにより、図5(b)に示すハイビーム用配光パターンPHiと同様のADB用配光パターンPADBが形成される。
【0095】
次に、自車V0の前方を撮像する(ステップS32)。これは、カメラ111により実現される。
【0096】
次に、マスク対象物検出処理を実行する(ステップS33)。これは、マスク対象物検出部112により実現される。具体的には、マスク対象物検出部112は、ステップS32で撮像された画像(画像データ)に基づいて(所定画像処理を実行することにより)、自車V0の前方に存在するマスク対象物を検出するマスク対象物検出処理を実行する。
【0097】
次に、ステップS33の結果、マスク対象物を検出しない場合(ステップS34:NO)、ステップS31以降の処理を繰り返し実行する。
【0098】
一方、ステップS33の結果、マスク対象物を検出した場合(ステップS34:YES)、マスク対象物検出部112から送信されるマスク対象物(位置等)をマスク対象物取得部123が取得し(ステップS35)、非照射領域を設定する(ステップS36)。この非照射領域の設定は、非照射領域設定部124により実現される。具体的には、非照射領域設定部124は、ステップS35で取得されたマスク対象物(位置等)に基づいて、当該マスク対象物を照射しない非照射領域を設定する。さらに詳細には、非照射領域設定部124は、発光装置41の複数領域42a~42aのうちステップS35で取得されたマスク対象物(位置)に対応する領域を非照射領域として設定する。
【0099】
次に、ステップS36で設定された非照射領域に基づき、発光装置41を制御する(ステップS37)。これは、発光装置制御部126により実現される。具体的には、発光装置制御部126は、発光装置41の複数領域42a~42aのうちステップS36で非照射領域設定部124が設定した非照射領域が、光(光学素子32が集光した光)が透過しない光不透過領域となるように、発光装置41(LCD素子。すなわち、各々の領域42a~42aの偏光状態)を制御する。
【0100】
この場合、発光装置41(複数領域42a~42a)に直接入射する光は、発光装置41の複数領域42a~42aのうち光不透過領域(ステップS37で制御された光不透過領域)以外の光透過領域を透過する。この発光装置41(光不透過領域以外の光透過領域)を透過する光により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ADB用配光パターンPADBに対応する第3光度分布が形成される。この第3光度分布は、光不透過領域に対応する非照射領域を含む。
【0101】
この第3光度分布は、投影レンズ20の光軸AX20近傍の光度が相対的に高いものとなる。
【0102】
また、発光装置41(ロービーム領域45)を透過する光により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ロービーム用配光パターンPLoに対応する第1光度分布が形成される。
【0103】
この第1光度分布及び第3光度分布が、投影レンズ20により前方に反転投影されることにより、図5(c)、図9に示すADB用配光パターンPADBが形成される。このADB用配光パターンPADBは、H線とV線との交点近傍の領域が相対的に明るい遠方視認性に優れたものとなる。また、このADB用配光パターンPADBは、光不透過領域に対応する非照射領域Aを含む。非照射領域Aは、ステップS34で検出されたマスク対象物に対応する位置に形成される。これにより、ステップS34で検出されたマスク対象物に対するグレアを防止することができる。
【0104】
以後、ステップS31に戻り、ステップS31以下の処理が繰り返し実行される。
【0105】
以上説明したように、本実施形態によれば、ロービーム用配光パターンPLo、ハイビーム用配光パターンPHi、及びそれ以外の配光パターンであるADB用配光パターンPADBのいずれかに切換可能な車両用灯具10を提供することができる。
【0106】
これは、第2光度分布形成手段40、すなわち、個別に点消灯制御可能な複数領域を含む発光装置41と、この発光装置41を、光学素子32(集光レンズ)が集光した光の光路中の第2光入射位置p3(図2参照)又は光学素子32(集光レンズ)が集光した光の光路外の第2退避位置p4(図2参照)に配置する発光装置駆動機構42と、を備えていることによるものである。
【0107】
次に、変形例について説明する。
【0108】
図10図11は、変形例1の車両用灯具10Aの概略構成図である。
【0109】
以下、変形例1の車両用灯具10Aついて上記実施形態の車両用灯具10との相違点を中心に説明し、上記実施形態の車両用灯具10と同様の構成については同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0110】
図10に示すように、可動ミラー33は、投影レンズ20と光源31(光学素子32)との間に配置されている。その際、可動ミラー33は、上下方向(図10中矢印Ar2方向参照)に移動可能に支持された状態、例えば、上下方向に延びるガイドレール(図示せず)にスライド移動可能に支持された状態で配置されている。
【0111】
可動ミラー33は、上下方向に移動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第1光入射位置p1(図10参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第1退避位置p2(図9参照)に配置される。
【0112】
可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、上下方向に移動させることにより(例えば、上下方向に延びるガイドレールに沿って上下方向に移動させることにより)、第1光入射位置p1又は第1退避位置p2に配置する機構で、例えば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。図示しないが、このモータ等のアクチュエータ(例えば、モータの回転軸)は、可動ミラー33に直接又は減速ギア等を介して連結されている。
【0113】
図10に示すように、発光装置41は、投影レンズ20と光源31(光学素子32)との間に配置されている。その際、発光装置41は、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動可能に支持された状態で配置されている。この揺動軸41aは、投影レンズ20の光軸AX20の下方に配置されており、かつ、車幅方向(図10中紙面に直交する方向)に延びている。
【0114】
発光装置41は、揺動軸41aを中心に揺動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第2光入射位置p3(図10参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第2退避位置p4(図10参照)に配置される。
【0115】
発光装置駆動機構42は、発光装置41を、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動させることにより、第2光入射位置p3(図10参照)又は第2退避位置p4(図10参照)に配置する機構で、例えば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。図示しないが、このモータ等のアクチュエータ(例えば、モータの回転軸)は、発光装置41に直接又は減速ギア等を介して連結されている。
【0116】
なお、図11に示すように、可動ミラー33は、前後方向(車両前後方向)に移動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第1光入射位置p1(図10参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第1退避位置p2(図10参照)に配置されてもよい。その際、可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、前後方向(図11中矢印Ar3方向参照)に移動させることにより(例えば、前後方向に延びるガイドレールに沿って前後方向に移動させることにより)、第1光入射位置p1又は第1退避位置p2に配置する機構であってもよい。
【0117】
上記構成の変形例1の車両用灯具10Aの動作例は図6図8のフローチャート例と同様である。
【0118】
本変形例1によれば、上記実施形態と同様、ロービーム用配光パターンPLo、ハイビーム用配光パターンPHi、及びそれ以外の配光パターンであるADB用配光パターンPADBのいずれかに切換可能な車両用灯具10Aを提供することができる。
【0119】
また、本変形例1によれば、さらに、可動ミラー33を第1光入射位置p1(図10図11参照)に配置し、かつ、発光装置41を第2退避位置p4(図10図11参照)に配置することにより、発光装置41を可動ミラー33で覆うことが可能になる。
【0120】
これにより、例えば、昼間(車両用灯具10Aを使用しない場合、すなわち、第1光度分布、前記第2光度分布、前記第3光度分布を形成しない場合)、投影レンズ20を透過した太陽光が第1光入射位置p1(図10図11参照)に配置された可動ミラー33により遮光されるため、当該投影レンズ20を透過した太陽光が第2退避位置p4(図10図11参照)に配置された発光装置41を照射するのを防止することができる。これにより、発光装置41の熱劣化、光劣化を抑制することができる。
【0121】
図12は、光学素子32の変形例である。
【0122】
上記実施形態では、光学素子32が集光レンズである例について説明したが、これに限らない。例えば、光学素子32は、集光レンズと同様の集光機能を有する光学素子、例えば、図12に示すように、反射面であってもよい。この反射面は、当該反射面で反射される光源31からの光が少なくとも鉛直方向に関し、投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光する反射面として構成されている。本変形例によっても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0123】
図13は、発光装置41の変形例である。図13中、符号H41は水平線Hに対応する線を表し、符号V41は鉛直線Vに対応する線を表す。
【0124】
また、上記実施形態では、発光装置41が、複数領域(ADB領域)42a~42a、及びロービーム領域45を含むLCDである例について説明したが、これに限らない。例えば、発光装置41は、(光学素子32が集光した光)の透過不透過を制御可能な、マトリックス状に配置された複数領域を含むLCDであってもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、発光装置41がLCDである例について説明したが、これに限らない。例えば、発光装置41は、図13に示すように、半導体発光素子群を含むマトリックス光源であってもよい。図13中各々の矩形が半導体発光素子(画素)に対応する。
【0126】
図13中、符号B1が示す矩形(点線)内の半導体発光素子群(画素群)を点消灯(減光含む)制御することにより、図5(c)と同様のADB用配光パターンを形成することができる。一方、図13中、符号B2が示す矩形(点線)内の半導体発光素子群(画素群)を点消灯(減光含む)制御することにより、自車V0前方の路面上に路面描画用配光パターン(図示せず)を形成することができる。この路面描画用配光パターンとしては、自車V0の進行方向を示す矢印、自車V0周辺の障害物等を示すマーキング表示等様々なパターンが考えられる。なお、半導体発光素子群の実装ピッチは50μm以下が望ましい。このようにすれば、より解像度の高い路面描画用配光パターンを形成することができる。
【0127】
本変形例の車両用灯具10の動作例は図8のフローチャート例と同様である。本変形例によっても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0128】
なお、発光装置41として半導体発光素子群を含むマトリックス光源(図13参照)を用いる場合、ADB用配光パターン形成処理(図8参照)において、光源31は点灯されない。すなわち、発光装置41として半導体発光素子群を含むマトリックス光源(図13参照)を用いる場合、図8中の「光源を点灯(ステップS31)」の処理に代えて、図13中の矩形B1(点線)内の半導体発光素子群(画素群)を点消灯(減光含む)制御する処理が実行される。図8中のステップS37の処理についても同様である。これにより、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ADB用配光パターンPADBに対応する第3光度分布が形成される。
【0129】
図14(a)~図14(d)は、光源31の第1変形例である。図15(a)~図15(d)は、光源31の第2変形例である。図14(a)~図14(d)、図15(a)~図15(d)中、符号H31は水平線Hに対応する線を表し、符号V31は鉛直線Vに対応する線を表す。
【0130】
上記実施形態では、光源31が一つの例について説明したが、これに限らない。例えば、図14(a)、図15(a)に示すように、光源31は、複数の光源であってもよい。図14(a)、図15(a)中、個々の矩形が光源を表す。その際、複数の光源は、各辺が傾いた状態で配置されていてもよいし(図14(a)参照)、各辺が水平及び鉛直の状態で配置されていてもよい(図15(a)参照)。このように光源31が複数の光源により構成される場合、当該光源31の光軸AX31は、水平線Hに対応する線H31と鉛直線Vに対応する線V31との交点をとおり、かつ、その発光面に直交する方向に延びている。以上のように、光源31が複数の光源により構成される場合(例えば、図14(a)、図15(a)参照)、複数の光源を、各配光パターンに応じたパターンで点灯してもよい。
【0131】
例えば、図6に示すロービーム用配光パターン形成処理を実行しロービーム用配光パターンを形成する場合、ステップS12において、複数の光源全体の光度分布がロービーム用配光パターンに適した光度分布となるように各々の光源の明るさを制御してもよい。
【0132】
例えば、ステップS12において、図14(b)、図15(b)に示すように、各々の光源の明るさを制御してもよい。図14(b)、図15(b)中、色が濃いほど明るく点灯していることを表す。また、図14(b)、図15(b)中、符号B3、B4が示す矩形は、複数の光源からの光が可動ミラー33により反射される(折り返される)範囲を表す。
【0133】
また例えば、図7に示すハイビーム用配光パターン形成処理を実行しハイビーム用配光パターンを形成する場合、ステップS21において、複数の光源全体の光度分布がハイビーム用配光パターンに適した光度分布となるように各々の光源の明るさを制御してもよい。
【0134】
例えば、ステップS21において、図14(c)、図15(c)に示すように、各々の光源の明るさを制御してもよい。図14(c)、図15(c)中、色が濃いほど明るく点灯していることを表す。
【0135】
また例えば、図8に示すADB用配光パターン形成処理を実行しADB用配光パターンを形成する場合、ステップS31において、複数の光源全体の光度分布がADB用配光パターンの光度分布に適した光度分布となるように各々の光源の明るさを制御してもよい。
【0136】
例えば、ステップS31において、図14(d)、図15(d)に示すように、各々の光源の明るさを制御してもよい。図14(d)、図15(d)中、色が濃いほど明るく点灯していることを表す。また、図14(d)、図15(d)中、符号B5、B6が示す矩形は、光不透過領域に対応する範囲で、消灯(又は減光)される範囲を表す。このように、光源31を構成する複数の光源のうち光不透過領域に対応する光源を消灯(又は減光)することにより、省電力を実現することができる。
【0137】
以上のように、複数の光源それぞれの明るさは、当該複数の光源全体の光度分布が、ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、又はロービーム用配光パターン及びハイビーム用配光パターン以外の配光パターン(例えば、ADB用配光パターン)に適した光度分布になるように制御してもよい。
【0138】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0139】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本開示は限定的に解釈されるものではない。本開示はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0140】
10、10A…車両用灯具、20…投影レンズ、22…マスク対象物検出部、30…第1光度分布形成手段、31…光源、32…光学素子、33…可動ミラー、33a…揺動軸、33b…前端縁、33c…反射面、34…可動ミラー駆動機構、40…第2光度分布形成手段、41…発光装置、41a…揺動軸、41b…前端縁、42…発光装置駆動機構、50…基板、100…車両用灯具システム、110…マスク対象物検出センサ、111…カメラ、112…マスク対象物検出部、120…制御部、121…記憶部、122…メモリ、123…マスク対象物取得部、124…非照射領域設定部、125…可動ミラー制御部、126…発光装置制御部、A…非照射領域、B…照射領域、CLLo…カットオフライン、F20…焦点、FP20…後方焦点面、PADB…ADB用配光パターン、PHi…ハイビーム用配光パターン、PLo…ロービーム用配光パターン、V…自車、p1…第1光入射位置、p2…第1退避位置、p3…第2光入射位置、p4…第2退避位置
図1
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