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特開2024-13403観察システム、顕微鏡、観察方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013403
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】観察システム、顕微鏡、観察方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20240125BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20240125BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/06
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115462
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】細野 翔大
【テーマコード(参考)】
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG04
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059JJ20
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
2H052AA01
2H052AA05
2H052AA11
2H052AA13
2H052AC09
2H052AD20
2H052AF25
(57)【要約】
【課題】観察漏れを防止すると共に、検鏡方法を切り替えながら試料の凹凸の発見と発見した凹凸の詳細観察を繰り返す必要がない技術を提供する。
【解決手段】観察システムは、第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での試料の画像である第2の画像の取得とを行う顕微鏡と、顕微鏡と通信可能に接続された制御部とを備え、制御部は、第1の画像と第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、領域毎に、第1の画像の輝度値である第1の輝度値と第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、前記第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での前記試料の画像である第2の画像の取得とを行う顕微鏡と、
前記顕微鏡と通信可能に接続された制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1の画像と前記第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、
前記領域毎に、前記第1の画像の輝度値である第1の輝度値と前記第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、
前記領域毎に、前記第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項2】
前記制御部は、更に、前記領域毎に、前記差分を閾値と比較する
ことを特徴とする請求項1記載の観察システム。
【請求項3】
前記制御部と通信可能に接続された表示部を更に備え、
前記制御部は、更に、前記第1の画像又は前記第2の画像を前記表示部に表示すると共に、前記差分が前記閾値以上となる前記領域を強調表示する
ことを特徴とする請求項2記載の観察システム。
【請求項4】
前記顕微鏡は、更に、前記第1の検鏡方法及び前記第2の検鏡方法とは異なる第3の検鏡方法での前記試料の画像である第3の画像の取得を行う
ことを特徴とする請求項2記載の観察システム。
【請求項5】
前記制御部と通信可能に接続された表示部を更に備え、
前記制御部は、更に、前記第3の画像から、前記差分が前記閾値以上且つ最大となる前記領域に対応する部分画像を取得し、前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項4記載の観察システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の画像又は前記第2の画像を前記表示部に表示すると共に、前記差分が前記閾値以上且つ最大となる前記領域を前記部分画像に置き換えて表示する
ことを特徴とする請求項5記載の観察システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記部分画像を前記表示部に拡大表示する
ことを特徴とする請求項5記載の観察システム。
【請求項8】
前記制御部と通信可能に接続された表示部を更に備え、
前記顕微鏡は、更に、前記第3の画像から、前記差分が前記閾値以上となる前記領域に対応する部分画像を取得し、前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項4記載の観察システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1の画像又は前記第2の画像を前記表示部に表示すると共に、前記差分が前記閾値以上となる前記領域を前記部分画像に置き換えて表示する
ことを特徴とする請求項8記載の観察システム。
【請求項10】
前記制御部は、取得した前記部分画像を拡大して前記表示部に順次表示する
ことを特徴とする請求項8記載の観察システム。
【請求項11】
前記制御部は、取得した前記部分画像を前記表示部に一覧表示する
ことを特徴とする請求項8記載の観察システム。
【請求項12】
前記制御部は、一覧表示された前記部分画像の中から選択された部分画像を拡大して前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項11記載の観察システム。
【請求項13】
前記第1の検鏡方法は、明視野観察であり、
前記第2の検鏡方法は、偏斜観察であり、
前記第3の検鏡方法は、微分干渉観察である
ことを特徴とする請求項4記載の観察システム。
【請求項14】
少なくとも1つの任意の値を前記閾値として設定可能である
ことを特徴とする請求項2記載の観察システム。
【請求項15】
第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、前記第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での前記試料の画像である第2の画像の取得とを行う撮像部と、
前記撮像部と通信可能に接続された制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1の画像と前記第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、
前記領域毎に、前記第1の画像の輝度値である第1の輝度値と前記第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、
前記領域毎に、前記第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する
ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項16】
第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、前記第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での前記試料の画像である第2の画像の取得とを行い、
前記第1の画像と前記第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、
前記領域毎に、前記第1の画像の輝度値である第1の輝度値と前記第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、
前記領域毎に、前記第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する
ことを特徴とする観察方法。
【請求項17】
第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、前記第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での前記試料の画像である第2の画像の取得とを行い、
前記第1の画像と前記第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、
前記領域毎に、前記第1の画像の輝度値である第1の輝度値と前記第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、
前記領域毎に、前記第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、観察システム、顕微鏡、観察方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業部品や工業製品の外観検査等では、顕微鏡を用いて被検体となる試料の凹凸(例えば傷)の観察が行われている。このときの手順は、試料の凹凸を発見(探索、特定)するステップと、発見した凹凸を詳細に観察するステップとを含み、それぞれのステップでは異なる検鏡方法が用いられている。例えば、試料の凹凸を発見するステップでは、偏斜観察や、明視野観察と暗視野観察とを組み合わせたMIX観察が用いられ、発見した凹凸を詳細に観察するステップでは、微分干渉観察が用いられている。
【0003】
顕微鏡の一例として、特許文献1や特許文献2に記載の拡大観察装置が知られている。特許文献1に記載の拡大観察装置は、リング照明及び複数の方向性照明の何れかを選択的に出射可能とし、異なる方向性照明で撮像された複数の画像を合成することで、ユーザが観察画面上で指定した任意の角度(光の出射方向の仰角)からの照明での観察を可能としている。特許文献2に記載の拡大観察装置は、異なる観察条件で撮像した複数の画像を一覧表示することで、画像の対比観察をし易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-13737号公報
【特許文献2】特許第4783065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顕微鏡を用いて試料の凹凸を観察する場合、従来では、上述のステップが手動で行われていたために、例えば目視観察による観察漏れによって、試料全体を網羅的に観察できていないない虞があった。また、試料の凹凸を発見するステップと発見した凹凸を詳細に観察するステップとを何度も繰り返す必要があることから、検鏡方法を切り替える作業(例えば、偏斜観察(又はMIX観察)と微分干渉観察の一方から他方へ切り替える作業)を何度も繰り返す必要があり煩雑であった。
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、観察漏れを防止すると共に、検鏡方法を切り替えながら試料の凹凸の発見と発見した凹凸の詳細観察を繰り返す必要がない技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る観察システムは、第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、前記第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での前記試料の画像である第2の画像の取得とを行う顕微鏡と、前記顕微鏡と通信可能に接続された制御部とを備え、前記制御部は、前記第1の画像と前記第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、前記領域毎に、前記第1の画像の輝度値である第1の輝度値と前記第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、前記領域毎に、前記第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する。
【0008】
本発明の一態様に係る顕微鏡は、第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、前記第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での前記試料の画像である第2の画像の取得とを行う撮像部と、前記撮像部と通信可能に接続された制御部とを備え、前記制御部は、前記第1の画像と前記第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、前記領域毎に、前記第1の画像の輝度値である第1の輝度値と前記第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、前記領域毎に、前記第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する。
【0009】
本発明の一態様に係る観察方法は、第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、前記第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での前記試料の画像である第2の画像の取得とを行い、前記第1の画像と前記第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、前記領域毎に、前記第1の画像の輝度値である第1の輝度値と前記第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、前記領域毎に、前記第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、第1の検鏡方法での試料の画像である第1の画像の取得と、前記第1の検鏡方法とは異なる第2の検鏡方法での前記試料の画像である第2の画像の取得とを行い、前記第1の画像と前記第2の画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、前記領域毎に、前記第1の画像の輝度値である第1の輝度値と前記第2の画像の輝度値である第2の輝度値とを算出し、前記領域毎に、前記第1の輝度値と前記第2の輝度値との差分を算出する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、観察漏れを防止すると共に、検鏡方法を切り替えながら試料の凹凸の発見と発見した凹凸の詳細観察を繰り返す必要がない技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る観察システム1の構成を例示する図である。
図2】絞り103の一例を説明する図である。
図3】観察画面の一例を説明する図である。
図4】第1の実施形態に係る観察システム1において実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
図5】観察画像表示エリア301の表示例を示す図である。
図6】拡大順次表示の具体例を説明する図である。
図7】観察画面の一例を模式的に示す図である。
図8】第2の実施形態に係る観察システム1において実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
図9】観察画像表示エリア301の表示例を示す図である。
図10】第3の実施形態に係る観察システム1の構成を例示する図である。
図11】第3の実施形態に係る観察システム1において実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
図12】観察画像表示エリア301の表示例を示す図である。
図13】2つの輝度閾値を用いてプレビュー処理が行われる場合の例を説明する図である。
図14】コンピュータ600のハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る観察システム1の構成を例示する図である。図1に例示した観察システム1は、工業部品や工業製品の外観検査等において、被検体となる試料Sの凹凸(例えば傷)を観察する際等に用いられるシステムである。観察システム1は、顕微鏡10と、制御部の一例であるコントローラ20と、表示部の一例である表示装置30と、入力装置40とを含む。コントローラ20は、顕微鏡10、表示装置30、及び入力装置40の各々と通信可能に接続されている。
【0015】
顕微鏡10は、光学ヘッド100、XYステージ120、及びフレーム130を含む。
【0016】
光学ヘッド100は、光源101、照明レンズ102、絞り103、ポラライザ104、ハーフミラー105、DIC(Differential Interference Contrast)プリズム106、レボルバ107、対物レンズ108、アナライザ109、結像レンズ110、及び撮像部111を含む。
【0017】
絞り103、ポラライザ104、DICプリズム106、及びアナライザ109の各々は、光路に対して挿脱可能に構成されている。絞り103の挿脱は、コントローラ20(絞り制御部203)の制御の下に電動で行われるものとするが、手動でも行われるようにしてもよい。ポラライザ104及びアナライザ109の挿脱は、コントローラ20(アナライザ/ポラライザ制御部204)の制御の下に電動で行われるものとするが、手動でも行われるようにしてもよい。DICプリズム106の挿脱は、コントローラ20(DIC制御部205)の制御の下に電動で行われるものとするが、手動でも行われるようにしてもよい。絞り103は、偏斜観察時に光路に挿入され、明視野観察時や微分干渉観察時には光路から外される。ポラライザ104、DICプリズム106、及びアナライザ109は、微分干渉観察時に光路に挿入され、明視野観察時や偏斜観察時には光路から外される。なお、明視野観察は第1の検鏡方法の一例であり、偏斜観察は第2の検鏡方法の一例であり、微分干渉観察は第3の検鏡方法の一例である。
【0018】
光源101は、照明光を出射する。光源101は、例えば、白色LED(Light Emitting Diode)、ハロゲンランプ、又はキセノンランプ等である。照明レンズ102は、光源101から出射された照明光を平行光にする。
【0019】
絞り103は、偏斜照明を実現するために、照明レンズ102により平行光にされた照明光の一部を遮る。絞り103の詳細については、図2を用いて後述する。
【0020】
ポラライザ104は、光源101からの照明光のうち、透過軸に沿った偏光成分のみを透過させる。ポラライザ104は、例えば偏光板を用いて構成される。
【0021】
ハーフミラー105は、光源101からの照明光を対物レンズ108に反射する一方、対物レンズ108を介して入射して試料Sにおいて反射した反射光を透過する。
【0022】
DICプリズム106は、ノマルスキープリズム(又はウォラストンプリズム)である。ノマルスキープリズムは、複屈折性のある結晶を2つ、結晶軸をずらして貼り合せたものであり、入射した光の偏光を2つに分割する。DICプリズム106は、ハーフミラー105と対物レンズ108との間の光軸上に配置されている。DICプリズム106の進相軸及び遅相軸は、ポラライザ104の透過軸に対してそれぞれ45度の角度をなす。DICプリズム106は、光軸と直交する方向に移動可能とされている。光路に挿入されたDICプリズム106の光軸と直交する方向における位置をリタデーション位置という。リタデーションとは、分割した2つの偏光の光における位相のずれ量である。DICプリズム106を光軸と直交する方向に移動させてリタデーションを調整すると、表示装置30に表示される画像の色味が変化する。灰色鋭敏色や赤色鋭敏色が最も観察しやすい画像の色味とされているため、予め、DICプリズム106を移動させて画像の色味が灰色鋭敏色や赤色鋭敏色になるようにリタデーション位置を調整してもよい。なお、明視野観察時や偏斜観察時では、DICプリズム106は光軸から退避させられている(光路から外されている)。DICプリズム106は、例えば、図示しない駆動部の電動制御により、照明光の光軸に直交する方向に進退させられる。そのような駆動部は、ステッピングモータ等を含んで構成され、コントローラ20(DIC制御部205)の制御に基づいてDICプリズム106を電動制御する。ただし、DICプリズム106を手動で進退させる構成であってもよく、この場合は、そのような駆動部を設けなくてよい。微分干渉観察時には、ポラライザ104を透過して1方向の偏光成分になった光は、DICプリズム(ノマルスキープリズム)106を透過し、2つの直線偏光成分に分離される。そして、試料S表面で反射した光が凹凸の部分では位相差を起こし、干渉を発生し、再びDICプリズム106を透過して2つの直線偏光成分が重ね合わせられる。重ね合わせられた光は、アナライザ109を透過する際に再び1方向のみの偏光成分となり、撮像部111に取り込まれる。
【0023】
レボルバ107は、対物レンズ108を保持し、光学ヘッド100に対して回転する。例えば、レボルバ107は、複数の対物レンズ108を保持し、回転により、観察に使用される対物レンズ108を光路に挿入する。レボルバ107の回転は、コントローラ20の制御の下に電動で行われるようにしてもよいし、手動で行われるようにしてもよい。対物レンズ108は、光源101からの照明光を試料Sに集光する。
【0024】
アナライザ109は、ハーフミラー105を挟んで試料Sと反対側の光軸上に、ポラライザ104に対してクロスニコルに配置される。クロスニコルとは、ポラライザ104とアナライザ109との透過軸が互いに直交する配置を意味する。アナライザ109は、試料Sからの反射光のうち、透過軸に沿った偏光成分のみを透過させる。アナライザ109は、例えば偏光板を用いて構成される。ポラライザ104に対してクロスニコルに配置されることで、アナライザ109は、試料S表面の凹凸によって光路差が発生し干渉が起こった光を透過するのに対し、そのような光路差が発生しない試料S表面の平坦な部分からの光を透過しない為、試料S表面の微小な凹凸によってコントラストが発生する。このように試料Sの凹凸をコントラストに変換して観察する検鏡方法を微分干渉観察と呼ぶ。
【0025】
結像レンズ110は、試料Sからの反射光を集光して観察像を結像する。例えば、微分干渉観察時において、結像レンズ110は、アナライザ109を透過して入射された試料Sからの反射光を集光して観察像を結像する。
【0026】
撮像部111は、結像レンズ110により結像された観察像を受光して光電変換を行うことで試料Sの画像(画像データ)を生成(取得)し、その画像をコントローラ20に出力する。撮像部111は、例えばCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを備えたカメラである。
【0027】
XYステージ120は、試料Sが載置され、その試料Sを照明光(ハーフミラー105から試料Sに至る照明光)の光軸に対して直交する方向(XY方向でもある)に移動させる。XYステージ120による試料Sの移動は、コントローラ20(XYステージ制御部201)の制御の下に電動で行われるものとするが、手動でも行われるようにしてもよい。
【0028】
フレーム130は、XYステージ120が設けられると共に、照明光(ハーフミラー105から試料Sに至る照明光)の光軸方向(Z方向でもある)に光学ヘッド100を移動可能に保持する。フレーム130による光学ヘッド100のZ方向への移動は、コントローラ20(Z制御部202)の制御の下に電動で行われるものとするが、手動でも行われるようにしてもい。光学ヘッド100の移動は、例えば、試料Sに合焦させる(ピントを合わせる)際等に行われる。なお、光学ヘッド100をZ方向に移動させる代わりに、XYステージ120をZ方向に移動させるように構成されてもよい。
【0029】
コントローラ20は、例えばPC(Personal Computer)本体等であって、観察システム1の全体動作を制御する。コントローラ20は、XYステージ制御部201、Z制御部202、絞り制御部203、アナライザ/ポラライザ制御部204、DIC制御部205、領域設定部206、及び輝度情報処理部207を含む。
【0030】
XYステージ制御部201は、XYステージ120による試料SのXY方向の移動を制御する。Z制御部202は、フレーム130による光学ヘッド100のZ方向の移動を制御する。絞り制御部203は、光路に対する絞り103の挿脱等を制御する。
【0031】
アナライザ/ポラライザ制御部204は、光路に対するアナライザ109及びポラライザ104の挿脱を制御する。DIC制御部205は、光路に対するDICプリズム106の挿脱等を制御する。
【0032】
領域設定部206は、顕微鏡10(撮像部111)により明視野観察時に取得された試料Sの画像である明視野画像と、顕微鏡10(撮像部111)により偏斜観察時に取得された試料Sの画像である偏斜画像の画像間で共通のM×N個の複数の領域を設定する。なお、領域設定部206により設定されるM×N個の複数の領域は、明視野画像又は偏斜画像がM×N個に分割された複数の領域にも対応する。
【0033】
輝度情報処理部207は、領域設定部206により設定された領域毎に、明視野画像の輝度値と偏斜画像の輝度値とを算出し、その明視野画像の輝度値と偏斜画像の輝度値との差分を算出し、その差分を輝度閾値と比較する。なお、このような輝度値の差分の大小は試料Sの凹凸の大小に比例することから、輝度値の差分が大きい領域に対応する試料Sの領域は凹凸が大きい領域となる。
【0034】
表示装置30は、例えば液晶ディスプレイ等あって、観察画面等を表示する。観察画面の詳細については、図3を用いて後述する。
【0035】
入力装置40は、例えばマウス、キーボード、及びジョイスティック等であって、ユーザから各種の入力を受け付ける。また、入力装置40は、表示装置30の表示画面上に配置されるタッチパネルを含んでもよい。
【0036】
図2は、絞り103の一例を説明する図である。図2に例示したように、絞り103は、それぞれが半月形状の異なる開口部を有する4つのポジション(A~D)を有する板金として構成され、その何れかのポジションが光路にセットされるように絞り103が平行移動することで、そのポジションの開口部に応じた偏斜照明が実現される。例えば、ポジションAが光路にセットされた場合は、照明光の約右半分が遮光されるようになり、これにより試料Sが左斜め上から照明されるようになる。この場合は、撮像部111で取得される試料Sの画像として、例えば偏斜画像(偏斜観察時の画像)501が得られる。偏斜画像501では、左斜め上から照明されることで試料Sの凹凸の右側に影が生じている。ポジションBが光路にセットされた場合は、照明光の約左半分が遮光されるようになり、これにより試料Sが右斜め上から照明されるようになる。この場合は、撮像部111で取得される試料Sの画像として、例えば偏斜画像502が得られる。偏斜画像502では、偏斜画像501とは反対に、右斜め上から照明されることで試料Sの凹凸の左側に影が生じている。ポジションCが光路にセットされた場合は、照明光の約下半分が遮光されるようになり、これにより奥斜め上から試料Sが照明されるようになる。ポジションDが光路にセットされた場合は、照明光の約上半分が遮光されるようになり、これにより手前斜め上から試料Sが照明されるようになる。光路に対する絞り103のポジションのセットも、コントローラ20(絞り制御部203)の制御の下に電動で行われるものとするが、手動でも行われるようにしてもよい。
【0037】
このような図2に例示した絞り103を用いることで、偏斜照明の方向が異なる4種類の偏斜観察が可能になると共に、その絞り103が光路から外れることで他の検鏡方法(明視野観察や微分干渉観察等)が可能になる。なお、絞り103が有する開口部の数や形状は、図2に例示したものに限らない。絞り103は、図2に例示したものによる4種類以外の1つ又は複数種類の偏斜観察が可能になる構成を有していてもよい。
【0038】
図3は、観察画面の一例を説明する図である。図3に例示したように、観察画面は、観察画像表示エリア301、プレビュー開始ボタン302、領域指定ボタン303、及び輝度閾値設定ボタン304を含む。
【0039】
観察画像表示エリア301は、試料Sのライブ画像等が表示されるエリアである。プレビュー開始ボタン302は、後述のプレビュー処理を開始させるボタンである。領域指定ボタン303は、領域設定部206により設定されるM×N個の複数の領域を指定可能にするボタンである。ユーザは、領域指定ボタン303を押下してM、Nとする任意の値を入力することで、領域設定部206により設定されるM×N個の複数の領域を指定することができる。輝度閾値設定ボタン304は、プレビュー処理で使用される輝度閾値を設定可能にするボタンである。ユーザは、輝度閾値設定ボタン304を押下して輝度閾値とする任意の値を入力することで、所望の輝度閾値を設定することができる。
【0040】
次に、観察システム1において、試料Sの凹凸を観察する場合に実行される処理(プレビュー処理を含む)について図4及び図5を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係る観察システム1において実行される処理の流れを例示するフローチャートである。図5は、観察画像表示エリア301の表示例を示す図である。
【0041】
なお、図4に例示した処理の実行に先立ち、光学ヘッド100のZ方向の位置は、XYステージ120に載置された試料Sに対して合焦させた状態(ピントを合わせた状態)の位置にされているとする。また、表示装置30には、図3を用いて説明した観察画面が表示されているとする。
【0042】
図4に例示した処理では、まず、ユーザによるプレビュー開始ボタン302の押下に応じて、コントローラ20は、S102以降のプレビュー処理を開始する(S101)。プレビュー処理を開始すると、コントローラ20は、絞り103、ポラライザ104、DICプリズム106、及びアナライザ109が光路から外れるように制御し、顕微鏡10(撮像部111)から明視野観察時の画像である明視野画像を取得する(S102)。
【0043】
次に、コントローラ20は、絞り103を光路に挿入すると共に絞り103の何れか1つのポジションを光路にセットするように制御し、顕微鏡10(撮像部111)から偏斜観察時の画像である偏斜画像を取得する(S103)。このときに光路にセットされるポジションは、予めユーザにより指定されたものであってもよい。ユーザによるポジションの指定は、入力装置40を用いて行われる。S103で取得された偏斜画像と、S102で取得された明視野画像は、試料Sの同一領域の画像となる。
【0044】
次に、コントローラ20(領域設定部206)は、S102で取得された明視野画像とS103で取得された偏斜画像の画像間で共通のM×N個の複数の領域を設定する(S104)。このときに設定されるM×N個の複数の領域は、領域指定ボタン303の押下等によって予めユーザにより指定されたものであってもよい。
【0045】
次に、コントローラ20(輝度情報処理部207)は、S104で設定された領域毎に、S102で取得された明視野画像の輝度値とS103で取得された偏斜画像の輝度値とを算出し、その明視野画像の輝度値と偏斜画像の輝度値との差分を算出し、その差分を輝度閾値と比較する(S105)。なお、各領域の輝度値は、例えば、領域に含まれる画素の輝度値の平均を求めることによって算出される。
【0046】
次に、コントローラ20は、S105での比較の結果、差分が輝度閾値以上の領域が有るか否かを判定する(S106)。
【0047】
S106の判定結果がYESの場合、コントローラ20は、絞り103が光路から外れるように制御すると共に、ポラライザ104、DICプリズム106、及びアナライザ109が光路に挿入されるように制御し、顕微鏡10(撮像部111)から微分干渉観察時の画像であるDIC画像を取得する(S107)。S107で取得されたDIC画像と、S102で取得された明視野画像と、S103で取得された偏斜画像は、試料Sの同一領域の画像となる。
【0048】
次に、コントローラ20は、S107で取得されたDIC画像から、差分が最大となる領域(差分が輝度閾値以上且つ最大となる領域でもある)に対応する部分画像(以下、「部分DIC画像」という)を取得する(S108)。コントローラ20は、このときに取得した部分DIC画像を図示しないメモリに保存してもよい。
【0049】
次に、コントローラ20は、S108で取得された部分DIC画像を観察画像表示エリア301に表示する(S109)。このときの表示は、図5の左側に示した表示例のように、S103で取得された偏斜画像511(又はS102で取得された明視野画像でもよい)を観察画像表示エリア301に表示すると共に、差分が最大となる領域(矩形枠512aで示す領域)を、S108で取得された部分DIC画像513に置き換えて表示してもよい。また、このときは、S104で設定されたM×N(この例では5×5)個の複数の領域がそれぞれ矩形枠512(代表して左上の矩形枠のみに符号を付す)で識別可能に表示されてもよいし、差分が最大となる領域の矩形枠512aが、色等によって、他の領域の矩形枠512と識別可能に表示されてもよい。あるいは、図5の右側に示した表示例のように、S108で取得された部分DIC画像513をデジタルズームにより拡大して観察画像表示エリア301に表示してもよい。このときの拡大では、部分DIC画像513が観察画像表示エリア301のサイズに合わせて拡大されてもよい。なお、S109で表示される部分DIC画像は、ライブ画像であってもよい。S109が終了すると、コントローラ20は、図4に例示した処理を終了する。
【0050】
一方、S106の判定結果がNOの場合、コントローラ20は、ユーザの入力に応じて絞り103の異なるポジションが指定されたり(ポジション変更指定)、ユーザによる領域指定ボタン303の押下等に応じて異なるM×N個の複数の領域が指定されたり(複数の領域の変更指定)、ユーザによる輝度閾値設定ボタン304の押下等に応じて輝度閾値を変更したりする(S110)。そして、ポジション変更指定がされた場合は処理がS103に戻り、複数の領域が変更指定された場合には処理がS104に戻り、輝度閾値が変更された場合には処理がS105に戻る。
【0051】
以上のように第1の実施形態によれば、試料Sについての明視野画像と偏斜画像の画像間で共通の複数の領域を設定し、その複数の領域において、明視野画像と偏斜画像の輝度値の差分が輝度閾値以上となる領域の有無を判定することで、試料Sの凹凸を発見(探索、特定)することができる。また、輝度値の差分が輝度閾値以上の領域がある場合は、検鏡方法を微分干渉観察に切り替え、輝度値の差分が最大となる領域に対応する部分DIC画像を観察画像表示エリア301に表示することで、発見した凹凸を詳細に観察することができる。このように、試料Sの凹凸の発見が画像全体に対して網羅的に行われ、試料Sの凹凸の発見とその詳細観察が自動で行われることから、目視観察による観察漏れが生じる虞はない。また、試料Sの凹凸が発見された場合は、自動的に微分干渉観察に切り替わり、凹凸が最も大きい箇所の部分DIC画像が表示されるようになることから、検鏡方法の切り替え等のユーザの煩雑な操作が不要になる。
【0052】
第1の実施形態において、図4のS108では、コントローラ20が、DIC画像から、差分が輝度閾値以上となる領域に対応する部分DIC画像を取得するようにしてもよい。この場合も、取得した部分DIC画像を図示しないメモリに保存してもよい。また、差分が輝度閾値以上となる領域が1つの場合は、図4のS109おいて、コントローラ20が、対応する部分DIC画像をデジタルズームにより拡大して観察画像表示エリア301に表示し、差分が輝度閾値以上となる領域が複数の場合は、図4のS109において、コントローラ20が、対応する複数の部分DIC画像をデジタルズームにより拡大して観察画像表示エリア301に順次表示するようにしてもよい。この場合、図4のS104では、コントローラ20が、更に、設定したM×N個の複数の領域に領域番号を付与し、図4のS105では、コントローラ20が、更に、各領域の差分を表すヒストグラムを輝度閾値と共に観察画面(但し、観察画像表示エリア301以外)に表示し、図4のS109では、拡大されて観察画像表示エリア301に表示又は順次表示される部分DIC画像上に、対応する領域番号を表示するようにしてもよい。
【0053】
このような場合の具体例を、図6を用いて説明する。図6は、拡大順次表示の具体例を説明する図である。図6の左側は、輝度閾値Tと共に表示される各領域の差分を表すヒストグラムを例示し、図6の右側は、観察画像表示エリア301の表示例を示す図である。この具体例では、図4のS104で25(5×5)個の領域が設定され、その25個の領域に「1」~「25」の領域番号が付与されたとし、図4のS105では、観察画面の観察画像表示エリア301以外のエリアに、図6の左側に例示したように、各領域の差分を表すヒストグラムが輝度閾値Tと共に表示され、そして、図4のS109では、図6の右側に示した表示例のように、拡大されて観察画像表示エリア301に順次表示される部分DIC画像上に、対応する領域番号(例えば、「領域番号:12」)が表示される。これにより、ユーザは、差分が輝度閾値以上の複数の領域に対応する複数の部分DIC画像の比較が可能になると共に、該当する領域番号の領域のヒストグラムを参照することで、その領域の差分の値を確認することができる。
【0054】
あるいは、図4のS108において、コントローラ20が、DIC画像から、差分が輝度閾値以上となる領域に対応する部分DIC画像を取得するようにした場合は、観察画面の観察画像表示エリア301以外のエリアに、S103で取得された偏斜画像511(又はS102で取得された明視野画像でもよい)を表示すると共に、差分が輝度閾値以上となる領域を、S108で取得された部分DIC画像に置き換えて表示するようにしてもよい。
【0055】
このような場合の観察画面を、図7を用いて説明する。図7は、観察画面の一例を模式的に示す図である。図7に例示した観察画面は、更に、画像表示エリア305を有する。画像表示エリア305には、S103で取得された偏斜画像511(又はS102で取得された明視野画像でもよい)が表示されると共に、差分が輝度閾値以上となる領域(例えば領域512b、512c、512d)が、S108で取得された部分DIC画像(例えば部分DIC画像513b、513c、513d)に置き換えられて表示される。また、この場合は、画像表示エリア305に表示されている部分DIC画像の中からユーザにより1つの部分DIC画像(例えば部分DIC画像513b)が選択されると、コントローラ20は、選択された部分DIC画像(例えば部分DIC画像513b)をデジタルズームにより拡大して観察画像表示エリア301に表示するようにしてもよい。ユーザによる部分DIC画像の選択は、入力装置40を用いて行われる。このときの拡大では、部分DIC画像が観察画像表示エリア301のサイズに合わせて拡大されてもよい。画像表示エリア305に表示される部分DIC画像と、拡大されて観察画像表示エリア301に表示される部分DIC画像は、ライブ画像であってもよい。このような観察画面によれば、ユーザは、部分DIC画像の位置を確認しながら、拡大表示させる部分DIC画像を選択することができる。
【0056】
第1の実施形態において、拡大されて観察画像表示エリア301に表示される部分DIC画像は、光学ズームにより拡大されたDIC画像であってもよい。これにより、画質を低下させることなく拡大表示させることができる。光学ズームによる拡大は、対物レンズ108の切り替えにより行われてもよいし、光学ヘッド100がズーム光学系を備えて、そのズーム光学系により行われてもよい。このときの拡大倍率は、観察画像表示エリア301のサイズに合わせて算出されてもよい。このような場合は、差分が輝度閾値以上且つ最大となる領域、差分が輝度閾値以上となる領域、又は、ユーザにより選択された部分DIC画像、に対応する試料Sの領域を光学ズームにより拡大してDIC画像を取得し、観察画像表示エリア301に表示するようにしてもよい。このときに観察画像表示エリア301に表示されるDIC画像はライブ画像であってもよい(但し、取得されるDIC画像が複数である場合を除く)。
【0057】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態に係る観察システム1に対して、プレビュー処理の一部が異なる。以下、第1の実施形態に対して異なる点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0058】
図8は、第2の実施形態に係る観察システム1において実行される処理の流れを例示するフローチャートである。図9は、観察画像表示エリア301の表示例を示す図である。
【0059】
図8に例示した処理において、S201乃至S207及びS211の処理は、図4に例示したS101乃至S107及びS110の処理と同様である。S207の後は、コントローラ20が、S207で取得したDIC画像から、差分が輝度閾値以上となる領域に対応する部分DIC画像を取得し(S208)、取得した部分DIC画像を観察画像表示エリア301に一覧表示する(S209)。例えば、差分が輝度閾値以上となる領域が9個であった場合は、図8の左側に示した表示例のように、その9個の領域に対応する9個の部分DIC画像が観察画像表示エリア301に一覧表示される。なお、S209で一覧表示される部分DIC画像は、差分の大小に応じて配置されてもよい。例えば、図8の左側に示した表示例では、差分が1~3番目に大きい領域に対応する部分DIC画像が上段の左側から順に配置され、差分が4~6番目に大きい領域に対応する部分DIC画像が中段の左側から順に配置され、差分が7~9番目に大きい領域に対応する部分DIC画像が下段の左側から順に配置されるといった具合に、差分が大きい順に対応する部分DIC画像が配置されてもよい。
【0060】
次に、コントローラ20は、観察画像表示エリア301に一覧表示された部分DIC画像の中からユーザにより選択された部分DIC画像をデジタルズームにより拡大して観察画像表示エリア301に表示する(S210)。例えば、図8の左側に示した表示例において、9個の部分DIC画像の中から部分DIC画像521が選択された場合は、図8の右側に示した表示例のように、その部分DIC画像521がデジタルズームにより拡大されて観察画像表示エリア301に表示される。なお、ユーザによる部分DIC画像の選択は、入力装置40を用いて行われる。
【0061】
S210が終了すると、コントローラ20は、図8に例示した処理を終了する。なお、コントローラ20は、S208で取得した部分DIC画像や、S210でユーザにより選択された部分DIC画像を、図示しないメモリに保存してもよい。また、S209で一覧表示される部分DIC画像や、S210で拡大表示される部分DIC画像は、ライブ画像であってもよい。
【0062】
以上のように第2の実施形態によれば、差分が輝度閾値以上の領域に対応する部分DIC画像が一覧表示され、その一覧表示の中から選択された部分DIC画像が拡大表示されるので、ユーザは、拡大表示させる部分DIC画像を、他の部分DIC画像と比較しながら選択することができる。
【0063】
第2の実施形態において、図8のS210で拡大されて観察画像表示エリア301に表示される部分DIC画像は、光学ズームにより拡大されたDIC画像であってもよい。これにより、画質を低下させることなく拡大表示させることができる。光学ズームによる拡大は、対物レンズ108の切り替えにより行われてもよいし、光学ヘッド100がズーム光学系を備えて、そのズーム光学系により行われてもよい。このときの拡大倍率は、観察画像表示エリア301のサイズに合わせて算出されてもよい。このような場合、S210では、選択された部分DIC画像に対応する試料Sの領域を光学ズームにより拡大してDIC画像を取得し、観察画像表示エリア301に表示するようにしてもよい。このときに観察画像表示エリア301に表示されるDIC画像はライブ画像であってもよい。
【0064】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第1の実施形態に係る観察システム1に対して、構成の一部及びプレビュー処理の一部が異なる。以下、第1の実施形態に対して異なる点を中心に第3の実施形態について説明する。
【0065】
図10は、第3の実施形態に係る観察システム1の構成を例示する図である。図10に例示したように、第3の実施形態に係る観察システム1は、図1に例示した観察システム1に対して、光学ヘッド100がポラライザ104、DICプリズム106、及びアナライザ109を含まない点、及び、コントローラ20がアナライザ/ポラライザ制御部204及びDIC制御部205を含まない点が異なる。すなわち、第3の実施形態に係る観察システム1は、微分干渉観察のための構成を備えていない。
【0066】
図11は、第3の実施形態に係る観察システム1において実行される処理の流れを例示するフローチャートである。図12は、観察画像表示エリア301の表示例を示す図である。
【0067】
図11に例示した処理において、S301乃至S306及びS308の処理は、図4に例示したS101乃至S106及びS110の処理と同様である。S306の判定結果がYESの場合は、コントローラ20が、S303で取得された偏斜画像(又はS302で取得された明視野画像でもよい)を観察画像表示エリア301に表示すると共に、差分が輝度閾値以上となる領域を強調表示する(S307)。このときの強調表示は、図12に示した表示例のように、観察画像表示エリア301に表示された偏斜画像531において、差分が輝度閾値以上となる領域が矩形枠532(代表して左上の矩形枠のみに符号を付す)で識別可能に表示されることで行われてもよい。この表示例では、差分が輝度閾値以上となる領域が10個あり、その10個の領域がそれぞれ矩形枠532で識別可能に表示されている。なお、S307で観察画像表示エリア301に表示される偏斜画像はライブ画像であってもよい。
【0068】
以上のように第3の実施形態によれば、画像全体から試料Sの凹凸の発見が自動で行われることから、それを手動で行っていた従来とは異なり、目視観察による観察漏れが生じる虞はない。
【0069】
第3の実施形態において、図11のS307では、S303で取得された偏斜画像(又はS302で取得された明視野画像でもよい)の代わりに、S303で取得された偏斜画像とS302で取得された明視野画像とを観察画像表示エリア301に順次表示するようにしてもよい。
【0070】
上述の各実施形態では、1つの輝度閾値を用いてプレビュー処理が行われたが、複数の輝度閾値を用いてプレビュー処理が行われてもよい。図13は、2つの輝度閾値を用いてプレビュー処理が行われる場合の例を説明する図である。図13に示した例のように、2つの輝度閾値T1、T2(T1<T2)を用いてプレビュー処理が行われる場合、図4のS106や、図8のS206や、図11のS306では、差分が輝度閾値T1以上且つ輝度閾値T2未満となる領域の有無が判定されてもよい。そして、図4のS108では、差分が輝度閾値T1以上且つ輝度閾値T2未満且つ最大となる領域に対応する部分DIC画像が取得され、図8のS208では、差分が輝度閾値T1以上且つ輝度閾値T2未満となる領域に対応する部分DIC画像が取得され、図11のS307では、差分が輝度閾値T1以上且つ輝度閾値T2未満となる領域が強調表示されるようにしてもよい。このように、複数の輝度閾値を用いることで、その複数の輝度閾値により定まる特定の輝度範囲(例えば、輝度閾値T1以上且つ輝度閾値T2未満の輝度範囲)に差分が含まれる領域の判定が可能になる。このような複数の輝度閾値も、輝度閾値設定ボタン304の押下等に応じて設定可能としてもよい。これにより、ユーザは任意の複数の輝度閾値を設定することで、その複数の輝度閾値により定まる特定の輝度範囲に差分が含まれる領域を判定させることができる。
【0071】
各実施形態では、明視野画像と偏斜画像の代わりに、複数の明視野画像を貼り合わせた貼り合わせ明視野画像と複数の偏斜画像を貼り合わせた貼り合わせ偏斜画像とを用いてプレビュー処理が行われてもい。詳しくは、図4のS102や、図8のS202や、図11のS302では、試料Sの隣り合う複数の領域(例えば2×2の領域)についての複数の明視野画像を取得して貼り合わせた貼り合わせ明視野画像を生成し、図4のS103や、図8のS203や、図11のS303では、試料Sの同じ複数の領域についての複数の偏斜画像を取得して貼り合わせた貼り合わせ偏斜画像を生成し、以降の処理では、明視野画像の代わりに貼り合わせ明視野画像を用い、偏斜画像の代わりに貼り合わせ偏斜画像を用いて処理が行われてもよい。また、図4のS107や、図8のS207では、試料Sの同じ複数の領域についての複数のDIC画像を取得して貼り合わせた貼り合わせDIC画像を生成し、以降の処理では、DIC画像の代わりに貼り合わせDIC画像を用いて処理が行われてもよい。このような貼り合わせ画像を用いることで、試料Sの観察対象範囲をより広範にすることができる。
【0072】
各実施形態では、取得された部分DIC画像がメモリに保存される場合に、その部分DIC画像が取得されたDIC画像取得時の条件情報(DICプリズム106の挿入位置等に関する情報)が、部分DIC画像のメタデータとして付与されてもよい。光路に挿入されるDICプリズム106は、その挿入位置を光軸に対して直交する方向に変更することで、画像の色味を灰色鋭敏色や赤色鋭敏色等へ変化させることができる。このような条件情報がメタデータとして付与されることで、メモリからの部分DIC画像の読み出しをトリガーとして、その部分DIC画像に付与されている条件情報に基づいて、DIC画像取得時の条件(DICプリズム106の挿入位置等)を再現することができる。
【0073】
各実施形態では、顕微鏡10がリング照明可能な構成を備えてもよい。そして、検鏡方法として、偏斜観察の代わりに、リング照明による暗視野観察と明視野観察とを組み合わせたMIX観察が用いられ、偏斜画像の代わりに、MIX観察時に取得された画像であるMIX画像が用いられて処理が行われてもよい。
【0074】
各実施形態では、顕微鏡10が、コントローラ20、表示装置30、及び入力装置40を備えるように構成されてもよい。
【0075】
各実施形態では、コントローラ20、表示装置30、及び入力装置40が、図14に例示するコンピュータ600により実現されてもよい。
【0076】
図14は、コンピュータ600のハードウェア構成を例示する図である。コンピュータ600は、図14に例示したように、プロセッサ601、メモリ602、入力装置603、出力装置604、記憶装置605、可搬型記憶媒体駆動装置606、通信インタフェース607、及び入出力インタフェース608を備え、その各々は、バス609に接続されて互いにデータの送受信が可能である。
【0077】
プロセッサ601は、CPU(Central Processing Unit)等であり、OS(Operating System)やアプリケーション等のプログラムを実行することにより、各種の処理を行う。メモリ602は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。RAMには、プロセッサ601が実行するプログラムの一部等が一時的に格納される。また、RAMは、プロセッサ601の作業用記憶領域としても使用される。ROMには、プロセッサ601が実行するプログラムやプログラムの実行に必要な各種データ等が記憶される。
【0078】
入力装置603は、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチパネル等である。出力装置604は、液晶ディスプレイ、プリンタ等である。
【0079】
記憶装置605は、データを記憶する装置であり、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。可搬型記憶媒体駆動装置606は、可搬型記憶媒体606aを駆動し、その記憶内容にアクセスしてデータの読み出しや書き込み等を行う。可搬型記憶媒体606aは、メモリデバイス、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク等である。この可搬型記憶媒体606aには、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカードメモリ等も含まれる。
【0080】
通信インタフェース607は、有線又は無線によりネットワークに接続され、当該ネットワークに接続された外部装置との間で通信を行うためのインタフェースである。入出力インタフェース608は、顕微鏡10等の外部装置と接続され、当該外部装置との間でデータの入出力を行うためのインタフェースである。
【0081】
このようなコンピュータ600において、プロセッサ601が実行するプログラムやプログラムの実行に必要な各種データは、メモリ602に限らず、記憶装置605や可搬型記憶媒体606aに記憶されてもよい。また、プロセッサ601が実行するプログラムやプログラムの実行に必要な各種データは、外部装置からネットワーク、通信インタフェース607を介して、メモリ602、記憶装置605、及び可搬型記憶媒体606aのうちの1つ以上に記憶されてもよい。
【0082】
また、コンピュータ600は、図14に例示したものに限らず、図14に例示した一部の構成要素を複数備えて構成されてもよいし、一部の構成要素を省いて構成されてもよい。例えば、コンピュータ600は、複数のプロセッサを備えてもよい。
【0083】
また、コンピュータ600は、マイクロプロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを含んで構成されてもよい。例えば、プロセッサ601は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0084】
図14に例示したコンピュータ600によってコントローラ20、表示装置30、及び入力装置40が実現される場合、例えば、XYステージ制御部201、Z制御部202、絞り制御部203、アナライザ/ポラライザ制御部204、DIC制御部205、領域設定部206、輝度情報処理部207、及びその他のコントローラ20の機能は、プロセッサ601がプログラムを実行することにより実現され、表示装置30は出力装置604により実現され、入力装置40は入力装置603により実現される。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 観察システム
10 顕微鏡
20 コントローラ
30 表示装置
40 入力装置
100 光学ヘッド
101 光源
102 照明レンズ
103 絞り
104 ポラライザ
105 ハーフミラー
106 DICプリズム
107 レボルバ
108 対物レンズ
109 アナライザ
110 結像レンズ
111 撮像部
120 XYステージ
130 フレーム
201 XYステージ制御部
202 Z制御部
203 絞り制御部
204 アナライザ/ポラライザ制御部
205 DIC制御部
206 領域設定部
207 輝度情報処理部
301 観察画像表示エリア
302 プレビュー開始ボタン
303 領域指定ボタン
304 輝度閾値設定ボタン
501、502、511、531 偏斜画像
512、512a、512b、512c、512d、532 矩形枠
513、513b、513c、513d、521 部分DIC画像
600 コンピュータ
601 プロセッサ
602 メモリ
603 入力装置
604 出力装置
605 記憶装置
606 可搬型記憶媒体駆動装置
606a 可搬型記憶媒体
607 通信インタフェース
608 入出力インタフェース
609 バス
A、B、C、D ポジション
S 試料
T、T1、T2 輝度閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14