(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134036
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】可溶体及び可溶体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 85/10 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01H85/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044119
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松村 悟史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 絵里
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502BA03
5G502BB07
5G502BC08
5G502BD03
5G502BD04
5G502JJ01
(57)【要約】
【課題】容易に製造することができる可溶体及び可溶体の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る可溶体1は、ヒューズを構成する可溶体1であって、金属製の回転体状の本体2と、該本体2に接続された2個の接続端子3とを備え、前記本体2は、軸長方向に互いに隣り合うN(NはN≧3の自然数)個の大径部21と、隣り合う2つの前記大径部21夫々に隣接し、前記軸長方向の長さが前記大径部21の前記軸長方向の長さよりも短い{N-1}個の小径部22と、前記軸長方向の両端に位置する2個の前記大径部21から前記軸長方向の外向きに突出している2個の接続部23とを一体に有し、2個の前記接続端子3は2個の前記接続部23に1個ずつ接続されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズを構成する可溶体であって、
金属製の回転体状の本体と、
該本体に接続された2個の接続端子と
を備え、
前記本体は、
軸長方向に互いに隣り合うN(NはN≧3の自然数)個の大径部と、
隣り合う2つの前記大径部夫々に隣接し、前記軸長方向の長さが前記大径部の前記軸長方向の長さよりも短い{N-1}個の小径部と、
前記軸長方向の両端に位置する2個の前記大径部から前記軸長方向の外向きに突出している2個の接続部と
を一体に有し、
2個の前記接続端子は2個の前記接続部に1個ずつ接続されていることを特徴とする可溶体。
【請求項2】
前記本体及び2個の前記接続端子夫々の表面を覆うメッキ層を更に備え、
前記小径部は円柱状をなし、
前記小径部を覆う前記メッキ層の厚さは前記小径部の半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の可溶体。
【請求項3】
前記接続端子は、
前記接続部よりも硬度が低く、
前記接続部が嵌め込まれた接続穴を有し、
前記接続部の前記接続穴に嵌め込まれた部分に圧接されていることを特徴とする請求項2に記載の可溶体。
【請求項4】
ヒューズを構成する可溶体を製造する方法であって、
軸長方向に互いに隣り合うN(NはN≧3の自然数)個の大径部と、隣り合う2つの前記大径部夫々に隣接し、前記軸長方向の長さが前記大径部の前記軸長方向の長さよりも短い{N-1}個の小径部と、前記軸長方向の両端に位置する2個の前記大径部から前記軸長方向の外向きに突出している2個の接続部とを一体に有し、金属製の柱体に転造加工又は切削加工を施すことによって形成された回転体状の本体の2個の前記接続部に1個ずつ2個の接続端子を接続することを特徴とする可溶体の製造方法。
【請求項5】
2個の前記接続端子が接続された前記本体に溶融メッキを施すことにより、前記本体及び2個の前記接続端子夫々の表面を覆うメッキ層を形成し、
該メッキ層を形成する場合、前記本体を溶融した金属に浸漬し、少なくとも前記本体を前記溶融した金属から引き上げるときに、前記本体の軸長方向が前記溶融した金属の液面に対して40°以上50°以下の角度になるようにすることを特徴とする請求項4に記載の可溶体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可溶体及び可溶体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはパイプ型ヒューズエレメント(可溶体)が記載されている。
特許文献1に記載のパイプ型ヒューズエレメントは、一方向に長いヒューズエレメント(本体)と、ヒューズエレメントの長手方向の両端部夫々に接続された2つの接続端子とを備える。ヒューズエレメントは、薄肉の抵抗管と、抵抗管内に密着状態で挿入された線状の可溶合金とを有する。
【0003】
線状の可溶合金を抵抗管に挿入して密着させる作業は、一般的に工数が多い。そこで、特許文献1においては、溶融した可溶合金で抵抗管内を満たしてから可溶合金を固化させるという製造手順が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の製造手順の場合、溶融した可溶合金が抵抗管の一端部から抵抗管内に吸引され、固化するまで冷却される。固化する前の可溶合金が抵抗管から漏出しないようにする必要があるので、ヒューズエレメントを形成する作業が難化することが懸念される。
【0006】
本開示の目的は、容易に製造することができる可溶体及び可溶体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る可溶体は、ヒューズを構成する可溶体であって、金属製の回転体状の本体と、該本体に接続された2個の接続端子とを備え、前記本体は、軸長方向に互いに隣り合うN(NはN≧3の自然数)個の大径部と、隣り合う2つの前記大径部夫々に隣接し、前記軸長方向の長さが前記大径部の前記軸長方向の長さよりも短い{N-1}個の小径部と、前記軸長方向の両端に位置する2個の前記大径部から前記軸長方向の外向きに突出している2個の接続部とを一体に有し、2個の前記接続端子は2個の前記接続部に1個ずつ接続されていることを特徴とする。
【0008】
本開示にあっては、本体が金属製の回転体状をなす。本体には2個の接続端子が接続される。接続端子は導電性を有する。
回転体状の本体は、例えば金属製の柱体に転造加工又は切削加工を施すことによって、容易に形成することができる。可溶体は管状部材を備えないので、本体を管状部材に挿入する工程も、溶融した金属を管状部材に吸引する工程も不要とすることができる。以上の結果、可溶体を容易に製造することができる。
【0009】
本体は、N個の大径部と{N-1}個の小径部と2個の接続部とを一体に有する。NはN≧3の自然数である。本体は回転体状なので、大径部、小径部、及び接続部は互いに同軸である。以下では、本体の軸長方向を単に軸長方向という。
大径部同士は軸長方向に隣り合う。各小径部の軸長方向の両側に大径部が1個ずつ隣接する。2個の接続部は、軸長方向の両端に位置する2個の大径部から軸長方向の外向きに突出する。即ち、軸長方向の両端に位置する各大径部について、軸長方向の一側に小径部が隣接し、軸長方向の他側に接続部が隣接する。接続部には接続端子が接続される。
【0010】
大径部は小径部よりも大径且つ軸長方向に長いので、熱容量が大きい。一方、小径部は大径部よりも溶断しやすい。
各小径部に隣接する2個の大径部の存在により、過電流による発熱時に小径部が高温になりにくく、溶断するまでの時間が長くなる。故に、瞬間的な過電流が流れた場合の小径部の溶断を防止することができる。小径部の何れが溶断しても電流は遮断されるので、複数の小径部の存在により、非瞬間的な過電流が流れた場合の電流遮断性能を向上させることができる。以上の結果、電流を遮断すべきではない場合の溶断しにくさと電流を遮断すべきである場合の溶断しやすさとを両立させることができる。
【0011】
本開示に係る可溶体は、前記本体及び2個の前記接続端子夫々の表面を覆うメッキ層を更に備え、前記小径部は円柱状をなし、前記小径部を覆う前記メッキ層の厚さは前記小径部の半径よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、メッキ層が本体及び2個の接続端子夫々の表面を覆うので、本体及び2個の接続端子夫々を保護することができる。
小径部は円柱状をなす。小径部を覆うメッキ層の厚さは、小径部の半径より大きい。故に、メッキ層の導電性及び溶融性等が、例えば従来のパイプ型ヒューズエレメントにおける可溶合金のそれらに対応し、小径部の導電性及び溶融性等が抵抗管のそれらに対応するようにして、本体を設計することができる。
【0013】
本開示に係る可溶体は、前記接続端子は、前記接続部よりも硬度が低く、前記接続部が嵌め込まれた接続穴を有し、前記接続部の前記接続穴に嵌め込まれた部分に圧接されていることを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、接続端子が接続穴を有し、接続穴に本体の接続部が嵌め込まれる。接続端子は、接続部の、接続穴に嵌め込まれた部分に圧接(加圧により接続)されている。接続端子の硬度が接続部の硬度よりも低いので、接続端子は圧接時に変形して接続部に密着しやすい。故に、本体と接続端子とを確実に互いに電気的に接続することができる。
【0015】
本開示に係る可溶体の製造方法は、ヒューズを構成する可溶体を製造する方法であって、軸長方向に互いに隣り合うN(NはN≧3の自然数)個の大径部と、隣り合う2つの前記大径部夫々に隣接し、前記軸長方向の長さが前記大径部の前記軸長方向の長さよりも短い{N-1}個の小径部と、前記軸長方向の両端に位置する2個の前記大径部から前記軸長方向の外向きに突出している2個の接続部とを一体に有し、金属製の柱体に転造加工又は切削加工を施すことによって形成された回転体状の本体の2個の前記接続部に1個ずつ2個の接続端子を接続することを特徴とする。
【0016】
本開示にあっては、金属製の回転体状の本体を、金属製の柱体に転造加工又は切削加工を施すことによって、容易に形成することができる。故に、本体を内製する場合でも外注する場合でも、本体を容易に得ることができる。また、本体を管状部材に挿入する工程も、溶融した金属を管状部材に吸引する工程も存在しない。以上の結果、本開示に係る可溶体を容易に製造することができる。
【0017】
本開示に係る可溶体の製造方法は、2個の前記接続端子が接続された前記本体に溶融メッキを施すことにより、前記本体及び2個の前記接続端子夫々の表面を覆うメッキ層を形成し、該メッキ層を形成する場合、前記本体を溶融した金属に浸漬し、少なくとも前記本体を前記溶融した金属から引き上げるときに、前記本体の軸長方向が前記溶融した金属の液面に対して40°以上50°以下の角度になるようにすることを特徴とする。
【0018】
本開示にあっては、2個の接続端子が接続された本体に溶融メッキを施すことにより、メッキ層を備える可溶体を容易に製造することができる。
メッキ層を形成する場合、2個の接続端子が接続された本体は、溶融した金属に浸漬される。少なくとも溶融した金属からの引き上げの際、本体の軸長方向を溶融した金属の液面に対して傾斜させることにより、溶融した金属が本体に過剰に付着することを抑制することができる。実験により、本体の軸長方向と金属の液面との角度は40°以上50°以下であることが好適であり、45°が最適であることが分かっている。
【0019】
小径部の軸長方向の長さが大径部の軸長方向の長さよりも短いので、隣り合う2つの大径部の軸長方向の離間距離は短い。小径部とこれに隣り合う2つの大径部とに囲まれた空間は必要十分に狭い。故に、表面張力によってこの空間に溶融した金属が溜まりやすい。従って、メッキ層の厚さを小径部の外周面上のみ部分的に厚くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の可溶体及び可溶体の製造方法によれば、容易に製造することができ、しかも電流遮断性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図5】可溶体の製造手順を説明するための模式図である。
【
図6】可溶体の製造手順を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は実施の形態に係る可溶体の正面図である。
図中1は可溶体であり、可溶体1は本体2、2つの接続端子3、及びメッキ層4を備える。本体2、2つの接続端子3、及びメッキ層4夫々は金属製である。
本体2は回転体状をなし、軸長方向に長い。以下では、本体2の軸長方向が左右に向くものとして説明する。可溶体1は左右対称をなす。
【0024】
図2は本体2の正面図である。
図2には本体2の、向かって左半分が示されている。
本体2は、例えば銅製である。
図1及び
図2に示すように、本体2はN個の大径部21と、{N-1}個の小径部22と、2個の接続部23とを一体に有する。NはN≧3の自然数であり、本実施の形態においてはN=20である。大径部21、小径部22、及び接続部23は夫々回転体状をなし、互いに同軸である。
【0025】
N個の大径部21は左右方向に互いに隣り合う。一の大径部21の左右方向の中心位置と、一の大径部21の右隣又は左隣にある他の大径部21の左右方向の中心位置との距離は、例えば2.4mmである。
図2に示すように、大径部21の外径は小径部22の外径よりも大きい。大径部21は算盤玉状をなし、円柱状部分211及び2つの円錐台部分212を一体に有する。円柱状部分211の外径は、例えば3.98mmである。円柱状部分211の左右両側に2つの円錐台部分212が1つずつ、同軸に突出している。円錐台部分212は突出方向に縮径している。円錐台部分212の外周面の軸長方向に対する傾斜角度は60°である。
【0026】
各小径部22は、隣り合う2つの大径部21に隣接している。即ち、N個の大径部21の内、左右両端に位置する2つの大径部21を除く各大径部21においては、2つの小径部22が、2つの円錐台部分212夫々の頂部から1つずつ、左右方向に突出している。
小径部22は円柱状をなし、小径部22の外径は、例えば1mmである。小径部22の左右方向の長さは、大径部21の左右方向の長さよりも短い。小径部22の左右方向の長さが大径部21の左右方向の長さよりも短いという条件下であれば、大径部21の円柱状部分211の左右方向の長さは、小径部22の左右方向の長さ以上でも以下でもよい。
【0027】
2個の接続部23は、左右両端に位置する2つの大径部21から左右方向の外向きに突出している。例えば左側の接続部23は、左端に位置する大径部21が有する左側の円錐台部分212の頂部から左向きに突出している。接続部23は円柱状をなす。接続部23の外径は例えば2.4mmであり、接続部23の左右方向の長さは例えば6.5mm程度である。
図1に示すように、2個の接続部23に1個ずつ2個の接続端子3が接続されている。接続端子3は、例えば銅製である。接続端子3の硬度は、本体2の少なくとも接続部23の硬度よりも低い。
【0028】
図3は可溶体1の拡大断面図である。
図3には、左側の接続部23と接続端子3との接続部分の近傍が示されている。
図1及び
図3に示すように、接続端子3は円柱状をなす。接続端子3には接続穴31が設けられている。
【0029】
接続穴31は接続端子3の一端面に設けられている。接続穴31は、接続端子3と同軸の円形断面を有する。左側(右側)の接続端子3の場合、接続穴31は右端面(左端面)にある。
左側(右側)の接続穴31には、左側(右側)の接続部23が嵌め込まれている。接続端子3は、接続部23の、接続穴31に嵌め込まれた部分に圧接されている。
【0030】
メッキ層4は、本体2及び2個の接続端子3夫々の表面を覆う。メッキ層4は、例えば錫系の低融点合金製である。
図1において各接続端子3を覆うメッキ層4の図示は省略してある。
図3に示すように、メッキ層4の厚さは一定ではない。具体的には、メッキ層4において、小径部22を覆う部分の厚さは小径部22の半径よりも大きく、大径部21及び接続端子3の外周面夫々を覆う部分の厚さは小径部22を覆う部分の厚さ以下である。ここで、本体2及び接続端子3夫々の外周面におけるメッキ層4の厚さとは、本体2の軸長方向に直交する方向の長さである。
【0031】
可溶体1は、例えば密閉型の電線ヒューズ5(ヒューズ)を構成する(次の
図4参照)。
図4は電線ヒューズ5の断面図である。
電線ヒューズ5はガラス管51、2つのゴムキャップ52、及び2つのスリーブ53を備える。
ガラス管51は両端開口を2つのゴムキャップ52によって閉鎖されている。可溶体1の本体2はガラス管51に収容されており、2つの接続端子3は2つのゴムキャップ52を貫通している。
図4において各接続端子3を覆うメッキ層4の図示は省略してある。
【0032】
スリーブ53は筒状の導体である。各接続端子3の、ゴムキャップ52から外向きに突出している部分は、スリーブ53の軸長方向の一端部に挿入されてスリーブ53に接続されている。スリーブ53の軸長方向の中途には隔壁531が設けられている。スリーブ53の他端部には不図示の電線が接続される。
電線ヒューズ5は絶縁外筒54、2つの絶縁キャップ55、及び2つのスリーブカバー56を更に備える。
【0033】
絶縁外筒54は両端開口を2つの絶縁キャップ55によって気密に閉鎖されている。ガラス管51及び2つのゴムキャップ52は、絶縁外筒54及び2つの絶縁キャップ55に囲まれた空間に収容されている。各絶縁キャップ55はガラス管51に同軸の貫通孔を有し、この貫通孔にスリーブ53の軸長方向の一端部が気密に嵌め込まれている。スリーブ53の軸長方向の他端部は絶縁キャップ55から外向きに突出している。スリーブ53の外周面は絶縁キャップ55及び筒状の絶縁体製のスリーブカバー56に覆われている。
可溶体1が配された空間は、2つのスリーブ53、絶縁外筒54、及び2つの絶縁キャップ55により密閉されている。
【0034】
接続端子3とスリーブ53とは、スリーブ53に挿入された接続端子3にスリーブ53を圧接することによって互いに接続されている。圧接のための加圧によって接続端子3を覆うメッキ層4が容易に変形し、スリーブ53及び接続端子3夫々に密着するので、スリーブ53を接続端子3に確実に電気的に接続することができる。故に、スリーブ53と接続端子3との半田付けは不要である。仮に、電気抵抗が大きい酸化被膜がメッキ層4の表面に生じていたとしても、メッキ層4の変形時に酸化被膜が破られてメッキ層4の酸化していない部分が露出するので、酸化被膜を別途除去する必要はない。
以上の結果、可溶体1を用いて電線ヒューズ5を容易に製造することができる。
【0035】
電線ヒューズ5は、例えば柱上変圧器から一般家庭のような低圧需要家への引込線に直列に接続される。可溶体1は、電線ヒューズ5のヒューズエレメントとして機能し、通電によりジュール熱を発する。
大径部21は小径部22よりも大径且つ軸長方向に長いので、熱容量が大きい。一方、小径部22は大径部21よりも溶断しやすい。
【0036】
大径部21は蓄熱部として機能する。各小径部22に隣接する2個の大径部21の存在により、過電流による発熱時に小径部22が高温になりにくく、溶断するまでの時間が長くなる。故に、瞬間的な過電流が流れた場合の小径部22の溶断を防止することができる。
小径部22は溶断部として機能する。小径部22の何れが溶断しても電流は遮断されるので、複数の小径部22の存在により、非瞬間的な過電流が流れた場合の電流遮断性能を向上させることができる。
以上の結果、電流を遮断すべきではない場合の溶断しにくさと電流を遮断すべきである場合の溶断しやすさとを両立させることができる。
【0037】
メッキ層4が本体2及び2個の接続端子3夫々の表面を覆うので、本体2及び2個の接続端子3夫々を保護することができる。
小径部22を覆うメッキ層4の厚さは、小径部22の半径より大きい。故に、メッキ層4の導電性及び溶融性等が、例えば従来のパイプ型ヒューズエレメントにおける可溶合金のそれらに対応し、小径部22の導電性及び溶融性等が抵抗管のそれらに対応するようにして、本体2を設計することができる。従って、従来のパイプ型ヒューズエレメントの溶断性能と同様の溶断性能を得ることが容易である。
【0038】
小径部22が銅製であり、メッキ層4が錫系合金製である場合、小径部22の電気抵抗はメッキ層4の電気抵抗よりも小さく、小径部22はメッキ層4よりも溶融しにくい。過電流による発熱時には、小径部22に含まれている銅がメッキ層4に溶け出す拡散反応が起こるので、小径部22は徐々に細くなり、やがてメッキ層4ごと溶断する。
【0039】
メッキ層4の厚さについて、小径部22を覆う部分は大きいが、小径部22を除く本体2及び接続端子3夫々を覆う部分は薄い。換言すれば、メッキ層4の、小径部22の溶断に必要な部分だけが厚い。故に、メッキ層4を構成する錫の量は必要最小限である。また、錫はガス化しやすいが、銅はガス化しにくい。以上の結果、溶断時にガス化する金属の量は少ない。従って、ガス化した多量の金属が、ガラス管51の内周面及びゴムキャップ52の表面等にて固化し、2つの接続端子3間を結ぶ導電経路となることにより、通電が継続される、という不都合を防止することができる。また、ガス化した多量の金属により、2つの接続端子3間で放電が生じて通電が継続される、という不都合を防止することができる。
【0040】
図5及び
図6は可溶体1の製造手順を説明するための模式図である。
製造者は、金属製の柱体20を準備し(
図5A参照)、柱体20に転造加工又は切削加工を施すことにより、回転体状の本体2を形成する(
図5B参照)。
なお、本体2は内製に限定されず外注により得たものでもよい。
【0041】
製造者は2つの接続端子3を準備し、各接続端子3の接続穴31に本体2の接続部23を挿入する。
次に、製造者は、例えば六角圧縮ダイスを用いて左側の接続端子3の右端部に外力を加えることにより、左側の接続端子3を左側の接続部23に圧接する(
図5C参照)。このとき、左側の接続端子3の右端部の外周面には圧接の痕跡である溝32が形成される。同様にして、製造者は右側の接続端子3を右側の接続部23に圧接する。
【0042】
接続端子3の硬度が接続部23の硬度よりも低いので、接続端子3は圧接時に変形して接続部23に密着しやすい。故に、本体2と接続端子3とを確実に互いに電気的に接続することができる。従って、接続部23と接続端子3との半田付けは不要である。
なお、柱体20の硬度が接続端子3の硬度以下である場合、製造者は、例えば接続端子3に対して熱処理を施し、接続端子3の硬度を少なくとも各接続部23の硬度より低下させる。
【0043】
2個の接続端子3が接続された本体2の形成後、製造者は、本体2及び2個の接続端子3に溶融メッキを施すことにより、メッキ層4を形成する。このために、製造者は本体2(及び2個の接続端子3)を、溶融した金属(以下、溶融金属40という)に浸漬する。
【0044】
製造者は、少なくとも溶融金属40から本体2を引き上げるときに、溶融金属40の液面に対して本体2を傾斜させる(
図6参照)。このとき、製造者は、本体2の軸長方向が溶融金属40の液面に対して40°以上50°以下(最も好ましくは45°)の角度になるようにする。
溶融金属40から本体2を引き上げると、本体2に付着した溶融金属40の一部が本体2から脱落する。溶融金属40からの引き上げ角度を40°以上50°以下にすることにより、溶融金属40が本体2に過剰に付着することを抑制することができる。
【0045】
小径部22の左右方向の長さが大径部21の左右方向の長さよりも短いので、隣り合う2つの大径部21の左右方向の離間距離は短い。小径部22とこれに隣り合う2つの大径部21とに囲まれた空間は必要十分に狭い。故に、表面張力によってこの空間に溶融金属40が溜まりやすい。従って、メッキ層4の厚さを小径部22の外周面上のみ部分的に厚くすることができる。
小径部22の長さ及び円錐台部分212の外周面の角度は適切に設計する必要がある。小径部22が長すぎたり、円錐台部分212の外周面の軸長方向に対する傾斜角度が60°を大幅に下回ったりすると、前述した空間に溶融金属40が溜まらず、小径部22の外周面上に所望の厚さのメッキ層4を形成することができない。
【0046】
以上のような可溶体1の製造方法によれば、柱体20に転造加工又は切削加工を施すことによって本体2を容易に形成することができる。可溶体1は管状部材を備えないので、本体2を管状部材に挿入する工程も、溶融金属40を管状部材に吸引する工程も不要とすることができる。以上の結果、可溶体1を容易に製造することができる。
2個の接続端子3が接続された本体2に溶融メッキを施すことにより、メッキ層4を備える可溶体1を容易に製造することができる。
可溶体1の製造後、製造者は可溶体1を用いて電線ヒューズ5を形成する。
【0047】
なお、本体2及び接続端子3は銅製に限定されず、メッキ層4は錫系合金製に限定されない。
所望の厚さのメッキ層4が得られるのであれば、溶融金属40から本体2を引き上げるときの引き上げ角度は40°以上50°以下に限定されない。
所望の溶断性能が得られるのであれば、小径部22を覆うメッキ層4の厚さは小径部22の半径未満でもよい。
【0048】
例えば半田付けにより本体2と接続端子3とを確実に互いに電気的に接続することができるのであれば、接続端子3の硬度は接続部23の硬度以上でもよい。
大径部21及び小径部22夫々の形状は上述したものに限定されない。例えば、大径部21は円柱状部分211を有せず、2つの円錐台部分212を一体に有する算盤玉状でもよい。大径部21は円柱状でもよい。
【0049】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせであって、相互に組み合わせることが可能である。更に、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 可溶体; 2 本体; 20 柱体; 21 大径部; 22 小径部; 23 接続部; 3 接続端子; 31 接続穴; 4 メッキ層; 40 溶融金属(溶融した金属); 5 電線ヒューズ(ヒューズ)