(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134038
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】エッチング方法および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240926BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20240926BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H10B43/27
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044121
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原山 絢多
(72)【発明者】
【氏名】今村 翼
【テーマコード(参考)】
5F004
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BD03
5F004CA03
5F004DA00
5F004DA15
5F004DA16
5F004DA26
5F004DB01
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA04
5F004EA09
5F004EA13
5F004EA14
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP76
5F083ER21
5F083GA10
5F083JA04
5F083JA19
5F083PR03
5F101BA46
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH14
(57)【要約】
【課題】凹部の加工精度を高める。
【解決手段】エッチング方法は、加工対象物の表面に設けられた凹部にケイ素原子を有する酸化物の前駆体を供給することにより、凹部の内壁面に接する第1の領域を有する前駆体膜を形成し、酸化処理により内壁面の上部から下部に向かって第1の領域の一部を酸化することにより、酸化物を有する第1の部分を形成し、凹部にシリル化剤を供給して第1の部分をシリル化することにより第2の部分を形成し、エッチングにより、第2の部分が残存したまま第1の領域の残部を除去するととともに凹部を加工する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の表面に設けられた凹部にケイ素原子を有する酸化物の前駆体を供給することにより、前記凹部の内壁面に接する第1の領域を有する前駆体膜を形成し、
酸化処理により前記内壁面の上部から下部に向かって前記第1の領域の一部を酸化することにより、前記酸化物を有する第1の部分を形成し、
前記凹部にシリル化剤を供給して前記第1の部分をシリル化することにより第2の部分を形成し、
エッチングにより、前記第2の部分が残存したまま前記第1の領域の残部を除去するととともに前記凹部を加工する、
エッチング方法。
【請求項2】
前記前駆体は、ジクロロシラン(DCS)、テトラクロロシラン(SiCl4)、ビス(t-ブチルアミノ)シラン(BTBAS)、またはビス(ジエチルアミノ)シラン(BDEAS)である、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記シリル化剤は、シリコン原子と、水素原子と、炭素原子と、を含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記酸化処理により、前記第1の領域の一部を酸化し、前記第1の領域の残部を酸化しない、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記第1の部分は、酸素プラズマにより形成される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチングは、組成式CxHyFz(Cは炭素を表し、Hは水素を表し、Fはフッ素を表し、xは1以上の整数を表し、yは0以上の整数を表し、zは2以上の整数を表す)により表されるフッ化物ガスを用いて行われる、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記エッチングにより、前記シリル化された前記第1の部分の上に膜が形成され、
前記膜は、炭素と、フッ素と、窒素と、を含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記シリル化は、前記前駆体膜の形成および前記酸化を交互に複数回切り替えた後に行われる、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記第1の部分および前記第2の部分は、前記エッチングの後に除去される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記前駆体膜の形成、前記酸化、前記シリル化、および前記エッチングは、前記加工対象物を大気に曝露することなく、同一の半導体製造装置を用いて連続的に行われる、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項11】
基板の上に積層された複数の層と、前記複数の層を貫通する凹部と、を有する加工対象物を準備し、
前記凹部にケイ素原子を有する酸化物の前駆体を供給することにより、前記凹部の内壁面に接する第1の領域を有する前駆体膜を形成し、
酸化処理により前記内壁面の上部から下部に向かって前記第1の領域の一部を酸化することにより、前記酸化物を有する第1の部分を形成し、
前記凹部にシリル化剤を供給して前記第1の部分をシリル化することにより第2の部分を形成し、
エッチングにより、前記第2の部分が残存したまま前記第1の領域の残部を除去するととともに前記凹部を加工する、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エッチング方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元メモリ等の半導体装置の製造方法において、エッチングにより加工対象物に高いアスペクト比を有する凹部を形成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-45178号公報
【特許文献2】特開2022-115656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の発明が解決しようとする課題は、凹部の加工精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のエッチング方法は、加工対象物の表面に設けられた凹部にケイ素原子を有する酸化物の前駆体を供給することにより、凹部の内壁面に接する第1の領域を有する前駆体膜を形成し、酸化処理により内壁面の上部から下部に向かって第1の領域の一部を酸化することにより、酸化物を有する第1の部分を形成し、凹部にシリル化剤を供給して第1の部分をシリル化することにより第2の部分を形成し、エッチングにより、第2の部分が残存したまま第1の領域の残部を除去するととともに凹部を加工する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】エッチング方法例および半導体装置の製造方法例を説明するためのフローチャートである。
【
図2】エッチング方法例および半導体装置の製造方法例に使用可能な半導体製造装置の例を示す模式図である。
【
図3】加工対象物10の構造例を示す断面模式図である。
【
図4】前駆体供給工程S2を説明するための断面模式図である。
【
図5】前駆体膜107の形成例を説明するための模式図である。
【
図6】酸化工程S3の例を説明するための断面模式図である。
【
図7】前駆体膜107の酸化の例を説明するための模式図である。
【
図8】シリル化工程S4の例を説明するための断面模式図である。
【
図9】シリル化部分108の形成例を説明するための模式図である。
【
図10】エッチング工程S5の例を説明するための断面模式図である。
【
図11】メモリ層形成工程S6の例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0008】
図1は、実施形態のエッチング方法例および半導体装置の製造方法例を説明するためのフローチャートである。半導体装置は、例えば3次元メモリである。半導体装置の製造方法例は、準備工程S1と、前駆体供給工程S2と、酸化工程S3と、シリル化工程S4と、エッチング工程S5と、メモリ層形成工程S6と、を具備する。これらの工程は、別々の装置を用いて順に行われてもよく、同一の装置を用いて対象物を大気に曝露することなく連続的に行われてもよい。
【0009】
[半導体製造装置]
図2は、実施形態のエッチング方法例および半導体装置の製造方法例に使用可能な処理装置としての半導体製造装置の例を示す模式図である。
図2は、前駆体供給工程S2と、酸化工程S3と、シリル化工程S4と、エッチング工程S5と、を連続的に行うことが可能な半導体製造装置(例えば、エッチング装置)の例を示す。
【0010】
図2に示す半導体製造装置1は、チャンバ2と、ホルダ3と、電源部4と、ガス供給部5と、ガス排出部6と、を具備する。
【0011】
チャンバ2は、プラズマを用いたスパッタリングにより加工対象物10をエッチング(プラズマエッチング)することが可能な空間である。
【0012】
ホルダ3は、チャンバ2の中に設けられる。ホルダ3は、加工対象物10を載置するための載置台としての機能を有する。ホルダ3は、例えば、静電チャックを有する。ホルダ3は、温度調整器に接続されていてもよい。
【0013】
電源部4は、高周波電源41と、高周波電源42と、を有する。
【0014】
高周波電源41は、チャンバ2に高周波電力を供給する機能を有する。これにより、チャンバ2の中にプラズマを生成できる。高周波電力は、例えば50W以上5000W以下である。高周波電力の周波数は、例えば20MHz以上200MHz以下である。
【0015】
高周波電源42は、ホルダ3に高周波電力を供給する機能を有する。これにより、加工対象物10に衝突するイオンのエネルギーを制御できる。高周波電力は、例えば100W以上10000W以下である。高周波電力の周波数は、例えば0,1MHz以上13.56MHz以下である。
【0016】
ガス供給部5は、例えば、第1のガスを供給するガス供給源51と、第2のガスを供給するガス供給源52と、第3のガスを供給するガス供給源53と、第4のガスを供給するガス供給源54と、を有する。ガス供給源51ないしガス供給源54のそれぞれは、チャンバ2に接続される。ガス供給部5は、マスフローコントローラをさらに有し、第1~第4のガスのそれぞれの流量を各マスフローコントローラにより制御してもよい。
【0017】
ガス排出部6は、チャンバ2に接続される。ガス排出部6は、チャンバ2の内部を減圧して真空状態にする機能を有するとともに、チャンバ2内のガスを排出する機能を有する。ガス排出部6は、例えば、チャンバ2に接続されたバルブや真空ポンプにより構成される。
【0018】
電源部4、ガス供給部5、およびガス排出部6は、制御回路により制御されてもよい。制御回路は、例えばプロセッサ等を用いたハードウェアを用いて構成される。なお、各動作を動作プログラムとしてメモリ等のコンピュータ読み取りが可能な記録媒体に保存しておき、ハードウェアにより記録媒体に記憶された動作プログラムを適宜読み出すことで各動作を実行してもよい。
【0019】
[準備工程S1]
準備工程S1の例では、エッチング工程S5によりエッチングされる加工対象物10を準備する。加工対象物10は、搬送アームを用いてホルダ3に載置され、真空下で保持される。
【0020】
図3は、加工対象物10の構造例を示す断面模式図である。
図3は、加工対象物10のX-Z断面の一部を示す。
図3は、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸およびY軸に直交するZ軸とを示す。
【0021】
加工対象物10は、基板101と、下部層102と、第1の層103と、第2の層104と、上部層105と、マスク層106と、凹部Hと、を有する。加工対象物10は、
図3に示す構成に限定されない。
【0022】
基板101の例は、シリコン基板、炭化ケイ素基板等の半導体基板(ウエハ)、ガラス基板、石英基板、サファイア基板等の絶縁基板、またはGaAs基板等の化合物半導体基板等である。基板101の表面は、例えば、X軸およびY軸に沿って延在する。基板101の厚さ方向は、例えば、Z軸に沿う。
【0023】
下部層102は、基板101の上に設けられる。下部層102は、例えば酸化シリコン層や窒化シリコン層等の絶縁層や絶縁層間の導電層を含む。下部層102は必ずしも設けられなくてもよい。
【0024】
第1の層103と第2の層104は、下部層102の上に交互に積層されて積層体を形成する。下部層102が設けられない場合、第1の層103または第2の層104が基板101上に形成される。第1の層103と第2の層104との積層数は、
図3に示す数に限定されない。
【0025】
第1の層103は、犠牲層である。犠牲層は、後に導電層が形成される領域である。第1の層103は、例えば窒化シリコン膜を有する。
【0026】
第2の層104は、例えば酸化シリコン膜を有する。
【0027】
上部層105は、第1の層103と第2の層104との積層の上に設けられる。上部層105は、例えば酸化シリコン層や窒化シリコン層等の絶縁層や絶縁膜間の導電層を含む。上部層105は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0028】
マスク層106は、上部層105の上に設けられる。マスク層106は、上部層105の一部をエッチングするためのマスクとしての機能を有する。マスク層106の例は、有機ハードマスク等を含む。マスク層106は、上部層105の一部をエッチングした後に除去されてもよい。
【0029】
凹部Hは、上部層105を貫通して第1の層103と第2の層104との積層の一部を露出させる。凹部Hは、内壁面HAと、内底面HBと、を有する。内壁面HAは、第1の層103と第2の層104との積層方向と交差する方向に延在する。内底面HBは、内壁面HAと交差する方向に延在する。凹部Hは、X-Y平面において例えばホール形状を有する。凹部Hの形状は、ホール形状に限定されない。凹部Hは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)により第1の層103と第2の層104との積層体に形成可能である。
【0030】
[前駆体供給工程S2]
図4は、前駆体供給工程S2の例を説明するための断面模式図である。
図4は、加工対象物10のX-Z断面の一部を示す。
【0031】
前駆体供給工程S2の例では、凹部Hにケイ素原子を有する酸化物の前駆体(プリカーサ)を供給することにより、前駆体膜107を形成する。前駆体膜107は、凹部Hの内壁面HAおよび内底面HBのそれぞれを覆う。前駆体膜107は、内壁面HAに面する領域R1と、内底面HBに面する領域R2と、を有する。前駆体膜107は、凹部Hの内底面HBに形成されなくてもよい。
【0032】
前駆体供給工程S2の例では、例えば、
図2に示す電源部4から高周波電力を供給することなく、ガス供給源51からチャンバ2に第1のガスを供給する。
【0033】
第1のガスは、ケイ素原子を有する酸化物の前駆体を含有する。前駆体は、Si-H結合を有し、Si-O結合を有しないことが好ましい。前駆体は、Si-N結合を有していてもよい。前駆体の例は、ジクロロシラン(DCS)、テトラクロロシラン(SiCl4)、ビス(t-ブチルアミノ)シラン(BTBAS)、ビス(ジエチルアミノ)シラン(BDEAS)等を含む。
【0034】
前駆体の液体を気化させて第1のガスを形成する場合、ガス供給源51は、
図2に示すように、前駆体の液体を供給する液体供給機511と、前駆体の液体を気化させる気化器512と、を有する。前駆体が気体である場合、ガス供給源51は、液体供給機511および気化器512を有することなく、第1のガスをチャンバ2に供給する。
【0035】
前駆体は、内壁面HAおよび内底面HBの表面に吸着されて前駆体膜107を形成する。前駆体膜107の形成後、チャンバ2内のガスは、ガス排出部6を介して排出される。
【0036】
図5は、前駆体膜107の形成例を説明するための模式図である。
図5は、X-Z断面の一部を示す。
図5は、内壁面HAの第1の層103および第2の層104の上に前駆体膜107が形成される例を示す。前駆体がBTBASである場合、BTBASの分子中のSi-N結合が切断され、シリコン原子の切断部が内壁面HAの第1の層103の表面の窒素原子と結合することにより、-N-Si-H結合を形成し、シリコン原子の切断部が内壁面HAの第2の層104の表面の酸素原子と結合することにより-O-Si-H結合を形成する。よって、前駆体膜107は、シリコン原子と、水素原子と、酸素原子と、窒素原子と、を有する。内底面HBの表面等の凹部Hの表面のその他の部分も内壁面HAと同様の反応が起こってもよい。よって、前駆体膜107を形成できる。-O-Si-H結合や-N-Si-H結合の数は、
図5に示す数に限定されない。
【0037】
[酸化工程S3]
図6は、酸化工程S3の例を説明するための断面模式図である。
図6は、加工対象物10のX-Z断面の一部を示す。
【0038】
酸化工程S3の例では、酸化処理により、内壁面HAの上部から下部に向かって領域R1の一部を酸化する。酸化処理は、例えば酸素プラズマ処理である。酸素プラズマ処理は、例えば
図2に示すガス供給源52からチャンバ2に酸素を含有する第2のガスを供給するとともに電源部4から高周波電力を供給してチャンバ2内に酸素プラズマを生成することにより行うことができる。第2のガスの供給および高周波電力の供給は、酸化処理の後に停止される。
【0039】
図7は、前駆体膜107の酸化の例を説明するための模式図である。
図7は、X-Z断面の一部を示す。
図7は、内壁面HAの上に形成される領域R1の一部の第1の層103および第2の層104が酸化される例を示す。酸素プラズマ処理により、前駆体膜107の表面のSi-H結合が切断され、シリコン原子の切断部が第2のガス中の酸素原子と結合することにより-O-Si-結合を形成する。これにより、酸化物を有する酸化部分171を形成できる。一方で、酸化部分171の下部領域に相当する領域R1の残部や領域R2は、酸化処理により酸化しない非酸化部分となり、その表層には-O-Si-H結合や-N-Si-H結合を有する前駆体膜107の部分を有するままである。-O-Si-結合は、前駆体膜107における一部の第1の層103および第2の層104のそれぞれの表面の部分に形成される。-O-Si-結合の数は、
図7に示す数に限定されない。
【0040】
凹部Hの深さ方向における酸化部分171の長さは、例えば、酸化処理時の凹部Hの深さの8割以上であることが好ましい。これにより、エッチング工程S5により内壁面HAが不要に加工されて凹部Hの直径等の幅が大きくなることを抑制できる。酸化部分171の長さは、例えば酸素プラズマ処理の処理時間を変えることにより調整可能である。酸化処理後、チャンバ2内のガスは、ガス排出部6を介して排出される。
【0041】
前駆体供給工程S2および酸化工程S3は、前駆体膜107の厚さが所望の値以上になるまで繰り返し行われる。
【0042】
[シリル化工程S4]
図8は、シリル化工程S4の例を説明するための断面模式図である。
図8は、加工対象物10のX-Z断面の一部を示す。
【0043】
シリル化工程S4の例では、凹部Hにシリル化剤を供給して酸化部分171をシリル化することにより酸化部分171上にシリル化部分108を形成する。シリル化剤は、
図2に示す電源部4から高周波電力を供給することなく、ガス供給源53からチャンバ2にシリル化剤を含有する第3のガスを供給することによりチャンバ2に供給される。第3のガスの供給は、シリル化の後に停止される。シリル化剤の液体を気化して第3のガスを生成する場合、ガス供給源51と同様に、液体供給機と気化器をガス供給源53に設けてもよい。
【0044】
シリル化剤は、例えば、シリコン原子と、水素原子と、炭素原子と、を含むシラン化合物である。シリル化剤は、Si-N結合を有していてもよい。シリル化剤の例は、アミノシラン類化合物、クロロシラン類化合物、メトキシシラン類化合物、環状シラン類化合物等を含む。
【0045】
アミノシラン類化合物の例は、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、n-オクチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン(ODMDMAS)等を含む。また、シリル化剤は、CnH2n+2により表されるアルカン(nは2以上の自然数)等を含んでいてもよい。
【0046】
クロロシラン類化合物の例は、オクタデシルトリクロロシラン(ODTC)を含む。メトキシラン類化合物の例は、オクタデシルトリメトキシシラン(ODMS)等を含む。環状シラン類化合物の例は、N-メチル-アザ-2,2,4-メチルシラシクロペンタン(CAZ)等を含む。
【0047】
図9は、シリル化部分108の形成例を説明するための模式図である。
図9は、X-Z断面の一部を示す。例えば、シリル剤がTMSDMAである場合、シリル化反応により、TMSDMAの分子中のSi-N結合が切断され、シリコン原子の切断部が酸化部分171上の酸素原子と結合することにより、Si-O-Si-(CH
3)
3結合を形成する。よって、シリル化部分108は、シリコン原子と、酸素原子と、炭素原子と、水素原子と、を有する。Si-O-Si-(CH
3)
3結合は、酸化部分171の第1の層103および第2の層104のそれぞれの表面の部分に形成される。Si-O-Si-(CH
3)
3結合の数は、
図9に示す数に限定されない。
【0048】
一方で、領域R1の残部や領域R2は、酸化処理により酸化していない非酸化部分のため、-O-Si-H結合を有するままである。よって、末端に水素原子を有する。この部分では、シリル化反応が起こらない。よって、シリル化部分108は、領域R1の残部の上および領域R2の上に形成されない。シリル化工程S4後、チャンバ2内のガスは、ガス排出部6を介して排出される。
【0049】
[エッチング工程S5]
図10は、エッチング工程S5の例を説明するための断面模式図である。
図10は、加工対象物10のX-Z断面の一部を示す。
【0050】
エッチング工程S5の例では、
図10に示すように、シリル化部分108が残存したまま、エッチングにより、領域R1の残部および領域R2を除去するとともに、凹部Hを加工する。これにより、内壁面HAの露出部および内底面HBがエッチングされる。その結果、内底面HBの下方に位置する第1の層103および第2の層104がさらに加工され、凹部Hの深さが大きくなる。
【0051】
エッチングは、例えばRIEである。エッチングは、ガス供給源54から第4のガスを供給し、電源部4から高周波電力を供給することにより第4のガスからプラズマを生成し、プラズマを用いたスパッタリングにより領域R1の残部および領域R2を除去するとともに、凹部Hを加工することにより行われる。第4のガスの供給および高周波電力の供給は、エッチングの後に停止される。
【0052】
第4のガスは、例えば、炭素原子と、水素原子と、フッ素原子と、を有する。第4のガスは、例えば組成式CxHyFz(Cは炭素を表し、Hは水素を表し、Fはフッ素を表し、xは1以上の整数を表し、yは0以上の整数を表し、zは2以上の整数を表す)により表されるフッ化物ガスを含んでいてもよい。
【0053】
シリル化部分108は、第4のガスから生成されるプラズマによるエッチングを抑制するための保護膜としての機能を有する。これにより、シリル化部分108に覆われる領域R1のエッチングを抑制できる。また、シリル化部分108が形成されない領域R1の残部および領域R2を除去するとともに、凹部Hを加工できる。
【0054】
エッチングにより、シリル化部分108上に膜109が形成される場合がある。膜109は、炭素原子と、窒素原子と、フッ素原子と、を有する。膜109は、第4のガスから生成されるプラズマによるエッチングを抑制するための保護膜としての機能を有する。膜109は、例えば、40原子%以上60原子%以下の炭素(C)と、10原子%以上20原子%以下の窒素(N)と、20原子%以上30原子%以下のフッ素(F)と、を合計100原子%になるように含んでいてもよい。
【0055】
エッチング工程S5により形成されるシリル化部分108および膜109は、メモリ層形成工程S6の前に、例えば250℃以上の温度下において酸素プラズマを用いたアッシング等の方法を用いて酸化部分171ととともに除去される。
【0056】
実施形態のエッチング方法例および半導体装置の製造方法例では、凹部Hのアスペクト比が所望の値以上になるまで、これらの工程が繰り返される。
【0057】
フッ素化炭化水素化合物を含むエッチングガスを用いたエッチングでは、凹部の上部から下部に向かって凹部が先細りやすい。これは、エッチングガスから生成されるプラズマが凹部の内壁面の下部や凹部の内底面に近いほど到達しにくく、凹部の内壁面の上部においてエッチングが進行しやすいためである。結果として、凹部Hの上部から下部にかけて寸法差が生じやすい。
【0058】
これに対し、実施形態のエッチング方法例および半導体装置の製造方法例では、シリル化工程の前に、凹部の上部から下部に向かって内壁面の一部に、シリコン原子を有する酸化部分を形成し、その後、酸化部分をシリル化することによりシリル化部分を形成することで凹部の内壁面の上部ではエッチングの進行を抑制するとともに、内壁面の下部および内底面をエッチングすることができる。よって、高いアスペクト比を有する凹部Hを形成する場合であっても、凹部Hの加工精度を高めることができる。結果として、凹部Hの上部から下部にかけて凹部Hの寸法を均一に制御することが可能となる。
【0059】
[メモリ層形成工程S6]
図11は、メモリ層形成工程S6の例を説明するための断面模式図である。
図11は、加工対象物10のX-Z断面の一部を示す。
【0060】
メモリ層形成工程S6では、ブロック絶縁膜233と、電荷蓄積層232と、トンネル絶縁膜231とを含むメモリ膜203と、半導体チャネル層202と、コア絶縁膜201とを凹部Hにこの順に形成する。コア絶縁膜201、半導体チャネル層202、メモリ膜203は、メモリセルを構成するメモリ層として機能する。
【0061】
コア絶縁膜201としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。半導体チャネル層202としては、例えばポリシリコン層を用いることができる。トンネル絶縁膜231としては、例えば酸化シリコン膜と酸窒化シリコン膜とを有する積層膜を用いることができる。電荷蓄積層232としては、例えば窒化シリコン膜を用いることができる。ブロック絶縁膜233としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。
【0062】
メモリ膜203を形成した後に、第1の層103を除去し、第2の層104の間に空洞を形成し、空洞内に複数の導電膜を積層することにより導電層110を形成する。導電層110は例えばゲート電極(ワード線)としての機能を有する。さらに、コンタクトプラグや、配線、層間絶縁膜等を形成する。これにより半導体装置を製造することができる。
【0063】
本実施形態における凹部Hの例として、メモリ層が形成されるメモリホールを例示したが、本実施形態の適用例はメモリホールに限定されない。例えば、犠牲層を導電層110に置換するための溝(ST)や導電層110と接続されるコンタクトプラグを形成するためのホール等の種々の凹部に対して本実施形態は適用可能である。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…半導体製造装置、2…チャンバ、3…ホルダ、4…電源部、5…ガス供給部、6…ガス排出部、10…加工対象物、41…高周波電源、42…高周波電源、51…ガス供給源、52…ガス供給源、53…ガス供給源、54…ガス供給源、101…基板、102…下部層、103…第1の層、104…第2の層、105…上部層、106…マスク層、107…前駆体膜、108…シリル化部分、109…膜、110…導電層、171…酸化部分、201…コア絶縁膜、202…半導体チャネル層、203…メモリ膜、231…トンネル絶縁膜、232…電荷蓄積層、233…ブロック絶縁膜、511…液体供給機、512…気化器、H…凹部、HA…内壁面、HB…内底面、R1…領域、R2…領域、S1…準備工程、S2…前駆体供給工程、S3…酸化工程、S4…シリル化工程、S5…エッチング工程、S6…メモリ層形成工程。