(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134044
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】反射板の反射パターンを制御する基地局装置、制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/04 20090101AFI20240926BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240926BHJP
H04W 16/30 20090101ALI20240926BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240926BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W16/26
H04W16/30
H04W16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044129
(22)【出願日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「基地局端末間の協調による動的ネットワーク制御に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大戸 琢也
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE12
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】反射パターンを変更させることができる反射板を効率的に運用すること。
【解決手段】基地局装置は、基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、反射板の反射パターンの設定を開始してから設定が完了するまでの時間長を示す情報を受信し、反射板において設定されるべき特定の反射パターンと、特定の反射パターンの設定が完了しているべき第1のタイミングとを決定し、第1のタイミングよりその時間長だけ前のタイミング又はそのタイミングより前のタイミングである第2のタイミングを特定し、第2のタイミングにおいて、制御装置に対して、特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置であって、
前記基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、前記反射板の反射パターンの設定を開始してから当該設定が完了するまでの時間長を示す情報を受信する受信手段と、
前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンと、当該特定の反射パターンの設定が完了しているべき第1のタイミングとを決定する決定手段と、
前記第1のタイミングより前記時間長だけ前のタイミング又は当該タイミングより前のタイミングである第2のタイミングを特定する特定手段と、
前記第2のタイミングにおいて、前記制御装置に対して、前記特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信する送信手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記第1のタイミングを示す情報をさらに前記指示信号に含めて送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記時間長を示す情報を含んだ、前記制御装置のUE Capabilityを受信する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記受信手段は、前記時間長を示す情報を含んだ、ランダムアクセス手順におけるメッセージ1もしくはメッセージ3、上りリンク制御情報(UCI)、又は、前記反射板の制御のためのプロトコルレイヤでのメッセージを受信する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記受信手段は、前記時間長を示す情報として、当該時間長に対応するタイムスロットの数の情報を受信する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項6】
基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置であって、
前記反射板の反射パターンの設定を開始してから当該設定が完了するまでの時間長を示す情報を、前記基地局装置へ通知する通知手段と、
前記基地局装置から、特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を受信する受信手段と、
前記特定の反射パターンを前記反射板に設定する設定手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項7】
前記受信手段は、前記特定の反射パターンの設定が完了しているべき第1のタイミングを示す情報を含んだ前記指示信号を受信し、
前記設定手段は、当該第1のタイミングにおいて、前記特定の反射パターンの前記反射板における設定を完了するように、当該設定を実行する、ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記通知手段は、前記時間長を示す情報を含んだ、前記制御装置のUE Capabilityを前記基地局装置へ通知する、ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項9】
前記通知手段は、前記時間長を示す情報を含んだ、ランダムアクセス手順におけるメッセージ1もしくはメッセージ3、上りリンク制御情報(UCI)、又は、前記反射板の制御のためのプロトコルレイヤでのメッセージを、前記基地局装置へ送信する、ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項10】
前記通知手段は、前記時間長を示す情報として、当該時間長に対応するタイムスロットの数の情報を通知する、ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項11】
基地局装置によって実行される制御方法であって、
前記基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、前記反射板の反射パターンの設定を開始してから当該設定が完了するまでの時間長を示す情報を受信することと、
前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンと、当該特定の反射パターンの設定が完了しているべき第1のタイミングとを決定することと、
前記第1のタイミングより前記時間長だけ前のタイミング又は当該タイミングより前のタイミングである第2のタイミングを特定することと、
前記第2のタイミングにおいて、前記制御装置に対して、前記特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置によって実行される制御方法であって、
前記反射板の反射パターンの設定を開始してから当該設定が完了するまでの時間長を示す情報を、前記基地局装置へ通知することと、
前記基地局装置から、特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を受信することと、
前記特定の反射パターンを前記反射板に設定することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
基地局装置に備えられたコンピュータに、
前記基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、前記反射板の反射パターンの設定を開始してから当該設定が完了するまでの時間長を示す情報を受信させ、
前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンと、当該特定の反射パターンの設定が完了しているべき第1のタイミングとを決定させ、
前記第1のタイミングより前記時間長だけ前のタイミング又は当該タイミングより前のタイミングである第2のタイミングを特定させ、
前記第2のタイミングにおいて、前記制御装置に対して、前記特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信させる、
ためのプログラム。
【請求項14】
基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置に備えられたコンピュータに、
前記反射板の反射パターンの設定を開始してから当該設定が完了するまでの時間長を示す情報を、前記基地局装置へ通知させ、
前記基地局装置から、特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を受信させ、
前記特定の反射パターンを前記反射板に設定させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射板の反射パターンの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信では、基地局装置が送出した電波を受信可能な位置に存在する端末装置に対して無線通信サービスが提供される。このため、基地局装置が送出した電波を端末装置の位置に適切に到達させることが重要である。特に高周波数帯を使用する傾向のある近年の無線通信環境では、無線品質が低下しやすいため、基地局装置がビームを形成して、そのビームの利得により、無線品質を向上させることが想定される。また、無線品質が低い領域に向けて電波を反射させる反射板を用いることが検討されている。なお、反射板は、物理的な向きを変更することによって信号を反射させる方向を変更することができるが、メタサーフェス反射板を用いることにより、物理的な向きを変更せずに、様々な方向に電波を反射させることができる。非特許文献1には、基地局装置が、反射板の制御装置へ制御情報を送信することにより、反射板における電波の反射パターンを制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Wu, Qingqing及びRui Zhang、「Intelligent reflecting surface enhanced wireless network: Joint active and passive beamforming design」、2018 IEEE Global Communications Conference (GLOBECOM)、2018年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基地局装置は、詳細なタイミングを規定してビームの切り替えを行うことにより、高効率なビームマネジメントを行うことを可能としている。このようなビームマネジメントは、反射板のビーム(反射パターン)についても行われることが要求されうる。しかしながら、反射板は、基地局装置から指示を受信した直後にビームパターンを切り替えることはできず、効率的な運用が妨げられうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、反射パターンを変更させることができる反射板を効率的に運用する技術を提供する。
【0006】
本発明の一態様による基地局装置は、前記基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、前記反射板の反射パターンの設定を開始してから当該設定が完了するまでの時間長を示す情報を受信する受信手段と、前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンと、当該特定の反射パターンの設定が完了しているべき第1のタイミングとを決定する決定手段と、前記第1のタイミングより前記時間長だけ前のタイミング又は当該タイミングより前のタイミングである第2のタイミングを特定する特定手段と、前記第2のタイミングにおいて、前記制御装置に対して、前記特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信する送信手段と、を有する。
【0007】
本発明の一態様による制御装置は、基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置であって、前記反射板の反射パターンの設定を開始してから当該設定が完了するまでの時間長を示す情報を、前記基地局装置へ通知する通知手段と、前記基地局装置から、特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を受信する受信手段と、前記特定の反射パターンを前記反射板に設定する設定手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射パターンを変更させることができる反射板を効率的に運用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】システムにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、例えば、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))のセルラ通信規格に準拠したセルラ通信システムである。ただし、これに限られず、任意の無線通信規格に準拠した無線通信システムにおいて以下の議論を適用することができる。無線通信システムは、例えば、基地局装置101と端末装置102及び端末装置103とを含んで構成される。ここで、例えば建物などの遮蔽物の影響により、基地局装置101から送信された電波を端末装置102や端末装置103が十分に強い電力で受信することができないものとする。この場合、端末装置102や端末装置103が送信した電波を基地局装置101が十分に強い電力で受信することができないことも想定される。このような状況において、基地局装置101と端末装置102や端末装置103との間の通信を可能とするために、反射板104が用いられうる。反射板104は、基地局装置101から送出された電波を所定の反射パターンで反射する。また、反射板104は、端末装置102から送出された電波を所定の反射パターンで反射する。ここで、反射パターンは、反射板を構成する反射素子に設定する反射位相により決まり、例えば、入射パターンと出射パターンとの組み合わせに対応する。なお、入射パターンは、入射方向ごとの反射板の利得を示すパターンである。すなわち、所定の入射方向から入射された電波についてはほぼ減衰せず、また、別の入射方向から入射された電波については、ほぼゼロにまで減衰する、などのパターンが入射パターンである。同様に、出射パターンは、出射方向ごとの反射板の利得を示すパターンである。すなわち、所定の出射方向へ出射される電波が大きい電力で出射され、別の出射方向へはほぼ電波が出射されない、などのパターンが出射パターンである。この反射パターンにより、概ね、利得の大きい入射方向から入射された電波が利得の大きい出射方向へ出力されるようになる。
【0012】
なお、
図1の構成は一例に過ぎない。例えば、基地局装置101と端末装置102や端末装置103との間の通信を中継する反射板の数は、2つ以上存在していてもよい。また、当然に3つ以上の端末装置が存在することが想定される。そして、端末装置の一部が反射板を介して通信を行い、他の一部の端末装置は基地局装置101と反射板を介さずに直接通信するように構成されてもよい。また、無線通信システムには、多数の基地局装置が含まれうる。この場合、他の基地局装置においても、基地局装置101と同様に、反射板を用いた通信が行われうる。
【0013】
反射板104は、電波の反射パターンを変更することができるように構成される。例えば、反射板104は、反射板の姿勢を物理的に制御することにより、基地局装置101から到来した電波又は端末装置102もしくは端末装置105から到来した電波の反射方向を変更することができるように構成されうる。反射板104は、例えば、Intelligent Reflecting Surface(IRS)である。一例において、IRSは、液晶反射板でありうる。液晶反射板では、反射素子とグランドとの間に配置された液晶層の誘電率を変更することによりインピーダンスを操作して、反射素子の位相を変更することにより、電気的に電波の反射方向を制御することができる。なお、液晶反射板はIRSの一例に過ぎず、他の形式の反射板が用いられてもよい。例えば、ダイオードやMicro Electro Mechanical Systems(MEMS)を用いて反射素子の位相を変更可能な反射板が使用されてもよい。反射板104は、制御装置105に接続される。そして、制御装置105は、反射板104に対して、反射パターンを変更させるための制御を実行する。制御装置105は、例えば、IRSの反射パターンを調整させるための制御信号を反射板104に対して出力する。なお、制御装置105は、反射板104に内蔵された装置でありうる。また、制御装置105は、反射板104の外部に設けられた装置であってもよい。また、
図1では、制御装置105は、1つの反射板104に接続されている場合の例を示しているが、複数の反射板に接続されてもよい。制御装置105は、複数の反射板に接続される場合、その複数の反射板の反射パターンをそれぞれ独立して制御することができるように構成されうる。
【0014】
ここで、反射板104が、基地局装置101から出力されて方向111から到来した電波を、方向112へ反射するような反射パターンを使用しているものとする。この場合、端末装置102が、基地局装置101から出力されて反射板104によって反射された電波を、十分な電力で受信することができる。一方で、基地局装置101からの電波を方向113へ向けて反射するように反射板104の反射パターンが変更されることにより、端末装置103も、基地局装置101から出力されて反射板104によって反射された電波を、十分な電力で受信することができるようになる。反射板104の反射パターンは、例えば、基地局装置101(又はネットワークノード)からの指示に基づいて変更されうる。一例において、制御装置105は、3GPP(登録商標)の第5世代(5G)のセルラ通信規格に準拠した端末装置の機能を有しており、基地局装置101からの信号121を受信することができるものとする。ここで、基地局装置101からの信号121は、反射板104の制御のための制御信号である。制御装置105は、基地局装置101からの信号121に基づいて、接続されている反射板104の電波の反射パターンを設定する。
【0015】
反射板104の電波の反射パターンは、適切なタイミングにおいて切り替えが完了していることが必要となる。すなわち、例えば、端末装置103が通信を行うタイミングにおいて、基地局装置101からの電波を方向113へ向けて反射するように反射板104の反射パターンの設定が完了している必要がある。一方で、反射板104の応答速度の制約により、その反射パターンの変更が完了するまでに一定の時間が必要であり、反射パターンの変更タイミングよりもその一定の時間だけ早く、基地局装置101から制御装置105に反射パターンの変更指示が送信される必要がある。しかしながら、その一定の時間は反射板ごとに異なりうるため、基地局装置101は、反射パターンの変更指示を送信すべきタイミングを事前に特定することができない。
【0016】
本実施形態では、このような事情に鑑み、制御装置105が、基地局装置101に対して、反射板104の反射パターンの変更が完了するまでに必要な一定の時間の時間長T0を通知する。そして、基地局装置101は、反射板104の反射パターンを変更する第1のタイミングT1より通知された時間長T0だけ早い第2のタイミングT1-T0において、反射パターンの変更指示の制御装置105への送信が完了しているように、その変更指示の送信制御を行う。例えば、基地局装置101は、所定の時間オフセットΔt(>0)を用いて、第3のタイミングT1-T0-Δtにおいて、反射パターンの変更指示を送信しうる。この所定の時間オフセットΔtは、例えば、基地局装置101から制御装置105までの信号の伝搬時間、制御装置105における信号の復調及び復号の時間、及び、制御装置105から反射板104への指示の入力などを含んだ制御に要する時間、の少なくともいずれか又はこれらの総和に対応する時間に設定されうる。なお、制御装置105は、T0+Δtに対応する時間長を、基地局装置101へ通知してもよい。また、制御装置105は、その一定の時間の時間長に対応するスロット数により、その時間長の情報を基地局装置101へ通知してもよい。例えば、タイムスロットの時間長がτミリ秒である場合、一定の時間の時間長T0ミリ秒の情報が、ceil(T0/τ)のように示されうる。ここで、ceil(x)は天井関数であり、引数xを超える最小の整数を示す。すなわち、時間長T0の情報は、任意の形式によって、基地局装置101へ通知されうる。
【0017】
これによれば、第2のタイミングT1-T0において制御装置105が変更指示の受信を完了していることを確実にすることができる。そして、制御装置105は、反射板104を制御して、反射パターンを一定の時間T0だけかけて変更させる。これにより、第1のタイミングT1において、反射板104の反射パターンの変更が完了していることを確実にすることができる。すなわち、基地局装置101は、この一定の時間T0を認識することにより、意図したタイミングにおいて確実に反射板104の反射パターンを設定させることができる。なお、この制御は、動的に行われてもよいし、半固定的に行われてもよい。すなわち、基地局装置101は、反射板104の反射パターンを頻繁に変更するように制御を行ってもよいし、特定のタイミングにおいて特定の反射パターンの使用が開始され、その反射パターンが長期的に固定されるように、反射板104の制御を行ってもよい。なお、基地局装置101は、動的に反射パターンを設定する場合に、複数の反射パターンを逐次的に変更するように、制御装置105に指示信号を送信してもよい。この場合、指示信号には、複数の反射パターンと、それぞれの設定が行われるべきタイミングを示す情報とが含まれうる。そして、基地局装置101は、最初の反射パターンの設定が完了しているべき第1のタイミングT1と反射パターンの変更に要する一定の時間T0とに基づいて、第2のタイミングT1-T0を特定し、その第2のタイミング又はそれより前のタイミングにおいて、その情報を送信しうる。なお、その情報に含まれる複数の反射パターンに対応するタイミングは、各反射パターンの設定が完了しているべきタイミングT3であってもよいし、各反射パターンの設定を開始すべきタイミングT3-T0であってもよい。
【0018】
なお、制御装置105は、基地局装置101に対して、上述の時間長T0の情報を通知する際に、反射板104の識別情報を併せて通知しうる。これにより、基地局装置101は、個別の反射板104を指定して、指示信号を送信することができる。なお、制御装置105が1つの反射板104のみに対応していることが分かっている場合、その識別情報は制御装置105の識別情報でありうる。この場合、制御装置105の識別情報は、上述のように基地局装置101と通信可能な端末装置としての機能を有する場合に、その端末装置の識別情報でありうる。すなわち、制御装置105が基地局装置101と接続する際に、黙示的に反射板104の識別情報が基地局装置101へ通知されうる。このように、反射板104の識別情報が基地局装置101へ通知されることによって、基地局装置101は、個別の反射板104に適したタイミングで、その反射板104専用の指示信号を送信することができるようになる。
【0019】
制御装置105は、様々な形式で、上述の時間長T0の情報を基地局装置101へ通知することができる。例えば、制御装置105は、自身の能力情報であるUE Capabilityの一部として、上述の時間長T0の情報を基地局装置101へ通知しうる。また、制御装置105は、例えば、基地局装置101と接続を確立する際のランダムアクセス手順におけるメッセージに、その情報を含めて送信してもよい。一例として、ランダムアクセスプリアンブルの系列や送信に使用する時間および周波数リソースと、時間長T0とを事前に関連付けておき、制御装置105は、送信する時間長T0に対応する系列を用いてランダムアクセスプリアンブルを生成し、その時間長T0に対応する時間および周波数リソースにおいて、そのランダムアクセスプリアンブルを送信するようにしうる。また、制御装置105は、ランダムアクセス手順におけるメッセージ3において、その情報を基地局装置101へ送信しうる。また、制御装置105は、接続確立後の、上りリンク制御情報(UCI)を用いて、その情報を基地局装置101へ通知してもよい。さらに、反射板専用のプロトコルレイヤが定義された場合に、そのプロトコルレイヤにおけるメッセージにより、時間長T0の情報が基地局装置101へ通知されてもよい。
【0020】
(装置構成)
続いて、上述のような基地局装置101及び制御装置105の構成例について説明する。なお、以下では、参照符号を用いずに、基地局装置101を基地局装置と呼び、制御装置105を制御装置と呼ぶ。
図2は、基地局装置及び制御装置のハードウェア構成例を示す図である。基地局装置及び制御装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、基地局装置及び制御装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、基地局装置及び制御装置の有線通信または無線通信のための回路を含んで構成される。例えば、基地局装置は、端末装置102又は端末装置103との通信のための、LTEや5Gの無線通信用の回路を含んで構成されうる。なお、基地局装置は、例えば、LTEや5G用の通信回路205を用いて、制御装置と通信しうる。ただし、これは一例であり、基地局装置は、LTEや5G用の通信回路205とは別個に用意した、有線又は無線の通信のための通信回路205を用いて、制御装置と通信するように構成されてもよい。制御装置は、基地局装置と通信するための無線又は有線の通信のための通信回路205を有する。また、制御装置は、反射板との(例えば有線の)通信のための通信回路205をさらに有しうる。なお、
図2では、1つの通信回路205が図示されているが、基地局装置及び制御装置は、複数の通信回路を有しうる。なお、複数の通信機能が1つの通信回路205によって実装されてもよい。
【0021】
図3は、基地局装置の機能構成例を示す図である。基地局装置は、その機能として、例えば、情報取得部301、反射パターン決定部302、タイミング決定部303、制御対象指定部304、及び、指示通知部305を有する。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行して、必要に応じて通信回路205を制御することにより、実現されうる。ただしこれに限定されず、例えば、各機能を実現するための専用のハードウェアが用意されてもよい。
【0022】
情報取得部301は、反射板を制御する制御装置から、その反射板の反射パターンを変更する際に必要な時間(応答時間)に関する情報を取得する。すなわち、情報取得部301は、反射板の反射パターンの変更を制御装置が指示してからその反射パターンの変更が完了するまでの一定の時間の時間長T0の情報を、その制御装置から取得する。なお、この時間長は、基地局装置と制御装置との間の通信に要する時間や、制御装置が基地局装置からの指示を受信してから反射板の制御を行うまでの時間などの処理時間Δtを含んでもよい。すなわち、反射板の応答時間のみならず、基地局装置が指示信号を送信してから実際に反射パターンの変更が完了するまでの時間T0+Δtを、上述の時間長の情報として、情報取得部301が、制御装置から取得してもよい。なお、時間長の情報は、「秒」の単位で示されてもよいし、タイムスロットの数などの他の単位で表現されてもよい。また、情報取得部301は、制御装置が制御する反射板の識別情報を取得しうる。なお、制御装置を特定することにより反射板を特定することができる場合、反射板の識別情報は、制御装置の識別情報であってもよい。また、例えば、基地局装置のエリア内に反射板が1つしかない場合や反射板を区別する必要がない場合などでは、反射板の識別情報を特定する情報は省略されてもよい。情報取得部301は、例えば、制御装置に対してUE Capabilityの提供を要求し、そのUE Capabilityから、上述の情報を取得しうる。また、情報取得部301は、制御装置が基地局装置に接続する際に送信するランダムアクセス手順におけるメッセージ1(ランダムアクセスプリアンブル)やメッセージ3又はUCIから、上述の情報を取得してもよい。また、情報取得部301は、例えば反射板の制御のためのプロトコルレイヤが定義されている場合には、そのプロトコルレイヤにおけるメッセージによって上述の情報を取得してもよい。
【0023】
反射パターン決定部302は、反射板に設定すべき反射パターンを決定する。反射パターン決定部302は、例えば、事前に各端末装置の位置に対応する反射パターンを特定しておき、通信相手の端末装置が決定されたことに応じて、その端末装置に対応する反射パターンを使用すると決定する。この場合、反射パターン決定部302は、通信相手の端末装置が切り替わるたびに、動的に反射パターンを変更することを決定しうる。また、反射パターン決定部302は、例えば、イベント会場などに存在する多数の端末装置を収容することができるように、臨時的にビームをその会場に向けるための反射パターンを決定してもよい。この場合、反射パターン決定部302は、一定期間にわたって半固定的に同じ反射パターンを使用することを決定しうる。
【0024】
タイミング決定部303は、反射板において、反射パターン決定部302によって決定された反射パターンを設定すべきタイミングと、その設定のための指示信号の送信タイミングを決定する。ここで、タイミング決定部303は、例えば、情報取得部301によって取得された時間長の情報に基づいて、所定のタイミングにおいて反射パターンの設定が完了しているように、指示信号の送信タイミングを決定する。例えば、反射パターンの設定が完了しているべきタイミングT1と通知された時間長T0とを用いて、T1-T0又はそれ以前のタイミングとなるように、指示信号の送信タイミングが決定される。なお、タイミング決定部303は、基地局装置の電波を反射する複数の反射板において並行して反射パターンを決定する場合、その複数の反射板のそれぞれについて個別に反射パターンを変更するタイミングと、その変更のための指示信号の送信タイミングとを決定しうる。なお、複数の反射板について、共通の反射パターンの変更タイミングや指示信号の送信タイミングが決定されてもよい。また、タイミング決定部303は、1つの反射板において複数の反射パターンを順次切り替えて使用すべき場合に、その複数の反射パターンのそれぞれについての反射パターンの変更タイミングを決定しうる。このとき、タイミング決定部303は、複数の反射パターンの変更指示を一度に通知する場合、その複数の反射パターンのそれぞれについての変更タイミングのうち、最先のタイミングと制御装置から取得された時間長とに基づいて、指示信号の送信タイミングを決定しうる。なお、複数の反射パターンのそれぞれについて別個に変更指示が通知される場合には、各反射パターンに対応する変更タイミングと、制御装置から取得された時間長の情報とに基づいて、それぞれの指示信号の送信タイミングが決定されうる。
【0025】
制御対象指定部304は、例えば、制御対象となる反射板が複数存在する場合に、いずれの反射板の反射パターンを制御するかを指定する。制御対象指定部304は、1つの反射板のみを制御することが事前にわかっている場合には、省略されてもよい。また、複数の反射板のそれぞれについて、反射パターンの変更順序が事前に決定されている場合であって、指示信号によってその複数の反射板のそれぞれの反射パターンの変更のトリガを一斉に与える場合、その複数の反射板の区別が不要となる場合がありうる。このような場合には、制御対象指定部304が省略されてもよい。
【0026】
指示通知部305は、反射パターン決定部302によって決定された反射パターンを示す情報とその反射パターンが設定されるべきタイミングを示す情報とを含んだ指示信号を、制御対象の反射板に対応する制御装置へ通知する。指示通知部305は、反射パターンを示す情報を、ブロードキャスト送信または個別シグナリングによって、制御装置へ通知する。なお、指示通知部305は、タイミング決定部303によって決定されたタイミングにおいて、又はそのタイミングよりも前のタイミングにおいて、指示信号を制御装置へ送信する。
【0027】
図4は、制御装置の機能構成例を示す図である。制御装置は、その機能として、例えば、応答時間通知部401、指示受信部402、及び、反射パターン制御部403を有する。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行して、必要に応じて通信回路205を制御することにより、実現されうる。ただしこれに限定されず、例えば、各機能を実現するための専用のハードウェアが用意されてもよい。
【0028】
応答時間通知部401は、自装置が制御する反射板において、反射パターンを変更する際に必要となる時間(応答時間)の時間長を特定する。なお、この時間は、基地局装置との間の通信や、指示信号を受信してから反射板への制御情報が入力されるまでの時間を含みうる。そして、応答時間通知部401は、特定した時間長の情報を、基地局装置へ通知する。指示受信部402は、基地局装置から反射板の反射パターンの変更を指示する指示信号を受信する。この指示信号は、例えば、反射板に設定させるべき反射パターンを特定する情報とその反射パターンの設定が行われるべきタイミングを指定する情報とを含む。反射パターン制御部403は、受信した指示信号に含まれるパターン情報に基づいて、自装置に接続されている反射板の反射パターンを設定する。なお、反射パターン制御部403は、指示信号において指定されたタイミングにおいて、その反射パターンの設定が完了しているように、例えば応答時間通知部401において特定された時間長を考慮して、反射板の制御を開始しうる。なお、指示受信部402は、反射パターンを特定する情報と共に反射板を特定するための識別情報を受信しうる。そして、指示受信部402は、自装置に接続されている反射板に対応する識別情報を含んだ指示信号を受信した場合に、その指示信号に含まれる反射パターンの情報を取得する。そして、反射パターン制御部403は、その反射パターンの情報に基づいて、反射板の反射パターンを設定する。
【0029】
(処理の流れ)
続いて、無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について
図5を用いて説明する。なお、処理の詳細については上述の通りであるため、ここでは処理の流れの概要を示し、詳細については繰り返さない。
【0030】
まず、本処理では、制御装置が、基地局装置に対して、反射板の反射パターンの設定の開始からその設定の完了までに要する応答時間に関する情報を通知する(S501)。例えば、制御装置は、5Gの端末装置として動作し、基地局装置との接続を確立するためのランダムアクセス手順において、その応答時間に関する情報を通知しうる。また、制御装置は、例えば、基地局装置との接続後に、応答時間に関する情報をUE Capabilityに含めて送信しうる。なお、UE Capabilityは、基地局装置からの要求に応答して送信されうる。また、制御装置は、例えば、UCIを用いてその応答時間に関する情報を基地局装置へ通知してもよい。なお、制御装置は、複合自動再送要求(HARQ)のACK、チャネル状態情報、スケジューリング要求などを送信する際のUCIに、応答時間に関する情報を含めて送信しうる。基地局装置は、その応答時間に関する情報を受信する。
【0031】
その後、基地局装置が、制御装置に接続されている反射板の反射パターンを変更することを決定したものとする。このとき、基地局装置は、その反射パターンの変更が完了しているべきタイミングをも決定する(S502)。一例において、基地局装置は、端末装置の位置とその端末装置との通信のスケジュールに応じて、その通信が可能となるように、反射パターンと、設定完了タイミングとを決定しうる。そして、基地局装置は、その設定完了タイミングから、S501で取得した応答時間の時間長だけ前のタイミングを、反射パターンの変更を指示する指示信号の送信が完了しているべきタイミングとして特定する(S503)。そして、基地局装置は、そのタイミングにおいて、又はそのタイミングよりも前のタイミングにおいて、設定されるべき反射パターンを含んだ指示信号を、制御装置へ通知する(S504)。なお、基地局装置は、その指示信号によって指定された反射パターンの設定が完了しているべきタイミングの情報を、さらにその指示信号に含めて送信してもよい。また、基地局装置は、その基地局装置の通信のために複数の反射板が使用される場合、どの反射板に関する指示であるかを示す情報を指示信号に含めて送信する。なお、どの反射板に関する指示であるかを示す情報は、例えば、反射板の識別情報でありうる。なお、制御装置に対して1つの反射板のみが接続されている場合には、制御装置の識別情報が、反射板の識別情報として使用されてもよい。なお、指示信号は、端末装置に対するユーザデータとして送信されてもよい。この場合、ユーザデータの宛先として制御装置が指定されることにより、そのユーザデータ内の指示信号が、その制御装置に接続された反射板に関する指示であることが特定されうる。
【0032】
制御装置は、指示信号を受信すると、指定された反射パターンで電波を反射するように反射板の設定を行う(S505)。なお、制御装置は、指示信号を受信した直後に反射板の反射パターンを設定しうる。これによれば、反射板は、その反射パターンの設定が完了しているべきタイミングにおいて、確実にその反射パターンでの電波の反射を行うことが可能となる。また、指示信号に、反射パターンの設定が完了しているべきタイミングを指定する情報が含まれている場合、制御装置は、そのタイミングから上述の待機時間だけ前のタイミングとなるまで待ってから、反射板の設定を開始しうる。これによれば、不必要に早いタイミングにおいて設定が行われることを防ぐことが可能となる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、反射板の反射パターンの設定に必要な応答時間の情報が基地局装置に通知される。これにより、基地局装置は、反射パターンの設定が完了しているべきタイミングから、指示信号の送信を行うべきタイミングを特定することができる。そして、このようなタイミングで指示信号が送信されることにより、反射板において、適切なタイミングにおいて、指定した反射パターンでの電波の反射を行うことが可能となる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0034】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。