(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134048
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】反射板の反射パターンを制御する基地局装置、制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/26 20090101AFI20240926BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20240926BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240926BHJP
H04W 16/30 20090101ALI20240926BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W24/04
H04W16/28
H04W16/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044134
(22)【出願日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「基地局端末間の協調による動的ネットワーク制御に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大戸 琢也
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE12
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】反射パターンを変更させることができる反射板を効率的に運用すること。
【解決手段】基地局装置は、基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を受信し、反射パターンを示す情報に基づいて、基地局装置と端末装置との間の通信の際に反射板において設定されるべき特定の反射パターンを決定し、制御装置に対して、その特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置であって、
前記基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、前記反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を受信する受信手段と、
前記反射パターンを示す情報に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の際に前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンを決定する決定手段と、
前記制御装置に対して、前記特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信する送信手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記反射パターンを示す情報は、複数の反射パターンのそれぞれに対する角度方向ごとの反射利得に関する情報を含み、
前記決定手段は、前記角度方向ごとの反射利得に関する情報と前記反射板と前記端末装置との位置関係とに基づいて、前記特定の反射パターンを決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記反射パターンを示す情報は、前記反射板から見た前記端末装置が存在する方向を推定するトレーニングの際に使用可能な1つ以上の第1の反射パターンと、前記基地局装置と前記端末装置との間の前記トレーニングの完了後の通信の際に使用可能な複数の第2の反射パターンとの関係を示す情報を含み、
前記決定手段は、前記トレーニングにおいて前記反射板から見た前記端末装置が存在する方向が推定された際に使用された前記第1の反射パターンと対応する前記第2の反射パターンのうちのいずれかを、前記特定の反射パターンとして決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記反射パターンを示す情報は、前記反射板における反射パターンを形成するための位相分布に関する情報を含み、
前記位相分布に関する情報は、(1)前記反射板の素子数、前記反射板における素子のアレイの行数もしくは列数、前記反射板における素子の間隔、前記反射板における素子の散乱パターン、又は反射位相の粒度のうちの1つ以上を含む前記反射板のパラメータと、(2)複数の反射パターンに対応する、前記反射板における素子のそれぞれの位相を含んだ位相分布と、の少なくともいずれかを含み、
前記決定手段は、前記反射板と前記端末装置との位置関係に基づいて、前記位相分布に関する情報を用いて前記特定の反射パターンを算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記反射パターンを示す情報は、1つの方向において利得のピークが生じる第1の反射パターンと、複数の方向において利得のピークが生じる第2の反射パターンとのそれぞれについての情報を含み、
前記決定手段は、複数の端末装置が前記反射板から見て異なる方向に存在する場合に、当該複数の端末装置と前記反射板との位置関係に基づいて、前記第2の反射パターンのうちのいずれかを前記特定の反射パターンとして決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項6】
基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置であって、
前記反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を、前記基地局装置へ通知する通知手段と、
前記基地局装置から、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の際に前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を受信する受信手段と、
前記特定の反射パターンを前記反射板に設定する設定手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項7】
前記反射パターンを示す情報は、複数の反射パターンのそれぞれに対する角度方向ごとの反射利得に関する情報を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記反射パターンを示す情報は、前記端末装置の位置を特定するトレーニングの際に使用可能な1つ以上の第1の反射パターンと、前記基地局装置と前記端末装置との間の前記トレーニングの完了後の通信の際に使用可能な複数の第2の反射パターンとの関係を示す情報を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項9】
前記反射パターンを示す情報は、前記反射板における反射パターンを形成するための位相分布に関する情報を含み、
前記位相分布に関する情報は、(1)前記反射板の素子数、前記反射板における素子のアレイの行数もしくは列数、前記反射板における素子の間隔、前記反射板における素子の散乱パターン、又は反射位相の粒度のうちの1つ以上を含む前記反射板のパラメータと、(2)複数の反射パターンに対応する、前記反射板における素子のそれぞれの位相を含んだ位相分布と、の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項10】
前記反射パターンを示す情報は、1つの方向において利得のピークが生じる第1の反射パターンと、複数の方向において利得のピークが生じる第2の反射パターンとのそれぞれについての情報を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項11】
基地局装置によって実行される制御方法であって、
前記基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、前記反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を受信することと、
前記反射パターンを示す情報に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の際に前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンを決定することと、
前記制御装置に対して、前記特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置によって実行される制御方法であって、
前記反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を、前記基地局装置へ通知することと、
前記基地局装置から、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の際に前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を受信することと、
前記特定の反射パターンを前記反射板に設定することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
基地局装置に備えられたコンピュータに、
前記基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、前記反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を受信させ、
前記反射パターンを示す情報に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の際に前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンを決定させ、
前記制御装置に対して、前記特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信させる、
ためのプログラム。
【請求項14】
基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置に備えられたコンピュータに、
前記反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を、前記基地局装置へ通知させ、
前記基地局装置から、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の際に前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を受信させ、
前記特定の反射パターンを前記反射板に設定させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射板の反射パターンの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信では、基地局装置が送出した電波を受信可能な位置に存在する端末装置に対して無線通信サービスが提供される。このため、基地局装置が送出した電波を端末装置の位置に適切に到達させることが重要である。特に高周波数帯を使用する傾向のある近年の無線通信環境では、無線品質が低下しやすいため、無線品質が低い領域に向けて基地局装置からの電波を反射させる反射板を用いることが検討されている。このとき、反射板において、特定の方向に向けて高い利得を形成して、特定の端末装置における無線品質を改善することができる。非特許文献1には、反射板が包囲推定用の反射パターンを用いて端末装置の方向を推定し、その端末装置の方向に向けた反射パターンを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Takezawa, Kazuki, et al. "A Method for Estimating User Equipment Orientation Using the Ratio of Received Power due to IRS Reflection Pattern Switching." 2022 IEEE International Symposium on Antennas and Propagation and USNC URSI Radio Science Meeting (AP S/URSI). IEEE, 2022.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、基地局装置と端末装置との間の通信は基地局装置の制御の下で行われる。このため、基地局装置が、特定の端末装置と通信を行う際に、反射板がその特定の端末装置の方向において利得の高い反射パターンを使用するように、反射板の制御装置に指示を送信することが想定される。しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、反射板が端末装置の位置に適した反射パターンを特定することができるが、基地局装置がそのような反射パターンを特定することができない。このため、基地局装置は、反射板の制御装置に、通信相手の端末装置に適した反射パターンを使用するように指示を送信することができず、効率的に反射板を運用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、反射パターンを変更させることができる反射板を効率的に運用する技術を提供する。
【0006】
本発明の一態様による基地局装置は、前記基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置から、前記反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を受信する受信手段と、前記反射パターンを示す情報に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の際に前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンを決定する決定手段と、前記制御装置に対して、前記特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を送信する送信手段と、を有する。
【0007】
本発明の一態様による制御装置は、基地局装置と端末装置とのいずれかから送出された電波を反射する反射板を制御する制御装置であって、前記反射板が電波の反射のために使用可能な反射パターンを示す情報を、前記基地局装置へ通知する通知手段と、前記基地局装置から、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の際に前記反射板において設定されるべき特定の反射パターンを設定するように指示する指示信号を受信する受信手段と、前記特定の反射パターンを前記反射板に設定する設定手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射パターンを変更させることができる反射板を効率的に運用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】トレーニング用の反射パターンと通信用の反射パターンとの関係を示す図である。
【
図6】システムにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、例えば、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))のセルラ通信規格に準拠したセルラ通信システムである。ただし、これに限られず、任意の無線通信規格に準拠した無線通信システムにおいて以下の議論を適用することができる。無線通信システムは、例えば、基地局装置101と端末装置102及び端末装置103とを含んで構成される。ここで、例えば建物などの遮蔽物の影響により、基地局装置101から送信された電波を端末装置102や端末装置103が十分に強い電力で受信することができないものとする。この場合、端末装置102や端末装置103が送信した電波を基地局装置101が十分に強い電力で受信することができないことも想定される。このような状況において、基地局装置101と端末装置102や端末装置103との間の通信を可能とするために、反射板104が用いられうる。反射板104は、基地局装置101から送出された電波を所定の反射パターンで反射する。また、反射板104は、端末装置102から送出された電波を所定の反射パターンで反射する。ここで、反射パターンは、反射板を構成する反射素子に設定する反射位相により決まり、例えば、入射パターンと出射パターンとの組み合わせに対応する。なお、入射パターンは、入射方向ごとの反射板の利得を示すパターンである。すなわち、所定の入射方向から入射された電波についてはほぼ減衰せず、また、別の入射方向から入射された電波については、ほぼゼロにまで減衰する、などのパターンが入射パターンである。同様に、出射パターンは、出射方向ごとの反射板の利得を示すパターンである。すなわち、所定の出射方向へ出射される電波が大きい電力で出射され、別の出射方向へはほぼ電波が出射されない、などのパターンが出射パターンである。この反射パターンにより、概ね、利得の大きい入射方向から入射された電波が利得の大きい出射方向へ出力されるようになる。
【0012】
なお、
図1の構成は一例に過ぎない。例えば、基地局装置101と端末装置102や端末装置103との間の通信を中継する反射板の数は、2つ以上存在していてもよい。また、当然に3つ以上の端末装置が存在することが想定される。そして、端末装置の一部が反射板を介して通信を行い、他の一部の端末装置は基地局装置101と反射板を介さずに直接通信するように構成されてもよい。また、無線通信システムには、多数の基地局装置が含まれうる。この場合、他の基地局装置においても、基地局装置101と同様に、反射板を用いた通信が行われうる。
【0013】
反射板104は、電波の反射パターンを変更することができるように構成される。例えば、反射板104は、反射板の姿勢を物理的に制御することにより、基地局装置101から到来した電波又は端末装置102もしくは端末装置105から到来した電波の反射方向を変更することができるように構成されうる。反射板104は、例えば、Intelligent Reflecting Surface(IRS)である。一例において、IRSは、液晶反射板でありうる。液晶反射板では、反射素子とグランドとの間に配置された液晶層の誘電率を変更することによりインピーダンスを操作して、反射素子の位相を変更することにより、電気的に電波の反射方向を制御することができる。なお、液晶反射板はIRSの一例に過ぎず、他の形式の反射板が用いられてもよい。例えば、ダイオードやMicro Electro Mechanical Systems(MEMS)を用いて反射素子の位相を変更可能な反射板が使用されてもよい。反射板104は、制御装置105に接続される。そして、制御装置105は、反射板104に対して、反射パターンを変更させるための制御を実行する。制御装置105は、例えば、IRSの反射パターンを調整させるための制御信号を反射板104に対して出力する。なお、制御装置105は、反射板104に内蔵された装置でありうる。また、制御装置105は、反射板104の外部に設けられた装置であってもよい。また、
図1では、制御装置105は、1つの反射板104に接続されている場合の例を示しているが、複数の反射板に接続されてもよい。制御装置105は、複数の反射板に接続される場合、その複数の反射板の反射パターンをそれぞれ独立して制御することができるように構成されうる。
【0014】
反射板104の反射パターンは、端末装置の存在する方向に向けられる。ここで、非特許文献1では、反射板104が、自装置から見た端末装置の位置を特定して反射パターンを設定する技術が提案されている。この技術によれば、端末装置の方向に対して利得が高い反射パターンが使用されるようになる。しかしながら、基地局装置101の通信相手となる端末装置は、基地局装置101が決定するものであるため、反射板104が、適切な端末装置に対応する反射パターンを設定することができることを確実にすることができない。すなわち、基地局装置101の通信相手の端末装置と異なる端末装置の方向において利得が高くなるように、反射板104の反射パターンが設定されてしまいうる。このような状況を避けるために、基地局装置101が、通信相手の端末装置に適した反射パターンを反射板104に設定させるように、制御装置105に指示することが想定される。
【0015】
一方で、このような指示が行われるためには、基地局装置101が、反射板104によって設定可能な反射パターンを知っていることが必要である。すなわち、基地局装置101は、反射板104において使用可能な複数の反射パターンのそれぞれについての、角度方向ごとの反射利得に関する情報を取得できない場合、端末装置の位置に応じた適切な反射パターンの設定を行うことができない。また、反射板104は、トレーニング用の反射パターンを用いて、端末装置の位置を推定しうるが、基地局装置101は、そのトレーニング用の反射パターンについての角度方向ごとの反射利得の情報を知らない場合、反射板104から見た端末装置の存在する方向を認識することもできない。また、端末装置の位置を特定するためのトレーニング用の反射パターンと、トレーニングの完了後の通信を行う際に使用される反射パターンとが異なることが想定される。すなわち、トレーニングの際には反射利得が相対的に高い角度範囲の幅が大きく、広いエリアにわたって1つの反射パターンで端末装置を探索し、一方で、トレーニングの完了後には、反射利得が高い角度範囲の幅が狭く、狭いエリアで高利得な通信を可能とすることが想定される。この場合、基地局装置101は、トレーニング用の第1の反射パターンに関する情報を取得していても、トレーニングの完了後に使用すべき第2の反射パターンと第1の反射パターンとの関係を認識できず、トレーニングの完了後に適切な反射パターンを選択できないことが想定される。
【0016】
本実施形態では、このような事情に鑑み、制御装置105が、反射板104が使用可能な反射パターンを示す情報を、基地局装置101へ通知するようにする。制御装置105は、例えば、基地局装置101に対して、自身の能力情報であるUE Capabilityの一部として、反射板104が使用可能な反射パターンの情報を通知しうる。なお、これは一例であり、制御装置105は、例えば、基地局装置101と接続を確立する際のランダムアクセス手順におけるメッセージに、その情報を含めて送信してもよい。一例として、ランダムアクセスプリアンブルの系列と使用可能な反射パターンとを事前に関連付けておき、制御装置105は、通知する反射パターンの情報に対応する系列を用いてランダムアクセスプリアンブルを生成しうる。また、ランダムアクセスプリアンブルの送信に使用する時間および周波数リソースと使用可能な反射パターンとが事前に関連付けられてもよく、制御装置105は、通知する反射パターンの情報に対応する時間および周波数リソースにおいて、ランダムアクセスプリアンブルを送信しうる。なお、系列と無線リソースとの組み合わせにより、使用可能な反射パターンの情報が基地局装置101へ通知されてもよい。また、制御装置105は、ランダムアクセス手順におけるメッセージ3において、反射板104が使用可能な反射パターンの情報を基地局装置101へ送信してもよい。また、制御装置105は、接続確立後の、上りリンク制御情報(UCI)を用いて、その情報を基地局装置101へ通知してもよい。さらに、反射板専用のプロトコルレイヤが定義された場合に、そのプロトコルレイヤにおけるメッセージにより、その情報が基地局装置101へ通知されてもよい。
【0017】
反射パターンを示す情報は、複数の反射パターンのそれぞれに対する角度方向ごとの反射利得に関する情報を含みうる。すなわち、複数の反射パターンのそれぞれが、反射板104から見てどの方向に利得のピークを向けているかを示す情報が、基地局装置101へ通知される。基地局装置101は、この情報を受信した場合、特定の端末装置(端末装置102や端末装置103)と反射板104との位置関係から、反射板104において設定されるべき反射パターンを決定することができる。すなわち、基地局装置101は、その特定の端末装置の方向に利得のピークを形成する反射パターンを、その端末装置の通信のために使用する反射パターンとして決定する。そして、基地局装置101は、その決定した反射パターンを、制御装置105に通知することにより、反射板104の反射パターンを設定する。これにより、基地局装置101の制御により、基地局装置101の通信相手の端末装置に対して利得のピークが向くように反射板104の反射パターンを設定することが可能となる。
【0018】
なお、この場合、基地局装置101は、端末装置や反射板104の位置の情報を、その端末装置や制御装置105が測位した結果に基づいて、反射パターンを決定しうる。ここで、端末装置が基地局装置101との初期接続時など、基地局装置101からの特段の指示を受信していない場合に、反射板104は、利得が相対的に高い角度範囲が広く、ピークの利得値が相対的に低い反射パターンを使用しうる。これによれば、基地局装置101との初期接続前の端末装置に対して、基地局装置101からの無線信号を届けることが可能となる。なお、このときの端末装置における基地局装置101からの無線信号の無線品質は相対的に低いものとなる。その後、端末装置が基地局装置101と接続したことに応じて、端末装置の位置情報が基地局装置101に提供され、基地局装置101は、その位置情報に基づいて、反射板104の反射パターンを決定し、その決定した反射パターンを使用するように指示する指示信号を、制御装置105へ送信する。なお、ここで使用される反射パターンは、利得が相対的に高い角度範囲が狭く、ピークの利得値が高い特性を有する。すなわち、初期接続時と異なり、端末装置の位置が特定されているため、その端末装置の位置に向けて利得のピークが形成されるような反射パターンが使用される。これにより、端末装置は、基地局装置101との間で、無線品質が良好な通信を行うことが可能となる。
【0019】
上述の反射パターンは、事前に定義され、それぞれに対してパターンIDが付与されてもよい。これによれば、基地局装置101は、パターンIDを指定した指示信号を制御装置105へ通知することにより、そのパターンIDに対応する反射パターンを反射板104に設定させることができる。
【0020】
一方で、基地局装置101は、反射板104における反射パターンを形成するための反射板104の位相分布に関する情報を制御装置105に通知することにより、反射板104の反射パターンを制御するようにしてもよい。この場合、反射板104と端末装置との間の位置関係に基づいて、反射パターンをきめ細かく制御することができる。すなわち、事前に定義された反射パターンの中から使用する反射パターンを選択する場合には、端末装置の存在する方向に反射利得のピークが向くような反射パターンが形成されない場合がありうるが、位相分布に関する情報を用いることにより、端末装置の存在する方向に反射利得のピークを向けた反射パターンを確実に形成させることができる。なお、反射パターンを形成するための位相分布に関する情報として、反射板104の反射素子数、反射板104における反射素子のアレイの行数もしくは列数、反射板104における反射素子の間隔、反射板における反射素子の散乱パターン、又は反射位相の粒度(解像度)のうちの1つ以上を含んだ、反射板104のパラメータが、基地局装置101へ通知されうる。また、これに代えて又はこれに加えて、反射パターンを形成するための位相分布に関する情報として、複数の反射パターンに対応する、反射板104における反射素子のそれぞれの位相を含んだ位相分布が、基地局装置101へ通知されうる。例えば、反射素子を個別に特定可能な情報(例えば反射素子のアレイにおける列番号および行番号)と、その反射素子の位相を示す情報とが関連付けられて、基地局装置101へ通知される。なお、反射素子の位相は、絶対値によって示されてもよいし、複数の位相値のそれぞれが事前にインデクス値と関連付けられている場合には、その位相に対応するインデクス値によって示されてもよい。これらの情報により、基地局装置101は、反射板104の反射パターンを計算によって特定することができるようになる。すなわち、基地局装置101は、反射板104と端末装置の位置関係を特定し、その位置関係に基づいて、端末装置に適した反射パターンを計算することができるようになる。
【0021】
なお、端末装置の位置(又はその位置に対応する反射パターン)の推定は、反射板104においてトレーニング用の反射パターンが設定されることによって行われてもよい。すなわち、反射板104は、トレーニング用に、例えばピーク利得が相対的に低く、かつ、利得が高い角度範囲が相対的に広い複数の第1の反射パターンを用いて、電波を反射しうる。そして、端末装置がその複数の第1の反射パターンのうちのいずれの反射パターンによる電波を受信することができる位置に属するかによって、端末装置の位置が特定される。なお、非特許文献1では、その利得が高い角度範囲を複数の小範囲に分割し、その複数の小範囲のそれぞれに対応するエリアで端末装置が受信する電波の電力が異なるように利得が調整される。そして、端末装置における電波の受信電力により、端末装置の位置が特定されうる。このようなトレーニング用の第1の反射パターンは、トレーニングの完了後の通信において使用される第2の反射パターンとは異なることが想定される。すなわち、トレーニングの完了後の通信では、広い角度範囲において相対的に低利得なピークを有する第1の反射パターンではなく、狭い角度範囲において高利得なピークを有する第2の反射パターンが使用されうる。
【0022】
ここで、第1の反射パターンと第2の反射パターンとの関係の例を
図2に示す。
図2において、反射パターン201~203は、トレーニング用の反射パターンを示している。また、反射パターン211~213は、トレーニング完了後の通信で使用可能な反射パターンを示している。なお、
図2では、反射板104からの距離によって利得の大きさを示している。すなわち、反射パターン201~203は、相対的に広い角度範囲において相対的に低い利得のピークを有し、反射パターン211~213は、相対的に狭い角度範囲において相対的に高い利得のピークを有している。なお、
図2では、トレーニング用の反射パターン201の角度範囲に対してのみ、トレーニング完了後の通信用の反射パターン211~213が存在するように示されているが、反射パターン202~203に対しても、同様のトレーニング完了後の通信用の反射パターンが設定可能である。制御装置105は、トレーニング用の反射パターン201~203の角度ごとの反射利得の情報を基地局装置101へ通知する。また、制御装置105は、トレーニング用の反射パターン201~203がそれぞれ設定される期間の情報を基地局装置101へ通知しうる。これにより、基地局装置101は、例えば、端末装置が基地局装置101からの電波を(反射板104を介して)受信したタイミングに応じて、トレーニング用の反射パターンのいずれが用いられている間に端末装置がその電波を受信することができたかを特定することができる。そして、基地局装置101は、その特定した反射パターンに対応する位置に、端末装置が存在することを特定することができる。また、例えば非特許文献1に記載の方法により、トレーニング用の反射パターンに対応する角度範囲のうちのいずれの小範囲に端末装置が存在するかを特定することができる。例えば、基地局装置101は、端末装置が、反射パターン201のうちのどの小範囲に対応する方向に存在するかを特定することができる。
【0023】
ここで、基地局装置101は、例えば、端末装置がトレーニング用の第1の反射パターン201のうちの第1の方向に存在することを特定することができたものとする。この場合、基地局装置101は、その第1の方向に向けてピークが生じる、トレーニングの完了後の通信のための第2の反射パターンを使用するように制御装置105に指示信号を送信しうる。一方で、基地局装置101は、このような第2の反射パターンを反射板104に使用させるために、第2の反射パターンと第1の反射パターンとの関係を認識している必要がある。すなわち、基地局装置101は、端末装置が存在する位置に対応する第1の反射パターンを特定することができたとしても、第1の反射パターンと第2の反射パターンとの関係を知らない場合には、適切な第2の反射パターンを特定することができない。このため、制御装置105は、第1の反射パターンと第2の反射パターンとの関係を示す情報を基地局装置101へ通知しうる。制御装置105は、例えば、第1の反射パターン201の角度範囲が、第2の反射パターン211~213の角度範囲を包含していることを示す情報を、基地局装置101へ通知しうる。また、制御装置105は、例えば、非特許文献1に記載の方法における第1の反射パターン201の角度範囲に含まれる複数の小範囲が、それぞれ、第2の反射パターン211~213のいずれに対応するかを示す情報を基地局装置101へ通知してもよい。これにより、基地局装置101は、端末装置の方向を特定するためのトレーニングで用いられる第1の反射パターンと、トレーニングの完了後のその端末装置の通信に用いられる第2の反射パターンとの関係を認識することができるようになる。そして、基地局装置101は、その関係に基づいて、端末装置の位置が特定された際に使用された第1の反射パターンと対応する第2の反射パターンのいずれかを、その端末装置のトレーニングの完了後の通信のために使用する反射パターンとして決定しうる。
【0024】
なお、基地局装置101は、第2の反射パターン211~213を用いてトレーニングを行うように反射板104を制御しうる。この場合、基地局装置101は、例えば、第1の反射パターン201~203を用いて第1段階のトレーニングを実行する。そして、基地局装置101は、端末装置が反射パターン201の角度範囲に対応する方向に存在する場合に、その第1の反射パターン201に対応する第2の反射パターン211~213を用いて、第2段階のトレーニングを実行する。この場合、基地局装置101は、第1段階のトレーニングにおいて使用されるべき反射パターンと第2段階のトレーニングにおいて使用されるべき反射パターンとの対応関係を、制御装置105からの通知によって認識することができる。なお、基地局装置101は、第2段階のトレーニングにより、例えば反射パターン212に対応する角度範囲の方向に端末装置が存在すると特定した場合、その反射パターン212を使用して、トレーニング完了後の通信を行うと決定しうる。ただし、これは一例であり、例えば、基地局装置101は、第2段階のトレーニングの完了後に、位相分布の情報を用いて、端末装置に適した反射パターンを精細に計算するようにしてもよい。
【0025】
なお、上述の例では、反射パターンが、1つの方向に対してピークを有する場合について説明したが、複数の方向にピークが形成される反射パターンが考慮されてもよい。すなわち、それぞれ1つの方向にピークが形成される複数の反射パターンの情報のみならず、複数の方向にピークが形成される複数の反射パターンの情報を、制御装置105が基地局装置101へ通知するようにしうる。複数の方向にピークが形成される反射パターンの情報は、その反射パターンにおけるピークが形成される方向を示す情報を含みうる。また、上述の各例において、反射パターンの情報は、そのピークの数によらず、ピークの反射利得が得られる反射角度から所定レベル(例えば3dB)だけ利得が小さくなる反射角度までの角度範囲の幅を示す情報を含んでもよい。この場合、基地局装置101は、複数の端末装置が反射板104から見て異なる方向に存在する場合に、その複数の端末装置と反射板104との位置関係に基づいて、複数の方向にピークが形成される反射パターンの中から、使用する反射パターンを選択することができる。すなわち、
図1のような例において、基地局装置101は、端末装置102及び端末装置103の両方の方向に向けて反射利得のピークが形成される反射パターンを反射板104に使用させるように、制御装置105に指示信号を送信しうる。これによれば、例えば、基地局装置101が、端末装置102及び端末装置103と並行して通信することが可能となる。また、基地局装置101が、端末装置102及び端末装置103と時分割で通信する場合であっても、このような反射パターンが用いられることにより、反射板104における反射パターンの変更が不要となる。これによれば、反射板104が反射パターンの変更する際の応答期間がなくなる。そのため、基地局装置101と端末装置102及び端末装置103との間で反射板104を介した通信ができなくなる期間が削減され、通信をより効率的に行うことができるようになる。
【0026】
(装置構成)
続いて、上述のような基地局装置101及び制御装置105の構成例について説明する。なお、以下では、参照符号を用いずに、基地局装置101を基地局装置と呼び、制御装置105を制御装置と呼ぶ。
図3は、基地局装置及び制御装置のハードウェア構成例を示す図である。基地局装置及び制御装置は、一例において、プロセッサ301、ROM302、RAM303、記憶装置304、及び通信回路305を含んで構成される。プロセッサ301は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM302は、基地局装置及び制御装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM303は、プロセッサ301がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置304は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路305は、例えば、基地局装置及び制御装置の有線通信または無線通信のための回路を含んで構成される。例えば、基地局装置は、端末装置102又は端末装置103との通信のための、LTEや5Gの無線通信用の回路を含んで構成されうる。なお、基地局装置は、例えば、LTEや5G用の通信回路305を用いて、制御装置と通信しうる。ただし、これは一例であり、基地局装置は、LTEや5G用の通信回路305とは別個に用意した、有線又は無線の通信のための通信回路305を用いて、制御装置と通信するように構成されてもよい。制御装置は、基地局装置と通信するための無線又は有線の通信のための通信回路305を有する。また、制御装置は、反射板との(例えば有線の)通信のための通信回路305をさらに有しうる。なお、
図3では、1つの通信回路305が示されているが、基地局装置及び制御装置は、複数の通信回路を有しうる。なお、複数の通信機能が1つの通信回路305によって実装されてもよい。
【0027】
図4は、基地局装置の機能構成例を示す図である。基地局装置は、その機能として、例えば、情報取得部401、反射パターン決定部402、及び、指示通知部403を有する。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ301がROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを実行して、必要に応じて通信回路305を制御することにより、実現されうる。ただしこれに限定されず、例えば、各機能を実現するための専用のハードウェアが用意されてもよい。
【0028】
情報取得部401は、反射板を制御する制御装置から、反射板が電波の反射に使用可能な反射パターンを示す情報を取得する。反射パターンを示す情報は、上述の通り、反射パターンのそれぞれに対する角度方向ごとの反射利得の情報、トレーニングの際に使用可能な第1の反射パターンとトレーニングの完了後の通信に使用可能な第2の反射パターンとの関係を示す情報、又は、反射板の位相分布に関する情報の少なくともいずれかを含みうる。ここで、反射パターンを示す情報は、1つの方向に対してのみ反射利得のピークを有するパターンのみを含んでもよいし、複数の方向に向けて反射利得のピークを有するパターンを含んでもよい。なお、情報取得部401は、反射パターンを示す情報と共に、その反射パターンを使用可能な反射板の識別情報を取得しうる。なお、制御装置を特定することにより反射板を特定することができる場合、反射板の識別情報は、制御装置の識別情報であってもよい。また、例えば、基地局装置のエリア内に反射板が1つしかない場合や反射板を区別する必要がない場合などでは、反射板の識別情報を特定する情報は省略されてもよい。情報取得部401は、例えば、制御装置に対してUE Capabilityの提供を要求し、その応答として受信したUE Capabilityから、上述の情報を取得しうる。また、情報取得部401は、制御装置が基地局装置に接続する際に送信するランダムアクセス手順におけるメッセージ1(ランダムアクセスプリアンブル)やメッセージ3又はUCIから、上述の情報を取得してもよい。また、情報取得部401は、例えば反射板の制御のためのプロトコルレイヤが定義されている場合には、そのプロトコルレイヤにおけるメッセージによって上述の情報を取得してもよい。
【0029】
反射パターン決定部402は、情報取得部401において取得された情報に基づいて、端末装置との通信のために、反射板に設定させる反射パターンを決定する。例えば、反射パターン決定部402は、角度方向ごとの反射利得に関する情報を取得した場合、その情報と、反射板と端末装置との位置関係とに基づいて、その端末装置の通信のための使用される反射パターンを使用可能な反射パターンの中から選択する。また、反射パターン決定部402は、反射パターンを形成するための位相分布に関する情報を受信した場合には、反射板と端末装置との位置関係に基づいて、受信した情報を用いて、その端末装置に適した反射パターンを算出してもよい。すなわち、事前に定められている反射パターンを示す情報通知されてもよいし、反射パターンを算出可能とするための情報が通知されてもよい。また、反射パターン決定部402は、反射板から見た端末装置の位置を推定するトレーニング用の第1の反射パターンと、トレーニング完了後の通信のための第2の反射パターンの情報との関係を受信した場合、端末装置の位置に対応する第1の反射パターンを特定後に、その第1の反射パターンに対応する第2の反射パターンを、その端末装置の通信のために使用すると決定しうる。例えば、反射パターン決定部402は、反射板から見て端末装置がどの方向に存在するかを推定するために、トレーニング用の複数の第1の反射パターンを時分割で使用することを決定しうる。この場合、例えば、端末装置からの無線信号が受信された際のタイミングに基づいて、複数の第1の反射パターンのいずれに対応する方向に端末装置が存在するかが推定される。反射パターン決定部402は、この推定によって、端末装置が存在する方向に対応する第1の反射パターンを特定すると、その第1の反射パターンに対応する、トレーニング完了後の通信のための第2の反射パターンのいずれかをその端末装置の通信に使用すると決定しうる。なお、1つの第1の反射パターンに対応する角度範囲が複数の小範囲に分割され、その小範囲ごとに基地局装置から反射された電波の端末装置における受信電力の範囲が異なるように設定された場合、基地局装置は、端末装置からの受信電力の測定報告を受信する。そして、基地局装置は、測定報告から、端末装置が複数の小範囲のいずれに属するかを特定し、その小範囲に対応する第2の反射パターンを選択してもよい。
【0030】
なお、反射パターン決定部402は、さらに、使用すると決定した反射パターンが適用されるべきタイミングを決定してもよい。例えば、反射パターン決定部402は、特定の端末装置との通信が反射板を介して行われる場合に、その通信が実際に実行されるタイミングを、反射パターンの設定が完了しているべきタイミングとして決定しうる。なお、反永続的に特定の反射パターンを設定する場合など、タイミングを特定する必要がない場合には、タイミングは決定されなくてもよい。
【0031】
指示通知部403は、反射パターン決定部402によって決定された反射パターンを示す情報を含んだ指示信号を、制御対象の反射板に対応する制御装置へ送信する。指示通知部403は、例えば、設定可能な反射パターンが事前に用意されており、各反射パターンにインデクスが付与されている場合、設定されるべき反射パターンを示すインデクスを指示信号に含めて送信しうる。また、指示通知部403は、例えば、反射パターンが事前に決定されていない場合、反射板内の各反射素子において使用されるべき位相値などの、反射板における特定の反射パターンを実現するためのパラメータを、使用すべき反射パターンの情報として通知してもよい。なお、指示通知部403は、その反射パターンが設定されるべきタイミングが決定された場合、そのタイミングも指示信号に含めて送信しうる。また、指示通知部403は、複数の反射板のうちの1つを指定して反射パターンを示す情報を通知すべき場合には、その反射板を特定可能な識別情報をさらに指示信号に含めて送信しうる。指示通知部403は、反射パターンを示す情報を、例えば個別シグナリングによって制御装置へ通知する。
【0032】
図5は、制御装置の機能構成例を示す図である。制御装置は、その機能として、例えば、情報通知部501、指示受信部502、及び、反射パターン制御部503を有する。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ301がROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを実行して、必要に応じて通信回路305を制御することにより、実現されうる。ただしこれに限定されず、例えば、各機能を実現するための専用のハードウェアが用意されてもよい。
【0033】
情報通知部501は、自装置が制御している反射板が電波の反射に使用可能な反射パターンを示す情報を、基地局装置へ通知する。反射パターンを示す情報は、上述の通りであるため、ここでは繰り返さない。指示受信部502は、基地局装置から反射板の反射パターンを指示する指示信号を受信する。この指示信号は、例えば、反射板に設定させるべき反射パターンを特定する情報を含み、必要に応じて、さらに、その反射パターンの設定が行われるべきタイミングを指定する情報を含む。反射パターン制御部503は、受信した指示信号に含まれるパターン情報に基づいて、自装置に接続されている反射板の反射パターンを設定する。なお、反射パターン制御部503は、指示信号においてタイミングが指定されている場合、そのタイミングにおいて反射パターンの設定が完了しているように反射板の制御を開始しうる。なお、指示受信部502は、反射パターンを特定する情報と共に反射板を特定するための識別情報を受信しうる。そして、指示受信部502は、自装置に接続されている反射板に対応する識別情報を含んだ指示信号を受信した場合に、その指示信号に含まれる反射パターンの情報を取得する。そして、反射パターン制御部503は、その反射パターンの情報に基づいて、反射板の反射パターンを設定する。
【0034】
(処理の流れ)
続いて、無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について
図6を用いて説明する。なお、処理の詳細については上述の通りであるため、ここでは処理の流れの概要を示し、詳細については繰り返さない。
【0035】
まず、制御装置は、自装置に接続されている反射板において使用可能は反射パターンに関する情報を基地局装置へ通知する(S601)。基地局装置は、その通知された情報に基づいて、通信相手の端末装置との通信で使用すべき反射パターンを決定する(S602)。そして、基地局装置は、その決定した反射パターンを反射板に設定するように制御装置へ指示する指示信号を送信する(S603)。制御装置は、その指示信号において指示された反射パターンを使用するように反射板を設定する(S604)。
【0036】
以上のように、本実施形態では、反射板に接続された制御装置が、その反射板で使用可能な反射パターンに関する情報を、基地局装置に提供する。これにより、反射板の反射パターンを基地局装置の制御の下で設定することが可能となり、効率的な通信を行うことが可能となる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0037】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。