(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134051
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】データ処理方法、データ処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/28 20190101AFI20240926BHJP
【FI】
G06F16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044137
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 詩織
(72)【発明者】
【氏名】足立 健太
(72)【発明者】
【氏名】押川 倫憲
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175FB04
(57)【要約】
【課題】複数種類の分析装置から収集される複数の分析データから効率的に特徴量を抽出することができるデータ処理方法、データ処理装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】データ処理方法は、コンピュータが、複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集するステップと、コンピュータが、収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付けるステップとを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集するステップと、
前記コンピュータが、収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付けるステップとを備える、データ処理方法。
【請求項2】
前記分析ファイルセットは、前記分析データから抽出される特徴量をさらに含み、
前記コンピュータが、同じタグが付された分析ファイルセット群に含まれる複数の特徴量の代表値を算出するステップと、
前記コンピュータが、算出された代表値を用いて機械学習を実行するステップとをさらに備える、請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、前記分析ファイルセット群の各分析ファイルセットについて、前記分析データおよび前記特徴量をユーザに提示するステップをさらに備える、請求項2に記載のデータ処理方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、前記分析ファイルセット群から除外すべき分析ファイルセットを指定する入力操作をユーザから受け付け、前記入力操作により指定された分析ファイルセットを、前記分析ファイルセット群から除外するステップをさらに備え、
前記代表値を算出するステップは、前記分析ファイルセット群の残りの分析ファイルセットに含まれる複数の特徴量の代表値を算出するステップを含む、請求項3に記載のデータ処理方法。
【請求項5】
前記分析ファイルセットは、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件に関する情報をさらに含み、
前記タグを付けるステップは、前記コンピュータが、前記情報に基づいて、各分析ファイルセットにタグを付けるステップを含む、請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項6】
前記分析ファイルセットは、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件に関する情報をさらに含み、
前記コンピュータが、収集された前記複数の分析ファイルセットの各々について、前記情報をユーザに提示するステップをさらに備え、
前記タグを付けるステップは、
前記コンピュータが、各分析ファイルセットについて、ユーザからタグの入力操作を受け付けるステップと、
前記コンピュータが、前記入力操作により受け付けたタグを、対応する分析ファイルセットに付けるステップとを含む、請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項7】
前記タグを付けるステップは、前記コンピュータが、各分析ファイルセットに含まれる前記情報に基づいて、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件の全てが一致する他の分析ファイルセットに付されたタグを、タグの候補としてユーザに提示するステップをさらに含む、請求項6に記載のデータ処理方法。
【請求項8】
複数種類の分析装置と通信可能なデータ処理装置であって、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行されるプログラムを記憶するメモリとを備え、
前記プロセッサは、前記プログラムに従って、
前記複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集し、
収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付ける、データ処理装置。
【請求項9】
コンピュータに、
複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集するステップと、
収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付けるステップと、を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理方法、データ処理装置およびプログラムに関し、より特定的には、複数種類の分析装置にて取得された分析データを処理するデータ処理方法、データ処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2021/013665号(特許文献1)には、複数種類の分析装置にて取得された分析データを横断的に解析するためのシステムが開示されている。このシステムでは、複数種類の分析装置にて取得された分析データをデータベースに格納する。データ処理装置は、データベースに格納された分析データを専用のデータ解析ソフトウェアを用いて解析することにより、統計解析やAI解析に使用する特徴量を生成する。そして、データ処理装置は、生成された特徴量に基づく機械学習を行って学習済みモデルを構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムにおいて、各分析装置では、分析データの正確を期すために、1つの材料から複数のサンプルを作製し、これら複数のサンプルを同じ前処理条件で前処理を行い、かつ、同じ測定条件で測定することが行われる場合がある。あるいは、1つのサンプルについて、同じ測定条件で複数回測定が行われる場合がある。このような場合には、サンプルの材料、サンプルの前処理条件、分析装置の種類、および測定条件が全て同じである分析データが複数作成されてデータベースに保存されることになる。
【0005】
一方、ある1つの材料に関連する複数の分析データを機械学習に利用する場合には、コンピュータの負荷を軽減して効率的に学習するために、当該複数の分析データの特徴を表す代表値を求めて、その求めた代表値をその材料の特徴量として扱うことが必要となる。
【0006】
しかしながら、データベースには、複数種類の分析装置から多種多様な分析ファイルセットが収集されて保存されているため、同じ出自の分析ファイルセットをまとめて管理することが難しいという課題がある。
【0007】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数種類の分析装置から収集される複数の分析データから効率的に特徴量を抽出することができるデータ処理方法、データ処理装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係るデータ処理方法は、コンピュータが、複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集するステップと、コンピュータが、収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付けるステップとを備える。
【0009】
本発明の第2の態様に係るデータ処理装置は、複数種類の分析装置と通信可能なデータ処理装置であって、プロセッサと、プロセッサによって実行されるプログラムを記憶するメモリとを備える。プロセッサは、プログラムに従って、複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集する。プロセッサは、収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付ける。
【0010】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、コンピュータに、複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集するステップと、収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付けるステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数種類の分析装置から収集される複数の分析データから効率的に特徴量を抽出することができるデータ処理方法、データ処理装置およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る解析システムの構成例を説明する概略図である。
【
図2】情報処理装置およびデータ処理装置のハードウェア構成例を模式的に示す図である。
【
図3】情報処理装置およびデータ処理装置の機能構成を概略的に示す図である。
【
図4】分析ファイルDBのデータ構造の一例を説明するための図である。
【
図5】タグ付け部によるタグ付け処理を説明するための図である。
【
図8】データ処理装置にて実施される処理の手順を説明するためフローチャートである。
【
図9】タグ付け処理の第1実施例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】タグ付け処理の第2実施例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】表示部に表示されるUI画面の一例を模式的に示す図である。
【
図12】タグ付け処理の第3実施例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
<解析システムの構成例>
図1は、本発明の実施の形態に係る解析システムの構成例を説明する概略図である。本実施の形態に係る解析システムは、複数種類の分析装置において取得された分析データを横断的に解析するためのシステムに適用することができる。
図1に示すように、本実施の形態に係る解析システム100は、複数の分析装置4と、データ処理装置1とを備える。
【0015】
複数の分析装置4は、サンプルの測定を行う。複数の分析装置4は、複数種類の分析装置を含む。ある局面では、複数の分析装置4は、液体クロマトグラフ装置(LC)、ガスクロマトグラフ装置(GC)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置(Py-GC/MS)、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、波長分散型蛍光X線分析装置(WDX)、核磁気共鳴装置(NMR)、およびフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)などを含む。複数の分析装置4はさらに、フォトダイオードアレイ検出器(LC-PDA)、液体クロマトグラフタンデム質量分析装置(LC/MS/MS)、ガスクロマトグラフタンデム質量分析装置(GC/MS/MS)、液体クロマトグラフイオントラップ飛行時間型質量分析計(LC/MS-IT-TOF)、近赤外分光装置、引張試験機、圧縮試験機、発光分光分析装置(AES)、原子吸光分析装置(AAS/FL-AAS)、プラズマ質量分析装置(ICP-MS)、有機元素分析装置、グロー放電質量分析装置(GDMS)、粒子組成分析装置、微量全窒素自動分析装置(TN)、高感度窒素炭素分析装置(NC)、および熱分析装置などを含んでよい。解析システム100は、複数種類の分析装置4を有することによって、複数種類の分析データを用いて1つのサンプルを多面的に解析することが可能となる。
【0016】
分析装置4は、装置本体5と、情報処理装置6とを含む。装置本体5は、分析対象となるサンプルを測定する。情報処理装置6には、サンプルの識別情報、サンプルの測定条件、およびサンプルの前処理条件などが入力される。
【0017】
情報処理装置6は、入力された測定条件に従って、装置本体5における測定を制御する。これにより、サンプルの測定結果に基づいた分析データが取得される。分析データは、例えば、SEMまたはTEMによって取得される電子顕微鏡画像、GC-MSまたはLC-MSによって取得されるクロマトグラムおよびマススペクトル、ならびに、FT-IRまたはNMRから取得されるスペクトルなどである。情報処理装置6は、取得された分析データを、サンプルの識別情報、測定条件、およびサンプルの前処理条件とともにデータファイルに格納し、このデータファイルを内蔵するメモリに保存する。本明細書では、このデータファイルを「分析ファイルセット」とも称する。
【0018】
情報処理装置6は、データ処理装置1と相互に通信可能に接続される。情報処理装置6およびデータ処理装置1間の接続は有線であっても無線であってもよい。例えば、情報処理装置6とデータ処理装置1とを繋ぐ通信網として、インターネットを利用することができる。これにより、各分析装置4の情報処理装置6は、サンプルごとのデータファイルである分析ファイルセットをデータ処理装置1に送信することができる。
【0019】
データ処理装置1は、主として、複数の分析装置4にて取得される分析データを管理するための装置である。データ処理装置1には、各分析装置4から分析ファイルセットが入力される。データ処理装置1にはさらに、サンプルに関する情報(以下、「サンプル情報」とも称する)、およびサンプルの物性データを入力することができる。
【0020】
サンプル情報は、サンプルを識別するための識別情報(サンプルID、サンプル名など)と、サンプルの作製に関する情報(以下、「レシピデータ」とも称する)とを含む。サンプルのレシピデータには、サンプルの原材料の配合量および製造プロセスに関する情報などを含めることができる。サンプルの物性データとは、分析装置4による分析以外で得られる、サンプルの属性を示すデータである。
【0021】
データ処理装置1は、データベースを内蔵している。データベースは、データ処理装置1と複数の分析装置4との間で遣り取りされるデータ、データ処理装置1の外部から入力されるデータ、およびデータ処理装置1内で生成されるデータを保存するための記憶部である。データ処理装置1は、サンプルごとに、分析ファイルセットとサンプル情報およびサンプルの物性データとを紐付けてデータベースに格納する。なお、
図1の例では、データ処理装置1にデータベースを内蔵する構成としたが、データ処理装置1にデータベースが外付けされる構成としてもよい。
【0022】
<解析システムのハードウェア構成例>
図2は、情報処理装置6およびデータ処理装置1のハードウェア構成例を模式的に示す図である。
【0023】
(情報処理装置6のハードウェア構成例)
図2に示すように、情報処理装置6は、分析装置4全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)60と、プログラムおよびデータを格納する記憶部とを備えており、プログラムに従って動作するように構成される。
【0024】
記憶部は、ROM(Read Only Memory)61と、RAM(Random Access Memory)62と、HDD(Hard Disk Drive)65とを含む。ROM61は、CPU60にて実行されるプログラムを格納する。RAM62は、CPU60におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納する。RAM62は、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能する。HDD65は、不揮発性の記憶装置であり、分析ファイルセットなど情報処理装置6で生成された情報を格納する。HDD65に加えて、あるいは、HDD65に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0025】
情報処理装置6は、通信インターフェイス(I/F)66、操作部63、および表示部64をさらに含む。通信I/F66は、情報処理装置6が装置本体5およびデータ処理装置1を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。
【0026】
操作部63は、ユーザからの情報処理装置6に対する指示を含む入力を受け付ける。操作部63は、キーボード、マウスおよび、表示部64の表示画面と一体的に構成されたタッチパネルなどを含み、サンプルの測定条件および識別情報などを受け付ける。
【0027】
表示部64は、測定条件を設定する際に、例えば、測定条件の入力画面およびサンプルの識別情報などを表示することができる。測定中、表示部64は、装置本体5で検出された測定データおよび情報処理装置6によるデータ解析結果を表示することができる。
【0028】
分析装置4における処理は、各ハードウェアおよびCPU60により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、ROM61またはHDD65に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、図示しない記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。そして、ソフトウェアは、CPU60によってHDD65から読み出され、CPU60により実行可能な形式でRAM62に格納される。CPU60は、このプログラムを実行する。
【0029】
(データ処理装置1のハードウェア構成)
データ処理装置1は、装置全体を制御するためのCPU10と、プログラムおよびデータを格納する記憶部とを備えており、プログラムに従って動作するように構成される。記憶部は、ROM11、RAM12、およびデータベース(DB)15を含む。
【0030】
ROM11は、CPU10にて実行されるプログラムを格納する。RAM12は、CPU10におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納する。RAM12は、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能する。
【0031】
DB15は、不揮発性の記憶装置であり、データ処理装置1と複数の分析装置4との間で遣り取りされるデータ、データ処理装置1の外部から入力されるデータ、およびデータ処理装置1内で生成されるデータを格納する。DB15は、後述するように、複数の分析装置4から収集した分析ファイルセットを保存するための分析ファイルDB15Aと、複数の分析ファイルセットから得られた特徴量に関する情報を保存するための特徴量DB15Bを含んで構成される。
【0032】
データ処理装置1は、通信I/F13、および入出力インターフェイス(I/O)14をさらに含む。通信I/F13は、データ処理装置1が情報処理装置6を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。
【0033】
I/O14は、データ処理装置1への入力またはデータ処理装置1からの出力のインターフェイスである。I/O14は、表示部2および操作部3に接続される。表示部2は、データ処理装置1において、複数の分析ファイルセットから特徴量テーブルを作成する処理が実行される際に、当該処理に関する情報を表示するとともに、ユーザ操作を受け付けるためのユーザインターフェイス画面を表示することができる。
【0034】
操作部3は、ユーザの指示を含む入力を受け付ける。操作部3は、キーボードおよびマウスなどを含み、サンプル情報およびサンプルの物性データなどを受け付ける。なお、サンプル情報およびサンプルの物性データは、通信I/F13を介して外部機器から受け付けることも可能である。
【0035】
<解析システムの機能構成>
図3は、情報処理装置6およびデータ処理装置1の機能構成を概略的に示す図である。
【0036】
(情報処理装置6の機能構成)
図3に示すように、情報処理装置6は、データ取得部67と、情報取得部69とを含んで構成される。これらの機能構成は、
図2に示す情報処理装置6において、CPU60が所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0037】
データ取得部67は、サンプルの測定結果に基づいた分析データを装置本体5から取得する。例えば、分析装置4がGC-MSである場合、分析データには、クロマトグラムおよびマススペクトルが含まれる。分析装置4がSEMまたはTEMである場合、分析データにはサンプルの電子顕微鏡像を示す画像データが含まれる。データ取得部67は、取得した分析データを通信I/F6へ転送する。
【0038】
情報取得部69は、操作部63が受け付けた情報を取得する。具体的には、情報取得部69は、サンプル識別情報、サンプルの測定条件、およびサンプルの前処理条件を示す情報を取得する。サンプル識別情報には、例えば、サンプル名、サンプルとなる製品の名称、型番およびシリアル番号などが含まれる。サンプルの測定条件には、使用する分析装置の名称および型番などを含む装置パラメータと、電圧および/または電流の印加条件および温度条件などの測定条件を示す測定パラメータとが含まれる。サンプルの前処理とは、サンプルの分析または測定に着手する前に、サンプルを分析目的に適した状態になるように予め行われるサンプルの処理をいう。サンプルの前処理には、例えば、不要な成分を除去するための濾過処理や研削処理、サンプル中の有機物を分解除去する灰化法、および液体クロマトグラフィー分析の前に行われる固相抽出処理などがある。
【0039】
通信I/F66は、取得した分析データ、測定条件およびサンプル識別情報をひとまとめにした分析ファイルセットをデータ処理装置1へ送信する。
【0040】
(データ処理装置1の機能構成)
データ処理装置1は、分析データ収集部20と、サンプル情報取得部22と、物性データ取得部24と、特徴量抽出部26と、タグ付け部28と、代表値演算部30と、表示データ生成部32と、解析部34と、分析ファイルDB15Aと、特徴量DB15Bとを備える。これらの機能構成は、
図2に示すデータ処理装置1において、CPU10が所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0041】
分析データ収集部20は、通信I/F13を介して、各分析装置4の情報処理装置6から送信される分析ファイルセットを収集する。分析ファイルセットは、サンプルの分析データ、サンプルの識別情報、測定条件、およびサンプルの前処理条件を含んでいる。分析データ収集部20は、収集した分析ファイルセットを分析ファイルDB15Aに格納する。分析ファイルDB15Aには、複数の分析装置4から収集された多種多様な分析ファイルセットが保存される。
【0042】
サンプル情報取得部22は、操作部3が受け付けたサンプル情報を取得する。サンプル情報は、サンプルの識別情報(サンプルID、サンプル名など)、およびサンプルのレシピデータを含む。
【0043】
物性データ取得部24は、操作部3が受け付けたサンプルの物性データを取得する。サンプルの物性データは、サンプルの属性を示すデータであり、例えば、サンプルの性能を示す値、およびサンプルの劣化度合いを示す値などが含まれる。
【0044】
分析ファイルDB15Aには、分析データ収集部20により収集された分析ファイルセットと、サンプル情報取得部22および物性データ取得部24により取得されたサンプル情報および物性データとが紐付けられて保存される。
図4は、分析ファイルDB15Aのデータ構造の一例を説明するための図である。
図4に示すように、分析ファイルDB15Aにおいて、複数の分析ファイルセットは、プロジェクトという枠に保存される。「プロジェクト」とは、新規製品の開発のように共通の目的の達成のために統制される材料の集合体を規定する枠を意味する。このプロジェクトにおいて、複数の分析ファイルセットは、コレクションごとにまとめられて保存される。「コレクション」とは、AI解析や統計解析などに利用したい材料をまとめたものである。
【0045】
例えば、プロジェクトがリチウムイオン電池などの二次電池の開発である場合には、プロジェクトには、二次電池に用いる正極材料に関するコレクション、負極材料に関するコレクション、および電解質に関するコレクションなどが作成される。そして、正極材料に関するコレクションには正極材料となる複数の材料がまとめられる。負極材料に関するコレクションには負極材料となる複数の材料がまとめられる。電解質に関するコレクションには電解質となる複数の材料がまとめられる。
【0046】
各コレクションにおいて、複数の分析ファイルセットは、材料ごとに仕分けされて保存される。各分析ファイルセットがどの材料に仕分けされるかは、分析ファイルセットに含まれているサンプル識別情報、または分析ファイルセットに紐付けられたサンプル情報から判断することができる。これにより、
図4に示すように、1つの材料に対して、複数種類の分析装置4から収集された複数の分析ファイルセットが保存される。1つの材料には、サンプル情報および物性データがさらに保存される。
【0047】
図3に戻って、特徴量抽出部26は、分析ファイルDB15Aに格納されている各分析ファイルセットを専用のデータ解析ソフトウェアを用いて解析することにより、特徴量を生成する。特徴量には、例えば、SEMやTEMによって取得される電子顕微鏡画像、GC-MSやLC-MSによって取得されるクロマトグラム、FT-IRやNMRから取得されるスペクトルなどの分析データ、および、当該分析データから算出されるサンプルの組成、濃度、分子構造、分子数、分子量、重合度、粒子径、粒子面積、粒子数、粒子の分散度、ピーク強度、ピーク面積、ピークの傾き、化合物濃度、化合物量、吸光度、反射率、透過率、サンプルの試験強度、ヤング率、引張強度、変形量、歪み量、破断時間、平均粒子間距離、誘電正接、伸び、スプリング強さ、損失係数、ガラス転位温度、熱膨張率などが含まれる。
【0048】
特徴量抽出部26は、生成された特徴量を、分析ファイルセットと紐付けて分析ファイルDB15Aに格納する。なお、
図3の例では、特徴量抽出部26がデータ処理装置1に含まれているが、これに限らない。各分析装置4の情報処理装置6が特徴量抽出部を有していてもよい。
【0049】
タグ付け部28は、材料ごとにまとめられた複数の分析ファイルセットに対して、タグを付ける。本明細書において「タグ」は、各材料に所属する複数のファイルセットを分類および整理するために利用される。タグは、分析ファイルセットの出自を表す単語、記号またはフレーズを含んで構成される。
【0050】
分析ファイルセットの「出自」とは、分析ファイルセットに含まれている分析データの出どころを意味している。分析ファイルセットの「出自」には、分析対象となるサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、当該サンプルを測定した分析装置の種類(装置種)、および当該分析装置における測定条件が含まれる。タグ付け部28は、各分析ファイルセットに対して、これらの情報を表すタグを付ける。
【0051】
図5は、タグ付け部28によるタグ付け処理を説明するための図である。
図5に示すように、1つの材料Aに所属する複数の分析ファイルセットの各々には、タグが付されている。タグは、上述したように、その分析ファイルセットの出自である、サンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、装置種、および測定条件を表している。例えば、分析ファイルセットがSEM画像を含んでいる場合には、当該分析ファイルセットに付されるタグは、サンプルの材料、サンプルの前処理条件、装置種であるSEM、およびSEM画像の測定条件(加速電圧、倍率など)を含んでいる。
【0052】
ここで、
図1に示す各分析装置4においては、分析データの正確を期すために、1つの材料から複数のサンプルを作製し、これら複数のサンプルを同じ前処理条件で前処理を行い、かつ、同じ測定条件で測定することが行われる場合がある。あるいは、1つのサンプルについて、同じ測定条件で複数回測定が行われる場合がある。例えば、SEMを用いてサンプルの表面構造を観察する場合には、材料全体での特徴を把握するために、1つのサンプルについて同じ測定条件で複数の視野を観察することが行われる。また、引張試験では、試料片の作製誤差による測定ばらつきを考慮して、1つの材料から作製された複数の試験片に対して同じ測定条件で試験が行われる場合がある。これらの場合には、同一出自、すなわち、サンプルの材料、サンプルの前処理条件、装置種および測定条件が全て同じである分析データが複数作成されて分析ファイルDB15Aに保存されることになる。
【0053】
データ処理装置1において、ある1つの材料に関連する複数の分析データを機械学習に利用する場合には、コンピュータの負荷を軽減して効率的に学習するために、当該複数の分析データの特徴を表す代表値を求めて、その求めた代表値をその材料の特徴量として扱うことが必要となる。
【0054】
しかしながら、
図4に示すように、分析ファイルDB15Aには、複数種類の分析装置4から多種多様な分析ファイルセットが収集されて保存されているため、同じ出自の分析ファイルセットをまとめて管理することが難しいという課題がある。
【0055】
このような課題を解決するために、本実施の形態では、タグ付け部28は、各分析ファイルセットに対して、その出自を表すタグを付けるように構成されている。これによると、サンプルの材料、サンプルの前処理条件、装置種、および測定条件の全てが一致する複数の分析ファイルセットには、出自が同じ分析ファイルとして、同じタグが付されることになる。言い換えると、同じタグが付された分析ファイルセット群は、分析データの正確を期すという観点から取得された分析ファイルセットの集まりであると判断することができる。
【0056】
したがって、データ処理装置1は、各分析ファイルに付されたタグを手がかりに、同一出自の分析ファイルセット群を効率的にまとめることが可能となる。そして、データ処理装置1は、同一出自の分析セットファイル群から、特徴量となる代表値を容易に算出することが可能となる。
【0057】
図3に戻って、代表値演算部30は、同一出自の分析ファイルセット群について、各分析ファイルセットから抽出される特徴量の代表値を算出する。代表値とは、複数の特徴量を要約した数値である統計量である。この統計量は、要約統計量とも称される。代表値には、例えば、平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値、標準偏差、分散、歪度、尖度などが含まれる。これらの統計量のうち、平均値、中央値、最頻値、最大値、および最小値は、材料ごとの特徴量の全体を表す代表値に相当する。標準偏差、分散、歪度、および尖度は、各材料における特徴量の散らばりを表す散布度に相当する。
【0058】
表示データ生成部32は、タグ付け部28により生成された情報を表示画面上に表示させるためのデータを生成する。具体的には、表示データ生成部32は、同一タグが付された分析ファイルセット群、すなわち、同一出自の分析ファイルセット群に関する情報を表示部2に表示する。
図6は、表示部2の表示画面の一例を示す図である。
【0059】
図6に示すように、表示部2の表示画面には、同一タグが付された分析ファイルセット群を示すリストが表示される。
図6の例では、材料Aに所属する複数の分析ファイルセットのうち、タグa1が付された分析ファイルセットのリスト80が表示されている。
【0060】
タグa1は、装置種がSEMであり、測定条件が加速電圧0.5kV、倍率200倍であり、サンプルの前処理条件がパターン1であることを示している。リスト80には、これらの条件に当てはまる分析ファイルセットの分析ファイルセット名と、各分析ファイルセットに含まれているプロパティの項目名とが記されている。プロパティには、SEM画像から抽出された特徴量(SEM画像、SEM_粒子径、およびSEM_粒子面積など)が含まれる。
【0061】
ユーザは、操作部3を用いてリスト80の中から1つの分析ファイルセットを選択することにより、この分析ファイルセットの詳細を確認することができる。
図6の例では、ユーザの選択操作に応じて、表示画面には、選択された分析ファイルセットに含まれているSEM画像データ92、およびこのSEM画像データから92から算出された粒子径及び粒子面積などの特徴量94を含むGUI(Graphical User Interface)90が表示される。
【0062】
ユーザは、表示された分析ファイルセットの詳細を参照して、SEM画像データ92に測定ミスがあるかどうか、または、特徴量94が外れ値を含んでいるかどうかなどを判断することができる。そして、測定ミスや外れ値があると判断された場合には、ユーザは、この分析ファイルセットを、同一出自の分析ファイルセット群から除外することができる。
【0063】
具体的には、リスト80には、分析ファイルセットごとに、分析ファイルセット群から「除外」することを指示するためのアイコン82が設けられている。SEM画像データ、SEM_粒子径およびSEM_粒子面積の何れかに不備があると判断された場合には、ユーザは、当該データを含む分析ファイルセットに対応するアイコン82をクリックすることにより、この分析ファイルセットを分析ファイルセット群から除外することができる。このユーザ操作に応じて、データ処理装置1は、タグa1が付された分析ファイルセット群から、ユーザが指定した分析ファイルセットを除外する。
【0064】
分析ファイルセット群から少なくとも1つの分析ファイルセットが除外された場合には、代表値演算部30は、分析ファイルセット群の残りの分析ファイルセットから、複数の特徴量の代表値を再び算出する。そして、代表値演算部30は、算出された代表値を特徴量テーブルに記録する。本明細書において「特徴量テーブル」とは、複数の分析ファイルセットの統計解析またはAI解析を実行する場合に、これらの解析に使用する特徴量をテーブル形式にまとめたものである。
図7は、特徴量テーブルの一例を示す図である。
図7の例では、特徴量テーブルには、材料ごとに、当該材料に所属する複数の分析ファイルセットから抽出される複数種類の特徴量が記録される。特徴量テーブルには、特徴量以外に、サンプルの物性値や少なくとも1つの特徴量に演算処理を施すことによって得られる演算値などを記録することができる。作成された特徴量テーブルは特徴量DB15Bに格納される。
【0065】
解析部34は、特徴量DB15Bに保存されている特徴量テーブルを用いて、AI解析および統計解析などを実行する。解析部34における機械学習の手法としては、特に限定されず、例えば、ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)、サポートベクタマシン(SVM:Support Vector Machine)などの公知の機械学習が使用される。
【0066】
<データ処理装置1の動作>
次に、データ処理装置1にて実施される処理について説明する。
【0067】
図8は、データ処理装置1にて実施される処理の手順を説明するためフローチャートである。
【0068】
図8に示すように、最初に、ステップ(以下、単に「S」と表記する)10により、データ処理装置1は、通信I/F13を介して、複数の分析装置4の情報処理装置6から送信される分析ファイルセットを収集する。
【0069】
S20により、データ処理装置1は、収集した複数の分析ファイルセットの各々を専用のデータ解析ソフトウェアを用いて解析することにより、特徴量を生成する。
【0070】
S30により、データ処理装置1は、収集した複数の分析ファイルセットを、分析ファイルDB15Aに格納する。S30では、データ処理装置1は、各分析ファイルセットに対して、特徴量、サンプル情報(サンプル識別情報、レシピデータ)、およびサンプルの物性データを紐付けて保存することができる。
図4に示したように、分析ファイルDB15Aには、材料ごとに複数の分析ファイルセットがまとめられて保存される。
【0071】
S40により、データ処理装置1は、分析ファイルDB15Aに保存されている各分析ファイルセットに、その出自を表すタグを付ける。S40では、データ処理装置1は、分析ファイルセットに含まれている、分析データ、サンプルの前処理条件、および測定条件に基づいて、各分析ファイルセットにタグを付ける。これにより、
図5に示したように、各材料の下には、同一タグが付された分析ファイルセット群が生成される。データ処理装置1によるタグ付けの処理手順については後述する。
【0072】
S50により、データ処理装置1は、同一タグが付された分析ファイルセット群について、複数の分析ファイルセットからそれぞれ抽出される複数の特徴量の代表値を算出する。S50では、データ処理装置1は、
図6で説明したように、操作部3に対するユーザの入力操作に従って、分析ファイルセット群から少なくとも1つの分析ファイルセットを除外することができる。少なくとも1つの分析ファイルセットが除外された場合には、データ処理装置1は、残りの分析ファイルセットから、複数の特徴量の代表値を算出する。
【0073】
S60により、データ処理装置1は、算出された複数の特徴量の代表値を特徴量テーブル(
図7参照)に記録する。
【0074】
S70により、データ処理装置1は、作成された特徴量テーブルを特徴量DB15Bに格納する。
【0075】
(タグ付け処理)
次に、分析ファイルセットにタグを付ける処理(
図8のS40)の手順について、複数の実施例を挙げて説明する。第1実施例では、データ処理装置1が自動的に各分析ファイルセットにタグを付ける手法について説明する。第2実施例では、ユーザ操作に従ってデータ処理装置1が各分析ファイルセットにタグを付ける手法について説明する。第3実施例では、第2実施例の変形例を説明する。
【0076】
(1)第1実施例
図9は、タグ付け処理の第1実施例を説明するためのフローチャートである。第1実施例では、データ処理装置1は、分析ファイルセットに含まれている、サンプルの材料、サンプルの前処理条件、測定条件および測定データに関する情報に基づいて、各分析ファイルセットに自動的にタグを付ける。
【0077】
具体的には、S401により、データ処理装置1は、分析ファイルDB15Aにおける1つのコレクションから同一材料の分析ファイルセットを抽出する。S401では、例えば、材料Aにまとめられている複数の分析ファイルセットが抽出される。
【0078】
次に、データ処理装置1は、S402により、抽出された複数の分析ファイルセットを、装置種が一致するか否かによって分類する。
【0079】
次いで、データ処理装置1は、装置種が同じである複数の分析ファイルセットを、サンプルの前処理条件が一致するか否か(S403)、および測定条件が一致するか否か(S404)によって分類する。
【0080】
S405により、データ処理装置1の装置種、サンプルの前処理条件、および測定条件が全て同じである分析ファイルセットに、同じタグを付ける。
【0081】
(2)第2実施例
図10は、タグ付け処理の第2実施例を説明するためのフローチャートである。第2実施例では、データ処理装置1は、ユーザが各分析ファイルセットにタグを付ける作業を支援するためのユーザインターフェイスを提供するように構成される。
【0082】
図10に示すように、S411により、データ処理装置1は、操作部3に対するユーザの入力操作に基づいて、分析ファイルDB15Aに対して、1つのコレクションが指定されたか否かを判定する。さらにS412により、データ処理装置1は、1つの材料が指定されたか否かを判定する。コレクションから特徴量テーブルを作成する場面において、ユーザは、操作部3を用いて、解析の対象となるコレクションおよび材料を指定することができる。
【0083】
コレクションおよび材料が指定された場合(S411およびS412のYES判定時)には、S413により、データ処理装置1は、指定されたコレクションおよび材料に所属する分析ファイルセット群を表示部2に表示する。
【0084】
図11は、表示部2に表示されるUI画面の一例を模式的に示す図である。
図11に示すように、UI画面には、指定された材料に所属する複数の分析ファイルセットのリストが表示される。
図11の例では、材料Aに所属する複数の分析ファイルセットのリスト84が表示されている。リスト84には、SEMによって取得された分析データ(SEM画像)を含む分析ファイルセット、およびGC-MSによって取得された分析データ(クロマトグラム、マススペクトルなど)を含む分析ファイルセットなどが含まれている。分析ファイルセットごとに、分析ファイルセット名と、各分析ファイルセットに含まれているプロパティの項目名とが記されている。プロパティには、分析データから抽出された特徴量が含まれる。
【0085】
ユーザは、操作部3を用いて、リスト84の各分析ファイルセットにタグを付けることができる。具体的には、リスト84には、分析ファイルセットごとに、タグを入力するためのアイコン86が設けられている。1つの分析ファイルセットのアイコン86をユーザがクリックすると、タグを入力するためのGUI96が表示画面に表示される。
【0086】
GUI96には、タグを入力するためのアイコン97が示される。ユーザは、当該分析ファイルセットの出自を表す文字、記号およびフレーズなどをアイコン97に入力することができる。例えば、1つのサンプルについて同じ測定条件で3回連続して試験が行われた場合には、タグには、3回連続して試験を行ったときの1回目の試験で得られた分析データであることを示す情報を含めることができる。また、タグには、当該サンプルの前処理条件に関する情報を含めることができる。
【0087】
GUI96には、タグの情報を追加して設定するためのアイコン98が設けられている。ユーザは、アイコン98をクリックして、さらに情報を追加することができる。入力された情報はGUI96に表示される。
【0088】
さらにユーザは、操作部3を用いてリスト84の中から1つの分析ファイルセットを選択することにより、この分析ファイルセットの詳細を確認することができる。
図11の例では、ユーザ操作に応じて、表示画面には、選択された分析ファイルセットに含まれているSEM画像データ92、およびこのSEM画像データ92から算出された粒子径及び粒子面積などの特徴量94を含むGUI90が表示される。
【0089】
ユーザは、表示された分析ファイルセットの詳細を参照して、SEM画像データ92に測定ミスがあるかどうか、または、特徴量94が外れ値を含んでいるかどうかを判断することができる。そして、測定ミスや外れ値があると判断された場合には、ユーザは、この分析ファイルセットをリスト84から除外することができる。具体的には、リスト84には、分析ファイルセットごとに、分析ファイルセット群から「除外」することを指示するためのアイコン88が設けられている。分析データおよび特徴量の何れかに不備があると判断された場合、ユーザは、当該データを含む分析ファイルセットに対応するアイコン88をクリックすることにより、この分析ファイルセットをリスト84から除外することができる。このユーザ操作に応じて、データ処理装置1は、材料Aに所属する複数の分析ファイルセットから、ユーザが指定して分析ファイルセットを除外する。よって、特徴量テーブルの作成において、この分析ファイルセットは使用されない。
【0090】
図10に戻って、S414により、データ処理装置1は、操作部3に対するユーザの操作に基づいて、リスト84から1つの分析ファイルセットが選択されたか否かを判定する。1つの分析ファイルセットが選択された場合(S414のYES判定時)には、S415により、データ処理装置1は、当該分析ファイルセットに含まれる分析データおよび特徴量を含むGUI90を表示部2に表示する。
【0091】
S416により、データ処理装置1は、操作部3に対するユーザの入力操作に基づいて、タグが入力されたか否かを判定する。リスト84のアイコン86がクリックされ、かつ、GUI96にてタグが入力された場合に、S416はYES判定とされる。タグが入力されたことに応じて(S416のYES判定時)、S417により、データ処理装置1は分析ファイルセットにタグを付ける。
【0092】
(3)第3実施例
第2実施例では、ユーザ操作に従って、各分析ファイルセットにタグを付ける構成について説明したが、この構成において、データ処理装置1は、分析ファイルセットに付されるタグの候補をユーザに提示する構成とすることができる。
【0093】
図12は、タグ付け処理の第3実施例を説明するためのフローチャートである。
図12に示すフローチャートは、
図10に示したフローチャートとは、S418~S420の処理を含む点が異なる。
【0094】
S418により、データ処理装置1は、指定された材料に所属する複数の分析ファイルセットの中に、同一出自の分析ファイルセットがあるかどうかを判定する。S418では、データ処理装置1は、
図9に示した第1実施例と同様の処理を行うことにより、複数の分析ファイルセットを、装置種、サンプルの前処理条件および測定条件に基づいて分類する。
【0095】
装置種、サンプルの前処理条件および測定条件の全てが一致する別の分析ファイルセットがある場合(S418のYES判定時)には、データ処理装置1は、S419により、この別の分析ファイルセットに付されたタグを、タグの候補としてユーザに提示する。
【0096】
S420により、データ処理装置1は、操作部3に対するユーザの入力操作に基づいて、提示されたタグの候補が選択されたか否かを判定する。タグの候補が選択されたことに応じて(S420のYES判定時)、S417により、データ処理装置1は、分析ファイルセットにタグを付ける。
【0097】
装置種、サンプルの前処理条件および測定条件の全てが一致する別の分析ファイルセットがない場合(S418のNO判定時)、またはタグの候補が選択されない場合(S420のNO判定時)には、データ処理装置1は、S416により、操作部3に対するユーザの入力操作に基づいて、タグが入力されたか否かを判定する。リスト84のアイコン86がクリックされ、かつ、GUI96にてタグが入力された場合に、S416はYES判定とされる。タグが入力されたことに応じて(S416のYES判定時)、S417により、データ処理装置1は分析ファイルセットにタグを付ける。
【0098】
なお、第3実施例では、ユーザの入力操作によって付されたタグと、データ処理装置1が自動で付けたタグとをユーザが識別することができるように、各々のタグの表示態様を異ならせてもよい。
【0099】
<作用効果>
以上説明したように、本実施の形態に従うデータ処理方法によれば、複数種類の分析装置から複数の分析ファイルセットを収集してAI解析や統計解析に利用する解析システムにおいて、各分析ファイルセットに対して、その出自(サンプルの材料、サンプルの前処理条件、装置種、および測定条件)を示すタグを付けることにより、分析データの正確を期すために取得された分析ファイルセット群を、同一出自の分析ファイルセット群としてまとめて取り扱うことができる。その結果、これら同一出自の分析セットファイル群から、特徴量となる代表値を効率的かつ容易に算出することが可能となる。
【0100】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0101】
(第1項)一態様に係るデータ処理方法は、コンピュータが、複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集するステップと、コンピュータが、収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付けるステップとを備える。
【0102】
第1項に記載のデータ処理方法によれば、各分析ファイルセットに付されたタグを用いて、分析データの正確を期すために取得された分析ファイルセット群を、同一出自の分析ファイルセット群として効率的に管理することができる。
【0103】
(第2項)第1項に記載のデータ処理方法において、分析ファイルセットは、分析データから抽出される特徴量をさらに含む。データ処理方法は、コンピュータが、同じタグが付された分析ファイルセット群に含まれる複数の特徴量の代表値を算出するステップと、コンピュータが、算出された代表値を用いて機械学習を実行するステップとをさらに備える。
【0104】
第2項に記載のデータ処理方法によれば、同一出自の分析セットファイル群から、その材料の特徴量となる代表値を効率的かつ容易に算出することができる。
【0105】
(第3項)第1項または第2項に記載のデータ処理方法は、コンピュータが、分析ファイルセット群の各分析ファイルセットについて、分析データおよび特徴量をユーザに提示するステップをさらに備える。
【0106】
第3項に記載のデータ処理方法によれば、ユーザは、同一出自の分析ファイルセット群の詳細を確認することができる。
【0107】
(第4項)第3項に記載のデータ処理方法は、コンピュータが、分析ファイルセット群から除外すべき分析ファイルセットを指定する入力操作をユーザから受け付け、入力操作により指定された分析ファイルセットを、分析ファイルセット群から除外するステップをさらに備える。代表値を算出するステップは、分析ファイルセット群の残りの分析ファイルセットに含まれる複数の特徴量の代表値を算出するステップを含む。
【0108】
第4項に記載のデータ処理方法によれば、測定ミスや外れ値を有する分析ファイルセットを分析ファイルセット群から除外して代表値を求めることができる。
【0109】
(第5項)第1項から第4項に記載のデータ処理方法において、分析ファイルセットは、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件に関する情報をさらに含む。タグを付けるステップは、コンピュータが、情報に基づいて、各分析ファイルセットにタグを付けるステップを含む。
【0110】
第5項に記載のデータ処理方法によれば、各分析ファイルセットへのタグ付けを正確かつ効率的に行うことができる。
【0111】
(第6項)第1項から第4項に記載のデータ処理方法において、分析ファイルセットは、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件に関する情報をさらに含む。データ処理方法は、コンピュータが、収集された複数の分析ファイルセットの各々について、情報をユーザに提示するステップをさらに備える。タグを付けるステップは、コンピュータが、各分析ファイルセットについて、ユーザからタグの入力操作を受け付けるステップと、コンピュータが、入力操作により受け付けたタグを、対応する分析ファイルセットに付けるステップとを含む。
【0112】
第6項に記載のデータ処理方法によれば、ユーザは、各分析ファイルセットの出自を確認しながらタグを付けることができる。
【0113】
(第7項)第6項に記載のデータ処理方法において、タグを付けるステップは、コンピュータが、各分析ファイルセットに含まれる情報に基づいて、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件の全てが一致する他の分析ファイルセットに付されたタグを、タグの候補としてユーザに提示するステップをさらに含む。
【0114】
第7項に記載のデータ処理方法によれば、ユーザは、同一出自の分析ファイルセットに対するタグ付けを効率的に行うことが可能となる。
【0115】
(第8項)一態様に係るデータ処理装置は、複数種類の分析装置と通信可能なデータ処理装置であって、プロセッサと、プロセッサによって実行されるプログラムを記憶するメモリとを備える。プロセッサは、プログラムに従って、複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集する。プロセッサは、収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付ける。
【0116】
第8項に記載のデータ処理装置によれば、各分析ファイルセットに付されたタグを用いて、分析データの正確を期すために取得された分析ファイルセット群を、同一出自の分析ファイルセット群として効率的に管理することができる。
【0117】
(第9項)一態様に係るプログラムは、コンピュータに、複数種類の分析装置から、分析装置による分析データを含む分析ファイルセットを収集するステップと、収集された複数の分析ファイルセットの各々に、分析装置の種類、当該分析装置が測定したサンプルの材料、当該サンプルの前処理条件、および当該サンプルの測定条件を示すタグを付けるステップと、を実行させる。
【0118】
第9項に記載のプログラムによれば、各分析ファイルセットに付されたタグを用いて、分析データの正確を期すために取得された分析ファイルセット群を、同一出自の分析ファイルセット群として効率的に管理することができる。
【0119】
なお、上述した実施の形態および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0120】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
1 データ処理装置、2,64 表示部、3,63 操作部、4 分析装置、5 装置本体、6 情報処理装置、11,61 ROM、12,62 RAM、13,66 通信I/F、14 I/O、15 DB、15A 分析ファイルDB、15B 特徴量DB、20 分析データ収集部、22 サンプル情報取得部、24 物性データ取得部、26 特徴量抽出部、28 タグ付け部、30 代表値演算部、32 表示データ生成部、34 解析部、57 データ取得部、65 HDD、69 情報取得部、80,84 リスト、82,86,97,98 アイコン、92 画像データ、94 特徴量、100 解析システム。