(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134055
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044142
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 駿
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA12
3K339AA21
3K339AA23
3K339AA43
3K339BA02
3K339BA03
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3K339BA22
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3K339GB22
3K339GB26
3K339JA22
3K339KA02
3K339KA09
3K339MA05
3K339MA10
3K339MC03
3K339MC96
(57)【要約】
【課題】視認性の向上を図る。
【解決手段】車両用照明装置の光源は、電力が投入されることにより、互いに主波長の異なる可視光を放射する少なくとも3種類の発光デバイスを備える。車両用照明装置は、各発光デバイスから放射される可視光を混色させて生成した混色光を、照射対象箇所に照射する。車両用照明装置の制御部は、照射対象箇所の周囲の明るさに応じて、各発光デバイスへの投入電力を制御することで、混色光の主波長を切り替える。制御部は、照射対象箇所の周囲の明るさが基準値よりも大きい場合(ステップS130:YES)には、混色光の主波長が第1主波長となるように、各発光デバイスに電力を投入する(ステップS140)。上記明るさが基準値以下の場合(ステップS130:NO)には、混色光の主波長が上記第1主波長よりも短い第2主波長となるように、各発光デバイスに電力を投入する(ステップS150)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に組み付けられる光源を備え、
前記光源は、電力が投入されることにより、互いに主波長の異なる可視光を放射する少なくとも3種類の発光デバイスを備え、
各発光デバイスから放射される前記可視光を混色させて生成した混色光を、照射対象箇所に照射する車両用照明装置であり、
前記照射対象箇所の周囲の明るさに応じて、各発光デバイスへの投入電力を制御することで、前記混色光の主波長を切り替える制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記照射対象箇所の周囲の前記明るさが基準値よりも大きい場合には、前記混色光の前記主波長が第1主波長となるように、各発光デバイスに前記電力を投入し、前記明るさが前記基準値以下の場合には、前記混色光の前記主波長が前記第1主波長よりも短い第2主波長となるように、各発光デバイスに前記電力を投入する車両用照明装置。
【請求項2】
前記少なくとも3種類の前記発光デバイスの各々は、互いに前記主波長の異なる前記可視光を放射する発光素子を備え、
前記光源は、前記発光デバイス毎の前記発光素子から放射される前記可視光を混色させることで前記混色光を生成する請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記少なくとも3種類の前記発光デバイスは、1種類の特定発光デバイスと、少なくとも2種類の一般発光デバイスとを備え、
前記特定発光デバイスは、前記可視光を放射する発光素子を備え、
前記少なくとも2種類の前記一般発光デバイスは、それぞれ発光素子を備えるとともに、互いに異なる色の蛍光体を備え、
前記一般発光デバイスにおける前記発光素子は、前記特定発光デバイスの前記発光素子と同じ主波長を含む主波長範囲内における主波長の前記可視光を放射するものであり、
前記光源は、前記少なくとも3種類の前記発光デバイスから放射される前記可視光を混色させることで前記混色光を生成する請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
前記混色光の波長と視感度との関係において、前記照射対象箇所の周囲の前記明るさが前記基準値よりも大きい状況下で、前記視感度が最大となるときの前記主波長を含む波長領域を第1波長領域とし、前記照射対象箇所の周囲の前記明るさが前記基準値以下の状況下で、前記視感度が最大となるときの前記主波長を含み、かつ前記第1波長領域よりも短波長側の波長領域を第2波長領域とした場合、
前記第1主波長は前記第1波長領域内の値に設定され、前記第2主波長は前記第2波長領域内の値に設定されている請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、明所視視感度に基づく前記第1主波長の前記可視光の明所視光束が、前記明所視視感度に基づく前記第2主波長の前記可視光の明所視光束よりも大きくなり、かつ暗所視視感度に基づく前記第1主波長の前記可視光の暗所視光束が、前記暗所視視感度に基づく前記第2主波長の前記可視光の暗所視光束よりも小さくなるように、各発光デバイスに前記電力を投入する請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項6】
前記少なくとも3種類の前記発光デバイスは、第1波長の可視光を放射する第1発光デバイスと、主波長が前記第1波長よりも短い第2波長の可視光を放射する第2発光デバイスと、主波長が前記第2波長よりも短い第3波長の可視光を放射する第3発光デバイスとからなる請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項7】
前記第1波長は、600[nm]~700[nm]の範囲の値に主波長が設定され、
前記第2波長は、490[nm]~600[nm]の範囲の値に主波長が設定され、
前記第3波長は、400[nm]~490[nm]の範囲の値に主波長が設定されている請求項6に記載の車両用照明装置。
【請求項8】
前記第1波長は、620[nm]~700[nm]の範囲の値に主波長が設定され、
前記第2波長は、490[nm]~560[nm]の範囲の値に主波長が設定され、
前記第3波長は、430[nm]~490[nm]の範囲の値に主波長が設定されている請求項7に記載の車両用照明装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記車両に搭載され、かつ前記照射対象箇所の周囲の前記明るさに依拠する車両ライトの点灯及び消灯に連動して、前記混色光の前記主波長を切り替える請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項10】
前記光源は、前記混色光を照射することで、情報を示すサインを前記照射対象箇所に表示する請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項11】
前記車両は、車外における乗員の特定の動作を検出する動作検出センサを備え、かつ前記動作検出センサが前記乗員の前記特定の動作を検出した場合に、前記車両における特定の可動部を作動させるように構成されており、
前記動作検出センサの検出領域を挟み込む2箇所のうちの少なくとも1箇所が前記照射対象箇所として設定され、
前記制御部は、前記特定の動作の直前に行なわれる前記乗員の動作である直前動作が検出された場合に、各発光デバイスに対する投入電力の前記制御を行なうことで、前記第1主波長又は前記第2主波長を主波長とする前記混色光を前記照射対象箇所に照射させる請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の車両用照明装置。
【請求項12】
前記動作検出センサは、車外における前記乗員の足の特定の動作を検出するキックセンサであり、
前記照射対象箇所は、前記検出領域の上方に位置する車両外板、及び前記検出領域の下方に位置する路面のうちの少なくとも一方である請求項11に記載の車両用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両外板、路面等に可視光のサインを表示する車両用照明装置が開示されている。この車両用照明装置の光源から放射される可視光の波長は360[nm]~830[nm]、より好ましくは500[nm]~570[nm]の範囲に設定されている。この設定により、昼間でも信頼性高く可視光のサインが視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人の眼が感じる明るさの度合いである視感度は、明所視となる昼間と、暗所視となる夜間とでは変化する。しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用照明装置では、上記光源が放射する可視光の主波長は、昼間の視認性に合わせて設定されている。そのため、昼間に優れた視認性が確保されるものの、夜間の視認性が低下するおそれがある。このような経緯から、視認性の高い車両用照明装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両用照明装置の各態様を記載する。
[態様1]車両に組み付けられる光源を備え、前記光源は、電力が投入されることにより、互いに主波長の異なる可視光を放射する少なくとも3種類の発光デバイスを備え、各発光デバイスから放射される前記可視光を混色させて生成した混色光を、照射対象箇所に照射する車両用照明装置であり、前記照射対象箇所の周囲の明るさに応じて、各発光デバイスへの投入電力を制御することで、前記混色光の主波長を切り替える制御部をさらに備え、前記制御部は、前記照射対象箇所の周囲の前記明るさが基準値よりも大きい場合には、前記混色光の前記主波長が第1主波長となるように、各発光デバイスに前記電力を投入し、前記明るさが前記基準値以下の場合には、前記混色光の前記主波長が前記第1主波長よりも短い第2主波長となるように、各発光デバイスに前記電力を投入する車両用照明装置。
【0006】
上記の構成によれば、光源における少なくとも3種類の発光デバイスのそれぞれに電力が投入されると、各発光デバイスから可視光が放射される。これらの可視光が混色されて生成された混色光は、照射対象箇所に照射される。
【0007】
各発光デバイスへの投入電力は、制御部によって、照射対象箇所の周囲の明るさに応じて次のように制御される。上記明るさが基準値よりも大きい場合には、混色光の主波長が第1主波長となるように、各発光デバイスに電力が投入される。上記明るさが基準値以下の場合には、混色光の主波長が第1主波長よりも短い第2主波長となるように、各発光デバイスに電力が投入される。上記投入電力の制御により、照射対象箇所の周囲の明るさに応じて、混色光の主波長が切り替えられる。上記投入電力の制御により、各発光デバイスから放射される可視光の光束の比(割合)が調整されて、第1主波長又は第2主波長を主波長とする混色光が照射対象箇所に照射される。
【0008】
このように、照射対象箇所に対しては、照射対象箇所の周囲が暗いときに、明るいときに比べて短い主波長の混色光が照射される。従って、照射対象箇所の周囲が明るいときにも暗いときにも、視認性を向上させることが可能となる。
【0009】
[態様2]前記少なくとも3種類の前記発光デバイスの各々は、互いに前記主波長の異なる前記可視光を放射する発光素子を備え、前記光源は、前記発光デバイス毎の前記発光素子から放射される前記可視光を混色させることで前記混色光を生成する[態様1]に記載の車両用照明装置。
【0010】
上記の構成によれば、少なくとも3種類の発光デバイスの発光素子からは、互いに主波長の異なる可視光が放射される。光源では、発光デバイス毎の発光素子から放射される可視光が混色されて混色光が生成される。そして、光源からは、生成された混色光が放射されて、照射対象箇所に照射される。
【0011】
[態様3]前記少なくとも3種類の前記発光デバイスは、1種類の特定発光デバイスと、少なくとも2種類の一般発光デバイスとを備え、前記特定発光デバイスは、前記可視光を放射する発光素子を備え、前記少なくとも2種類の前記一般発光デバイスは、それぞれ発光素子を備えるとともに、互いに異なる色の蛍光体を備え、前記一般発光デバイスにおける前記発光素子は、前記特定発光デバイスの前記発光素子と同じ主波長を含む主波長範囲内における主波長の前記可視光を放射するものであり、前記光源は、前記少なくとも3種類の前記発光デバイスから放射される前記可視光を混色させることで前記混色光を生成する[態様1]に記載の車両用照明装置。
【0012】
上記の構成によれば、少なくとも3種類の発光デバイスのうち、特定発光デバイスでは、発光素子から可視光が放射される。一般発光デバイスでは、特定発光デバイスの発光素子と同じ主波長を含む主波長範囲内における主波長の可視光が、同一般発光デバイスの発光素子から放射される。この可視光が蛍光体に吸収されることで、各一般発光デバイスからは、特定発光デバイスから放射される可視光とは異なる主波長の可視光であり、かつ一般発光デバイス毎に異なる主波長の可視光が放射される。
【0013】
光源では、各発光デバイスから放射される可視光が混色されて混色光が生成される。そして、光源からは、生成された混色光が放射されて、照射対象箇所に照射される。
[態様4]前記混色光の波長と視感度との関係において、前記照射対象箇所の周囲の前記明るさが前記基準値よりも大きい状況下で、前記視感度が最大となるときの前記主波長を含む波長領域を第1波長領域とし、前記照射対象箇所の周囲の前記明るさが前記基準値以下の状況下で、前記視感度が最大となるときの前記主波長を含み、かつ前記第1波長領域よりも短波長側の波長領域を第2波長領域とした場合、前記第1主波長は前記第1波長領域内の値に設定され、前記第2主波長は前記第2波長領域内の値に設定されている[態様1]~[態様3]のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【0014】
上記の構成によれば、第1主波長として、照射対象箇所の周囲の明るさが基準値よりも大きい状況下で、視感度が最大となるときの主波長を含む第1波長領域内の値が用いられる。第2主波長として、照射対象箇所の周囲の明るさが基準値以下の状況下で、視感度が最大となるときの主波長を含み、かつ上記第1波長領域よりも短波長側の第2波長領域内の値が用いられる。このように、第1主波長及び第2主波長として、混色光の波長と視感度との関係を考慮して設定されたものが用いられる。そして、照射対象箇所の周囲の明るさに応じて、混色光の主波長が、上記第1主波長と第2主波長とで切り替えられる。従って、照射対象箇所の周囲が暗いときにも明るいときにも、視認性を向上する上記効果が好適に得られる。
【0015】
[態様5]前記制御部は、明所視視感度に基づく前記第1主波長の前記可視光の明所視光束が、前記明所視視感度に基づく前記第2主波長の前記可視光の明所視光束よりも大きくなり、かつ暗所視視感度に基づく前記第1主波長の前記可視光の暗所視光束が、前記暗所視視感度に基づく前記第2主波長の前記可視光の暗所視光束よりも小さくなるように、各発光デバイスに前記電力を投入する[態様1]~[態様4]のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【0016】
ここで、照射対象箇所の周囲の明るさが基準値よりも大きい場合において、第1主波長を主波長とする混色光を生成して、照射対象箇所に照射した場合、第1主波長の明るさ(光束)が第2主波長の明るさ(光束)よりも暗くなる場面が起り得る。
【0017】
同様に、上記明るさが基準値以下の場合において、第2主波長を主波長とする混色光を生成して、照射対象箇所に照射した場合、第2主波長の明るさ(光束)が第1主波長の明るさ(光束)よりも暗くなる場面が起り得る。
【0018】
この点、上記の構成によれば、上記明るさが基準値よりも大きい場合には、明所視視感度に基づく第1主波長の可視光の明所視光束が、第2主波長の可視光の明所視光束よりも大きくなるように、各発光デバイスに対し投入される電力が制御される。
【0019】
また、上記明るさが基準値以下の場合には、暗所視視感度に基づく第1主波長の可視光の暗所視光束が、第2主波長の可視光の暗所視光束よりも小さくなるように、各発光デバイスに対し投入される電力が制御される。
【0020】
そのため、昼間に、第1主波長の明るさ(光束)が第2主波長の明るさ(光束)よりも暗くなる現象が抑制される。また、夜間に、第2主波長の明るさ(光束)が、第1主波長の明るさ(光束)よりも暗くなる現象が抑制される。その結果、照射対象箇所の周囲が明るいときにも暗いときにも視認性を、より一層向上させることが可能となる。
【0021】
[態様6]前記少なくとも3種類の前記発光デバイスは、第1波長の可視光を放射する第1発光デバイスと、主波長が前記第1波長よりも短い第2波長の可視光を放射する第2発光デバイスと、主波長が前記第2波長よりも短い第3波長の可視光を放射する第3発光デバイスとからなる[態様1]~[態様5]のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【0022】
上記の構成によれば、光源の第2発光デバイスからは、第1発光デバイスから放射される第1波長の可視光よりも主波長の短い第2波長の可視光が放射される。第3発光デバイスからは、上記第2波長の可視光よりも主波長の短い第3波長の可視光が放射される。これらの第1~第3発光デバイスへの投入電力が制御されることで、主波長が第1主波長又は第2主波長となる混色光を生成することが可能である。
【0023】
[態様7]前記第1波長は、600[nm]~700[nm]の範囲の値に主波長が設定され、前記第2波長は、490[nm]~600[nm]の範囲の値に主波長が設定され、前記第3波長は、400[nm]~490[nm]の範囲の値に主波長が設定されている[態様6]に記載の車両用照明装置。
【0024】
第1波長、第2波長及び第3波長は、この順で主波長が短くなることを条件に、それぞれ上記範囲の値に設定されることが好ましい。こうした波長の設定が行なわれた第1~第3発光デバイスへの投入電力が制御されることで、主波長が第1主波長又は第2主波長となる混色光を生成することが可能である。
【0025】
[態様8]前記第1波長は、620[nm]~700[nm]の範囲の値に主波長が設定され、前記第2波長は、490[nm]~560[nm]の範囲の値に主波長が設定され、前記第3波長は、430[nm]~490[nm]の範囲の値に主波長が設定されている[態様7]に記載の車両用照明装置。
【0026】
第1波長が、620[nm]~700[nm]の範囲の値に主波長が設定されることで、第1発光デバイスからは、波長として選択可能な範囲から橙の波長を除外した波長(赤色)の主波長の可視光が放射される。第2波長が、490[nm]~560[nm]の範囲の値に設定されることで、第2発光デバイスからは、緑色の主波長の可視光が放射される。第3波長が、430[nm]~490[nm]の範囲の値に設定されることで、第3発光デバイスからは、波長として選択可能な範囲から紫の波長を除外した波長(青色)の主波長の可視光が放射される。
【0027】
上記第1~第3発光デバイスへの投入電力が制御されることで、主波長が第1主波長又は第2主波長となる混色光を好適に生成することが可能である。
[態様9]前記制御部は、前記車両に搭載され、かつ前記照射対象箇所の周囲の前記明るさに依拠する車両ライトの点灯及び消灯に連動して、前記混色光の前記主波長を切り替える[態様1]~[態様8]のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【0028】
車両には、オートライトと呼ばれる装置が搭載されているものがある。オートライトは、車両の周囲が暗くなると、ヘッドライト、テールライト等の車両ライトを、乗員のスイッチ操作によらず自動的に点灯させ、明るくなると自動的に消灯させる装置である。上記車両の周囲には、照射対象箇所の周囲も含まれる。
【0029】
上記オートライトによる車両ライトの点灯及び消灯は、上記「明るさに依拠する車両ライトの点灯及び消灯」に該当する。
上記の構成によると、車両ライトが点灯されると、その点灯に連動して、混色光の主波長が第2主波長となるように、各発光デバイスに電力が投入される。車両ライトが消灯されると、その消灯に連動して、混色光の主波長が第1主波長となるように、各発光デバイスに電力が投入される。
【0030】
このように、照射対象箇所の周囲の明るさに応じた車両ライトの点灯及び消灯に連動して、混色光の主波長が切り替えられるため、照射対象箇所の周囲の明るさを検出する専用のセンサ部を設けなくてもすむ。
【0031】
[態様10]前記光源は、前記混色光を照射することで、情報を示すサインを前記照射対象箇所に表示する[態様1]~[態様9]のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
上記の構成によれば、車両の乗員は照射対象箇所に照射されたサインを見ることで、そのサインが示す情報を知覚することが可能である。
【0032】
[態様11]前記車両は、車外における乗員の特定の動作を検出する動作検出センサを備え、かつ前記動作検出センサが前記乗員の前記特定の動作を検出した場合に、前記車両における特定の可動部を作動させるように構成されており、前記動作検出センサの検出領域を挟み込む2箇所のうちの少なくとも1箇所が前記照射対象箇所として設定され、前記制御部は、前記特定の動作の直前に行なわれる前記乗員の動作である直前動作が検出された場合に、各発光デバイスに対する投入電力の前記制御を行なうことで、前記第1主波長又は前記第2主波長を主波長とする前記混色光を前記照射対象箇所に照射させる[態様1]~[態様10]のいずれか1つに記載の車両用照明装置。
【0033】
上記の構成によれば、動作検出センサの検出領域を挟み込む2箇所のうちの少なくとも一方が照射対象箇所とされる。
制御部は、乗員の直前動作が検出された場合、各発光デバイスに対する投入電力の上記制御を行なう。制御部は、第1主波長又は第2主波長を主波長とする混色光を、照射対象箇所に照射させる。乗員は、照射対象箇所に照射された混色光を見ることで、動作検出センサの検出領域を知覚し、その検出領域で特定の動作を行なうべきことを把握することが可能となる。従って、乗員が動作検出センサの検出領域とは異なる領域で特定の動作をすることが起こりにくくなる。乗員が、検出領域で特定の動作をすると、その動作が動作検出センサによって検出される。車両では、上記検出に応じて、特定の可動部が作動させられる。そのため、特定の動作をしたにも拘わらず、上記可動部が作動しないといった現象が起こりにくくなる。
【0034】
[態様12]前記動作検出センサは、車外における前記乗員の足の特定の動作を検出するキックセンサであり、前記照射対象箇所は、前記検出領域の上方に位置する車両外板、及び前記検出領域の下方に位置する路面のうちの少なくとも一方である[態様11]に記載の車両用照明装置。
【0035】
上記の構成によれば、乗員の直前動作が検出されると、制御部は、各発光デバイスに対する投入電力の上記制御を行なう。この制御により、第1主波長又は第2主波長を主波長とする混色光が、照射対象箇所に照射される。照射対象箇所は、キックセンサの検出領域の上方に位置する車両外板、及び検出領域の下方に位置する路面のうちの少なくとも一方である。車両外板及び路面の少なくとも一方に対し、混色光が照射される。乗員は、照射された混色光を見ることで、キックセンサの検出領域を知覚し、その検出領域で足の特定の動作をすべきことを把握することが可能となる。乗員が、検出領域で足の特定の動作を行なうと、その動作がキックセンサによって検出され、車両における特定の可動部が作動させられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、視認性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】一実施形態における車両用照明装置が搭載された車両を斜め左後方から見た斜視図である。
【
図2】上記実施形態における車両の後部と、照射対象箇所等との位置関係を示す部分斜視図である。
【
図3】上記実施形態における車両用照明装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】波長と明所視視感度との関係(実線)、及び、波長と暗所視視感度との関係(破線)を示すグラフである。
【
図5】上記実施形態の制御部によって実行される光源制御ルーチンを説明するフローチャートである。
【
図6】JIS Z8785で規定された色度図である。
【
図7】変更例における車両用照明装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、車両用照明装置(以下、単に「照明装置」という)の一実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
<照明装置20が搭載される車両10について>
図1は、照明装置20の搭載対象となる車両10を示している。
図2は、上記車両10の後部を示している。この車両10には、スマートエントリー(登録商標)システムが適用されている。上記システムでは、バックドア12のドアロック装置が施錠されている状態で、乗員の特定の動作、例えば、リヤバンパ13の下方の空間S1に足先を入れる動作がキックセンサ14によって検出された場合、ドアロック装置が解錠される。キックセンサ14は、例えば、リヤバンパ13の内側に設置される。
【0039】
なお、上記キックセンサ14は、車外における乗員の特定の動作を検出する動作検出センサに該当する。また、バックドア12のドアロック装置は、車両10における特定の可動部に該当する。ドアロック装置は、キックセンサ14によって足の特定の動作が検出された場合に、解錠される。この解錠が、特定の可動部の作動に該当する。
【0040】
ここで、上記特定の動作の直前に行なわれる乗員の動作を直前動作というものとする。例えば、電子キーを携帯した車外の乗員が、ドアロック装置の施錠されているバックドア12に近づくことが、直前動作に該当する。
【0041】
本実施形態の照明装置20は、直前動作が検出された場合に、後述する照射対象箇所A1に可視光を照射して、キックセンサ14の検出領域F1に関する情報を照射対象箇所A1に表示するものである。
【0042】
<照射対象箇所A1及び照明装置20の設置箇所>
照明装置20からの可視光が照射される箇所を照射対象箇所A1というものとすると、本実施形態では、照射対象箇所A1として、車両外板及び路面15が設定されている。車両外板とは、車両10において車室の外部に位置し、かつ板状をなす部材である。動作検出センサがキックセンサ14である本実施形態では、車両外板は、キックセンサ14の検出結果に応じてドアロック装置が解錠されるバックドア12の近傍に位置するものであることが好ましい。例えば、車両10の下部の構成要素であるリヤバンパ13、リヤディフューザー、バックドア12の下端部、リヤガーニッシュ、車体11におけるバックドア12の下方領域等である。
【0043】
本実施形態では、リヤバンパ13の上面13aの一部であって、キックセンサ14の検出領域F1の上方となる箇所が、車両外板における照射対象箇所A1とされている。また、路面15のうち、キックセンサ14の検出領域F1の下方となる箇所は、路面15における照射対象箇所A1とされている。従って、両照射対象箇所A1は、キックセンサ14の検出領域F1を上下両側から挟み込む箇所に設定されていることになる。
【0044】
本実施形態では、両照射対象箇所A1への可視光の照射が、共通の照明装置20によって行なわれる。この場合の照明装置20の設置箇所は、リヤバンパ13及び路面15に可視光を照射し得る箇所であればよい。例えば、車体11の後部におけるリヤバンパ13、リヤグリル、バックドア12等である。本実施形態では、照明装置20は、バックドア12のうち、下端部よりも上方に位置する箇所に設置されている。この箇所は、両方の照射対象箇所A1よりも上方となる箇所である。
【0045】
<表示の態様>
キックセンサ14の検出領域F1に関する情報の表示は、単に、可視光を照射して照射対象箇所A1を照明することのみによってなされてもよい。
【0046】
また、上記表示は、文字及び画像が表現されるように、可視光が照射されることによってなされてもよい。文字及び画像は、静止したものや平面的なものであってもよい。また、文字及び画像は、動画、ホログラム等の動きのあるものや立体感のあるものであってもよい。上記いずれの場合にも、照射対象箇所A1に対し、文字及び画像の少なくとも一方からなるサイン21が表示されることが好ましい。このサイン21により、乗員にキックセンサ14の検出領域F1に関する情報を表示することが可能である。文字からなるサイン21の場合、1又は複数の文字によってメッセージが表現されてもよい。画像からなるサイン21の場合、例えば、各種のロゴ、シンボル、ハウスマーク等の記号によってサイン21が表現されてもよい。
【0047】
本実施形態では、リヤバンパ13の照射対象箇所A1には、矢印状の画像22と複数の文字23とからなるサイン21が表示される。これに対し、路面15の照射対象箇所A1には、矢印状の画像24からなるサイン21が表示される。
【0048】
照明装置20は、可視光の光路上に図示しないフィルタを備えている。フィルタは、リヤバンパ13に表示されるサイン21に対応する形状のマスク部と、路面15に表示されるサイン21に対応する形状のマスク部とを有している。上記可視光が上記マスク部を透過して照射対象箇所A1に照射されることにより、上記サイン21が照射対象箇所A1に表示される。
【0049】
照明装置20の光量は、乗員が視認できる程度の明るさの可視光のサイン21を照射対象箇所A1に表示できればよく、特に限定されない。光量は、照射対象箇所A1における照度、すなわち、単位面積に入射する光束の量で表される。単位はルクス[lux]であり、一般にルクス[lx]と省略された記号で表される。光束については後述する。
【0050】
照明装置20の光量は、リヤバンパ13の上面13aにおける照度が、1000[lx]~30000[lx]の範囲内に入るように設定されることが好ましい。照明装置20の光量は、路面15における照度が、200[lx]~800[lx]の範囲内に入るように設定されることが好ましい。さらに、夜間、雨天下等に路面15に照射する場合には、照明装置20の光量は、路面15における照度が、5[lx]~300[lx]の範囲に入るように設定されることが好ましい。
【0051】
図3に示すように、照明装置20は、光源25、レンズ(図示略)、センサ部28及び制御部29を備えている。上述したように、照射対象箇所A1として、車両外板及び路面15の2箇所が設定されていることから、照明装置20には、光源25及びレンズの組み合わせが2組設けられている。次に、照明装置20の各部について説明する。
【0052】
<光源25>
各光源25は、電力が投入されることにより、互いに主波長の異なる可視光を放射する少なくとも3種類の発光デバイスを備えている。少なくとも3種類の発光デバイスのうちの3種類の発光デバイスは、第1発光デバイス、第2発光デバイス及び第3発光デバイスからなる。
【0053】
第1発光デバイスは、第1波長の可視光を放射する。第2発光デバイスは、主波長が第1波長よりも短い第2波長の可視光を放射する。第3発光デバイスは、主波長が第2波長よりも短い第3波長の可視光を放射する。
【0054】
表現を変えると、主波長の長短に関し、「第1波長>第2波長>第3波長」の条件が成立する。
第1~第3発光デバイスは、互いに主波長の異なる可視光を放射する発光素子として、発光ダイオード(LED)のチップを備えている。
【0055】
主波長の長短に関する上記条件を満たしたうえで、第1波長は、主波長が600[nm]~700[nm]の範囲の値に設定されることが好ましい。第1波長は、主波長が620[nm]~700[nm]の範囲の値に設定されることがより好ましい。本実施形態では、第1波長が後者の範囲の値に設定されている。この場合、第1発光デバイスからは、波長として選択可能な範囲から橙の波長を除外した、主波長が赤(R)色の可視光が放射される。本実施形態では、赤色の可視光を放射するLEDチップ27Rを備えたLEDパッケージ26Rが、第1発光デバイスとして用いられている。
【0056】
主波長の長短に関する上記条件を満たしたうえで、第2波長は、主波長が490[nm]~600[nm]の範囲の値に設定されることが好ましい。第2波長は、主波長が490[nm]~560[nm]の範囲の値に設定されることがより好ましい。本実施形態では、第2波長が後者の範囲の値に設定されている。この場合、第2発光デバイスからは、主波長が緑(G)色の可視光が放射される。本実施形態では、主波長が緑色の可視光を放射するLEDチップ27Gを備えたLEDパッケージ26Gが、第2発光デバイスとして用いられている。
【0057】
主波長の長短に関する上記条件を満たしたうえで、第3波長は、主波長が400[nm]~490[nm]の範囲の値に設定されることが好ましい。第3波長は、主波長が430[nm]~490[nm]の範囲の値に設定されることがより好ましい。本実施形態では、第3波長が後者の範囲の値に設定されている。この場合、第3発光デバイスからは、波長として選択可能な範囲から紫の波長を除外した、主波長が青(B)色の可視光が放射される。本実施形態では、青色の可視光を放射するLEDチップ27Bを備えたLEDパッケージ26Bが、第3発光デバイスとして用いられている。
【0058】
各LEDパッケージ26R,26G,26Bは、車載バッテリ等の電源から電力を投入されることにより発光する。各LEDパッケージ26R,26G,26Bに投入される電力(投入電力)は、制御部29によって制御される。
【0059】
そして、上記両光源25は、各LEDパッケージ26R,26G,26BのLEDチップ27R,27G,27Bから放射される可視光を混色させて混色光を生成する。両光源25は、上記のように生成した混色光が、上述した2箇所の照射対象箇所A1に対し、それぞれ照射されるように、照明装置20内に配置されている。
【0060】
図6は、JIS Z8785(測光-CIE物理測光システム)で規定された色度図を示している。色度図とは、光の色をXYの平面座標で表した図である。色度図上には、全ての色が表現されている。
【0061】
色度図中、釣鐘状に湾曲している部分は「単光色軌跡(スペクトル軌跡)」と呼ばれ、赤、橙、黄、緑、青、藍及び青紫の単色を波長で表している。この単光色軌跡の内側の色は全て混色になる。底辺の直線部分は「純紫軌跡」と呼ばれ、スペクトルには存在しない色で、「紫、赤紫、及びその混色部分」を表している。
【0062】
上記色度図では、Xが大きくなるほど「赤」の割合が高くなり、Xが小さくなるほど「青」の割合が高くなる。また、Yが大きくなるほど「緑」の割合が高くなり、Yが小さくなるほど「青」の割合が高くなる。
【0063】
上記色度図中、色度座標が、X=0.333かつY=0.333である点は、無彩色(白色)の色度点を示しており、白色点Wと呼ばれる。この白色点Wから周囲に行くほど彩度が高くなり(色が鮮やかになり)、単光色軌跡上で彩度が最大の単色の光になる。
【0064】
ここで、
図6中、符号Fは任意の色(色度点)を示している。白色点Wから色度点Fへ直線を引き、その延長線が単光色軌跡に交わる点を点Sとする。点Sにおける波長を、上記色度点Fの色の主波長(ドミナント波長)という。主波長は、実際に眼で見たときの色に相当する波長の値である。
【0065】
混色光の主波長は、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに投入される電力を制御することにより変更可能である。すなわち、各LEDパッケージ26R,26G,26Bの出力を調整して、混色光における赤、緑及び青の光束の比(割合)を調整することにより、混色光の色を任意の色にすることが可能である。
【0066】
<レンズ>
レンズは、光源25毎に用いられている。各レンズは、光源25に対し、混色光の放射方向における前方となる箇所に配置されている。光源25毎のレンズは、光源25が放射した可視光を屈折させる。
【0067】
<センサ部28>
図3に示すセンサ部28は、照射対象箇所A1の周囲の明るさを検出するためのものである。本実施形態では、センサ部28として、例えば、フォトダイオードとトランジスタとが一体化したフォトトランジスタ(照度センサ)を用いることができる。
【0068】
<制御部29>
制御部29は、上述したセンサ部28及びLEDパッケージ26R,26G,26Bに対し電気的に接続されている。制御部29は、照明装置20のために専用に設けられたものであってもよいし、車両10のECU(Electronic Control Unit) と兼用のものであってもよい。
【0069】
制御部29は、光源25を点灯させる点灯条件が成立している場合、昼夜に拘わらずLEDパッケージ26R,26G,26Bのそれぞれに電力を投入することで、互いに主波長の異なる3種類の可視光を放射させて、光源25を点灯させる。点灯条件については後述する。
【0070】
ここで、
図4に示すように、人の眼が感じる明るさの度合いである視感度は、可視光の波長により異なる。視感度は、明所視となる昼間と、暗所視となる夜間とで変化する(JIS Z 8785:2019参照)。具体的には、人が昼間に感じる視感度(明所視視感度)は、同
図4において実線で示すように、555[nm]近傍の波長にピークを有する。表現を変えると、波長が555[nm]近傍のときに明所視視感度が最大となる。人が夜間に感じる視感度(暗所視視感度)は、同
図4において破線で示すように、明所視視感度に比べて短い507[nm]近傍の波長にピークを有する。表現を変えると、波長が507[nm]近傍のときに暗所視視感度が最大となる。このため、仮に、1つの単色LEDパッケージによって構成された単色光源が光源25として用いられれば、昼間の視認性及び夜間の視認性のいずれか一方が損なわれるおそれがある。
【0071】
そこで、本実施形態では、制御部29は、センサ部28によって検出された照射対象箇所A1の周囲の明るさ(照度)と、予め設定された基準値との大小関係を判定する。基準値は、昼間と夜間とを識別するためのものであり、例えば、1000[lx]に設定される。照度が基準値よりも大きい場合を昼間と判定し、照度が基準値以下の場合を夜間と判定する。
【0072】
そして、制御部29は、昼夜で、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに投入する電力を異ならせる。夜間であると、昼間よりも短い主波長の混色光が放射されるように、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに投入される電力を制御する。この制御により、3種類のLEDパッケージ26R,26G,26Bの出力が調整されて、それらの調光比が変化する。照射対象箇所A1に照射される混色光の主波長が、第1主波長と、それよりも短い第2主波長とで切り替えられる。
【0073】
第1主波長及び第2主波長は、次のように、混色光の波長と視感度との関係を考慮して設定されている。
図6に示すように、照射対象箇所A1の周囲の明るさが基準値よりも大きい状況下で、視感度が最大となるときの主波長を含む波長領域を第1波長領域とする。第1波長領域は、昼間の視認性に優れた波長領域であり、例えば531[nm]~580[nm]の波長領域である。第1主波長は、この第1波長領域内の値に設定されている。
【0074】
上記明るさが上記基準値以下の状況下で、視感度が最大となるときの主波長を含み、かつ上記第1波長領域よりも短波長側の波長領域を第2波長領域とする。第2波長領域は、夜間の視認性に優れた波長領域であり、主波長が、例えば480[nm]~531[nm]の波長領域である。第2主波長は、第1主波長よりも短いことを条件に、この第2波長領域内の値に設定されている。
【0075】
光束は、人の視覚が感じる度合いを表す物理量であり、ルーメン[lm]で表される。ここで、上述した明所視視感度をK(λ)で表し、暗所視視感度をK´(λ)で表すことにする。光束は、波長毎に重み付けされた値Φであり、波長毎の放射束(P1(λ),P2(λ))と視感度(K(λ),K´(λ))とが用いられて表される。
【0076】
第1主波長及び第2主波長は、明所視と暗所視とで以下に示す関係を満たす。
[明所視]
明所視視感度K(λ)に基づく第1主波長の可視光の光束を明所視光束Φ1という。明所視光束Φ1は次式(1)で表され、式(1)中の放射束P1(λ)は、次式(2)で表される。
【0077】
Φ1[lm]=∫(K(λ)×P1(λ))dλ・・・式(1)
P1(λ)=第1主波長の可視光の波長[nm]-全放射束[W]・・・式(2)
また、明所視視感度K(λ)に基づく第2主波長の可視光の光束を明所視光束Φ2という。明所視光束Φ2は次式(3)で表され、式(3)中の放射束P2(λ)は、次式(4)で表される。
【0078】
Φ2[lm]=∫(K(λ)×P2(λ))dλ・・・式(3)
P2(λ)=第2主波長の可視光の波長[nm]-全放射束[W]・・・式(4)
[暗所視]
暗所視視感度K´(λ)に基づく第1主波長の可視光の光束を暗所視光束Φ1´という。暗所視光束Φ1´は次式(5)で表される。
【0079】
Φ1´[lm]=∫(K´(λ)×P1(λ))dλ・・・式(5)
また、暗所視視感度K´(λ)に基づく第2主波長の可視光の光束を暗所視光束Φ2´という。暗所視光束Φ2´は次式(6)で表される。
【0080】
Φ2´[lm]=∫(K´(λ)×P2(λ))dλ・・・式(6)
制御部29は、次の条件1及び条件2を満たす態様で、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに対し投入する電力を制御する。
【0081】
条件1:照射対象箇所A1の周囲の明るさが基準値よりも大きい場合には、混色光の主波長が第1主波長となるようにする。上記明るさが基準値以下の場合には、混色光の主波長が第2主波長となるようにする。
【0082】
条件2:さらに、照射対象箇所A1の周囲の明るさが基準値よりも大きい場合には、上記明所視光束Φ1,Φ2の間に、次式(7)の大小関係が満たされるようにする。
Φ1>Φ2・・・式(7)
また、上記明るさが基準値以下の場合には、上記暗所視光束Φ1´,Φ2´の間に、次式(8)の大小関係が満たされるようにする。
【0083】
Φ1´<Φ2´・・・式(8)
次に、前記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
図5のフローチャートは、制御部29が実行する「光源制御ルーチン」を示している。光源制御ルーチンは、車両10の停車中、駐車中等に、所定の制御周期をもって、例えば、所定の時間経過毎に繰り返し実行される。
【0084】
この光源制御ルーチンが開始されると、制御部29はまずステップS110において、予め設定されている点灯条件が成立しているかどうかを判定する。この点灯条件としては、例えば、次に示す条件が挙げられる。
【0085】
・停車又は駐車中の車両10に対して、電子キーを携帯した車外の乗員が、予め設定した距離まで近づき、そのことが、車両10の図示しないキーセンサによって検出されること。
【0086】
ステップS110の判定条件が満たされていると、次のステップS120へ移行し、満たされていないと、光源制御ルーチンを一旦終了する。
ステップS120では、センサ部28によって検出された照射対象箇所A1の周囲の明るさ(照度)を読み込む。
【0087】
次に、ステップS130において、昼間であるかどうかを判定する。より具体的には、センサ部28によって検出された上記照度が基準値(1000[lx])よりも大きいかどうかを判定する。この判定条件が満たされていると、昼間であるとして、ステップS140へ移行する。ステップS140では、第1主波長の混色光が生成され、かつ明所視光束Φ1,Φ2に関する上記式(7)の大小関係が満たされるように、光源25毎の各LEDパッケージ26R,26G,26Bに対し投入する電力を制御する。上記制御により、光源25毎の各LEDパッケージ26R,26G,26Bから可視光が放射される。各光源25では、昼間の視認性に優れた第1主波長を主波長とする混色光が生成される。光源25毎に生成された混色光が、照射対象箇所A1であるリヤバンパ13及び路面15のそれぞれに照射されることにより、サイン21が表示される。
【0088】
これに対し、ステップS130の判定条件が満たされていないと、すなわち、上記照度が基準値以下であると、夜間であるとして、ステップS150へ移行する。ステップS150では、第2主波長の混色光が生成され、かつ暗所視光束Φ1´,Φ2´に関する上記式(8)の大小関係が満たされるように、光源25毎の各LEDパッケージ26R,26G,26Bに対し投入する電力を制御する。上記制御により、光源25毎の各LEDパッケージ26R,26G,26Bから可視光が放射される。各光源25では、上記第1主波長よりも短く、かつ夜間の視認性に優れた第2主波長を主波長とする混色光が生成される。光源25毎に生成された混色光が、リヤバンパ13及び路面15のそれぞれに照射されることにより、サイン21が表示される。
【0089】
ステップS140又はステップS150の処理を経た後に、ステップS160へ移行し、予め設定された消灯条件が成立しているかどうかを判定する。この点灯条件としては、例えば、次に示す条件が挙げられる。
【0090】
・バックドア12を開かれたこと。
・ステップS140又はステップS150の処理を開始した後、予め定められた時間が経過しても、キックセンサ14が乗員の足の動作を検出しないこと。
【0091】
上記ステップS160の判定条件が満たされていると、次のステップS170へ移行し、満たされていないと、上記ステップS130へ戻る。
ステップS170では、光源25毎の各LEDパッケージ26R,26G,26Bへの電力の投入を停止することで、両光源25を消灯する。リヤバンパ13及び路面15に対するサイン21の表示が終了する。そして、ステップS170の処理の後に、光源制御ルーチンを一旦終了する。
【0092】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、センサ部28によって検出された照度が基準値よりも大きい場合には、混色光の主波長が第1主波長となるように、光源25毎の各LEDパッケージ26R,26G,26Bへの投入電力を制御する。照度が基準値以下の場合には、混色光の主波長が、第1主波長よりも短い第2主波長となるように、上記投入電力を制御するようにしている。
【0093】
そのため、照射対象箇所A1の周囲が明るいときには、昼間の視認性に優れた第1主波長を主波長とする混色光を各光源25で生成して、照射対象箇所A1に照射することができる。また、照射対象箇所A1の周囲が暗いときには、夜間の視認性に優れた第2主波長を主波長とする混色光を各光源25で生成して、照射対象箇所A1に照射することができる。
【0094】
このように、本実施形態によると、照射対象箇所A1の周囲が明るいときにも暗いときにも、視認性を向上できる。
(2)本実施形態では、照射対象箇所A1の周囲の明るさが基準値よりも大きい状況下で、視感度が最大となるときの主波長を含む第1波長領域内の値を、第1主波長としている。上記明るさが基準値以下の状況下で、視感度が最大となるときの主波長を含み、かつ上記第1波長領域よりも短波長側の第2波長領域内の値を、第2主波長としている。
【0095】
このように、第1主波長及び第2主波長として、混色光の波長と視感度との関係を考慮して設定されたものを用いている。そして、照射対象箇所A1の周囲の明るさに応じて、混色光の主波長を、上記第1主波長と第2主波長とで切り替えるようにしている。
【0096】
そのため、照射対象箇所A1の周囲が明るいときにも暗いときにも視認性を向上する上記(1)の効果を好適に得ることができる。
(3)本実施形態では、光源25毎の各LEDパッケージ26R,26G,26Bに対し投入する電力を調整することで、第1主波長を主波長とする混色光、又は第2主波長を主波長とする混色光を生成している。そのため、明所視及び暗所視それぞれにおいて使用できる主波長の選択肢が増える。
【0097】
また、色純度の選択肢も増える。主波長を維持しつつ、色純度を変えることができる。色純度とは、
図6において、上記白色点Wから光源25の発する混色光の色度点を直線で結んだ距離を、白色点Wから光源25の発する混色光の色度点を通り単光色軌跡と交わる点までの距離で除したものである。色純度は、白色点Wに近いほど低く、単光色軌跡に近いほど高くなる。
【0098】
(4)ここで、昼間において、第1主波長を主波長とする混色光を生成して、照射対象箇所A1に照射した場合、第1主波長の明るさ(光束)が第2主波長の明るさ(光束)よりも暗くなる場面が起り得る。これは、光束が、全放射束積分と視感度スペクトルとの積であることから、視感度がよくても全放射束積分が小さいと、明るさを稼げないからである。
【0099】
同様に、夜間において、第2主波長を主波長とする混色光を生成して、照射対象箇所A1に照射した場合、第2主波長の明るさ(光束)が第1主波長の明るさ(光束)よりも暗くなる場面が起り得る。
【0100】
この点、本実施形態では、照射対象箇所A1の周囲の明るさが基準値よりも大きい場合には、明所視光束Φ1が明所視光束Φ2よりも大きくなるように、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに対し投入する電力を制御する。また、上記明るさが基準値以下の場合には、上記暗所視光束Φ1´が暗所視光束Φ2´よりも小さくなるように、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに対し投入する電力を制御している。
【0101】
そのため、昼間に、第1主波長の明るさ(光束)が第2主波長の明るさ(光束)よりも暗くなるのを抑制できる。また、夜間に、第2主波長の明るさ(光束)が、第1主波長の明るさ(光束)よりも暗くなるのを抑制できる。その結果、照射対象箇所A1の周囲が明るいときにも暗いときにも視認性を、より一層向上させることができる。
【0102】
(5)照明装置20は、キックセンサ14によって乗員の足の動作を検出した場合にバックドア12のドアロック装置を解錠させるスマートエントリーシステムが適用された車両10に搭載されている。
【0103】
そして、本実施形態では、キックセンサ14の検出領域F1を上下両側から挟み込む2箇所のうちの少なくとも1箇所に照射対象箇所A1を設定し、その照射対象箇所A1に混色光を照射している。
【0104】
そのため、車両10の乗員は、照射対象箇所A1に照射された混色光を見ることで、キックセンサ14の検出領域F1を知覚し、その検出領域F1で特定の動作を行なうべきことを把握することが可能となる。従って、乗員がキックセンサ14の検出領域F1とは異なる領域で特定の動作をすることが起こりにくい。特定の動作をしたにも拘わらず、ドアロック装置が解錠されないといった現象が起こりにくくなる。
【0105】
(6)本実施形態では、キックセンサ14の検出領域F1を上下両側から挟み込む2箇所のそれぞれに照射対象箇所A1を設定し、両方の照射対象箇所A1に混色光を照射している。そのため、一方の照射対象箇所A1にのみ混色光を照射する場合に比べ、乗員に信頼性高くキックセンサ14の検出領域F1を知覚させることが可能となる。
【0106】
(7)本実施形態では、混色光を照射することで、キックセンサ14の検出領域F1に関する情報を示すサイン21を、照射対象箇所A1に表示するようにしている。そのため、乗員がこのサイン21を見ることで、キックセンサ14の検出領域F1を知覚しやすくなり、上記(5),(6)の効果がより好適に得られる。
【0107】
(8)複数箇所(2箇所)の照射対象箇所A1であるリヤバンパ13及び路面15に対し、共通の照明装置20から混色光を照射するようにしている。そのため、リヤバンパ13及び路面15のそれぞれに対し、別々の照明装置20から混色光を照射する場合に比べ、照明装置20の数が少なくてすむ。
【0108】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0109】
<照明装置20の設置箇所について>
・照明装置20は、車体11の外部にとどまらず、車室内、例えば天井等に設置されてもよい。
【0110】
<光源25について>
・光源25として、
図7に示すように、赤色のLEDチップ27R、緑色のLEDチップ27G及び青色のLEDチップ27Bを1つのパッケージに搭載したものが用いられてもよい。LEDパッケージは、例えば、基板、LEDチップ、封止樹脂等で構成された表面実装型である。
【0111】
この場合、LEDチップ27R,27G,27Bが、特許請求の範囲における「少なくとも3種類の発光デバイス」及び「発光素子」に該当する。
この変更例では、少なくとも3種類の発光デバイス(LEDチップ27R,27G,27B)から、互いに波長の異なる可視光が放射される。光源25では、放射された可視光が混色されて混色光が生成される。そして、光源25からは、生成された混色光が放射されて、照射対象箇所A1に照射される。
【0112】
この変更例によると、3色の発光素子が1つのパッケージに搭載される。そのため、3色の発光素子が3種のパッケージに搭載される場合に比べ、光源25の全体のサイズの小型化を図ることができる。
【0113】
・少なくとも3種類の発光デバイスは、1種類の特定発光デバイスと、少なくとも2種類の一般発光デバイスとを備えてもよい。
特定発光デバイスは、可視光を放射する発光素子を備える。少なくとも2種類の一般発光デバイスは、それぞれ発光素子を備えるとともに、互いに異なる色の蛍光体を備える。すなわち、特定発光デバイスも、いずれの一般発光デバイスも、発光素子を1つずつ備える。
【0114】
一般発光デバイスにおける発光素子は、上記特定発光デバイスの発光素子と同じ主波長を含む主波長範囲内における主波長の可視光を放射する。従って、一般発光デバイスにおける発光素子は、上記特定発光デバイスの発光素子と同じ主波長の可視光を放射してもよい。また、一般発光デバイスにおける発光素子は、上記主波長範囲内における主波長であることを条件に、特定発光デバイスの発光素子と異なる主波長の可視光を放射してもよい。
【0115】
この変更例では、少なくとも3種類の発光デバイスのうち、特定発光デバイスでは、発光素子から可視光が放射される。少なくとも2種類の一般発光デバイスでは、特定発光デバイスの発光素子と同じ主波長を含む主波長範囲内の可視光が、同一般発光デバイスの発光素子から放射される。この可視光が蛍光体に吸収されることで、各一般発光デバイスからは、特定発光デバイスから放射される可視光とは異なる主波長の可視光であって、一般発光デバイス毎に異なる主波長の可視光が放射される。
【0116】
光源では、特定発光デバイス及び少なくとも2種類の一般発光デバイスから放射される可視光が混色されることにより、混色光が生成される。そして、光源からは、生成された混色光が放射されて、照射対象箇所に照射される。
【0117】
ここで、少なくとも3種類の発光デバイスが1種類の特定発光デバイスと、2種類の一般発光デバイスとからなる変更例の一例について説明する。2種類の一般発光デバイスを互いに区別するために、ここでは、一方を一般発光デバイス1といい、他方を一般発光デバイス2というものとする。
【0118】
1種類の特定発光デバイスは、例えば、青色の可視光を放射する1つの発光素子を備える。一般発光デバイス1は、主波長が青の主波長範囲内である主波長の可視光を放射する1つの発光素子と、緑蛍光体とを備える。一般発光デバイス2は、主波長が青の主波長範囲内である主波長の可視光を放射する1つの発光素子と、赤蛍光体とを備える。
【0119】
この場合、特定発光デバイスからは青色の可視光が放射される。一般発光デバイス1では、発光素子に投入される電力が制御されることにより緑光束が変化する。一般発光デバイス1からは、緑色の可視光が放射される。一般発光デバイス2では、発光素子に投入される電力が制御されることにより赤光束が変化する。一般発光デバイス2からは、赤色の可視光が放射される。
【0120】
光源では、上記特定発光デバイス、一般発光デバイス1及び一般発光デバイス2からそれぞれ放射される可視光が混色されて混色光が生成される。
・光源25として、赤、緑及び青に加え、それ以外の色の可視光を放射する発光素子や発光デバイスを備えるものが用いられてもよい。
【0121】
具体的には、各光源25において、第1発光デバイスから放射される可視光の第1波長が、上記実施形態よりも広い範囲、例えば、主波長が600[nm]~700[nm]の範囲の値に設定されてもよい。
【0122】
また、各光源25において、第2発光デバイスから放射される可視光の第2波長が、上記実施形態よりも広い範囲、例えば、主波長が490[nm]~600[nm]の範囲の値に設定されてもよい。
【0123】
さらに、各光源25において、第3発光デバイスから放射される可視光の第3波長が、上記実施形態よりも広い範囲、例えば、主波長が400[nm]~490[nm]の範囲の値に設定されてもよい。
【0124】
・発光デバイスとして、LEDパッケージに代えて、レーザダイオード(LD : Laser Diode)が用いられてもよい。
・上記実施形態のように、照射対象箇所A1が複数設定される場合、照射対象箇所A1毎に専用の照明装置20が用いられてもよい。
【0125】
<照射対象箇所A1について>
・リヤバンパ13とは異なる車両外板が照射対象箇所A1とされてもよい。
・車両10において車両外板とは異なる箇所が、照射対象箇所A1とされてもよい。
【0126】
・照射対象箇所A1は、上述した車両外板及び路面15のいずれか一方であってもよい。
・動作検出センサ(キックセンサ14)の検出領域F1を挟み込む2箇所としては、上記実施形態のように、検出領域F1を上下両側から挟み込む2箇所であってもよいが、他の方向から挟み込み2箇所であってもよい。例えば、左右両側から検出領域F1を挟み込む2箇所であってもよい。上記いずれの場合であっても、検出領域F1を挟み込む2箇所のうちの少なくとも1箇所が照射対象箇所A1として設定されればよい。
【0127】
そして、検出領域F1を挟み込む2箇所の照射対象箇所A1のうちの少なくとも一方に、混色光を照射して検出領域F1に関する情報を表示すれば、乗員に検出領域F1を知覚させることができる。
【0128】
・スマートエントリーシステムは、キックセンサ14が乗員の足の特定の動作を検出した場合に、サイドドアのドアロック装置を解錠させるものであってもよい。また、スライドドアを有している車両では、スマートエントリーシステムは、キックセンサ14が乗員の足の特定の動作を検出した場合に、スライドドアのドアロック装置を解錠させるものであってもよい。
【0129】
・車両外板にサイン21を表示するために、その車両外板のうち可視光(混色光)が照射される箇所に、光のサイン21の表示に適した表示部が設けられてもよい。
例えば、表示部の表面が梨地の凹凸形状に形成されれば、表示部における外光の反射等を抑制して、上記混色光のサイン21を表示部に鮮明に表示することが可能である。
【0130】
・バックドア12の下部に配置された、
図1に示すライセンスプレート(ナンバープレートとも呼ばれる)16が照射対象箇所A1とされてもよい。この場合、照明装置20をライセンスプレート16の上方に配置すれば、その照明装置20を、ライセンスプレート16を照射するライセンスランプ(ナンバー灯とも呼ばれる)として機能させることが可能である。
【0131】
この変更例における光源25の点灯条件として、例えば、次に示す条件が設定されてもよい。「外界の光量の少ない環境下において、車両10の図示しないアクセサリスイッチがオンにされること」である。ここでの環境下には、夜間が含まれる。
【0132】
・照射対象箇所A1が3箇所以上設定されてもよい。
<制御部29の制御内容について>
・制御部29は、センサ部28が検出する明るさに代え、車両10に搭載され、かつ照射対象箇所A1の周囲の明るさに依拠する車両ライトの点灯及び消灯に連動して、混色光の主波長を、第1主波長と第2主波長とで切り替えるようにしてもよい。
【0133】
より詳しくは、車両10には、オートライトと呼ばれる装置が搭載されているものがある。オートライトは、車両10の周囲が暗くなるとヘッドライト、テールライト等の車両ライトを、乗員のスイッチ操作によらず自動的に点灯し、明るくなると自動的に消灯する装置である。ここでの車両10の周囲には、上記照射対象箇所A1も含まれる。
【0134】
上記オートライトによる車両ライトの点灯及び消灯は、上記「明るさに依拠する車両ライトの点灯及び消灯」に該当する。
この変更例によると、車両ライトが点灯されると、その点灯に連動して、照明装置20において、混色光の主波長が第2主波長となるように、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに電力が投入される。車両ライトが消灯されると、その消灯に連動して、混色光の主波長が第1主波長となるように、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに電力が投入される。
【0135】
上記変更例によると、照射対象箇所A1の周囲の明るさに応じた車両ライトの点灯及び消灯に連動して、混色光の主波長が切り替えられる。表現を変えると、オートライトにおいて明るさを検出するセンサを、変更例では、センサ部28として利用している。そのため、変更例では照射対象箇所A1の周囲の明るさを検出するセンサ部28が不要となり、照明装置20の構成の簡略化を図ることができる。
【0136】
・照射対象箇所A1の周囲の明るさに応じて切り替えられる主波長の対象として、第1主波長及び第2主波長に加え、別の主波長が設定されてもよい。追加設定される主波長は1つでもよいし、複数でもよい。
【0137】
例えば、昼間の明るさと夜間の明るさとの中間の明るさとなったときに視感度が最大となる主波長は、第1主波長及び第2主波長の中間の値になると考えられる。そのため、第1主波長よりも短く、かつ第2主波長よりも長い第3主波長を設定する。そして、照射対象箇所A1の周囲の明るさが上記中間の明るさになったことが検出されたときには、第3主波長の混色光が生成されるように、各LEDパッケージ26R,26G,26Bに投入される電力が制御されてもよい。
【0138】
・制御部29の制御中、照射対象箇所A1の周囲の明るさが基準値よりも大きい場合に、混色光の主波長が第1主波長となり、かつ明るさが基準値以下の場合に、上記主波長が第2主波長となるように、電力を制御することは必須である。この制御により、照射対象箇所A1の周囲が明るいときにも暗いときにも、視認性を向上する一定の効果が得られる。
【0139】
明るさが基準値よりも大きい場合に明所視光束Φ1が明所視光束Φ2よりも大きくなり、かつ明るさが基準値以下の場合に暗所視光束Φ1´が暗所視光束Φ2´よりも小さくなるように電力を制御することは、上記視認性をさらに向上させる点で有効である。
【0140】
従って、後者の制御を行なうかどうかについては、要求される効果に応じて決定されてもよい。
<表示の態様について>
・上記実施形態において、リヤバンパ13の照射対象箇所A1に表示されるサイン21と、路面15の照射対象箇所A1に表示されるサイン21とが、互いに同一であってもよい。
【0141】
・路面15に混色光を照射する場合、特に夜間、雨天時等の光量の不足する環境において、乗員が足下を視認できるように、サイン21を表示するのではなく、単に路面15を照明してもよい。
【0142】
・路面15に表示される光のサイン21は、キックセンサ14の検出領域F1に関係しない情報を表示するものであってもよい。この場合、サイン21は、例えば、駐車中に生じた異常の有無やサポートセンターからの通知の有無、時刻、駐車時間、今後の天候の変化等に関するサイン21であってもよい。
【0143】
<照明装置20の適用対象となる車両10について>
・車両が、車外における乗員の特定の動作を動作検出センサが検出した場合に、特定の可動部を作動させるように構成された車両である場合、照明装置20は、上記実施形態に記載された車両に限らず、広く適用可能である。
【0144】
・また、照明装置20は、車外における乗員が特定の動作をしても、特定の可動部が作動しない車両にも広く適用可能である。
<その他>
・車両用照明装置は、上記実施形態とは異なる用途、例えば、車両のイルミネーションランプ、ウェルカムランプ等に適用されてもよい。
【0145】
・光源が少なくとも3種類の発光デバイスを備える車両用照明装置を前提とする。そして、制御部は、上記明るさが基準値よりも大きい場合には、主波長が第1主波長となるように、少なくとも1種類の発光デバイスに投入する電力を制御する。また、制御部は、上記明るさが基準値以下の場合には、主波長が第2主波長となるように、少なくとも1種類の発光デバイスに投入する電力を制御してもよい。この変更例によっても、視認性の向上を図る効果を得ることが可能である。上記変更例には、次の変更例1及び変更例2が含まれる。
【0146】
変更例1:上記明るさが基準値よりも大きい場合には、2種類の発光デバイスにそれぞれ投入する電力を制御することで、第1主波長を主波長とする混色光を生成し、これを照射対象箇所に照射する。また、上記明るさが基準値以下の場合には、上記2種類の発光デバイスにそれぞれ投入する電力を制御することで、第2主波長を主波長とする混色光を生成し、これを照射対象箇所に照射する。
【0147】
変更例2:上記明るさが基準値よりも大きい場合には、1種類の発光デバイスに投入する電力を制御することで、第1主波長を主波長とする可視光を生成し、これを照射対象箇所に照射する。また、上記明るさが基準値以下の場合には、別の1種類の発光デバイスに投入する電力を制御することで、第2主波長を主波長とする可視光を生成し、これを照射対象箇所に照射する。
【符号の説明】
【0148】
10…車両
11…車体
12…バックドア
13…リヤバンパ
13a…上面
14…キックセンサ(動作検出センサ)
15…路面
16…ライセンスプレート
20…照明装置
21…サイン
22,24…画像
23…文字
25…光源
26R…LEDパッケージ(第1発光デバイス)
26G…LEDパッケージ(第2発光デバイス)
26B…LEDパッケージ(第3発光デバイス)
27R…LEDチップ(発光素子、第1発光デバイス)
27G…LEDチップ(発光素子、第2発光デバイス)
27B…LEDチップ(発光素子、第3発光デバイス)
28…センサ部
29…制御部
A1…照射対象箇所
F1…検出領域
S1…空間